JP4250704B2 - 乾式免疫測定試薬 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料中に存在する特定の抗原を定量又は定性分析するための乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
試料中の免疫測定方法としては、交差免疫電気泳動法(CIE)、二次元免疫拡散法(MO)、受身赤血球凝集反応(PHA)、免疫粘着赤血球凝集反応(IAHA)、酵素免疫測定法(EIA)、固相放射免疫測定法(RIA)等が知られている。現在では、主に酵素免疫測定法(EIA)が用いられている。このうち、CIE及びMOは測定時間が長く、感度も低い。また、PHA及びIAHAは安定した抗原被膜赤血球を用意することが困難であり、試薬も高価で、しかも半定量である。一方、EIA及びRIAは、感度の点ではMOの5千〜5万倍も高いが、試薬も高価で、測定に数日かかるという欠点を有している。
【0003】
これらの問題を解決するために、特開昭63−309864号公報には、表面に親水性の抗体又は抗原を固定化し、内部に親水性の標識物質(例えば蛍光物質)を封入したリポソーム試薬を用いた測定方法が提案されている。この方法はLILA(リポソーム・イムノライシス・アッセイ)と称され、前記リポソーム試薬はリン脂質及び糖脂質のうち少なくともいずれか一方を組成とするものが用いられることが多い。
【0004】
このLILAは以下のようなものである。すなわち、抗原又は抗体又は補体が存在する試薬中にリポソーム試薬を加え、これと別に補体又は膜を侵襲出来る物質を加える(補体測定の場合は不要であり、試料中に補体成分が含まれる場合には別途補体を加えても良いし加えなくても良い)と、抗原−抗体反応及びそれに伴う補体又は膜を侵襲出来る物質の活性化が起こり、補体又は膜を侵襲出来る物質の膜障害作用によってリポソームが破壊され、封入されていた標識物質が流出する。この流出した標識物質の量と、試料中の被検物質、すなわち抗体又は抗原又は補体との間には相関関係があるので、流出した標識物質を所定の分析方法(例えば蛍光分析)によって定量することにより、被検物質を定量することが出来る。従って、このLILAによれば前記の問題は解決される。
【0005】
しかしながら、このLILA法は溶液系の反応であるため、試料や試薬を順次加えていくという操作が必要で、自動化を行うためには分注装置を備えた大規模装置を必要とする。廃液が出てしまうことも問題である。
【0006】
このような自動化の装置を必要としない測定方法としては、生化学検査(ヘモグロビン、総タンパク、総コレステロール、血糖、尿酸、カリウム、GOT、GPT、ALP、LDH、アミラーゼ)においては専用固相試薬に試料を滴下し反応させたのち、光学的,電気的手段により測定する、所謂「ドライケミストリー」による測定法が確立されている。しかし、ドライケミストリーでも、抗体や抗原を測定する際には、測定しようとする抗体又は抗原のみを分離する操作(B/F分離)を行う必要があり、ドライケミストリーの層構造体でB/F分離を実現することは容易ではなく、なされたB/F分離も不十分な分離となるのでバックグラウンドが極めて高くなるという欠点を有していた。
【0007】
上記の課題を解決すべく、特開平8−211062号公報では、抗体結合リポソームと補体を含有させた液と、ゼラチンや寒天などのゲル状物質とを混合し、基材(スライドガラス)上に薄膜を形成させた層状構造体の免疫測定試薬を得ている。しかし、この免疫測定試薬は、保存安定性に問題があることが判明した。これは、試薬の構成成分であるリポソーム及び補体の、ゲル溶液中での不安定性に起因するものであることが判明した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような実情に鑑みなされたものであり、B/F分離をしなくても被検物質の極めて高い精度を有し(つまりS/N比が大きく)、しかも保存安定性に優れた免疫測定試薬を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬は、内部に標識物質を封入するとともに抗体を結合してなるリポソームと、補体とを内包し、凍結乾燥された多孔性構造体からなり、前記多孔性構造体が、水不溶性多孔質マトリックスであることを特徴とする。
【0010】
リポソームを内包させた多孔性構造体においては、LILA法の特徴である均相反応は多孔性構造体の内部で起こり、標識物質がリポソーム中より拡散するので、これまでのドライケミストリーの免疫測定のようにバックグラウンドが高くなることがなく、充分なS/N比が得られた。さらに本発明者らが鋭意工夫を重ねたところ、リポソームと補体を多孔性構造体の内部に凍結乾燥させることによって、保存安定性の良好な乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬を得ることができたのである。
【0011】
しかも意外なことに、本発明は乾燥した多孔性構造であるために、試料検体液を滴下した際に毛細管現象が強力に作用し、検体の粘性に起因する展延性の影響を受けにくい効果もある。
【0012】
また、内部に含む標識物質の種類によってリポソームに複数の種類があり、それぞれ異なる種類のリポソームにはそれぞれ異なる抗体が結合してなるリポソームと、補体とを内包し、凍結乾燥された多孔性構造体からなる乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬は、測定する際に、複数の異なる標識物質を別個に検出することで、複数の被測定物を一度に測定できる。
【0013】
また更に、リポソームに結合している抗体と対応抗原は同じだがエピトープが異なる第2の抗体を更に含むこともできる。このようにすることで、効率的な補体反応を促すことができる。第2抗体を添加することによる効率的補体反応に関しては、「製薬工場」,7(5),421−425(1987)に詳しい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明において、リポソームはリン脂質や糖脂質等を主要構成成分とするものであれば、従来使用されている一般のものでよい。
【0015】
リン脂質の例としては、動物や微生物などの細胞膜に広く存在するリン脂質、例えばホスファチジルエタノールアミン類、ホスファチジルコリン類、ホスファチジルセリン類、スフィンゴミエリン類などの各種リン脂質が挙げられる。もちろん、天然の卵黄、牛脳や大豆などから得られるホスファチジルコリンも適用できる。また、古細菌に属する好熱性菌脂質の天然の抽出物又は人工合成物も適用できる。
【0016】
糖脂質の例としては、リポソームを形成するものであれば特に限定されず、スフィンゴ糖脂質でもグリセロ糖脂質であってもよい。このようなグリセロ糖脂質としてはマンノシルホスファチジルイノシトール類、ガラクトシルジアシルグリセロール類、スルフォキノボシルジアシルグリセロール、グリコシルジアシルグリセロール、セミノリピドなどが、スフィンゴ糖脂質としてはマンノシルグルコシルセラミド、マンノシルイノシトールホスホリルセラミド類などが挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0017】
これらリン脂質と糖脂質は、単独又は混合して用いてもよい。
【0018】
本発明に用いられるリポソームの形状は、多重層リポソーム(以下、MLVと記す)、小さな一枚膜リポソーム(以下、SUVと記す)、大きな一枚膜リポソーム(以下、LUVと記す)の何れであってもよい。また、これらリポソームは公知の方法で製造することができる。
【0019】
標識物質を封入したリポソームの調製法としては、従来公知のリポソーム調製法を応用することができる。たとえば以下の(1)から(6)などの種々の方法を利用することができる。
【0020】
(1)有機溶媒に溶解したリン脂質を容器に入れ、減圧下にエバポレータまたは窒素ガスの吹きつけにより溶媒を除去して薄い脂質膜を形成させ、次いで、あらかじめ封入したい標識物質を含む適当な塩類溶液やあらかじめ標識物質を溶解した水溶液を加え振盪する方法やボルテックスミキサーで振盪撹拌する方法、
【0021】
(2)前記(1)の方法で得たMLVをさらに超音波発振装置で超音波処理してSUVを作製する方法。
【0022】
(3)有機溶媒に溶解したリン脂質を急激に標識物質を含む塩類溶液と混和する方法。
【0023】
(4)エーテルに溶解したリン脂質をエーテルの沸点より高くした、あらかじめ標識物質を溶解した水溶液にゆっくりと吹き出させる方法。
【0024】
(5)ホスファチジルセリン単独あるいは等量のホスファチジルセリンとコレステロールからなるリポソームを超音波発振装置で超音波処理してSUVを作成し、カルシウム処理の後、標識物質を含む塩類溶液とキレート剤を加え、LUVを作成する方法。
【0025】
(6)脂質を含む有機溶媒に標識物質を溶解した水溶液を加え超音波発振装置で超音波処理した後、ロータリーエバポレータで有機溶媒を除去し逆相リポソームとする方法。
【0026】
リポソーム内に封入される標識物質は、リポソーム外に溶出された際に定量可能な物質でなければならない。このような物質としては、放射性同位元素,蛍光性化合物,発光性化合物,吸光性化合物(水溶性色素など),酸化酵素の作用により分解され酸素消費あるいは過酸化水素成形をもたらすグルコース等の糖類,イオン性化合物,金属イオン,補酵素類,ラジカル化合物,酵素免疫測定法などで用いられる酵素類等が好ましい。
【0027】
リポソームの内部に含ませる標識物質の種類によってリポソームを分別し、それぞれ異なる種類のリポソームにはそれぞれ異なる抗体が結合してなるリポソームを利用して、測定時に複数の異なる標識物質を別個に検出することで複数の被測定物を一度に測定することができるが、このような場合は、例えば色素ならば異なる吸収波長を有させたり、単純色素と蛍光色素を併用したり、放射性標識と可視性標識を併用したり、標識物質を別個に検出できることが必須となる。
【0028】
リポソーム上に感作させる抗体は、被検目的に応じて適宜選択される。例えば、Anti−HBsAb、Anti−HBcAb、Anti−HCV、Anti−HlVAb、ヒューマン・Tセル・ロイケミア・ウイルス−I型(HTLV−I)、ヒューマン・Tセル・ロイケミア・ウイルス−II型(HTLV−II)などのウイルス関連等の抗体が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0029】
抗体のリポソームへの結合は、公知の方法に従えばよい。例えば、レスルマン(Lesrman)らの方法(ネイチャー(Nature)誌、288、604〜606、1980)、マルチン(Martin)らの方法(バイオケミストリー(Biochemistry)誌、20、4229〜4238、1981)などにより行われる。
【0030】
多孔性構造体としては、濾紙,ニトロセルロース,ガラスフィルター,ポリエーテルスルホンなどの水不溶性多孔質マトリックスが挙げられる。
【0031】
多孔性構造体の内部で抗体感作リポソームを凍結乾燥させる手法としては、抗体感作リポソームを含む水溶液を多孔性マトリックスへ含浸させた後、一般的な凍結乾燥器にかければよい。
【0032】
また、本発明の乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬の基本的能力を下げない程度に、検体試料の点着側の表面へさらに全血分離膜を付帯させることで、試料として全血を使用することができる。
【0033】
本発明の乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬は、例えば下記の方法で製造される。
【0034】
まずリン脂質及び/又は糖脂質をフラスコに入れ、溶媒を加えて反応させた後、溶媒を留去し、吸引乾燥する。しかる後に壁面に薄膜が形成されたフラスコ内に所定の標識物質の水溶液を加え、密栓をして振盪し、標識物質封入リポソームを得る。さらにこのリポソームにSUVの形状とする操作を加える。一方、抗体と架橋剤とを緩衝液中で反応させて架橋剤を導入し、しかる後、必要に応じ、架橋基を還元する試薬(例えばジチオスライトール;DTT)と反応させて、修飾抗体を得る。
【0035】
標識物質封入リポソームと修飾抗体とを緩衝液中で反応せしめることにより、本発明の測定試薬である抗体感作リポソームが得られる。かかる測定試薬は、通常、標識物質を封入し、表面に結合された抗体を担持したリポソームとして得られる。
【0036】
上記製造法における架橋剤としては、例えば、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、N−スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)アセテート(SMPA)、N−スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)プロピオネート(SMPP)、N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミド(GMBS)、N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミド(EMCS)、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のジアルデヒド等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0037】
最後に、これら標識物質が封入されて表面に抗体を結合担持したリポソームを、多孔性構造体に内包させる。多孔性構造体への内包の形態は、上記リポソームを濾紙,ニトロセルロースなどの水不溶性多孔質マトリックスの物質へ含浸させ、乾燥させる。場合により、プラスチックやガラスのような支持体上へ水不溶性多孔質マトリックスを固着し、強度を持たせてもよい。さらに、標識と反応させるための基質,酵素,補酵素,界面活性剤,その他の薬品類を、必要に応じて成形時にリポソームと共に多孔性構造体に内包して凍結乾燥させても良い。
【0038】
また、再水和後のリポソームの崩壊率を抑えるために、糖類,水溶性高分子などの添加剤を添加してもよい。添加剤の具体例としては、トレハロース,BSA,グリセリン,オリゴペプチドなどが挙げられる。
【0039】
このようにして調製した多孔性構造体からなる乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬を用いて、被検体中の抗原を測定するには、該多孔性構造体上に被検試料を滴下すればよい。この滴下により反応量に比例してリポソーム内から標識物質が放出されてくるので、この標識物質に応じた分析方法(例えば、標識物質が蛍光物質であれば、蛍光分析法)により定量を行い、例えば、予め作成した検量線により、試料中の抗原の量を測定することができる。
【0040】
この測定操作において使用する補体は特に限定されないが、通常、モルモット血清が用いられる。ウサギ、マウス、ヒト等の血清を使用してもよい。
【0041】
また、測定方法としてエンドポイント法で測定しても良いが、レート法で測定しても良いことは言うまでもなく、測定方法には特に限定されない。
【0042】
さらに、多孔性構造の上面、下面の反射光を用いても良いし、透過光を用いてもよく、特に限定されない。多孔性構造の強度を得るために支持体を採用した場合には、支持体の条件として光透過性であることが望ましい。
【0043】
【実施例】
次に本発明を実施例を挙げて更に詳細に説明する。
【0044】
本実施例では、ウサギ抗ヒトCRP抗体(以下、CRP抗体と記す)を感作したリポソームを調整、濾紙に含浸させて凍結乾燥させたものを多孔性構造体とし、それを用いてヒトCRP(以下、CRPと記す)の測定を行った。
【0045】
(1)蛍光色素封入したリポソームの調製
1μmolDPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)、1μmolコレステロール、ジチオピリジル−ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DTP−DPPE)/ブロモアセチル(BrAc)−DPPEのクロロフォルム溶液をロータリーエバポレーターで乾燥し、脂質薄膜に調製した。0.1mol/lのカルボキシフルオレスセンを添加して、50℃で1分間インキューベーションした後、脂質膜を激しくポルテックス混合した。内包されなかったカルボキシフルオレスセンを、3万Gで20分間遠心分離することで除いた。得られたペレットをHEPES緩衝液にて懸濁し、使用するまで4℃で保存した。
【0046】
(2)抗体の修飾(Fab’の調製)
1mg/mlペプシン(0.1mol/L酢酸緩衝液)1mlに抗CRP抗体(OY−Medix社)10mgを混合し、37℃、10時間インキューベートした。2mol/lトリス−塩酸緩衝液25μl及び0.5mol/l水酸化ナトリウムを加えて、反応を停止させた後、反応混合物を0.22μmのミリポアフィルターで濾過し、TSK−ゲル濾過カラムで精製し、アミコンのCentriprepで濃縮した。
修飾した抗体の最終濃度は0.1MPBS(pH6.0)で約3g/lであった。これに2−メルカプトエチルアミン−ハイドロクロライドを加えて、37℃で30分間インキュベートした。この反応液をゲル濾過カラム(PD−10,ファルマシア社)で精製し、Fab’溶液を得た。Fab’は約1g/lであった。
【0047】
(3)リポソームへのFab’の結合
先に得られたリポソーム縣濁液とFab’溶液をゆっくり撹拌しながら窒素下で室温で混合し、20時間反応させた。リポソームを3万Gで20分間遠心することで収集し、ゼラチンバルビタール緩衝液(GBS)2mlに再縣濁し、冷蔵庫に保存した。
【0048】
(4)リポソームを内包する多孔性構造体の作製
上記(3)で得た抗CRP抗体結合リポソームを、5%トレハロース、1%BSA、補体価1〜3CH50のモルモット血清補体を含んだ0.05M−PBS緩衝液(pH7.0)に混合した。濾紙GA−100(東洋濾紙製)を、上記緩衝液500mlに対して5枚浸漬させて、10分後に引き上げ、凍結温度−40℃、真空度0.05〜0.028Torr、乾燥時間23.5時間の条件で凍結乾燥させ、乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬を得た。得られた乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬は、窒素封入した容器に保存した。
【0049】
(5)CRPの測定
上記試薬の多孔性構造体に、CRPを含む緩衝液(0.05MのGBS:pH7.0)を倍々希釈したものを10μl添加し、室温で30分間反応させた後、蛍光光度計(パーキンエルマー社製 LS50B)を用いて、励起波長490nm、蛍光波長520nmの波長で、リポソームからのカルボキシフルオレスセン流出量を測定した。
【0050】
対照のための100%流出のカルボキシフルオレスセン量は、10%トリトン−X100を20μl添加することで測定した。各測定値は、カルボキシフルオレスセンの流出の割合で示した。図1に各流出率と抗原濃度を示す。
【0051】
次に、前記本発明の乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬の保存安定性試験を行った。
【0052】
前記本発明の乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬と、本発明と同様の試薬組成を多孔性構造体に含有させる代わりに5%ゼラチン中に混合してスライドガラス上に0.5mmの塗布厚さで薄膜を形成させた乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬とを用意し、両者の保存安定性の比較試験を行った。比較の手段として、それぞれの乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬を25℃で90日間保存における、リポソームの経時的な崩壊率を測定した。崩壊率の測定方法は、それぞれの乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬に10μlの0.01MPBS緩衝液を添加し、その蛍光強度を測定した。一方、100%のリポソーム崩壊として、10μlの10%トリトンX−100溶液を加え、その蛍光強度を用いた。その結果を図2に示す。
【0053】
次に、異なった蛍光色素を封入した2種のリポソームを内包する多孔性構造体を利用し、複数の被測定物を一度に測定する試験を行った。
【0054】
実施例1におけるカルボキシフルオレスセンをC−フィコシアニンへ変更し、抗CRP抗体を抗ヒトミオグロビン抗体(日本バイオテスト社)へ変更する以外は同一の手法で、抗ミオグロビン抗体結合リポソームを得た。
【0055】
5%トレハロース、1%BSA、補体価1〜3CH50のモルモット補体、実施例1と同一の抗CRP抗体結合リポソーム(カルボキシフルオレスセンを内封入)、及び上記抗ミオグロビン抗体結合リポソーム(C−フィコシアニンを内封入)を含んだ0.05MPBSの緩衝液(pH7.0)に混合した。濾紙GA−100(東洋濾紙製)を、上記緩衝液500mlに対して5枚浸漬させて、10分後に引き上げ、凍結温度−40℃、真空度0.05〜0.028Torr、乾燥時間23.5時間の条件で凍結乾燥させ、乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬を得た。得られた乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬は、窒素封入した容器に保存した。
【0056】
CRP及びミオグロビンの測定:
上記試薬の多孔性構造体に、CRPとミオグロビンを含む緩衝液(0.05MのGBS:pH7.0)を倍々希釈したものを10μl添加し、室温で30分間反応させた。蛍光光度計(パーキンエルマー社製 LS50B)を用いて、励起波長490nm、蛍光波長520nmの波長及び励起波長615nm、蛍光波長647nmで、リポソームからのカルボキシフルオレスセンとC−フィコシアニン流出量を測定した。100%流出のカルボキシフルオレスセン量とC−フィコシアニン量は10%トリトンX−100を20μl添加することで測定した。各測定値は、カルボキシフルオレスセンとC−フィコシアニンの流出の割合で示した。測定結果を図3に示す。
【0057】
【発明の効果】
以上詳説したように、本発明の多孔性構造体からなる保存安定性の良い乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬を用いることにより、被検体中の抗原の定量又は定性分析を簡単な操作で、安価かつ短時間に、高い検出感度で精度よく行うことができ、その自動化も極めて容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】抗ヒトCRP抗体感作リポソームを用いてヒトCRPの測定を行った場合における、標識流出率と抗原濃度の関係を示す図である。
【図2】リポソームの崩壊率と、本発明の乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬の保存日数との関係を示すグラフである。
【図3】ヒトCRPとミオグロビンを一度に測定した場合における、標識流出率と抗原濃度の関係を示す図である。
Claims (6)
- 内部に標識物質を封入するとともに抗体を結合してなるリポソームと、補体を内包し、凍結乾燥された多孔性構造体からなり、前記多孔性構造体が、水不溶性多孔質マトリックスであることを特徴とする乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬。
- 内部に含む標識物質の種類によってリポソームには複数の種類があり、それぞれ異なる種類のリポソームにはそれぞれ異なる抗体が結合されていることを特徴とする、請求項1記載の乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬。
- リポソームに結合している抗体と対応抗原は同じだがエピトープが異なる第2の抗体を更に含む、請求項1または2記載の乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬。
- 前記水不溶性多孔質マトリックスが、濾紙、ニトロセルロース、ガラスフィルターおよびポリエーテルスルホンからなる群から選択される少なくとも一つの水不溶性多孔質マトリックスである請求項1から3のいずれか一項に記載の乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬。
- 前記水不溶性多孔質マトリックスを、支持体上に固着させた請求項1から4のいずれか一項に記載の乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬。
- 更に全血分離膜を付帯させた請求項1から5のいずれか一項に記載の乾式リポソーム・イムノライシス・アッセイ試薬。
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