本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、各実施形態は、CCD固体撮像装置を例に挙げて説明しているが、本発明はこれ限定されるものではなく、MOS固体撮像装置に適用することも可能である。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構造を示す模式図である。この固体撮像装置は、複数の光電変換部309がマトリックス状に配置され、各光電変換部列に対応するように、光電変換部309からの信号電荷を垂直方向に転送するためのCCD構造の垂直転送レジスタ312が配置されている(以下、この領域を「撮像領域」という。)。更に、各垂直転送レジスタ312の端部に接続するように、垂直転送レジスタ312からの信号電荷を水平方向に転送するCCD構造の水平転送レジスタ341が配置され、水平転送レジスタ341の終段に出力部342が配置されている。なお、図中の340は一画素を示す。
図2は、上記CCD固体撮像装置における撮像領域の構造の一例を示す断面図であり、図1のA−A’断面図である。
N-型半導体基板301内にP-型ウェル領域302が形成されており、このP-型ウェル領域302内にN型光電変換領域303が形成されている。このN型光電変換領域303とP-型ウェル領域302とのPN接合によりフォトダイオードが構成されており、これにより光電変換部309が形成されている。この光電変換部309は、各画素に対応するように配置されている。また、光電変換領域303の不純物濃度は、特に限定するものではないが、例えば1015〜1018cm-3、好ましくは1016〜1017cm-3である。
更に、P-型ウェル領域302内には、N型転送チャネル領域304、P型読み出し領域305およびP+型チャネルストップ領域306が形成されている。また、N型転送チャネル領域304の直下には、P型ウェル領域308が形成されている。
N型転送チャネル領域304、P型読み出し領域305およびP+型チャネルストップ領域306上には、ゲート絶縁膜310を介して、転送電極311が形成されている。このN型転送チャネル領域304、ゲート絶縁膜310および転送電極311により、垂直転送レジスタ312が構成されている。ゲート絶縁膜310としては、例えば、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜などを使用することができ、転送電極311としては、例えば、多結晶シリコンを使用することができる。
転送電極311表面には、第1層間絶縁膜313が形成されている。第1層間絶縁膜313としては、例えば、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜などを使用することができる。
光電変換部309においては、光電変換領域303上に第2層間絶縁膜314が形成されている。この第2層間絶縁膜314は、垂直転送レジスタ312においては第1層間絶縁膜311上に形成されている。第2層間絶縁膜314としては、例えば、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜などを使用することができる。また、その膜厚は、例えば10〜300nm、好ましくは50〜150nmである。
第2層間絶縁膜314上には導電性遮光膜315が形成されている。この導電性遮光膜315は、垂直転送レジスタ312に直接光が入射しないように転送電極311表面を被覆するように形成されており、光電変換領域303の少なくとも一部の上方には開口316が設けられている。図示のように、導電性遮光膜315は、マイナス電源に電気的に接続されている。また、図3に示すように、導電性遮光膜315は、駆動パルスφPSが印加されるように配線されていてもよい。なお、導電性遮光膜315としては、例えば、タングステン、アルミニウム、タングステンシリサイドなどを使用することができる。
導電性遮光膜315上には透明導電膜321が形成されている。これにより、光電変換領域303上には、導電性遮光膜の開口316においては透明導電膜321が、その他の部分においては導電性遮光膜315が、それぞれ、第2層間絶縁膜314を介して形成されることとなる。また、本実施形態においては、透明導電膜321と導電性遮光膜315とは直接接触するように形成されており、これにより互いに電気的に接続されている。
透明導電膜321としては、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、シリコンなどを使用することができる。また、透明導電膜321として、半導体基板の屈折率と保護膜の屈折率との間の屈折率を有する材料を使用すれば、透明導電膜を反射防止膜として機能させることができ、スミアの更なる低減と感度向上を図ることができるため、好ましい。
透明導電膜321上には保護膜317が形成されており、この保護膜317上には平坦化膜318が形成されている。保護膜317としては、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜などを使用することができ、平坦化膜318としては、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、樹脂などを使用することができる。
更に、平坦化膜318上にはカラーフィルタ層319が形成され、カラーフィルタ層319上には、各光電変換部309に対応するように、マイクロレンズ320が形成されている。
本実施形態の固体撮像装置においては、光電変換領域303上に、第2層間絶縁膜314を介して、導電性遮光膜315および透明導電膜321が形成されることにより、MOSキャパシタ構造が形成されている。このような構造とすることにより、導電性遮光膜315および透明導電膜321にマイナス電圧を印加することによって、光電変換領域303の表層部にP++型蓄積領域329を形成することができる。この電圧印加により形成されるP++型蓄積領域329は、光電変換部309の基板表面で発生する暗電流をトラップするという作用を果たす。
P++型蓄積領域329の深さ(XJ)は、例えば0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下である。また、その正孔濃度は、例えば1017cm-3以上、好ましくは1018〜1019cm-3である。また、導電性遮光膜315および透明導電膜321に印加されるマイナス電圧は、特に限定するものではないが、形成されるP++型蓄積領域329の正孔濃度が前記範囲となるように設定することが好ましい。具体的には、例えば−1〜−10V、好ましくは−2〜−8Vに設定することができる。
次に、本実施形態に係る固体撮像装置の駆動方法の好ましい一例について、図4を用いて説明する。なお、ここで説明する駆動方法は、図3に示すような固体撮像装置、すなわち導電性遮光膜315に駆動パルスφPSが印加されるように構成された固体撮像装置に適用されるものである。
上記固体撮像装置においては、光電変換領域303に光が入射し、これが光電変換されて、信号電荷が発生する。発生した信号電荷は、光電変換領域303に蓄積される。そして、蓄積された信号電荷は、転送チャネル領域304に読み出され、転送される。
φVは、電荷転送部の転送電極311に印加されるパルスであり、例えば、ハイレベルVH(例えば、12V)、ミドルレベルVM(例えば、0V)およびローレベルVL(例えば、−8V)の三値のパルスからなる。このφVが印加される転送電極311は、光電変換領域303に蓄積された信号電荷を転送チャネル領域304に読み出す動作と、読み出された信号電荷を転送チャネル領域308において転送する動作とを行う。例えば、前記転送電極にハイレベルVHのパルスが印加されると、光電変換領域303から転送チャンネル領域304へ信号電荷が読み出される。また、ミドルレベルVMとローレベルVLのパルスが繰り返し印加されることで、転送チャネル領域304における電荷転送が実施される。
φPSは、導電性遮光膜315および透明導電膜321に印加されるパルスであり、例えば、ハイレベルVH’(例えば、12V)およびローレベルVL’(例えば、−8V)の二値のパルスからなる。導電性遮光膜315および透明導電膜321にローレベルVL’のパルスが印加されると、光電変換領域303の表層部にはP++型蓄積領域329が形成され、これが暗電流をトラップするための正孔蓄積領域として機能する。
図示のように、転送電極311にミドルレベルVMとローレベルVLのパルスが印加され、電荷転送が実施される期間(T1)においては、導電性遮光膜315および透明導電膜321にはローレベルVL’のパルスが印加される。この期間T1は、光電変換領域303において信号電荷の蓄積が実施される期間でもある。期間T1においては、前述したように、光電変換領域303の表層部にP++型蓄積領域329が形成され、暗電流やスミアの発生が抑制される。一方、転送電極311にハイレベルVHのパルスが印加され、光電変換領域303から転送チャンネル領域304へ信号電荷が読み出される期間(T2)においては、導電性遮光膜315および透明導電膜321にはハイレベルVH’のパルスが印加される。そのため、光電変換領域303の表面近傍の電位が深くなるため、信号電荷の読み出しを更に低電圧化することが可能となる。
なお、本実施形態における固体撮像装置の駆動方法は、上記方法に限定されるものではない。少なくとも光電変換領域において信号電荷の蓄積が実施される期間に、導電性遮光膜および透明導電膜にマイナス電圧が印加されればよい。例えば、図2に示すように、導電性遮光膜および透明導電膜にマイナスの定電圧を印加してもよい。この場合、マイナスの定電圧として、固体撮像装置を動作させる際のマイナス電源を使用すれば、回路の増加を防ぐことができる。
次に、本実施形態に係る固体撮像装置により達成される効果について、図5を用いて説明する。
従来の固体撮像装置において、暗電流をトラップするための正孔蓄積領域(図20および図22の107)は、P型不純物のイオン注入により形成される。そのため、従来の正孔蓄積領域の深さを小さくするには限界があり、0.2μm以下とすることは非常に困難であった。なお、従来の正孔蓄積領域の深さは、一般に、0.3μmであった。
これに対して、本実施形態の固体撮像装置においては、前述したように、遮光膜315および透明導電膜321にマイナス電圧を印加することにより、P++型蓄積領域329を形成し、これを暗電流をトラップするための正孔蓄積領域として機能させることができる。そのため、この正孔蓄積領域の深さを小さく、例えば0.1μm以下とすることが可能となる。その結果、次のような効果を実現することができる。
まず、第1の効果として、暗電流抑制のための正孔蓄積領域であるP++型蓄積領域329の深さを小さくできるため、光電変換により発生した信号電荷322による表面拡散電流323が、転送チャネル領域304に流れ込みにくくなり、その結果、スミアを低減することが可能となる。図6は、スミアの大きさと、暗電流抑制のための正孔蓄積領域の深さ(XJ)との関係を示すグラフである。このグラフに示すように、例えば、正孔蓄積領域であるP++型蓄積領域329の深さを0.1μmとした場合、正孔蓄積領域の深さが0.3μmである場合に比べて、スミアを約4dB低減することができる。
第2の効果として、信号電荷322を光電変換領域303から転送チャネル領域304に読み出す際、読み出し領域305の表面付近に電荷読み出し経路324を形成することができ、その結果、信号電荷322が読み出し易くなる。図7は、読み出し電圧の大きさと、暗電流抑制のための正孔蓄積領域の深さ(XJ)との関係を示すグラフである。このグラフに示すように、例えば、正孔蓄積領域であるP++型蓄積領域329の深さを0.1μmとした場合、正孔蓄積領域の深さが0.3μmである場合に比べて、読み出し電圧を約2.0V低減することができる。
また、本実施形態の固体撮像装置においては、暗電流をトラップするための正孔蓄積領域であるP++型蓄積領域329は、遮光膜および透明導電膜への電圧印加により形成されるため、転送電極311に対して自己整合的に構成される。すなわち、P型不純物のイオン注入により形成される従来の正孔蓄積領域とは異なり、転送電極下の領域にまで広がることがなく、正孔蓄積領域と転送チャンネル領域との間隔325は狭くならない。従って、信号電荷322を読み出すために転送電極311に読み出し電圧(通常15V程度)を印加しても、P++型蓄積領域329とN型転送チャネル304の間で強電界によるホットエレクトロンが発生しにくくなる。また、同時に、P++型蓄積領域329は、転送電極311に対して自己整合的に構成されるため、読み出し電圧のバラツキも抑制することができる。
また、P++型蓄積領域329の正孔濃度は、遮光膜315および透明導電膜321に印加されるマイナス電圧を変えることにより、容易に制御することができる。そのため、高濃度化(例えば1018cm-3以上)を容易に実現することができ、第2層間絶縁膜314から不純物イオン(正イオン)がP++型蓄積領域329に拡散してきたとしても、P++型蓄積領域329の最表面が空乏化して暗電流が増加するといった現象を抑制することができ、より一層の暗電流の低減が可能となる。
また、P++型蓄積領域329はN型光電変換領域303をほとんど浸食しないため、N型光電変換領域303形成のために注入されるN型不純物のドーズを低減することが可能となる。従って、イオン注入時の欠陥によって発生する白キズや暗電流の更なる低減が可能となる。
更に、本実施形態の固体撮像装置においては、透明導電膜321は、シリコン基板上に第2層間絶縁膜314を介して形成されるため、光電変換部309の基板表面で接合ダメージを抑制し、これによる暗電流を抑制することができる。
次に、上記固体撮像装置の製造方法の一例について説明する。
N-型シリコン基板内に、ボロンなどのP型不純物をイオン注入し、P-型ウェル領域を形成する。続いて、P-型ウェル領域内に、ボロンなどのP型不純物をイオン注入し、読み出し領域、チャネルストップ領域およびP型ウェル領域をそれぞれ形成する。また、P-型ウェル領域内に、リンまたはヒ素などのN型不純物をイオン注入し、光電変換領域および転送チャンネル領域をそれぞれ形成する。
続いて、シリコン基板上に、熱酸化法によってシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜を形成した後、化学気相成長法(以下、「CVD法」という。)などによって多結晶シリコンを成膜し、これをパターニングして転送電極を形成する。次に、この転送電極を被覆するように、CVD法などによってシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜などからなる第1層間絶縁膜を形成する。
次に、CVD法などによってシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜などからなる第2層間絶縁膜を形成する。続いて、スパッタリング法またはCVD法などにより、アルミニウム、タングステンまたはタングステンシリサイドなどを成膜した後、形成された膜に対してフォトリソグラフィーおよびエッチングを実施して、光電変換領域の端部を除く領域の少なくとも一部上方に対応する部分に開口を形成することにより、遮光膜を形成する。
続いて、導電性遮光膜上、遮光膜の開口部においては第2層間絶縁膜上に、スパッタ法などによってインジウム錫酸化物(ITO)などからなる透明導電膜を形成する。
その後、CVD法などによってシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜などからなる保護膜を形成する。更に、CVD法などによってシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜を形成し、その表面を化学機械研磨法などによって平坦化して、平坦化膜を形成する。次に、平坦化膜上に、カラーレジストを用いたフォトリソグラフィー法によってカラーフィルタを形成した後、マイクロレンズを形成する。マイクロレンズは、熱溶融可能な樹脂を塗布し、これを各受光部に対応するように分割した後、加熱によるリフロー処理を実施することによって形成できる。
なお、上記説明においては、第2層間絶縁膜314上に導電性遮光膜315を形成し、その上に透明導電膜321を形成した構造を例に挙げたが、本実施形態の固体撮像装置はこれに限定されるものではない。光電変換領域の少なくとも一部の上方に第2層間絶縁膜を介して透明導電膜が形成されており、この透明導電膜が導電性遮光膜と電気的に接続されていればよい。例えば、図8に示すように、第2層間絶縁膜314上に透明導電膜321を形成し、その上に導電性遮光膜315を形成してもよい。このような構造によっても、前述したような効果を達成することができ、更に、遮光膜の開口316を形成する際のエッチングダメージが透明導電膜321により吸収されるため、暗電流の少ない光電変換部とすることができる。
なお、上記説明においては、光電変換領域および転送チャネル領域の導電型がN型である場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの領域をP型領域としてもよい。この場合、半導体基板内に形成される各領域(ウェル領域、読み出し領域およびチャネルストップ領域など)の導電型は、上記例とは逆の導電型にすればよい。このように、光電変換領域および転送チャネル領域の導電型がP型である場合は、導電性遮光膜および透明導電膜に印加される電圧としてプラス電圧を用いることにより、上記と同様の効果を達成することができる。
(第2の実施形態)
本実施形態に係る固体撮像装置においては、第1の実施形態と同様に、光電変換部および垂直転送レジスタにより撮像領域が形成され、撮像領域の周辺に水平転送レジスタおよび出力部が配置されている。
図9は、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置の撮像領域の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態の固体撮像装置は、光電変換領域303の表層部にP型不純物拡散領域330が形成されていること以外は、第1の実施形態と同様の構造を有する。また、各部材の材質としても、第1の実施形態と同様の材質を使用することができる。
P型不純物拡散領域330の不純物濃度は、例えば1016〜1019cm-3、好ましくは1017〜1018cm-3である。また、その拡散深さは、例えば0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下である。
本実施形態の固体撮像装置においては、P型不純物拡散領域330上に、第2層間絶縁膜314を介して、導電性遮光膜315および透明導電膜321が形成されることにより、MOSキャパシタ構造が形成されている。このような構造とすることにより、導電性遮光膜315および透明導電膜321にマイナス電圧を印加することによって、P型不純物拡散領域330の表層部にP++型蓄積領域331を形成することができる。この電圧印加により形成されるP++型蓄積領域331は、光電変換部309の基板表面で発生する暗電流をトラップするための正孔蓄積領域として機能する。
P++型蓄積領域331の深さ(XJ)は、例えば0.1μm以下、好ましくは0.01〜0.05μmである。また、その正孔濃度は、例えば1018cm-3以上、好ましくは1018〜1019cm-3である。また、導電性遮光膜315および透明導電膜321に印加されるマイナス電圧は、特に限定するものではないが、形成されるP++型蓄積領域331の正孔濃度が前記範囲となるように設定することが好ましい。具体的には、例えば−1〜−10V、好ましくは−2〜−8Vに設定することができる。
なお、この固体撮像装置の駆動方法としては、第1の実施形態で説明したものと同様の駆動方法を採用することができる。
本実施形態においても、前述したような、第1の実施形態と同様の効果を達成することができる。更に、本実施形態によれば、第1の実施形態に比べて、遮光膜および透明導電膜に印加される電圧の絶対値を小さくすることができるため、遮光膜315と転送電極311の間の電界および遮光膜315とシリコン基板の間の電界を緩和し、固体撮像装置の信頼性を向上させることが可能となる。
(第3の実施形態)
本実施形態に係る固体撮像装置においては、第1の実施形態と同様に、光電変換部および垂直転送レジスタにより撮像領域が形成され、撮像領域の周辺に水平転送レジスタおよび出力部が配置されている。
図10は、第3の実施形態の固体撮像装置における撮像領域の構造の一例を示す断面図である。
N-型シリコン基板401内にP-型ウェル領域402が形成されており、このP-型ウェル領域402内にN型光電変換領域403が形成され、この部分が光電変換部409となる。なお、光電変換領域403の不純物濃度は、例えば1015〜1018cm-3、好ましくは1016〜1017cm-3である。また、P-型ウェル領域402内には、N型転送チャネル領域404、P型読み出し領域405およびP+型チャネルストップ領域406が形成されており、N型転送チャネル領域404の直下にはP型ウェル領域408が形成されている。N型転送チャネル領域404上にはゲート絶縁膜410を介して転送電極411が形成されており、この部分が垂直転送レジスタ412となる。また、転送電極411の表面には第1の層間絶縁膜413が形成されている。
更に、本実施形態に係る固体撮像装置においては、光電変換領域403の表層部に、P++型不純物拡散領域407が形成されている。このP++型不純物拡散領域407は、図11に示すように、光電変換領域403の端部を除く領域に形成されている。換言すれば、光電変換領域403の端部を含む領域には、P++型不純物拡散領域407は形成されない。P++型不純物拡散領域407の端部から光電変換領域403の端部までの距離(以下、「オフセット距離」という。)は、例えば0.2μm以上、好ましくは0.3〜0.5μmである。また、P++型不純物拡散領域407の不純物濃度は、例えば1017〜1020cm-3、好ましくは1018〜1019cm-3であり、拡散深さは、例えば0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下である。
光電変換部409においては光電変換領域403上に、垂直レジスタ412においては第1層間絶縁膜413上に、第2の層間絶縁膜414が形成されており、この第2層間絶縁膜414上に導電性遮光膜415が形成されている。導電性遮光膜415は、垂直転送レジスタ412に直接光が入射しないように、転送電極411表面を被覆するように形成されている。なお、第2層間絶縁膜414の膜厚は、例えば10〜300nm、好ましくは50〜100nmである。
また、導電性遮光膜415には、P++型不純物拡散領域407の少なくとも一部に対応する部分に開口416が設けられている。この開口416は、図10に示すように、光電変換領域403の端部を除く領域に形成されている。換言すると、導電性遮光膜415は、光電変換領域403の端部を含む領域、すなわち、P++型不純物拡散領域407が形成されていない領域を被覆するように形成されている。また、この光電変換領域403の端部を含む領域においては、光電変換領域403と導電性遮光膜415との間に、第2層間絶縁膜414が介在する。更に、導電性遮光膜415は、駆動パルスφPSが印加されるように配線されているか、または、図10に示すようにマイナス電源に電気的に接続されている。
導電性遮光膜415上、および、開口416においては第2層間絶縁膜414上に、保護膜417が形成されている。この保護膜417上には平坦化膜418が形成され、平坦化膜418上にはカラーフィルタ層419が形成され、更にカラーフィルタ層419上には各光電変換部409に対応するようにマイクロレンズ420が形成されている。
本実施形態の固体撮像装置では、光電変換領域403の中央部(すなわち、遮光膜の開口部に対応する部分)においては、基板表層部にP++型不純物拡散領域407が形成されており、このP++型不純物拡散領域407が暗電流をトラップするための正孔蓄積領域として機能する。
また、光電変換領域403の端部を含む部分(すなわち、遮光膜で被覆された部分)においては、基板上に第2層間絶縁膜414を介して導電性遮光膜415が形成されることにより、MOSキャパシタ構造が形成されている。そのため、遮光膜415にマイナス電圧を印加することによって、基板表層部にP++型蓄積領域429を形成することができ、このP++型蓄積領域429を、暗電流をトラップするための正孔蓄積領域として機能させることができる。
P++型蓄積領域429の深さ(XJ)は、例えば0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下である。また、その正孔濃度は、例えば1018cm-3以上、好ましくは1018〜1019cm-3である。また、遮光膜415に印加されるマイナス電圧は、特に限定するものではないが、形成されるP++型蓄積領域429の正孔濃度が前記範囲となるように設定することが好ましい。具体的には、例えば−1〜−10V、好ましくは−2〜−8Vに設定することができる。
なお、この固体撮像装置の駆動方法としては、第1の実施形態で説明したものと同様の駆動方法を採用することができる。
次に、本実施形態に係る固体撮像装置により達成される効果について、図16を用いて説明する。
本実施形態の固体撮像装置においては、前述したように、光電変換領域403の中央部(すなわち、遮光膜の開口部に対応する部分)においては、基板表層部にP++型不純物拡散領域407が形成されており、このP++型不純物拡散領域407が暗電流をトラップするための正孔蓄積領域として機能する。また、光電変換領域403の端部を含む部分(すなわち、遮光膜で被覆された部分)においては、遮光膜415にマイナス電圧を印加することによってP++型蓄積領域429を形成し、これを暗電流をトラップするための正孔蓄積領域として機能させることができる。そのため、この正孔蓄積領域の深さを小さく、例えば0.1μm以下とすることが可能となる。
このように、P++型不純物拡散領域407を光電変換領域403からオフセットさせて形成し、尚且つ、遮光膜にマイナス電圧を印加することによって、このオフセットされた部分にP++型蓄積領域429を形成させる結果、次のような効果を実現することができる。
第1の効果として、光電変換により発生した信号電荷422による表面拡散電流423が、転送チャネル領域404に流れ込みにくくなり、その結果、スミアを低減することが可能となる。図17は、遮光膜にマイナス電圧を印加した場合と印加しない場合における、スミアの大きさと、P++型不純物拡散領域407と光電変換領域403とのオフセット距離との関係を示すグラフである。このグラフに示すように、例えば、オフセット距離を0.3μmとし、且つ、遮光膜にマイナス電圧を印加した場合、オフセット距離が0μmである場合に比べて、スミアを約5dB低減することができる。
第2の効果として、信号電荷422を光電変換領域403から転送チャネル領域404に読み出す際、読み出し領域405の表面付近に電荷読み出し経路424を形成することができ、その結果、信号電荷422が読み出し易くなる。図18は、読み出し電圧の大きさと、P++型不純物拡散領域407と光電変換領域403とのオフセット距離との関係を示すグラフである。このグラフに示すように、例えば、オフセット距離を0.3μmとした場合、オフセット距離が0μmである場合に比べて、読み出し電圧を約3.5V低減することができる。
また、本実施形態の固体撮像装置においては、正孔蓄積領域(P++型領域)とN型転送チャネル領域の間隔425は狭くならないため、信号電荷422を読み出すために転送電極411に読み出しパルス(通常15V程度)を印加しても、P++型蓄積領域429とN型転送チャネル404の間で強電界によるホットエレクトロンが発生しにくくなる。また、同時に、P++型蓄積領域429は、転送電極411に対して自己整合的に構成されるため、読み出し電圧のバラツキも抑制することができる。
また、P++型蓄積領域429の正孔濃度は、遮光膜415に印加されるマイナス電圧を変えることにより、容易に制御することができる。そのため、高濃度化(例えば1018cm-3以上)を容易に実現することができ、より一層の暗電流の低減が可能となる。
また、P++型蓄積領域429はN型光電変換領域403をほとんど浸食しないため、N型光電変換領域403形成のために注入されるN型不純物のドーズを低減することが可能となる。従って、イオン注入時の欠陥によって発生する白キズや暗電流の更なる低減が可能となる。
また、遮光膜415は第2層間絶縁膜414の表面に直接形成されるため、転送電極と遮光膜との隙間427および遮光膜とシリコン基板との隙間428を比較的小さく設定することが可能である。従って、遮光膜415の被覆性の劣化や、遮光膜の開口部416の縮小といった問題を回避することが可能である。
次に、上記固体撮像装置の製造方法の一例について説明する。
N-型シリコン基板内にP-型ウェル領域を形成し、このP-型ウェル領域内に、読み出し領域、チャネルストップ領域、P型ウェル領域をそれぞれ形成する。また、P-型ウェル領域内に、光電変換領域および転送チャンネル領域をそれぞれ形成する。続いて、シリコン基板上にゲート絶縁膜を形成した後、転送電極を形成する。次に、この転送電極を被覆するように第1層間絶縁膜を形成する。なお、ここまでの工程は、第1の実施形態と同様にして実施することができる。
続いて、P++型不純物拡散領域を形成する。この工程は、例えば、次のような第1〜第5の方法により実施することができる。
図11は、第1の方法を説明するための模式図である。この第1の方法においては、まず、シリコン基板上に、光電変換領域403の端部を除く部分を開口したフォトレジスト432を形成する。このとき、フォトレジスト432の開口は、特に限定するものではないが、例えば、画素の垂直方向に伸びるストライプ形状や、遮光膜の開口形状に対応させたボックス形状とすることができる。続いて、このフォトレジスト432をマスクとして用いて、例えばBおよびBF2などのP型不純物をイオン注入する。注入条件は、特に限定するものではないが、例えば、ドーズ量を1013〜1014cm-2とし、加速電圧を5〜50keVとすることができる。
図12は、第2の方法を説明するための模式図である。この第2の方法においては、まず、光電変換領域403表面のチャネルストップ領域406側の端部を含む部分を被覆するように、フォトレジスト432を形成する。続いて、このフォトレジスト432をマスクとして用いて、例えばBおよびBF2などのP型不純物をイオン注入する。このとき、図12に示すように、イオンは、基板表面に垂直な方向に対して読み出し領域405側に傾いた方向から注入される。この傾斜角度(θ1)は、特に限定するものではないが、例えば5〜45°、好ましくは7〜30°である。なお、ドーズ量および加速電圧は、第1の方法と同様に設定することができる。この方法によれば、P++型不純物拡散領域407の読み出し領域405側のエッジが転送電極411に対して自己整合的に決定されるため、読み出し電圧のバラツキを抑制できるという効果を奏する。
図13は、第3の方法を説明するための模式図である。この第3の方法においては、まず、光電変換領域403表面の読み出し領域405側の端部を含む部分を被覆するように、フォトレジスト432を形成する。続いて、このフォトレジスト432をマスクとして用いて、例えばBおよびBF2などのP型不純物をイオン注入する。このとき、図13に示すように、イオンは、基板表面に垂直な方向に対してチャンネルストップ領域406側に傾いた方向から注入される。この傾斜角度(θ2)は、特に限定するものではないが、例えば5〜45°、好ましくは7〜30°である。なお、ドーズ量および加速電圧は、第1の方法と同様に設定することができる。この方法によれば、P++型不純物拡散領域407のチャンネルストップ領域406側のエッジが転送電極411に対して自己整合的に決定されるため、P++型不純物拡散領域407とN型転送チャネル領域404との間で強電界により発生するホットエレクトロンを安定して抑制できるという効果を奏する。
また、第2の方法および第3の方法を併用することも可能である。すなわち、第2の方法によるイオン注入を実施した後、第3の方法によるイオン注入を実施することも可能である。なお、第2の方法によるイオン注入と、第3の方法によるイオン注入とを実施する順序については、特に限定するものではない。これによれば、P++型正孔蓄積領域407を、イオン注入の傾斜角度(θ1およびθ2)を制御することにより、転送電極411から必要なオフセット距離を確保しながら転送電極411に対して自己整合的に形成することができるため、ホットエレクトロンを安定して抑制しながら、読み出し電圧やスミアなどの光電変換部の特性を安定させることができる。
図14は、第4の方法を説明するための模式図である。この第4の方法においては、まず、転送電極411の側面に、第1層間絶縁膜413を介して、側壁433を形成する。この側壁433は、例えば、CVD法などにより成膜した後、形成された膜に対してドライエッチングなどの異方性エッチングを実施することにより形成できる。また、側壁433の材料については特に限定するものではないが、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコンなどを使用することができる。続いて、転送電極411および側壁433をマスクとして用いて、例えばBおよびBF2などのP型不純物をイオン注入する。なお、ドーズ量および加速電圧は、第1の方法と同様に設定することができる。この方法によれば、側壁433の膜厚を制御することにより、P++型不純物拡散領域407を、転送電極411から適当なオフセット距離を確保しながら、転送電極411に対して自己整合的に形成することができるため、ホットエレクトロンの発生を安定して抑制しながら、読み出し電圧やスミアなどの光電変換部の特性を安定させることができる。
次に、CVD法などによってシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜などからなる第2層間絶縁膜を形成する。続いて、スパッタリング法またはCVD法などにより、アルミニウム、タングステンまたはタングステンシリサイドなどを成膜した後、形成された膜に対してフォトリソグラフィーおよびエッチングを実施して、光電変換領域の端部を除く領域の少なくとも一部上方に対応する部分に開口を形成することにより、遮光膜を形成する。
その後、保護膜、平坦化膜、カラーフィルタ層およびマイクロレンズを形成する。なお、これらの工程は、第1の実施形態と同様にして実施することができる。
なお、上記説明においては、P++型不純物拡散領域の形成を、遮光膜形成前に実施する場合を例に挙げて説明したが、遮光膜形成後に実施することも可能である。図15は、このような製造方法を説明するための模式図である。
まず、シリコン基板401内に、P-型ウェル領域402、光電変換領域403、転送チャンネル領域、読み出し領域405、チャネルストップ領域406およびP型ウェル領域をそれぞれ形成する。続いて、シリコン基板401上に、ゲート絶縁膜410、転送電極411および第1層間絶縁膜413を形成する。なお、ここまでの工程は、前述した製造方法と同様にして実施することができる。
続いて、CVD法などによってシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜などからなる第2層間絶縁膜414を形成する。その後、スパッタリング法またはCVD法などにより、アルミニウム、タングステンまたはタングステンシリサイドなどを成膜した後、形成された膜に対してフォトリソグラフィーおよびエッチングを実施して、光電変換領域403の端部を除く領域の少なくとも一部に対応する部分に開口416を形成することにより、遮光膜415を形成する。
その後、遮光膜415をマスクとして用いて、例えばBおよびBF2などのP型不純物をイオン注入し、P++型不純物拡散領域407を形成する。注入条件は、特に限定するものではないが、例えば、ドーズ量を1013〜1014cm-2とし、加速電圧を5〜50keVとすることができる。この形成方法によれば、P++型不純物拡散領域407を、遮光膜415の開口416に対して自己整合的に形成することができる。その結果、遮光膜に電圧を印加した際に形成されるP++型蓄積領域429と、P++型不純物拡散領域407との間に隙間が生じることを回避することができ、このような隙間に起因する暗電流および白キズなどの発生を回避することができる。
続いて、保護膜、平坦化膜、カラーフィルタおよびマイクロレンズを形成し、固体撮像装置が得られる。なお、これらの工程は、前述した製造方法と同様にして実施することができる。
(第4の実施形態)
本実施形態に係る固体撮像装置においては、第1の実施形態と同様に、光電変換部および垂直転送レジスタにより撮像領域が形成され、撮像領域の周辺に水平転送レジスタおよび出力部が配置されている。
図19は、本発明の第4の実施形態に係る固体撮像装置の撮像領域の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態の固体撮像装置は、光電変換領域403の端部を含む領域(すなわち、遮光膜で被覆された領域)の表層部に、P型不純物拡散領域430が形成されていること以外は、第3の実施形態と同様の構造を有する。また、各部材の材質としても、第3の実施形態と同様の材質を使用することができる。
P型不純物拡散領域430の不純物濃度は、例えば1016〜1019cm-3、好ましくは1017〜1018cm-3である。また、その拡散深さは、例えば0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下である。
本実施形態の固体撮像装置においては、P型不純物拡散領域430上に、第2層間絶縁膜414を介して、導電性遮光膜415が形成されることにより、MOSキャパシタ構造が形成されている。このような構造とすることにより、導電性遮光膜415にマイナス電圧を印加することによって、P型不純物拡散領域430の表層部にP++型蓄積領域431を形成することができる。この電圧印加により形成されるP++型蓄積領域431は、光電変換部409の基板表面で発生する暗電流をトラップするための正孔蓄積領域として機能する。
P++型蓄積領域431の深さ(XJ)は、例えば0.1μm以下、好ましくは0.01〜0.05μmである。また、その正孔濃度は、例えば1018cm-3以上、好ましくは1018〜1019cm-3である。また、導電性遮光膜415に印加されるマイナス電圧は、特に限定するものではないが、形成されるP++型蓄積領域431の正孔濃度が前記範囲となるように設定することが好ましい。具体的には、例えば−1〜−10V、好ましくは−2〜−8Vに設定することができる。
なお、この固体撮像装置の駆動方法としては、第1の実施形態で説明したものと同様の駆動方法を採用することができる。
本実施形態においても、前述したような、第3の実施形態と同様の効果を達成することができる。更に、本実施形態によれば、第3の実施形態に比べて、遮光膜に印加される電圧の絶対値を小さくすることができるため、遮光膜415と転送電極411の間の電界および遮光膜415と基板の間の電界を緩和し、固体撮像装置の信頼性を向上させることが可能となる。