JP4248724B2 - 光ファイバセンサの設置方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、崩壊の可能性のある不安定地層や、変位の可能性のある岩石等の自然物、あるいは擁壁等である監視対象物の変位や変形を光により監視する光ファイバセンサの設置方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、岩盤崩壊や土砂崩れ等の防災管理は、これら岩盤崩壊、土砂崩れ等の発生する可能性の高い領域(以下「監視対象領域」)の巡視等を頻繁に行って状況を把握するといった対策が従来から採られているが、これでは、巡視そのものが危険であること、移動に時間が掛かるため情報の伝達が遅く警報の発報までに時間が掛かること等、不都合が多い。このため、近年では、安全かつ迅速な監視を行える技術として、電気式の各種センサを用いたものが一般的になっている。前記電気式センサとしては、例えば、歪み計、傾斜計、地震計、土圧計、伸縮計(歪み計あるいは差動トランス式センサを応用したもの)等であり、監視対象領域に設置した電気センサと、監視対象領域から離れた安全な場所に設置した監視所との間を電気的に接続することで、監視所にて監視対象領域の監視を安全に行える監視システムを構築できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記電気式センサでは、以下のような問題点がある。
すなわち、
(1)落雷等による誘導電流や、付近の土木工事によって発生する振動等の外部撹乱要因の影響を受けやすく、故障しやすい、
(2)設置位置近傍のポイント観測にすぎず、また単品コストが高いため、広大な監視対象領域をくまなく監視するには多数設置を余儀無くされ、コストが上昇する、また、設置も簡単では無く、手間がかかる、
(3)電源を必要とするため、設置場所が電源を確保できる場所に限定される、
(4)前記(3)に鑑みて、バッテリーを搭載するとなると、重くなり、搬送性が低下する、
(5)データ伝送速度が(光よりも)遅いため、多数のセンサのデータを処理するには手間と時間が掛かる、
(6)通電部等、使用部品には金属部品が多く、これら金属部品の耐食性に鑑みて製品寿命が比較的短いため、長期の設置には向かない
等がある。
また、防災のために監視設備の設置を特に必要とする地域は、山間部等の気象変化の激しい地域であることが多く、このような監視対象領域では、特に前記(1)の落雷による誘導電流や、(6)の製品寿命等の問題点が顕著となる。
【0004】
ところで、近年、光ファイバ長手方向の連続的な光損失分布を観測する方法として、光ファイバの後方散乱現象の一つであるレイリー散乱光の強度が光ファイバの光損失に依存することを利用した手法が開発、実用化され、様々なセンシングの用途に応用されつつある。しかし、河川堤防等の各種堤体、地盤斜面、岩盤、橋梁(道路や鉄道の高架等も含む)等の建造物等の変位や変形を効率的に計測できる光ファイバセンサは少ない。すなわち、光ファイバセンサは、河川堤防等の各種堤体、地盤斜面、岩盤、橋梁等の建造物等の監視対象物に対する取り付け等の施工性に優れるとともに、監視対象物の変位や変形を光ファイバの曲げや破断に効率良く作用させる構造であることが求められており、このような条件を満たす適当なものが無かった。さらには、低コスト化の要求もあり、これら条件を満たす光ファイバセンサの開発が必要であった。
レイリー散乱光の損失を観測することによって監視対象物の変位を検出する光ファイバセンサとしては、監視対象物間の相対変位、あるいは、この監視対象物の変位監視の基準位置となる安定地盤等である監視基準物と監視対象物との間の相対変位を光ファイバの変形力として作用させて、この光ファイバに曲げ等の変形や破断を生じさせる構成のものがある。しかしながら、このような光ファイバセンサは、一対の監視対象物の両方、あるいは監視基準物と監視対象物の両方にわたって組み立てる必要があるため、例えば、地盤斜面や岩盤等のように表面の凹凸が激しい箇所に組み立てることが非常に困難であり、これが普及の妨げになっていた。橋梁、高架、建物等の各種人工構造物に対する設置でも、取付面の状態や、さまざま突起物の存在等により設置が困難あるいは不可能なケースが多々生じていた。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、取付対象物の表面の状態、形状等に幅広く対応して、目的位置への光ファイバセンサの設置を可能とし、しかも設置作業性を向上できる光ファイバセンサの設置方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の設置方法を適用する光ファイバセンサは、崩壊の可能性のある不安定地層、変位の可能性のある岩石等の自然物、あるいは擁壁などの人工構造物等である監視対象物からなる一対の取付対象物に対して、あるいは、安定岩盤等からなる監視基準物と前記監視対象物とからなる一対の取付対象物に対して個別のセンサ固定板によって別々に取り付けられる一対のセンサブロックを備え、各センサブロックに設けられた光ファイバ押圧部が両取付対象物が存在する監視対象領域に布設された光ファイバの長手方向の異なる位置に配置され、前記取付対象物間の相対変位によって両センサブロック間が相対変位することで、各センサブロックの光ファイバ押圧部が前記光ファイバを両側から逆向きに押圧して該光ファイバに曲げ等の変形や破断等を生じさせる構成のものである。
【0007】
前記光ファイバセンサは、光ファイバを光パルス試験器に接続し、光ファイバセンサの設置箇所の異常、すなわち、崩壊の可能性のある不安定地層、変位の可能性のある岩石等の自然物、あるいは擁壁などの人工構造物等である監視対象物の変位や変形の発生を監視する(異常の監視)。前記異常の監視は、光ファイバセンサに組み込まれている光ファイバに、曲げ変形、あるいは該光ファイバの弾性限度を超える曲げによって生じた破断を生じたことを検出することでなされる。監視対象物の変位や変形に伴い複数のセンサブロック間に相対変位が生じると、複数の押圧片間で光ファイバに曲げ変形が与えられる。光ファイバの曲げ変形や破断は、光パルス試験器から光ファイバへの入射光の戻り光の観測結果から検出することができる。光パルス試験器は、光ファイバに対して試験光の入射と戻り光の観測とを行う(光試験)。
【0008】
周知の通り、光ファイバに光を入射すると、当該光ファイバの破断箇所やコネクタ接続箇所でのフレネル反射光や、光ファイバの密度等の微小な不均一による光の散乱(レイリー散乱)によって生じた後方散乱光が光ファイバの入射端に戻ってくることが知られており、光パルス試験器(いわゆるOTDR)から光ファイバへ試験光を入射してから戻り光を受光するまでの時間(以下、「戻り時間」)を計測することで、破断点の位置(光パルス試験器からの距離)を把握できる。光ファイバからは、通常、レイリー散乱光の後方散乱光等の光ファイバ固有の光散乱等による戻り光のみが観測されるが、例えば、この光ファイバが破断すると、光パルス試験器から破断点までのレイリー散乱光の後方散乱光と、破断点からの強いフレネル反射光とが光パルス試験器にて観測され、破断点以後の光ファイバからのレイリー散乱光の後方散乱光が観測されなくなる。これにより、光ファイバの破断が検出されるとともに、フレネル反射光の戻り光の戻り時間から破断点の位置を把握することができる。光ファイバが破断されなくても、光ファイバが変形する場合、例えば、光ファイバが急激に折り曲げられ、この折れ曲がり箇所での光損失の増大を観測することで、折れ曲がり箇所を検出することが可能である。また、光ファイバの断面方向への潰れ等によっても、光損失が増大が観測される。すなわち、光パルス試験器にて戻り光の強度が急変化が観測される箇所(光パルス試験器への戻り光の戻り時間)から、光ファイバの折れ曲がり等の変形箇所の存在や、その位置を把握できる。
【0009】
本発明に係る光ファイバセンサは、崩壊の可能性のある不安定地層、変位の可能性のある岩石等の自然物、あるいは擁壁などの人工構造物等である監視対象物の変位や変形の発生によって、光ファイバに曲げ変形や破断を生じさせる。したがって、光パルス試験器により、前記光ファイバの曲げ変形や破断等を検出することで、監視対象物の変位や変形等を検出することができる。光ファイバの曲げ変形や破断は、光ファイバの破断点からのフレネル反射光の観測や、損失増大の観測によって検出される。
【0010】
例えば、光ファイバセンサの光ファイバが破断して、破断点からのフレネル反射光が観測されたり、折れ曲がり箇所等での損失増大が観測されたり、破断点以後の光ファイバからの戻り光が観測されなくなると、この光ファイバセンサを設置した監視対象物の変位、変形、崩壊等が検出される。また、光ファイバに複数の光ファイバセンサを設置した場合や、光ファイバセンサが設置された光ファイバを光パルス試験器に複数本接続した場合には、フレネル反射光の戻り時間等から、光ファイバセンサ毎に、光ファイバの曲げ変形位置を把握することも可能であり、これにより、監視対象物の変位、変形、崩壊等の発生位置を把握することが可能である。破断点における破断された光ファイバの断面形状によっては、充分な強度のフレネル反射光が発生しないことがあるが、破断点以後の光ファイバからの戻り光の有無や、損失増大等をも観測することで、破断点の有無や、光ファイバ変形箇所の有無を確実に把握できる。
このように、本発明に係る光ファイバセンサでは、光ファイバの曲げ変形箇所や破断箇所等を検出することで、監視対象物の変位、変形、崩壊等の発生を検出でき、しかも、光パルス試験器への戻り光の戻り時間等から光ファイバの曲げ変形箇所や破断箇所等の位置を計測することで、変位、変形、崩壊等の発生箇所を把握できる。
【0011】
ところで、本発明に光ファイバセンサでは、一対のセンサブロックを、一対の監視対象物、あるいは、安定岩盤等からなる監視基準物と監視対象物とに対して個別に取り付けるとともに、各センサブロックに設けた光ファイバ押圧部を光ファイバの長手方向の異なる位置に配置した構成であり、監視対象物と一体的に変位したセンサブロックの光ファイバ押圧部によって光ファイバが両側から逆向きに押圧されることで、当初曲げ等の変形が与えられていない光ファイバに曲げ等の変形や破断を生じさせるようになっている。つまり、光ファイバは、当初、曲げ等の変形が与えられていない直線状にセットされ、この状態では、光試験の結果、当該光ファイバセンサにおける光ファイバの曲げ等の変形を示す損失増大やフレネル反射光は観測されない。光ファイバ監視対象物の変位に伴って変位した一方または両方のセンサブロックの光ファイバ押圧部が光ファイバを側方から押圧すると、光ファイバの長手方向に隣り合う光ファイバ押圧部によって光ファイバが逆向きに押圧されることになり、光ファイバ押圧部間で光ファイバに曲げ等の変形や破断が生じる。
【0012】
このような構成の光ファイバセンサでは、監視対象物や監視基準物に対してセンサブロックを取り付けるにしても、各センサブロックの光ファイバ押圧部を、光ファイバに対して曲げ等の変形や破断を生じさせることができる位置に配置する必要がある(条件1)。例えば、光ファイバの長手方向の異なる位置に配置された光ファイバ押圧部間の離間距離が大きすぎれば光ファイバに曲げ等の変形や破断を生じさせることができない。また、各センサブロックの光ファイバ押圧部によって光ファイバに曲げ等の変形や破断を確実に生じさせるには、単に光ファイバ長手方向での各光ファイバ押圧部の配置位置の調整のみならず、監視対象物の変位に伴う光ファイバ押圧部の変位方向が、当初直線状になっている光ファイバにほぼ垂直になる必要がある(条件2)。条件1に対応するには、光ファイバ長手方向でのセンサブロック間の離間距離を適切に設定する必要がある。条件2に対応するには、例えば、監視対象物同士間あるいは監視基準物と監視対象物との間の離間方向の変位の監視では、監視対象物の変位方向に沿って両センサブロックを配置し、監視対象物間あるいは監視基準物と監視対象物との間のせん断方向の変位の監視では、監視対象物の変位方向に対して垂直となるように両センサブロックを配置する必要がある。
【0013】
本発明では、監視対象物や監視基準物の表面の起伏や凹凸、突起物の存在等に対応して、監視対象物や監視基準物である一対の取付対象物に対する各センサブロックの設置を効率良く行え、しかも、センサブロックの光ファイバ押圧部間の相対位置関係等をも容易に位置決めあるいは設定できる光ファイバセンサの設置方法を提案する。
請求項1記載の発明は、崩壊の可能性のある不安定地層、変位の可能性のある岩石等の自然物、あるいは擁壁などの人工構造物等である監視対象物からなる一対の取付対象物に対して、あるいは、安定岩盤等からなる監視基準物と前記監視対象物とからなる一対の取付対象物に対して個別のセンサ固定板によって別々に取り付けられる一対のセンサブロックを備え、各センサブロックに設けられた光ファイバ押圧部が両取付対象物が存在する監視対象領域に布設された光ファイバの長手方向の異なる位置に配置され、前記取付対象物間の相対変位によって両センサブロック間が相対変位することで、各センサブロックの光ファイバ押圧部が前記光ファイバを両側から逆向きに押圧して該光ファイバに曲げ等の変形や破断等を生じさせる光ファイバセンサの設置方法であって、前記各センサブロックの前記センサ固定板をレベル出し部材に対して固定することで各センサ固定板間を位置決めし、この状態を維持したまま、各センサブロックを取り付ける目的の取付対象物に打ち込まれたアンカーに前記センサ固定板を挿入するセンサ固定板挿入工程と、このセンサ固定板挿入工程の完了後、各センサブロックの前記センサ固定板に突出量可変に設けられたレベル調整部材を前記取付対象物に突き当てて各センサ固定板を前記アンカーに対して固定するレベル調整工程と、このレベル調整工程の完了後、各センサブロックから前記レベル出しブロックを取り外し、各センサ固定板にセンサブロックを組み立てるセンサ組立工程とを備えることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、崩壊の可能性のある不安定地層、変位の可能性のある岩石等の自然物、あるいは擁壁などの人工構造物等である監視対象物からなる一対の取付対象物に対して、あるいは、安定岩盤等からなる監視基準物と前記監視対象物とからなる一対の取付対象物に対して個別のセンサ固定板によって別々に取り付けられる一対のセンサブロックを備え、各センサブロックに設けられた光ファイバ押圧部が両取付対象物が存在する監視対象領域に布設された光ファイバの長手方向の異なる位置に配置され、前記取付対象物間の相対変位によって両センサブロック間が相対変位することで、各センサブロックの光ファイバ押圧部が前記光ファイバを両側から逆向きに押圧して該光ファイバに曲げ等の変形や破断等を生じさせる光ファイバセンサの設置方法であって、前記各センサブロックの前記センサ固定板をレベル出し部材に対して固定することで各センサ固定板間を位置決めし、この状態を維持したまま、各センサブロックを取り付ける目的の取付対象物に打ち込まれたアンカーに前記センサ固定板を挿入するセンサ固定板挿入工程と、このセンサ固定板挿入工程の完了後、各センサブロックの前記センサ固定板に突出量可変に設けられたレベル調整部材を、前記アンカーに固定したレベル調整補助部品に突き当てて各センサ固定板を前記アンカーに対して固定するレベル調整工程と、このレベル調整工程の完了後、各センサブロックから前記レベル出しブロックを取り外し、各センサ固定板にセンサブロックを組み立てるセンサ組立工程とを備えることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、崩壊の可能性のある不安定地層、変位の可能性のある岩石等の自然物、あるいは擁壁などの人工構造物等である監視対象物からなる一対の取付対象物に対して、あるいは、安定岩盤等からなる監視基準物と前記監視対象物とからなる一対の取付対象物に対して個別のセンサ固定板によって別々に取り付けられる一対のセンサブロックを備え、各センサブロックに設けられた光ファイバ押圧部が両取付対象物が存在する監視対象領域に布設された光ファイバの長手方向の異なる位置に配置され、前記取付対象物間の相対変位によって両センサブロック間が相対変位することで、各センサブロックの光ファイバ押圧部が前記光ファイバを両側から逆向きに押圧して該光ファイバに曲げ等の変形や破断等を生じさせる光ファイバセンサの設置方法であって、前記各センサブロックの前記光ファイバ押圧部を位置決めロッドの長手方向の異なる位置に、該該位置決めロッド回りに固定向き可変に取り付け、各光ファイバ押圧部に対して固定したマーキング治具をそれぞれ取付対象物の表面に接近または当接させて各光ファイバ押圧部を前記位置決めロッドに固定するとともに、アンカーの打ち込み位置を前記取付対象物にマーキングするマーキング工程と、前記アンカー打ち込み位置に打ち込んだアンカーの前記取付対象物から突出された部分に対して、前記光ファイバ押圧部に固定された前記センサ固定板を、各光ファイバ押圧部の前記位置決めロッドに対する固定状態を維持したままそれぞれ挿入するセンサ固定板挿入工程と、このセンサ固定板挿入工程の完了後、各センサ固定板に突出量可変に設けられたレベル調整部材を前記取付対象物に突き当ててセンサ固定板を前記アンカーに対して固定するレベル調整工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を説明する。
まず、この実施形態の設置方法を適用する光ファイバセンサ並びに該光ファイバセンサを用いた光監視システムを説明する。この光ファイバセンサ並びに光監視システムは、地山斜面に存在する岩盤(不安定地層)の崩壊監視システムへの適用例である。
図1において、符号1は光監視システム、2は岩盤、3は亀裂、4は光パルス試験器(図1中「OTDR」)、5は制御装置、6は光ファイバケーブル、7は監視ユニット、8は監視所、9はクロージャ、10は斜面、11は光ファイバセンサである。
【0016】
図1の光監視システム1では、監視対象物の一例として、地山斜面10に存在する岩盤2を例示しており、この岩盤2の崩壊の危険のある斜面10(以下「監視対象領域」)に張り巡らすようにして布設した光ファイバケーブル6の長手方向複数箇所には光ファイバセンサ11が設置されている。この光ファイバケーブル6に設置される光ファイバセンサ11の設置位置は、岩盤2の崩壊の可能性の高い箇所、例えば、図1中亀裂3が存在する箇所等である。なお、光ファイバケーブル6は、請求項1、2、3記載の「光ファイバ」に相当する。
光ファイバセンサ11は、岩盤2の局所的な変位や変形により、光ファイバケーブル6に曲げ変形を生じさせるようになっている。そして、岩盤2の局所的な変位や変形により光ファイバケーブル6に生じた曲げ変形箇所を、光ファイバケーブル6内蔵の光ファイバ6b(図2参照。光ファイバ心線等)を介してこの光ファイバ6bに接続された光パルス試験器4からの試験光の入射・戻り光の観測による光試験で検出することで、岩盤2の局所的な変位や変形が検出される。
【0017】
図2は光ファイバケーブル6の断面構造の一例を示す。図2に示すように、光ファイバケーブル6は断面円形であり、ポリエチレン等からなる樹脂製外部シース6aの中央部に2本の光ファイバ6bを収納し、この光ファイバ6bの対向する両側に抗張力体6cとして鋼線を収納した構成になっている。前記光ファイバ6bおよび抗張力体6cは、いずれも外部シース6aの樹脂内に固定されており、特に樹脂中に埋設一体化することが好ましい。光ファイバケーブルとしては公知のもので良く、各種構成が採用可能であるが、いずれにしても、シースやケーブル内部に設けられた保護材等によって光ファイバ6bを拘束力を以って押え込んだものを採用することが好ましい。但し、光ファイバケーブルとしては、後述する光ファイバセンサ11の構造に鑑みて監視対象物の多様な変位方向に対応するには、曲げ方向性の無いものがより好ましく、例えば平形断面のもの等よりも、断面円形のものを採用することが曲げ方向性の無いものがより好ましい。
光ファイバ6bとしては、例えば、コア径数μm〜10μm程度、径125μmのシングルモード光ファイバが採用される。また、光パルス試験器4であるOTDRとしては、例えば、試験光波長1310nm、パルス幅10ns以上(出来るだけ細かく)、空間分解能2m以上(出来るだけ短く)の高分解能形のものを採用する。
なお、前記光ファイバ6bも、請求項1、2、3記載の「光ファイバ」に相当する。
【0018】
図1において、光ファイバケーブル6は複数の監視対象領域(斜面10)にわたってループ状に布設されている。監視対象領域近傍には、この監視対象領域から離れた安全な場所に設置された監視所8から光ファイバケーブル12が布設され、光ファイバケーブル6の長手方向両端は、前記光ファイバケーブル12の途中に設けられたクロージャ9に引き込まれており、このクロージャ9にて光ファイバケーブル6の光ファイバ6bが光ファイバケーブル12側の光線路(光ファイバ心線等)に対して分岐接続されている。前記光ファイバケーブル12は、監視所8内に設置された光スイッチ13を介して光パルス試験器4に対して接続されているので、光ファイバケーブル6の光ファイバ6bは、クロージャ9にて光ファイバケーブル12側の光線路と接続することで、この光ファイバケーブル12を介して光パルス試験器4に対して接続できる。
【0019】
クロージャ9では同一または異なる監視対象領域に布設された複数本の光ファイバケーブルを光パルス試験器4側の光ファイバケーブル12に対して分岐接続可能であり、図1では、光ファイバケーブル6以外に光ファイバケーブル61を光パルス試験器4側の光ファイバケーブル12に対して分岐接続している。光ファイバケーブル61も監視対象領域に布設される光ファイバケーブルであり途中に光ファイバセンサが設置されているものである。光ファイバケーブル12に対して接続される光ファイバケーブルとしては、監視対象領域にループ状に布設されたものに限定されず、例えば直線状に布設したもの等も採用可能である。なお、同一または異なる監視対象領域に布設された複数本の光ファイバケーブルの光ファイバ6bを光パルス試験器4に対して接続して光試験する構成としては、図1に限定されず、例えば、直接監視所8に引き込んで光スイッチ13と接続したり、光スイッチ13を介すること無く光パルス試験器4に対して光コネクタ等を介して直接接続する構成等、各種構成が採用可能である。この実施の形態では、複数本の光ファイバケーブル6、61を、光ファイバケーブル12の光ファイバを介して、光スイッチ13により光パルス試験器4に対して選択的に接続する構成を例示する。
【0020】
ループ状に布設された光ファイバケーブル6では監視用回線として光ファイバ6bを2心割り当て、一方の光ファイバ6bの光ファイバケーブル6の長手方向一端側の端部をクロージャ9にて光パルス試験器4側の光ファイバケーブル12の光ファイバと接続し、他方の光ファイバ6bの光ファイバケーブル6の長手方向他端側の端部をクロージャ9にて前記光ファイバケーブル12の別の光ファイバと接続する。監視用回線の各光ファイバ6bの光ファイバケーブル12と接続された側とは逆側の端部はいずれも無反射処理しておく。
【0021】
光ファイバケーブル12の光ファイバは、光スイッチ13を介して選択的に光パルス試験器4に接続される。これにより、光ファイバケーブル12に接続された光ファイバケーブル6、61の光ファイバが光パルス試験器4に対して選択的に単心単位で切替接続される。そして、光パルス試験器4と光スイッチ13の駆動により、各光ファイバケーブル6、61の光ファイバの光パルス試験器4に対する切替接続と光試験とを光ファイバケーブル6、61側の光ファイバ毎に順次行うことを繰り返すことで、実質的に常時監視を実現できる。
【0022】
光パルス試験器4には制御装置5が接続され、この制御装置5には、モニタ15と、入力部16とが接続されている。光パルス試験器4、制御装置5、光スイッチ13、モニタ15、入力部16は、監視ユニット7を構成する。監視ユニット7の各機器の作動は制御装置5によって制御されている。
光ファイバケーブル6、61の光ファイバの光試験結果は、モニタ15に表示されるとともに、電話線等の通信回線17を介して集中管理所等へ伝送される。モニタ15では、例えば地図画面15a上に異常発生箇所等が表示される。異常発生箇所の位置は、光試験にて、光ファイバケーブル6、61の光ファイバへの試験光の入射から後方散乱光の受光までの戻り時間から計測される。
【0023】
次に、光ファイバセンサ11の具体的構成を説明する。
光ファイバセンサ11は、岩盤2の局所的な変位や変形により、光ファイバケーブル6に破断や曲げ等の変形を生じさせるようになっている。岩盤2の局所的な変位や変形の原因としては、例えば、地山内部の水圧、斜面10下部の地盤の沈下、地山斜面10に生育する樹木の根の張り出し等に起因する膨れ等が存在する。
光ファイバセンサ11は、異なる位置に存在する岩盤2をそれぞれ監視対象物とし、これら岩盤2間の相対的な変位を監視する。また、監視対象領域の斜面10の複数箇所に設置した光ファイバセンサ11によって監視対象領域の複数箇所を監視することで監視対象領域の岩盤2全体の局所的な変位や変形を監視できる。岩盤2の崩壊等の予兆現象である局所的な変形や微小な膨れ等の変位を検出することで、その情報を、岩盤2の崩壊等の災害の防災対策に役立てることができる。
【0024】
図3は光ファイバセンサ11の詳細を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。図4および図5は光ファイバセンサ11の作用を示す平面図であって、図4は岩盤2の変形前、図5は岩盤2の変形後を示す。但し、図3〜図5では、各センサブロック31、32の光ファイバ押圧部31d、32d(押圧片固定ブロック)との間に押圧片31a、32aを構成するピンの基端部を押え込んで固定する押え板を取り外した状態を示し、図3(b)では前記押え板の取り付け位置を仮想線(符号31h、32h)で示した。
図3(a)、(b)に示すように、光ファイバセンサ11は、光ファイバケーブル6の両側に対向配置された一対のセンサブロック31、32を備えている。各センサブロック31、32は、監視対象物である岩盤2から突設状態に固定されるアンカーボルトであるアンカー33に固定されるセンサ固定板31c、32cを備えている。各センサブロック31、32にそれぞれ突設された押圧片31a、32aは、断面円形のピンを成形したものであり、センサブロック31、32から突出されたピンのU字状に成形された部分である。押圧片31a、32a(これら押圧片を形成するピン)は、センサブロック31、32のセンサ固定板31c、32cに着脱可能に固定された光ファイバ押圧部31d、32dに固定されており、センサ固定板31c、32cと一体化されている。これら押圧片31a、32aは、一方のセンサブロック31から押圧片31aの隣に他方のセンサブロック32の押圧片32aが配置されるようにして、光ファイバケーブル6の長手方向の異なる位置に隙間を確保して配列設置されている。図3(a)、(b)では、一方のセンサブロック31から3本の押圧片31aを突設し、他方のセンサブロック32から2本の押圧片32aを突設しており、光ファイバケーブル6の長手方向に沿って計5本の押圧片31a、32bが光ファイバケーブル6の対向する両側に交互に振り分けるようにして配列設置されている。
【0025】
各押圧片31a、32aのU字の開口側はセンサブロック31、32に向けられており、各押圧片31a、32aは開口側に対向する湾曲部31b、32b側が突出方向先端となるようにして各センサブロック31、32から突設されている。また、各押圧片31a、32aはU字の内側である光ファイバ収納穴31p、32pに光ファイバケーブル6を収納している。すなわち、各押圧片31a、32aは、これら押圧片31a、32aが固定されているセンサブロック31、32とは逆側から光ファイバケーブル6に引っ掛けるようにして設置される。
押圧片31a、32aを形成する断面円形のピンの外面は全体が湾曲面になっているから、この押圧片31a、32aでは、その外面全体が光ファイバケーブル6の押圧用の押圧面として機能する。したがって、光ファイバ収納穴31p、32pでは、該光ファイバ収納穴31p、32pを形成する押圧片31a、32a(湾曲部31b、32b)の光ファイバ収納穴31p、32pに臨む内面全体に押圧面が存在することとなる。
図6に示すように、前記隙間は、隣り合う押圧片31a、32aの互いに相手側に臨む側面を通り且つ光ファイバケーブル6に対して垂直の接線34a間の距離X(mm)で表される。なお、この光ファイバセンサ11では、押圧片31a、32aに存在する押圧面は押圧片31a、32aの外面であるから、押圧片31a、32a間の隙間Xは、各押圧片31a、32aの押圧面間の隙間として同一に取り扱うことができる。
【0026】
図3(a)、(b)に示すように、光ファイバ押圧部31d、32dをセンサ固定板31c、32cに固定するネジ31e、32eは、光ファイバ押圧部31d、32dに形成された長穴31f、32fに挿通されるようになっている。各光ファイバ押圧部31d、32dは長穴31f、32fの範囲で互いに相手側の光ファイバ押圧部31d、32dに向けて進退動可能になっているから、これにより、光ファイバ押圧部31d、32dの位置を調整することで、これら光ファイバ押圧部31d、32dに固定された押圧片31a、32aの光ファイバ収納穴31p、32p間の相対的な位置関係を設定できる。
また、押圧片31a、32aは、具体的には、これら押圧片31a、32aを形成するピンの基端部31g1、31g2、32gを、光ファイバ押圧部31d、32dに形成された位置決め溝31i1、31i2、32iに収納して位置決めされ、溶接による固定や、前記位置決め溝31i1、31i2、32i上への押え板(図3(b)中仮想線31h、32h)の取り付け等によって位置決め状態が維持される。また、位置決め溝31i1、31i2、32iは、押圧片固定ブロック31d、32dにて湾曲または屈曲して形成されており、押圧片31a、32aを形成するピンの基端部31g1、31g2、32gも、これら位置決め溝31i1、31i2、32iに対応して湾曲または屈曲成形して収納するので、各押圧片31a、32aを構成するピンには、特に、優れた引き抜き耐力が得られる。
この光ファイバ押圧部31d、32dでは、位置決め溝31i1、31i2、32iの位置によって押圧片31a、32aの位置が決まり、位置決め溝31i1、31i2、32iの位置が異なる光ファイバ押圧部31d、32dを選択使用することで、光ファイバケーブル6に対する各押圧片31a、32aの位置、隙間Xを簡単に設定できる。また、断面径の異なる押圧片31a、32aを選択使用することで、光ファイバケーブル6の押圧に機能する押圧面の湾曲半径を設定できる。
【0027】
このような光ファイバセンサ11では、構造が簡単であり、部品点数も少ないため、製造が容易であり低コスト化できる。しかも、小型化が容易であるため、狭隘な設置場所でも設置可能である。監視対象物に対する取り付けは、センサブロック31、32のアンカー固定等のみであるので非常に簡単であり、設置数が多くなっても、短時間で簡単に施工できる。
【0028】
なお、光ファイバセンサ11では、両側のセンサブロック31、32の押圧片31a、32aの湾曲部31b、32bをそれぞれ光ファイバケーブル6に当接させることで、光ファイバケーブル6を1直線上に位置決め保持することがより好ましい。この場合、センサブロック31、32間に僅かな相対変位が生じただけでも、この変位が生じたと同時に光ファイバケーブル6が押圧片31a、32bによって押圧され、光ファイバケーブル6(詳細には内部の光ファイバ6b)に速やかに曲げ変形を与えることができる。光ファイバ6bの曲げ変形が光ファイバ6bの光試験結果から検出されれば、各センサブロック31、32を取り付けた岩盤2間に生じた変位が観測されたこととなるから、岩盤2間の変位が微小でも光ファイバ6bに曲げ変形が与えられる構成では、すなわち、監視の感度が高いということになる。但し、光ファイバセンサ11の設置初期状態では、押圧片31a、32aからの押圧力が光ファイバケーブル6に作用しないようにしておくことが必要であり、この点からは、各押圧片31a、32aは湾曲部31b、32b内面が必ずしも光ファイバケーブル6に当接されている必要は無く、若干のクリアランスを介して近接配置することも可能である。
【0029】
また、光ファイバケーブル6を押圧片31a、32aの湾曲部31b、32b内側に収納した構成では、いわば光ファイバケーブル6が湾曲部31b、32bに抱えられて保持されることとなり、特に、各押圧片31a、32aの湾曲部31b、32bの最奥部(センサブロック31、32からの突出方向先端)に収納されて両側から保持された場合は、光ファイバケーブル6の自由な移動が規制されて不用意に振動等が与えられる心配が無く、光試験結果のノイズを減少できるといった利点がある。
さらに、光ファイバセンサ11や光ファイバケーブル6は、カバーを取り付けたり、斜面10の土中に埋設する構造とするなどにより、動物の接触や落石等によるケーブル6の損傷や不用意な曲げ変形を防止することが好ましい。
【0030】
図4および図5では、光ファイバセンサ11は、ほぼ水平に延在する亀裂3aの上下両側の岩盤2にそれぞれセンサブロック31、32を取り付けた構成になっている。なお、図4および図5では、説明の便宜上、亀裂3aの上側の岩盤2に符号2a、下側の岩盤2に符号2bを付した。なお、ここでは、亀裂3aの上下両側の岩盤2a、2bを共に監視対象物として説明するが、例えば、上側の岩盤2aが安定岩盤であり、この安定な岩盤2aに対する岩盤2bの変位を監視する場合には、安定岩盤2aを監視基準物、岩盤2bを監視対象物として取り扱うことも構わない。
図4に示すように、センサブロック31、32を固定した岩盤2a、2b間に相対的な変位が生じていない時(初期状態)には、各押圧片31a、32aの湾曲部31b、32bの湾曲の中心軸線(光ファイバ収納穴31p、32pの中心軸線)が同一直線上に揃った状態が維持される。このとき、各押圧片31a、32aは、湾曲部31b、32b内面側が光ファイバケーブル6に当接されるか、あるいは、僅かに離間されるようになっており、いずれにしても、光ファイバケーブル6に曲げ等の変形が与えられないようになっている。
【0031】
隣接する岩盤2a、2b間に相対変位が生じ、これに一体的に前記センサブロック31、32間が相対変位すると、各押圧片31a、32aによって光ファイバケーブル6が押圧されて、曲げ変形が与えられる。
図5は、下側の岩盤2bが上側の岩盤2aに対して下降変位した場合を示す。この場合は亀裂3aが開く変位であり、図7に示すように、下側の岩盤2bと一体的なセンサブロック32の変位によって、このセンサブロック32に設けられた押圧片32a(詳細には湾曲部32b)が光ファイバケーブル6をセンサブロック32と対向する側から引っ掛けるようにして押圧することとなり、光ファイバケーブル6は、この押圧片32aとセンサブロック31側の押圧片31aとの間に挟み込まれるようにして曲げ変形される。光ファイバケーブル6は、亀裂3aに沿って、すなわち岩盤2bの変位方向にほぼ垂直の方向に布設されており、各押圧片31a、32aからの押圧力が偏在すること無く、均等に作用するようになっている。
図5では、合計5本の押圧片31a、32aによって、光ファイバケーブル6の複数箇所に曲げ変形が与えられるが、光ファイバケーブル6の各曲げ変形部はほぼ連続的に形成される上、光ファイバケーブル6長手方向の押圧片31a、32aの存在する範囲は光パルス試験器4の空間分解能に対して同一箇所で生じたものとして観測される範囲(光ファイバケーブル6の長手方向の範囲)になっているから、光試験結果では、これら複数の変形部にて生じた損失の合計が、光ファイバセンサ11によって光ファイバケーブル6に与えられた損失として観測される。
【0032】
なお、図3(a)、(b)の光ファイバセンサ11では、各押圧片31a、32aはセンサブロック31、32に固定であり、しかも、光ファイバケーブル6を湾曲部31b、32bの内側に抱えるようにして収納しているから、前記図5のような岩盤2a、2b間の変位以外、例えば、一方の岩盤が他方の岩盤よりも斜面10から突出方向へ変位した場合でも、同様に光ファイバケーブル6に曲げ変形を与えることができる。
また、図5の変位でも、岩盤2bの下降が一様では無く傾いて下降した場合、岩盤2bの下降量の大きい側では下降量の小さい側に比べて光ファイバセンサ11の各押圧片31a、32aによって光ファイバケーブル6に与えられる曲げ変形が大きくなるが、この場合でも、光試験では、光ファイバセンサ11によって光ファイバ6bに与えられた曲げ歪みに起因する損失の合計が光ファイバセンサ11設置位置にて生じた損失として観測されるため、監視対象物の変位が生じたにも関わらず異常が観測されないといった不都合は生じない。この点からは、光ファイバセンサの両センサブロックには、それぞれ2以上の押圧片を設けることが好ましい。
【0033】
光ファイバ6bの光試験の結果、光ファイバセンサ11の設置位置にて急激な損失増大が観測されることで、この光ファイバセンサ11が設置されている岩盤2に変形や局所的な変位等の異常発生を把握できる。異常を検出した光ファイバセンサ11は、光ファイバ6bに入射した試験光の戻り光の戻り時間(光パルス試験器4からの距離)から特定できる。光パルス試験器4での光試験結果のデータ(光損失の大きさdB)は、制御装置5(図1参照)にて予め設定された比較値と比較され、その結果、異常発生が判断されたら、図1に示すように、モニタ15の地図画面15aに該当の光ファイバセンサ11の位置表示(図1中符号35)、光ファイバセンサ11の番号表示(図1中符号36)、光損失の大きさ(dB)に対応する警戒レベル表示(図1中符号37)が警報として表示される。
【0034】
図8は、制御装置5を示すブロック図である。
図8において、制御装置5は、光ファイバセンサ11の設置位置にて観測された光損失と比較される比較値等を記憶するデータベース部5aと、光ファイバセンサ11の設置位置にて観測された光損失と前記比較値とを比較する比較部5bと、比較部5bでの比較結果に基いてモニタ15の表示を制御する画像処理部5cと、光試験結果並びに比較部5bの比較結果を集中管理所へ出力するデータ出力部5dとを備えている。
【0035】
ところで、光ファイバケーブル6には、光ファイバセンサ11の両センサブロック31、32の相対変位量に対応する曲げ変形が与えられ、光試験によって観測される光損失は光ファイバ6bの歪みに対応するから、両センサブロック31、32の相対変位量と光試験によって観測される損失増大との間には相関関係がある。図9は、両センサブロック31、32の相対変位量L(離間方向の変位量)と、光損失の大きさとの関係を示すグラフであり、変位量Lが増大すれば、損失も増大することが判る。
【0036】
データベース部5aには、災害発生の危険のある変位量Lに対応する光損失が比較値として記憶されており、比較部5bでは、光試験により光ファイバセンサ11の設置位置にて観測された光損失(以下「観測値」と言う場合がある)と前記比較値とを比較する。図9に例示するように、データベース部5aには、災害発生の危険度に対応して複数段階(図9では、3段階)の比較値H1、H2、H3が記憶されており、比較部5bでの比較の結果、観測値が最も低い比較値H1を上回っている(損失量が比較値よりも大きい)場合には、画像処理部5cが、該当の光ファイバセンサ11の位置表示35、番号表示36、前記比較値H1、H2、H3に対応する警戒レベル表示37(「レベル1」、「レベル2」、「レベル3」)をモニタ15に表示させる(図1では「レベル2」を表示)。モニタ15に表示される警戒レベル表示37は、前記観測値よりも低い比較値H1、H2、H3の内の最高のものである。観測値との比較に用いられる比較値は、3段階に限定されず、4段階以上であってもよいことは言うまでも無い。
つまり、この光監視システム1は、変位量Lを、光ファイバ6bの光試験の結果から得られる光損失の連続量として把握し、変位量Lに相当する光損失の大きさに対応して段階的に警報を発するようになっている。
前記画像処理部5cは警報指示部として機能し、モニタ15は警報出力装置として機能する。なお、警報出力装置としては、前記モニタ15に限定されず、例えば、音声にて警報を出力するスピーカ等、各種構成が採用可能である。警報出装置の構成に対応して警報指示部も適宜変更可能であることは言うまでも無い。
【0037】
また、この光監視システム1では、光試験の結果から観測された光損失から把握される変位量Lを前記モニタ15あるいはそれ以外の表示手段に表示するようにしても良い。つまり、この光監視システム1では、光ファイバ6bの光試験の結果から得られる光損失に対する連続量として変位量Lを把握できるから、この把握された変位量Lを例えばミリメートル等の数値で表示手段に表示できる。この場合、光損失と変位量Lとの関係をデータベース部5aに予め記憶しておき、この記憶されたデータと実際に観測された光損失とを比較部5bにて対照することで、変位量Lを割り出すようにすれば良い。但し、光損失と変位量Lとの関係は、光ファイバセンサ11毎に個別に設定可能であるため、比較部5bでの対照は、データベース部5aに光ファイバセンサ11毎に記憶しておいたデータ(光損失と変位量Lとの関係)と実際に観測された光損失との対照となる。
【0038】
ループ状に布設された光ファイバケーブル6は、監視用に割り当てた複数心の光ファイバ6bの光監視によって両端監視されるから、光ファイバケーブル6の両端から損失増大が観測された光ファイバセンサ11の位置を把握することで、例えば、監視対象領域に生じた変形や崩壊の範囲等を把握できる。これにより、岩盤2の変形や崩壊の規模等を把握でき、適切な対策を迅速にとることが可能になる等の利点がある。監視対象領域の異常が生じた範囲は、異常が検出された光ファイバセンサ11間、あるいはそれよりも若干広い領域に存在することが判るから、これにより、監視対象領域の異常を生じた規模(面積、変形幅等)を把握できる。監視対象領域での光ファイバセンサ11の設置密度を高めると、監視対象領域の異常範囲の大きさ、形状等をより細かく把握できる。
なお、光ファイバセンサ11、クロージャ9、光線路の接続箇所の光コネクタ等以外の、本来、正常時には損失増大やフレネル反射が観測されない箇所から損失増大やフレネル反射が観測されたなら、何等かの異常(故障)が検出されたこととなる。この異常は、例えば土木工事による光ファイバケーブルの曲げ変形や誤切断等に起因するものであり、この異常が検出された箇所も、光ファイバの光試験による戻り光の戻り時間から位置を把握できるので、この光監視システム1では、優れた保守性も確保できる。
【0039】
光監視システム1では、監視対象領域に布設した光ファイバケーブル6の適宜箇所に光ファイバセンサ11を設置し、前記光ファイバケーブル6の監視用の光線路(光ファイバ6b)を光パルス試験器4と接続するだけで簡単に構成でき、監視対象物の変位や変形、崩壊等を、監視対象物から離れた安全な所に設置した一箇所の監視場所にて監視することができる。しかも、監視場所では、モニタ15に表示される警報等により、光ファイバセンサ11を設置した各所の監視対象物の変位や変形、崩壊等を即座に把握できるので、迅速な復旧作業が可能となる等の即応性が得られる。
また、光ファイバセンサ11は、極めて簡単な構成とすることができ、電気式センサに比べて安価で得ることができるから、大幅な低コスト化が可能であり、広範囲の監視や複数箇所の監視を安価で実現できる。しかも、この光監視システム1では、監視対象物である地盤に埋設等により設置した光ファイバセンサ11によって 土砂の移動等を直接監視するので、例えば、目視による巡視、ITV画像による監視等では確認できないような地盤の変位、変形等の発生も確実に検出でき、防災に役立てることができる。
また、光監視システム1は、監視所8に設置される光パルス試験器4等の機器以外には、電気的作動部が無く、落雷等による誘導電流の影響を受ける心配が無いため、光パルス試験器4やその付属の計器等のみ、誘導電流の影響を受けないように保護しておけば、落雷の可能性の大きい山間部等に設置しても、監視性能を損なうことは無い。誘導電流の影響を受けない光ファイバセンサ11は、電気式センサに比べて設置場所の自由度が大幅に向上する。無論、電気式センサに特有の電源確保等の問題も無く、この点からも設置場所の自由度が向上する。また、光ファイバセンサは、通電の必要が無いので、金属部品の使用を大幅に減少させることができ、金属部品を使用したとしても、金属部品の錆びが監視精度に影響しない設計とすることは容易であり、長寿命化することができ、長期の設置に適している。さらに、各光ファイバセンサ11での異常発生を光によって把握するので、データ処理も電気信号に比べて高速化でき、多数の光ファイバセンサ11の監視データを短時間で処理できるといった利点もある。
【0040】
ところで、前記制御装置5のデータベース部5aに記憶される比較値は、光ファイバセンサ11毎に設定されることが好ましい。すなわち、光ファイバセンサ11の設置位置によっては、災害発生の危険度と変位量Lとの関係に違いがあり、例えば、斜面10の傾斜が急な箇所では微小な変位でも異常発生と判断し、道路や鉄道等の近くでは車両通行に起因する振動の影響を受けやすいため異常検出の感度(光損失が急激な増大を開始するセンサブロック31、32間の変位量L)を低く設定して誤作動を防止したい場合などがあるから、これら光ファイバセンサ11個別に設置位置の条件に対応した比較値を設定することで、異常発生の判断や、警報35、36、37(光ファイバセンサの位置表示35、番号表示36、警戒レベル表示37)の表示をより的確に行うことができ、例えば、警戒の必要の無い場合の無駄な警報表示を減少できるといった利点がある。データベース部5aへの比較値の記憶は、例えばパソコンのキーボード等からなる入力部16から行うことができる。
【0041】
光ファイバ6bの光試験によって観測される光損失と、センサブロック31、32間の相対変位量Lとの関係は、押圧片31a、32aのピン径φ(mm)や押圧片31a、32a間の隙間X(mm)によって決まるため、これらピン径および隙間によって光ファイバセンサ11の感度が調整される。つまり、ピン径φが小さいほど、隙間Xが小さいほど、小さい変位量Lに対してもより急激な曲げ変形が光ファイバ6bを与えることができ、光ファイバセンサ11の感度を高めることができ、逆に、ピン径φが大きいほど、隙間Xが大きいほど、感度を低下させることができる。これにより、光ファイバセンサ毎に適切な感度を設定することで、必要に応じて感度を高めたり、光監視システム1の誤作動等を防止することができるから、より効果的な監視が可能である。
【0042】
次に、一対の取付対象物に対する光ファイバセンサ11の設置方法を、岩盤2に縦(鉛直方向)に存在する亀裂3bの両側(左右)の岩盤2c、2dに対する設置(図10(a)、(b)参照)を例に説明する。安定岩盤である一方の岩盤2cを監視対象物とし、この岩盤2cに対して変位する可能性のある他方の岩盤2dを監視基準物とする。光ファイバセンサ11は、岩盤2cに対する岩盤2dの変位を監視するものとする。岩盤2c、2d表面は亀裂3bを介してほぼ連続する斜面とし、光ファイバセンサ11はこの岩盤2c、2dに対して取り付けるものとする。この場合でも、光ファイバセンサ11が光ファイバケーブル6に曲げ変形を与える特性には変わりは無く、監視対象物側の岩盤の変位の監視は、この光ファイバセンサ11の設置向きに関係無く全く同様になされる。
なお、以下、本実施形態では、岩盤2c、2dを「取付対象物2c」、「取付対象物2d」と言うことを基本とする。
この設置方法は、マーキング工程と、アンカー打ち込み工程と、センサ固定板挿入工程と、レベル調整工程と、センサ組立工程とを備えている。
【0043】
(マーキング工程)
図10(a)、(b)は、取付対象物2c、2d表面にアンカー打ち込み位置をマーキングするマーキング工程を示す。図10(a)は、取付対象物2cに対して取付対象物2dが亀裂3bに沿って下降するせん断方向の変位に対応する場合であり、長方形プレート状のマーキング治具21を亀裂3bに被せるようにして両取付対象物2c、2dの表面に押し当てるか近接配置し、このマーキング治具21に形成されたマーキング穴21aを介して取付対象物2c、2dの表面にアンカー打ち込み位置をマーキングする。マーキングは、ペンキ等の塗料の塗設や、切削工具を用いた穴開け等、各種方法が採用可能である。
マーキング治具21の表面に十字に交差された2本の指示線21b、21cは、取付対象物2c、2dに対するマーキング治具21の位置決めに利用できる。図10(a)、(b)において具体的には、マーキング治具21の短辺方向中央部を治具21長手方向に沿って延びる指示線21bによってその両側に仕切られた各領域は、各センサ固定板31c、32cの設置位置に概ね対応する。前記マーキング穴21aは各センサ固定板31c、32cのアンカー穴31j、32jを挿入するアンカー33の打ち込み位置を設定するアンカー位置設定手段として機能するものであり、マーキング治具21の前記指示線21bで仕切られた両側の領域に1つずつ設けられている。
【0044】
図10(a)のせん断方向の変位に対応する場合には、光ファイバセンサ11の各センサブロック31、32を、取付対象物2cの変位方向にほぼ垂直(図10(a)ではほぼ水平)となるように布設した光ファイバ(光ファイバケーブル6。図10(a)中図示略)を曲げ変形できる位置関係で設置する必要があり、指示線21bをほぼ水平となるように位置決めしてマーキングを行う。指示線21cは、光ファイバの布設位置とほぼ一致する。
【0045】
因みに、図10(b)は、取付対象物2cに対する取付対象物2dの離間方向の変位、すなわち、亀裂3bが拡大する方向の変位に対応する場合であり、この場合も、やはり監視対象物側の取付対象物2dの変位方向(図10(b)中ほぼ水平)にほぼ垂直に布設した光ファイバを曲げ変形できる位置関係で各センサブロック31、32を設置する必要があるから、指示線21bをほぼ垂直、指示線21cをほぼ水平となるようにマーキング治具21を位置決めし、マーキング穴21aからアンカー打ち込み位置をマーキングする。
【0046】
(アンカー打ち込み工程)
次に、図11(a)〜(c)に示すように、前記マーキング工程にてマーキングされた各アンカー打ち込み位置にアンカー打ち込み穴22を工具で穿設し(図11(a)参照)、このアンカー打ち込み穴22にアンカーナット23を挿入し(図11(b)参照)を挿入し、このアンカーナット23にアンカー33を挿入固定する。アンカー33はアンカーナット23に挿入螺着可能なアンカーボルトである。このアンカー33をアンカーナット23にねじ込むと、アンカーナット23のアンカー打ち込み穴22への挿入先端の拡張部23aがアンカー33によって外側へ押し開かれて、取付対象物2c、2dから引き抜き不可能に固定され、これにより、アンカー33も取付対象物2c、2dに対して引き抜き不可能に固定される。なお、各アンカー33は、互いに平行となるようにする。
【0047】
(センサ固定板挿入工程)
図12に示すように、各センサブロック31、32に対応するセンサ固定板31c、32cは、レベル出し部材24にそれぞれ取り付けて連結しておく。各センサ固定板31c、32cは、レベル出し部材24に固定することで、同一平面上に位置決めされる。図12において、レベル出し部材24は連結プレートであり、各センサ固定板31c、32cは、このレベル出し部材24に面接触させて固定することで、簡単かつ確実に位置決めされる。
アンカー打ち込み工程が完了したら、図13(a)、(b)に示すように、前記レベル出し部材24によって連結したままの状態でセンサ固定板31c、32cのアンカー穴31j、32jを、取付対象物2c、2d表面から突き出しているアンカー33に挿入し、さらに、ワッシャ25を挿入した後、傾き調整ナット26をアンカー33に螺着する。各アンカー33に螺着した傾き調整ナット26は、各アンカー33に垂直な同一平面上となるように位置決めする。
【0048】
(レベル調整工程)
次いで、図14(a)、(b)に示すように、各センサ固定板31c、32cの調整ボルト穴(図示略)を貫通させて各センサ固定板31c、32cに螺着されている調整ボルト27を回転して各センサ固定板31c、32cから取付対象物2c、2d側へ突き出して取付対象物2c、2dに突き当てる。さらに調整ボルト27の回転を継続すると、センサ固定板31c、32cに取付対象物2c、2d表面から離間させる方向への押圧力が与えられ、前記傾き調整ナット26に押圧されることとなる。これによって、各センサ固定板31c、32cが傾き調整ナット26との当接位置に位置決めされ、その結果、両センサ固定板31c、32cが同一平面上に位置決め(レベル出し)される。センサ固定板31c、32cの位置決めが完了したら、調整ボルト27に螺着されているナット27aをセンサ固定板31c、32cに締め付けることで、センサ固定板31c、32cからの調整ボルト27の取付対象物2c、2d側への突出量を固定する。また、必要に応じて、アンカー33に対する傾き調整ナット26の螺着位置を変更することで、センサ固定板31c、32cのレベル出しや傾き調整を微調整できる。
【0049】
調整ボルト27はセンサ固定板31c、32cの複数箇所に設けられており、各調整ボルト27のセンサ固定板31c、32cから取付対象物2c、2d側へ突出量を調整することで、センサ固定板31c、32c同士を傾斜等を生じさせること無く、同一平面上に正確に位置決めできる。凹凸の存在する取付対象物2c、2d表面に対しては、センサ固定板31c、32cから取付対象物2c、2d側への調整ボルト27の突出量を各調整ボルト27で適宜調整することで、各センサ固定板31c、32cをレベル出しできる。調整ボルト27は、レベル調整部材として機能する。
なお、レベル調整部材としては、前記調整ボルト27に限定されず、センサ固定板31c、32cから取付対象物2c、2d側への突出量可変な構成であれば良く、各種構成が採用可能である。
【0050】
図13(b)に示すように、センサ固定板31c、32cに形成されたアンカー穴31j、32j内径はアンカー33径より大きく、アンカー33を浮動を許容して収納するようになっている。しかも、傾き調整ナット26は、センサ固定板31c、32c側に向けられた湾曲面26aをワッシャ25に当接させて、センサ固定板31c、32cに対して押圧されるようになっており、湾曲面26aとワッシャ25との間は球面支承になっている。このため、各センサ固定板31c、32cに対応する複数本のアンカー33間は精密に平行である必要は無く、アンカー33間の平行度に若干のばらつきが存在しても、傾き調整ナット26への押圧によるセンサ固定板31c、32cの位置決めを正確に行うことができる。なお、ワッシャ25を省略して、直接、傾き調整ナット26とセンサ固定板31c、32cとを当接させることも可能であることは言うまでも無い。
【0051】
(センサ組立工程)
レベル調整工程が完了したら、各センサ固定板31c、32cからレベル出し部材24を取り外し、各センサ固定板31c、32cに光ファイバ押圧部31d、32dの取り付け等を行って、センサブロック31、32を組み立てる。さらに、必要に応じて、両センサブロック31、32の外側を覆うカバーの取り付け等も行う。
【0052】
図15(a)〜(e)は、両光ファイバ押圧部31d、32dから突設されている各押圧片31a、32aの光ファイバ収納穴31p、32pに光ファイバケーブル6を収納する光ファイバ収納工程を示す。まず、図15(a)に示すように、位置決め溝31i1、31i2、32i(図3(a)参照)への押圧片31a、32aの収納を完了した一対の光ファイバ押圧部31d、32dを、各押圧片31a、32aの光ファイバ収納穴31p、32pを同軸上に揃えて押え板31h、32hが取り付けられる側の面同士を重ねるようにして重ね合わす。次いで、図15(b)に示すように、重ね合わされた両光ファイバ押圧部31d、32d間から各押圧片31a、32aに向けて光ファイバケーブル6を挿入して各押圧片31a、32aの光ファイバ収納穴31p、32pに収納した後、図15(c)に示すように、各光ファイバ収納穴31p、32pの中心を一致させた軸線を回りの相対回転によって両光ファイバ押圧部31d、32d間を開くと、図15(d)、(e)に示すように、全ての押圧片31a、32aの光ファイバ収納穴31p、32pに光ファイバケーブル6が収納されたまま、光ファイバケーブル6の両側に両光ファイバ押圧部31d、32dが対向配置されることとなり、各押圧片31a、32aの湾曲部31b、32bが光ファイバケーブル6を対向する両側から抱えるようになり、結局、いずれの方向にも光ファイバケーブル6の位置ずれが生じにくくなる。
【0053】
各押圧片31a、32aの光ファイバ収納穴31p、32pに光ファイバケーブル6を収納した一対の光ファイバ押圧部31d、32dは、図15(d)、(e)に示す状態を維持したまま、一対のセンサ固定板31c、32cに取り付け、長穴31f、32fの長さ寸法の範囲でセンサ固定板31c、32cに対してスライド移動させることで、両光ファイバ押圧部31d、32d間の離間距離の設定やセンサ固定板31c、32cに対する個別の固定位置の調整等を行い、結局、全ての押圧片31a、32aが光ファイバケーブル6を押圧すること無く軽く接触するように位置決めされる(図3(a)、(b)に示す状態)。
【0054】
以上により、光ファイバセンサ11を取付対象物2c、2dに対して設置できる。
この設置方法によれば、センサ固定板挿入工程やレベル調整工程により、センサ固定板31c、32cを取付対象物2c、2d表面から浮いた状態に位置決め固定することも可能であり、取付対象物2c、2dの表面の凹凸が激しい場合であっても、光ファイバセンサ11を効率良く設置できる。しかも、各光ファイバ押圧部31d、32dの相対的な位置関係にも精度を容易に確保できるから、光ファイバケーブル6に曲げ変形を与える機能が確実に得られる。
なお、監視基準物側の取付対象物2cに対する監視対象物側の取付対象物2dの変位は、現実的には一様で無いものと考えられ、局所的に、せん断方向の変位、開口方向の変位が散在すると考えられるから、両取付対象物2c、2d間の変位の監視では、亀裂3bに沿って、せん断方向に対応する光ファイバセンサ11、開口方向に対応する光ファイバセンサ11を適宜選択的に設置することが好ましい。
【0055】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態を説明する。
まず、この実施形態の設置方法を適用する光ファイバセンサを説明する。この光ファイバセンサは、前記第1実施形態の光監視システム1にて光ファイバセンサ11に代えて適用されるものである。
【0056】
図16(a)、(b)〜図18に示すように、本実施形態に係る光ファイバセンサ50は、第1実施形態の光ファイバセンサ11のセンサ固定板31c、32cに代えてセンサ固定板51p、52pを採用し、光ファイバ押圧部31d、32dに代えて、図16(a)、(b)、図18中、符号51、52で示す光ファイバ押圧部(押圧片ブロック)を採用し、これら光ファイバ押圧部51、52に突設した押圧片51a、52aを、光ファイバセンサ11の押圧片31a、32bに代えて、これら押圧片31a、32aと同様に機能させたものである。
なお、図16(a)、(b)〜図18中、光ファイバセンサ11と同様の構成部分には同じ符号を付し、その説明を簡略化した。
【0057】
図16(a)、(b)および図18に示すように、この光ファイバセンサ50は、一対の光ファイバ押圧部51、52のセンサ固定板51p、52pにそれぞれ光ファイバ押圧部51、52を着脱可能に固定して構成されるものである。図16(a)、(b)中、符号50a、50bはセンサブロックである。センサ固定板51p、52pは、光ファイバセンサ50全体を収納するカバー54を固定するためのカバー固定壁51i、52iを側部に備えること以外は、第1実施形態の光ファイバセンサ11のセンサ固定板31c、32cと同様の構成になっている。図16(a)、(b)中、符号51jおよび52jはアンカー穴、51kおよび52kは調整ボルト穴である。
【0058】
各光ファイバ押圧部51、52は、2枚の分割プレート51b、51c、分割プレート52b、52cからなる二つ割り構造であり、これら分割プレート51b、51c同士、分割プレート52b、52c同士をネジ53で固定して一体化することで組み立てられる。また、光ファイバ押圧部51、52をセンサ固定板31c、32cに固定するネジ53aは、光ファイバ押圧部51、52のセンサ固定板31c、32c側の分割プレート51c、52cの長穴51に貫通させてセンサ固定板31c、32cに固定されるようになっており、各光ファイバ押圧部51、52のセンサ固定板31c、32cに対する固定位置は、前記長穴51h、52hの長さの範囲内で調整可能であり、これにより、押圧ブロック51、52同士を所望の離間距離にて位置決めできる。なお、長穴51h、52hは、反対側の分割プレート51b、52bにも形成されている。
【0059】
この光ファイバセンサ51では、光ファイバ押圧部51、52を構成する分割プレート51b、51cの押圧片分割部51d、51e同士、分割プレート52b、52cの押圧片分割部52d、52e同士を一体化することで、押圧片51a、52aが構成される。なお、各分割プレート51b、51cの押圧片分割部51d、51e、分割プレート52b、52cの押圧片分割部52d、52eは、それぞれ分割プレート51b、51c、52b、52cの突出部分であり、分割プレート51b、51c、52b、52cと一体物であり、別部品では無いので、高い強度を容易に確保でき、例えば、落石等が衝突しても変形しにくいから、長期にわたって安定に使用できる。
【0060】
各押圧片51a、52aには断面円形の光ファイバ収納穴51f、52fが貫通されており、各押圧片51a、52aの光ファイバ収納穴51f、52fは同一直線上に位置している。各光ファイバ収納穴51f、52fに臨む各押圧片51a、52aの内面は、各光ファイバ収納穴51f、52fの中央に向かって凸の湾曲面になっており、この湾曲面が、各光ファイバ収納穴51f、52fに収納される光ファイバケーブル6を押圧する押圧面として機能する(以下、「押圧面51g、52g」)。なお、押圧片分割部51d、51e、52d、52eは、いずれも押圧片51a、52aを丁度2分割した形状であり、光ファイバ収納穴51f、52fの周囲にリング状に存在する押圧面51g、52gも、これら押圧片分割部51d、51e、または押圧体分割部52d、52eにそれぞれ半分づつ存在し、これら押圧片分割部51d、51e同士、押圧片分割部52d、52e同士を一体化することでリング状に構成される。また、光ファイバケーブル6は、各押圧片分割部51d、51e同士、押圧片分割部52d、52e同士を一体化する際に、光ファイバ収納穴51g、52g内に収納される。各光ファイバ押圧部51、52からはそれぞれ複数本の押圧片51a、52a(一方の光ファイバ押圧部51から3本、他方の光ファイバ押圧部52から2本)を突設しており、光ファイバケーブル6はこれら多数の押圧片51a、52aの光ファイバ収納穴51g、52gに収納されることでほぼ一直線上に保持される。
【0061】
図17は、押圧片分割部51e、52eを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図17(a)、(b)において、押圧片分割部51e、52eに形成された押圧面51g、52g(詳細には押圧面51g、52gの半分の部分であるが、便宜上、図17(a)、(b)には、符号51g、52gを付す)は、光ファイバ収納穴51f、52f(詳細には光ファイバ収納穴51f、52fの半分の部分であるが、便宜上、図17(a)、(b)には、符号51f、52fを付す)の中央部に向けて凸の断面半円形になっている。図示していないが、押圧片分割部51d、52d側にも同様に押圧面51g、52gが形成されており、押圧片分割部51d、51e同士、押圧片分割部52d、52e同士を一体化すると、断面円形の光ファイバ収納穴51f、52fが形成されるとともに、半円形の断面形状の押圧面51g、52gが光ファイバ収納穴51f、52fの周囲に連続的に延在することとなる。
【0062】
この光ファイバセンサ50においても、監視対象物の変位によりセンサブロック50a、50b間が相対変位した結果、押圧片51a、52a間に光ファイバケーブル6を挟み込んで曲げ変形を与えることは、光ファイバセンサ11と同様である。
押圧面51g、52gの湾曲半径は、光ファイバセンサ11の押圧片31a、32aのピン径と同様に、3mm、5mm、6mm、8mm等、適宜設定でき、光ファイバケーブル6長手方向に沿って配列された各押圧片51a、52a間の隙間、詳細には押圧面51g、52g間の隙間X1(図16(a)参照)と、押圧面51g、52gの湾曲半径とを調整することで、光ファイバセンサ50を調整できる。つまり、押圧片51a、52aは、丁度、光ファイバセンサ11の押圧片31a、32aと同様に機能させることができる。前記押圧面51g、52gは、光ファイバセンサ11のピン径に相当し、押圧面51g、52g間の隙間X1は、光ファイバセンサ11の押圧片31a、32a間の隙間Xに相当し、図11〜図17ではその数値(mm)をX=X1として取り扱うことができる。図11〜図17の試験結果はこの光ファイバセンサ50についても共通である。
但し、光ファイバセンサ11の押圧片31a、32aは、U字形であるのに対し、光ファイバセンサ50の押圧片51a、52aは、光ファイバ収納穴51f、52f内に収納された光ファイバケーブル6が押圧面51g、52fによってほぼ完全に取り囲まれるので、光ファイバ押圧部51、52間の変位方向が光ファイバケーブル6長手方向に垂直の方向であればどの方向でも光ファイバケーブル6に曲げ変形を与えることができ、光ファイバセンサ11の押圧片31a、32aがU字の開口部側への変位を検出できないことに比べて、変位方向に対する汎用性に優れる。
【0063】
この光ファイバセンサ50では、複数本の押圧片31a、32aを使用する光ファイバセンサ11に比べて部品点数が少なく、構造が単純で済むので、低コスト化が可能であり、また、組み立ても容易である。特に、岩盤2等への設置作業は足場の悪い現場での作業となるため、容易に組み立てられることは、設置作業効率上、極めて有益である。また、この光ファイバセンサ50についても、誘導電流の影響を受けないこと、長寿命化が容易であること等、光ファイバセンサ11の効果が同様に得られることは言うまでも無い。
【0064】
次に、一対の取付対象物に対する光ファイバセンサ50の設置方法を、前述の第1実施形態と同様に、一対の取付対象物2c、2dに対する設置(図10(a)、(b)参照)を例に説明する。
この設置方法は、マーキング工程と、アンカー打ち込み工程と、センサ固定板挿入工程と、レベル調整工程と、センサ組立工程とを備えている。但し、マーキング工程と、アンカー打ち込み工程とは、前記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
この光ファイバセンサ50は、前記第1実施形態記載の設置方法を適用しても設置可能であるが、本実施形態では、特に、取付対象物2c、2d表面の起伏、凹凸等が激しい場合に対応できる設置方法を示す。
【0065】
(センサ固定板挿入工程)
センサ固定板51p、52pをアンカー33に挿入固定する前に、図19(a)、(b)に示すように、円板状のレベル調整補助部品60を各アンカー33に挿入し、アンカー33の所定位置に固定する。図19(a)、(b)では、レベル調整補助部品60のアンカー33に対する固定は、一対のナット61a、61bで挟み込むようにして行っている。
次いで、レベル調整補助部品60に穿設されている穴60aに回転防止ボルト62を挿入して固定する。この回転防止ボルト62は、レベル調整補助部品60のアンカー33回りの回転を規制するものであり、例えば、取付対象物2c、2dに少なくとも数mm食い込むように打ち込んだり、取付対象物2c、2dに穿設した穴に先端を挿入する。
【0066】
次いで、レベル出し部材24(図示せず)に取り付けて連結することで同一平面上に位置決めしておいた一対のセンサ固定板51p、52pを、アンカー穴51j、52j(図16(b)参照)によってアンカー33に挿入し、次いで、ワッシャ25、傾き調整ナット26をアンカー33に挿入する。両センサ固定板51p、52pをレベル出し部材24に連結した状態は、図12のセンサ固定板31c、32cの連結状態と同様である。
【0067】
(レベル調整工程)
次いで、図16(b)に示すように、アンカー33に挿入した各センサ固定板51p、52pの調整ボルト穴51k、52kに挿入して取付対象物2c、2d側に突出させた複数本の調整ボルト27をレベル調整補助部品60(詳細にはその上面60a)に突き当てることで、各センサ固定板51p、52pをそれぞれレベル出し部材24によって連結した状態を維持したまま傾き調整ナット26に押し付けるようにして固定する。これにより、両センサ固定板51p、52p同士が、互いに同一平面上に位置決めされた状態を保ったまま、取付対象物2c、2dからの目的の離間距離に固定して設置される。なお、各センサ固定板51p、52pのアンカー穴51j、52jの内径がアンカー33外径よりも大きいこと、並びに、傾き調整ナット26の湾曲面26a(図13(a)、(b)参照)によってこの傾き調整ナット26に対するセンサ固定板51p、52pの押圧方向に幅広く対応できることによって、アンカー33間の平行度に若干の誤差が許容されることは、前記第1実施形態と同様である。また、適宜、傾き調整ナット26の位置を調整すれば、アンカー33の長手方向での各センサ固定板51p、52pの固定位置(設置位置)を微調整できることも第1実施形態と同様である。
【0068】
センサ固定板51p、52pから突出させた調整ボルト27をレベル調整補助部品60(詳細には平坦面である上面60a)に突き当てることによるセンサ固定板51p、52pの位置決めでは、平坦面上への突き当てとなるので、各調整ボルト27のセンサ固定板51p、52pからの突出寸法を一定に揃えるだけで、各センサ固定板51p、52pを傾きを生じさせること無く正確にレベル出しでき、取付対象物2c、2d表面に対する調整ボルト27の直接突き当てによる各センサ固定板51p、52pのレベル調整に比べて、固定作業性、レベル調整の作業性を大幅に向上することができる。
【0069】
図20に示すように、一対の取付対象物2c、2d間に段差(寸法t)が存在する場合では、各アンカー33に挿入したレベル調整補助部品60の上面60aを同一平面上に位置決めした後、各アンカー33にセンサ固定板51p、52pを挿入することが好ましい。図20では、取付対象物2dに比べて落ち込んでいる取付対象物2c側に取り付けるセンサ固定板52pが取付対象物2c表面から非常に遠くなるが、レベル調整補助部品60を利用した固定、レベル調整であれば、比較的長さの短い調整ボルト27を使用すれば済むのに対し、第1実施形態記載のように、取付対象物2c、2d表面に対して調整ボルト27を直接突き当てる構成では調整ボルト27が非常に長くなって、例えば落石の衝突等によって与えられる側圧に対する位置ずれや変形等が生じやすくなる。レベル調整補助部品60を利用した固定、レベル調整であれば、調整ボルト27の長さを抑えることができ、外力に対する変位や変形等の耐力の確保が容易となる。また、レベル調整補助部品60を利用した固定、レベル調整であれば、取付対象物2c、2dに打ち込んで確実に固定したアンカー33に取り付けたレベル調整補助部品60に調整ボルト27の反力をとるので、例えば取付対象物2c、2dの表面の劣化等によって調整ボルト27がセンサ固定板51p、52pに支持する機能を果たさなくなる等の不都合を回避でき、長期にわたってセンサ固定板51p、52pの位置が安定に維持され、光ファイバセンサ50の特性を維持できる。
なお、図20に示したように、同一平面上に位置決めした一対のレベル調整補助部品60に対する調整ボルト27の突き当てによる、各センサ固定板51p、52pのレベル調整であれば、各センサ固定板51p、52pの全ての調整ボルト27の突出量(突出寸法)を一定にすることで、各センサ固定板51p、52pを簡単にレベル出しでき、レベル調整の作業性を向上することができる。
【0070】
(センサ組立工程)
各センサ固定板51p、52pの固定が完了したら、レベル出し部材24を取り外し、各センサ固定板51p、52pへの光ファイバ押圧部51、52の取り付け等を行って、各センサブロック50a、50b(図16(a)、(b)参照)を組み立て、さらに、各光ファイバ押圧部51、52の押圧片51a、52aの光ファイバ収納穴51f、52fへの光ファイバケーブル6の収納、カバー54の取り付け等を行って、光ファイバセンサ50を完成させる。
この光ファイバセンサ50では、光ファイバ押圧部51、52を構成する一対の分割プレート51b、51c、一対の分割プレート51b、52cを、光ファイバ収納穴51f、52fに光ファイバケーブル6を収納してから一体化することで、各押圧片51a、52aの光ファイバ収納穴51f、52fに光ファイバケーブル6を簡単に収納でき、組み立て作業性を向上できる。
【0071】
(取付対象物間の段差が非常に大きい場合)
例えば、取付対象物2c、2d間の段差が非常に大きい場合(例えば図20の寸法tが30mmを超える場合)は、レベル調整補助部品60を使用するにしても、取付対象物2dに比べて落ち込んでいる取付対象物2cの側では、センサ固定板52pからの調整ボルト27の突出寸法あるいは回転防止ボルト62が非常に長くなることを回避できない。
図21では、前記取付対象物2cに別途補強アンカー33aをアンカー33と平行に打ち込み、取付対象物2cに打ち込まれた複数本のアンカー33、33aに挿入されるレベル調整補助部品63を採用し、各アンカー33、33aの長手方向適切位置(例えば取付対象物2c側のレベル調整補助部品60と面一となる位置)に固定したレベル調整補助部品63に、センサ固定板52pから突出させた調整ボルト27を突き当てるようにする。
【0072】
図22はレベル調整補助部品63の一例であり、この図22のレベル調整補助部品63では、アンカー33が挿入されるアンカー穴63aが1つ、アンカー33aが挿入されるアンカー穴63bが2つ形成されている。これらアンカー穴63a、63b、63bは互いに離間させて形成されており、このレベル調整補助部品63を前記アンカー穴63a、63b、63bによって合計3本のアンカー33、33a、33aに挿入固定すると、複数本のアンカー33、33a、33aと、レベル調整補助部品63とによって強固なフレームが構成され、外力に対する変形や局所的な位置ずれ等を防止できる強度を確保できる。
なお、レベル調整補助部品としては、図22に限定されず、アンカー穴の数は、3以外、2または、4以上であっても良く、また複数のアンカー穴の配置、レベル調整補助部品の形状等は、適宜変更可能である。
【0073】
(第3実施形態)
まず、光ファイバセンサについて説明する。
図23において、光ファイバセンサ70は、一対の取付対象物2e、2fに対して個別に取り付けられる一対のセンサブロック70a、70bを備えている。各センサブロック70a、70bは、一対の取付対象物2e、2fに対して個別に取り付けられるセンサ固定板71、72と、前記センサ固定板71、72に固定される光ファイバ押圧部73、74とを備えている。一方の光ファイバ押圧部73は、台座73aと押え板73bとの間に光ファイバケーブル6を挟み込んで固定する構成であり、他方の光ファイバ押圧部74も台座74aと押え板74bとの間に光ファイバケーブル6を挟み込んで固定する構成になっている。押え板73b、74bには、光ファイバケーブル6を収納する光ファイバ収納溝86a、86bが形成されている。そして、この光ファイバセンサ70は、各光ファイバ押圧部73、74間を適切な隙間X2を介して位置決めして、光ファイバケーブル6の長手方向の異なる2箇所をクランプ固定しておき、一対の取付対象物間のせん断方向の相対変位に伴う各センサブロック70a、70bの変位によって各光ファイバ押圧部73、74から逆向きの押圧力を作用させることで光ファイバケーブル6に曲げ変形を与えるようになっている。各センサ固定板2e、2fは、取付対象物に打ち込まれた2本のアンカー33と、2本の調整ボルト27とを利用して取付対象物に対して位置決めして設置固定される。
【0074】
図23は、この光ファイバセンサ70を一対の取付対象物2e、2fのほぼ連続する表面に取り付けることで、これら取付対象物2e、2f間のせん断方向の変位(ここでは例として取付対象物2eに対する取付対象物2fの下方への相対的な変位)を監視する場合であり、センサブロック70a、70bを各取付対象物2e、2fに個別に取り付け、各光ファイバ押圧部73、74によって光ファイバケーブル6を取付対象物2fの変位方向に垂直に保持する。
光ファイバセンサ70では、取付対象物2eに対する取付対象物2fの下方への変位が生じると、この取付対象物2fにセンサ固定板72によって一体的に取り付けられている光ファイバ押圧部74も取付対象物2fと一体的に下方へ変位する結果、光ファイバ押圧部73、74間にも取付対象物2e、2f間と同様の相対変位が生じ、これによって、光ファイバケーブル6の長手方向の異なる位置が互いに逆向きに押圧されることで、光ファイバケーブル6に曲げ変形を与えるようになっている。
【0075】
次に、光ファイバセンサ70の設置方法を説明する。
この設置方法は、マーキング工程と、センサ固定板挿入工程と、レベル調整工程と、センサ組立工程とを備える。
(マーキング工程)
まず、マーキング工程を行うが、これは、センサ固定板71、72自体、あるいはマーキング治具を用いて、アンカー打ち込み位置を取付対象物2e、2fにマーキングする。
(センサ固定板挿入工程)
次いで、前記マーキング工程にてマーキングされた各アンカー打ち込み位置にアンカー33を平行に打ち込む。次に、図24に示すように、それぞれセンサ固定板71、72に固定された一対の台座73a、74a同士をレベル出し部材64(連結プレート)に取り付けて連結することで、センサ固定板71、72同士を位置決めしておき、この状態を維持したまま、前記センサ固定板71、72をアンカー穴(図示せず)によって前記アンカー33に挿入する。
【0076】
(レベル調整工程)
次に、各センサ固定板71、72の調整ボルト穴71b、72bに挿入螺着された調整ボルト27を回転操作して取付対象物2e、2f側への突出量を増大し、その先端を取付対象物2e、2fに突き当て、各アンカー33に螺着された一対のナット75(図24では、片側のナット75のみを示し、反対側のナットは省略している)をそれぞれ前記センサ固定板71、72に対して両側から締め付けることで、挟み込むようにして固定する。ここで、センサ固定板71、72のアンカー33長手方向の固定位置や傾斜修正等であるレベル調整は、このセンサ固定板71、72を両側から挟み込むようにして固定する一対のナット(一方が前記ナット75)のアンカー33に対する位置調整と、調整ボルト27の突出量の調整とによってなされる。また、この作業中も、両台座73a、74aをレベル出し部材64に取り付けて位置決めした状態が維持されているので、各センサ固定板71、72のレベル調整や固定は効率良く行うことができる。
【0077】
(センサ組立工程)
次に、各センサ固定板71、72に固定されている台座73a、74aからレベル出し部材64を取り外し(図25)、台座73a、74aの位置決め作業を行う。両台座73a、74a間の位置決めは、まず、一方の台座73aをセンサ固定板71に位置決め固定した後、これら台座74a、74a間を位置決めする。
【0078】
図26(a)、(b)、図27(a)、(b)に示すように、各台座73a、74aをセンサ固定板71、72に固定するネジ76は、各台座73a、74aに形成された長穴77a、77bを貫通させてセンサ固定板71、72に螺着固定されるようになっており、各台座73a、74aは、ネジ76に対する長穴77a、77bの範囲でセンサ固定板71、72に対してスライド移動可能になっている。各長穴77a、77bの長手方向は全て平行に揃えられており、この長穴77a、77bを利用した各台座73a、74aのスライド移動では、台座73a、74a間の隙間X2が設定される。
【0079】
押圧部材本体73a、74a間の位置決めは、まず、ネジ76を緩めて台座73aをスライド移動し、図25に示すように、台座73aとセンサ固定板71の両方に形成したマーキング78a、78bを一致させ、台座73aをセンサ固定板71に固定する。次に、この台座73aに対して台座74aを長穴77bの範囲で移動して位置決めして、センサ固定板72に固定する。台座73aの長穴77a内には、ネジ76の両側に接触するスペーサ85が収納されているから、台座73aはがたつきを生じること無く円滑にスライド移動され、マーキング78a、78b同士を一致させれば正確に位置決めされる。一方、台座74aの長穴77bにはスペーサ85を収納しておらず、台座74aは長穴77bの長手方向のみならず、長穴77bの幅方向(長手方向に垂直の方向)にも若干の位置調整が可能である。したがって、正確に位置決めした一方の台座73aに対して他方の台座74aを位置決めすることで、両台座73a、74aを適切位置に位置決めできるのである。
これにより、後に組み立てられる光ファイバ押圧部73、74間の隙間X2が設定される。
なお、この光ファイバセンサ70でも、隙間X2の調整によって、光ファイバ押圧部73、74間の変位量に対する光ファイバ6bの光損失の関係を調整できる。
【0080】
次いで、各台座73a、74aに押え板73b、74bを固定し、台座73aと押え板74bとの間、台座74aと押え板74bとの間に光ファイバケーブル6を挟み込んで固定する。これにより、各センサブロック70a、70bが組み立てられ、さらに、各センサブロック70a、70bを収納するカバー78の取り付け等を行うことで光ファイバセンサ70が完成する。両光ファイバ押圧部73、74間では、光ファイバケーブル6が曲げ等が与えられていない直線状にすることが好ましい。なお、押え板73b、74bはネジ79の回転操作により、台座73a、74bに対して着脱可能であるから、光ファイバケーブル6の交換等を自在に行える。
【0081】
(第4実施形態)
図28に示す光ファイバセンサ80は、前記第3実施形態の光ファイバセンサ70のセンサ固定板71、72に代えて、L字形に形成されたプレート状のセンサ固定板81、82を採用した点である。符号80a、80bはセンサブロックであり、いずれも、センサ固定板81、82に光ファイバ押圧部73、74を組み立てたものである。
図28は、一対の取付対象物間の離間方向の変位を監視する場合であり、例として、岩盤の縦方向に存在する亀裂3bの両側の取付対象物2g、2h(図28では、いずれも岩盤2の一部)間の、特に互いに傾斜角度を以って傾斜されている表面間(図28では傾斜角度θ0がほぼ90°の表面間)に光ファイバセンサ80を設置した場合を示す。なお、図28では、安定岩盤からなる監視基準物としての取付対象物2gに対して、監視対象物としての取付対象物2hの離間方向(ここでは、水平方向の変位。つまり、亀裂3bが拡張する方向の変位)の変位を監視するものとする。
【0082】
各センサ固定板81、82に固定された光ファイバ押圧部73、74は、監視対象物である取付対象物2hの変位方向に垂直の方向、すなわち、亀裂3bにほぼ沿った方向に隙間X3を介して連設されている。各センサ固定板81、82は、相対的な傾斜角度θ1がほぼ90°になっており、各センサ固定板81、82に固定された各光ファイバ押圧部73、74間もセンサ固定板81、82間と同じ相対的な傾斜角度を以って向きが異なっている。各光ファイバ押圧部73、74は、取付対象物2hの変位方向、つまり亀裂3bの延在方向にほぼ沿って布設された光ファイバケーブル6の長手方向の異なる位置を、台座73a、74aと押え板73b、74bとの間に挟み込むようにして固定しており、つまり、各光ファイバ押圧部73、74は、取付対象物2hの変位方向にほぼ垂直な直線上に位置決めされている。
そして、この光ファイバセンサ80では、取付対象物2g、2h間に離間方向の変位が生じると、各取付対象物2g、2hと一体的に変位する光ファイバ押圧部73、74によって光ファイバケーブル6を逆向きに押圧することで、光ファイバケーブル6に曲げ変形を与える。
【0083】
センサ固定板81、82は、L字形に限定されず、例えば長方形状等、各種構成が採用可能であるが、図28のように、L字形のセンサ固定板81、82を採用し、各光ファイバ押圧部73、74を、いずれも、各センサ固定板81、82のL字の屈曲部を介して一方の突出部の側に設け、各センサ固定板81、82の光ファイバ押圧部73、74が固定された部分を、相手側のセンサ固定板81、82のL字の内角側の空間に対応させるようにして配置すれば、例えば、台座73a、74aをセンサ固定板81、82に対して固定するネジ76(図26(a)、(b)、図27(a)、(b)参照)の回転操作や、光ファイバ押圧部73、74の押え板73b、74bを着脱するネジ79の回転操作の作業スペースを確保できる利点がある。
【0084】
取付対象物2g、2hに対する光ファイバセンサ80の設置方法は、マーキング工程と、センサ固定板挿入工程と、レベル調整工程と、センサ組立工程とを備えて構成される。
【0085】
(マーキング工程)
図29に示すように、まず、各センサブロック80a、80bを組み立て、各光ファイバ押圧部73、74に位置決めロッド83を固定してセンサブロック80a、80b同士を位置決めロッド83で連結した状態にしておく。位置決めロッド83は、金属等の強度の高い素材からなり、この位置決めロッド83に固定した両光ファイバ押圧部73、74(詳細には押え板73b、74bの光ファイバ収納溝86a、86bの位置)は、この位置決めロッド83の中心軸線上に位置決めされる。
各光ファイバ押圧部73、74での位置決めロッド83の固定は、光ファイバケーブル6の固定と同様に、台座73a、74aと押え板73b、74bとの間の挟み込みにより行う。そして、各センサブロック80a、80bのセンサ固定板81、82を各取付対象物2g、2hに当接あるいは近接配置し、これらセンサ固定板81、82をマーキング治具として機能させて、アンカー打ち込み位置をマーキングする。
【0086】
各光ファイバ押圧部73、74の位置決めロッド83回りの固定位置(向き)を変更すると、これに伴い各センサ固定板81、82間の相対的な傾斜角度を変更できるから、このセンサ固定板81、82の位置決めロッド83回りの回転によって、各取付対象物2g、2hの表面間の相対的な傾斜角度θ0にセンサ固定板81、82の相対的な傾斜角度θ1を簡単に対応させることができる。但し、θ0とθ1とは必ずしも完全に一致させる必要は無く、取付対象物2g、2hの表面の状態等に対応してセンサ固定板81、82の取り付けに有利な傾斜角度θ1を設定すれば良い。なお、各センサ固定板81、82間の相対的な傾斜角度θ1をどのように設定しても、各光ファイバ押圧部73、74は位置決めロッド83の中心軸線上に位置決めされることには変わりは無い。
【0087】
(センサ固定板挿入工程)
次に、マーキング工程を完了したら、両センサブロック80a、80b同士を位置決めロッド83を介して連結した状態を維持したまま、取付対象物2g、2hから両センサブロック80a、80bを一旦取り外し、前記アンカー打ち込み位置にアンカー33を打ち込んだ後、図30に示すように、前記取付対象物2g、2hから突出された各アンカー33に、前記センサ固定板81、82を該センサ固定板81、82に形成されたアンカー穴81a、82a(図29参照)によって挿入する。図30では、アンカー33は、各取付対象物2g、2h個別に複数本(図30では2本)打ち込んでおり、同一の取付対象物2g、2hに打ち込んだアンカー33を互いに平行になるようにする。ここで、両センサブロック80a、80bを位置決めロッド83を介して連結した状態はマーキング工程から維持したままとする。なお、各アンカー穴81a、82aは、アンカー33外径よりも若干大きく形成し、同一の取付対象物2g、2hに打ち込んだアンカー33間の平行度の誤差等を吸収できるようにしておく。
【0088】
(レベル調整工程)
次に、各センサ固定板81、82の調整ボルト穴81b、82b(図29参照)に調整ボルト27を挿入し、前記取付対象物2g、2hに突き当てる。図30において、調整ボルト27は、センサ固定板81、82に螺着されるので、回転操作によりセンサ固定板81、82から取付対象物2g、2hへの突出量を調整することで、取付対象物2g、2hに対する各センサ固定板81、82の位置(離間距離)を調整できる(レベル調整)。
各センサ固定板81、82のレベル調整が完了したら、アンカー33に螺着されているナット75によってセンサ固定板81、82を両側から挟み込むようにして固定する。
【0089】
(センサ組立工程)
次に、図31に示すように、各光ファイバ押圧部73、74の押え板73b、74bを取り外して台座73a、74aを開放し、この台座73a、74aをセンサ固定板81、82に固定するネジ76(図26(a)、(b)、図27(a)、(b)参照)を緩め、各センサ固定板81、82に対するスライド移動により、両台座73a、74a間の離間距離(隙間X3)を調整する。各台座73a、74aの位置決めは、第3実施形態のセンサ組立工程と同様の手順で、各台座73a、74aの長穴77a、77b(図26(a)、(b)、図27(a)、(b)参照)の範囲の移動で行う。図31中、符号84aはセンサ固定板81側のマーキング、符号84bは台座73a側のマーキングであり、まず、マーキング84a、84bを一致させて台座73aを位置決めしてセンサ固定板81に固定し、次いで、この台座73aに対して他方の台座74aを位置決めして、適切な隙間X3を設定した後、この台座74aをセンサ固定板82に固定する。各長穴77a、77bの長さ方向は、当初、光ファイバ押圧部73、74に固定されていた位置決めロッド83の長手方向に沿って正確に揃えられており、台座73aの長穴77a内にネジ76の両側に接触するスペーサ85が収納されていることは第3実施形態と同じであるから、台座73aのスライド移動は取付対象物2hの変位方向にほぼ沿った直線上での移動であり、台座73aはがたつきを生じること無く円滑にスライド移動され、マーキング84a、84b同士を一致させれば正確に位置決めされる。一方、台座74aの長穴77bにはスペーサ85を収納しておらず、台座74aは長穴77bの長手方向のみならず、長穴77bの幅方向(長手方向に垂直の方向)にも若干の位置調整が可能である。したがって、正確に位置決めした一方の台座73aに対して他方の台座74aを位置決めすることで、両台座73a、74aを適切位置に位置決めできるのである。
なお、位置決めロッド83は、台座73a、74aを開放した際に撤去する。各台座73a、74aの位置決め、センサ固定板81、82に対する固定を完了したら、この台座73a、74aに引き込んだ光ファイバケーブル6を挟み込むようにして押え板73b、74bを取り付けて固定する。
そして、センサブロック81、82を収納するカバーの取り付け等を行うことで光ファイバセンサ80全体の組立を完了する。
【0090】
したがって、本実施形態の設置方法によれば、一対の取付対象物の相対的に傾斜する表面間に対しても、その相対的な傾斜角度に関わらず、光ファイバセンサ80を効率良く設置でき、しかも、光ファイバケーブル6を固定する一対の光ファイバ押圧部73、74間に目的寸法の隙間X3を精度良く設定できる。
【0091】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されず、例えば、光ファイバセンサの詳細や、光ファイバセンサの光ファイバの光試験に係る監視ユニットの構造等は適宜変更可能であることは言うまでもない。光ファイバセンサとしては、光ファイバに曲げ変形を与えるものがより好ましいが、これに限定されず、例えば、取付対象物の変位に対応して光ファイバを破断させる構成のものを採用することも可能である。
前記各実施形態では、監視基準物と監視対象物とからなる一対の取付対象物に対して光ファイバセンサを設置する場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、いずれも監視対象物からなる一対の取付対象物に対する設置にも適用可能である。また、前記各実施形態では、一対の取付対象物に対して一対のセンサブロックを取り付ける構成を示したが、本発明では、例えば、一つの光ファイバセンサにて、それぞれ別々の監視対象物や監視基準物に固定された3以上のセンサブロックを同一の光ファイバに対して取り付けた構成をも含む。すなわち、この構成においても、光ファイバに曲げ等の変形や破断を生じさせるのは、一対のセンサブロックの光ファイバ押圧部間であるものと考えられ、センサブロックの対が複数存在すると考えられるものは、本発明に含まれる。
本発明の光ファイバセンサを適用した光監視システムの監視対象(光ファイバセンサの設置位置)は、地山斜面の岩盤に限定されず、例えば、地山斜面の土塊や不安定地層、平坦地に存在する岩盤、河川堤防等の各種堤体等であっても良く、また、地山斜面に設置された擁壁、道路や鉄道などの高架部の人工構造物の局所的や変位、変形、崩壊等の監視にも適用可能である。
【0092】
【発明の効果】
本発明の光ファイバセンサの設置方法によれば、表面の凹凸の激しい取付対象物に対しても効率良く光ファイバセンサを設置でき、光ファイバセンサの適用対象を広げることができる。しかも、一対の取付対象物にそれぞれ取り付けられる一対のセンサブロックの光ファイバ押圧部を、光ファイバに曲げ等の変形や破断等を与えることのできる位置関係に位置決めすることも容易であるため、この設置方法により設置した光ファイバセンサでは、取付対象物間の変位の監視精度を確保できるといった優れた効果を奏する。
請求項1記載の発明では、レベル調整工程にて、センサ固定板から突出量可変のレベル調整部材を取付対象物に突き当てることで、センサ固定板の取付対象物に対するレベル出し(離間距離および向きの調整)を取付対象物表面の凹凸等に関係無く行うことができるといった優れた効果を奏する。
請求項2記載の発明では、アンカーに固定したレベル調整補助部品にレベル調整部材を突き当てることで、センサ固定板のレベル出しを行うので、より表面の凹凸の激しい取付対象物にも対応して光ファイバセンサを設置できるといった優れた効果を奏する。
請求項3記載の発明では、センサブロックの位置決めロッドに対する固定位置を位置決めロッド回りに自在に設定できることで、センサブロック間並びにセンサ固定板間の相対的な傾斜角度を調整できるため、特に、一対の取付対象物表面が相対的な傾斜角度を以って傾斜されている場合でも、両取付対象物に対してセンサ固定板を効率良く取り付けることができ、光ファイバセンサを効率良く設置できるといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の1実施の形態の光ファイバセンサを示す図であって、岩盤の崩壊を監視する光監視システムへの適用例を示す全体図である。
【図2】 本発明に係る光ファイバセンサに適用される光ファイバケーブルの断面構造の一例を示す断面図である。
【図3】 図1の光ファイバセンサを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】 図3の光ファイバセンサの設置例を示す平面図であって、岩盤の変形前を示す。
【図5】 図3の光ファイバセンサの作用を示す平面図であって、岩盤の変形後を示す。
【図6】 図3の光ファイバセンサの各センサブロックから突設された押圧片の光ファイバケーブルに対する配置状態を示す図であって、設置初期状態を示す。
【図7】 図7の押圧片が、岩盤の変形によって光ファイバケーブルに曲げ変形を与えた状態を示す。
【図8】 図1の光監視システムの制御装置の構成を示すブロック図である。
【図9】 図3の光ファイバセンサの一対のセンサブロック間の離間方向の変位量Lと光ファイバケーブルの光ファイバの光試験によって観測される光損失との関係を示すグラフである。
【図10】 本発明の第1実施形態の設置方法に使用されるマーキング治具を示す正面図であり、(a)は取付対象物間のせん断方向の変位監視に対応する場合、(b)は取付対象物間の離間方向(亀裂を拡張する方向)の変位監視に対応する場合を示す。
【図11】 本発明の第1実施形態の設置方法に係るアンカーの固定作業を示す手順図であって、(a)はアンカーナットの挿入作業、(b)はアンカー(アンカーボルト)の螺着作業、(c)はアンカーナットへのアンカーの固定を完了した状態を示す。
【図12】 本発明の第1実施形態の設置方法に適用される光ファイバセンサの一対のセンサ固定板をレベル出し部材に取り付けて位置決めして連結した状態を示す平面図である。
【図13】 本発明の第1実施形態の設置方法に適用される光ファイバセンサのセンサ固定板を傾き調整ナットに押圧する工程を示す図であって、(a)は傾き調整ナットをアンカーに螺着した状態、(b)は傾き調整ナットにセンサ固定板を押圧した状態を示す。
【図14】 本発明の第1実施形態のレベル調整工程を示す手順図であって、(a)は、センサ固定板から調整ボルトを取付対象物に向けて突出させる工程、(b)は、センサ固定板から突出させた調整ボルトを取付対象物に突き当てた状態を示す。
【図15】 本発明の第1実施形態のセンサ組立工程にて、一対の光ファイバ押圧部先端の複数の押圧片に形成された光ファイバ収納穴に、光ファイバケーブルを収納する手順を示す図であって、(a)は重ね合わせた一対の光ファイバ押圧部間に光ファイバケーブルを挿入する工程を示す斜視図、(b)は(a)の側面図、(c)は一対の光ファイバ押圧部間を開く工程を示す側面図、(d)は一対の光ファイバ押圧部を180°に開いた状態を示す平面図、(e)は(d)の側面図である。
【図16】 本発明の第2実施形態に適用される光ファイバセンサを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図17】 図16の光ファイバセンサの押圧片を構成する押圧片分割部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図18】 図16の光ファイバセンサの一対の光ファイバ押圧部を示す斜視図である。
【図19】 (a)は、本発明の第2実施形態の設置方法のセンサ固定板挿入工程にて、アンカーに挿入したレベル調整補助部品を示す斜視図、(b)は前記レベル調整補助部品に回転防止ボルトを取り付けた状態を示す正面図である。
【図20】 本発明の第2実施形態の設置方法のセンサ固定板挿入工程にて、同一平面上となるように揃えて各アンカーに固定されたレベル調整部材を示す正面図である。
【図21】 本発明の第2実施形態の設置方法のセンサ固定板挿入工程にて、一方の取付対象物の複数本のアンカーに挿入して固定されたレベル調整補助部品を示す正面図である。
【図22】 図21にて適用されるレベル調整補助部品の一例を示す平面図である。
【図23】 本発明の第3実施形態に適用される光ファイバセンサを示す斜視図である。
【図24】 本発明の第3実施形態の設置方法にて、レベル出し部材で連結した一対のセンサ固定板を、それぞれ取付対象物に打ち込まれたアンカーに挿入した状態を示す斜視図である。
【図25】 本発明の第3実施形態の設置方法のセンサ組立工程にて、各センサ固定板に固定されている台座からレベル出し部材を取り外した状態を示す斜視図である。
【図26】 監視対象物側のセンサ固定板に固定された台座に形成された長穴と、この長穴に挿入されたネジとを示す図であって、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【図27】 監視基準物側のセンサ固定板に固定された台座に形成された長穴と、この長穴に挿入されたネジとを示す図であって、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【図28】 本発明の第4実施形態の設置方法にて適用される光ファイバセンサを示す斜視図である。
【図29】 本発明の第4実施形態の設置方法のマーキング工程にて、位置決めロッドに取り付けて連結した一対のセンサブロックのセンサ固定板をそれぞれマーキング治具として取付対象物に対して近接配置した状態を示す斜視図である。
【図30】 本発明の第4実施形態の設置方法のセンサ固定板挿入工程を示す図であって、位置決めロッドで連結した一対のセンサブロックのセンサ固定板を、それぞれ取付対象物に打ち込まれたアンカーに挿入した状態を示す斜視図である。
【図31】 本発明の第4実施形態の設置方法のセンサ組立工程にて、レベル調整工程の完了後、各センサ固定板に固定されている光ファイバ押圧部の押え板を取り外し、台座を開放した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
2…取付対象物(岩盤)、2c,2e,2g…取付対象物(監視基準物)、2d,2f,2h…取付対象物(監視対象物)、6…光ファイバ(光ファイバケーブル)、6b…光ファイバ、11…光ファイバセンサ、24,64…レベル出し部材(連結プレート)、27…レベル調整部材(調整ボルト)、31,32…センサブロック、31c,32c…センサ固定板、31d,32d…光ファイバ押圧部(押圧片固定ブロック)、33…アンカー(アンカーボルト)、50…光ファイバセンサ、50a,50b…センサブロック、51,52…光ファイバ押圧部(押圧片ブロック)、51p,52p…センサ固定板、60,63…レベル調整補助部品、70…光ファイバセンサ、70a,70b…センサブロック、71,72…センサ固定板、73,74…光ファイバ押圧部、80…光ファイバセンサ、80a,80b…センサブロック、81,82…センサ固定板,マーキング治具、83…位置決めロッド。

Claims (3)

  1. 崩壊の可能性のある不安定地層、変位の可能性のある岩石等の自然物、あるいは擁壁などの人工構造物等である監視対象物からなる一対の取付対象物(2)に対して、あるいは、安定岩盤(2c、2e)等からなる監視基準物(2c、2e)と前記監視対象物とからなる一対の取付対象物(2d、2f)に対して個別のセンサ固定板(31c、32c、71、72)によって別々に取り付けられる一対のセンサブロック(31、32、70a、70b)を備え、各センサブロックに設けられた光ファイバ押圧部(31d、32d、73、74)が両取付対象物が存在する監視対象領域に布設された光ファイバ(6、6b)の長手方向の異なる位置に配置され、前記取付対象物間の相対変位によって両センサブロック間が相対変位することで、各センサブロックの光ファイバ押圧部が前記光ファイバを両側から逆向きに押圧して該光ファイバに曲げ等の変形や破断等を生じさせる光ファイバセンサ(11、70)の設置方法であって、
    前記各センサブロックの前記センサ固定板をレベル出し部材(24、64)に対して固定することで各センサ固定板間を位置決めし、この状態を維持したまま、各センサブロックを取り付ける目的の取付対象物に打ち込まれたアンカー(33)に前記センサ固定板を挿入するセンサ固定板挿入工程と、
    このセンサ固定板挿入工程の完了後、各センサブロックの前記センサ固定板に突出量可変に設けられたレベル調整部材(27)を前記取付対象物に突き当てて各センサ固定板を前記アンカーに対して固定するレベル調整工程と、
    このレベル調整工程の完了後、各センサブロックから前記レベル出しブロックを取り外し、各センサ固定板にセンサブロックを組み立てるセンサ組立工程
    とを備えることを特徴とする光ファイバセンサの設置方法。
  2. 崩壊の可能性のある不安定地層、変位の可能性のある岩石等の自然物、あるいは擁壁などの人工構造物等である監視対象物からなる一対の取付対象物(2)に対して、あるいは、安定岩盤等からなる監視基準物(2c)と前記監視対象物(2d)とからなる一対の取付対象物に対して個別のセンサ固定板(51p、52p)によって別々に取り付けられる一対のセンサブロック(50a、50b)を備え、各センサブロックに設けられた光ファイバ押圧部(51、52)が両取付対象物が存在する監視対象領域に布設された光ファイバ(6、6b)の長手方向の異なる位置に配置され、前記取付対象物間の相対変位によって両センサブロック間が相対変位することで、各センサブロックの光ファイバ押圧部が前記光ファイバを両側から逆向きに押圧して該光ファイバに曲げ等の変形や破断等を生じさせる光ファイバセンサ(50)の設置方法であって、
    前記各センサブロックの前記センサ固定板をレベル出し部材(24)に対して固定することで各センサ固定板間を位置決めし、この状態を維持したまま、各センサブロックを取り付ける目的の取付対象物に打ち込まれたアンカー(33)に前記センサ固定板を挿入するセンサ固定板挿入工程と、
    このセンサ固定板挿入工程の完了後、各センサブロックの前記センサ固定板に突出量可変に設けられたレベル調整部材(27)を、前記アンカーに固定したレベル調整補助部品(60、63)に突き当てて各センサ固定板を前記アンカーに対して固定するレベル調整工程と、
    このレベル調整工程の完了後、各センサブロックから前記レベル出しブロックを取り外し、各センサ固定板にセンサブロックを組み立てるセンサ組立工程
    とを備えることを特徴とする光ファイバセンサの設置方法。
  3. 崩壊の可能性のある不安定地層、変位の可能性のある岩石等の自然物、あるいは擁壁などの人工構造物等である監視対象物からなる一対の取付対象物(2)に対して、あるいは、安定岩盤等からなる監視基準物(2g)と前記監視対象物(2h)とからなる一対の取付対象物に対して個別のセンサ固定板(81、82)によって別々に取り付けられる一対のセンサブロック(80a、80b)を備え、各センサブロックに設けられた光ファイバ押圧部(73、74)が両取付対象物が存在する監視対象領域に布設された光ファイバ(6、6b)の長手方向の異なる位置に配置され、前記取付対象物間の相対変位によって両センサブロック間が相対変位することで、各センサブロックの光ファイバ押圧部が前記光ファイバを両側から逆向きに押圧して該光ファイバに曲げ等の変形や破断等を生じさせる光ファイバセンサ(80)の設置方法であって、
    前記各センサブロックの前記光ファイバ押圧部を位置決めロッド(83)の長手方向の異なる位置に、該該位置決めロッド回りに固定向き可変に取り付け、各光ファイバ押圧部に対して固定したマーキング治具(81、82)をそれぞれ取付対象物の表面に接近または当接させて各光ファイバ押圧部を前記位置決めロッドに固定するとともに、アンカー(33)の打ち込み位置を前記取付対象物にマーキングするマーキング工程と、
    前記アンカー打ち込み位置に打ち込んだアンカーの前記取付対象物から突出された部分に対して、前記光ファイバ押圧部に固定された前記センサ固定板を、各光ファイバ押圧部の前記位置決めロッドに対する固定状態を維持したままそれぞれ挿入するセンサ固定板挿入工程と、
    このセンサ固定板挿入工程の完了後、各センサ固定板に突出量可変に設けられたレベル調整部材(27)を前記取付対象物に突き当ててセンサ固定板を前記アンカーに対して固定するレベル調整工程
    とを備えることを特徴とする光ファイバセンサの設置方法。
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