第1の発明は、マイクロ波発生手段と、前記マイクロ波発生手段からマイクロ波を伝送する導波管と、前記導波管の上部に接続され幅方向寸法が奥行き方向寸法より大きい形状の加熱室と、被加熱物を載置するため前記加熱室内に配置された非回転の載置台と、前記加熱室内の前記載置台より上方に形成される被加熱物収納空間と、前記加熱室内の前記載置台より下方に形成されるアンテナ空間と、前記導波管内のマイクロ波を前記加熱室内に放射するため、前記導波管から前記アンテナ空間にわたり、前記加熱室の幅方向に配置された二つの回転アンテナと、前記回転アンテナを回転駆動する駆動手段と、前記被加熱物の温度を検出する温度検出手段と、前記駆動手段を制御して前記回転アンテナの向きを制御する制御手段とを有し、前記マイクロ波発生手段は一つとして当該マイクロ波発生手段から発生されるマイクロ波を前記導波管を介し常時前記二つの回転アンテナに導いて当該二つの回転アンテナから前記加熱室に供給するように構成するとともに、前記二つの回転アンテナから加熱室内に放射されるマイクロ波がほぼ均等になるように構成し、かつ、前記各回転アンテナにはそれぞれ放射指向性の強い部位を設けるとともに、前記制御手段は前記各回転アンテナの駆動手段を制御して前記回転アンテナを一定回転させる加熱室内均一加熱或は前記回転アンテナの回転を減速させる集中加熱を行わせる構成とし、更に前記制御手段は前記温度検出手段が検出した温度に基づき前記減速の割合を変える構成としたものである。
これによって、加熱室下側の共通の導波管に結合し加熱室内にマイクロ波をほぼ均等に放射する二つの回転アンテナが横幅の広い加熱室の幅方向に配置されるので、一つの回転アンテナの場合よりもマイクロ波の放射パターンを多様にすることができ、庫内全体の加熱分布を容易に均一化することができる。また、加熱室内にマイクロ波をほぼ均等に放射する各回転アンテナの放射指向性の強い部位を所定の向きで減速させ、しかもその減速の割合を変えることによってマイクロ波を所定の向きに強く放射し、しかもその放射の程度を変えることができるので、特定の被加熱物に関して容易に集中的に加熱することができる。さらに、一つの導波管に結合させた二つの回転アンテナのうち少なくとも一方の向きを制御するという極めて簡単で部品点数が少なく低コストな構成であり、庫内全体の均一加熱と局所集中加熱の切り替えに際しても、マイクロ波の結合状態を変えるようなリスクは無くて安全で、隙間の管理のようなシビアな寸法管理もさほど必要とはしない。したがって、構成が簡単で、特に庫内全体の均一加熱と局所集中加熱の切り替えが容易で切り替え時の安全性が高い、極めて現実的なマイクロ波加熱装置を実現することができる。
ここで前記第1の発明において、回転アンテナは、導波管と加熱室底面との境界面に設けられた結合孔を貫通する導電性材料から成る結合部と、前記結合部の上端に一体化され、垂直方向よりも水平方向に広い面積を有する導電性材料から成る放射部とを備え、結合部の中心軸が回転駆動の中心となる構成とし、回転の方向に対して放射部の形状を非定形として放射指向性がある構成とすることができる。
これによって、導波管内のマイクロ波が結合孔と結合部の間の隙間から加熱室側に引き出されるが、結合部と一体化された放射部の形状が回転の方向に対して一定な形状(例えば、円、円柱、円錐、球など)ではない非定形であるため、方向によってマイクロ波の伝搬のしやすさが異なることになり、伝搬しやすい方向には放射指向性が強く伝搬しにくい方向には放射指向性が弱いと言うような何らかの放射指向性を有することになる。回転アンテナが一定速度で回転している場合、回転の周期より充分長い時間において一定出力のマイクロ波を放射すれば、回転方向には平均化されるので、回転中心から等距離の位置は同レベルの加熱状態となり、同心円状の加熱分布(例えば、円状に強く加熱されるとか、ドーナツ状に強く加熱されるとか)となる。一方、回転アンテナを停止するとか回転速度やマイクロ波の出力を変えるなどにより、主として所定の向きでの加熱に限定した場合は、同心円状の加熱分布にはならず放射指向性によって決まる加熱分布、すなわち、回転アンテナの放射指向性の強い部位の近傍に有る被加熱物(あるいは被加熱物の一部)が強く加熱されやすくなり、集中的に加熱することができる。
また、第1の発明において、放射指向性の強い部位は、結合部から放射部の端部までの距離が短い部位とすることができる。
これによって、マイクロ波は、結合孔と結合部の間の隙間から加熱室側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部と加熱室底面の間の隙間を通ったのちに放射部の端部よりも遠方から上側の被加熱物に向かうことになる。このとき、結合部からの距離が長い放射部の端部にマイクロ波が到達するよりも、結合部からの距離が短い放射部の端部にマイクロ波が到達する方が早いので、結合部からの距離が短い放射部の端部側からの方が、マイクロ波が被加熱物に到達するのも早くなり被加熱物を加熱しやすいと言える。
また、マイクロ波の伝搬方向に関しては、もともと結合孔と結合部の間の隙間から垂直方向(上向き)に出ようとするマイクロ波を、放射部と加熱室底面の隙間により水平方向(横向き)に曲げるようにしているので、結合部からの距離が長くなればなるほど水平方向への直進性が増し、垂直方向には伝搬しにくくなる。逆に、結合部からの距離が短いほど垂直方向に伝搬しやすいと言える。一方、被加熱物の位置は、置き場所によって水平方向の位置は変化するが、垂直方向の位置は放射部よりも必ず上側に位置している。よって、結合部からの距離が短い放射部の端部からの方が、マイクロ波が垂直方向(上向き)に伝搬しやすいために、放射部よりも上側に位置する被加熱物を加熱しやすいと言える。
さらに、結合部からの距離が長くなればなるほど放射部の端部は加熱室側面に近づくことにもなり、加熱室の中央寄りに置くことの多い被加熱物からは距離が離れていく可能性が高い。放射部の端部が被加熱物から離れていけば、その端部からのマイクロ波が被加熱物に向かうためには加熱室側面で反射することになるが、このマイクロ波の経路はあたかも端部自身を回りこむようにして伝搬しなければならず、端部自身が被加熱物への直接的な放射を妨げている構成とも考えられる。よって、結合部から放射部の端部までの距離が短い方が、端部自身が被加熱物への直接的な放射を妨げず、被加熱物への直接的な放射もしやすいと言える。
以上により、結合部から放射部の端部までの距離が短い部位を有することにより、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
また、第1の発明において、放射指向性の強い部位は、放射部と加熱室底面間の距離が長い部位とすることもできる。
これによって、マイクロ波は、結合孔と結合部の間の隙間から加熱室側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部と加熱室底面間の距離が短い部位よりも放射部と加熱室底面間の距離が長い部位の方がマイクロ波の伝搬の妨げにならない。すなわち、他の方向よりも、放射部と加熱室底面間の距離が長い部位の方向にマイクロ波が伝搬しやすいと言える。
また、マイクロ波の伝搬方向に関しては、もともと結合孔と結合部の間の隙間から垂直方向(上向き)に出ようとするマイクロ波を、放射部と加熱室底面の隙間により水平方向(横向き)に曲げるようにしているので、放射部と加熱室底面間の距離が短くなればなるほど水平方向への直進性が増し、垂直方向には伝搬しにくくなる。逆に、放射部と加熱室底面間の距離が長いほど垂直方向成分が残されたままになり上向きに伝搬しやすいと言える。一方、被加熱物の位置は、置き場所によって水平方向の位置は変化するが、垂直方向の位置は放射部よりも必ず上側に位置している。よって、放射部と加熱室底面間の距離が長い部位からの方が、マイクロ波が垂直方向(上向き)に伝搬しやすいために、放射部よりも上側に位置する被加熱物を加熱しやすいと言える。
以上により、放射部と加熱室底面間の距離が長い部位を有することにより、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
また、第1の発明において、放射指向性の強い部位は、放射部の加熱室底面側への曲げ部が無い部位としてもよい。
これによって、マイクロ波は、結合孔と結合部の間の隙間から加熱室側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部と加熱室底面の間の隙間を通ったのちに放射部の端部よりも遠方から上側の被加熱物に向かうことになる。このとき、放射部に加熱室底面側への曲げ部があると、放射部と加熱室底面の間の隙間を端部側に向かうマイクロ波が曲げ部で反射してしまい伝搬が妨げられることになる。よって、放射部の加熱室底面側への曲げ部がある部位よりも曲げ部が無い部位の方がマイクロ波の伝搬の妨げにならず、マイクロ波が伝搬しやすいと言える。
以上により、放射部の加熱室底面側への曲げ部が無い部位を有することにより、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
また、第1の発明において、放射部はマイクロ波の波長の1/4以上の長さの開口部を有し、放射指向性の強い部位は、結合部から前記開口部までの距離が短い部位としてもよい。
これによって、マイクロ波は、結合孔と結合部の間の隙間から加熱室側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部と加熱室底面の間の隙間を通ったのちに、放射部に設けた開口部か、あるいは放射部の端部よりも遠方から上側の被加熱物に向かうことになる。一般に、開口部は大きさによりマイクロ波の通過のしやすさが変わり、開口部が小さいと通過しにくく大きいと通過しやすくなる。もちろん形状によっても通過のしやすさは変わるが、概ね開口部の最長寸法が波長の1/4(電子レンジならば約30mm)以上の長さになるとある程度通過できる。よって、マイクロ波の波長の1/4以上の長さの開口部があると、ある程度マイクロ波が開口部を通過して被加熱物側へと伝搬することが可能となり、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
ただし、開口部が複数ある場合は、第3の発明における結合部から放射部の端部までの距離と同様の考え方で、結合部から開口部までの距離が短い方が、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
ちなみに、結合部から開口部までの距離が回転方向に対して一定の距離となる形状、例えば、扇形で、内側と外側の円弧の中心がいずれも結合部の回転中心と一致し、内側と外側の円弧のRがそれぞれ回転中心からの距離に一致している扇形の場合は、開口部のどの部分も結合部からの距離が一定となるが、このような場合は、マイクロ波は開口部の両サイドよりも中央からの通過が多いと考えられるので、開口部の中央方向への放射指向性が最も強くなると考えて良い。また、結合部から開口部までの距離が回転方向に対して一定の距離ではないが、結合部と開口部の中心を結ぶ直線に対して対称な形状の開口部、例えば、この直線により対向する二辺がそれぞれ二等分される長方形なども開口部の中央方向への放射指向性が最も強くなる。また、開口部が逆V字形などのように、結合部からの距離が両サイドで短く中央で遠い場合は、距離の短い両サイド2点の中間地点の方向がベストと考えられ、結局は中央への放射指向性が最も強くなる。
一方、開口部が回転方向に対して一定の距離ではない形状、例えば、長方形で右側が結合部に近く左側が結合部から遠い形状などの場合は、開口部の中央よりもやや右側の方が結合部からの距離が短くなり、放射指向性の強い部位もやや右寄りになると考えられる。よって、このような場合は、結合部から開口部までの距離が短い部位とは、開口部の中心を基準として結合部から開口部までの距離が短い側の部位の放射指向性が強くなると考えれば良い。
また、第1の発明において、放射部はマイクロ波の波長の1/4以上の長さの開口部を複数有し、放射指向性の強い部位は、最も面積が広い開口部を有する部位としてもよい。
これによって、マイクロ波は、結合孔と結合部の間の隙間から加熱室側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部と加熱室底面の間の隙間を通ったのちに、放射部に設けた開口部か、あるいは放射部の端部よりも遠方から上側の被加熱物に向かうことになる。一般に、開口部は大きさによりマイクロ波の通過のしやすさが変わり、開口部が小さいと通過しにくく大きいと通過しやすくなる。もちろん形状によっても通過のしやすさは変わるが、概ね開口部の最長寸法が波長の1/4(電子レンジならば約30mm)以上の長さになるとある程度通過できる。よって、マイクロ波の波長の1/4以上の長さの開口部があると、ある程度マイクロ波が開口部を通過して被加熱物側へと伝搬することが可能となり、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
開口部が複数あって面積に違いがある場合は、面積が広い方が、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
また、第1の発明において、放射部はマイクロ波の波長の1/4以上の長さの開口部を複数有し、放射指向性の強い部位は、最も長さが長い開口部を有する部位としてもよい。
これによって、マイクロ波は、結合孔と結合部の間の隙間から加熱室側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部と加熱室底面の間の隙間を通ったのちに、放射部に設けた開口部か、あるいは放射部の端部よりも遠方から上側の被加熱物に向かうことになる。一般に開口部は大きさによりマイクロ波の通過のしやすさが変わり、開口部が小さいと通過しにくく大きいと通過しやすくなる。もちろん形状によっても通過のしやすさは変わるが、概ね開口部の最長寸法が波長の1/4(電子レンジならば約30mm)以上の長さになるとある程度通過できる。よって、マイクロ波の波長の1/4以上の長さの開口部があると、ある程度マイクロ波が開口部を通過して被加熱物側へと伝搬することが可能となり、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
開口部が複数あって長さに違いがある場合は、長さが長い方が、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
また、第1の発明において、放射部はマイクロ波の波長の1/4以上の長さの開口部を複数有し、放射指向性の強い部位は、結合部とそれぞれの開口部の中心を結ぶ線分に直交する方向の開口長さが長い部位としてもよい。
これによって、マイクロ波は、結合孔と結合部の間の隙間から加熱室側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部と加熱室底面の間の隙間を通ったのちに、放射部に設けた開口部か、あるいは放射部の端部よりも遠方から上側の被加熱物に向かうことになる。一般に、開口部は大きさによりマイクロ波の通過のしやすさが変わり、開口部が小さいと通過しにくく大きいと通過しやすくなる。もちろん形状によっても通過のしやすさは変わるが、概ね開口部の最長寸法が波長の1/4(電子レンジならば約30mm)以上の長さになるとある程度通過できる。よって、マイクロ波の波長の1/4以上の長さの開口部があると、ある程度マイクロ波が開口部を通過して被加熱物側へと伝搬することが可能となり、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
開口部が複数あって向きに違いがある場合は、結合部とそれぞれの開口部の中心を結ぶ線分に直交する方向の開口長さが長い方が、結合部から全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするマイクロ波の多くの領域にまたがることになり、多くのマイクロ波を上方に伝搬させることができるので、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
また、第1の発明において、放射指向性の強い部位は、結合部から見て端部手前またはマイクロ波の波長の1/4以上の長さの開口部手前において、放射部と加熱室底面で形成される空間の垂直方向の断面積が広い部位としてもよい。
これによって、マイクロ波は、結合孔と結合部の間の隙間から加熱室側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部の形状によって伝搬しやすい方向やしにくい方向が変わってくる。一旦、端部や開口部に到達したマイクロ波は、水平方向だけでなく垂直方向にも伝搬できるようになるのであまり抵抗無く伝搬できる。しかし、そこまで到達できるマイクロ波が多いか少ないかは放射部と加熱室底面で形成される空間の垂直方向の断面積に左右される。断面積が広いいほど抵抗無く大量のマイクロ波が到達できるが、断面積が狭いほど反射が増えてあまり大量のマイクロ波は到達できないと考えられるので、断面積が広い部位の方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
また、第1の発明において、制御手段は、回転アンテナを放射指向性の強い部位が所定の向きの近傍を往復移動するように駆動手段を制御する構成としてもよい。これによって、少なくとも一方の回転アンテナは一定回転の場合に比べると所定の向きの近傍に強い放射指向性を有する状態でマイクロ波を伝搬させることになり、容易に特定の被加熱物を集中加熱することができる。また往復させる角度により集中加熱させる範囲をある程度調整することができる。
また、第1の発明において、回転アンテナが所定の向きのとき、特定の被加熱物に整合する構成としてもよい。これによって、回転アンテナが所定の向きであるがゆえに特定の被加熱物を集中加熱できるのに加えて、回転アンテナが所定の向きのとき、特定の被加熱物に整合することにより、この集中加熱中は特にマグネトロンへの反射電力が減り、特定の被加熱物を最も効率的に加熱することができる。
また、第1の発明において、特定の被加熱物は、予め載置台上に目印で示された特定位置に置いた被加熱物としてもよい。これによって、集中加熱すべき被加熱物の位置が決まるので、放射指向性の強い部位を所定の向きに制御してマイクロ波を所定の向きに強く放射することで、被加熱物を所望の状態で集中加熱することができる。
また、第1の発明において、被加熱物を置く特定位置を加熱室の幅方向の略中央とし、回転アンテナの所定の向きは加熱室の幅方向の略中央向きとしたものである。これによって、二つの回転アンテナは加熱室の幅方向に対して左右に配置されており、どちらも放射指向性の強い部位を加熱室の幅方向の中央向きにすることができるので、中央に置かれた被加熱物を容易に集中加熱することができる。特に、両回転アンテナの放射指向性の強い部位を加熱室の幅方向の中央向きに制御すれば、相乗効果によって被加熱物をより集中的に加熱することができる。
また、集中加熱すべき被加熱物の位置を限定できるので、加熱分布を左右するパラメータのうち被加熱物の位置というパラメータを減らすことができるので、設計時のねらい通りの集中加熱ができやすくなり、より精度が高く効果的な集中加熱を実現することができる。また、集中加熱すべき条件が明確になるので、均一加熱と集中加熱を間違えるリスクを減らすことができる。
また、第1の発明において、設定手段と、前記設定手段による設定内容に基づき集中加熱をするかどうか判定する集中加熱判定手段と、前記集中加熱判定手段の判定内容に基づき、回転アンテナを放射指向性の強い部位を所定の向きに制御して、特定の被加熱物を集中加熱する構成としてもよい。これによって、設定内容に基づいて回転アンテナを制御することで集中加熱を行なうので、通常は一定回転で庫内全体の均一加熱を実現しつつ、容易に集中加熱へと切り替えることができる。また使用者からすれば、設定さえすればマイクロ波加熱装置が自動的に均一加熱と集中加熱を切り替えるので、間違えるリスクを減らすことができる。
また、第1の発明において、集中加熱すべき特定の被加熱物かどうかを検出する検出手段を有し、回転アンテナを放射指向性の強い部位を所定の向きに制御して、特定の被加熱物を集中加熱する構成としたものである。これによって、検出内容に基づいて回転アンテナを制御することで集中加熱を行なうので、通常は一定回転で庫内全体の均一加熱を実現しつつ、容易に集中加熱へと切り替えることができる。また、使用者からすれば、マイクロ波加熱装置が自動的に均一加熱と集中加熱を切り替えるので、間違えるリスクを減らすことができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1〜図4は、本発明の実施の形態1におけるマイクロ波加熱装置として電子レンジを示している。
本実施の形態における電子レンジ31は、代表的なマイクロ波発生手段であるマグネトロン32と、マグネトロン32から放射されたマイクロ波を伝送する導波管33と、導波管33の上部に接続され幅方向寸法(約410mm)が奥行き方向寸法(約315mm)より大きい形状の加熱室34と、代表的な被加熱物である食品(図示せず)を載置するため加熱室34内に固定配置され、セラミックやガラスなどの低損失誘電材料からなるためにマイクロ波が容易に透過できる性質の非回転の載置台35と、加熱室34内の載置台35より上方に形成されて実質的に被加熱物を収納することができるスペースとなる被加熱物収納空間36と、加熱室34内の載置台35より下方に形成されるアンテナ空間37と、導波管33内のマイクロ波を加熱室34内に放射するため、導波管33からアンテナ空間37にわたり、加熱室34の幅方向に対して対称位置に取り付けられた二つの回転アンテナ38、39と、回転アンテナ38、39を回転駆動する代表的な駆動手段としてのモータ40、41と、モータ40、41を制御して回転アンテナ38、39の向きを制御する制御手段411とを有している。そして、制御手段411は、少なくとも一方の回転アンテナ38または39における放射指向性の強い部位を所定の向きに制御して特定の被加熱物を集中加熱する構成としている。
前記回転アンテナ38、39は、導波管33と加熱室底面42との境界面に設けられた直径約30mmで略円形の結合孔43、44を貫通する直径約18mmで略円筒状の導電性材料から成る結合部45、46と、結合部45、46の上端にかしめや溶接などで電気的に接続されて一体化され、概ね垂直方向よりも水平方向に広い面積を有する導電性材料から成る放射部47、48とを備え、結合部45、46の中心が回転駆動の中心となるようにモータ40、41のシャフト49、50と嵌合された構成としている。放射部47、48は、回転の方向に対して形状が一定ではない(非定形)ために放射指向性がある構成としている。
導波管33は、図3のように、上から見てT字型を成し、左右対称な形状であるため、マグネトロン32から結合部45、46までの距離が等しく、かつ結合部45、46は加熱室34の幅方向に対しても対称位置に取り付けられているので、マグネトロン32から放射されるマイクロ波は導波管33、回転アンテナ38、39を介して加熱室34内にほぼ均等に分配される。
放射部47、48は、同一の形状で、放射部上面51、52が略四辺形にRを有する形状で、そのうち対向する2辺には加熱室底面42側に曲げられた放射部曲げ部53、54を有し、その2辺の外側へのマイクロ波の放射を制限する構成である。加熱室底面42と放射部上面51、52までの距離は約10mm程度とし、放射部曲げ部53、54は、それよりも約5mm程度低い位置に引き下げられている。そして、残る2辺は結合部45、46から端部までの水平方向の長さが異なり、結合部45、46の中心からの長さが75mm程度の端部55、56、結合部45、46の中心からの長さが55mm程度の端部57、58を構成している。また、各端部の幅方向の寸法は、いずれも80mm以上としている。この構成において回転アンテナ38、39は、結合部45、46から端部57、58の方向への放射指向性を強くすることができる。
この構成において、一般的な食品を均一に加熱する場合は、従来の電子レンジと同様、特に置き場所にこだわる必要はなく、回転アンテナ38、39も従来同様に、一定の回転をさせてよい。一方、集中加熱する場合は、図4のように、予め載置台35上にマーキングされた目印59を集中加熱用の特定位置としており、使用者はこの目印59上に食品を置くこととしている。目印59は加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の略中央とし、目印59上に置いた食品を集中加熱するために、回転アンテナ38、39の端部57、58を加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の略中央という所定の向きに向けるように制御する。回転アンテナ38、39の端部57、58の少なくとも一方が加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の略中央を向くとき、端部57、58の方向への放射指向性が強いので、特に、端部57、58の方向からマイクロ波が放射されその方向に位置する目印59上に置かれた食品を集中的に加熱することができる。
回転アンテナ38、39を所定の向きに向けるためには、モータ40、41としてステッピングモータを用いるとか、あるいは一定回転のモータであっても基準位置を検出して通電時間を制御するなど色々な方法が考えられる。
図5、図6は、本実施の形態の均一加熱と集中加熱の特性を示すものである。図5は茶碗一杯のごはん約150gを、回転アンテナ38、39を周期10秒で一定回転させて加熱した場合の結果であり、特に、周囲4箇所の斜線部分60から加熱され、次いで中央下部の斜線部分61が加熱される。ごはんは対流や熱伝導が少ないので加熱分布自体が良くないとなかなか均一にならない難しい食品であるが、この場合は前後、左右、上下ともバランスのとれた加熱分布となり、かなり均一な加熱分布であると考えられる。
一方、図6はマグカップ一杯の牛乳約200ccを目印59上に置き、回転アンテナ38、39とも端部57、58を中央に向けて停止したまま加熱した場合の結果であり、底部2箇所の斜線部分62が強く加熱されている。飲み物などの液体の場合は底部のみを加熱した方が対流で均一になりやすく、逆に、上下方向に均一に熱を加えると上の方ばかりが熱くなってしまうことが知られている。よって、図6の分布は、底部を集中的に加熱することができるので、飲み物の加熱にふさわしい分布であると考えられる。
また、マグカップ一杯の牛乳約200ccを目印59上に置いて、回転アンテナ38、39とも端部57、58を中央に向けて停止しているとき、マグネトロン32から見たインピーダンスが整合するように設計している。一般的にマグネトロン32から見たインピーダンスは導波管33や加熱室34や食品などによって変化し、整合していればマグネトロン32から放射されたマイクロ波が効率的に食品に伝わるが、整合していなければマグネトロン32から放射されたマイクロ波が反射してマグネトロン自体に戻って熱損失が増えることが知られている。よって、マグネトロン32の特性は、リーケ線図といわれる図7のような極座標系の特性図で与えられることが一般的である。概ね円の中央で整合、周囲に行くほど整合していないという状態を示す。インピーダンスによってマグネトロン32の等出力線は、出力が高い順に等出力線e、f、g、h、i……のように表される。
本実施の形態では、マグカップ一杯の牛乳約200ccを目印59上に置いて、回転アンテナ38、39とも端部57、58を中央に向けて停止しているときのインピーダンスが、等出力線e内の領域Lに入るように設計することで、集中加熱時の出力を最大にすることができるから、最も効率的に短時間で牛乳約200ccを加熱することができる(例えば、領域Mの条件と比べるとはるかに効率的で短時間となる)。
次に、具体的な制御について説明を加える。図2において、設定手段63がドア64の下部に配置され、使用者が設定手段63を用いて設定した内容に基づき、制御手段411では集中加熱判定手段66が集中加熱をするかどうか判定を行なうものである。そして、判定結果に基づき、制御手段411はマグネトロン32やモータ40、41を制御する構成である。
例えば、使用者が設定手段63によりごはんのあたためを設定した場合、集中加熱判定手段66は集中加熱不要と判定し、制御手段411はモータ40、41により回転アンテナ38、39を一定回転させるように制御する。一方、使用者が設定手段63により牛乳のあたためを設定した場合、集中加熱判定手段66は集中加熱必要と判定し、制御手段411はモータ40、41を駆動して回転アンテナ38、39を回転させ、放射部47、48の端部57、58がそれぞれ中央に向いた時点で停止させるように制御する。これによって、ごはんは全体的に均一に加熱できるし、牛乳は底部を集中的に加熱することができる。
以上のように、本実施の形態においては、加熱室34の下側の共通の導波管33に結合する二つの回転アンテナ38、39が横幅の広い加熱室34の幅方向に対して対称位置に配置されるので、少なくとも左右対称の加熱分布となるとともに、一つの回転アンテナの場合よりもマイクロ波の放射パターンを多様にすることができるので庫内全体の加熱分布を容易に均一化することができる。また、両方の回転アンテナ38、39の放射指向性の強い部位である端部57、58を所定の向き(庫内の中央向き)に制御すれば、マイクロ波を所定の向き(庫内の中央向き)に強く放射することができるので、特定の被加熱物(目印59上に置いた牛乳)に関して容易に集中的に加熱することができる。
なお、本実施の形態では回転アンテナ38、39の両方ともを停止させる例について説明したが、例えば、一方を停止させて他方を回転させるとか、途中までは一方を停止させて他方を回転させ、途中から停止していた方を回転させて回転していた方を停止させるように交代するとか、色々な制御方法が考えられる。このような制御方法は、集中加熱では集中しすぎなので集中加熱と均一加熱の間くらいが望ましいというような場合に有効である。このとき回転と停止の割合は適宜最適化すればよい。
さらに、本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置は、一つの導波管33に結合させた二つの回転アンテナ38、39の向きを制御するという極めて簡単な構成であり、庫内全体の均一加熱と局所集中加熱の切り替えに際しても、マイクロ波の結合状態を変えるようなリスクは無くて安全で、隙間の管理のようなシビアな寸法管理もさほど必要ないので、極めて現実的な構成で実現できるものである。
また、導波管33内のマイクロ波が結合孔43、44と結合部45、46の間の隙間から加熱室34側に引き出されるが、結合部45、46と一体化された放射部47、48の形状が回転の方向に対して一定な形状(例えば、円、円柱、円錐、球など)ではなく非定形のため、方向によってマイクロ波の伝搬のしやすさが異なることになり、伝搬しやすい方向には放射指向性が強く伝搬しにくい方向には放射指向性が弱いと言うような放射指向性を有することになる。回転アンテナ38、39が一定速度で回転している場合、回転の周期より充分長い時間において一定出力のマイクロ波を放射すれば、回転方向には平均化されるので、回転中心から等距離の位置は同レベルの加熱状態となり、同心円状の加熱分布(例えば、円状に強く加熱されるとか、ドーナツ状に強く加熱されるとか)となる。一方、回転アンテナ38、39を停止するとか回転速度やマイクロ波の出力を変えるなどにより、主として所定の向きでの加熱に限定した場合は、同心円状の加熱分布にはならず放射指向性によって決まる加熱分布、すなわち、回転アンテナ38、39の放射指向性の強い部位の近傍にある被加熱物(あるいは被加熱物の一部)が強く加熱されやすくなり、集中的に加熱することができる。
次に、放射部47、48の形状による放射指向性について説明する。
まず、加熱室底面42側への曲げ部の影響について述べる。マイクロ波は、結合孔43、44と結合部45、46の間の隙間から加熱室34側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部47、48と加熱室底面42の間の隙間を通ったのちに放射部47、48の端部よりも遠方から上側の被加熱物に向かうことになる。このとき、放射部47、48に加熱室底面42側への曲げ部(放射部曲げ部53、54)があると、放射部47、48と加熱室底面42の間の隙間を端部側に向かうマイクロ波が曲げ部で反射してしまい伝搬が妨げられることになる。よって、放射部47、48の加熱室底面42側への曲げ部(放射部曲げ部53、54)がある部位よりも曲げ部が無い部位(端部55、56、57、58)の方がマイクロ波の伝搬の妨げにならず、マイクロ波が伝搬しやすいと言える。
以上により、放射部47、48の加熱室底面42側への曲げ部が無い部位(端部55、56、57、58)を有することにより、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
次に、放射部47、48と加熱室底面42間の距離の影響について述べる。
マイクロ波は、結合孔43、44と結合部45、46の間の隙間から加熱室34側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部47、48と加熱室底面42間の距離が短い部位(放射部曲げ部53、54)よりも放射部47、48と加熱室底面42間の距離が長い部位(端部55、56、57、58)の方がマイクロ波の伝搬の妨げにならない。すなわち、他の方向よりも、放射部47、48と加熱室底面42間の距離が長い部位(端部55、56、57、58)の方向にマイクロ波が伝搬しやすいと言える。
また、マイクロ波の伝搬方向に関しては、もともと結合孔43、44と結合部45、46の間の隙間から垂直方向(上向き)に出ようとするマイクロ波を、放射部47、48と加熱室底面42の隙間により水平方向(横向き)に曲げるようにしているので、放射部47、48と加熱室底面42間の距離が短くなればなるほど水平方向への直進性が増し、垂直方向には伝搬しにくくなる。逆に、放射部47、48と加熱室底面42間の距離が長いほど垂直方向成分が残されたままになり上向きに伝搬しやすいと言える。一方、被加熱物の位置は、置き場所によって水平方向の位置は変化するが、垂直方向の位置は放射部47、48よりも必ず上側に位置している。よって、放射部47、48と加熱室底面42間の距離が長い部位(端部55、56、57、58)からの方が、放射部47、48と加熱室底面42間の距離が短い部位(放射部曲げ部53、54)よりもマイクロ波が垂直方向(上向き)に伝搬しやすいために、放射部47、48よりも上側に位置する被加熱物を加熱しやすいと言える。
以上により、放射部47、48と加熱室底面42間の距離が長い部位(端部55、56、57、58)を有することにより、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
次に、結合部45、46からの距離の影響について述べる。ここでは曲げ部が無く放射部47、48と加熱室底面42間の距離も等しい端部55、56、57、58の放射指向性について比較する。
マイクロ波は、結合孔43、44と結合部45、46の間の隙間から加熱室34側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部47、48と加熱室底面42の間の隙間を通ったのちに放射部47、48の端部55、56、57、58よりも遠方から上側の被加熱物に向かうことになる。このとき、結合部45、46からの距離が長い放射部47、48の端部55、56にマイクロ波が到達するよりも、結合部45、46からの距離が短い放射部47、48の端部57、58にマイクロ波が到達する方が早いので、結合部45、46からの距離が短い放射部47、48の端部57、58側からの方が、マイクロ波が被加熱物に到達するのも早くなり、被加熱物を加熱しやすいと言える。
また、マイクロ波の伝搬方向に関しては、もともと結合孔43、44と結合部45、46の間の隙間から垂直方向(上向き)に出ようとするマイクロ波を、放射部47、48と加熱室底面42の隙間により水平方向(横向き)に曲げるようにしているので、結合部45、46からの距離が長くなればなるほど水平方向への直進性が増し、垂直方向には伝搬しにくくなる。逆に、結合部45、46からの距離が短いほど垂直方向に伝搬しやすいと言える。一方、被加熱物の位置は、置き場所によって水平方向の位置は変化するが、垂直方向の位置は放射部47、48よりも必ず上側に位置している。よって、結合部45、46からの距離が短い放射部47、48の端部57、58からの方が、結合部45、46からの距離が長い放射部47、48の端部55、56よりも、マイクロ波が垂直方向(上向き)に伝搬しやすいために、放射部47、48よりも上側に位置する被加熱物を加熱しやすいと言える。
さらに、結合部45、46からの距離が長くなればなるほど放射部47、48の端部は加熱室34の側面に近づくことにもなり、加熱室34の中央寄りに置くことの多い被加熱物からは距離が離れていく可能性が高い。放射部47、48の端部が被加熱物から離れていけば、その端部からのマイクロ波が被加熱物に向かうためには加熱室34の側面で反射することになるが、このマイクロ波の経路はあたかも端部自身を回りこむようにして伝搬しなければならず、端部自身が被加熱物への直接的な放射を妨げている構成とも考えられる。よって、結合部45、46からの距離が短い放射部47、48の端部57、58からの方が、結合部45、46からの距離が長い放射部47、48の端部55、56よりも、端部自身が被加熱物への直接的な放射を妨げず、被加熱物への直接的な放射もしやすいと言える。
以上により、本実施の形態においては、結合部45、46からの距離が短い放射部47、48の端部57、58を有することにより、その方向への放射指向性を最も強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
また、本実施の形態では、回転アンテナ38、39を停止させて所定の向きに強い放射指向性を有する状態でマイクロ波を伝搬させ続けることになり、容易に特定の被加熱物を集中加熱することができる。
また、本実施の形態では、回転アンテナ38、39が所定の向き(中央向き)であるがゆえに特定の被加熱物(牛乳)を集中加熱できるのに加えて、回転アンテナ38、39が所定の向き(中央向き)のとき特定の被加熱物(牛乳)に整合することにより、この集中加熱中は特にマグネトロン32への反射電力が減り、特定の被加熱物(牛乳)を最も効率的に加熱することができる。
また、本実施の形態では、目印59により集中加熱すべき被加熱物(牛乳)を置く位置が決まるので、放射指向性の強い部位(端部57、58)を所定の向き(中央向き)に制御してマイクロ波を所定の向き(中央向き)に強く放射することで、被加熱物(牛乳)を所望の状態で集中加熱することができる。
また、本実施の形態では、二つの回転アンテナ38、39は加熱室34の幅方向に対して対称位置に配置されており、どちらも放射指向性の強い部位(端部57、58)を加熱室34の幅方向の中央向きにすることができるので、中央に置かれた被加熱物を容易に集中加熱することができる。特に、両回転アンテナ38、39の放射指向性の強い部位を加熱室34の幅方向の中央向きに制御すれば、相乗効果によって被加熱物(牛乳)をより集中的に加熱することができる。
また、集中加熱すべき被加熱物の位置を限定できるので、加熱分布を左右するパラメータのうち被加熱物の位置というパラメータを減らすことができるので、設計時のねらい通りの集中加熱ができやすくなり、より精度が高く効果的な集中加熱を実現することができる。また、集中加熱すべき条件が明確になるので、均一加熱と集中加熱を間違えるリスクを減らすことができる。
また、本実施の形態では、設定内容に基づいて回転アンテナ38、39を制御することで集中加熱を行なうので、通常は一定回転で庫内全体の均一加熱を実現しつつ、容易に集中加熱へと切り替えることができる。また、使用者からすれば、設定さえすればマイクロ波加熱装置が自動的に均一加熱と集中加熱を切り替えるので、間違えるリスクを減らすことができる。
なお、回転アンテナ38、39の放射部47、48の形状により、放射指向性の強い部位がどのように決まるのかということについて、色々な例を記載しておく。
まず、図8は、結合部から放射部の端部までの距離が短い部位が、放射指向性の強い部位となる場合である。図8(a)は結合部67を中心とした外形が円形の放射部68の一端をカットしたような形状であり、端部69は結合部67からの距離が短くなっており、最も放射指向性の強い部位となっている。図8(b)はカットの仕方が異なり、端部70で結合部67からの距離が短くなっており、最も放射指向性の強い部位となっている。図8(c)は長方形状であり、結合部67が中心では無い位置に接続されているので、端部71で結合部67からの距離が最も短くなっており放射指向性の強い部位となっている。
次に、図9は、放射部と加熱室底面間の距離が長い部位が、放射指向性の強い部位となる場合である。すなわち、外形が円形の放射部68を傾斜させた状態で結合部67に一体化している。このため、端部72側の方が加熱室底面42間との距離が長いので、放射指向性の強い部位となっている。
さらに、図10〜図12は、放射部の加熱室底面側への曲げ部が無い部位が、放射指向性の強い部位となる場合である。図10は、外形が円形の放射部68の大部分に曲げ部73を形成しており、曲げ部73の無い端部74が最も放射指向性の強い部位となっている。図11は、外形が円形の放射部68をしぼって曲げ部75、76、77を形成しており、曲げ部の無い端部78が最も放射指向性の強い部位となっている。図12は、外形が円形の放射部68の切込みを結合部67に近い側で曲げて曲げ部79、80、81を形成しており、曲げ部の無い端部82が最も放射指向性の強い部位となっている。
(実施の形態2)
図13〜図15は、本発明の実施の形態2におけるマイクロ波加熱装置を示している。実施の形態1と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態では、導波管33がY字型に分岐している。次に、回転アンテナ83、84の放射部85、86は同一の円形状で、扇形の開口部87、88を有する形状で、開口部87、88中央の円弧の長さがマイクロ波の波長の1/2(約60mm)程度としている。この構成において、回転アンテナ83、84は、結合部45、46から開口部87、88の方向への放射指向性を強くすることができる。そして、加熱室34の中央後方を集中加熱する領域としている。
集中加熱する場合は、図15のように、予め載置台35上にスポットライト(図示せず)からの光を照射して一部の領域のみが照らされて目印89が浮かび上がるようにしている。目印89を集中加熱用の特定位置としており、使用者はこの目印89上に食品を置くこととしている。目印89は加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の略中央とし、目印59上に置いた食品を集中加熱するために、回転アンテナ83、84の開口部87、88を加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の後方という所定の向きに向けるように制御する。回転アンテナ83、84の開口部87、88の少なくとも一方が加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の後方を向くとき、開口部87、88の方向への放射指向性が強いので、特に、開口部87、88の方向からマイクロ波が放射され、その方向に位置する目印89上に置かれた食品を集中的に加熱することができる。
次に、具体的な制御について説明を加える。
例えば、使用者が設定手段63により弁当のあたためを選択した場合、スポットライト(図示せず)により目印89を浮かび上がらせる。使用者はこれをみて、弁当の中のごはんが盛られた部位が目印89上になるように(すなわち、ごはんが加熱室34後方に位置するような向きに)弁当の容器を配置する。一般的に弁当の中でごはんは水分が多くて隙間無く詰め込まれるので密集しておりあたたまりにくいものである。一方、おかずは水分が少なく隙間が多くあいたような状態で盛られていることが多くあたたまりやすいものである。よって、一般的な均一加熱で加熱するとおかずが熱すぎてごはんがぬるいということが起こりやすい。しかし、本実施の形態のように、ごはんを後方に配置して集中加熱すれば、できばえを良くすることができる。
また、本実施の形態では、図13に代表的な検出手段である温度センサ90を有しており、食品の温度分布を検出することができるので、検出した加熱分布にもとづいて制御手段411が、ごはんへの集中加熱と全体均一加熱をこまめに切り替えるように制御することもできる。
例えば、より詳細な制御の一例としては、まず、使用者が弁当を入れて加熱開始したときには、回転アンテナ83と回転アンテナ84の向きをずらして回転させ、それぞれ所定の向き(開口部87、88が加熱室34の中央向きから加熱室34の後方向きまでの間)は回転速度を減速させる。この減速の割合は何段階かに変えられるようにしておく。そして、温度センサ90でごはんの温度とおかずの温度を検出し、おかずに対してごはんの温度上昇が早すぎるなら所定の向きでの減速の割合を抑え(すなわち、速度を上げて)一定回転に近づける。逆に、おかずに対してごはんの温度上昇が遅すぎるなら所定の向きでの減速の割合を増やし(すなわち、速度を下げて)集中加熱に重点をおくようにする。このように温度センサ90を用いて回転を制御すれば、ごはんとおかずの加熱状況をリアルタイムで検出しながら、両者を同時に適切な仕上がり温度まで加熱することができる。
以上により、本実施の形態のマイクロ波加熱装置は、放射部85、86はマイクロ波の波長の1/2(約60mm)程度の長さの開口部87、88を有するので、マイクロ波は、結合孔と結合部の間の隙間から加熱室34側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部85、86と加熱室底面42の間の隙間を通ったのちに、放射部85、86に設けた開口部87、88か、あるいは放射部85、86の端部よりも遠方から上側の被加熱物に向かうことになる。一般に、開口部は大きさによりマイクロ波の通過のしやすさが変わり、開口部が小さいと通過しにくく大きいと通過しやすくなる。もちろん形状によっても通過のしやすさは変わるが、概ね開口部の最長寸法が波長の1/4(電子レンジならば約30mm)以上の長さになるとある程度通過できる。よって、マイクロ波の波長の1/2(約60mm)程度の長さの開口部87、88があるので、マイクロ波が開口部87、88を通過して被加熱物側へと伝搬することが可能となり、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
ちなみに、結合部45、46から開口部87、88までの距離が回転方向に対して一定の距離となる形状、例えば、本実施の形態のような扇形で、内側と外側の円弧の中心がいずれも結合部45、46の回転中心と一致し、内側と外側の円弧のRがそれぞれ回転中心からの距離に一致している扇形の場合は、開口部87、88のどの部分も結合部45、46からの距離が一定となるが、このような場合は、マイクロ波は開口部87、88の両サイドよりも中央からの通過が多いと考えられるので、開口部87、88の中央方向への放射指向性が最も強くなると考えて良い。
また、制御手段411は、回転アンテナ83、84の放射指向性の強い部位(開口部87、88)が所定の向きの近傍(加熱室34の中央向きから加熱室34の後方向きまでの間)で減速するように駆動手段を制御する構成としている。
これによって、回転アンテナ83、84が一定回転の場合に比べると所定の向き(加熱室34の幅方向の略中央かつ奥行き方向の後方)を向く時間が長くなり、所定の向きに強い放射指向性を有する状態でマイクロ波を伝搬させることになり、容易に特定の被加熱物(弁当の中のごはん)を集中加熱することができる。また、減速した時の速度により集中度合いをある程度調整することができる。
また、特定の被加熱物は、予め定められた材質(ごはん)としている。これによって、集中加熱すべき被加熱物の材質を限定できるので、加熱分布を左右するパラメータのうち被加熱物の材質というパラメータを減らすことができるので、設計時のねらい通りの集中加熱ができやすくなり、より精度が高く効果的な集中加熱を実現することができる。また集中加熱すべき条件が明確になるので、均一加熱と集中加熱を間違えるリスクを減らすことができる。
また、温度センサ90で食品の温度分布を検出しているが、おかずよりもごはんの温度が低いとごはんは集中加熱すべき特定の被加熱物であると検出でき、おかずよりもごはんの温度が高いとごはんは集中加熱すべき特定の被加熱物ではないと判断できるので、温度センサ90は集中加熱すべき特定の被加熱物かどうかを検出する検出手段と考えることもできる。温度センサ90の検出内容に基づいて回転アンテナ83、84を制御することで集中加熱を行なうので、通常は一定回転で庫内全体の均一加熱を実現しつつ、容易に集中加熱へと切り替えることができる。また、使用者からすれば、マイクロ波加熱装置が自動的に均一加熱と集中加熱を切り替えるので、間違えるリスクを減らすことができる。
なお、図16に、開口部の形状により放射指向性の強い部位がどのように決まるのかということについて、色々な例を記載しておく。
まず、図16(a)、図16(b)は、結合部91から放射部92に設けた開口部93、94が扇形でないので、結合部91から開口部93、94までの距離が回転方向に対して一定の距離ではないが、開口部93、94はそれぞれ結合部91と開口部93、94の中心を結ぶ直線に対して対称な形状の開口であり、開口部93、94の中央方向への放射指向性が最も強くなる。ちなみに、開口部が逆V字形などのように、結合部からの距離が両サイドで短く中央で遠い場合は、距離の短い両サイド2点の中間地点の方向がベストと考えられ、結局は中央への放射指向性が最も強くなる。
一方、図16(c)のように、開口部93が回転方向に対して一定の距離ではない形状、例えば、長方形で右側が結合部91に近く左側が結合部91から遠い形状などの場合は、開口部95の中央よりもやや右側の方が結合部91からの距離が短くなり、放射指向性の強い部位もやや右寄りになると考えられる。よって、このような場合は、結合部91から開口部95までの距離が短い部位とは、開口部95の中心を基準として結合部91から開口部95までの距離が短い側の部位の放射指向性が強くなると考えれば良い。
さらに、開口部が複数ある場合は、結合部から放射部の端部までの距離と同様の考え方で、結合部から開口部までの距離が短い方が、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
(実施の形態3)
図17、図18は、本発明の実施の形態3におけるマイクロ波加熱装置を示している。実施の形態1、2と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態では、導波管33が直状で中央にマグネトロン32を配置している。次に、回転アンテナ96、97の放射部98、99は同一の円形状で、マイクロ波の波長の1/4以上の長さを有するが面積の小さな開口部100、101、マイクロ波の波長の1/4以上の長さを有してなおかつ面積の大きな開口部102、103を有する形状である。また、載置台35上のマーキングにより4箇所の目印104、105がある。
次に、制御について説明する。まず使用者が設定手段(図示せず)により牛乳二杯のあたためを選択したとする。このとき、液晶などの表示部(図示せず)にカップを後方の目印104に置く旨の表示を出し、使用者はそれにしたがって目印104上にカップを置く。加熱開始後は面積の大きな開口部102、103がそれぞれ目印104を向くように回転アンテナ96、97を制御するのであるが、目印104の向きを基準として−20度から+20度の範囲で往復移動させるように制御している。面積の大きな開口部102、103が、他の開口部100、101よりも放射指向性が強いので、牛乳二杯を集中的に加熱することができる。
また、使用者が牛乳四杯のあたためを選択した場合は、表示部に目印104、105に置く旨の表示を出し、使用者はそれにしたがって目印104、105上にカップを置く。加熱開始後は面積の大きな開口部102、103がそれぞれ目印104から105の間で往復移動するように制御している。面積の大きな開口部102、103が、他の開口部100、101よりも放射指向性が強いので、牛乳四杯を集中的に加熱することができる。
以上により、本実施の形態によるマイクロ波加熱装置は、放射部98、99はマイクロ波の波長の1/4以上の長さの開口部100、101、102、103を有し、放射指向性の強い部位は、最も面積が広い開口部102、103を有する部位としている。これによって、マイクロ波は、結合孔と結合部の間の隙間から加熱室34側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部98、99と加熱室底面42の間の隙間を通ったのちに、放射部に設けた開口部100、101、102、103か、あるいは放射部98、99の端部よりも遠方から上側の被加熱物に向かうことになる。
一般に、開口部は大きさによりマイクロ波の通過のしやすさが変わり、開口部が小さいと通過しにくく大きいと通過しやすくなる。もちろん形状によっても通過のしやすさは変わるが、概ね開口部の最長寸法が波長の1/4(電子レンジならば約30mm)以上の長さになるとある程度通過できる。よって、マイクロ波の波長の1/4以上の長さの開口部100、101、102、103は、ある程度マイクロ波が開口部100、101、102、103を通過して被加熱物側へと伝搬することが可能となり、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。そして、開口部100、101、102、103と複数あるが面積に違いがあるので、面積の広い開口部102、103の方が、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
また、制御手段は、回転アンテナ96、97の放射指向性の強い部位が所定の向きの近傍を往復移動するように駆動手段を制御する構成としている。
これによって、回転アンテナ96、97は一定回転の場合に比べると、所定の向きの近傍に強い放射指向性を有する状態でマイクロ波を伝搬させることになり、容易に特定の被加熱物を集中加熱することができる。また、往復させる角度により集中加熱させる範囲をある程度調整することができる。
また、特定の被加熱物は、予め定められた材質と分量の被加熱物(二杯の牛乳または四杯の牛乳)としている。これによって、集中加熱すべき被加熱物の材質と分量を限定できるので、加熱分布を左右するパラメータのうち被加熱物の材質と分量というパラメータを減らすことができるので、設計時のねらい通りの集中加熱ができやすくなり、より精度が高く効果的な集中加熱を実現することができる。また、集中加熱すべき条件が明確になるので、均一加熱と集中加熱を間違えるリスクを減らすことができる。
(実施の形態4)
図19、図20は、本発明の実施の形態4におけるマイクロ波加熱装置を示している。実施の形態1、2と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態では、回転アンテナ106、107は形状が異なる構成で、回転アンテナ106は放射部108の外形が五角形で、回転アンテナ107は放射部109の外形が円である。また、放射部108、109とも長さがマイクロ波の波長の1/4(約30mm)以上を有する開口部を有しているが、放射部108上の開口部110、111、112は長さが異なり、放射部109上の四つの開口部113は長さが同じである。また、載置台35上の左奥にマーキングされた目印114が示されている。
図20は、目印114に置くための専用容器115を示し、内部に水を入れるための収容部116を有する本体117と、手で持ちやすくするため本体117の左右に延ばした縁部118を備え、本体117の底面にはマイクロ波を与えると発熱するマイクロ波吸収体119を有している。
本実施の形態では、庫内にスチームを発生させるために、使用者が専用容器115に少量の水(100cc以下)を入れ、目印114に専用容器115を置いて、設定手段(図示せず)によってスチーム発生のメニューを選択して、スタートさせる。このとき、制御手段(図示せず)は、回転アンテナ106の最も長さの長い開口部112が目印114側に向くまで回転させてから停止させる。
集中的に放射されたマイクロ波を吸収してマイクロ波吸収体119が高温(少なくとも100℃以上、例えば、250℃程度)まで一気に昇温し、専用容器115内の水のうちマイクロ波吸収体119に最も近い層を気化させてスチームに変えるものである。もちろん水自体もある程度マイクロ波を吸収するので、この場合は水とマイクロ波吸収体119の両方とも被加熱物であると考えられる。この構成によって、マイクロ波を専用容器115に集中させることができるので、短時間でスチームを発生させることができる。そして、スチーム発生後に食品を入れて加熱すればスチーム環境下での調理ができる。
なお、専用容器115を配置すると同時に食品を載置台35に置けば、スチーム発生と並行して食品を加熱することができる。このとき、回転アンテナ106を開口部112が目印114を向いた状態で停止させつつ、回転アンテナ107のみを一定回転させることができる。このようにすれば、回転アンテナ106でマイクロ波吸収体119を集中加熱させつつ、回転アンテナ107で食品を均一加熱させるということが可能となる。
以上により、本実施の形態のマイクロ波加熱装置は、放射部108はマイクロ波の波長の1/4以上の長さの開口部110、111、112を有し、最も長さが長い開口部112によって放射指向性の強い部位を構成している。これによって、マイクロ波は、結合孔と結合部の間の隙間から加熱室34側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部108と加熱室底面の間の隙間を通ったのちに、放射部108に設けた開口部110、111、112か、あるいは放射部108の端部よりも遠方から上側の被加熱物に向かうことになる。一般に、開口部は大きさによりマイクロ波の通過のしやすさが変わり、開口部が小さいと通過しにくく大きいと通過しやすくなる。そして、開口部が複数あって長さに違いがある場合は、長さが長い方(開口部112)が、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
また、特定の被加熱物は、予め定められた専用容器115に入れた被加熱物(水)、および専用容器115に装着されたマイクロ波吸収体119としている。
これによって、被加熱物の形状が容器の形状に合わせられ、少なくとも高さ方向が決まることになり、回転アンテナ106、107からの垂直方向の距離を常に一定にすることができる。特に、被加熱物が液体の場合は容器に合わせて水平方向の寸法まで一定にすることができる。このように集中加熱すべき被加熱物の形状を限定できるので、加熱分布を左右するパラメータのうち被加熱物の形状というパラメータを減らすことができるので、設計時のねらい通りの集中加熱ができやすくなり、より精度が高く効果的な集中加熱を実現することができる。また、集中加熱すべき条件が明確になるので、均一加熱と集中加熱を間違えるリスクを減らすことができる。
なお、開口部の形状が異なる他の例として図21を説明する。結合部120、放射部121、面積は等しいが長さの異なる開口部122、123、124を示しており、最も長さの長い開口部124の方向への放射指向性を強くすることができる。
(実施の形態5)
図22〜図24は、本発明の実施の形態5におけるマイクロ波加熱装置を示している。実施の形態1、2と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態では、加熱室34の側壁面にはオーブンやグリル調理時に使用する専用皿を保持するためのレール125、126を備えている。そして、グリル皿127を下側のレール126に装着した状態を図示している。グリル皿127は導電性材料からなるのでマイクロ波を反射する材料であるが、裏面にマイクロ波吸収体128を一体化しており、下方からマイクロ波が照射されればマイクロ波を吸収して急速に高温(250℃以上)にまで温度上昇し、グリル皿127上に載置された食品(ハンバーグや鶏のもも肉など)を焼き上げることができる。この場合、グリル皿127を専用容器、マイクロ波吸収体128を被加熱物、さらにはレール125、126を目印と考えることができる。
また、回転アンテナ129、130は放射部131、132を有し、放射部131、132にはそれぞれ対称な位置に開口部133、134を形成することで対称な(裏返すと同じ)形状を構成している。そして、開口部133、134はそれぞれマイクロ波の波長の1/4以上の長さで全く同じ形状(例えば、60mm×20mmの長方形)であるが、開口部133よりも開口部134の方が放射指向性の強い部位となる。これは、結合部とそれぞれの開口部の中心を結ぶ線分に直交する方向の開口長さが開口部133の場合のm、開口部134の場合のnとしたときに、m<nとなっているからである。
これにより、図23、24の状態は、回転アンテナ129は右向きに指向性が強く、回転アンテナ130は左向きに指向性が強い状態となり、マイクロ波吸収体128の中央にマイクロ波が集中するので、グリル皿127の中央の温度がもっとも高くなる。もし少量のハンバーグなどであれば、グリル皿127の中央に置くようにすれば、非常に効率的に加熱ができて短時間で焼き上げることができる。このとき設定手段(図示せず)によってハンバーグが少量であることを設定しても良い。
しかし、他にも、温度検出手段(図示せず)で回転アンテナ129、130を一定回転させながらグリル皿127の温度分布を検知して、ハンバーグに接しているところは熱交換されて若干温度が下がるので、温度が下がっているところにのみ食品があると判断して、食品がある位置の下にあるマイクロ波吸収体128のみにマイクロ波を集中させることもできる。もちろん食品の位置を知るためであれば検出手段は温度に限る必要は無く、光で形状検出するとか、重量と重心を検出するなどの方法も考えられる。
以上により、本実施の形態における開口部の特徴について整理すると、開口部が複数あって向きに違いがある場合は、結合部とそれぞれの開口部の中心を結ぶ線分に直交する方向の開口長さが長い方が、結合部から全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするマイクロ波の多くの領域にまたがることになり、多くのマイクロ波を上方に伝搬させることができるので、その方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
また、予め定められた容器として、本実施の形態におけるグリル皿のように加熱室34の平面全体に渡るような構成であれば、庫内の前後と左右の位置が決まるし、装着するレール125、126を明確にすれば高さ方向の位置も決まる。
これによって、被加熱物(本実施の形態では、マイクロ波吸収体128)の形状が容器と一体化しており、水平方向も高さ方向も決まることになり、回転アンテナ129、130からの距離を常に一定にすることができる。このように集中加熱すべき被加熱物の形状と位置関係を限定できるので、加熱分布を左右するパラメータのうち被加熱物の形状というパラメータを減らすことができるので、設計時のねらい通りの集中加熱ができやすくなり、より精度が高く効果的な集中加熱を実現することができる。また、集中加熱すべき条件が明確になるので、均一加熱と集中加熱を間違えるリスクを減らすことができる。
(実施の形態6)
図25、図26は、本発明の実施の形態6におけるマイクロ波加熱装置を示している。基本構成は実施の形態1、2と同一であるので、相違点を中心に説明する。
本実施の形態では、結合部135、放射部136、曲げ部137を有し、端部138と端部139は結合部135からの距離は同じで幅のみ違う構成である。このときは端部139の方に放射指向性が強くなる。これは端部138、139近傍の空間の広さによって決まると考えられる。端部138、139の垂直方向の断面積を示すと、それぞれ図25(c)、図25(d)となり、端部138の断面積よりも端部139の断面積の方が広いのである。
このことは、開口部を有する場合にも成り立つと考えられる。図26は図25の放射部と同じ概観形状で、結合部135から等距離に長さ60mmで幅15mmの開口部140、141を形成したものである。この場合は、開口部140、141からマイクロ波が放射されるので、開口部140、141の直前(結合部135側)の断面積を比較すべきであり、それぞれ図26(c)、図26(d)となる。図25(c)、図25(d)と比較すると、断面積の差が小さくなっている。
以上により、本実施の形態のマイクロ波加熱装置は、放射指向性の強い部位は、結合部から見て端部手前またはマイクロ波の波長の1/4以上の長さの開口部手前において、放射部136と加熱室底面で形成される空間の垂直方向の断面積が広い部位としている。
これによって、マイクロ波は、結合孔と結合部の間の隙間から加熱室側に引き出されて全方向(水平方向の360°)に伝搬しようとするが、放射部の形状によって伝搬しやすい方向やしにくい方向が変わってくる。一旦、端部や開口部に到達したマイクロ波は、水平方向だけでなく垂直方向にも伝搬できるようになるので、あまり抵抗無く伝搬できる。しかし、そこまで到達できるマイクロ波が多いか少ないかは放射部136と加熱室底面で形成される空間の垂直方向の断面積に左右される。断面積が広いほど抵抗無く大量のマイクロ波が到達できるが、断面積が狭いほど反射が増えてあまり大量のマイクロ波は到達できないと考えられるので、断面積が広い部位の方向への放射指向性を強くすることができ、被加熱物を集中的に加熱することができる。
最後に、各実施の形態で説明しなかったことについて補足する。放射部が十字型のような対称形状の場合、一回転の間に放射指向性の強い部位(結合部側に切れ込んだ部分)が四箇所現れる。このように、一回転の間に放射指向性の強い部位が複数回あらわれる構成にすれば、放射指向性の強い部位を所定の向きに向けるのに短時間で向けられるという効果がある。
なお、以上に示した各実施の形態1〜6の構成は、必要に応じてさまざまに組み合わせて実施できるものである。