JP4253171B2 - コールドシール接着剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通常の状態では、接着剤が基体シートに塗工されて接着剤の層が形成された塗工面にタックを生じない接着剤であって、接着剤が塗工されて接着剤の層が形成された他の面とその塗工面を両者の接着剤の層が接するように重ねたとしても、接着及びブロッキングを生ずることのない接着剤であるが、その重ねた両者の面に一定以上の圧力を加えることで両者の面を接着できるコールドシール接着剤に関する。
【0002】
更に、そのようなコールドシール接着剤が塗工されて接着剤の層が形成された接着部位に関する。
【0003】
特に、そのような接着部位を有する情報担体に関し、連続もしくは単票である基体シートに、種々の情報、例えば、親展性、秘匿性もしくは隠蔽性が必要とされる情報、又は必ずしも親展性を必要としない情報が印刷され、葉書、封筒、ビジネスフォーム、配送伝票、通信カード、折りたたみカード、重ね合わせシート、及び情報隠蔽シート等の形態とされた情報担体に関する。
【0004】
【従来の技術】
近年、連続もしくは単票である基体シートに、種々の情報、例えば、個人的情報等の親展性、秘匿性もしくは隠蔽性が必要とされる情報、又は宣伝、広告等の必ずしも親展性を必要としない情報が印刷され、葉書、封筒、配送伝票、通信カード、折りたたみカード、重ね合わせシート、及び情報隠蔽シート等の形態とされた情報担体が普及しつつある。
【0005】
尚、本明細書において「基体シート」とは、通常情報担体に用いられているシート形態の基材をいい、基体シートとして、例えば、通常紙、布、合成紙、もしくはポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等のフィルム等を使用することができる。更に、「基体シート」は、予めコート層を設けたコート紙あるいはキャストコート紙、さらに、樹脂フィルムを紙の表面に貼り合わせたり、溶融樹脂によって加工されたラミネート紙等を含む。
【0006】
更に、本明細書において「情報担体」とは、連続(例えば、ロールに巻かれた連続紙)もしくは単票(例えば、重ねられた枚葉紙)の基体シートに、種々の情報、例えば、個人的情報及び印刷情報等の親展性、秘匿性もしくは隠蔽性が必要とされる情報、又は宣伝、広告等の必ずしも親展性を必要としない情報が、例えば、手書きもしくは印刷等されることによって含まれる情報の媒体であって、その媒体が、例えば、葉書、封筒、ビジネスフォーム、配送伝票、通信カード、折りたたみカード、重ね合わせシート、及び情報隠蔽シート等の形態である情報の媒体をいう。尚、封筒等は、必ずしも情報が印刷されるわけではなく、情報の媒体を含むための情報の容器というべきものであるが、本明細書においては、上記の情報担体に含める。
【0007】
更に、本明細書において「印刷」とは、オフセット印刷、グラビア印刷、もしくはノンインパクトプリンターを用いる印刷等のいずれかの一般的な印刷方法を用いて、例えば、各種情報及びパターン等を書き込むことをいう。
【0008】
そのような情報担体の中で、最も普及しているものの1つが、いわゆる親展性の葉書である。
親展性葉書を例に、情報担体について概略を説明する。かかる情報担体に使用される基体シートには、通常、情報を記録する前に、コールドシール接着剤と称される接着剤が前もって基体シートの印刷すべき面に塗工され乾燥されて、接着剤の層が形成される。次に、その塗工された印刷面に情報を、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、及びノンインパクトプリンターを用いる印刷等の印刷方法を用いて印刷する。なお、印刷と塗工の順序は前後してもよい。更に、その情報を印刷した印刷面を、コールドシール接着剤を塗工して接着剤の層が形成された他の面と、両方の面の接着剤の層が接するように重ねて、一定以上の圧力を加えることで、接着することができる。その結果、秘密情報が隠蔽された(外部から見えない)積層体、即ち、親展性葉書を形成することができる。この秘密情報は、接着した面を再び剥離することで読み取ることが出来るが、一旦剥離された面は、再度一定以上の圧力を加えないと接着しないので、秘密情報が隠蔽された剥離前の積層体の状態に戻らない。その結果、親展性葉書は、親展性を保つことができる。
【0009】
このようなコールドシール接着剤には、以下の基本的な特性が要求される:
通常の状態では、接着剤の層が形成された塗工面に、タックを生じない;
通常の状態では、2つの塗工面の接着剤の層同士を、両者の接着剤の層が接するように重ねても、接着及びブロッキングを生じない;
その接着剤の層の重なりに一定以上の圧力を加えることで両者を接着できる。
【0010】
尚、本明細書において「通常の状態」とは、接着剤を塗工した基体シートに、加圧等の何ら特別の操作を加えないことをいい、例えば、コールドシール接着剤を基体シートに塗工した塗工面を、積み重ねて放置もしくは保存した場合、この積み重ねた基体シートを手で強く押した場合、又はそれらの塗工面に情報を印刷する時に加わる程度の低い圧力(約7,840N/m2以下の圧力)を加えた場合等をいう。
【0011】
従って、本明細書において「コールドシール接着剤」とは、通常の状態では、接着剤が塗工されて接着剤の層が形成された塗工面にタックを生じない接着剤であり、通常の状態では、接着剤が塗工された2つの塗工面の接着剤の層を、両者の接着剤の層が接するように重ねても、接着及びブロッキングを生じない接着剤であり、更に、その両者の接着剤の層の重なりに、ある圧力以上の圧力(例えば、約7,840N/m2を超える圧力、及び現在用いられているメイルシーラーで加えられる圧力等)を加えることでその両者を接着できる接着剤をいう。
【0012】
本明細書において、これらの「コールドシール接着剤」が有する、通常の状態では接着しないが、一定以上の圧力を加えることで接着できるという性質を、「コールドシール接着性」という。
更に、本明細書において、コールドシールされた接着を解除するために必要な力を、「コールドシール接着力」という。
尚、本明細書において「接着剤の層」とは、コールドシール接着剤を塗工し、乾燥した後の接着剤の層をいう。
【0013】
尚、コールドシール接着剤には、情報担体の種類に応じて、上述の基本的特性に、更に追加の特性が要求される。
情報担体が、親展性葉書、通信カード、折りたたみカード、重ね合わせシート、及び情報隠蔽シート等の形態である場合、コールドシール接着剤には、更に例えば、以下の様な追加の特性が要求される:
接着した箇所の基体シートを、通常、相互に引き離すように人が手で引張る程度の力で引き剥がすことによって、接着を解除できること;
接着を解除するときに、基体シートの破壊を生じないこと(以下「再剥離可能」ともいう)、即ち、接着が解除された面の情報を、完全に読み取れること;
接着が解除された箇所は、人が手で加えることができる程度の圧力では、再び接着しないこと。
【0014】
情報担体が、封筒及びビジネスフォーム等の形態である場合、コールドシール接着剤には、親展性葉書等の形態の場合と異なり、例えば、接着を解除するときに、目視で確認できる程度の基体シートの破壊を生ずること(以下「材料破壊」ともいう)が要求される。
【0015】
このようなコールドシール接着剤は、種々の成分を含んで成る。その成分の一つとして、コールドシール接着剤に接着性を付与する成分(以下「接着成分」ともいう)が有る。従来のコールドシール接着剤は、接着成分として、主に天然ゴムラテックス又は天然ゴムラテックスにメチルメタクリレート及び/もしくはスチレンをグラフト重合させて得られるメチルメタクリレート(MMA)変性天然ゴムラテックス及び/もしくはスチレン変性天然ゴムラテックス(以下「従来の変性天然ゴムラテックス」ともいう)を含んで成る(例えば、特許文献1参照)。
【0016】
天然ゴムラテックスには、それを接着成分の主成分としてコールドシール接着剤に用いると、コールドシール接着力に優れ、かつ、タックが少ないコールドシール接着剤を得ることができるという長所がある。
しかし、天然ゴムラテックスには、形成される接着剤の層の強度が低く、情報担体に使用される基体シート(例えば、紙)への密着性及び塗工面の表面強度が十分ではないという問題が有る。
【0017】
更に、天然ゴムラテックスには、それを接着成分の主成分としてコールドシール接着剤に用いると、天然ゴムが熱、光、酸素、及びオゾン等によって劣化し得るので、コールドシール接着剤のコールドシール接着力が経時もしくは印刷時の熱及び紫外線等により劣化し得るという問題も有る。
【0018】
そこで、天然ゴムラテックスの有する問題点を解決するために、上述のMMA変性天然ゴムラテックス及び/もしくはスチレン変性天然ゴムラテックスが使用されている。これらの従来の変性天然ゴムラテックスを使用することによって、機械的安定性を向上し、塗工面の表面強度を強化することができることが知られている。
【0019】
しかし、親展性はがきの形態は変化し、コールドシール接着剤に求められる性能は上がり、MMA変性天然ゴムラテックス及び/もしくはスチレン変性天然ゴムラテックスを使用したとしても、その性能は、不十分なものとなりつつある。更に、コールドシール接着剤のコールドシール接着力が経時又は印刷時の熱及び紫外線等により低下し得るという問題を解決するには至っていない。
【0020】
従って、天然ゴムラテックス並びに従来の変性天然ゴムラテックス(以下「従来の天然ゴム系ラテックス」ともいう)を接着成分として用いたコールドシール接着剤の問題を解決し得るコールドシール接着剤は、未だ得られていない。
尚、本明細書においては、コールドシール接着剤の熱による劣化し難さ、UVによる劣化し難さ、及びオゾンによる劣化し難さを、各々、耐熱性、耐UV性、及び耐オゾン性ともいう。
【0021】
また、従来のコールドシール接着剤は、天然ゴムラテックスにアクリル酸エステル化合物をグラフト重合して得られる変性天然ゴムラテックスを含んで成る(例えば、特許文献2参照)。天然ゴムラテックスにアクリル酸エステル化合物をグラフト重合すると、天然ゴムラテックスの粒子内に架橋構造が形成され、その結果、耐熱性及び耐UV性が向上し得るが、その架橋構造のために、所定の接着力を得ることができないこともある。
【0022】
【特許文献1】
特許第2847366号公報(第1−3頁)
【特許文献2】
特開2002−138266号公報(第1−5頁)
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたもので、その課題は、形成される接着剤の層の強度が低く、情報担体に使用される基体シート(例えば、紙)への密着性及び塗工面の表面強度が十分ではないという問題、更に、天然ゴムラテックスには、それを接着成分の主成分としてコールドシール接着剤に用いると、天然ゴムが熱、光、酸素、及びオゾン等によって劣化し得るので、コールドシール接着剤のコールドシール接着力が経時もしくは印刷時の熱及び紫外線等により低下し得るという問題が緩和され、好ましくは実質的に解消されるコールドシール接着剤を提供することである。
【0024】
本発明の課題は、更に、耐ブロッキング性、コールドシール接着力、及び印刷適性(オフセット印刷、グラビア印刷、及びノンインパクトプリンターによる印刷等に関する)が良好であって、これらの特性を容易に適宜調整することができる、総合的な性能が高いコールドシール接着剤を提供することである。
【0025】
更に、そのようなコールドシール接着剤が塗工されて接着剤の層が形成された接着部位を提供することである。
特に、そのような接着部位を有する情報担体を提供することである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、コールドシール接着剤の接着成分として用いられる樹脂について、種々検討を行った結果、以下に詳細に説明するように、特定の変性天然ゴムラテックスを所定量用いることによって、従来の天然ゴム系ラテックスが用いられたコールドシール接着剤が有する問題を少なくとも緩和しつつ、更に好ましくは、耐ブロッキング性、コールドシール接着力及び印刷特性等の良好なコールドシール接着剤を得られることを見出して本発明を完成するに至ったものである。
【0027】
本発明の一つの要旨によれば、新たなコールドシール接着剤が提供され、それは、天然ゴムラテックス100重量部当たり、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体を0.1〜50重量部、天然ゴムラテックスにグラフト重合して得られる変性天然ゴムラテックスを、20〜70重量%含んで成るコールドシール接着剤であって、
炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物は、分枝を含有することもあるアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、置換基を含有することもあるシクロアルキル基を有するメタクリル酸シクロアルキルエステル、水酸基含有メタクリル酸エステル、カルボキシル基(塩の形態を含む)含有メタクリル酸エステル、エポキシ基含有メタクリル酸エステル又はそれらの組み合わせであるコールドシール接着剤である。
【0028】
本発明の一の態様において、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物は、カルボキシル基(塩の形態を含む)含有メタクリル酸エステル及び水酸基含有メタクリル酸エステルから選択される少なくとも一種を含んで成るコールドシール接着剤を提供する。
【0029】
本発明の他の態様において、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体を重合して得られる重合体のTgが80℃以下であるコールドシール接着剤を提供する。
【0030】
更に、本発明の別の要旨によれば、本発明に係るコールドシール接着剤が塗工されて接着剤の層が形成された接着部位を提供する。
また、本発明のもう一つの要旨によれば、上述の接着部位を有する親展性葉書を提供する。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明のコールドシール接着剤は、水系であり、接着成分として、天然ゴムラテックス100重量部当たり、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体を0.1〜50重量部、天然ゴムラテックスにグラフト重合して得られる変性天然ゴムラテックス(以下「樹脂(A):変性天然ゴムラテックス(A)」ともいう)を含んで成り、コールドシール接着剤の20〜70重量%が樹脂(A)であることを特徴とする。
【0032】
本明細書においてコールドシール接着剤が「水系」とは、コールドシール接着剤に含まれる樹脂(A)、及びコールドシール接着剤に含まれ得る後述する他の樹脂(B)、微粒子充填剤、及び添加剤等が、水性媒体中に存在していることをいい、これらの樹脂等が水性媒体に溶解している状態及び/もしくは分散している状態を含む。
【0033】
尚、本明細書を通して、重量部及び重量%は、特に断りがない限り、水性媒体を除く部分を基準としている。
従って、本発明のコールドシール接着剤は、水性媒体を除く接着剤の部分の重量を基準(100重量%)として、樹脂(A)が、接着剤の全組成中の20〜70重量%であって、樹脂等が水性媒体に溶解している状態及び/もしくは分散している状態を含む流体の形態(例えば、エマルションの形態、ラテックスの形態)を有する接着剤である。
【0034】
本明細書において「水性媒体」とは、例えば、蒸留水及びイオン交換水等の一般的な水をいうが、本発明のコールドシール接着剤の特性に悪影響を与えない範囲で、水溶性又は水に分散可能な有機溶剤、単量体、オリゴマー等を含んでもよく、樹脂(A)の製造の際に通常使用される乳化剤等を含んでもよい。
【0035】
「炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物」として、例えば、以下の化合物を例示できる:
エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、及びオクタデシルメタクリレート等の分枝を含有することもあるアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル;
シクロヘキシルメタクリレート等の置換基を含有することもあるシクロアルキル基を有するメタクリル酸シクロアルキルエステル;
ヒドロキシエチルメタクリレート及びヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有メタクリル酸エステル;
コハク酸2−メタクリロイルオキシエチル等のカルボキシル基(塩の形態を含む)含有メタクリル酸エステル;並びに
グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有メタクリル酸エステル。
【0036】
尚、本発明において、「カルボキシル基(−COOH)」にはその塩の形態であるカルボキシル塩基(−COOM:Mは、例えばNa、K、NH4等のカチオン)が含まれる。
【0037】
紙基材との密着性を向上させるためには、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物は、カルボキシル基(その塩の形態を含む)含有メタクリル酸エステル及び水酸基含有メタクリル酸エステルから選択される少なくとも一種を含んで成ることが好ましい。
【0038】
更に、グラフト重合反応において、十分な重合安定性を得るために、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
上述のメタクリル酸エステル化合物は、単独で又は組み合わせて、目的とするコールドシール接着剤の特性に応じて適宜選択して使用できる。
【0039】
本発明のコールドシール接着剤は、天然ゴムラテックス100重量部当たり、上述の炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体0.1〜50重量部を、天然ゴムラテックスにグラフト重合して得られる変性天然ゴムラテックス(A)を20〜70重量%含んで成る。
【0040】
天然ゴムラテックス100重量部当たり、上述の炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体を0.1〜50重量部、天然ゴムラテックスにグラフト重合して変性天然ゴムラテックス(A)を得られるが、1〜30重量部、天然ゴムラテックスにグラフト重合して変性天然ゴムラテックス(A)を得ることが好ましく、5〜25重量部、天然ゴムラテックスにグラフト重合して変性天然ゴムラテックス(A)を得ることがより好ましい。
【0041】
「炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物」を含んで成る単量体は、上述の炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を必須成分とする単量体であって、更に、他の重合可能な単量体を含んでなってもよい。
【0042】
ここで「他の重合可能な単量体」とは、上述の天然ゴムラテックスにグラフト重合できる化合物であって、一般的には、エチレン性二重結合を有する官能基を含有する化合物をいう。他の重合可能な単量体として、例えば、アクリル酸メチル等のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸メチル等の炭素数が5個以下のメタクリル酸エステル、スチレン及びアクリロニトリル等を例示できる。
上述の他の重合可能な単量体は、単独で又は組み合わせて、目的とするコールドシール接着剤の特性に応じて適宜選択して使用できる。
【0043】
炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体が、更に、他の重合可能な単量体を含んで成る場合、天然ゴムラテックスの100重量部当たり、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物と他の重合可能な単量体の両者の総和である、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体0.1〜50重量部が、天然ゴムラテックスにグラフト重合される。この場合、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体1〜30重量部がグラフト重合されることが好ましく、5〜25重量部がグラフト重合されることがより好ましい。
【0044】
炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体が、更に、他の重合可能な単量体を含んで成る場合、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体は、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を3〜100重量%含んで成ることが好ましく、5〜80重量%含んで成ることがより好ましく、5〜50重量%含んで成ることが特に好ましい。
【0045】
上述の樹脂(A)の製造に使用される「天然ゴムラテックス」とは、天然に産するゴムのエマルションをいい、通常「天然ゴムラテックス」と称されるものであって、コールドシール接着剤に使用されるものであり、目的とする本発明のコールドシール接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。また、本発明が目的とするコールドシール接着剤を得られるものであれば、上述したMMA変性天然ゴムラテックス及び/もしくはスチレン変性天然ゴムラテックス等の従来からコールドシール接着剤に使用されている変性天然ゴムラテックスも、樹脂(A)の製造に使用される「天然ゴムラテックス」に含まれる。
天然ゴムラテックスは、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0046】
本発明においては、天然ゴムラテックスに重合する炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体は、組成及び量を適宜選択することによって、樹脂(A)の特性を調整でき、従って、コールドシール接着剤の基材密着性、耐熱性、耐UV性、耐オゾン性、機械安定性、及びコールドシール接着性等を容易に調整できる。
【0047】
樹脂(A)は、通常、変性天然ゴムラテックスを製造する方法として用いられる常套の方法を使用して、適宜触媒等を用いて、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体を天然ゴムラテックスにグラフト重合することによって得ることができる。
重合反応の反応時間、反応温度、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体の種類及び濃度、攪拌速度、触媒の種類及び濃度、乳化剤の種類及び濃度等の反応条件は、目的とする樹脂(A)の特性等に応じて、適宜選択され得るものである。
【0048】
ここで「触媒」とは、少量の添加によって炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体のグラフト重合反応を起こさせることができる化合物をいう。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、及び2,2―アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等を例示することができ、特に、t−ブチルヒドロペルオキシド及びt−ブチルペルオキシベンゾエートが好ましい。
尚、低温で重合反応を行うには、重合反応触媒を還元剤、例えば、テトラエチレンペンタミン等と組み合わせるのが好ましい。
【0049】
本発明のコールドシール接着剤は、樹脂(A)を、接着剤の全組成中の20〜70重量%含んで成るが、30〜60重量%含んで成ることが好ましい。
本明細書において「重量%」とは、上述したように、水性媒体を含まない部分を基準とするものである。
尚、変性天然ゴムラテックス(A)は、単独で又は組み合わせて使用できることはいうまでもない。
【0050】
本発明に係るコールドシール接着剤は、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体を天然ゴムラテックスにグラフト重合して得られる変性天然ゴムラテックスを含んで成ることを特徴とするが、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体の重合体のTgは、重合体のTgがコールドシール接着剤の耐熱性に影響することから、80℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることが特に好ましい。
【0051】
ここで「重合体のTg」とは、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体中の各々の単量体のホモポリマーのガラス転移温度に基づいて、フォックス(Fox)の式:下記数式(1)を用いて計算される理論値をいう(例えば、岡村誠三著,「高分子化学序論」,第二版,(株)化学同人,1981年2月1日,第172頁参照)。
【数1】
数式(1):1/Tg=C1/Tg1+C2/Tg2+・・・+Cn/Tgn
[数式(1)において、
Tgは、重合体の理論Tg、
Cnは、n番目の単量体nが炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体中に含まれる重量割合、Tgnは、n番目の単量体nのホモポリマーのTg、
nは、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体中の単量体の数であり、正の整数。]
【0052】
単量体のホモポリマーのTgは、文献に記載されている値を用いることができる。そのような文献として、例えば、以下の文献を参照できる:ジェイ・ブランドラップとイー・エイチ・インマーガット(J. Brandrup and E. H. Immergut)著,「ポリマー・ハンドブック(Polymer Handbook)」,第3版,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons),1989年,第209〜277頁;及び三菱レイヨン(株)のアクリエステルの製品カタログ,1997年版等のメーカーのカタログ。
【0053】
上述の文献にホモポリマーのTgの値が記載されていない単量体が、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体中に含まれる場合、下記のようにその単量体を重合して得られるホモポリマーのTgをDSCを用いて測定して得られる値を、その単量体のホモポリマーのTgとして計算に用いてよい。即ち、まず溶液重合を用いて、適宜重合条件を調節して、その単量体のホモポリマーを得る。次に示差走査熱量計(DSC)を用いて、その単量体のホモポリマーの熱容量を5℃/minで昇温して測定してDSC曲線を得る。DSC曲線のガラス転移に基づく階段状変化部分の低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移に基づく階段状変化部分のDSC曲線の勾配が最大となるような点で引いたDSC曲線の接線との交点の温度を、その単量体のホモポリマーのTgとして計算に用いてよい。
【0054】
重合体のTgは、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体中の化合物の組成および量により、調整することができる。
好ましい単量体として、例えば以下の組成を有する単量体を例示することができる:
ブチルメタクリレート等の分枝を含有することもあるアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル1〜20重量部とメチルメタクリレート及び/又はアクリル酸エステル0〜15重量部から成る単量体;
カルボキシル基(塩の形態を含む)含有メタクリル酸エステル1〜20重量部とメチルメタクリレート及び/又はアクリル酸エステル0〜15重量部から成る単量体。
【0055】
本発明に係るコールドシール接着剤は、上述した樹脂(A)に加え、更に樹脂(A)以外の樹脂(B)を含んでなってもよい。
【0056】
このような樹脂(B)として、例えば、ビニル系樹脂、合成ゴム系樹脂、及び水溶性高分子等を例示することができる。
ここで「ビニル系樹脂」とは、ビニル化合物の付加重合によって製造される重合体をいい、ビニル系樹脂として、例えば、酢酸ビニル、スチレン、エチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、及びアクリルアミド等を単独で又は組み合わせて付加重合することによって得られる高分子を例示することができる。
【0057】
「合成ゴム系樹脂」とは、一般に合成ゴム系樹脂とされる樹脂をいい、そのような樹脂として、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、並びにアクリル酸エステル類とブタジエンの共重合体(MBR)等を例示できる。
「水溶性高分子」として、例えば、デンプン、カゼイン、セルロース、ポリビニルアルコール、並びにこれらの変性物(例えば、カチオン変性物、酸変性物、及びシラン変性物等)を例示できる。
【0058】
このような樹脂(B)は、公知の方法で製造できるが、市販のものを使用することができ、例えば、合成ゴム系樹脂として日本ゼオン社製のNipol LX416(商品名)、ビニル系樹脂として日本ゼオン社製 Nipol SX1706(商品名)を例示できる。
【0059】
本発明のコールドシール接着剤は、更に微粒子充填剤を含んで成ってもよい。
ここで「微粒子充填剤」とは、 コールドシール接着剤において通常使用される微粒子充填剤をいい、微粒子充填剤として、例えば、シリカゲル、中空シリカ、雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、クレー、穀物澱粉、及び変性澱粉等を例示することができる。
また、微粒子充填剤は、通常粒子であって、その寸法は、本発明の目的とする性能を発揮すれば特に限定されることはない。
【0060】
これらの微粒子充填剤は単独で又は組み合わせて、必要とする特性に応じて適宜選択して使用することができる。微粒子充填剤を用いることで、コールドシール接着剤として要求されるコールドシール接着力、耐ブロッキング性、印刷適性、耐摩耗性、及び基体シートへの密着性等の特性を容易かつ好適に調節することができる。
【0061】
尚、本発明において、更に各種添加剤をコールドシール接着剤に配合することができる。
ここで「添加剤」とは、コールドシール接着剤において必要により通常使用される添加剤をいい、例えば、滑剤、印刷適性向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル補足剤、導電剤、蛍光塗料、着色染料、安定剤、消泡剤、防カビ剤、防バクテリア剤、増粘剤、及び保湿剤等を例示することができる。
【0062】
更にまた、本発明においては、コールドシール接着剤のコールドシール接着力を向上するためにロジン系等のタッキファイアーを添加することができる。
これらの添加剤は単独で又は組み合わせて、必要とする特性に応じて適宜選択して使用することができ、これらを用いることで、印刷適性、安定性、及び防カビ性等に優れたコールドシール接着剤を提供することができる。
【0063】
本発明のコールドシール接着剤は、圧力を加えることによって基体シートを接着する接着剤として好適である。
本発明は、更に上述のコールドシール接着剤を基体シートに塗工して乾燥して接着剤の層を形成した接着部位を提供する。
本明細書において「接着部位」とは、コールドシール接着剤が塗工され乾燥されて接着剤の層が形成されているが、まだ圧力を加えて接着されていない部位をいう。
【0064】
本発明の一つの態様において、基体シートの印刷すべき面にコールドシール接着剤を塗工して乾燥して接着剤の層を形成し、その印刷すべき面に情報を印刷した後、その印刷した面の一部と他の部分が相互に接するように折り曲げ、その折り曲げた両方の接着剤の層が接するように重ねて、両者を一体に圧着するための接着部位を提供する。
【0065】
本発明の他の態様において、基体シートの印刷すべき面にコールドシール接着剤を塗工して乾燥して接着剤の層を形成し、その印刷すべき面に情報を印刷した後、その印刷した面を、コールドシール接着剤を塗工して乾燥して接着剤の層を形成した他の面と、両方の面の接着剤の層が接するように重ねて、両者を一体に圧着するための接着部位を提供する。
【0066】
ここで「基体シート」とは、先に説明した通りである。
また「コールドシール接着剤を塗工して乾燥して接着剤の層を形成した他の面」とは、本発明のコールドシール接着剤が塗工され、乾燥されて、接着剤の層が形成された他のいずれの面(通常、基体シートの面)であってもよく、例えば、そのような面は、塗工前に印刷されてもよく、又は、塗工して形成された接着剤の層の上に印刷されてもよい。具体的には、塗工→印刷、印刷→塗工、又は塗工のみの処理された面をいう。
【0067】
本明細書において「塗工」とは、コールドシール接着剤を塗工する方法として、従来から通常用いられている塗工方法であれば、限定されることなく使用できる。例えば、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、及びグラビアロールコーター等を例示することができる。更に、「塗工」には、コールドシール接着剤を適用するために用いられる方法も含まれ、例えば、塗布及び噴霧等も用いることができる。
【0068】
また、「乾燥」とは、コールドシール接着剤を乾燥する方法として、従来から通常用いられている乾燥方法であれば、特に限定されることなく使用できる、例えば、自然乾燥、温風乾燥、及び高周波乾燥等を例示できる。
【0069】
更に、「圧着」とは、従来からコールドシールに用いられている処理と同様に、接着剤を塗工して乾燥して接着剤の層を形成した2つの面同士を接触するように重ねて圧力及び必要に応じて熱を加えて2つの面を一体に接着することをいう。
従って、「圧着」とは、上記の基体シートの接着部位に圧力を加えて一体に接着することをもいう。
【0070】
更に、本発明は圧力を加えて接着された上記の接着部位を提供する。従って、接着された上記の接着部位も本発明に含まれる。
本発明のコールドシール接着剤は、従来使用されているコールドシール接着剤と同様の方法を用いて使用することができ、そのような方法を用いて、基体シートに接着部位を設けることができる。
【0071】
本発明は、20〜70重量%の樹脂(A)を含むコールドシール接着剤を用いるので、従来の天然ゴム系樹脂を接着成分として含むコールドシール接着剤を用いることに起因する問題が緩和され、好ましくは、実質的に除去され、更に、接着性と耐ブロッキング性にも優れた性能を発揮する接着部位を提供する。
【0072】
更に、そのような、接着部位を有する情報担体を提供する。そのような情報担体として、親展性葉書、封筒、及びビジネスフォームの形態が特に好ましい。
但し、ここで情報担体に用いられる基体シート、コールドシール接着剤を塗工する条件、基体シートに設けられる接着剤層の厚み、及び情報担体の圧着条件等は、目的とする情報担体(コールドシール接着剤に再剥離可能又は材料破壊となる特性を要求するいずれのものをも含む)に応じて適宜選択されるものである。
【0073】
本発明のコールドシール接着剤は、以上説明したように、接着剤層の強度、基材への密着性、耐熱性、耐UV性、及び耐オゾン性から選択される少なくとも一種が向上され、更に好ましくは、耐ブロッキング性、コールドシール接着力、及び印刷適性(オフセット印刷、グラビア印刷、及びノンインパクトプリンターによる印刷等に関する)等が良好な接着剤の層を形成することができる。これは、以下の理由によると考えられる。
【0074】
天然ゴムラテックスは、直鎖状の高分子であって、その分子構造にエチレン性二重結合が存在していることは公知である。
天然ゴムラテックスにアクリル酸エステル化合物をグラフト重合すると、天然ゴムラテックスの粒子内に架橋構造が形成される。その結果、耐熱性及び耐UV性が向上する。ところが、その架橋構造のために、所定の接着力が得られない場合があり、接着力の大きさが必ずしも十分でないこともある。
【0075】
また、従来から使用されている単量体であるメチルメタクリレートは、比較的親水性が高いので、メチルメタクリレートを天然ゴムラテックスにグラフト重合した場合、メチルメタクリレートは、天然ゴムラテックスの粒子内部だけでなく、粒子表面や溶媒中で単独重合し得ると考えられる。更に、メチルメタクリレート及びスチレンは、単量体を重合して得られる重合体のTgが100℃以上であり、高いので、メチルメタクリレートやスチレンをグラフト重合した変性天然ゴムラテックスを接着剤に用いた場合、グラフト重合した単量体の重合体のTg以上の温度に接着剤の層が熱せられた場合、接着剤の層の構造が大きく変化し得る。
【0076】
これに対し樹脂(A)に用いられる単量体は、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステルなので、疎水性が比較的高く、天然ゴムラテックスにグラフト重合した場合、天然ゴムラテックスの内部でグラフト重合している割合が、比較的高いと考えられる。従って、メチルメタクリレートより、効果的に天然ゴムラテックスを安定化することができると考えられる。更に、メチルメタクリレートより単量体が重合した重合体のTgが低いので、接着剤を塗工する際に、ある程度安定な接着剤層を形成させることができると考えられ、メチルメタクリレートをグラフト重合した変性天然ゴムラテックスのような大きな構造変化は生じ難いと考えられる。また、アクリル酸アルキルエステル化合物を用いると、単量体が重合した重合体のTgを低下させることができるが、上述したように、所定の接着力を得られないことがあり、接着力が必ずしも十分ではないこともあり得る。
【0077】
尚、上述のような理由により、本発明のコールドシール接着剤は優れた性質を有すると考えられるが、これらの理由により、本発明のコールドシール接着剤が何ら制限を受けるものではない。
【0078】
【実施例】
以下、本発明を実施及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、水性媒体を含まない部分を重量部及び重量%の基準としている。
【0079】
以下の実施例において使用した単量体を示す。
炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物として、(M1)ブチルメタクリレート及び(M3)コハク酸2−メタクリロイルオキシエチル[CH2=C(CH3)COO−C2H4−OCO−C2H4−COOH]を用いた。
他の重合可能な単量体として、(m1)メチルメタクリレート及び(m2)ブチルアクリレートを用いた。
【0080】
炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体の重合体のTgは、フォックス(Fox)の式:下記数式(1)を用いて計算して得た。
【数2】
数式(1):1/Tg=C1/Tg1+C2/Tg2+・・・+Cn/Tgn
[数式(1)において、
Tgは、重合体の理論Tg、
Cnは、n番目の単量体nが炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体中に含まれる重量割合、Tgnは、n番目の単量体nのホモポリマーのTg、
nは、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体を構成する単量体の数であり、正の整数。]
【0081】
上述の単量体のホモポリマーのTgは、文献に記載されている値を用いた。
(M1)、(m1)及び(m2)の各々のホモポリマーのTgの値については、ジェイ・ブランドラップとイー・エイチ・インマーガット(J. Brandrup and E. H. Immergut)著,「ポリマー・ハンドブック(Polymer Handbook)」,第3版,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons),1989年,第209〜277頁を参照した。また、(M3)のホモポリマーのTgの値については、三菱レイヨン(株)のアクリエステルの製品カタログ,1997年版を参照した。
(M1)、(M3)、(m1)及び(m2)の各々のホモポリマーのTgの値として、20℃、20℃、105℃及び−54℃を用いた。
【0082】
実施例1
コールドシール接着剤の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた三口フラスコに、100重量部の天然ゴムラテックス、20重量部の蒸留水、触媒として0.2重量部のt−ブチルヒドロペルオキシドを加えて攪拌し混合物を得た。一方、5重量部の(M1)ブチルメタクリレート[CH2=C(CH3)COO−C4H9]、5重量部の(m1)メチルメタクリレート[CH2=C(CH3)COO−CH3]、乳化剤として0.4重量部のポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸ナトリウムを5重量部の蒸留水に加えて攪拌して乳化液を得た。この乳化液を上述の混合物に加え、40℃に昇温した後、還元剤として0.4重量部のテトラエチルペンタミンを30分間かけて混合物に加えることによって、実施例1の変性天然ゴムラテックスを得た。尚、実施例1の炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体の重合体のTgは、57℃であった。
【0083】
100重量部の実施例1の変性天然ゴムラテックスに、100重量部の微粒子充填剤(非晶質シリカ、澱粉及び炭酸カルシウムから成る)、並びに15重量部の合成ゴムラテックスであるSBRを加えて、水系の実施例1のコールドシール接着剤を得た。従って、実施例1のコールドシール接着剤は、実施例1の変性天然ゴムラテックスを、46.5重量%含んで成る。
【0084】
コールドシール接着剤の評価
塗工シートの作製
基体シートとして130g/m2の上質紙を使用した。この上質紙の片面に乾燥後の塗工量が10g/m2と成るように、実施例1のコールドシール接着剤を塗工し、乾燥して、接着剤の層を形成した塗工シート(以下「実施例1の塗工シート」ともいう)を得た。
【0085】
コールドシール接着力の評価
実施例1の塗工シートを圧着した後、剥離する際の接着力を測定することによりコールドシール接着力を評価した。
実施例1の塗工シートを、接着剤の層が重なり合うように二つに折り返し、圧着用のメールシーラーを用いて、ローラー間のギャップを種々に変えて圧着した。この圧着した塗工シートを30分間放置した後、引張試験機を用い、300mm/分の引張り速度でT型剥離試験を行い、剥離するために要する力(コールドシール接着力)を測定した。接着力が大きすぎると紙が破れるという問題を生じ、小さすぎると接着しないという問題を生じ、これらの場合を共に×とした。接着力の大きさが、コールドシール接着剤として使用可能な適度の大きさであり、実際にコールドシール接着剤として使用した場合、問題を生じない場合を○とした。実施例1コールドシール接着剤のコールドシール接着力は、使用可能な適度の大きさであり○であった。
【0086】
耐熱性の評価
実施例1の塗工シートを、105℃のオーブン中で30分間保持することによって熱処理を行った。その後、24時間養生した塗工シートを、接着剤の層が重なり合うように二つに折り返し、圧着用メールシーラーを用いて、220μmのローラー間のギャップで圧着した。この圧着した塗工シートを30分間放置した後、引張試験機を用い、300mm/分の引張り速度でT型剥離試験を行い、剥離するために要する力を測定した。熱処理を行わなかった塗工シートのコールドシール接着力を100%としたときの、熱処理後の塗工シートのコールドシール接着力の割合(保持率)を求めた。保持率が大きいほど、耐熱性は高い。実施例1のコールドシール接着剤の耐熱性に関する保持率は、90%であった。
【0087】
耐UV性の評価
実施例1の塗工シートの接着剤の層に、15WのUVランプを用いてUVを2時間照射することによって、UV照射処理を行った。その後、24時間養生した塗工シートを、接着剤の層が重なり合うように二つに折り返し、圧着用メールシーラーを用いて、220μmのローラー間のギャップで圧着した。この圧着した塗工シートを30分放置した後、引張試験機を用い、300mm/分の引張り速度でT型剥離試験を行い、剥離するために要する力を測定した。UV照射処理を行わなかった塗工シートのコールドシール接着力を100%としたときの、UV照射処理後の塗工シートのコールドシール接着力の割合(保持率)を求めた。保持率が大きいほど、耐UV性は高い。実施例1のコールドシール接着剤の耐UV性に関する保持率は、90%であった。実施例1のコールドシール接着剤の評価結果は、まとめて表1に示した。
【0089】
実施例3
実施例1において、5重量部の(M1)ブチルメタクリレート及び5重量部の(m1)メチルメタクリレートの代わりに、1重量部の(M3)コハク酸2−メタクリロイルオキシエチル[CH2=C(CH3)COO−C2H4−OCO−C2H4−COOH]、4重量部の(m1)メチルメタクリレート及び3重量部の(m2)ブチルアクリレートを用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、水系の実施例3のコールドシール接着剤を得た。実施例3のコールドシール接着剤は、実施例3の変性天然ゴムラテックスを、46.5重量%含んで成る。
実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、実施例3のコールドシール接着剤を評価した。結果は、表1に示した。
【0090】
実施例4
実施例1において、5重量部の(M1)ブチルメタクリレート及び5重量部の(m1)メチルメタクリレートの代わりに、15重量部の(M1)を用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、水系の実施例4のコールドシール接着剤を得た。実施例4のコールドシール接着剤は、実施例4の変性天然ゴムラテックスを、46.5重量%含んで成る。
実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、実施例4のコールドシール接着剤を評価した。結果は、表1に示した。
【0091】
比較例1
実施例1において、5重量部の(M1)ブチルメタクリレート及び5重量部の(m1)メチルメタクリレートの代わりに、25重量部の(m1)メチルメタクリレートを用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、水系の比較例1のコールドシール接着剤を得た。比較例1のコールドシール接着剤は、比較例1の変性天然ゴムラテックスを、46.5重量%含んで成る。
実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、比較例1のコールドシール接着剤を評価した。結果は、表1に示した。
【0092】
比較例2
実施例1において、5重量部の(M1)ブチルメタクリレート及び5重量部の(m1)メチルメタクリレートの代わりに、25重量部の(m2)ブチルアクリレートを用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、水系の比較例2のコールドシール接着剤を得た。比較例2のコールドシール接着剤は、比較例2の変性天然ゴムラテックスを、46.5重量%含んで成る。
実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、比較例2のコールドシール接着剤を評価した。結果は、表1に示した。尚、接着力が小さすぎたので、耐熱性及び耐UV性は、評価しなかった。
【0093】
【表1】
a)天然ゴムラテックス及び単量体の量は、重量部である。b)Tgの単位は℃である。c)接着力は、使用可能な大きさの場合は○、使用可能でない大きさの場合×である。d)及びe)は、いずれも接着力の保持率で示され、単位は%である。f)未評価。
【0094】
実施例のコールドシール接着剤は、単量体の重合体のTgがいずれも80℃以下であり、接着力、耐熱性、耐UV性が共に優れ、総合的なバランスに優れている。これに対し比較例のコールドシール接着剤は、メチルメタクリレート単独で天然ゴムラテックスにグラフト重合した場合、耐熱性、耐UV性が不十分であり、ブチルアクリレート単独で天然ゴムラテックスにグラフト重合した場合、接着力の大きさが小さくて不十分であった。
【0095】
【発明の効果】
本発明に係るコールドシール接着剤は、特定の変性天然ゴムラテックスを所定量含んで成るので、形成される接着剤の層の強度が低く、基体シートへの密着性及び塗工面の表面強度が十分ではないという問題、更に、コールドシール接着力が経時もしくは印刷時の熱及び紫外線等により低下し得るという問題が緩和され、好ましくは実質的に解消されるコールドシール接着剤を提供することができる。更には、耐ブロッキング性、コールドシール接着力、及び印刷適性が良好であって、これらの特性を容易に適宜調整することができる、総合的な性能が高いコールドシール接着剤を提供することができる。
Claims (7)
- 天然ゴムラテックス100重量部当たり、炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体を0.1〜50重量部、天然ゴムラテックスにグラフト重合して得られる変性天然ゴムラテックスを、20〜70重量%含んで成るコールドシール接着剤であって、
炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物は、分枝を含有することもあるアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、置換基を含有することもあるシクロアルキル基を有するメタクリル酸シクロアルキルエステル、水酸基含有メタクリル酸エステル、カルボキシル基(塩の形態を含む)含有メタクリル酸エステル、エポキシ基含有メタクリル酸エステル又はそれらの組み合わせであるコールドシール接着剤。 - 炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物は、分枝を含有することもあるアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基(塩の形態を含む)含有メタクリル酸エステル、水酸基含有メタクリル酸エステル又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のコールドシール接着剤。
- 炭素数が6個以上のメタクリル酸エステル化合物を含んで成る単量体を重合して得られる重合体のTgが80℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコールドシール接着剤。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のコールドシール接着剤が塗工されて接着剤の層が形成された接着部位。
- 基体シートの印刷すべき面にコールドシール接着剤を塗工して乾燥して接着剤の層を形成し、その印刷すべき面に情報を印刷した後、その印刷した面の一部と他の部分が相互に接するように折り曲げ、その折り曲げた両方の接着剤の層が接するように重ねて、両者を一体に圧着するための請求項4に記載の接着部位。
- 基体シートの印刷すべき面にコールドシール接着剤を塗工して乾燥して接着剤の層を形成し、その印刷すべき面に情報を印刷した後、その印刷した面を、コールドシール接着剤を塗工して乾燥して接着剤の層を形成した他の面と、両方の面の接着剤の層が接するように重ねて、両者を一体に圧着するための請求項4に記載の接着部位。
- 請求項5又は6に記載の接着部位を有する親展性葉書。
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