JP4242983B2 - 積層型開口面アレイアンテナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にマイクロ波やミリ波等の高周波を用いる通信に使用されるアンテナに関し、特に小型・軽量化に適した積層型開口面アレイアンテナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、通信技術の分野においては、マイクロ波やミリ波などの高周波を用いた移動体通信あるいは車間レーダ等の研究が盛んに進められている。通常、これらの通信における機器間の高周波信号の入出力は、最終的にはアンテナによって行なわれる。このような高周波用に用いられるアンテナとしては従来から種々のものが検討されており、代表的なものとしては、例えば導波管スロットアンテナ・マイクロストリップアンテナ・開口面アンテナ等が知られている。
【0003】
また、これらの高周波用アンテナは高周波用の電気回路と接続されて用いられるが、これら電気回路とアンテナとを接続する給電線路としては、例えば開口面アンテナや導波管スロットアンテナに対しては導波管が、またマイクロストリップアンテナに対してはトリプレート線路が主として用いられている。
【0004】
さらに、最近では、高周波用アンテナの放射部と給電部を誘電体基板内に一体化して作製し、高周波用アンテナを含む通信システム機器の小型化を図ることも望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような高周波用アンテナを移動体通信や車間レーダ等に用いるためには、アンテナ自体が軽く、薄く、かつ小型であり、しかも、設計が容易で高効率であることが必要である。
【0006】
上記の高周波用アンテナのうちで導波管スロットアンテナは、高効率であり、しかも薄く形成できるという長所があるが、金属板を加工して作製されるために重く、またコスト高であるという問題点がある。これに対してマイクロストリップアンテナは、誘電体シートに金属膜を被着し成形して作製されるために、軽く、また薄く形成でき、製造上も容易に作製できるために安価であるという長所があるものの、効率が低いという問題点がある。
【0007】
一方、開口面アンテナ、例えばホーンアンテナは、アンテナ特性としては非常に優れた性能を持っているが、金属部材を用いて立体的に加工して作製されるためにそれ自体大型となって通信用端末機器には搭載しにくく、しかも軽量化も困難であるという問題点がある。
【0008】
さらに、上記のいずれの高周波用アンテナを用いる場合でも、適用される高周波がミリ波の領域になるとアンテナシステム全体の特性が重要になる。すなわち、高周波用アンテナ・給電線路・高周波回路等の個々の特性が非常に優れていても、最終的にはこれらが全て接続されてシステム全体が構成されるので、これらの接続部の特性・大きさおよびコスト等もアンテナシステム全体に影響を与えることとなる。例えば、これらの接続部を導波管で構成したとすると、高周波用アンテナ・給電回路・高周波回路等の性能をほとんど損なうことなくアンテナシステムを構成することができる。しかし、導波管で接続すると立体的な構造となることが多く、またネジ止め等による機械的な接続を行なうため、信頼性の低下とコストアップにつながるという問題点がある。
【0009】
これらの問題点に対し、本発明者の一人は特願平10−40813 号において積層型開口面アンテナを提案した。この提案は、従来のホーン型の開口面を空間共振器として、多層配線基板に対する一般的な積層技術をもって容易に作製可能な構造とすることを特徴とするものである。
【0010】
しかしながら、この積層型開口面アンテナは、給電部の構造は誘電体導波管を何度も分岐させて給電用導波管の数を増やし、分岐した各誘電体導波管の短絡部の近傍に設けた単一のスロットから放射部へ給電を行なう、いわゆる並列給電を行なうものであり、設計は容易であるものの、給電部の分岐により面積が増大してしまうため、小型化が困難であるという改善すべき点を有していた。
【0011】
また一方、スロットアレイアンテナにおいては、一本の導波管で複数のスロットに給電を行なう直列給電の構造も考案されている。この構造はスロットの寸法変化により放射エネルギーを調整しようとするものであるが、スロットが直接にアンテナの放射部となるため、スロットの微少な寸法変化により各スロットから放射される放射エネルギーが大きく変化することとなり、各スロットから放射されるエネルギーを十分に均一化することができず、その結果として、放射パターンが乱れてしまうこととなるという問題点を有していた。
【0012】
これらの問題点に対し、本発明者の一人はさらに特願平11−184460号において積層型開口面アレイアンテナを提案した。この積層型開口面アレイアンテナは、第1誘電体基板を挟持する上部第1主導体層および下部主導体層と、この主導体層間を高周波信号の伝送方向に信号波長の2分の1未満の繰り返し間隔および所定の幅で電気的に接続する2列の側壁用貫通導体群と、前記主導体層間を前記幅方向に前記信号波長の2分の1未満の繰り返し間隔で電気的に接続する端面用貫通導体群とを具備して成る誘電体導波管線路の前記上部第1主導体層上に、複数の誘電体層を積層して成る第2誘電体基板と、この第2誘電体基板の上面に被着形成され、所定の開口部を有する上部第2主導体層と、前記開口部周囲の前記第2誘電体基板内に形成され、所定間隔をもって前記上部第1主導体層および前記上部第2主導体層間を電気的に接続する複数の導体壁用貫通導体ならびにこの複数の導体壁用貫通導体を前記誘電体層間で電気的に接続する副導体層から成るアンテナ導体壁とを形成して成り、前記上部第1主導体層、アンテナ導体壁および上部第2主導体層で囲まれた空間により構成された空間共振器を前記伝送方向に複数個形成するとともに、前記上部第1主導体層にそれぞれ前記空間共振器に対応させて給電のためのスロットを形成して成ることを特徴とするものであり、また、上記構成において、前記スロットは、前記端面用貫通導体群側から1番目のスロットに対してi番目のスロットからの放射率が1/i(ただし、iは自然数)となるようにその寸法を順次小さくしてあることを特徴とするものである。
【0013】
このような積層型開口面アレイアンテナによれば、1本の誘電体導波管線路で複数のスロットに給電を行ない、スロットの上部に空間共振器を形成して、スロットの微少な寸法変化による放射エネルギー変動を空間共振器で緩和するものであり、各スロットから放射されるエネルギーを十分に均一化することができ、高効率なアンテナが得られた。
【0014】
しかしながら、この手法では、スロットの寸法を変化させると誘電体導波管線路を伝播する電磁波の位相が変化してしまうため、スロットの間隔を変化させて位相変化を補正する設計が必要であり、スロット間隔を等間隔にすることが困難で放射パターンの設計が容易ではないという改善すべき点を有していた。つまり、スロットや空間共振器の間隔が不等間隔である場合には放射エネルギーの密度が不均一となり、それを均一にするためには、各スロットから放射されるエネルギーを調整する設計が必要であった。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みて案出されたものであり、その目的は、小型化・薄型化・高効率化が可能であり、しかも簡単な設計で放射エネルギー密度を均一にすることができ、一般的な積層技術をもって容易に作製可能な積層型開口面アレイアンテナを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題点に対して検討を重ねた結果、誘電体を積層した誘電体基板の上面に形成された開口部を有する第2主導体層と、前記誘電体基板の中間面に形成されたスロットを有する第1主導体層と、これら第2主導体層と第1主導体層とを電気的に接合する貫通導体群とで空間共振器を複数個形成し、複数の空間共振器の下部に誘電体層を介して下部主導体層を形成し、これらの第1主導体層と下部主導体層との間を電気的に接続して形成された2列の側壁用導体群とによって誘電体導波管線路を形成し、この誘電体導波管線路によって複数の空間共振器に直列給電を行なう積層型開口面アレイアンテナにおいて、この誘電体導波管線路の幅を給電位置により変化させることによって、各スロットの間隔を固定した状態で各スロットから放射する電磁波の位相を調整することができ、簡単な設計で、高効率で小型軽量にでき、しかも、従来の積層技術をもって容易に作製できることを見出し、本発明に至った。
【0017】
すなわち、本発明の積層型開口面アレイアンテナは、第1誘電体基板を挟持する上部第1主導体層および下部主導体層と、この主導体層間を高周波信号の伝送方向に信号波長の2分の1未満の繰り返し間隔および所定の幅で電気的に接続する2列の側壁用貫通導体群と、前記主導体層間を前記幅方向に前記信号波長の2分の1未満の繰り返し間隔で電気的に接続する端面用貫通導体群とを具備して成る誘電体導波管線路の前記上部第1主導体層上に、複数の誘電体層を積層して成る第2誘電体基板と、この第2誘電体基板の上面に被着形成され、所定の開口部を有する上部第2主導体層と、前記開口部周囲の前記第2誘電体基板内に形成され、所定間隔をもって前記上部第1主導体層および前記上部第2主導体層間を電気的に接続する複数の導体壁用貫通導体ならびにこの複数の導体壁用貫通導体を前記誘電体層間で電気的に接続する副導体層から成るアンテナ導体壁とを形成して成り、前記上部第1主導体層、アンテナ導体壁および上部第2主導体層で囲まれた空間により構成された空間共振器を前記伝送方向に複数個形成するとともに、前記上部第1主導体層にそれぞれ前記空間共振器に対応させて給電のためのスロットを形成し、かつ前記2列の側壁用貫通導体群の幅を、前記各スロットから放射される高周波信号の位相が同じとなるように伝送方向に沿って変化させており、複数の前記スロットは、前記端面用貫通導体群側からその寸法を順次小さくしてあることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の積層型開口面アレイアンテナは、上記構成において、前記2列の側壁用貫通導体群の幅を、前記各スロットを挟持する部位と各スロット間の部位とで異ならせていることを特徴とするものである。
【0019】
さらに、本発明の積層型開口面アレイアンテナは、上記各構成において、前記スロットを前記伝送方向に等間隔に形成したことを特徴とするものである。
【0020】
本発明の積層型開口面アレイアンテナによれば、積層型の誘電体導波管線路上において誘電体層を積層して成る誘電体基板の一部に複数個の空間共振器を同一平面上に誘電体導波管線路の伝送方向に複数個形成し、それら複数個の空間共振器に対して各スロットから分岐のない単一の誘電体導波管線路で直列給電を行なうとともに、給電用の誘電体導波管線路の幅を各スロットから放射される高周波信号の位相が同じとなるように高周波信号の伝送方向に沿って変化させていることから、この給電用の誘電体導波管線路の幅を調整することにより各スロットの位置を固定した状態で各スロットから放射される電磁波の位相を自由に調整でき、これにより放射パターンの均一化の設計を容易に行なうことができる。
【0021】
つまり、各スロットから同位相の電磁波を放射させる場合であれば、各スロットの寸法による位相の変化を修正する方向,すなわちそれぞれの電磁波が同位相となる方向へ誘電体導波管線路の幅を狭くあるいは広く変化させて調整する。また、ある角度をもって電磁波を放射する場合であれば、各スロットから放射される電磁波の位相が少しずつ異なるように誘電体導波管線路の幅を変化させて調整することで、アンテナ素子に変更を加えずに所望の放射パターンが得られる設計が可能となる。
【0022】
このように、本発明の積層型開口面アレイアンテナによれば、複数の空間共振器に給電用の誘電体導波管線路によってスロットを介して直列給電を行なう構造において、誘電体導波管線路の幅を伝送方向に沿って給電位置によって変化させることにより、スロットや空間共振器の設計を変えずに各スロットから放射される電磁波の位相を調整することができる積層型開口面アレイアンテナとなる。
【0023】
また、本発明の積層型開口面アレイアンテナによれば、上記の構成において、給電用の誘電体導波管線路の幅を、各スロットを挟持する部位と各スロット間の部位とで異ならせた場合には、管内波長を変化させて、スロットや空間共振器の設計を固定した状態で各スロットから放射される電磁波の位相を調整することができる積層型開口面アレイアンテナとなる。
【0024】
さらに、本発明の積層型開口面アレイアンテナによれば、上記各構成において、スロットを誘電体導波管線路の伝送方向に等間隔に形成した場合には、スロットや空間共振器の間隔を等間隔に保って均一な電磁波放射が可能となるとともに、各スロットから放射される電磁波の位相を統一して均一化させることができる積層型開口面アレイアンテナとなる。
【0025】
また、本発明の積層型開口面アレイアンテナによれば、誘電体層を積層して成る誘電体基板の一部に複数個の空間共振器を同一平面上に形成し、それら複数個の空間共振器に対して分岐のない単一の積層型誘電体導波管線路で直列給電を行なうため、積層型誘電体導波管線路による給電構造を単純化することができる。
【0026】
つまり、分岐がない単一の積層型誘電体導波管線路による給電構造によれば、線路長が短く、しかも分岐が無いため、エネルギーの損失が少ない高効率な積層型開口面アレイアンテナを作製することができる。
【0027】
さらに、スロットの長さを給電線との位置関係により調整することで、各スロットから空間共振器に供給される放射エネルギーの量を調整できるが、そのエネルギーをいったん空間共振器を介して放射させるため、スロットの寸法変化に対する放射量の変化が鈍感になり、各空間共振器から放射される放射量を十分に均一化することができ、その結果として、均一な放射パターンが得られると同時に良好なアンテナ特性が得られるものとなる。
【0028】
また、アンテナと給電線路とを誘電体基板に一体的に構成でき、しかも、複数の空間共振器に対する給電線路のパターンが積層型の誘電体導波管線路を用いていて単純であるために、誘電体基板の厚みのみならず、面方向の寸法についても小型化でき、システム全体を小型化・軽量化できる。
【0029】
本発明の積層型開口面アレイアンテナによれば、多層配線基板に対する積層技術に基づいて誘電体層を多層に積層して成る誘電体基板中に形成されるビアホール導体等の貫通導体と、この誘電体層間に配設された導体層との組み合わせによってアンテナ導体壁を形成することから、容易にかつ安価に開口面アンテナを作製することができる。
【0030】
また、アンテナ導体壁とそれに対応した上部第2主導体層の開口部と下部第1主導体層とにより囲まれた空間を片面短絡・片面開放の1/4波長共振空間(空間共振器)とし、この開口面から電磁波を放射することから、放射周波数は開口面の大きさと空間共振器の厚みすなわち誘電体基板の厚みとにより制御することができる。このことは設計に自由度を与えることとなり、例えば開口面の大きさを大きくすれば開口面アンテナを形成する空間の厚みを薄くすることができるため、誘電体層の積層数を減らすことができ、結果としてより安価に作製できるものとなる。
【0031】
また、本発明の積層型開口面アレイアンテナは従来の積層技術で形成可能であるために、通常の多層配線基板内に一体的に形成することができ、それと同時にアンテナへの給電線も同時に形成できる。しかも、従来の多層化技術をもって一連の工程で作製できるので、信頼性が高く、低コストの積層型開口面アレイアンテナを作製することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
通常は、誘電体導波管線路にスロットを設けると、その導波管線路における管内波の位相は、スロットの大きさにより、図3に示すように変化する。図3は誘電体導波管線路に形成したスロットの寸法とそれに対する管内波の位相との関係を示す線図であり、横軸はスロットの長さ(単位:mm)を、縦軸は管内波の位相のずれ(単位:°)を表し、特性曲線はスロットの長さに対する位相のずれの変化を示している。このように、誘電体導波管線路に対してスロットを形成すると、それによって管内波の位相がずれることとなるため、各スロットから放射される電磁波の位相をそろえる必要から、従来の給電用の誘電体導波管線路では、スロットの間隔をそれぞれ微妙に変化させることによってこのスロットによる位相の変化の影響を打ち消していた。このため、従来の積層型開口面アレイアンテナではスロットの間隔を等間隔にできず、また設計も困難であった。
【0033】
ここで、給電用の誘電体導波管線路の幅Aと、管内波長λpとの間には、自由空間電磁波の波長をλとして次の関係がある。
【0034】
λp =λ/{1−(λ/2A)2 }1/2
この関係において、誘電体導波管線路の幅Aを変えることで管内波長λpを変化させることができる。
【0035】
本発明の積層型開口面アレイアンテナでは、これに基づき、各スロットの位置を固定した状態で各スロットから放射される電磁波の位相を自由に調整できるため、放射パターンの設計を所望通りに容易に行なうことができる。
【0036】
また、本発明の積層型開口面アレイアンテナでは、誘電体導波管線路の幅をスロットを挟持する部位とスロット間の部位とで異ならせることにより、同様に、各スロットの位置を固定した状態で各スロットから放射される電磁波の位相を自由に調整できるため、放射パターンの設計を所望通りに容易に行なうことができる。
【0037】
さらに、本発明の積層型開口面アレイアンテナでは、誘電体導波管線路に対して伝送方向にスロットを等間隔に形成することにより、スロット間隔と空間共振器の間隔を等間隔とすることができ、電磁波の放射エネルギーの密度を均一とすることができ、設計が容易になる。
【0038】
以下、本発明の積層型開口面アレイアンテナについて、図面を用いて詳細に説明する。
【0039】
図1は本発明の積層型開口面アレイアンテナの実施の形態の一例を示す部分透視斜視図である。図1において、1は誘電体基板、2は上部第1主導体層、3は下部第1主導体層、4は側壁用貫通導体群、5は端面用貫通導体群、6は誘電体導波管線路であり、7は誘電体層、8は誘電体層7を積層して成る第2誘電体基板、9は上部第2主導体層、10は開口部、11は導体壁用貫通導体群、12は副導体層、13は空間(空間共振器)、14はスロットである。なお、図1では第1誘電体基板1および第2誘電体基板8の誘電体層7の一部について透視した状態の図を示している。
【0040】
図1に示す例によれば、本発明の積層型開口面アレイアンテナは、所定厚みの誘電体層7を複数層積層して成る第2誘電体基板8を空間共振器13を複数個形成する基材とするものである。そして、この第2誘電体基板8の上面には上部第2主導体層9が被着形成され、下面には上部第1主導体層2が被着形成されている。またこの上部第1主導体層2は、第2誘電体基板8がその上に形成されている第1誘電体基板1の上面に被着形成されているものでもあり、第1誘電体基板1の下面には下部主導体層3が被着形成されている。
【0041】
このように、複数個の空間共振器13は上部第2主導体層9と上部第1主導体層2との間に形成されており、各空間共振器13に給電を行なう誘電体導波管線路6は上部第1主導体層2と下部主導体層3との間に形成されているため、第1誘電体基板1と第2誘電体基板8とから成る誘電体基板の内部にアンテナの放射部と給電部とを一体的に設けた構造となっている。
【0042】
上部第1主導体層2と上部第2主導体層9との間に形成された空間共振器13は次のように構成されている。つまり、上部第2主導体層9には、アンテナにおける放射部となる例えば開口寸法がa×bの矩形状の開口部10が複数個形成されている。そして、第2誘電体基板8には、上部第2主導体層9の開口部10の周囲に、上部第1主導体層2と上部第2主導体層9とを電気的に接続する形で、所定間隔をもって誘電体層7の積層方向に複数のビアホール導体やスルーホール導体等の導体壁用貫通導体群11が形成されている。導体壁用貫通導体群11は誘電体層7間に上部第1主導体層2および上部第2主導体層9と平行に形成された開口寸法がa×bの帯状の副導体層12と電気的に接続され、それらにより、同図中に示したz−x面およびy−z面に平行なアンテナ導体壁が形成されている。
【0043】
また、このアンテナ導体壁に電気的に接続された上部第1主導体層2は、誘電体導波管線路6の上側の主導体層ともなっており、開口部10と対向する位置に、少なくとも寸法がa×bの開口部10より大きな領域を覆うように形成されている。その結果、開口部10を有する上部第2主導体層9と複数の導体壁用貫通導体群11と単数または複数の副導体層12とによって構成されたアンテナ導体壁ならびに上部第1主導体層2に囲まれた、寸法がa×b×cの直方体(直六面体)状の空間からなる空間共振器13が形成され、これにより積層型開口面アレイアンテナの放射部が構成されている。
【0044】
なお、このアンテナ導体壁は、この導体壁からは電磁波が漏れないように形成する必要があることから、副導体層12間の間隔および導体壁用貫通導体群11間の間隔は、少なくとも信号波長の1/2未満の間隔、望ましくは信号波長の1/4以下の間隔をもって配列される。
【0045】
このアンテナは、片面短絡・片面開放の1/4波長共振器の原理を応用しているため、その共振モードにより開口面から放射される電磁波の特性が異なる。従って、その目的により様々な応用が考えられる。例えば、直六面体TE111 モードを用いれば、電磁波はアンテナ正面方向には放射されず、ある角度±θ方向に放射されるが、一般的には直六面体TE101 モードを用いることが望ましい。このとき、アンテナから放射される電磁波の周波数f〔GHz〕は概略次に示す式により計算できる。
f=150 ×{(1/a)2 +(1/2c)2 }1/2 ×εr -1/2
ただし、εr は比誘電率であり、aおよびcの単位はmmである。
【0046】
ここで、開口部10の長さbは幅a以下であればよいが、あまり小さいと導体によるエネルギーの損失が大きくなるため注意が必要である。
【0047】
上記の例では空間共振器13が直方体状の場合の例を示したが、共振空間が円柱状のときも同様である。ただし、このときは円柱TE111 モードで用いることが望ましい。また、このとき、アンテナから放射される電磁波の周波数f〔GHz〕は概略次に示す式により計算できる。
f=150 ×{(1/2c)2 +(χ11'/πa)2 }1/2 ×εr -1/2
ただし、χ11' は1次のベッセル関数の導関数の1番目の根であり、aおよびcの単位はmmである。
【0048】
なお、図1に示すように、開口部10を矩形状とし空間共振器13を直方体状とした場合には、放射電界の偏波面を容易に固定することができ、優れた直線偏波アンテナ素子となる。
【0049】
また、開口部10を円形状とし空間共振器13を円柱状とした場合には、放射電界の偏波面は、この空間共振器13を給電するスロット14によって決まる。従って、2つのスロットを用いて位相を調整することにより、軸比の良好な円偏波アンテナ素子とすることができる。
【0050】
本発明の積層型開口面アレイアンテナにおけるこのような複数個の空間共振器13への給電構造は、上部第1主導体層2と下部主導体層3との間で次のように構成されている。
【0051】
図1によれば、第1誘電体基板1の上面に上部第1主導体層2が、第1誘電体基板1の下面に下部主導体層3が形成されており、上部第1主導体層2が空間共振器13の下面を構成している。また、上部第1主導体層2と下部主導体層3との間には、それらを電気的に接続するスルーホール導体やビアホール導体等の貫通導体が多数設けられ、2列の側壁用貫通導体群4を形成している。この誘電体導波管線路6の幅方向に所定の間隔Aをもって形成された2列の側壁用貫通導体群4は、信号伝送方向に信号波長の2分の1未満(望ましくは4分の1以下)の所定のピッチCをもって形成されており、これによりこの誘電体導波管線路6における側壁を形成している。
【0052】
ここで、上部第1主導体層2と下部主導体層3との間の間隔Bに対する制限は特にないが、シングルモードで用いる場合には間隔Aに対して2分の1(1/2)倍程度とすることがよい。図1の例では、誘電体導波管のE面とH面に当たる部分がそれぞれ上部第1主導体層2・下部主導体層3・側壁用貫通導体群4と、必要に応じて形成される副導体層15とで形成される。
【0053】
また、側壁用貫通導体群4の各貫通導体がピッチCが信号波長の2分の1未満で設定されることにより、側壁用貫通導体群4が電気的な壁を形成している。ここで、側壁用貫通導体群4の貫通導体と副導体層15との隙間、または上下に隣接する2つの副導体層15の間の隙間が信号波長の1/2より大きいと、その隙間はスロットとして作用することとなりそこから電磁波が漏れるので、この誘電体導波管線路6に電磁波を給電しても、電磁波はここで作られる疑似的な導波管に沿って伝播しないこととなる。しかし、その隙間を信号波長の1/2より小さくして行くと、電磁波の漏れは収まって行き、この擬似的な導波管に沿って伝播することとなる。その結果、図1に示す構成によれば、間隔Bで設置した一対の上部第1主導体層2と下部主導体層3、および間隔Aで設置した2列の側壁用貫通導体群4と副導体層15とによって囲まれる断面積がB×Aのサイズの領域が、各空間共振器13に給電を行なう誘電体導波管線路6となる。
【0054】
複数の空間共振器13は一本の誘電体導波管線路6の上部第1主導体層2に形成されたスロット14により給電される。この誘電体導波管線路6の一方の端部は、上部第1主導体層2および下部主導体層3間を誘電体導波管線路6の幅方向に信号波長の2分の1未満の繰り返し間隔で電気的に接続する端面用貫通導体群5と、上部第1主導体層2および下部主導体層3間に平行に形成され、2列の側壁用貫通導体群4をそれぞれ電気的に接続する副導体層15とによって短絡されて短絡端となっており、他方は開放端となっている。この開放端から給電することにより、電磁波が誘電体導波管線路6の内部を伝播し、上部第1主導体層2には各空間共振器13に対応する位置にスロット14が設けられていることから、スロット14に到達するごとに順に一部の電磁エネルギーはスロット14から空間共振器13へ給電され、残りは誘電体導波管線路6をさらに伝播する。このため導波管6を伝播する電磁エネルギーは開放端から短絡端へ近づくほど減少していく。全体でn個の空間共振器13とスロット14に対し、短絡端から順番にi=1、2、3・・・nと番号をつけることとすると、各空間共振器13の寸法が同一の場合には、i番めのスロット14から放射する放射率Riが次の関係式で与えられるように各スロット14の寸法を調整することで、各スロット14から各空間共振器13へ放射されるエネルギーを均一化することができる。
Ri=1/i
つまり、短絡端に最も近い1番目のスロット14の放射率が1、2番目のスロット14の放射率が1/2、3番目のスロット14の放射率が1/3、以下順に1/4、1/5・・・1/nとなるように各スロット14の寸法を調整することで、各スロット14からの放射量を均一化できる。
【0055】
このように、積層型開口面アレイアンテナの各空間共振器13からの放射量の調整は、スロット14の寸法を変えることで可能である。つまり、給電を行なう誘電体導波管線路6の短絡端からの空間共振器13の位置に応じてスロット14の寸法、例えばスロット長を変化させることで、各スロット14から各空間共振器13へ放射される電磁波のエネルギーを均一化することが可能である。
【0056】
このようなスロット14のスロット長とそのスロット14から空間共振器13に放射される電磁エネルギーの放射率との関係を求めたものを図4に線図で示す。図4において横軸はスロット14のスロット長l(単位:mm)を、縦軸はそのスロット14からの放射率を表しており、黒三角で示した点およびそれらを結ぶ特性曲線はスロット長lに対する放射率の変化を示している。なお、このときの測定は、ネットワークアナライザを用い、77GHzでの反射と挿入損失を評価し、そのデータを用いて放射等を算出した。
【0057】
本発明の積層型開口面アレイアンテナの各スロット14は、このような図4に示す関係を用いて、誘電体導波管線路6上の各空間共振器13の位置に応じて前述の所定の関係でもって、その寸法、例えば長さが調整されている。
【0058】
各空間共振器13に給電を行なう誘電体導波管線路6については、その導波管サイズは第1誘電体基板1の比誘電率をεr とすると、その大きさは通常の導波管の1/√εr の大きさにすることができるため、第1誘電体基板1を構成する材料の比誘電率εr を大きくするほど誘電体導波管線路6のサイズを小さくすることができ、その結果、積層型開口面アレイアンテナも小型化できる。
【0059】
側壁用貫通導体群4を構成する貫通導体は、伝送方向に信号波長の2分の1未満の繰り返し間隔Cで配設されている。この間隔Cは良好な伝送特性を実現するためには一定の繰り返し間隔とすることが望ましいが、信号波長の2分の1未満の間隔であれば適宜変化させたりいくつかの値を組み合わせたりしてもよい。
【0060】
そして、本発明の積層型開口面アレイアンテナにおいては、誘電体導波管線路6における2列の側壁用貫通導体群4・4間の幅Aを、各スロット14から放射される高周波信号の位相が同じとなるように伝送方向に沿って狭くあるいは広くして変化させていることを特徴とする。このように2列の側壁用貫通導体群4・4間の幅Aを変化させる場合、その変化は、
A=(λ/2)×{λp 2 /(λp 2 −λ2 )}1/2
式中、λ :自由空間波長
λp :管内波長
の関係を用い、目的の位相差が得られるように管内波長λp を決め、幅Aを求める。
【0061】
これにより、誘電体導波管線路6の幅Aを変化させることにより、管内波長λp が変化し、図3に示したスロット14間での位相ずれを補正することによって各スロット14から放射される高周波信号の位相を同じとすることができ、電磁波の放射量を十分に均一化させて均一な放射パターンのアンテナを容易に設計することができる。
【0062】
次に、図2に本発明の積層型開口面アレイアンテナの実施の形態の他の例を部分透視斜視図で示す。図2において、図1と同様の箇所には同じ符号を付してある。
【0063】
図2に示す例においては、誘電体導波管線路6における2列の側壁用貫通導体群4・4間の幅A’を、各スロット14を挟持する部位と各スロット14間の部位とで異ならせていることを特徴とする。このように2列の側壁用貫通導体群4・4間の幅A’を変化させる場合、その変化は、自由空間波長をλ、管内波長をλp として、
A’=(λ/2)×{λp 2 /(λp 2 −λ2 )}1/2
の関係式を用い、図3に示す位相ずれを補正するように幅A’を決定すればよい。
【0064】
これにより、誘電体導波管線路6における管内波長λp を隣接するスロット14間で、そのスロット14間で生じる位相のずれを打ち消すように変化させることによって各スロット14から放射される高周波信号の位相を同じとすることができ、スロット14や空間共振器13の設計を固定した状態で電磁波の放射量を十分に均一化させて均一な放射パターンのアンテナを容易に設計することができる。
【0065】
そして、本発明の積層型開口面アレイアンテナによれば、これら図1および図2に示す例において、各スロット14を誘電体導波管線路6の伝送方向に等間隔に形成することにより、隣り合うアンテナ素子の位相は管内波長λp を変化させて一定間隔で位相を調製しているので、各スロット14から放射される電磁波の位相をほぼ完全に統一させて均一化することができるものとなる。
【0066】
このような積層型開口面アレイアンテナを構成する第1誘電体基板1としては、誘電体として機能し高周波信号の伝送を妨げることのない特性を有するものであればとりわけ限定するものではないが、伝送線路を形成する際の精度および製造の容易性の点からは、第1誘電体基板1はセラミックスからなることが望ましい。
【0067】
このようなセラミックスとしてはこれまで様々な比誘電率を持つセラミックスが知られているが、本発明の積層型開口面アレイアンテナに係る誘電体導波管線路6によって高周波信号を伝送するためには常誘電体であることが望ましい。これは、一般に強誘電体セラミックスは高周波領域では誘電損失が大きく伝送損失が大きくなるためである。従って、第1誘電体基板1の比誘電率εr は4〜100 程度が適当である。
【0068】
また、一般に多層配線基板や半導体素子収納用パッケージあるいは車間レーダに形成される配線層の1層の厚みは最大でも1mm程度であることから、比誘電率εr が100 の材料を用い、側壁がH面すなわち磁界が側壁の面に平行に巻く電磁界分布になるように用いた場合には、用いることのできる最小の周波数は15GHzと算出され、マイクロ波帯の領域でも利用可能となる。
【0069】
一方、一般的に第1誘電体基板1として用いられる樹脂からなる誘電体は、比誘電率εr が2程度であるため、配線層の厚みが1mmの場合は約100 GHz以上でないと利用することができないものとなる。
【0070】
また、このような常誘電体セラミックスの中にはアルミナやシリカ等のように誘電正接が非常に小さなものが多いが、全ての常誘電体セラミックスが利用可能であるわけではない。誘電体導波管線路6の場合は導体による損失はほとんどなく、信号伝送時の損失のほとんどは誘電体による損失である。その誘電体による損失α(dB/m)は次のように表わされる。
α=27.3×tanδ/〔λ/{1−(λ/λc )2 }1/2 〕
式中、tanδ:誘電体の誘電正接
λ :誘電体中の波長
λc :遮断波長
規格化された矩形導波管(WRJシリーズ)形状に準ずると、上式中の{1−(λ/λc )2 }1/2 は0.75程度である。
【0071】
従って、実用に供し得る伝送損失である−100 dB/m以下にするには、下記の関係が成立するように誘電体を選択することが必要である。
【0072】
f×εr 1/2 ×tanδ≦0.8
式中、fは使用する高周波信号の周波数(GHz)である。
【0073】
なお、以上の実施の形態における第1誘電体基板1・誘電体層7および第2誘電体基板8は、適当な厚みにシート化が可能で、メタライズ層等の導体層の被着形成が可能で、ビアホール導体等の貫通導体が形成でき、密着積層できる誘電体材料であればよい。例えば、セラミックス・ガラスセラミックス・樹脂等の種々の材料でもよく、また樹脂とセラミックス粉末との混合物でもよい。また、高周波信号の伝送損失をできるだけ低減するためには誘電体材料の誘電正接は小さい方がよく、使用する周波数において0.001 以下であることが望ましい。
【0074】
さらに、これら第1誘電体基板1・誘電体層7および第2誘電体基板8に被着形成されて上部第1主導体層2・下部主導体層3・上部第2主導体層9・副導体層12・副導体層15となるメタライズ層等の導体層は、高周波信号の伝送損失が小さい低抵抗導体で構成されることが望ましく、好適には少なくとも金・銀・銅の何れか一つを主成分とするのがよい。
【0075】
次に、本発明の積層型開口面アレイアンテナの製造方法について説明する。
【0076】
第1誘電体基板1ならびに誘電体層7・第2誘電体基板8としては、例えばアルミナセラミックスやガラスセラミックス・窒化アルミニウムセラミックス等のセラミックスを用いる。この場合は、これらセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤・溶媒を添加混合して泥漿状になすとともに、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用してシート状となすことによって、複数枚のセラミックグリーンシートを得る。その後、例えば誘電体がアルミナセラミックスから成る場合であれば、タングステンやモリブデン・マンガン等の金属粉末に適当なアルミナ・シリカ・マグネシア等の酸化物や有機溶剤・溶媒等を添加混合してペースト状にしたものを厚膜印刷法によりこのセラミックグリーンシートに各主導体層2・3・9や各副導体層12・15となるようなパターンに印刷する。
【0077】
また、各貫通導体群4・5・11の貫通導体と成る部分には、例えばセラミックグリーンシートを打ち抜き加工等で打ち抜き、この打ち抜かれた貫通孔の部分に、例えばタングステンやモリブデン・マンガン等の金属粉末に適当なアルミナ・シリカ・マグネシア等の酸化物や有機溶剤・溶媒等を添加混合してペースト状としたものを充填する。そしてセラミックグリーンシートの各々に適当な打ち抜き加工を施すとともに、これらを積層し、アルミナセラミックスの場合は1500〜1700℃、ガラスセラミックスの場合は850 〜1000℃、窒化アルミニウムセラミックスの場合は1600〜1900℃の温度で焼成することによって製作される。
【0078】
なお、各主導体層2・3・9や各副導体層12・15ならびに各貫通導体群4・5・11の貫通導体の形成に用いられる金属粉末としては、誘電体がガラスセラミックスの場合は銅・金・銀が、窒化アルミニウムセラミックスの場合はタングステン・モリブデンが好適である。また、各主導体層2・3・9や各副導体層12・15の厚みは通常は5〜50μm程度とされる。
【0079】
また、各貫通導体群4・5・11の貫通導体の断面形状は、製作が容易な円形の他、矩形や菱形等の多角形であってもよい。これら貫通導体は、例えばセラミックグリーンシートに打ち抜き加工を施して作製した貫通孔に主導体層12・13と同様の金属ペーストを埋め込み、しかる後、セラミックグリーンシートと同時に焼成し形成する。なお、これらの貫通導体の大きさは直径50〜300 μmが適当である。
【0080】
【実施例】
本発明の積層型開口面アレイアンテナとして、図1に示した構成のものを作製した。積層型の誘電体導波管線路6の上に伝送方向に複数個の空間共振器13を形成し、各空間共振器13に対する給電線路にはこの誘電体導波管線路6を用いて、上部第1主導体層2に各空間共振器13に対応させて給電のためのスロット14を設けた。
【0081】
各空間共振器13は寸法がa=3.4 mm・b=1.3 mm・c=0.5 mmの直六面体で、中心周波数が77GHzとなるようにした。
【0082】
誘電体導波管線路6はその2列の側壁用貫通導体群4・4間の幅Aを伝送方向に沿って1.5 mmから1.1 mmへと徐々に変化させ、スロット14を等間隔に形成した状態で各スロット14から放射される電磁波の位相が同一となるようにした。
【0083】
なお、誘電体導波管線路6の高さBは0.6 mmで一定とした。また、誘電体層の誘電体材料には比誘電率εr が5で誘電損失tanδが0.0008の低温焼結ガラスセラミックスを用い、各導体層には銅メタライズ層を用いた。
【0084】
また、各スロット14の幅(誘電体導波管線路6の伝送方向の長さ)は0.15mmで統一し、長さ(誘電体導波管線路6の幅方向の長さ)を0.9 mm〜0.4 mmの間で給電位置に応じて放射率が前記所定の関係となるように変化させた。1番目のスロット14は誘電体導波管線路6の短絡端である端面用貫通導体群5の形成位置から伝送方向に1.1 mmの位置に設けた。
【0085】
以上のようにして形成した本発明の積層型開口面アレイアンテナについてついて、4本の誘電体導波管線路上に伝送方向にそれぞれ16個の空間共振器を形成し、4×16素子のアレイアンテナを作製した。なお、4本の誘電体導波管線路には2分岐を2段用いて給電した。また、比較のため、従来の誘電体導波管線路の幅を一定とした積層型開口面アンテナを用いた、4本の誘電体導波管線路上に伝送方向にそれぞれ16個の空間共振器を形成し、4×16素子のアレイアンテナも作製した。
【0086】
これらについて近傍界測定手法により2つのアレイアンテナ特性を評価した結果、従来の積層型開口面アレイアンテナでは利得が22dBiであったのに対し、本発明の積層型開口面アレイアンテナでは23dBiと優れたものであった。また、本発明の積層型開口面アレイアンテナでは、放射パターンはアンテナ素子面の電界強度分布が均一となり良好なものであった。
【0087】
なお、図2に示した本発明の積層型開口面アレイアンテナについても、同様にアレイアンテナを作製して評価したところ、同様の良好なアンテナ特性を有することが確認できた。
【0088】
また、以上と同様にして、開口部10を直径が1.7 mmの円形とし、空間共振器13の形状を1.7 mmφ×c=0.45mmの円柱状としたものについても同様の評価を行なったところ、上記のものと同様に良好なアンテナ特性を有することが確認できた。
【0089】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や改良を加えることは何ら差し支えない。例えば、開口部10を三角形状とし空間共振器を三角柱状としてもよい。
【0090】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の積層型開口面アレイアンテナによれば、一端を短絡した積層型の誘電体導波管線路の上部主導体層上に、片面短絡・片面開放の4分の1波長共振空間を構成する空間共振器を伝送方向に複数個形成するとともに、誘電体導波管線路の上部主導体層にそれぞれ空間共振器に対応させて給電のためのスロットを形成し、かつ誘電体導波管線路の幅を各スロットから放射される高周波信号の位相が同じとなるように伝送方向に沿って変化させ、あるいは各スロットを挟持する部位と各スロット間とで異ならせていることから、高効率な積層型開口面アレイアンテナとすることができるとともに、アンテナ素子の設計を固定した状態で各アンテナ素子から放射される高周波信号の電磁波の位相を所望通りに制御することができて十分に均一化させることができ、小型化かつ薄型化が可能で良好なアンテナ特性を有し、しかも簡単な設計で従来の多層化技術でもって容易かつ安価に製造することができる高周波用のアンテナを提供することができる。
【0091】
さらに、スロットを誘電体導波管線路の伝送方向に等間隔に形成した場合には、放射される電磁波の位相をほぼ完全に統一してさらに十分に均一化させることができる。
【0092】
また、本発明の積層型開口面アレイアンテナによれば、放射周波数は開口面の大きさと空間共振器の厚みすなわち誘電体基板の厚みとにより制御することができるので設計の自由度が大きいという利点も有しており、小型化・薄型化も可能で、容易にかつ安価に、しかも従来の多層化技術をもって一連の工程で作製できるので、通常の多層配線基板内に一体的に形成することができ、信頼性が高い積層型開口面アレイアンテナを低コストで作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型開口面アレイアンテナの実施の形態の一例を示す部分透視斜視図である。
【図2】本発明の積層型開口面アレイアンテナの実施の形態の他の例を示す部分透視斜視図である。
【図3】誘電体導波管線路に形成したスロットの寸法とそれに対する管内波の位相との関係を示す線図である。
【図4】本発明の積層型開口面アレイアンテナにおけるスロット長と放射率との関係を示す線図である。
【符号の説明】
1・・・・第1誘電体基板
2・・・・上部第1主導体層
3・・・・下部主導体層
4・・・・側壁用貫通導体群
5・・・・端面用貫通導体群
6・・・・誘電体導波管線路
7・・・・誘電体層
8・・・・第2誘電体基板
9・・・・上部第2主導体層
10・・・・開口部
11・・・・導体壁用貫通導体群
12・・・・副導体層
13・・・・空間共振器
14・・・・スロット
A,A’・・・2列の側壁用貫通導体群の幅
Claims (4)
- 第1誘電体基板を挟持する上部第1主導体層および下部主導体層と、該主導体層間を高周波信号の伝送方向に信号波長の2分の1未満の繰り返し間隔および所定の幅で電気的に接続する2列の側壁用貫通導体群と、前記主導体層間を前記幅方向に前記信号波長の2分の1未満の繰り返し間隔で電気的に接続する端面用貫通導体群とを具備して成る誘電体導波管線路の前記上部第1主導体層上に、
複数の誘電体層を積層して成る第2誘電体基板と、該第2誘電体基板の上面に被着形成され、所定の開口部を有する上部第2主導体層と、前記開口部周囲の前記第2誘電体基板内に形成され、所定間隔をもって前記上部第1主導体層および前記上部第2主導体層間を電気的に接続する複数の導体壁用貫通導体ならびに該複数の導体壁用貫通導体を前記誘電体層間で電気的に接続する副導体層から成るアンテナ導体壁とを形成して成り、前記上部第1主導体層、アンテナ導体壁および上部第2主導体層で囲まれた空間により構成された空間共振器を前記伝送方向に複数個形成するとともに、
前記上部第1主導体層にそれぞれ前記空間共振器に対応させて給電のためのスロットを形成し、かつ前記2列の側壁用貫通導体群の幅を、前記各スロットから放射される高周波信号の位相が同じとなるように伝送方向に沿って変化させており、
複数の前記スロットは、前記端面用貫通導体群側からその寸法を順次小さくしてあることを特徴とする積層型開口面アレイアンテナ。 - 前記2列の側壁用貫通導体群の幅を、前記各スロットを挟持する部位と各スロット間の部位とで異ならせていることを特徴とする請求項1記載の積層型開口面アレイアンテナ。
- 前記スロットを前記伝送方向に等間隔に形成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の積層型開口面アレイアンテナ。
- 第1誘電体基板が常誘電体から成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の積層型開口面アレイアンテナ。
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JP2001102861A (ja) | 2001-04-13 |
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