JP4251274B2 - 二層構造を有する石英ガラスの管および棒の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、断面構造が二層となっている石英ガラスの管または棒の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体の製造においては、900〜1300℃の高温の雰囲気下で、熱処理、酸化、拡散、気相成長、エッチング等、様々な加熱処理がおこなわれて、高純度のシリコン単結晶から採取した基板上に集積回路が形成される。このような高温での処理がおこなわれるときの、たとえば炉心管のような加熱用容器、保持具、搬送具など、被加熱体に面したり接したりする装置や器具に、石英ガラス製のものが多く使用される。
【0003】
石英ガラスは、通常、水晶砂など天然素材を原料とし電気溶融法や酸水素火炎溶融法によって製造された天然石英ガラスが、軟化温度が高く高温領域での変形が小さく耐熱性にすぐれていて、このような装置や器具に多く用いられてきた。しかしながら、近年、集積回路の高密度化および微細化が進み、石英ガラスに含まれるわずかな重金属などの不純物による汚染が、集積回路の動作不良の原因になるなどの問題が発生し、石英ガラスの高純度化が要求されるようになってきた。
【0004】
石英ガラスの高純度化は、四塩化珪素などの精製された珪素化合物を用い、気相化学反応により石英とする合成石英を用いれば達成できる。ところが合成石英ガラスは、天然石英ガラスに比べ軟化点が低く高温で変形を生じやすく、耐熱性に劣るという問題がある。
【0005】
合成石英ガラスの低い耐熱性に対処した部材としては、炉心管のような容器の場合、内側を合成石英ガラスの管、外側を天然石英ガラスの管として二つの管を密着させた二層構造の複合管としたり、棒状のものであれば、内部の心材を天然石英ガラスとし、外側を合成石英ガラスで覆って、合成石英ガラスの耐熱性を補った二層構造のものがある。
【0006】
たとえば特許文献1には、合成石英ガラス管の外表面に、天然石英ガラスの粉末を管を回転させつつ散布し火炎により溶融付着させた、二層構造の管の発明が開示されている。耐熱性にすぐれた天然石英ガラスを外管とする、高純度の合成石英管を補強した積層構造の複合管である。しかしこの場合、耐熱性に劣る合成石英管を芯に用い、軟化温度がより高温の天然石英ガラスを、その表面に溶融密着させるので、製造中の熱変形や天然石英ガラス層の厚さ不均一を生じやすいと推測される。
【0007】
この内層管と外層管とで異なる石英ガラスを一体化してなる複合石英ガラス管の製造法として、特許文献2には、内層石英ガラス管より高い粘度を有する外層用石英ガラス管内に、両管肉厚合計の8〜40%の肉厚を有する石英ガラス内層用管を挿入重合し、該重合管をほぼ水平に保ち、これを共通軸の周りに同一速度で回転させながら、一端より他端に向けて外部加熱区域を移動させ、その操作の間は内層用管内を加圧状態に保持し、該重合両管を延伸一体化する方法が開示されている。
【0008】
この方法は、あらかじめ寸法的に特定の関係を有する2種類の石英ガラス管用意する必要があり、素材形状の選択の幅が狭く、また素材とする管に偏心や曲がりがあれば、そのまま得られた管にも残ってしまうおそれがある。さらに、内層の石英ガラス管を内圧により拡管して外層の管の内面に圧着させるので、その際に外層の管の変形も避けられない。その上、外層に用いる石英ガラスは、内層に用いるものより高い粘度を有している必要があり、外層と内層とがほぼ同じ粘性を有している場合や、逆に外層の石英ガラスの粘性が低い場合には適用できず、二層の石英ガラスの材質の組み合わせが限定される。
【0009】
また、特許文献3には、高純度合成石英ガラス管を該石英ガラス管より50℃高い徐冷点を有する石英ガラス管の内側に挿入し、両重合管を鉛直状に保持して、その下部から上方に加熱域を移動させながら、溶融部を下方に延伸する二層構造石英ガラス管の製造方法が提示されている。この特許文献3には、さらに心部と表層とが異なる二層構造の石英ガラス棒の製造方法も開示されており、高純度合成石英ガラス管の内側に、該石英ガラス管より50℃以上高い徐冷点を有する石英ガラスの棒を挿入し、これを上記同様、鉛直状に保持して、その下部から上方に加熱域を移動させながら、溶融部を下方に延伸するとしている。この徐冷温度が高いということは、それだけ耐熱性がすぐれていることを示す。
【0010】
しかしながらこの場合も、特許文献2と同様に、素材形状の選択の幅が狭いことや、寸法精度を向上させるためには、十分な対処ができず、さらにまた、徐冷点の組み合わせの限定から、内層の石英ガラスと表層の石英ガラスとの材質を自由に選定できない、といった難点がある。
【0011】
【特許文献1】
特開昭48−92410号公報
【特許文献2】
特公平7−29798号公報
【特許文献3】
特許第2610056号公報
【特許文献4】
特許第2798465号公報
【特許文献5】
特開平2002−12433号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、二層構造の石英ガラス管または石英ガラス棒の製造において、種々の径を有する管または棒を、素材の寸法を大きく変えることなく、かつ、すぐれた寸法精度で製造する方法の提供にある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、半導体製造の高温処理の際に装置や器具に用いられる、被加熱体に面したり接したりする部分は、高純度の合成石英ガラスとし、耐熱性を持たせるために外層または内層は天然石英ガラスとする二層構造の管または棒について、製造方法を合理化することや、その寸法精度を向上させること、さらにはこれら石英ガラスの材質の組み合わせを任意に変更することについて、種々検討をおこなった。
【0014】
金属などにおいては、管ではダイスとプラグを用いて引き抜きがおこなわれ、棒ではダイスを用いて引き抜きがおこなわれている。石英ガラスの場合、たとえば特許文献4に示されているように、石英ガラスロッドをその長さ軸中心として回転させながら先端を加熱軟化させ、その中心部に穿孔用プラグを押し込み、ダイスを通して加熱軟化部分を相対的には順次ロッドの後端の方へ移動させつつ引き抜きする管の製造方法がある。
【0015】
このように、ダイスとプラグを用いれば、寸法精度を向上できることに着目し、二層構造の管の製造に適用可能かどうかを検討した。すなわち、円筒形の石英ガラス管の中に石英ガラス棒を、その中心軸が管のそれと合うようにして挿入した形状のものを素材とし、中の棒の中心にプラグを押し込み、穿孔してみた。その結果、挿入された棒は穿孔されて管になり、穿孔の際の径の拡大によって外管の内面に密着させることができ、そして、プラグのある部分の外管の周囲にダイスを置けば、管の外径が制御され、プラグの径により内径を管理することができたのである。
【0016】
以上のようにして二層構造管が製造可能であり、しかも外径と内径との寸法精度を向上させ得ることがわかったので、さらに内層管と外層管の肉厚比について検討の結果、素材のそれぞれの断面積比がほぼそのまま外層管と内層管の断面積比となり、肉厚比は素材の寸法から制御できることも確認された。そして、二つの素材の材質の違いの影響を調べた結果、内層管に合成石英ガラス、外層管に天然石英ガラスというような組み合わせばかりでなく、内層管を天然石英ガラス、外層管を合成石英ガラスとすることも可能であり、さらに粘度がほぼ同じであっても、同様に複合管を製造できることがわかった。
【0017】
ダイスとプラグを用いることにより、素材の径が大きく変わっても、同じ寸法の管を製造することができ、あるいは、同じ径の素材から種々異なる寸法の管を製造できるので、製造工程の合理化が可能である。
【0018】
また、内層管となる素材は、棒ではなく管であれば、プラグとダイスを用いることにより、穿孔する場合と同様にして、二層構造管がより少ない押し込み力にて容易に製造できる。
【0019】
次に、ダイスを用いて引き抜き成形をおこなえば、より寸法精度の良好な棒が得られると考えられたので、管の中に棒を、その中心軸が管のそれと合うようにして挿入した素材により、上記の管の成形に用いた装置にて、プラグを使用せず、加熱部分を先端から後端へ移動させつつ引き抜いて二層構造の棒を作ってみた。この場合、ダイスの前から素材を圧入する速度と、ダイスの後ろからダイス通過後の材料を引き抜く速度とを調整すれば、素材の外径に対し、ダイス通過後の石英ガラスの径を大きくしたり、小さくしたりできる。そして、これらのいずれにおいても、素材の管の内径と棒の外径との間の隙間を十分小さくすれば、棒と管とを密着させることが可能であった。また、素材の管の中に挿入する石英ガラス材は棒に代えて管としても、ダイス部分の入側と出側の速度の調整により二層構造棒を作製することができた。
【0020】
上述のようにしてダイスおよびプラグにより二層構造管を製造する際、あるいはダイスを用いて二層構造棒を製造する際、素材の外管の内部を減圧にしておこなえば、外層と内層の間に発生しやすい気泡の発生を抑止でき、二つの石英ガラス間の密着性を向上させることができた。そして、二層構造管を製造する際、特許文献5に開示されているように、プラグの側面に排気できる小さな孔を多数開け、そこからプラグ保持具を通して排気するようにすると、管の内径の寸法精度がより向上することも確認された。減圧によりプラグやダイスと石英ガラスとの密着が改善されたためと思われる。
【0021】
以上のような検討結果に基づき、さらに限界条件範囲をあきらかにして、本発明を完成させた。本発明の要旨は次のとおりである。
【0022】
(1) 管状の第一の石英ガラスの中に棒状の第二の石英ガラスが挿入された素材を用い、素材の一端を加熱軟化させ、長さ方向の軸の中心部にはプラグ、その外側にはダイスを置き、加熱軟化部分にプラグを圧入するとともに、ダイス内に送り込むことにより棒状の第二の石英ガラスを穿孔して管状にして、その外側の第一の石英ガラス管に圧着させ、石英ガラス材料全体はダイスおよびプラグとは相対的な軸の周りの回転を与えつつ、加熱軟化部分を素材の軸方向に沿って移動させることを特徴とする、二層構造を有する石英ガラスの管の製造方法。
【0023】
(2) 管状の第一の石英ガラスの中に管状の第二の石英ガラスが挿入された素材を用い、素材の一端を加熱軟化させ、長さ方向の軸の中心部にはプラグ、その外側にはダイスを置いて、加熱軟化部分をダイス内に送り込むことにより、管状の第二の石英ガラスをその外側の第一の石英ガラス管に圧着させ、石英ガラス材料全体はダイスおよびプラグとは相対的な軸の周りの回転を与えつつ、加熱軟化部分を素材の軸方向に沿って移動させることを特徴とする、二層構造を有する石英ガラスの管の製造方法。
【0024】
(3) 管状の第一の石英ガラスの中に管状または棒状の第二の石英ガラスが挿入された素材を用い、素材の一端を加熱軟化させ、その加熱して軟化させる部分を素材の軸方向に沿って他端に移動させつつ、ダイスを通過させて目的の外径とする際、石英ガラス材料全体はダイスとは相対的な軸の周りの回転を与えつつ、ダイスに圧入する速度と、ダイスから引き抜く速度とを調整することにより、第一の石英ガラスを第二の石英ガラスに圧着させることを特徴とする二層構造を有する石英ガラス棒の製造方法。
【0025】
(4) 管状の石英ガラスの内部を減圧し大気圧未満としておこなうことを特徴とする上記(1)、(2)または(3)の二層構造を有する石英ガラスの管または棒の製造方法。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、模式図を用いて以下に説明する。図1は二層構造管の製造方法の、本発明における実施態様の例を示すものである。
【0027】
この図に示した装置において、石英ガラスの素材は、二層構造の外側となる管状の第一の石英ガラス4の中に、内側の管となる第二の石英ガラス5が挿入された状態であることとする。この素材の一端には、管状の第一の石英ガラス4と同じ外径をもつ円筒状ダミーシリンダ3を、もう一方の端には、成形後の石英ガラス管9と同じ外径の円筒状ダミーシリンダ10を、いずれもあらかじめ溶着しておくのが望ましい。加工される石英ガラス材は、回転させることができ、かつダイス7の位置に対し前後に走行可能なチャック2および11にて、これらダミー部分により、保持されているものとする。
【0028】
ダイス7の近傍にはヒータ6を配置し、ダイス7にはいる直前で加工を受ける石英ガラス素材が最も高い温度となるよう加熱するのがよい。石英ガラス素材は、加工をおこなう端部が加熱され、チャック2および11により、回転を与えられつつダイス7およびプラグ8に対し、図において左から右の方向へ走行する。そのときに、第二の石英ガラス5はプラグにより穿孔され、第一の石英ガラス4の内面と密着し一体化するとともに、第一の石英ガラス4はダイス7により外径を成形される。このようにして石英ガラス素材は順次加熱され、変形を受けて密着され二層構造管9となり、さらに素材末端まで加工される。
【0029】
この加工の際、石英ガラス材は長さ方向軸の周りに回転させながら、ダイスおよびプラグ部を通過させる。これは石英ガラスの周方向の加熱を均一にし、偏心を抑制し、寸法精度を向上させるためである。回転は相対的なもので、加工する石英ガラス材に対し、ダイス、プラグおよび加熱炉を回転させてもよいが、石英ガラス材を回転させる方が容易である。回転速度は遅ければ均熱効果が不十分であり、速すぎるとダイスやプラグの損耗が甚だしくなるので5〜15rpm程度であることが好ましい。
【0030】
この二層構造管の製造方法において、素材の第二の石英ガラスは棒ではなく管状であってもよい。図2にこの複合石英ガラス管製造時のダイス7およびプラグ8近傍の断面模式図を示すが、第二の石英ガラス5に棒ではなく管を用いることにより、素材をダイスおよびプラグにて加工するときの押し込み力を減少させることが可能である。また、複合管の偏肉を低減することができ、製造された管の寸法精度をより向上させることができる。
【0031】
図1および図2には、素材の第一の石英ガラス管の外径に対し、加工後の複合管の外径は拡大される場合を示しているが、図3に示すように、加工後の複合管の外径を縮小させることも可能であり、同一径とすることも可能である。このようにダイスの内径とプラグの径を選定し、入り側のチャック部2と出側のチャック部11との、それぞれの走行速度を調整することにより、同じ寸法の素材を用いて、種々の内径および外径を有する二層構造管が製造される。
【0032】
上述の二層構造管製造方法において、プラグを用いずダイスのみとして成形をおこなえば、二層構造の石英ガラス棒を製造することができる。図4に二層構造石英ガラス棒を製造する場合のダイス7近傍の断面模式図を示す。管状の第一の石英ガラス4とその中に挿入された棒状の第二の石英ガラス5とからなる素材にて、第一の石英ガラス管4の外径より大きい口径のダイス7を用い、素材のダイス7に押し込む速度を、成形された二層構造棒9の引き抜く速度より速くすれば、素材の外径よりも太径の二層構造棒が得られる。また、図5に示すように、より小口径のダイスを用い、引き抜く速度を押し込む速度より速くすれば、より細径の二層構造棒となる。
【0033】
この二層構造棒を製造するとき、第二の石英ガラスは棒である必要はなく図6に示すように石英ガラス管であってもよい。ただし、素材の各石英ガラス材の断面積の比は、二層構造棒の内層と表層との断面積比と同じなので、中心部に気泡が残らないよう、素材のダイスへの送込み速度とダイスからの引抜き速度を調整する必要がある。
【0034】
用いる石英ガラス材は、VAD法などで製造される合成石英ガラスでも、水晶粉などを原料にした天然石英ガラスでもいずれでもよく、特には限定しない。たとえば半導体の処理のように、被加熱物側に高純度の合成石英ガラスが必要で、しかも耐熱性が重要である場合、合成石英ガラスと耐熱性にすぐれた天然石英ガラスとの複合管が要求されるが、本発明の方法では、内層が合成石英ガラス、外層が天然石英ガラスの管でも、内層が天然石英ガラス、外層が合成石英ガラスの管での適用可能である。
【0035】
本発明の方法では、素材の第一の石英ガラスと第二の石英ガラスとの断面積比は、加工後の複合管または複合棒の表層部分と内層部分との断面積比と同じであるので、各層の厚さの比は素材の断面積比で調整する必要があるが、得られる二層構造管の寸法は、同じ径の素材であっても、ダイスとプラグの選定により種々のものにすることができる。二層構造棒の場合はダイスの口径の選定をおこなえば径を変えることができる。
【0036】
素材の、第一の石英ガラス管の内面と、管の中に挿入する第二の石英ガラスの棒または管の外面との隙間は、0.5〜10mmとするのが好ましい。この隙間は小さいほど望ましいが、0.5mmを下回ると、第二の石英ガラスを挿入する際、接触により疵が発生し、複合材の内層と外層との境界に疵が残るおそれがある。10mmを超えると、複合材の内層と外層との境界に気泡が残ったり、複合管の場合には内径の偏心が増大したりする。このように、二つの石英ガラス素材間の隙間が上記範囲内にあるならば、第一の石英ガラス管内側の断面形状または第二の石英ガラス外側の断面形状は、必ずしも円形である必要はなく、多角形であってもよい。
【0037】
二層構造管として密着される素材の第一の石英ガラス管内面と、その管の中に挿入する第二の石英ガラスの棒または管の外面とは、挿入前に弗化水素酸溶液にて洗浄することが好ましい。このような洗浄をおこなえば、密着性を向上させ、境界部分での気泡の発生をより確実に抑止できる。
【0038】
加工時の石英ガラスの温度は、軟化点がOH基濃度やCl濃度により大きく変化するので一概には決められず、加工時被加工材を用いて実験的に選定する必要がある。素材の加熱は、ダイスの直前で最も高い温度になり、それよりやや低下したところでダイスさらにはプラグに接して成形されるようにするのがよい。このようにすれば、二層構造管の外径、あるいは内径の寸法精度が向上する。
【0039】
加熱炉の設定温度は2000〜2700℃程度となる。このような高温に適用できるダイスやプラグの材料は、Al2O3系、MgO系またはZrO2系の酸化物、W、Moなどの金属、あるいは黒鉛等に限られるが、高温強度の点で黒鉛が最適である。ただし、酸化防止のためアルゴンなど不活性雰囲気中で加工をおこなうのが好ましい。
【0040】
以上のような二層構造管の製造時に、加工前の第一の石英管(外管)の内部、またはプラグが圧入された後の二層構造管となった管の内部を減圧すると、寸法精度の向上および、内層と外層の境界における気泡発生抑止の効果が得られる。
【0041】
これは、図1において示したように、成形加工中の管の両端に、外気の浸入を遮断するホルダー1を設置して、素材部分では第一の石英ガラス管内を排気口13に真空ポンプへの配管を接続して排気し、二層構造管となる部分では、プラグの側面に排気できる小孔を設け、プラグを保持するマンドレル12を中空とし、このマンドレルを介して排気口13から真空ポンプにて排気する。
【0042】
この石英管内の減圧は、素材側またはプラグ部分側のどちらか一方でもよく、両方実施できればさらに効果がある。このような排気をする場合の密閉された部分の減圧はわずかでも有効で、その内部の圧力は、100000Pa以下とするのがよい。望ましいのは、素材側では、30000〜60000Pa、プラグ部分側では1000〜10000Paである。二層構造棒を製造するときは、素材側の排気のみで、プラグ側の排気は不要である。
【0043】
減圧して二層構造管を製造することにより、素材の密着させられる面に付着した、気泡の原因となる水分や気体が排除され、また、ダイスに入る前の素材間の隙間が減少すると推定される。特に二層構造棒の素材として、第二の石英ガラスに管を用いるような場合、中心部の気泡の残存を低減できる。二層構造管を成形する場合、プラグ部分から排気をおこなうことにより、内径の寸法精度が向上するが、これは石英ガラス管の内面とプラグとの接触が改善されるためと考えられる。過度に減圧すると、寸法精度の低下やプラグの摩耗が激しくなり、減圧が不十分であれば、その効果が十分現れない。
【0044】
【実施例】
〔実施例1〕
高純度のSiCl4を酸水素炎にて加水分解したSiO2より得た合成石英ガラス、および天然石英ガラスから素材の管および棒を成形し、図1に示した製造装置にて、素材の第一の石英ガラス管は外径142mmとし、黒鉛製の口径160mmまたは125mmのダイス、および外径85mmまたは30mmのプラグを用いて、二層構造の複合石英ガラス管を作製した。
【0045】
第一の石英ガラス管の中に、第二の石英ガラス管または棒を装入し、あらかじめ加工を開始する端部には、目的とする成形後二層構造管の内径以上の内径を有する石英ガラスのダミーシリンダー、もう一方の端部には素材の第一の石英ガラス管と同じ外径の石英ガラスダミーシリンダーを溶着した。素材の第一および第二の石英ガラス管または棒の寸法を表1に示す。素材の各石英ガラス同士の隙間は、大きくても 9mmまでである。
【0046】
【表1】
【0047】
加熱炉の設定温度は2450℃として二層構造管を作製した。また、作製中、石英ガラス管内を減圧した場合としない場合の両方をおこなったが、減圧する場合は、素材側では内圧を50000Pa、プラグ部分では内圧を2000Paとした。
【0048】
得られた二層構造管について、長さ方向にてほぼ等間隔に10ヶ所の位置で、円周を8等分した4方向にて外径を測定し、平均値をその位置の外径とした。同じ位置で超音波肉厚計を用い、円周方向の8ヶ所で肉厚を測定し平均値をその位置の肉厚とし、外径と肉厚の差を内径とした。10ヶ所の測定値から、その管の平均外径および平均内径を、そして最大値と最小値との差を管の長さで除して外径変動および内径変動を、それぞれ求めた。また、管壁内部を目視観察し、界面における空孔の有無についての検査をおこなった。結果を表1に合わせて示す。
【0049】
表1から明らかなように、第一の石英管と第二の石英棒または管が、それぞれ合成石英であっても天然石英であっても、素材とは大きく異なる寸法の、寸法バラツキの小さい二層構造石英ガラス管が製造されている。また、管壁の二層界面に気泡のない石英ガラス管が得られていることがわかる。
【0050】
〔実施例2〕
実施例1と同様、合成石英ガラスまたは天然石英ガラスから成形した管および棒により、図1に示した製造装置にて、素材の第一の石英ガラス管は外径142mmとし、黒鉛製の口径160mm、146mmまたは125mmのダイスを用い、プラグは使用せず、二層構造の複合石英ガラス棒を作製した。
【0051】
第一の石英ガラス管の中に、第二の石英ガラス管または棒を装入し、あらかじめ加工を開始する端部には、目的とする成形後二層構造棒とほぼ同じ外径の石英ガラスのダミーロッド、もう一方の端部には素材の第一の石英ガラス管と同じ外径の石英ガラスダミーシリンダーを溶着した。素材の第一および第二の石英ガラス管または棒の寸法を表2に示す。素材の各石英ガラス同士の隙間は、9mm以下である。
【0052】
【表2】
【0053】
加熱炉の設定温度は2450℃として二層構造石英ガラス棒を作製した。この場合、ダイスに接する前の石英ガラス管内は、排気して内圧を約50000Paとした。
【0054】
得られた石英ガラス棒について、実施例1の管の場合と同様、長さ方向にてほぼ等間隔に10ヶ所の位置で、4方向の外径を測定してその位置の外径を求め、10ヶ所の測定値からその棒の平均外径を、そして最大値と最小値との差を棒の長さで除して外径変動を、それぞれ求めた。さらに、棒の内部の目視観察により、界面における空孔の有無、および第二の石英ガラス材が管の場合は中心部の気泡の有無を検査した。結果を合わせて表2に示す。
【0055】
表2から明らかなように、素材の第一の石英ガラス管の外径に対し、より大きい径またはより小さい径を有する、ダイスにて寸法を規制された二層構造石英ガラス棒が得られており、表層と内層の二層界面および中心部に気泡がないものとなっている。また、その外径寸法の変動は極めて小さく、寸法精度のすぐれた二層構造棒が得られている。
【0056】
【発明の効果】
本発明は、二層構造の石英ガラス管または石英ガラス棒の製造方法であって、素材径の選択の幅が広く、かつ寸法精度がすぐれたものを製造することができる。この方法は、たとえば、半導体製造に要求される、内層は高純度の合成石英ガラス、外層は耐熱性がすぐれている天然石英ガラスのような二層構造の石英ガラス管、または外層は合成石英、内層は天然石英の二層構造石英ガラス棒等の製造合理化に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にて使用する製造装置を模式的に示した図であり、第一の石英ガラス管内に棒状の第2の石英ガラスを挿入した素材にて、径を拡大しつつ二層構造の石英ガラス管を製造する場合を示した図である。
【図2】第二の石英ガラスに管を用いて二層構造石英ガラス管を製造する場合を示した図である。
【図3】素材の管の外径よりも小さい外径の、二層構造石英ガラス管を製造する場合を示した図である。
【図4】素材の管の外径よりも大きい外径の、二層構造石英ガラス棒を製造する場合を示した図である。
【図5】素材の管の外径よりも小さい外径の、二層構造石英ガラス棒を製造する場合を示した図である。
【図6】第二の石英ガラスに管を用いて、二層構造石英ガラス棒を製造する場合を示した図である。
【符号の説明】
1、 ホルダー
2、 送込み用チャック
3、 ダミーシリンダー
4、 素材の第一の石英ガラス管
5、 素材の第二の石英ガラス
6、 ヒーター
7、 ダイス
8、 プラグ
9、 二層構造の石英ガラス管または石英ガラス棒
10、 ダミーシリンダー
11、 引抜き用チャック
12、 マンドレル
13、 減圧用排気口
Claims (4)
- 管状の第一の石英ガラスの中に棒状の第二の石英ガラスが挿入された素材を用い、素材の一端を加熱軟化させ、長さ方向の軸の中心部にはプラグ、その外側にはダイスを置き、加熱軟化部分にプラグを圧入するとともに、ダイス内に送り込むことにより棒状の第二の石英ガラスを穿孔して管状にして、その外側の第一の石英ガラス管に圧着させ、石英ガラス材料全体はダイスおよびプラグとは相対的な軸の周りの回転を与えつつ、加熱軟化部分を素材の軸方向に沿って移動させることを特徴とする、二層構造を有する石英ガラスの管の製造方法。
- 管状の第一の石英ガラスの中に管状の第二の石英ガラスが挿入された素材を用い、素材の一端を加熱軟化させ、長さ方向の軸の中心部にはプラグ、その外側にはダイスを置いて、加熱軟化部分をダイス内に送り込むことにより、管状の第二の石英ガラスをその外側の第一の石英ガラス管に圧着させ、石英ガラス材料全体はダイスおよびプラグとは相対的な軸の周りの回転を与えつつ、加熱軟化部分を素材の軸方向に沿って移動させることを特徴とする、二層構造を有する石英ガラスの管の製造方法。
- 管状の第一の石英ガラスの中に管状または棒状の第二の石英ガラスが挿入された素材を用い、素材の一端を加熱軟化させ、その加熱して軟化させる部分を素材の軸方向に沿って移動させつつ、ダイスを通過させて目的の外径とする際、石英ガラス材料全体はダイスとは相対的な軸の周りの回転を与えつつ、ダイスに圧入する速度と、ダイスから引き抜く速度とを調整することにより、第一の石英ガラスを第二の石英ガラスに圧着させることを特徴とする二層構造を有する石英ガラス棒の製造方法。
- 管状の石英ガラスの内部を大気圧未満に減圧して製造をおこなうことを特徴とする請求項1、2または3に記載の二層構造を有する石英ガラスの管または棒の製造方法。
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