JP4246460B2 - カルバゾール系化合物、着色組成物および有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルバゾール系化合物、該化合物を含有する蛍光性着色組成物および該カルバゾール系化合物を用いて作製された有機エレクトロルミネッセンス(以下「EL」と略す)素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、有機蛍光層を一対の対向電極に挟んで構成されており、一方の電極から注入された電子と、もう一方の電極から注入された正孔が、発光層内で再結合したときに、発光層が発光する。このような素子は、1963年に、M.Pope、H.P.Kallmannなどによりアントラセンの単結晶に直流電圧を印加すると発光が生じることが見出されたことから、研究開発が本格的に始まり、1987年には、KODAK社のT.W.Tangらにより、有機薄膜積層構造を利用した有機EL素子が初めて発表された。
【0003】
その後、この発表モデルをもとに、材料、層構成、層構成方法、素子化方法など、様々な面から、機能向上を目指したEL素子の研究開発が進められている。一般的なEL素子の層構成を図1に示す。これらの各層の中で、発光特性および色特性に大きく影響する、電子輸送層、正孔輸送層、発光層の各有機層には、例えば、電子輸送層に、アントラキノジメタンなどが使用され、正孔輸送層には、フタロシアニンなどが使用され、発光層にはピレンなどが使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように、各層を形成するための、多種多様の有機材料が開発されているが、その殆どが、トルエン、キシレンなどの汎用有機溶剤に難溶なうえに、結晶性(凝集力)が高く、化合物種によっては昇華性を有しているため、成膜方法としては、溶液を用いる簡便な湿式方式ではなく、真空系を用いた乾式方式によるものが殆どである。そのため、高プロセスコストとなるうえに、真空装置を用いる関係上、大基板サイズの成膜は困難であるという問題があり、今後、有機EL素子、有機ELディスプレイの大画面化対応やコストメリットを考える上で大きな課題の一つである。
【0005】
現在のところ、上記の課題に対し、例えば、発光層であれば、ポリビニルカルバゾールと色素ドーピングによる湿式成膜が検討および提案されているが、ドーピングする色素は、溶剤に難溶であり、やはり一般的に蒸着によりドーピングされており、上記の課題は解決されていない。
従って本発明の目的は、結晶性や昇華性を低減し、溶剤溶解性を向上させた新規な有機蛍光性材料や新規ドーピング材料を開発し、発光層などの製膜を乾式方式ではなく、湿式方式によって行うことができる有機蛍光性材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、下記式(1)で表されることを特徴とするカルバゾール系化合物、該化合物を含有していることを特徴とする蛍光性着色組成物、および該カルバゾール系化合物を用いたEL素子を提供する。
(式中、R1はプロピレン基を示す。)
【0007】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明で原料として用いるカルバゾール系化合物は、合成が比較的容易で、古くから蛍光性を有する物質として知られており、色特性の観点から興味深い低分子化合物である。しかしながら、これらの化合物は一般に昇華性を有し、結晶性が高いことから、有機EL素子の発光層などとして使用するには、何らかの方法によって溶剤溶解性を確保しつつ、昇華性や結晶性を抑制する必要があった。
【0008】
そこで、本発明では、芳香族または脂肪族の連結基により、複数のカルバゾール環を連結させ、カルバゾール環の安定性を損なわない程度の高分子量化、塗布適性付与および発光特性(濃度)の向上を図ったものである。
本発明のカルバゾール系化合物の好ましい製造方法の1例を以下に説明する。上記式(1)で表されるカルバゾール系化合物は、公知のカルバゾール3モル当たり約1モルのイソシアヌル酸トリアリルエステルを用い、有機溶剤中において水素化ナトリウム、水素化リチウムなど触媒の存在下に反応させることによって得られる。このようにして得られる上記式(1)で表されるカルバゾール系化合物は、昇華性や結晶性を抑制しつつ、汎用の有機溶剤に溶解性があり、十分に精製することができ、殆ど純品として得られる。
【0009】
上記式(1)において、連結基R1 はプロピレン基である。
【0025】
以上の如くして得られる本発明のカルバゾール系化合物は、各種用途に有用である。例えば、各種印刷インキのワニス中に溶解または分散させて蛍光性印刷インキとして美麗な印刷物を与える。また、各種塗料のベヒクル中に溶解または分散させて蛍光性塗料として美麗な塗膜を与える。その他合成樹脂の着色剤としても有用である。
【0026】
本発明のカルバゾール系化合物は特にEL素子の発光層形成材料として有用である。以下EL素子に応用する例を詳しく説明する。本発明のカルバゾール系化合物は、溶剤に溶解させてEL素子の発光層を成膜することができる。本発明のカルバゾール系化合物に対する良溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレンなどが例示される。カルバゾール系化合物の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。EL素子作成の際にこれらの有機溶媒可溶性のカルバゾール系化合物を用いることにより、溶液から成膜する場合、この溶液を塗布後乾燥により溶媒を除去するだけでよく、製造上非常に有利である。
【0027】
本発明の有機EL素子の構造については、少なくとも一方が透明または半透明である一対の対向電極と、これらによって挟持された単層あるいは多層の有機化合物層に前記本発明のカルバゾール系化合物を少なくとも1種類を含有する層を有してさえいれば特に制限はなく、公知の構造を採用することができる。例えば、本発明のカルバゾール系化合物からなる発光層、もしくは本発明のカルバゾール系化合物と電荷輸送材料(電子輸送材料と正孔輸送材料の総称を意味する)との混合物からなる発光層の両面に一対の電極を有する構造のもの、さらに陰極と発光層の間に電子輸送材料を含む電子輸送層、または陽極と発光層の間に正孔輸送材料を含む正孔輸送層を積層したものが例示される。また、発光層や電荷輸送層は、一層の場合と複数の層を組み合わせる場合も本発明に含まれる。さらに、発光層として例えば下記に述べる本発明のカルバゾール系化合物以外の発光材料を混合使用してもよい。また、本発明のカルバゾール系化合物または電荷輸送材料を高分子化合物に分散させた層とすることもできる。
【0028】
本発明のカルバゾール系化合物とともに使用される電荷輸送材料、すなわち、電子輸送材料または正孔輸送材料としては公知のものが使用でき、特に限定されないが、正孔輸送材料としてはピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などが例示され、電子輸送材料としてはオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラジノキメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体などが例示される。これらのうち、電子輸送性の化合物と正孔輸送性の化合物のいずれか一方、または両方を同時に使用すればよい。これらは単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。発光層と電極の間に電荷輸送層(電子輸送層と正孔輸送層の総称を意味する)を設ける場合、これらの電荷輸送材料を使用して電荷輸送層を形成すればよい。
【0029】
本発明のカルバゾール系化合物とともに使用できる公知の発光材料としては特に限定されないが、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセンもしくはその誘導体、ペリレンもしくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエンもしくはその誘導体、またはテトラフェニルブタジエンもしくはその誘導体、CdSeやCdSなどの可視域にバンドギャップの値を持つ半導体のナノ結晶などを用いることができる。
【0030】
次に、本発明のカルバゾール系化合物を用いた有機EL素子の代表的な作製方法について述べる。陽極および陰極からなる一対の電極は、平面発光の有機EL素子を得るためには、電極の少なくとも一方が透明または半透明であって、この透明または半透明な電極側から発光を取り出すことが望ましいが、素子の端面から発光を取り出す形態を取る場合にはこの限りではない。
【0031】
有機EL素子の発光取り出し方向を基板側としたときには、基板および有機EL素子の電極のうち基板上に設けられる電極が透明または半透明であることが望ましい。基板には石英、ソーダガラスなどのガラス板、金属板や金属箔、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などのプラスチックなどが用いられる。
【0032】
電極には導電性の金属酸化物膜や金属薄膜などが用いられる。具体的には、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)などの導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケルなどの金属、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、これらの混合物または積層物などが挙げられ、特に、高導電性や透明性などの点からITOを好ましく陽極として用いることができる。
【0033】
次いで、電極上に発光材料として上記カルバゾール系化合物、またはカルバゾール系化合物と電荷輸送材料を含む発光層を形成する。形成方法としては、これら材料の溶融液、溶液、分散液、または混合液を使用するスピンコート法、キャストコート法、ディップコート法、ダイコート法、ビードコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの塗布方法により成膜することが特に好ましい。
【0034】
発光層の膜厚としては、1nm〜1μm、好ましくは2nm〜500nm、さらに好ましくは5nm〜200nmである。なお、塗布法により成膜した場合には、溶媒を除去するために、好ましくは減圧下または不活性雰囲気下で、30〜300℃、好ましくは60〜200℃の温度で加熱乾燥することが望ましい。
【0035】
また、この発光層と電荷輸送材料とを積層する場合には、上記の成膜方法で発光層を設ける前に陽極上に正孔輸送層を形成する、または、発光層を設けた後に電子輸送層を形成することが望ましい。電荷輸送層の形成方法としては、特に限定されないが、固体状態からの真空蒸着法、または溶融状態、溶液状態、分散液状態、混合液状態からのスピンコート法、キャストコート法、ディップコート法、ダイコート法、ビードコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法を用いることができる。電荷輸送層の膜厚としては、1nm〜1μm、好ましくは2nm〜500nm、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0036】
次いで発光層または電荷輸送層の上に電極を設ける。この電極は陰極となる。陰極としては電子を注入しやすいように4eVより小さい仕事関数を持つものが好ましく、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、セシウムなど)およびそのハロゲン化物(例えば、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化セシウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)およびそのハロゲン化物(フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなど)、アルミニウム、銀などの金属、導電性金属酸化物およびこれらの合金または混合物などが挙げられる。
【0037】
陰極の作製方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を圧着するラミネート法などが用いられる。陰極作製後、有機EL素子を保護する保護層を装着してもよい。有機EL素子を長期間安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層または保護カバーを装着することが望ましい。この保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物、珪素酸化物、珪素窒化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板などを用いることができ、このカバーを熱硬化樹脂や光硬化樹脂で素子基板と張り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。
【0038】
本発明の有機EL素子を用いて面状の素子を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機層を極端に厚く形成して実質的に非発光とする方法、陽極または陰極のいずれか一方、または両方の電極をパターン状に形成する方法が挙げられる。
【0039】
さらに、ドットマトリクス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置する方法、片方の電極をTFTで選択駆動できるようにする方法などが挙げられる。また、同一面状に発光色の異なる有機EL素子を複数配置することにより部分カラー表示、マルチカラー表示、フルカラー表示が可能となる。
【0040】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
<実施例1>
クロロホルム中、塩素バブリングによって塩素化処理したイソシアヌル酸トリアリルエステル(東京化成工業(株)製)300mgと、カルバゾール(東京化成工業(株)製)52mgとを、脱水したテトラヒドロフラン50ml中において水素化ナトリウムの存在下に80℃で5時間還流加熱し、反応させた。その後カラムクロマトグラフにより、未反応不純物や副生成物を分離除去した後、減圧乾燥して残留溶剤を取り除いた結果、粉末18mgを得た。この粉末の融点を測定したところ、252〜255℃付近で分解した(カルバゾールの融点は245℃)。この粉末の赤外吸収スペクトルを測定した結果を図2に示す。測定結果より、この粉末が、求める下記式の化合物であることを確認した。また、この材料の、蛍光スペクトルを測定した結果、良好な蛍光発光を示すことが分かった(図3参照)。
【0041】
なお、使用したイソシアヌル酸トリアリルエステルは下記式で表される。
【0042】
【0043】
<実施例2>
(有機EL素子の作製および評価)
ガラス基板上にITOの透明導電性膜が成膜された基板を所望の形状にパターニングした後、洗浄およびUV/オゾン処理を施した。次いで、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート水分散液(略称PEDOT/PSS、商品名Baytron PTP AI 4083、バイエル社)を洗浄基板上に滴下し、スピンコートした。その後140℃のホットプレート上で10分間加熱乾燥することにより、100nmの正孔輸送層を形成した。
【0044】
続いて、前記カルバゾール系化合物の7質量部と電子輸送材料であるオキサジアゾール(日本シイベルヘグナー社製)3質量部とをトルエンに溶解させた塗布液を滴下し、スピンコートした。その後100℃のホットプレート上で減圧加熱乾燥することにより、100nmの電子輸送兼発光層を形成した。さらに、1.0×10-6Torrの真空条件下で、金属カルシウムを0.2nm/sの成膜速度で20nm真空蒸着し、さらにその上に銀を2nm/sの成膜速度で80nm真空蒸着して電極を形成した。
【0045】
このようにして得られた有機EL素子に外部電源(ケースレー社製ソースメーター2400)を接続し、ITOを陽極、そして金属電極を陰極として直流電圧を印加すると、カルバゾール系化合物の蛍光に相当するスペクトルを有する青色の発光を得た。この素子の輝度はトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。また、発光スペクトルはトプコン社製分光放射計SR−2を用いて測定した。印加電圧10Vのとき900cd/m2で発光した。このときの発光効率は1Lm/Wであった。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、結晶性や昇華性を低減し、発光層などの製膜を乾式方式ではなく、湿式方式によって行うことができる有機蛍光性材料、該材料を含む着色組成物および該材料を使用する有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 有機EL素子の構造例を示す図。
【図2】 実施例1で得られたカルバゾール系化合物の赤外吸収スペクトルを示す図。
【図3】 実施例1で得られたカルバゾール系化合物の蛍光スペクトルを示す図。
Claims (6)
- 請求項1に記載のカルバゾール系化合物を含有することを特徴とする蛍光性着色組成物。
- 一対の対向電極と、これらによって挟持された単層あるいは多層の有機化合物層から構成されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、請求項1に記載のカルバゾール系化合物を含有する層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 陰極と発光層の間に隣接して電子輸送性化合物を含む層を設けた請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 陽極と発光層の間に隣接して正孔輸送性化合物を含む層を設けた請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 陰極と発光層の間に隣接して電子輸送性化合物を含む層を設け、かつ陽極と発光層の間に隣接して正孔輸送性化合物を含む層を設けた請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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