JP4246407B2 - 液体調味料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化カリウムを塩化ナトリウムの代替塩として用いた液体調味料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
日本には、塩化ナトリウム含量の高い、味噌・醤油・漬け物・梅干し等の伝統的な調味料や食品が多く存在する。それ故、これらの調味料等を嗜好する日本人等においては、塩化ナトリウムの摂り過ぎが問題視されている。
【0003】
ナトリウムは人体にとって必要不可欠なミネラルであるが、反面ナトリウムの過剰な摂取は、高血圧等の生活習慣病を引き起こす要因の一つである。その為、塩化ナトリウムの摂取量を制限することが推奨されている。
【0004】
従来から塩化ナトリウム含量が低減化された液体調味料が知られているが、必然的に塩味が減少し、味付けの物足りなさや食欲の減退を招くなど、満足できるものではない。
【0005】
塩化ナトリウムと同様な塩分の一種である塩化カリウムは、塩化ナトリウムのように高血圧に与える影響が少ないとされており、このことから、塩化ナトリウム含量の低減化による塩味の低減を改善する方法として、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムに置き換えた液体調味料が提案されている。しかしながら、塩化カリウムは独特な異味を呈することが知られており、それ故、塩化カリウムの異味を消去すべく種々の添加物の使用が検討されているが(特開平6−189709号公報)、満足できるものではなく、普及するには至っていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
最近の研究から、カリウムには降圧作用があることが確認され、減塩とカリウム摂取が高血圧の予防等に重要であることが知られている。また、第6次改訂「日本人の栄養所要量 食事摂取基準」健康・栄養情報研究会編集、第一出版発行に拠ると、ナトリウムとカリウムの摂取比は2以下が適正であることが報告されている。
【0007】
このような作用効果に鑑み、前述の塩化カリウムを塩化ナトリウムの代替塩として利用することが注目を集めている。しかしながら、前述の如く、塩化カリウムは独特の異味を呈するため、塩化カリウムを代替塩として使用する場合、その異味の消去が問題となっている。本発明の目的は、塩化カリウムを塩化ナトリウムの代替塩として使用し、かつ塩化カリウムが有する独特な異味が消去された液体調味料を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、Na/K重量比が好適とされている2以下で、塩化ナトリウムの代替塩として使用する塩化カリウム由来の独特な異味が消去された液体調味料を開発すべく鋭意検討した結果、糖類および/または昆布エキスを加えることにより、下記の如く優れた液体調味料を提供することができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、塩化ナトリウム含量が3〜20g/dL、塩化カリウム含量が1.5〜17g/dLかつNa/K重量比が2以下であり、糖類および/または昆布エキスを混合した液体調味料に関するものである。Na/K重量比が2以下となるように、塩化カリウムが添加された液体調味料に、糖類および/または昆布エキスを添加することにより、塩化カリウムが有する独特な異味を消去し、また総体的な味のバランスを整えることができた。
【0010】
本発明において液体調味料とは、醤油をベースとする調味料を意味し、例えば、醤油を始め、各種つゆ、ポン酢等を例示することができる。
【0011】
本発明の液体調味料は、例えば、通常の醤油に、適宜塩化カリウムを加え、更に所望により適宜塩化ナトリウムを加えてナトリウムとカリウムのバランスを整え、更に糖類および/または昆布エキスを添加した後、所望により適宜水等で希釈することにより調製することができる。上記調製方法において原料物質として用いられる醤油は、例えば本醸造方式、新式醸造方式、アミノ酸液混合方式、酵素処理液混合方式等に従い、適宜処理することにより調製することができる。
【0012】
また、本発明の液体調味料は、旨味調味料、果汁、酢、甘味料等の、総体的な味を損なうことなく、場合により旨味を増強することができる食品添加物を適量加えることができる。
【0013】
本発明の液体調味料において使用することができる糖類としては、トレハロース、ブドウ糖、ショ糖、オリゴ糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等を例示することができ、好ましくは、トレハロースまたは果糖ブドウ糖液糖であり、更に好ましくはトレハロースである。また、トレハロースとしては種々の異性体が知られているが、特にα,α−トレハロースが好ましい。これらの糖類は単独で、または複数を混合して用いることができる。
【0014】
本発明の液体調味料に添加する昆布エキスとしては、一般に市販されているものであればどのようなものでも使用することができる。
【0015】
本発明の液体調味料において使用される糖類および昆布エキスは、塩化カリウムの呈する独特な異味を消去することができる範囲内で適量添加して使用することができ、その添加量は原料として使用する醤油や添加される他の成分の種類や量等により若干変動するが、例えば、トレハロースの場合、含量が二水和物換算で通常3〜12.5g/dLとなる程度が好ましく、果糖ブドウ糖液糖の場合、含量が75%糖質液換算で通常5〜10g/dLが好ましい。また、昆布エキスは、通常2〜15g/dLが好ましい。
【0016】
旨味調味料としては、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、グリシン等のアミノ酸系旨味調味料、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の核酸系旨味調味料、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の有機酸塩を挙げることができる。また、甘味料としては、甘草エキス等の植物抽出物を挙げることができる。このような旨味調味料や甘味料等を使用することにより、場合により、糖類や昆布エキスの含量を減らすことができる。
【0017】
本発明の液体調味料は、Na/K重量比が2以下に調整され、かつ塩化カリウムの呈する独特の異味が消去されており、また総体的な味のバランスが整えられている。それ故、本発明の液体調味料は、市販の液体調味料と比べて全く遜色のない味を有している。
【0018】
本発明の内容を以下の実施例、比較例および試験例で更に詳しく説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。
【0019】
【実施例】
実施例1
濃口醤油▲1▼(トレハロース含量3.0g/dL)
総窒素含量1.62g/dL、塩化ナトリウム含量15.1g/dLの醤油840mLに塩化カリウム47.8g、α,α−トレハロース二水和物30gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量12.7g/dL、塩化カリウム含量4.78g/dLかつNa/K重量比2.0の標記液体調味料を調製した。
【0020】
実施例2
濃口醤油▲2▼(トレハロース含量12.5g/dL)
総窒素含量1.62g/dL、塩化ナトリウム含量15.1g/dLの醤油840mLに塩化カリウム47.8g、α,α−トレハロース二水和物125gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量12.7g/dL、塩化カリウム含量4.78g/dLかつNa/K重量比2.0の標記液体調味料を調製した。
【0021】
実施例3
濃口醤油▲3▼(果糖ブドウ糖液糖含量5.0g/dL)
総窒素含量1.62g/dL、塩化ナトリウム含量15.1g/dLの醤油840mLに塩化カリウム47.8g、果糖ブドウ糖液糖(糖質含量75%)50gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量12.7g/dL、塩化カリウム含量4.78g/dLかつNa/K重量比2.0の標記液体調味料を調製した。
【0022】
実施例4
濃口醤油▲4▼(果糖ブドウ糖液糖含量10.0g/dL)
総窒素含量1.62g/dL、塩化ナトリウム含量15.1g/dLの醤油840mLに塩化カリウム47.8g、果糖ブドウ糖液糖(糖質含量75%)100gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量12.7g/dL、塩化カリウム含量4.78g/dLかつNa/K重量比2.0の標記液体調味料を調製した。
【0023】
実施例5
昆布醤油▲1▼(昆布エキス含量2.0g/dL)
総窒素含量1.62g/dL、塩化ナトリウム含量15.1g/dLの醤油840mLに塩化カリウム48.9g、昆布エキス20gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量13.0g/dL、塩化カリウム含量4.89g/dLかつNa/K重量比2.0の標記液体調味料を調製した。
【0024】
実施例6
昆布醤油▲2▼(昆布エキス含量15.0g/dL)
総窒素含量1.62g/dL、塩化ナトリウム含量15.1g/dLの醤油840mLに塩化カリウム56.4g、昆布エキス150gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量15.0g/dL、塩化カリウム含量5.64g/dLかつNa/K重量比2.0の標記液体調味料を調製した。
【0025】
実施例7
濃口醤油▲5▼(トレハロース含量3.0g/dL)
総窒素含量1.62g/dL、塩化ナトリウム含量15.1g/dLの醤油940mLに塩化カリウム53.5g、α,α−トレハロース二水和物30gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量14.2g/dL、塩化カリウム含量5.35g/dLかつNa/K重量比2.0の標記液体調味料を調製した。
【0026】
実施例8
昆布醤油▲3▼(昆布エキス含量2.0g/dL)
総窒素含量1.70g/dL、塩化ナトリウム含量9.75g/dLの醤油690mLに塩化カリウム54.4g、昆布エキス20g、グルタミン酸ナトリウム15g、甘草エキス0.8gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量7.03g/dL、塩化カリウム含量5.44g/dLかつNa/K重量比0.97の標記液体調味料を調製した。
【0027】
実施例9
ポン酢
総窒素含量1.6g/dL、塩化ナトリウム含量17.8g/dLの醤油360mLに鰹と昆布の混合だし300g、果汁40g、醸造酢30g、鰹エキスおよび旨味調味料30gを加え、塩化カリウム31g、果糖ブドウ糖液糖(糖質含量75%)90gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量8.2g/dL、塩化カリウム含量3.1g/dLかつNa/K重量比2.0の標記液体調味料を調製した。
【0028】
実施例10
濃縮つゆ
総窒素含量1.6g/dL、塩化ナトリウム含量17.8g/dLの醤油270mLに鰹と昆布と椎茸の混合だし450g、塩化ナトリウム25g、鰹エキスおよび旨味調味料80gを加えて、塩化カリウム35g、α,α−トレハロース二水和物125g、ブドウ糖果糖液糖(糖質含量75%)220gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量9.3g/dL、塩化カリウム含量3.5g/dLかつNa/K重量比2.0の標記液体調味料を調製した。
【0029】
試験例1
実施例1〜4の醤油につき、下記の通り官能評価を実施した。
【0030】
下記比較例記載に従い塩化カリウムのみを加えてNa/K重量比を調整し、これを対照として、パネル13名に実施例1〜4の醤油を官能評価させ判定を行った。過半数パネルが回答した判定に基づき以下のように記号を付した。
【0031】
比較例
Na/K重量比を調整した比較用醤油
総窒素含量1.62g/dL、塩化ナトリウム含量15.1g/dLの醤油840mLに塩化カリウム47.8gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量12.7g/dL、塩化カリウム含量4.78g/dLかつNa/K重量比2.0の標記液体調味料を調製した。
【0032】
後味の違和感 :○・・・気にならない/×・・・気になる
甘味 :○・・・甘みが突出しない/×・・・突出する
総体的な味のバランス:○・・・良い/×・・・悪い
【0033】
【表1】
【0034】
上記表1記載の通り、実施例1〜4の液体調味料については後味の違和感がなく、塩化カリウムによる異味は消去していた。また、過度な甘味も感じられず、総体的な味のバランスもよかった。
【0035】
試験例2
実施例5,6の醤油につき、下記の通り官能評価を実施した。
【0036】
試験例1記載の比較例の醤油を対照として、パネル13名に実施例5,6の醤油を官能評価させ判定を行った。過半数パネルが回答した判定に基づき以下のように記号を付した。
【0037】
後味の違和感 :○・・・気にならない/×・・・気になる
昆布の味・風味 :○・・・感じる/×・・・感じない又は違和感がある
総体的な味のバランス:○・・・良い/×・・・悪い
【0038】
【表2】
【0039】
上記表2記載の通り、実施例5および6の液体調味料については後味の違和感がなく、塩化カリウムによる異味は消去していた。また、良好な昆布の味や風味も感じられ、総体的な味のバランスもよかった。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、ナトリウムとカリウムの摂取バランスを改善でき、かつ塩化カリウムが有する独特な異味を消去し、また総体的にバランスのある味を実現した、優れた液体調味料を提供するものである。それ故、本発明の液体調味料は、高血圧の予防や高血圧患者の食事療法に、また塩化ナトリウムの単独摂取が過剰である食習慣の改善に好適である。
Claims (3)
- 塩化ナトリウムと塩化カリウムとを含んでなり、塩化カリウムの呈する異味が消去された液体調味料であって、
(1)塩化ナトリウム含量が3〜20g/dL、塩化カリウム含量が1.5〜17g/dLかつNa/K重量比が2以下であり、
(2)3〜12.5g/dLの含量のトレハロースを含有する、液体調味料。 - 旨味調味料、果汁、酢および甘味料から選択される1種類または複数を更に含有する、請求項1記載の液体調味料。
- 醤油をベースとする調味料である、請求項1記載の液体調味料。
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