JP4254189B2 - 光学素子、分光装置、及び集光装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトニック結晶による光学素子、及びこの光学素子を用いた分光装置と集光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光回路などにおいては、微小かつ高性能な光学素子が必要とされる場合が多い。近年、このような微小光学素子にフォトニック結晶を用いる技術が広く研究されている。フォトニック結晶はフォトニックバンドギャップによる、入射方向に関わらない光の完全反射、大きな分散による光の速度や方向の変化など極端な性質を持ち、光を制御するために都合の良い性質を数多く持つことが知られている。このようなフォトニック結晶及びその応用については、「フォトニック結晶研究の現状と将来展望、財団法人光産業技術振興会、2000年3月」(非特許文献1)に記載されている。
【0003】
また、特開2001−91701号公報(特許文献1)には、フォトニック結晶において、周期構造体の基本的な周期の方向の一つ以上を、空間的に徐々にないし緩やかな階段状に変化させること、又は、周期構造体の基本的な周期の一つ以上の長さを、空間的に徐々にないし緩やかな階段状に変化させることにより、1枚の基板において種々の波長域の光を透過させる干渉フィルタを製作したり、分光される中心波長が光の入射位置によって異なる導波型スーパープリズムを作成したりする技術、及び3次元フォトニクス結晶内において、同様の手法により曲がった導波路を形成する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−91701号公報
【非特許文献1】
「フォトニック結晶研究の現状と将来展望、財団法人光産業技術振興会、2000年3月」
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
フォトニック結晶は、光に対して際立った性質を示すものの、通常のガラスや結晶による光学素子と同じく、機能を発揮するのは他の媒質との境界部分のみであり、フォトニック結晶内部では光は一定の速度で直進するだけである。このため、フォトニック結晶は光に対する精密な制御をするのには必ずしも適さない場合もある。例えば、分光素子を構成する場合、一定の入射角で大きな分散を示す波長の範囲は限られ、それ以外は通常の結晶と比べても分散が小さくなる場合が多い。従って、通常のフォトニック結晶で分光が可能なのは極狭帯域の分光に限られる。
【0006】
また、フォトニック結晶は、通常の物質や他のフォトニック結晶との境界において、反射、散乱などによる損失が生じやすい。特に大きな分散を生じるような場面においては損失が大きくなりがちであり、これらを回避するのは困難である。従って、フォトニック結晶を用いて光学系を構成する場合には、フォトニック結晶の表面をできる限り少なくする(すなわち、フォトニック結晶の数を少なくする)一方で、1つのフォトニック結晶の機能を高めることが重要となる。
【0007】
また、前述の特許文献1に記載される技術は、1枚の基板において種々の波長域の光を透過させる干渉フィルタを製作したり、分光される中心波長が光の入射位置によって異なる導波型スーパープリズムの技術を開示しているものの、結晶の構造を変化させることにより、光の屈折角を波長によって異ならせ、フォトニック結晶内部において光の進行方向を制御する技術については、何も触れていない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、光制御の機能を高めたフォトニック結晶による光学素子、及びこの光学素子を用いた分光装置、集光装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための第1の手段は、少なくとも1軸方向に進むに従って、フォトニック結晶を構成する屈折率の異なる物質の構成比が、周期長一定で徐々に変化するように構成されたフォトニック結晶を用いた光学素子(請求項1)である。
【0010】
フォトニック結晶は、屈折率の異なる誘電体又は化合物半導体(一方は空気又は真空であってもよい)を用いて周期的構造を形成した結晶である。一般的に知られているものは、誘電体等の中に、周期的な穴を形成したものや、誘電体等を周期的に多層構造にしたものであるが、このようなものに限られるものではない。本手段は、2次元的又は3次元的な構造を有するフォトニック結晶において、少なくとも、その1軸方向に進むに従ってフォトニック結晶を構成する屈折率の異なる物質の構成比(単位堆積当たり)が、周期長一定で徐々に変化するようにされている。
【0011】
フォトニック結晶において、周期的である構造に変調を加えた場合、一般にはバンド構造は成立しなくなる。しかし、変調が微小である場合には、基本的なバンド構造自体は保たれ、これに微小な摂動が加わったような状態となる。このような状況下では、バンドの変化自体も微小であるため、結晶内での光は徐々に速度や進行方向を変えることになる。さらに、通常の媒質内で屈折率が連続的に変化した場合と同様、基本的には反射などによる損失は生じない。
【0012】
このような光のふるまいは、光学ガラスに対するGRIN(屈折率分布型)光学素子と対比することが可能である。通常の光学ガラスで構成された光学素子では、光がその進行方向を変化させるのは空気等他の媒質との境界部分のみであるが、GRIN光学素子では、光が媒質中でその進行方向を変化するため、集光などの機能を持つことができる。本発明の光学素子も原理としては同様であるが、フォトニック結晶のバンド変化による変調の効果はGRIN素子における屈折率変化よりもはるかに大きい場合が多く、より劇的な効果を発揮させることが可能である。特に結晶中での光の曲げによる効果が期待できる。
【0013】
このように、フォトニック結晶を構成する屈折率の異なる物質の構成比を、周期長一定で徐々に変化させることによって、フォトニック結晶と他の物質の境界面だけでなく、フォトニック結晶内部においても、光の進行方向や透過率を波長によって変化させることができる。よって、フォトニック結晶と他の物質の境界面のみにおいて光の制御が可能であった従来の光学素子に無い、優位な特性を持った光学素子を得ることができる。
【0014】
特許文献1においては、結晶構造の周期を変化させている、しかし、周期を変化させる場合、単位構造同士の相対位置がずれることによる悪影響が存在し得る。したがって、本手段のように結晶を構成する物質の構成比を変化させるのが最も好ましい。例えば円柱が規則的に配列した構造の2次元フォトニック結晶の場合、円柱の太さを変化させることにより、構成比を変化させることができる。
【0015】
前記課題を解決するための第2の手段は、結晶内部を光が進行するに従って、結晶軸に対する光の進行方向が所定の変化を生じるように構成されたフォトニック結晶による光学素子(請求項2)である。
【0016】
本手段においても、フォトニック結晶と他の物質の境界面のみにおいて光の制御が可能であった従来の光学素子に無い、優位な特性を持った光学素子を得ることができる。
【0017】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段又は第2の手段を用いた分光装置(請求項3)である。
【0018】
前述のように、前記第1の手段を用いれば、フォトニック結晶と他の物質の境界面だけでなく、フォトニック結晶内部においても、光の進行方向を波長によって変化させることができる。よって、この性質を利用すれば、微小な波長範囲の光に対して、大きな屈折角の変化を起こさせ、分解能良く分光を行うことができる。
【0019】
前記課題を解決するための第4の手段は、結晶内部において、少なくとも1軸方向に進むに従って、構造が徐々に変化するように構成されたフォトニック結晶を用いた分光装置(請求項4)である。
【0020】
フォトニック結晶を構成する屈折率の異なる物質の構成比のみならず、フォトニック結晶を構成する物質の形状、屈折率、構造の周期等を徐々に変化させることによっても、フォトニック結晶と他の物質の境界面だけでなく、フォトニック結晶内部においても、光の進行方向や透過率を波長によって変化させることができる。よって、フォトニック結晶と他の物質の境界面のみにおいて光の制御が可能であった従来の光学素子と異なり、結晶の内部においても、光の進行方向を波長に応じて変化させることができるので、高分解能の分光装置とすることができる。
【0021】
なお、本手段は前記第3の手段と異なり、フォトニック結晶を構成する物質の形状、屈折率、構造の周期等を徐々に変化させている。これらのうち、結晶を構成する物質の形状を変化させる方法は、数μm以下の波長を対象とする場合には困難が伴い、屈折率を変化させる方法も精密な制御は難しい。また、前述のように、周期を変化させる場合、単位構造同士の相対位置がずれることよる悪影響が存在し得る。よって、本手段は、前記第3の手段に比して、実現に困難が伴うが、実施不可能なものではない。
【0022】
前記課題を解決するための第5の手段は、前記第3の手段又は第4の手段であって、分光の対象となる光が前記フォトニック結晶に入射する方向と、前記1軸とのなす角が45°以下とされていることを特徴とするもの(請求項5)である。
【0023】
分光の対象となる光が入射する方向と、前記1軸とのなす角が45°以下とされていると、分光の対象とする光の進行方向成分のうち、前記1軸方向を向いた成分が大きくなる。よって、前記1軸方向の結晶の変化の影響を大きく受けるようにすることができ、効率よく分光を行うことができる。
【0024】
前記課題を解決するための第6の手段は、前記第1の手段又は第2の手段を用いた集光装置(請求項6)である。
【0025】
前述のように、前記第1の手段又は第2の手段を用いれば、フォトニック結晶と他の物質の境界面だけでなく、フォトニック結晶内部においても、光の進行方向を波長によって変化させることができる。よって、この性質を利用すれば、フォトニック結晶の異なる位置に入射した光の光路を、フォトニック結晶内部で曲げて、集光を行うことができる。
【0026】
前記課題を解決するための第7の手段は、結晶内部において、少なくとも1軸方向に進むに従って、構造が徐々に変化するように構成されたフォトニック結晶を用いた集光装置(請求項7)である。
【0027】
前述のように、フォトニック結晶を構成する物質の、屈折率の異なる物質の構成比のみならず、フォトニック結晶を構成する物質の形状、屈折率、構造の周期等を徐々に変化させることによっても、フォトニック結晶と他の物質の境界面だけでなく、フォトニック結晶内部においても、光の進行方向や透過率を波長によって変化させることができる。よって、フォトニック結晶と他の物質の境界面のみにおいて光の制御が可能であった従来の光学素子と異なり、結晶の内部においても、光の進方向を波長に応じて変化させることができるので、高分解能の分光装置とすることができる。
【0028】
なお、本手段は前記第6の手段と異なり、フォトニック結晶を構成する物質の形状、屈折率、構造の周期等を徐々に変化させている。これらのうち、結晶を構成する物質の形状を変化させる方法は、数μm以下の波長を対象とする場合には困難が伴い、屈折率を変化させる方法も精密な制御は難しい。また、前述のように、周期を変化させる場合、単位構造同士の相対位置がずれることよる悪影響が存在し得る。よって、本手段は、前記第6の手段に比して、実現に困難が伴うが、実施不可能なものではない。
【0029】
前記課題を解決するための第8の手段は、前記第6の手段又は第7の手段であって、集光の対象となる光が前記フォトニック結晶に入射する方向と、前記1軸とのなす角が45°以上とされていることを特徴とするもの(請求項8)である。
【0030】
集光の対象となる光が前記フォトニック結晶に入射する方向と、前記1軸とのなす角を45°以上としておけば、前記1軸方向に対して、入射する光の分散の度合いが大きくなる。よって、光の入射位置でのフォトニクス結晶の変化の度合いを大きくすることができ、光を効率的に集光することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態の1例である光学素子を形成するフォトニック結晶の構造の概要を示す図である。このフォトニック結晶1は2次元構造を持ち、BN(窒化硼素)からなる媒質2中に正方格子状に円形の空気穴3が整列した形状をしている。紙面の左右方向にx軸、紙面の上下方向にz軸、紙面に垂直にy軸をとると、空気穴3は、フォトニック結晶1内のy軸方向に形成されている。
【0032】
媒質2の屈折率、格子の周期などは一定であるが、空気穴3の大きさがz軸方向で徐々に変化している。このような2次元構造は、リソグラフィなどの手法により作成することができるため、構造を変化させることは比較的容易である。
【0033】
図1に示すような構造のフォトニック結晶1を製造するには、例えば所定厚のBN基板を用意し、その片面にレジスト層を形成する。そして、フォトリソグラフィにより、空気穴3を形成したい部分に対して、その穴の大きさに応じた露光を行い、レジストを現像して除去する。そして、残ったレジストをマスクとしてドライエッチングによりBN基板をエッチングすると、高アスペクト比で、BN基板を貫通する空気穴3を形成することができる。その後、残ったレジストを除去して、図1に示すような構造のフォトニック結晶が完成する。
【0034】
以下、このようなフォトニック結晶が有する性質を説明するが、以下の説明においては、穴の半径、光の振動数、光の波数は、格子定数aにより規格化した値を用いる。すなわち、実際の穴の半径をr’、光の振動数をω’、光の波数をk’とすると、
半径としては r=r'/a、
光の振動数としては ω=ω'a/2πc
光の波数としてはk=k'/2πa
を用いる。ただし、cは真空中の光速度である。
【0035】
媒質としてBNを用いて、一様な円形の空気穴を正方格子状に形成したフォトニック結晶においては、媒質の屈折率n=2.117, r=0.4, ω=0.61という条件では、結晶への光の入射角が10°付近で大きな分散が生じる。このような構造が一様なフォトニック結晶に対して、入射角10°で、振動数ωが0.61、0.62および0.63の光線が入射した場合の、空気穴の大きさと光の進行方向(屈折角)との関係を図2に示す。
【0036】
図2において、太い実線は入射角が10°、ωが0.61のとき、細い実線は入射角が10°、ωが0.62のとき、太い破線は入射角が10°、ωが0.63のときのものである。図2を見ると、rが同じでも、ωの違いによってフォトニック結晶中での光の進行方向、すなわち屈折角が異なり、光の分散が行われることが分かると同時に、rの相違によって、光の進行方向に大きな差が生じていることが分かる。
【0037】
rによって、光の進行方向が大きく変化することを利用すれば、図1に示すように、rの大きさをz軸方向で徐々に変化させることにより、フォトニック結晶内においても、光の進行方向を波長に応じて変化させることが可能となる。このことを利用すれば、微小な波長範囲の光を大きな分光角で分光することが可能になる。
【0038】
図1に示すような素子を用いて分光器を構成した例を図3に示す。rの最大値は0.425で、z軸方向に進むにつれて小さくなっていく構造をしている。なお、図3は模式図であるので、実際のフォトニック結晶の構造の周期はこれよりもずっと小さい。入射光はz軸に対して入射角10°で結晶に入射する。振動数0.61付近の光4(波長λ1)は、結晶への入射時はほとんど直進するが、穴の大きさが小さくなるにつれて進行方向が変化していく。これに対して、振動数が大きくなるに従って、光の光路は5(波長λ2)、6(波長λ3)に示すように大きく屈曲するようになる。
【0039】
結晶内の各点において光線が進む方向θは振動数ω、波数kのx成分kx、その位置での穴の大きさrによって決まり、
θ(ω,kx,r(z))
のように表現できる。θの具体的な値については、フォトニック結晶のバンド解析を行うことにより、バンドの振動数一定での断面上の曲線の法線方向として求めることができる。その結果を使うと、光線は
【0040】
【数1】
【0041】
という経路を通ることが分かる。この計算を行って求めた、振動数0.61, 0.62および0.63の場合の光路を図4に示す。これは、穴の半径の変化量を
dr/dz=-0.0005
と一定値とした場合の値である。また、光線の入射位置を原点にとっている。
【0042】
この構成では、結晶に入射した光線は波長に応じた大きな分散部分で進行方向がx軸方向に大きく変化し、側面から出射することになる。通常のフォトニック結晶では、大きな分散をおこす狭い範囲の振動数の光しか分光できないのに対し、この構成においては、光路中でバンド構造が変化するため、光路中のいずれかの部分で大きな分散が起きる振動数の範囲であれば、分光を行うことが可能となる。例えば、入射直後(z=0, r=0.425)の部分では、ω=0.61〜0.62の振動数に対する分散は小さいが、r=0.40〜0.41(z=30〜50)では十分に分散が大きいため、この部分を通過させることにより、フォトニック結晶の大きさがさほど大きくなくてもこの範囲の振動数の光路を分離することができる。一方、ω=0.63付近の光はr=0.39(z=60)付近になると、同振動数の他のバンドが出現するために分光を行う際の障害となってしまうが、r=0.42付近での分散が大きく、進行方向のx成分が十分に大きくなるため、r=0.39の領域まで到達せずに済む。
【0043】
このように、構造が変化するフォトニック結晶を用いることにより、フォトニック結晶による分散素子のコンパクトさと高分散性を保ちつつ、対応波長範囲を広げることができる。さらに、ここでは構造の変化率を一定としたが、これを位置によって変えることにより、結晶出口での波長と位置の関係を変化させることも可能である。
【0044】
図5に、本発明の実施の形態の1例である集光素子の模式図を示す。使用するフォトニック結晶の基本構成は前述の実施の形態の場合と基本的に同じである。ただし、図5に示すフォトニック結晶においては、空気穴3のサイズがz軸方向では同じであり、紙面のx軸の左側から右側へ行くに従って、その半径rが徐々に大きくなっている点が異なる。
【0045】
図2には、入射角が10°、ωがO.61のときの関係を太い実線で示し、入射角が15°、ωがO.61のときの関係を細い破線で示している。双方のデータを比較すると分るように、入射角が小さいほど屈折角が大きくなり、rの値が小さいほど屈折角が大きくなるので、rの値が小さくなるにつれて入射角が小さくなると、その相乗効果により屈折角はさらに大きくなる。
【0046】
このことから、図5のフォトニック結晶1に紙面のz軸の上側から光束を入射させると、光はフォトニック結晶内を進行するが、入射位置により結晶構造が異なるため、入射位置に応じて光の進行方向が変化する。
【0047】
即ち、図5に示すように、相対的にrの小さな空気穴3の位置に入射する光線7が、相対的にrの大きな空気穴3の位置に入射する光線8の入射角に比べて小さくなるようないわゆる発散気味の光7、8をフォトニック結晶1に入射させると、光線7の屈折角は、光線8の屈折角にくらべて大きくなる。
【0048】
したがって、光束を発散気味に入射させると両端の光線がある点で交差することになる。この現象は、入射角が一様でなければ、本発明の構造変化を伴うフォトニック結晶でなくても生じるが、本発明の構造変化を持つフォトニック結晶を用いることにより、収差補正に相当する作用を持たせることが可能になり、収束性能が向上する。結晶を出射後、光線は入射前と同じ向きに進行するため、収束後しばらくして光線が結晶から出るようにすれば、出射後の空間の点9で光線は再び集光する。
【0049】
この場合の具体的な光線の経路は、
【0050】
【数2】
【0051】
により計算できる。ただし、x0はz=0での光線のx座標である。ここでは、穴の径はxの関数である。ある光線の経路x(z)に対し、入射角がわずかに変化した光線、すなわちkxが(kx+δk)に変化した光線の経路は、
【0052】
【数3】
【0053】
のようになる。
【0054】
一方、入射位置がx0から(x0+δx)に変化した場合は、光線の経路は、
【0055】
【数4】
【0056】
である。元の光線経路からの変位量をδ(z)とし、x2のzによる微分を考えると、
【0057】
【数5】
【0058】
となる。
これらを数値的に計算することにより、光線の経路を計算することができる。集光素子を構成するには、パラメータkx、x0が変化しても特定のz0における位置x(z)が変化しないように、すなわち、
【0059】
【数6】
【0060】
となるような設計を行えばよい。ただし、ここで、kxとx0は独立ではなく、入射光の位置、発散(収束)角、光束径などによって決まる関係を持っている。
【0061】
大きな分散部分で使用する場合、kxの変化量と光路の変化量の比例関係はあまり期待できない。このため、特性がx0に依存しない通常のフォトニック結晶の場合は集光できる光束径は小さい。しかし、上記の式からも分かるように、両パラメータが変化したときの経路に与える影響は異なるので、構造の変化するフォトニック結晶を使用して両者を組み合わせるようにすれば、「収差」を除去することが可能となり、より広い範囲の入射光を集めることができるようになる。
【0062】
以上の実施の形態においては、フォトニック結晶中における空気穴の直径を徐々に変化させたフォトニック結晶を光学素子として用いた分光装置、集光装置の例を示したが、フォトニック結晶における他の構造要素を徐々に変化させても、同様の効果が得られる。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、光制御の機能を高めたフォトニック結晶による光学素子、及びこの光学素子を用いた分光装置、集光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に使用するフォトニック結晶の構造の例を示す模式図である。
【図2】媒質の中に半径の等しい円筒状の空洞を格子状に形成したフォトニック結晶における、空洞の半径と屈折角の関係の例を示す図である。
【図3】図1に示すような素子を使用して構成した本発明の実施の形態である分光器を示す模式図である。
【図4】図3に示すような分光器における、フォトニック結晶中での各波長の光の光路の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態の例である集光装置を示す模式図である。
【符号の説明】
1:フォトニック結晶
2:媒質
3:空気穴
4:波長の長い(λ1)光の光路
5:波長のやや長い(λ2)光の光路
6:波長の短い光(λ3)の光路
7:入射角の小さい光の光路
8:入射角の大きい光の光路
9:集光点
Claims (3)
- フォトニック結晶による光学素子であって、xyz直交座標のxz面に、正方格子状に格子定数aで円形断面の穴の中心が配置されており、該穴はy軸方向に形成されており、該穴の半径をr’、光の振動数を
ω’
真空中の光速度をcとし、
r=r’/a
ω=ω’a/(2πc)
として、z軸方向に沿って
0.38 < r < 0.42
の範囲でrが徐々に小さくなるように構成され、
0.61 < ω< 0.63
の範囲の光をz軸に対して所定の角度で入射させると、振動数の異なる光が、z軸方向に異なる位置で波長が小さくなるにしたがって大きく屈折し、z軸方向に沿った面の異なる位置から出射するように構成された光学素子。 - z軸方向に沿ったrの変化率が一定ではない請求項1に記載の光学素子。
- 請求項1または2の光学素子を使用した分光装置。
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