JP4242989B2 - 針入度またはちょう度試験器および試験方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アスファルトなどの主に固体または半固体の石油製品などの硬さを測定する試験器および試験方法に関し、詳しくは、アスファルト、ワックスの針入度試験器、ワックス、グリースのちょう度試験器および試験方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アスファルトは、道路舗装用、水利構造物、防水用、電気絶縁用などに巾広く用いられている。アスファルトは、用途によって、各種性能、品質のものが用いられ、規格化されている。すなわち、JIS K 2207(石油アスファルト)には、規格や試験方法が規定されている。この中で、種類、品質として、アスファルトの硬さが重要視されている。アスファルトの硬さは、針入度(25℃)で表される。この針入度は、針入度試験器により、特定の針を25℃のアスファルトに5秒間進入させたときの、針の進入距離、0.1mmを針入度1として表すものである。
【0003】
同様に、ワックスにおいても、JIS K2235(石油ワックス)においてアスファルトに準じた針入度が試験される。また、より柔らかいワックス、グリースでは、進入させる針の形態は異なるものの、同様な試験法として、JIS K2235(石油ワックス)、JIS K2220(グリース)には、ちょう度試験方法が規定されている。
【0004】
たとえば、アスファルトの針入度の試験方法は、前記JIS K2207に規定されているような試験器が用いられている。図5は、JISに規定された針入度試験器の一例を示す概念図である。図5において、1は架台、2は支柱、3は試験台であり、支柱2に昇降自在に取り付けられ、昇降ハンドル4で試験台3を昇降できるように構成されている。一方、針入度の試験用針7と針7の留金具8と針の進入(以下、針入と呼ぶ場合がある。)距離を計るダイヤルゲージ9からなる針の落下、針入距離測定部が支柱2の上部に取り付けられている。試験台3には、水の入ったガラス容器5とガラス容器5の中に、試料が充填された試験容器6が入れられている。
【0005】
針入度の試験は、まず、試料の調整からはじまる。アスファルト試料は、内径55mmまたは70mm、深さ35mmまたは50mmの金属製又は耐熱ガラス製平底円筒容器に採取、溶融される。ついで、内径110mm、深さ70〜90mmのガラス容器(底に三角形金属台)とともに、25℃の恒温水槽に1〜2時間放置されて試験温度に調整される。
【0006】
次いで、恒温水槽中で、ガラス容器の三角形金属台の上に試験容器を移し、水を満たしたままのガラス容器を針入度試験器の試験台上に載せる。光源を調節し、試料の表面に針の影を投じさせて、針の先端と針の影の先端とが接触するように、試験台の高さを調節して、針の先端と針の影の先端とを接触させる。次いで、針の留金具を解除して、針を落下させ、自重によって針を5秒間試料中に垂直に進入させる。この場合の針入距離をダイヤルゲージで読み取り、針入距離0.1mmを針入度1として試験するものである。
【0007】
このJIS試験方法において、針入開始のために、針の先端と試料容器中の試料表面を接触させる操作がある。この操作は、針先端を直接目視するか、鏡に映る像を見て行う方法が一般的である。しかしながら、試験者の体調、視力、年齢、経験などによって、針の先端の径が0.15mmと細いこともあって、この操作は非常に困難を極めている。このため、針先合わせに時間がかかり過ぎ、ガラス容器内の水温が変化して、試験温度の25℃を維持できず、試験誤差が大きくなる場合がある。また、接触時の針先と試料表面の接触誤差があると、針が試料に進入する距離(深さ)が、0,1mmを、針入度1としているので、僅かな誤差が針入度の値として大きな試験誤差となる。
【0008】
したがって、試験結果にバラツキが生じたり、場合によっては再試験の必要性があったり、時間がかかる問題点がある。また、個人誤差も大きく、試験者の精神的な疲労も看過できない問題となっている。このため、針の先端部を拡大鏡などを用いて拡大して目視すれば解決されそうである。しかしながら、透明円筒ガラス容器、水を介して拡大した場合、拡大像は大きくゆがみ鮮明な拡大像を得ることができず、この方法は採用されていないのが実情である。
【0009】
このため、針先端と試料容器中の試料表面との接触を精度良く、自動的に検知する方法が提案されている。たとえば、特公昭49−31677号公報では、針入度測定用の針を弾性糸を介してダイヤルゲージから垂下し、針先端の接触によって生じる弾性糸の弛緩に基づいて検知しようとするものである。また、特公平4−44224号公報、特公平4−44225号公報には、前記のダイヤルゲージに変えて、ストレンゲージを用いる改良方法が提案されている。
【0010】
しかしながら、これらの方法は、自動化できる優れた方法ではあるが、針先端が確実に接触したときを検知するものであり、試料の硬さによって、必ずしも検知状態が一定ではなく、また、JISの規格試験とは異なる手法であり、すべての試験に適用できるものではなく、その使用方法は制限されるものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状の下、アスファルトの針入度、ワックスのちょう度などの試験において、試験者を問わず、簡単に、高い精度で、再現性よく試験できる針入度またはちょう度の試験器および試験方法の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的を達成するため、本発明者らは、針入度試験やちょう度試験において、針先端と試料容器内の試料表面の接触を簡単に、精度よく、迅速に調節することに関して鋭意検討を行った。その結果、特定の装置を用いることにより、効率よく、誰にでも、試験者の体調、熟練に関係なく容易に、迅速に、しかも高い精度で試験できることを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、(1)試験容器を入れる透明容器、この透明容器を載置する昇降可能な試験台、及び針の落下、針入距離測定部を有する針入度またはちょう度試験器において、前記透明容器の少なくとも一部が平面壁で形成され、前記針の先端部分を挟む状態で前記試験台に平行に設けられた固定支軸を支点として回動自在に設けられた回動アームと、この回動アームに支持された光学系と、を有する拡大装置を備え、前記拡大装置は、前記試験容器中の試料表面と針先端との接触部分を前記透明容器の前記平面壁を通して拡大することを特徴とする針入度またはちょう度試験器。
(2)前記回動アームの回動範囲は、前記固定支軸を支点として水平面より円周方向に50度である(1)記載の針入度またはちょう度試験器。
(3)前記拡大装置はCCDカメラと映像モニターを有する(1)または(2)記載の針入度またはちょう度試験器。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載の試験器を用い、試料表面に針の影を投じさせ、拡大像を目視しながら、針の先端と針の影の先端とが接触するように、試験台の高さを調節して、針の先端を試料表面に接触後、針を落下させる針入度またはちょう度の試験方法。
(5) 散乱光により影を投じさせる(4)記載の針入度またはちょう度の試験方法。
(6) 散乱光を乱反射体により形成させる(4)または(5)記載の針入度またはちょう度の試験方法に関するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の針入度またはちょう度試験器において、試験器本体部分は、従来、一般に用いられている、たとえば図5に示すJIS K 2207に示される試験器と実質的には変わらないものである。また、その試験方法も実質的にはJISに示されたものと同じである。
【0015】
図1は、本発明の針入度またはちょう度試験器の一実施態様を示す概念図である。図1において、10は拡大装置であり、斜線部で示してある。なお、試料台上の設備、針の落下、針入距離測定部を有すればその構造は問わない。図1において、本発明では、円筒形のガラス容器の代わりに、四角形透明容器に代表される少なくとも一部が平面壁で形成される透明容器と、透明容器の平面壁を通じて、試料容器中の試料表面と針先端との接触部分を、平面壁を通じて拡大する拡大装置10を具備するものである。
【0016】
すなわち、本発明は、従来のJIS規格試験器にとらわれることなく、発想を転換し、円筒ガラス容器を角形透明容器に変更することにより、鮮明な拡大像を得ることに成功したものである。なお、透明容器としては、四角形の容器が製造容易であるが、本発明の効果からすると、拡大像を形成する光学系の光路部が平面壁であれば事足りるものであり、幅が20mm程度あれば事足り、透明容器全体が平面壁である必要はない。透明容器の形状は、透明円筒容器の一部壁面を平面にした容器とすることもできる。なお、材質としては、ガラス、ポリメチルメタアクリレート樹脂などを用いることができる。したがって、より規格試験に近似させるためには、丸底円筒容器の側壁の一部を切断し、この部分に平板を接合することで得られる容器とすることができる。
【0017】
本発明の針入度またはちょう度試験器は、試験容器中の試料表面と針先端との接触状況を如何に、正確に、容易に観察するかにある。図2は、試験容器中の試料表面と針先端との接触状況の説明図である。図2(A)の斜視図で示すように、針入用の針を試料容器中の試料表面に近づけ、光源により針の影17を投じさせて、この針の先端と影の先端とが接触するように、試料容器を上昇させるものである。この針の先端と影の先端部分を、鮮明な像として拡大し、精度を高めようとするものである。
【0018】
したがって、試料には、たとえば、図2の(B)、(C)に示すように、さまざまな表面形状を示すものがある。このため、針の先端部を観察するためには、光学系の角度を矢印のように変更することが必要になる場合がある。
【0019】
以下、本発明の一実施態様である針入度試験器を図面を基に、詳細に説明する。本発明の針入度試験器またはちょう度試験器の主要部である図3、図4に基づいて説明する。図3は、本発明の試験台上の一実施態様を示す平面概念図である。図4は、図3の一部切断正面概念図である。図3、図4は、四角形の透明容器とCCD(Charge coupled device:電荷結合素子)カメラおよび映像モニターから構成される拡大装置を具備する試験器の例である。図3、図4において、3は試験台、6は試験容器、15は透明容器、20はCCDカメラ、21は支軸取付板、22はカメラ回動支持板、23はカメラ回動用アーム、24はカメラ固定台、25は固定支軸、26はカメラ回動用溝、27はカメラ固定ハンドル、28は映像モニターである。
【0020】
すなわち、本発明の試験器は、試験台に載置される試験容器6、試験容器を入れるて載置する水槽となる透明容器15は、試験器本体とは、一体化していないが、針入度試験、ちょう度試験には必須のものであり、これを含めて試験器と定義するものである。
【0021】
本発明の主要部である針先端部分の図示の拡大装置は、試験台3に支軸取付板21とカメラ回動支持板22が、透明容器6、CCDカメラ20を挟むように、平行に立設されている。この支軸取付板21とカメラ回動支持板22との間にはカメラ回動用アーム23が、支軸取付板21の固定支軸25を支点として設けられている。このカメラ回動用アーム23は、自由端部において、カメラ固定台24と一体化している。
【0022】
カメラ固定台24はカメラ回動用アーム23の下端から延びてコの字状に構成されている。また、カメラ回動支持板22には、カメラ回動用の溝26が形成されている。(カメラ回動用アームを固定支軸を起点に回動する)。さらに、カメラ回動用アーム23は、カメラ回動用溝26により、回動自在となると共に、カメラ固定ハンドルでカメラ回動支持板22に固定できるようになっている。
【0023】
すなわち、前記の図2の(B)、(C)で示したように、試験容器中の試料表面の形状によって、カメラの方向を変える必要がある場合に、固定支軸を基に、円周方向に回動することが可能になる。その結果、カメラの方向が変わっても、焦点距離は変動せず、鮮明な拡大像を得るとともに、操作性が一段と向上する。ここで、カメラの回動範囲αとしては、好ましくは水平面より、50度、より好ましくは5〜35度の範囲とされる。
【0024】
カメラで撮影された、映像データは、電気信号として映像モニターに送られ、拡大された像として目視観察される。映像モニターとしては、ブラウン管や液晶表示装置などを例示できる。なお、図示の例では、拡大装置の光学系を試験台に直接取付けたものを示したが、市販の針入度試験の試験台の上に、図示の試験台を取り付けることができることは勿論である。
【0025】
本発明の針入度試験またはちょう度試験器の拡大装置としては、図示のCCDカメラと映像モニター、ないしはこれに類似する装置が好ましく用いられる。しかしながら、他の装置とすることも可能である。たとえば、光学系のみで拡大像を読み取る装置、ビデオカメラで撮影し、液晶画面で拡大像を表示するものなどを例示できる。また、カメラの回動方式、固定方式としては、回動用溝に代えて、ラックとピニオンからなるものなど任意であり、また、この回動を手動でなく電動で行うこともできる。
【0026】
つぎに、本発明の針入度試験器またはちょう度試験器を用いた試験方法について説明する。まず、前記従来技術のJIS試験法に基づいて、定法により試験試料の調整が行われる。水槽で温度調整された試料の充填された試験容器は、次いで、少なくとも平面側壁(例、四角形透明容器)を有する水の入った透明容器に入れられ、試験台の所定の位置に載置する。ついで、カメラの反対側から、光源を調節して、針の影を試料表面に投じさせる。試験容器中の試料の表面状況より、映像モニター画面を見ながら、カメラの角度を調整し最適位置に固定する。
【0027】
次いで、映像モニター画面中の針先端と針の影の先端の拡大像を目視しながら、試験台を調整(上昇)し、針の先端と試料容器中の試料表面を接触させる。その後、針の留金具を開放して、針を落下させ、自重で試料に、5分間針入させ、その時の針入距離をダイヤルゲージで読み取る、針入距離のmmを10倍して、針入度の試験値とする。
【0028】
なお、本発明試験方法においては、光源として、一般光源を用いることもできるが、散乱光により影を投じさせることが鮮明な影の形成のために好ましい。この散乱光としては、たとえば、通常の光源からの光を乱反射体に反射させることで調整できる。すなわち、凹凸の強い白紙などを透明容器のカメラの反対側に立てかけるなどの方法を採用できる。
【0029】
【発明の効果】
本発明の針入度試験器およびちょう度試験器は、従来のJISに規定された試験規格を実質的に変更することなく、鮮明な拡大像を目視しながら針先と試料表面の接触点を調整できる。このため、試験者の技量、経験、視力、体調などに影響されることなく、正確に、迅速に、位置調整が行われる。その結果、同一系試料での試験において、バラツキなく安定した結果が得られ、省力化、無駄が排除できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の針入度またはちょう度試験器の一実施態様を示す概念図である。
【図2】試験容器中の試料の表面と針先端との接触状況の説明図である。
【図3】本発明の試験台上の一実施態様を示す平面概念図である。
【図4】図3の一部切断正面概略図である。
【図5】JISに規定された針入度試験器の一例を示す正面概念図である。
【符号の説明】
1:架台
2:支柱
3:試験台
4:昇降ハンドル
5:ガラス容器
6:試験容器
7:針
8:留金具
9:ダイヤルゲージ
10:拡大装置
15:透明容器
20:CCDカメラ
21:支軸取付板
22:カメラ回動支持板
23:カメラ回動用アーム
24:カメラ固定台
25:固定支軸
26:カメラ回動用溝
27:カメラ固定ハンドル
28:映像モニター
Claims (6)
- 試験容器を入れる透明容器、この透明容器を載置する昇降可能な試験台、及び針の落下、針入距離測定部を有する針入度またはちょう度試験器において、
前記透明容器の少なくとも一部が平面壁で形成され、
前記針の先端部分を挟む状態で前記試験台に平行に設けられた固定支軸を支点として回動自在に設けられた回動アームと、この回動アームに支持された光学系と、を有する拡大装置を備え、
前記拡大装置は、前記試験容器中の試料表面と針先端との接触部分を前記透明容器の前記平面壁を通して拡大することを特徴とする針入度またはちょう度試験器。 - 前記回動アームの回動範囲は、前記固定支軸を支点として水平面より円周方向に50度である請求項1記載の針入度またはちょう度試験器。
- 前記拡大装置はCCDカメラと映像モニターを有する請求項1または2記載の針入度またはちょう度試験器。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の試験器を用い、試料表面に針の影を投じさせ、拡大像を目視しながら、針の先端と針の影の先端とが接触するように、試験台の高さを調節して、針の先端を試料表面に接触後、針を落下させる針入度またはちょう度の試験方法。
- 散乱光により影を投じさせる請求項4記載の針入度またはちょう度の試験方法。
- 散乱光を乱反射体により形成させる請求項4または5記載の針入度またはちょう度の試験方法。
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