JP4245901B2 - 防犯サムターン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、扉の施解錠操作に用いられる既存のサムターンを覆う後付けの防犯サムターンに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば扉に設けられる施錠装置は、屋外側に表出させたシリンダー錠の鍵孔に、合鍵(キー)を挿入して回動操作することにより、扉の木口より進退させたデッドボルトを扉枠に設けたストライクに係合・係合解除して施解錠を行うとともに、屋内側からは、サムターンの摘みを回動操作するのみで、デッドボルトを進退させて、扉の施解錠を簡便に行えるようにしている。
【0003】
ところが、近年、ポスト口や、機械工具によって開けた小さな穴から棒や針金等を挿入し、回転操作の容易なサムターンに係止して回転させ、施錠装置を解錠する不正解錠が増えている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【0004】
【特許文献1】
実公平4−40362号公報
【0005】
このようなサムターンに針金等を係止して回転させることを防止するものに例えば下記特許文献1に開示されるサムターン用防犯カバーがある。
この防犯カバー1は、図9,図10に示すように、サムターン2が嵌入する嵌入孔3が形成されているとともに、回転時に円状軌跡2bを描くサムターン2の外面2aを覆う部分が、円状軌跡に沿う円形状に形成されている。そして、嵌入孔3内に螺入してサムターン2の側面に当接し、両側から挟持するセットスクリュー4,4が設けられている。
このような構成からなる防犯カバー1は、嵌入孔3にサムターン2を挿入することで、サムターン2に防犯カバー1を覆うように被せる。その後セットスクリュー4,4を螺入させて締め付けることで、防犯カバー1をサムターン2に固定する。従って、サムターン2に被せた防犯カバー1によって、針金等を係止させて回転させることが難しくなる。
【0006】
また、上記した防犯カバーの別態様として、図11に示すように、防犯カバー1を、取付部5及び本体部6から構成したものが開示されている。取付部5は、上記の防犯カバー1の外形を手での操作が容易となるように形成し、本体部6が係止する係止突部5aを設けている。取付部5は、サムターン2に被せた状態で、サムターン2を容易に回転させることができる。また、本体部6は、係止突部5aに係止可能な係止部6aを有している。
このようにすることで、係止作業という簡単な作業で、防犯カバー1の着脱が行える。さらに係止部6aで本体部6が空転することにより、針金等を係止させて回転させることが不可能となる。
【0007】
さらに、上記した防犯カバーの別態様として、図12に示すように、係止部6a内に、係止突部5aとの間にバネ部材8を設け、本体部6側の外周縁に複数の係合凹部5bと、この係合凹部5bに係合可能な係合凸部6bとを設けたものが開示されている。
このような構成とすれば、本体部6を常に取り付けたままとしておくことができる。即ち、常時は係止突部5aと係止部6aとで本体部6が空転し、サムターン2を回転させたいときは、本体部6を手で押圧し、係合凸部6bを取付部5の係合凹部5bに係合させ、この係合状態のまま本体部6を回転させることにより、サムターン2を回転させることができた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9,図10に示された防犯カバーは、外形が円筒体形状であるため、サムターンに被せた場合、本来小判形状であることからその回転位置によって視認できたサムターンの施錠状態又は非施錠状態を視認不能にしてしまい、施解錠の操作性を低下させる問題があった。
また、図11に示された防犯カバーは、サムターンを回転操作可能にする取付部と、この取付部に対し空転しかつ着脱可能となる本体部とから構成されるため、脱着した本体部の保管管理が煩雑となり、本体部を紛失する虞もあった。
さらに、図12に示された防犯カバーは、本体部を常に取り付けたままとできるので、本体部の紛失はなくなるが、サムターンの回転操作時には本体部を手で押圧しながら回転させなければならないため、操作性を低下させた。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その第一の目的は、針金や棒等によるサムターンの回転を阻止できるとともに、着脱部材を不要にし、しかも、従来同様の回転のみによる操作が可能となる後付け防犯サムターンを提供し、もって、防犯性、操作性の向上を図ることにある。また、その第二の目的は、サムターンの回転位置が容易に視認できる後付け防犯サムターンを提供し、もって、操作性の向上を図ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
この発明の請求項1記載の防犯サムターン11は、既存サムターンの摘み21に被着され且つ該摘み21の回動中心と同軸の軸部31が突設された後付け摘み13と、
円形板34に同軸の筒部35を突設して有し該筒部35を前記軸部31に抜脱不能に外挿して回転自在となる後付けサムターン15と、
前記筒部35に回動自在に外挿される少なくとも一つの円形状のダイヤル17と、
前記後付け摘み13に半径方向に移動自在に内設され前記ダイヤル17の所定の回転位置で半径方向内側への移動が可能となり該移動により前記筒部35に係合して該後付け摘み13と前記後付けサムターン15との相対回転を規制するクラッチ19と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
この防犯サムターン11では、既存サムターンの摘み21が後付け摘み13によって覆われ、この後付け摘み13の軸部31に、円形状の後付けサムターン15が回動自在に外挿され、さらに、この後付けサムターン15の筒部35にはダイヤル17が回動自在に外挿される。そして、ダイヤル17が所定の回転位置となることで、後付け摘み13に内設されたクラッチ19が後付けサムターン15の筒部35に係合して、後付け摘み13と後付けサムターン15との相対回転が規制される。これにより、針金や棒等を用いても後付けサムターン15、ダイヤル17は滑り及び空回りにより後付け摘み13への回転力の入力が阻止される。また、既存サムターンの操作時には、ダイヤル17を所定の回転位置に合わせ、後付けサムターン15を回転することで、従来同様の回転操作のみにより施解錠操作することが可能となる。
【0012】
請求項2記載の防犯サムターン11は、既存サムターンの摘み21に被着され且つ該摘み21の回動中心と同軸の軸部31が突設された後付け摘み13と、
円形板34に同軸の筒部35を突設して有し該筒部35を前記軸部31に抜脱不能に外挿して回転自在となる後付けサムターン15と、
前記筒部35に回動自在に外挿される少なくとも一つの円形状のダイヤル17と、
該ダイヤル17の前記後付け摘み13との対向面37a、39aに形成される円周方向の分散穴45と、
所定の前記分散穴45を前記ダイヤル17の半径方向内側に向けて凹ました凹部49と、
前記後付け摘み13に半径方向に移動自在に内設され半径方向内側への移動により前記筒部35に係合して該後付け摘み13と前記後付けサムターン15との相対回転を規制するクラッチ19と、
該クラッチ19から前記ダイヤル17の対向面37a、39aに向かって突出され前記分散穴45からさらに前記凹部49に落ち込むことで前記クラッチ19の半径方向内側への移動を可能とするクラッチピン57と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
この防犯サムターン11では、ダイヤル17が所定の回転位置になると、クラッチピン57が凹部49へ落ち込み、半径方向内側へ移動したクラッチ19が後付けサムターン15に係合する。その結果、後付け摘み13と後付けサムターン15との相対回転が規制される。これにより、後付けサムターン15の回転のみによる施解錠操作が実現する。
【0014】
請求項3記載の防犯サムターン11は、請求項1又は2に記載の防犯サムターンにおいて、
前記クラッチ19の半径方向内側への移動が可能となる前記ダイヤル17の回転角度位置を示す表示手段71を備えたことを特徴とする。
【0015】
この防犯サムターン11では、表示手段71によりダイヤル17の回転角度位置が容易に視認でき、クラッチ19の移動が行われる位置の位置合わせが正確に行えることとなる。
【0016】
請求項4記載の防犯サムターン11は、請求項1又は2又は3に記載の防犯サムターンにおいて、
前記軸部31の先端面に回転位置表示手段67が設けられ、
前記後付けサムターン15には、該回転位置表示手段67を透視可能な透明材からなる表示窓69が嵌着されていることを特徴とする。
【0017】
この防犯サムターン11では、後付け摘み13、ダイヤル17及び後付けサムターン15に覆われることで視認できなくなった既存サムターン摘み21の回転位置が、回転位置表示手段67を介して視認可能となり、現状の施錠状況が把握でき、操作時における施解錠が容易となる。
【0018】
請求項5記載の防犯サムターン11は、請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載の防犯サムターンにおいて、
前記円形板34の表面が略球面状の曲面より形成されていることを特徴とする。
【0019】
この防犯サムターン11では、針金や棒等を用いた不正な操作に対し、円形板34の表面で滑ることとなり、後付け摘み13への回転力の入力を阻止することとなる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る防犯サムターンの好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る防犯サムターンの分解斜視図、図2は図1に示した防犯サムターンの分解側面図、図3は図1に示した防犯サムターンの組立て縦断面図、図4はクラッチが移動する前の図3のA−A断面図、図5は分散穴の正面視を(a)、そのB−B矢視を(b)に表した分散穴の説明図、図6は基端側ダイヤル、先端側ダイヤルの分散穴にクラッチピンが進入した状態のクラッチ近傍の拡大断面図、図7は基端側ダイヤルの凹部にクラッチピンが一致した状態のクラッチ近傍の拡大断面図、図8は基端側、先端側ダイヤルの凹部にクラッチピンが一致してクラッチが移動した状態のクラッチ近傍の拡大断面図である。
【0021】
本実施の形態による防犯サムターン11は、その主要な構成として、図1に示す後付け摘み13と、後付けサムターン15と、ダイヤル17と、クラッチ19とを有している。
後付け摘み13は、図2に示す既存サムターンの摘み21に、基端が被着される。この被着は、基端部に形成した円形状の基台部23の基端面に、摘み21の嵌入する嵌入溝25を形成し、この嵌入溝25に貫通するメネジ27に、止めネジ29を螺合することにより、止めネジ29の先端を摘み21に圧接して行われる。この止めネジ29には、例えば六角穴付きネジ等が好適となる。なお、この被着には、粘着テープや接着剤が使用されてもよい。
【0022】
後付け摘み13の基台部23には摘み21の回動中心と同軸の軸部31が突設され、軸部31は円柱状に形成される。この軸部31の先端面には、後述のキャップを螺着するためのネジ孔33が形成されている。
【0023】
後付けサムターン15は、円形板34に同軸の筒部35を突設し、この筒部35を軸部31に抜脱不能に外挿して回転自在となる。なお、円形板34の形状としては、表面が略球面状の曲面より形成されることが好ましく、角部分などの稜線状の部分を有しない形状が良い。また、筒部35の先端には、軸線方向に切り込みを入れて形成したすり割り36が、円周方向に所定間隔で複数、例えば四箇所程度形成されている。
【0024】
本実施の形態では、ダイヤル17は、基端側ダイヤル37と、先端側ダイヤル39との二つのダイヤルからなる。なお、発明に係る防犯サムターンは、ダイヤルが一つであってもよく、或いは二つ以上の複数であってもよい。
【0025】
ダイヤル17は、先端側ダイヤル39,基端側ダイヤル37の順で筒部35に挿入される。これら基端側ダイヤル37,先端側ダイヤル39は、後付けサムターン15が後述のキャップ63にて抜脱不能となることで、軸線方向の移動が規制されて且つ相対回転可能に組み付けられる。
【0026】
先端側ダイヤル39には同軸の筒状凸部41が突設され、筒状凸部41は基端側ダイヤル37の内穴43に挿入される。したがって、基端側ダイヤル37と先端側ダイヤル39との間隙が、半径方向に直線的に形成されないよう、すなわちこの間隙が筒部35に達しないようになっている。
【0027】
基端側ダイヤル37及び先端側ダイヤル39の後付け摘み13との対向面37a,39aには、図4に示す複数、本実施の形態では10箇所の分散穴45が円周方向に等間隔に形成されている。分散穴45は、図5に示すように、開口縁が斜面によって削られたテーパ47となっている。このテーパ47は、後述するクラッチピン57の分散穴45からの退出をスムースとする。
【0028】
基端側ダイヤル37及び先端側ダイヤル39の対向面37a,39aには、所定の分散穴45をダイヤルの半径方向内側に向けて凹ました図4に示す凹部49がそれぞれ形成されている。本実施の形態では、基端側ダイヤル37及び先端側ダイヤル39にそれぞれ形成された10箇所の分散穴45のうち、それぞれ一つの分散穴45に凹部49が形成されているが、凹部49は、複数の分散穴45に形成されるものであってもよい。この凹部49には、分散穴45に進入した後述のクラッチピン57が、ダイヤル37,39の半径方向内側に移動して落ち込み可能となっている。
【0029】
クラッチ19は、後付け摘み13の基台部23に形成された半径方向に長い収容溝51に収容され、この収容溝51に沿う半径方向に移動自在となる。クラッチ19の背面には突起53が突設され、クラッチ19はこの突起53と収容溝51の天面との間に配設した圧縮バネ55によって、半径方向内側に付勢されている。クラッチ19は、この半径方向内側への移動により、後付けサムターン15の筒部35のすり割り36に係合して、後付け摘み13と後付けサムターン15との相対回転を規制する。
【0030】
クラッチ19には、二つのピン孔56,56が半径方向に間隔を有して穿設され、それぞれのピン孔56,56にはクラッチピン57が収容されている。クラッチピン57とピン孔56の底部との間には圧縮バネ59が配設され、圧縮バネ59はクラッチピン57を基端側ダイヤル37及び先端側ダイヤル39の対向面37a,39aに向かって突出させる方向に付勢している。
【0031】
したがって、クラッチ19から突出したクラッチピン57は、基端側ダイヤル37及び先端側ダイヤル39が回動されることで、円周方向に配設された分散穴45に順次進入・退出を繰り返して進退するようになっている。各クラッチピン57は、これら分散穴45に対し進退することで、ダイヤル37,39回転時の節度感(クリック感)を生じさせるようになっている。
【0032】
ところで、クラッチピン57は、凹部49を有する分散穴45において、その凹部49への移動が可能となる。但し、本実施の形態では、二つのダイヤル17を有しているので、それぞれのダイヤル17の凹部49が二つのクラッチピン57に同時に一致して、初めて二つのクラッチピン57が凹部49に落ち込む。これにより、クラッチ19が半径方向内側に移動することとなる。換言すれば、一方のダイヤル17の凹部49にクラッチピン57が一致しても、クラッチ19は移動しないこととなる(図7参照)。
【0033】
後付け摘み13の基台部23,後付けサムターン15,基端側ダイヤル37,先端側ダイヤル39の外形状は、全て円形状となっている。これにより、針金等による引っ掛かりが防止できるようになっている。さらに、後付けサムターン15の円形板34の表面を略球面状の曲面より形成することで、この表面においても針金や棒等が滑り、引っ掛かりが防止される。
【0034】
後付けサムターン15の先端面には、段付穴61が開口されている。この段付穴61からは軸部31の先端面が表出する。段付穴61に表出した軸部31の先端面には小円板状のキャップ63がキャップビス65によって固着される。キャップ63は、軸部31と一体固定される一方、段付穴61の内部に遊嵌されている。
【0035】
キャップ63の表面、即ち、軸部31の先端面には、回転位置表示手段である表示シール67が貼着される。本実施の形態では、図1に示すように直線状の標示とされる。さらに、段付穴61には、表示シール67を透視可能な透明材からなる表示窓69が嵌着されている。
【0036】
また、基端側ダイヤル37,先端側ダイヤル39の外周には、表示手段としての軸線方向に長いマーク71,71が形成されている。クラッチ19が移動する位置は、予め設定したこのマーク71,71の位置、本実施の形態では上、により知ることができる。なお、このマーク71は、上記のような形以外に、他の形状や、数字や文字などとしても良く、好ましくは、印刷などの手段で設けられ、ダイヤル39の外周面に対して凸状或いは凹状とならないように形成される。
【0037】
軸部31の先端面にキャップ63を固定することで、一体に組みつけられた後付け摘み13,後付けサムターン15,基端側ダイヤル37及び先端側ダイヤル39は、化粧リング73によって、後付け摘み13の一部が覆われる。化粧リング73は、摘みワッシャー75を介して、後付け摘み13の後面77に当接した化粧バネ79によって扉面81に押圧されるようになっている。
【0038】
上記のように構成される防犯サムターン11を、既存サムターンの摘み21に取り付けるには、既存サムターンの摘み21を施錠状態とし、化粧リング73,後付け摘み13,後付けサムターン15,基端側ダイヤル37,及び先端側ダイヤル39が一体に組み立てられた防犯サムターン11を、既存サムターンの摘み21へと押込む。
【0039】
次いで、化粧リング73に開いている止め穴83から後付け摘み13の基台部23に止めネジ29を螺合し、例えば六角穴付きネジの場合には六角レンチなどの工具で締めることにより、後付け摘み13を既存サムターンの摘み21に固定する。
最後に、化粧リング73の止め穴83に、化粧キャップ85を圧入して防犯サムターン11の取り付けが完了する。
【0040】
次に、このようにして、既存サムターンの摘み21に取り付けられた防犯サムターン11の動作を説明する。
防犯サムターン11は、図6に示すように、基端側ダイヤル37と先端側ダイヤル39とのそれぞれの分散穴45に、クラッチピン57が進退することで、ダイヤル17の回動に伴いクリック感が生じる。この状態で、後付けサムターン15,基端側ダイヤル37,先端側ダイヤル39,及び化粧リング73は、自由に回動自在となる。
【0041】
解錠操作時には、個々のダイヤル17(基端側ダイヤル37,先端側ダイヤル39)のマーク71,71を上に合わせる。すると、図8に示すように、個々のダイヤル17(基端側ダイヤル37,先端側ダイヤル39)の凹部49が、クラッチピン57と一致し、クラッチピン57が凹部49に落ち込む。即ち、クラッチ19が半径方向内側へ移動される。これにより、クラッチ19がすり割り36に係合して、後付けサムターン15と後付け摘み13との相対回転が規制され、後付けサムターン15を介しての後付け摘み13、即ち、既存サムターンの摘み21が解錠回転可能となる。
【0042】
施錠操作は、この解錠操作と同様にして行うことができる。
【0043】
この際、クラッチ19は、図7に示すように、基端側ダイヤル37と先端側ダイヤル39とのいずれか一方のマーク71を上に合わせたのみでは移動されない。つまり、基端側ダイヤル37と先端側ダイヤル39との双方のマーク71,71を上に一致させなければならない。このことから、マーク71,71が視認できない手探りによる不正解錠では、分散穴45が10個である場合、10桁が2枚となることからその組合せとして最大100回の位置あわせをしなければ、クラッチ19が移動されないようになっている。つまり、既存サムターン摘み21に入力が可能となるダイヤル17(基端側ダイヤル37,先端側ダイヤル39)の解錠位置が探りづらくなっている。
【0044】
このように、上記した防犯サムターン11では、既存サムターンの摘み21が後付け摘み13によって覆われ、この後付け摘み13に、円形状の後付けサムターン15が回動自在に外挿される。そして、ダイヤル17が所定の回転位置となることで、後付け摘み13に内設されたクラッチ19が後付けサムターン15に係合して、後付け摘み13と後付けサムターン15との相対回転が規制される。したがって、針金や棒等を用いても後付けサムターン15,ダイヤル17は滑り及び空回りにより後付け摘み13への回転力の入力が阻止される。また、既存サムターンの操作時には、ダイヤル17を所定の回転位置に合わせ、後付けサムターン15を回転することで、従来同様の回転操作のみにより施解錠操作することができる。
【0045】
また、後付け摘み13,ダイヤル17及び後付けサムターン15に覆われることで視認できなくなった既存サムターンの摘み21の回転位置が、回転位置表示手段を介して視認可能となり、現状の施錠状況が把握でき、操作時における施解錠が容易となる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る請求項1記載の防犯サムターンによれば、既存サムターンの摘みが後付け摘みによって覆われ、この後付け摘みの軸部に、円形状の後付けサムターンが回動自在に外挿され、さらに、この後付けサムターンの筒部にはダイヤルが回動自在に外挿され、ダイヤルが所定の回転位置となることで、後付け摘みに内設されたクラッチが後付けサムターンの筒部に係合して、後付け摘みと後付けサムターンとの相対回転を規制するので、針金や棒等を用いても後付けサムターン、ダイヤルは滑り及び空回りにより後付け摘みへの回転力の入力を阻止することができる。そして、既存サムターンの操作時には、ダイヤルを所定の回転位置に合わせ、後付けサムターンを回転することで、従来同様の回転操作のみにより施解錠操作することができる。この結果、着脱部材を不要にし、防犯性、操作性を向上させることができる。
【0047】
請求項2記載の防犯サムターンによれば、ダイヤルの後付け摘みとの対向面に分散穴が形成され、所定の分散穴に、ダイヤルの半径方向内側に向けて凹ました凹部が設けられ、クラッチには、凹部に落ち込むことでクラッチの半径方向内側への移動を可能とするクラッチピンを突出させたので、ダイヤルを所定の回転位置にすることで、クラッチを後付けサムターンに係合し、後付け摘みと後付けサムターンとの相対回転を規制して、後付けサムターンの回転のみによる施解錠操作を実現できる。
【0048】
請求項3記載の防犯サムターンによれば、クラッチの半径方向内側への移動が可能となるダイヤルの回転角度位置を示す表示手段を備えたことにより、ダイヤルの回転角度位置が容易に視認でき、通常の正規な施解錠使用時にクラッチの移動が行われる位置の位置合わせが正確に行えることとなる。
【0049】
請求項4記載の防犯サムターンによれば、軸部の先端面に回転位置表示手段が設けられ、後付けサムターンには、回転位置表示手段を透視可能な透明材からなる表示窓が嵌着されているので、後付け摘み、ダイヤル及び後付けサムターンに覆われることで視認できなくなった既存サムターン摘みの回転位置を、回転位置表示手段を介して知ることができ、操作性を向上させることができる。
【0050】
請求項5記載の防犯サムターンによれば、円形板の表面を略球面状の曲面より形成したので、針金や棒等を用いた不正な操作に対し、円形板の表面で滑ることとなり、後付け摘みへの回転力の入力を阻止することとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る防犯サムターンの分解斜視図である。
【図2】図1に示した防犯サムターンの分解側面図である。
【図3】図1に示した防犯サムターンの組立て縦断面図である。
【図4】クラッチが移動する前の図3のA−A断面図である。
【図5】分散穴の正面視を(a)、そのB−B矢視を(b)に表した分散穴の説明図である。
【図6】基端側ダイヤル、先端側ダイヤルの分散穴にクラッチピンが進入した状態のクラッチ近傍の拡大断面図である。
【図7】基端側ダイヤルの凹部にクラッチピンが一致した状態のクラッチ近傍の拡大断面図である。
【図8】基端側、先端側ダイヤルの凹部にクラッチピンが一致してクラッチが移動した状態のクラッチ近傍の拡大断面図である。
【図9】従来の防犯カバーの扉への取り付け状態を示す斜視図である。
【図10】図9に示した防犯カバーの内部状態を表す断面図である。
【図11】図9に示した防犯カバーの別態様を表す部分破断側面図である。
【図12】図9に示した防犯カバーのさらに別態様を表す部分破断側面図である。
【符号の説明】
11…防犯サムターン
13…後付け摘み
15…後付けサムターン
17…ダイヤル
19…クラッチ
21…既存サムターンの摘み
31…軸部
34…円形板
35…筒部
37a,39a…後付け摘みとの対向面
45…分散穴
49…凹部
57…クラッチピン
67…回転位置表示手段(表示シール)
69…表示窓
71…表示手段(マーク)
Claims (5)
- 既存サムターンの摘みに被着され且つ該摘みの回動中心と同軸の軸部が突設された後付け摘みと、
円形板に同軸の筒部を突設して有し該筒部を前記軸部に抜脱不能に外挿して回転自在となる後付けサムターンと、
前記筒部に回動自在に外挿される少なくとも一つの円形状のダイヤルと、
前記後付け摘みに半径方向に移動自在に内設され前記ダイヤルの所定の回転位置で半径方向内側への移動が可能となり該移動により前記筒部に係合して該後付け摘みと前記後付けサムターンとの相対回転を規制するクラッチと、
を備えたことを特徴とする防犯サムターン。 - 既存サムターンの摘みに被着され且つ該摘みの回動中心と同軸の軸部が突設された後付け摘みと、
円形板に同軸の筒部を突設して有し該筒部を前記軸部に抜脱不能に外挿して回転自在となる後付けサムターンと、
前記筒部に回動自在に外挿される少なくとも一つの円形状のダイヤルと、
該ダイヤルの前記後付け摘みとの対向面に形成される円周方向の分散穴と、
所定の前記分散穴を前記ダイヤルの半径方向内側に向けて凹ました凹部と、
前記後付け摘みに半径方向に移動自在に内設され半径方向内側への移動により前記筒部に係合して該後付け摘みと前記後付けサムターンとの相対回転を規制するクラッチと、
該クラッチから前記ダイヤルの対向面に向かって突出され前記分散穴からさらに前記凹部に落ち込むことで前記クラッチの半径方向内側への移動を可能とするクラッチピンと、
を備えたことを特徴とする防犯サムターン。 - 請求項1又は2に記載の防犯サムターンにおいて、
前記クラッチの半径方向内側への移動が可能となる前記ダイヤルの回転角度位置を示す表示手段を備えたことを特徴とする防犯サムターン。 - 請求項1又は2又は3に記載の防犯サムターンにおいて、
前記軸部の先端面に回転位置表示手段が設けられ、
前記後付けサムターンには、該回転位置表示手段を透視可能な透明材からなる表示窓が嵌着されていることを特徴とする防犯サムターン。 - 請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載の防犯サムターンにおいて、
前記円形板の表面が略球面状の曲面より形成されていることを特徴とする防犯サムターン。
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