JP4246358B2 - ポリエンマクロライド系抗生物質の多量体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポリエン系抗生物質の二量体又はその塩、及びそれを含有してなる医薬組成物に関する。また、本発明は、生理活性及び/又は選択毒性の改善された生理活性物質の多量体の製造方法、及び当該方法による生理活性物質の標的細胞における活性又は毒性の最適化を検定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエン系抗生物質は、ポリエンマクロライド抗生物質とも呼ばれ、ポリエン系のマクロライド系抗生物質の1種であり、トランス共役二重結合からなる鎖とそれと対峙する位置に複数の水酸基を有する炭素鎖を有するマクロライド環を有し、その多くはエステル又はラクトンによって閉環していることを特徴としている。
ポリエン系抗生物質は、疎水性の共役二重結合鎖と水酸基を有する親水性の領域を有する両親媒性の物質で、一般に水に難溶性で、有機溶媒に溶解する。ポリエン系抗生物質は、真菌などの真核細胞の細胞膜ステロールと結合して、細胞膜の流動性を変化させ、細胞膜に障害を与えるとされている。
【0003】
ポリエン系抗生物質としては、深在性真菌治療剤として有用なアンフォテリシンB(以下、AmBという。)やハマイシン(hamycin)、カンジダアルビカンス(Candida albicans)に対する活性が強いフンギシジン(fungicidin)、膣カンジダ症や膣トリコモナス症の治療剤として有用なピマリシン(pimaricin)、ハチマイシン(hachimycin)、ペンタマイシン(pentamycin)、カンジシジン(candicidin)などや、動物細胞に対して活性を示すフィリピンIIIなど多数のものが知られている。
【0004】
ポリエン系抗生物質は、真菌などの真核細胞の細胞膜に存在するエルゴステロールなどのステロール類を認識してチャネル複合体を形成するが、形成される分子複合体やステロール認識の分子機構についてはほとんど分かっていない。また、ポリエン系抗生物質は、細胞膜中で分子同士が会合するという説も提示されているが、詳細な解明は未だなされていない。
例えば、次式(IV)で示されるアンフォテリシンB(AmB)は、
【0005】
【化1】
【0006】
発見以来四十数年を経た現在でも、最も重要な抗真菌物質のひとつであり感染症に治療に広く使われている。その抗真菌作用は、主に細胞膜中のイオンチャネル形成により発現するとされており、選択毒性は膜含有ステロールの分子認識の違いにより説明されている。すなわち、AmBは真菌細胞膜に存在するエルゴステロールを認識してチャネル複合体を形成するが、その親和性はヒト細胞膜に含まれるコレステロールに比べて高い。しかし、これらの研究は生物活性などを指標にしたものが多く、分子複合体やステロール認識の分子機構についてはほとんど分かっていない。細胞膜における分子認識に関しては、リガンド(低分子)・レセプター(タンパク質)相互作用について広範な研究が行われており、分子レベルである程度の知見が得られている。しかし、膜中での低分子化合物同士による分子認識は研究例も少なく、ほとんど手が着けられていない。
【0007】
また、ポリエン系抗生物質の選択毒性を向上させ、かつ抗真菌作用などを増強する目的でその化学構造の修飾や、構造活性相関などが研究されている。その結果、例えば分子中のアミノ基を種々のアシル基でアシル化したり、カルボキシル基をエステル化したり、また二重結合の共役数を増減するなどの修飾が試みられてきている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、選択毒性が向上し、かつ抗真菌作用などの生理活性が増強されたポリエン系抗生物質の新規な誘導体を提供するものである。
また、本発明は、ポリエン系抗生物質の関わるイオンチャネル複合体の構造解明を目的とし、その過程で低分子自己会合体の構造解析に使える新規な方法論を提供するものであり、さらに、これら会合体の構造を正確に知ることにより、選択毒性の向上や新たな抗真菌剤の開発手法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
アンホテリシンBなどのポリエン系抗生物質は、生体膜中で会合することにより生物活性を示すと考えられている。ポリエン系抗生物質が会合した複合体の構造を正確に決定するためには、まず膜中におけるポリエン系抗生物質の単量体と複合体の平衡を複合体形成に方に片寄らせること、および複合体中の各ポリエン系抗生物質分子を区別することが重要であると考えられる。そこで、本発明者らはポリエン系抗生物質の多量体のひとつとして二量体を調製し、これら2つの課題の解決を試みた。これにより、ポリエン系抗生物質は生体膜中でより安定な会合状態を取ることができるようになると考えられ、高い生物活性を有し、また選択毒性の優れたものを得ることができる。
【0010】
本発明は、次式(I)、
PM−L−PM (I)
(式中、PMはポリエン系抗生物質から1個の水素原子を除いた基を示し、Lは2個のポリエン系抗生物質を結合させ得る2価のリンカー基を示す。)
で示されるポリエン系抗生物質の二量体又はその塩に関する。
また、本発明は、前記したポリエン系抗生物質の二量体又はその塩の1種又は2種以上、及び製薬上許容される担体からなる医薬組成物に関する。
さらに、本発明は、標的細胞において分子同士が会合することにより生理活性を発現する生理活性物質を2個以上結合させて当該生理活性物質の多量体を製造することからなる、生理活性が増強又は選択毒性が向上した生理活性物質を製造する方法に関する。
また、本発明は、標的細胞において分子同士が会合することにより生理活性を発現する生理活性物質を、種々の原子からなるリンカー基により当該生理活性物質を2個以上結合させて当該生理活性物質の多量体を製造し、それらの生理活性又は選択毒性を測定することからなる、当該生理活性物質の標的細胞における活性又は毒性の最適化を検定する方法に関する。
【0011】
ポリエン系抗生物質の1種であるアンフォテリシンB(AmB)に関しては、選択選択性を向上させる目的で化学誘導体の製造や種々の化学修飾が試みられている。その結果、アミノ基をアシル化すると抗菌活性が顕著に低下すること、カルボキシル基をエステル化しても活性にはあまり影響しないこと、二重結合の共役が活性に重要であることなどが知られている。
また、ポリエン系抗生物質は、生体膜中で会合することにより生物活性を示すと考えられきていることから、本発明者らは、ポリエン系抗生物質の多量体化による化学修飾を検討した。
【0012】
ポリエン系抗生物質の多量体を製造する方法としては、二塩基酸によるエステル化やアミド化、ジアミンなどによるアミド化などが考えられるが、多量体の調製の汎用性を考えて、ポリエン系抗生物質のアミノ基に還元的アミノアルキル化し、次に生成したアミノ基同士を二塩基酸により連結する反応を検討した。具体的にはポリエン系抗生物質の例として、アンフォテリシンB(AmB)について検討した。
アンフォテリシンB(AmB)の二量体の製造方法の例として、次の反応式、
【0013】
【化2】
【0014】
で示されるアシル化による二量体化を行った。DMSOなどの有機溶媒中でトリエチルアミンなどの塩基の存在下に、活性エステル体とカップリング反応させて目的の二量体である化合物2及び化合物3を得た。
得られた化合物2及び3のリンカー部の構造は、
化合物2 : −CO−(CH2)6−CO−
化合物3 : −CO−(CHOH)2−CO−
である。
【0015】
また、別の方法として次の反応式、
【0016】
【化3】
【0017】
を示す。AmBとFmoc−アミノアルキルアルデヒドをNaBH3CNなどの還元剤の存在下に反応させた後、保護基のFmocを除去すると、AmBのアミノ糖鎖のアミノ基がアミノアルキル化されたアミノアルキル体が得られた。得られたアミノアルキル体を、各種ジカルボン酸のN−ヒドロキシルスクシイミド(HO−SU)などの活性化エステルと、DMSOなどの有機溶媒中のトリエチルアミンなどの塩基の存在下でカップリング反応を行ったところ、目的の二量体が得られた。
この方法により、リンカー部分における次式のm及びRを異にする各種の二量体(化合物4−化合物6)を得た。得られた3種の二量体を次に示す。
AmB−(CH2)n−NHCO−R−CONH−(CH2)n−AmB
【0018】
化合物4の全体の化学構造を次に示す。
【0019】
【化4】
【0020】
このようにして調製した各種連結分子は、質量分析によってその精製を確認し、またNMRによって構造が変化していないことを確認した。
化合物は、アミノ基がアルキル化されたAmBを2個有し、2個のAmB相互の立体構造が、リンカー部分の距離と回転の自由度によって異なるものであり、これらのリンカーによって規定されている2個のAmBの立体構造が、標的細胞における会合状態に近いものであれば、生理活性の増強が予想されるし、また立体的な会合状態が二量化に規定されているためにヒト赤血球に対する溶血活性にも変化がみられると予想される。
【0021】
そこで、前記で得られた化合物5について、真菌の1種である黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)に対する抗真菌活性をペーパーディスク法により測定した。
その結果を次の表1に示す。なお、化合物1は、比較のための単量体のAmBである。
【0022】
【表1】
【0023】
前記で得られた化合物1〜6について、ヒト赤血球に対する溶血活性を測定した。
その結果を次の表2に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
この結果、これら二量体は顕著な生物活性を示し、膜中でAmB様のチャネル複合体を形成している可能性を強く示した。特に、二量体のうち、比較的リンカー部分の長い化合物4〜6は、AmBより強力な溶血性を示したが、これは二量化が複合体を安定化しているものと考えられる。
さらに、そのUVおよびCDスペクトルは、二量体が単量体と同様な分子複合体を脂質二重膜中で形成していることを示した。その結果の、モル吸光係数(メタノール中、409nm)を次の表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
二量体(2−6)に関して、その一部は顕著な生物活性を示した。AmBのアミノ基はアンモニウムイオンとして複合体形成に関与していることから(Mazerski,J. Bolard,J. and Borowski,E. Biochem.Biophys.Acta., 1236, 170-176(1995))、化合物2における活性の低下はアミノ基のアミド化によるものと考えられる。意外なことに、化合物3はアミノ基をアミド化しているにもかかわらずAmBと同等の活性を示したが、これはグリコール部分によってリンカーの立体配置と親水性が変化したためと考えられる。一方、AmBのアミノ基をアルキル化することで陽イオン性を残した二量体4−6は、AmB以上の活性を示すことが明らかとなった。
二量体のメタノール中でのUVスペクトルを測定した結果、活性のない2以外の二量体はAmBと比べて吸光度が顕著に低下する傾向が認められた。これは、これらの二量体においてポリエンクロモフォア同士が分子内で近接する配座をとっているためであると考えられる。また、AmBは脂質二重膜中において会合体を形成することにより、ポリエンクロモフォア部分の吸収が低下することが知られている。活性を示した二量体もリン脂質リポソーム中でクロモフォア部分のUV吸収の減少が観察されたことから、これら二量体はリン脂質中でAmBと同様の会合状態をとっていることが示唆された。すなわち、活性を示した二量体に関しては、分子内でAmB同士が近接した配座を取りやすく、しかも脂質二重膜中でAmBと同様のチャンネル複合体を形成していると考えられる。
また、リンカー部分が特に長い二量体6は、他の二量体やAmBと比較して一桁以上高い溶血活性を示したことは注目に値する。他の二量体ではリンカーが短いためhead-to-head型の配座しか取り得ないのに対し、6ではhead-to-tail型の配座も可能であり、そのことが極めて高い溶血活性をもたらした可能性が考えられるが、詳細については今後の検討が必要である。
【0028】
これらのことから、標的細胞において会合してその生理活性を発現させる生理活性物質を、二量体又は多量体化することにより、その生理活性が増強され、及び/又は選択毒性が向上させられることがわかった。また、リンカーの種類により生理活性の程度や選択毒性の相違がみられることから、生理活性物質及び/又は標的細胞により、最適のリンカー、即ち標的細胞における会合状態に応じた多量体の構造があることもわかった。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の一般式(I)におけるPMで示される基は、ポリエン系抗生物質から1個の水素原子を除いた基であるから、PM−Hがポリエン系抗生物質を示すことになる。本発明のポリエン系抗生物質としては、例えば、アンフォテリシンB、ハマイシン(hamycin)、フンギシジン(fungicidin)、ピマリシン(pimaricin)、ハチマイシン(hachimycin)、ペンタマイシン(pentamycin)、カンジシジン(candicidin)、フィリピンIIIなどのポリエン系抗生物質が挙げられる。好ましいポリエン系抗生物質としては、アンフォテリシンBが挙げられる。
【0030】
本発明の一般式(I)におけるPMで示される基は、ポリエン系抗生物質から1個の水素原子を除いた基であり、このような基としては、前記したポリエン系抗生物質の任意の水素原子を除いたものでもよいが、生理活性や修飾の容易さを考慮すれば、ポリエン系抗生物質の有しているアミノ基、カルボキシル基、水酸基などの官能基の水素原子を除いたものが好ましい。即ち、ポリエン系抗生物質の有しているアミノ基、カルボキシル基、水酸基などの官能基から、隣接するリンカー基Lに結合するようにするのが好ましい。より好ましい例としては、ポリエン系抗生物質のアミノ基の水素原子を除いた基、即ちアミノ基から隣接するリンカー基Lに結合するようにしたものが挙げられる。
【0031】
本発明の一般式(I)におけるリンカー基Lとしては、2個のポリエン系抗生物質を化学結合により結合することができて、2個のポリエン系抗生物質が安定に存在できるものであればよい。場合によっては2個のポリエン系抗生物質が直接結合した、即ちリンカー基Lが化学結合であってもよいが、一般にポリエン系抗生物質は低分子物質としては比較的大きな分子であり、直接結合させることに格別の利点はなく、2個のポリエン系抗生物質が相互に有る程度の立体的な自由度を有するためには、リンカー基Lは1〜50個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜12個の原子数を有する、飽和又は不飽和の、直鎖状若しくは分枝状又は環状の2価の基が好ましい。このようなリンカー基の原子としては、通常は炭素原子であるが、これらの炭素原子の1個又は2個以上が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、又はリン原子などで置換されたものであってもよい。さらに、本発明のリンカー基は、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ハロゲンなどの置換基で置換されていてもよい。
【0032】
本発明のリンカー基としては、次式、
−CO−R3−CO−
(式中、R3は置換基を有してもよい低級アルキレン基であって、1個又は2個以上の炭素原子は酸素原子又は窒素原子で置換されていてもよい基を示す。)
で表される二塩基酸の誘導体や、次式、
−NH−R4−NH−
(式中、R4は置換基を有してもよい低級アルキレン基であって、1個又は2個以上の炭素原子は酸素原子又は窒素原子で置換されていてもよい基を示す。)
で表されるジアミンの誘導体などが挙げられる。
【0033】
また、より好ましい本発明のリンカー基Lとしては、次式(II)、
−R1−NHCO−R2−CONH−R1− (II)
(式中、R1は同一又は異なって低級アルキレン基を示し、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜50の飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分枝状又は環状の2価の炭化水素基を示す。)
で表される基が挙げられる。
一般式(II)におけるR1としては、炭素数2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6の直鎖状又は分枝状の低級アルキレン基が挙げられる。また、一般式(II)におけるR2としては、炭素数1〜50、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜12の飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分枝状又は環状の2価の炭化水素基であり、好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜8の直鎖状又は分枝状の低級アルキレン基が挙げられる。これらの低級アルキレン基は、1個又は2個以上の水酸基、アミノ基などの置換基で置換されていてもよく、例えば、−CH2−CHOH−基や−(CHOH)2−基のような基であってもよい。好ましい、R2としては、−(CH2)6−基などが挙げられる。
【0034】
本発明の一般式(I)で表されるポリエン系抗生物質の二量体又はその塩を製造する方法としては、通常の有機合成の手法を採用して行うことができる。
例えば、エステル化、アミド化、エーテル化、アルキル化などの方法によりポリエン系抗生物質の官能基と反応させることができる。必要により、他の官能基をペプチド合成などで使用される保護基で保護しておくこともできる。
【0035】
本発明の一般式(I)で表されるポリエン系抗生物質の二量体の塩としては、無機酸、有機酸、無機塩基、又は有機塩基などから形成されるものであってよい。好ましい有機酸としては、デオキシコール酸などが挙げられる。
【0036】
本発明の医薬組成物は、一般式(I)で表されるポリエン系抗生物質の二量体又はその塩の1種又は2種以上、及び製薬上許容される担体からなるものであり、従来のポリエン系抗生物質の単量体における医薬組成物と同様な投与形態により適用することができる。例えば、当該担体としては、医薬の製剤化において通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、水、生理食塩水、アルコールなどが挙げられ、投与方法としては、経口投与、非経口投与などの方法が挙げられ、投与形態に応じて錠剤、散剤、注射剤、坐剤などの剤型にすることができる。有効投与量も従来の単量体に準じて設定することができる。
【0037】
本発明の生理活性が増強又は選択毒性が向上した生理活性物質を製造する方法は、2個以上の同種の薬効を有する生理活性物質であって、標的細胞において分子同士が会合することにより生理活性を発現する生理活性物質を、前記したリンカー基などにより結合させて、当該生理活性物質の多量体を製造することからなる。より具体的には、前記した本発明の化合物を製造する方法に準じて目的の多量体を製造することができる。
本発明は、このような標的細胞において分子同士が会合することにより生理活性を発現する生理活性物質が、標的細胞において会合する状況を、投与形態において既に会合状態に類似した状態にしておくことにより、当該生理活性が増強又は選択毒性が向上した新たな生理活性物質として提供することができることを教示するものであり、本発明は本発明の教示に従って生理活性が増強及び/又は選択毒性が向上した生理活性物質を製造する方法を包含するものである。
【0038】
また、本発明によれば、生理活性物質間の1個又は2個以上のリンカーの長さ、立体的な構造などにより、当該リンカーによって結合された多量体化された生理活性物質の相互の立体構造を特定することができることから、これらの多量体化された生理活性物質の生理活性を測定することにより、標的細胞における最適な立体構造を想定することが可能となる。そして、この方法により標的細胞における当該生理活性武士何時の会合状態を解明することができるばかりでなく、標的細胞に対する活性又は毒性の最適化を検定するすることもできることになる。したがって、本発明は、標的細胞において分子同士が会合することにより生理活性を発現する生理活性物質を、種々の原子からなるリンカー基により当該生理活性物質を2個以上結合させて当該生理活性物質の多量体を製造し、それらの生理活性又は選択毒性を測定することからなる、当該生理活性物質の標的細胞における活性又は毒性の最適化を検定する方法をも包含するものである。
【0039】
【実施例】
次に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例1(化合物2の製造)
アンフォテリシンB 15.0mgを溶媒ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide(DMSO))1mlに溶解し、これにスベリン酸ジサクシンイミジル(disuccinimidyl suberate(DSS))2.3mgとトリエチルアミン50μLを加え、一晩室温で暗所にて静置した。この反応溶液を、逆相HPLC(カラム:YMC−ODS、10×250mm、溶媒:メタノール−酢酸アンモニウム緩衝液pH5.3、80:20 to 100:0 in 20min、1.5ml/min)にて精製し、目的の化合物2 3.1mg(収率19.2%)を黄色結晶として得た。
MS(大気圧イオン化法(API−MS)) 1985.5(M−H)−
計算値(C102H156N2O36−H) 1985.3
【0041】
実施例2(化合物3の製造)
アンフォテリシンB 5.6mgを溶媒DMSO 0.4mlに溶解し、これに酒石酸ジサクシンイミジル(disuccinimidyl tartrate(DST))1.0mgを加えた。次に10μlのトリエチルアミンを加え、終夜室温で暗所にて放置した。これをメタノール1mlで希釈し、カラムクロマトグラフィー(SephadexLH−20、メタノール−水 1:1)を2回行い、目的の化合物8 0.36mg(収率6.1%)を黄色結晶として得た。
MS(大気圧イオン化法(API−MS)) 1961.1(M−H)−
計算値(C98H148N2O38−H) 1961.2
【0042】
実施例3(化合物4の製造)
(1)アミノアルキル体の合成
アンフォテリシンB 52.3mgおよびFmoc−NH−CH2−CHO 22.6mgをメタノール−ジメチルホルムアミド(1:1)10mlに溶解させた。アルゴン雰囲気下、室温で2時間撹拌した後、NaBH3CN 21.5mgを加え、アルゴン下室温で終夜撹拌した。その後メタノールを留去し、ジエチルエーテル50mlを加えて生成物を沈殿させ、セライトを用いて濾別した。セライト上の沈殿をエーテルで洗った後、メタノールで溶出させた。メタノールを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム−メタノール−水=10:6:1)にて精製を行い、Fmoc−NH−(CH2)6−AmBを黄色結晶で得た。次に、この結晶をDMF 2mlとメタノール5mlに溶解させ、ピペリジン0.15mlを加えて室温で一晩静置した。これにジエチルエーテルを加えて生成物を沈殿させ、セライトを用いて濾過し、セライト上の沈殿をエーテルで洗った後、メタノールで溶出させた。メタノールを留去し、目的のアミノアルキル体NH2−(CH2)2−AmB 14.4mg(26.3%)を黄色結晶として得た。
【0043】
(2)二量体の合成
前記(1)で得られたアミノアルキル体化アンフォテリシンB 4.0mgを溶媒DMSO 0.4mlに溶解し、これに酒石酸ジサクシンイミジル(disuccinimidyl tartrate(DST))670μgとトリエチルアミン50μlを加え、一晩室温で暗所にて静置した。この反応溶液を逆相HPLC(カラム:YMC−ODS、10×250mm、溶媒:メタノール−酢酸アンモニウム緩衝液pH5.3、80:20 to 100:0 in 20min、1.5ml/min)にて精製し、目的の化合物4 0.64mg(収率15%)を黄色結晶として得た。
MS(大気圧イオン化法(API−MS)) 2048.2(M+H)+
計算値(C102H158N4O88+H) 2048.1
【0044】
実施例4(化合物5の製造)
前記実施例3の(1)で得られたアミノアルキル体化アンフォテリシンB 1.3mgを溶媒DMSO 0.1mlに溶解し、これにスベリン酸ジサクシンイミジル(disuccinimidyl suberate(DSS))50μgとトリエチエルアミン5μlを加え、一晩室温で暗所にて静置した。この反応溶液に逆相HPLC(カラム:YMC−ODS、10×250mm、溶媒:メタノール−酢酸アンモニウム緩衝液pH5.3、80:20 to 100:0 in 20min、1.5ml/min)にて精製し、目的の化合物5 0.18mg(収率13%)を黄色結晶として得た。
MS(大気圧イオン化法(API−MS)) 2073.2(M+H)+
計算値(C106H166N4O86+H) 2073.5
【0045】
実施例5(化合物6の製造)
(1)アミノアルキル体の合成
アンフォテリシンB 94.5mgおよびFmoc−NH−(CH2)5−CHO 37.5mgをメタノール−ジメチルホルムアミド(1:1)18mlに溶解させた。アルゴン雰囲気下、室温で2時間撹拌した後、NaBH3CN 111mgを加え、アルゴン下室温で終夜撹拌した。その後メタノールを留去し、ジエチルエーテルを加えて生成物を沈殿させ、セライトを用いて濾別した。セライト上の沈殿をエーテルで洗った後、メタノールで溶出させた。メタノールを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム−メタノール−水=10:6:1)にて精製を行い、Fmoc−NH−(CH2)6−AmBを黄色結晶で得た。次に、この結晶をDMF 7mlとメタノール14mlに溶解させ、ピペリジン0.35mlを加えて室温で一晩静置した。これにジエチルエーテルを加えて生成物を沈殿させ、セライトを用いて濾別し、セライト上の沈殿をエーテルで洗った後、メタノールで溶出させた。メタノールを留去し、目的のアミノアルキル体NH2−(CH2)6−AmB 61.3mg(60%)を黄色結晶で得た。
【0046】
(2)二量体の合成
前記(1)で得られたアミノアルキル体化アンフォテリシンB 1.50mgを溶媒DMSO 0.1mlに溶解し、これにスベリン酸ジサクシンイミジル(disuccinimidyl suberate(DSS))0.25mgとトリエチエルアミン50μLを加え、一晩室温で暗所にて静置した。この反応溶液を逆相HPLC(カラム:YMC−ODS、10×250mm、溶媒:メタノール−酢酸アンモニウム緩衝液pH5.3、80:20 to 100:0 in 20min、1.5ml/min)にて精製し、目的の化合物6 0.6mg(収率38%)を黄色結晶として得た。
MS(大気圧イオン化法(API−MS)) 2183.3(M−H)−
計算値(C114H182N4O36−H) 2183.7
【0047】
試験例1(ヒト赤血球に対する溶血活性試験)
ヒト血液にリン酸系緩衝液(PBS)を加え、遠心し、上清を除去する操作を上清から色が消えるまで繰り返した。改めてPBSをもとの血液量の10倍加え、血球懸濁液とした。
この血球懸濁液240μlにPBS 900μlとサンプルのメタノール溶液60μlを加え、37℃でインキュベートした。20時間後、遠心し上清部分の吸光度を測定し、50%の血球を溶血させるのに必要なサンプル量を求めた。
結果を前記表2に示す。
【0048】
【発明の効果】
本発明は、標的細胞において会合して生理活性を発現する生理活性物質において、当該生理活性物質をリンカーとなる化合物を用いて多量体化することにより、標的細胞における会合状態に対応して、生理活性の増強や選択毒性の向上がみられることを見出したものであり、生理活性が増強し選択毒性が向上した新規な生理活性物質を提供するものである。また、本発明は生理活性物質における新たな化学修飾方法を提供するものである。さらに、本発明は、標的細胞において会合して生理活性を発現する生理活性物質をリンカーを用いて多量体化することにより、標的細胞における会合状態を解明するための新たな手法や、生理活性の増強や選択毒性の向上のための簡便な最適化のための手法を提供するものである。
Claims (6)
- 次式(I)、
PM−L−PM (I)
(式中、PMはアンフォテリシンBのアミノ基から1個の水素原子を除いた基を示し、Lは次式(II)、
−R 1 −NHCO−R 2 −CONH−R 1 − ( II )
(式中、R 1 は同一又は異なって低級アルキレン基を示し、R 2 は置換基を有してもよい炭素数1〜50の飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分枝状又は環状の2価の炭化水素基を示す。)
で表されるリンカー基を示す。)
で示されるポリエン系抗生物質の二量体又はその塩。 - R1が、炭素数2〜20の低級アルキレン基である請求項1に記載のポリエン系抗生物質の二量体又はその塩。
- R2が、−(CH2)6−基である請求項1又は2に記載のポリエン系抗生物質の二量体又はその塩。
- R2が、−(CHOH)2−基である請求項1又は2のいずれかに記載のポリエン系抗生物質の二量体又はその塩。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリエン系抗生物質の二量体又はその塩の1種又は2種以上、及び製薬上許容される担体からなる医薬組成物。
- 抗真菌剤である請求項5に記載の医薬組成物。
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