JP4241094B2 - フラーレンデバイスの製造方法、およびフラーレンデバイス - Google Patents

フラーレンデバイスの製造方法、およびフラーレンデバイス Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
フラーレンを含むデバイスの製造方法に関するものであり、デバイス特性の改善を目的にした基板上でのフラーレン分子の単結晶化法あるいは結晶グレイン成長法に関する
【0002】
【従来の技術】
【非特許文献1】
リュウサンチェン、イージーリン、ユーチンスー、クアンチェンチュー著,「スィン ソリッド フィルムズ(Thin Solid Films)」、(オランダ)、vol,396、エルセビア・サイエンス刊、2001年、p.103−108
【非特許文献2】
アール.シー.ハドン著(R.C.Haddn et al.),「アプライフィジカル レターズ(Appl. Phys. Lett.)」、(米国)、vol,67,アメリカン・インスティチュート・フィジックス刊、1995年、p.121−123
【0003】
フラーレン分子、特にC60フラーレン分子は、電子をキャリアとするn型の半導体特性を示し、簡易な真空蒸着による薄膜を用いた場合でも約0.1cm2/V・sの実効モビリティを示す電界効果トランジスター(FET)を作製できることが知られている。この実効モビリティの値は、有機半導体の中では比較的高い値であるが、シリコンやGaAs等無機半導体の単結晶と比べると遥かに低く、広範なデバイス応用のためには、さらなる特性改善が必要である。
【0004】
有機物デバイスの特性改善に対しては、一般的に、分子配向の改善や結晶(グレイン)成長が試みられていれる。これらは、キャリア輸送を妨げてしまう構造的欠陥や不純物の存在を排除することが目的であり、実効モビリティを2〜3倍に改善した報告もある。
【0005】
フラーレン分子は、ミリサイズの単結晶成長が可能であるが、非常に脆くて加工しにくいこと、大気中において構造劣化すること、酸素吸着によりキャリアトラップされてしまうこと等、多くの障害を含んでいる。そのため、デバイス化しやすいように、基板上に直接フラーレン分子の集合体を得ることが望ましく、さらにこれが結晶化されていることがより望ましい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
フラーレン分子の基板上での結晶成長に関して、単結晶成長条件に近い773K近傍まで加熱する方法に関する報告(例えば、非特許文献1参照)があるが、そのような高温に晒してしまえば、電極などのデバイス構造を劣化させてしまう結果となる。
また、分子修飾した金電極を使用したフラーレンFETの報告(例えば、非特許文献2参照)もあるが、その報告では基板全体に一様に成膜した非晶質薄膜であり、位置選択的なグレイン成長ではない。
【0007】
したがって、本発明は、フラーレン分子ないしその結晶を基板上にデバイスの構成要素として含むフラーレンデバイスであって、大気中での構造劣化や酸素吸着等による品質低下を抑制し、高品質のものが得られるフラーレンデバイスの製造方法、およびその製造方法により得られる高品質のフラーレンデバイスを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
フラーレン分子ないしその結晶を基板上に付着させるに当たり、フラーレン分子の大きな集合体ないし単結晶を得て、これを追加工により微細化して用いる技術も考えられる。しかし、本来、高集積されたデバイスの機能部分はとても微細であり、大きな単結晶を用い、追加工により微細化しようとすると、その際に破損してしまう可能性がある他、追加工時に大気中での構造劣化や酸素吸着を起こしてしまう可能性も大きくなる。
【0009】
この点を考慮した結果、基板上の所定の位置に直接、フラーレンの集合体、好ましくは高品質の結晶グレイン(微結晶粒)を得ることが、好ましいとの結論に達した。そして、そのための方策について鋭意研究を行ったところ、本発明に想到するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のフラーレンデバイスの製造方法は、基板上の所定の位置に、少なくともチタンを含む金属膜の縁端部、または、フタロシアニン分子からなるテンプレートを配置し、該テンプレートに対してフラーレン分子を蒸着させることで、前記所定の位置に選択的にフラーレン分子を付着させることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、少なくともチタンを含む金属膜の縁端部、または、フタロシアニン分子からなるテンプレートは、フラーレン分子の蒸着が選択的に起こる性質を有し、該テンプレートが、基板上の所定の位置に配置されているため、当該テンプレートに対してフラーレン分子を蒸着させると、デバイス構造として必要な位置(前記所定の位置)に選択的にフラーレン分子の集合物を付着ないし結晶を成長させることができる。このように、フラーレン分子の集合物ないし結晶を基板上の前記所定の位置に直接形成することができるため、追加工なしで短時間にフラーレンデバイスを製造することができ、大気中での構造劣化や酸素吸着等による品質低下が抑制され、高品質のものが得られる。
【0012】
また、大気からの遮蔽のため、例えばシール(密封)加工が施される場合があるが、本発明のフラーレンデバイスの製造方法によれば、蒸着した段階で、デバイスの機能部分となるフラーレン分子の大きな集合体ないし単結晶が完成するので、例えば真空蒸着の後、すぐに真空下でシール加工を施すことができるため、大気が遮断された状態を製造前後に渡り保持することができ、この点でも、大気中での構造劣化や酸素吸着等による品質低下が抑制される。
【0013】
前記所定の位置に選択的に付着させるフラーレン分子としては、単なる非晶質の集合体でも構わないが、結晶化させることが、高機能のデバイスを得る上で好ましい。
前記テンプレートとしては、フラーレン分子の蒸着が選択的に起こる性質を有するものであ、具体的には以下の(1)および(2)の何れかが用いられる
【0014】
(1) 少なくともチタンを含む金属膜の縁端部
の場合、少なくともチタンを含む金属膜の縁端部を前記所定の位置にパターン化して露出させることが好ましい。
【0015】
(2) フタロシアニン分子
【0016】
フタロシアニン分子としては、単結晶であることが好ましく、得られるフラーレンデバイスが特定の結晶方位となるように、フタロシアニン分子の単結晶の結晶方位を揃えることが好ましい。また、前記フタロシアニン分子の単結晶における長軸方向に直交する断面の径を調整することにより、前記所定の位置に選択的に付着させるフラーレン分子の結晶形態を制御することもできる。
【0017】
当該態様においては、前記フタロシアニン分子として、鉄フタロシアニン、コバルトフタロシアニン、ニッケルフタロシアニンおよび無金属フタロシアニンからなる群より選ばれる少なくとも1種の分子を含むことが好ましい。
その他、本発明においては、前記基板上においてフラーレン分子の結晶が一様に成長する温度範囲を超えた高温で基板を加熱させつつ、フラーレン分子を蒸着させ、位置選択的にフラーレン分子を結晶成長させることで、構造欠陥の少ないフラーレン分子の結晶グレイン(微結晶)を成長させることもできる。
【0018】
一方、本発明のフラーレンデバイスは、基板上の所定の位置に、デバイスの構成要素としてのフラーレン分子が配されてなり、該フラーレン分子が、上記本発明のフラーレンデバイスの製造方法により選択的に付着されたものであることを特徴とする。本発明のフラーレンデバイスは、例えば、電界効果トランジスターとして機能するものを挙げることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフラーレンデバイスの製造方法は、基板上の所定の位置に、フラーレン分子の蒸着が選択的に起こる性質を有するテンプレートを配置し、該テンプレートに対してフラーレン分子を蒸着させることで、前記所定の位置に選択的にフラーレン分子を付着させることを特徴とする。
【0020】
対象となるフラーレン分子としては、特に制限はなく、公知のフラーレン類ないしその誘導体をいずれも用いることができる。具体的には、C32、C50、C58、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C96からなる群から選ばれるいずれか1つ以上、もしくはその誘導体が挙げられる。具体的な誘導体としては、ノタノフラーレン、フラーレンエポキシド、アザヘテロフラーレン等のフラーレン二量体等が挙げられる。これらフラーレン類の中でも、C60およびC70(特にC60)が、安定度や半導体特性の観点で好ましい。
【0021】
本発明において、フラーレン分子を蒸着する方法としては、特に制限されるものではなく、一般的な真空蒸着法は勿論のこと、スパッタリング蒸着法や分子線エピタキシー蒸着法等も本発明に好ましく適用可能な蒸着法である。これら蒸着法により、フラーレン分子を単に付着させて集合体を得てもよいが、得られるデバイスの特性を良好なものとするためには結晶化させることが好ましく、その観点からは、真空蒸着法または分子線エピタキシー蒸着法が好ましい。
【0022】
本発明において「基板」としては、一般的に電子デバイスの基板として用いられる各種基板(例えばシリコンウェハー)をいずれも問題なく用いることができる。なお、本発明で「基板上」と表される際の「上」とは、いわゆる重力関係における上下関係を意味するものではなく、基板面に接触する部位および離間する部位を含む、概念的な意である。すなわち、一般的な平板状の基板を例に挙げると、その表面は勿論、その裏面も含み、これらに表面層等の各種層構成が成されている場合にそれらの層のさらに上層(ここで言う「上」も概念的な意)やこれらの層の間を含み、基板に保持されることを条件として、基板ないしその上層から離間した部位も含まれる。
本発明において、「所定の位置」とは、デバイスの機能部分としてのフラーレン分子の集合体ないし結晶を配置すべき、基板上における位置を言う。
【0023】
本発明では、前記テンプレートを使用することにより、デバイス構造に必要な位置に選択的にフラーレン分子の集合体ないし結晶グレイン(微結晶粒)を配置できるようにしている。つまり、本発明においては、均質で一様な蒸着膜(多くの場合、多結晶膜や非晶質膜)を作製するのではなく、デバイスの機能部位に対して、位置選択的にフラーレンの集合体を付着、ないし結晶グレイン(微結晶粒)を成長させることができる。また、所望の機能のデバイス構造に対してテンプレートを配置させることにより、追加工なしで短時間にフラーレン分子をデバイス化させることができる。
【0024】
その他、本発明においては、テンプレートの種類に関わらず、前記基板上においてフラーレン分子が一様に成長する温度範囲を超えた高温で基板を加熱させつつ、フラーレン分子を蒸着させ、位置選択的にフラーレン分子を結晶成長させることもできる。
【0025】
本発明において、「テンプレート」とは、フラーレン分子の蒸着が選択的に起こる性質を有するものであ、以下の(1)および(2)の何れかが用いられる。
(1) 少なくともチタンを含む金属膜の縁端部
(2) フタロシアニン分子
【0026】
(1) 少なくともチタンを含む金属膜の縁端部
当該態様(以下、「(1)の態様」という。)において、チタンを含む金属としては、チタンそのものの他、各種チタン合金を挙げることができる。チタン膜の縁端部を形成するには、チタン膜自体のみを形成しても構わないが、さらにその上層を形成することもできる。かかる上層としては、例えば、金、白金、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、鉄、コバルト等の層を挙げることができる。
【0027】
(1)の態様では、少なくともチタンを含む金属膜の縁端部を、前記所定の位置にパターン化して露出させることが好ましい。
金属チタンに対するフラーレン分子の結晶化は過去に報告例がない。金属チタンは、電子デバイスの電極パターンを作製する時に、基板と電極金属(貴金属)との密着性改善のために多く使用されていることから、これをテンプレートとして用いることは、デバイス化の点で何ら支障が無い。また、電極パターン作製時に、フラーレン分子付着ないし成長用の金属チタンのパターンを加えて作製することも可能であり、微細なデバイス構造に対して正確にアドレス決めされた状態を基板作製段階で容易に付与することができる。
【0028】
(2) フタロシアニン分子
当該態様(以下、「(2)の態様」という。)のように、フタロシアニン分子等の有機分子(ないしその分子性結晶)に対してフラーレン分子が結晶化することについては、過去に報告例がない
【0029】
かかるフタロシアニン分子は、安価で非常に安定な分子であり、真空蒸着法等の蒸着法により薄膜化も容易であるという利点がある。さらに、有機溶剤にはあまり溶けないため、フォトリソグラフィーなどのパターニング技術に応用してもプロセス工程で溶出してしまうことは少なく、テンプレートとしての用途には非常に適している。
【0030】
フタロシアニン単結晶は、比較的簡単に単結晶を作製できること、針状の単結晶でありサイズコントロールしやすいこと、分子量の高い分子であるためフラーレンの結晶化温度(約453K)近傍でも昇華しないこと等の利点がある。
【0031】
(2)の態様におけるフタロシアニン分子としては、単結晶、多結晶、非晶質等いずれの状態でも構わないが、得られるフラーレンデバイスにおけるフラーレン分子の結晶性を均質に制御するには、単結晶であることが好ましく、得られるフラーレンデバイスが特定の結晶方位となるように、フタロシアニン分子の単結晶の結晶方位を揃えることが好ましい。
また、前記フタロシアニン分子の単結晶における長軸方向に直交する断面の径を調整することにより、前記所定の位置に選択的に付着させるフラーレン分子の結晶形態を制御することもできる。具体的には、後の実験例で詳述する。
【0032】
前記フタロシアニン分子としては、特に制限はなく、あらゆる金属フタロシアニンあるいは無金属フタロシアニンを用いることができるが、好ましいものとしては、鉄フタロシアニン、コバルトフタロシアニン、ニッケルフタロシアニンおよび無金属フタロシアニンからなる群より選ばれる少なくとも1種の分子を含むものが挙げられる。
【0033】
ところで、フタロシアニンとフラーレン分子とを組み合わせたデバイスには、従来より太陽電池(Solar−Cell)が知られている。p型半導体であるフタロシアニンとn型半導体であるフラーレン分子との組み合わせであり、光照射時にそれら接合界面では高い電荷分離特性を示すことが報告されている(例えば、非特許文献1、並びに、タニガキ、クロシマ、イブセン著,「Thin Solid Films」、vol.257,1995年、p.154〜155参照)。これらの文献では、蒸着による多層薄膜が使用されているが、本発明により得られるフタロシアニンとフラーレン分子との単結晶面による接合を利用して太陽電池(フラーレンデバイス)を製造すれば、デバイス特性がより一層高いものとなる。
【0034】
[実験例]
本発明のフラーレンデバイスの製造方法を検証するために、以下の通り実験を行った。
まず、当該実験では、以下の蒸着条件でフラーレン分子を真空蒸着することで、フラーレンデバイスないしはその前駆体を製造した。
【0035】
<蒸着条件>
加熱蒸着ポート、基板加熱ポート、温度モニターポート、蒸着速度・膜厚モニターポートを配置した真空チャンバーを用い、ターボ分子ポンプおよびロータリーポンプにて、そのチャンバー内を真空に排気した。
・真空度:0.0001Pa以下
・蒸着時基板温度:特に明示の無い場合、498K
・蒸着スピード:膜厚0.1nm/sec.
・チャンバー外部から顕微鏡(CCD)により、チャンバーのガラス窓を通して、成長していく結晶の大きさをモニターして、所望の大きさや形状になったことを確認して、蒸着終了時間を設定した。
【0036】
(実験1)
まず、基板温度300K、438K、473Kおよび498Kの4種の条件で、基板(表面に500nmの熱酸化膜(SiO2層)を有する、厚さ約0.3mmのシリコン基板。以下、同一構成の基板を「基板A」と称する。)の表面にフラーレン分子を蒸着した。得られたフラーレン薄膜(集合体ないし結晶)の走査電子顕微鏡(SEM)観察写真(20000倍)を図1(a)〜(d)に示す。(a)が基板温度300K、(b)が基板温度438K、(c)が基板温度473K、(d)が基板温度498Kの条件で得られたフラーレン薄膜のSEM観察写真である。なお、写真の倍率は、写真の引き伸ばしの程度等により、多少の誤差が生じている(以下、SEM観察写真において同様。)。
【0037】
図1(a)に示す基板温度300Kの基板では、フラーレンの結晶化は観察できない。10nm以下のクラスター粒が表面全体に観察できるが、結晶グレインの成長はない。図1(b)に示す基板温度438Kの基板では、結晶グレイン成長およびグレインの境界が現れている。図1(c)に示す基板温度473Kの基板では、結晶グレインはより明解な境界を示している。そして、その結晶グレイン内部には成長した結晶面を確認することができる。図1(d)に示す基板温度498Kの基板では、結晶グレインは離散した状態になり、それぞれが単独の結晶粒となって成長している。なお、513Kを超える温度では、基板表面にフラーレン分子は付着しなかった(観察写真省略)。
【0038】
基板温度498Kの温度近傍での結晶グレインの成長に注目すると、図1(d)に示されるように、フラーレン分子の結晶グレインは基板表面全体には着膜しにくく、一般的な成膜用途には不適である。しかしながら、良質な微小素子を必要とする用途には好適条件になり得る。例えば、図1(d)で得られたフラーレン分子の結晶グレイン(微結晶)のそれぞれを素子化できれば、薄膜状よりも構造欠陥の少ない結晶を用いてデバイスを構築できるようになる。
【0039】
本発明においては、フラーレン分子が結晶化していることは必須ではないが、高い特性のデバイスを得る上では結晶化していることが好ましい。つまり、結晶成長が基板上の所定の位置になるように制御することができる本発明によれば、基板上においてフラーレン分子が一様に成長する温度範囲を超えた高温で基板を加熱させつつ、フラーレン分子の結晶を蒸着させることで、構造欠陥の少ないフラーレン分子の結晶グレイン(微結晶)をデバイスの所定の位置に成長させることができることとなる。
【0040】
「基板上においてフラーレン分子の結晶が一様に成長する温度範囲」とは、蒸着の条件や、基板の材質および表面状態により変動するため、一概には言えないが、本実験においては、少なくとも498Kは当該温度範囲を超える高温である(すなわち、498Kはフラーレン分子の結晶が一様に成長しない温度である)と言い得る。フラーレン分子の結晶が一様に成長しない温度の下限としては、一般的には453K以上であり、本発明においては473K以上がさらに好ましい。
【0041】
このように基板を加熱する場合、基板温度の上限としては、フラーレン分子の結晶成長が阻害される、すなわち生成した結晶が再度昇華したり、分解したりしてしまう温度未満であることが好ましく、これも同様に各種条件により変動するが、523K以下であることが好ましく、513K以下であることがより好ましい。
【0042】
(実験2)
次に、テンプレートとして、パターニングされたAu/Ti電極を基板表面に配置した実験(本発明の(1)の態様の実施例)を行った。
基板Aの表面に、矩形状のAu/Ti電極(上層:厚さ15nmのAu層、下層:厚さ5nmのTi層)を2つ、一辺が平行に対向するように約3.0μm離間させて形成した。この基板表面におけるAu/Ti電極が対向する領域の一方の端部近傍をターゲットにして、フラーレン分子を蒸着した。図2に、得られたフラーレン分子の結晶グレインのSEM観察写真(6700倍)を示す。
【0043】
本実験では、熱酸化膜(500nm)を施したシリコンウェハーを使用し、基板温度を498Kに設定して蒸着を行っているため、図1(d)で示される実験例との相違点は、Au/Ti電極の存在である。図2のSEM観察写真においては、Au/Ti電極のエッジ部分に対して選択的に成長したフラーレン分子の結晶グレイン(微結晶)を観察することができる。
【0044】
(実験3)
基板Aの表面に、Au単層(厚さ15nm)からなる上記(実験2)と同一形状のAu電極を形成し、上記(実験2)と同一条件でフラーレン分子を蒸着した。その結果、Au電極のエッジ部分で、フラーレン分子の結晶成長は、現れなかった(観察写真省略)。そのため、2層構成のAu/Ti電極の下地金属であるTiが強く影響していることがわかる。
【0045】
(実験4)
基板Aの表面に、Ti単層(厚さ5nm)からなる上記(実験2)と同一形状のTi電極を形成し、上記(実験2)と同一条件でフラーレン分子を蒸着した。得られたフラーレン分子の結晶グレインのSEM観察写真(10000倍)を図3に示す。
【0046】
図3のSEM観察写真においては、上記(実験2)の図2のSEM観察写真と同様に、Ti電極のエッジ部分に選択的に成長したフラーレン分子の結晶グレイン(微結晶)を確認することができる。エッジ以外のTi電極表面(写真には示されていない)では、ランダムに点在するフラーレン分子の結晶グレイン(微結晶)を確認することができたが、非常に疎らであり、Ti電極のエッジ部分のような高い位置選択性を示すものではなかった。また、その結晶グレインは小さく、結晶成長速度はTi電極のエッジ部分よりも遅いことがわかる。つまり、その機構は不明であるが、フラーレン分子は、Ti電極のエッジ部分との相互作用が強く、Ti電極のエッジ部分をテンプレートとして用いて、当該エッジ部分に選択的にフラーレン分子を結晶成長させ得ることがわかる。
【0047】
(実験2)〜(実験4)の考察:
(実験2)〜(実験4)の結果から、少なくともチタンを含む金属膜の縁端部が、フラーレン分子の蒸着が選択的に起こる性質を有するテンプレートとして機能していることがわかる。すなわち、(実験2)(実験4)により、フラーレン分子の集合体ないし結晶を形成したい位置に、少なくともチタンを含む金属膜の縁端部が来るように、その形状を適宜制御して基板上に配することで、所望のフラーレンデバイスが容易に製造できることが確認された。
【0048】
(実験5)
次に、Ti電極をテンプレートとして利用して、微小なフラーレンデバイスであるFET(フラーレンFETデバイス)を製造する実験を行った。
基板Aの表面に、上記(実験2)と同様にAu/Ti電極を形成した。このとき、2つの電極の形状は上記(実験2)と同一としたが、その間隙は約2.5μmとした。上記(実験2)と同一条件でフラーレン分子を蒸着した。得られたフラーレン分子の結晶グレインのSEM観察写真(20000倍)を図4に示す。
【0049】
図4のSEM観察写真においては、対向する2つのAu/Ti電極のエッジにフラーレン分子の結晶グレイン(微結晶)が成長しており、かつその間に挟まれた、フラーレン分子の単一の結晶グレイン(微結晶)の存在を確認することができる。したがって、対向する2つのAu/Ti電極をソースおよびドレイン電極とし、基板自体(より正確には、Au/Ti電極が配置された面と、熱酸化膜であるSiO2層を介して裏面側となるSi層)をゲート電極とする、微小なフラーレンFETが構成されている。すなわち、ソース電極−ドレイン電極間は、フラーレン分子の1つの結晶グレイン(微結晶)で接合されている。
【0050】
得られたフラーレンFETについて、200Kの環境下での電気特性を評価した。図5(a)および(b)に、その電気特性の結果をグラフにて示す。図5(a)は、縦軸をソース−ドレイン間電流、横軸をソース−ドレイン間電圧として、ゲート電圧を−10Vから30Vの間で10V刻みで変化させて測定された電流−電圧特性をプロットしたものであり、凡例はゲート電圧のプロット記号を示すものである。一方、図5(b)は、縦軸をソース−ドレイン間電流、横軸をゲート電圧として、電流−電圧特性をプロットしたものである。
【0051】
これらグラフから、正ゲート電圧側では大きな電流値となり、n型半導体特性を有するフラーレンFETとして機能することがわかる。そして、ゲート電圧による大きな電流増幅が得られ、200Kもの低温においても良好に動作するフラーレンFETであることがわかる。
以上のことから、本発明により極めて微細で高性能なFETとして機能するフラーレンデバイスが製造できたことが確認された。
【0052】
なお、本実験では、対向する2つのAu/Ti電極を橋渡しする、フラーレン分子の単一の結晶グレイン(微結晶)が形成されているが、当該結晶グレインは複数個あっても構わない。また、2つのAu/Ti電極のエッジに成長しているフラーレン分子の結晶グレイン(微結晶)同士が直接接触して、橋渡しした状態となっていても構わない。
【0053】
対向する2つのAu/Ti電極間をターゲットとして蒸着を行えば、両者間を橋渡しする単一もしくは複数の結晶グレインが、確率論的には度々形成され得る。積極的にこのような結晶グレインを成長させるには、対向する2つのAu/Ti電極間のいずれかに、予め不純物(例えば、チタン粒子等)を付着しておいたり、Au電極とAu/Ti電極とを組み合わせて使用したり、あるいは、Au/Ti電極のTi層から両電極間に向けてバリが出た状態となるように、予め電極形成しておくといった方法が挙げられる。
【0054】
対向する2つのAu/Ti電極の間隙としては、両電極のエッジに成長しているフラーレン分子の結晶グレインや、両者間を橋渡しする単一もしくは複数の結晶グレインが、どの程度成長し得るか、ないしどの程度成長させるべきかにより、適宜決定すればよい。この間隙をより狭めることにより、あるいは、2つのAu/Ti電極のエッジに成長するフラーレン分子の結晶グレインを、より大きく成長させることにより、両電極のエッジに成長しているフラーレン分子の結晶グレイン同士が直接接触して、橋渡しした状態となる。
【0055】
(実験6)
次に、テンプレートとして、フタロシアニンを基板表面に配置した実験(本発明の(2)の態様の実施例)を行った。
基板A表面の一部に、鉄フタロシアニン(FePc)を常温で真空蒸着し、鉄フタロシアニン薄膜(結晶膜、厚さ10nm)を形成した。このときの蒸着条件は、以下の通りである。
【0056】
<蒸着条件>
加熱蒸着ポート、基板加熱ポート、温度モニターポート、蒸着速度・膜厚モニターポートを配置した真空チャンバーを用い、ターボ分子ポンプおよびロータリーポンプにて、そのチャンバー内を真空に排気した。
・真空度:0.0001Pa以下
・蒸着時基板温度:300K(常温)
・蒸着時間:約2時間
・蒸着スピード:膜厚0.1nm/sec.
・チャンバー外部から顕微鏡(CCD)により、チャンバーのガラス窓を通して、成長していく結晶の大きさをモニターして、所望の大きさや形状になったことを確認して、蒸着終了時間を設定した。
【0057】
鉄フタロシアニン薄膜が形成された領域と形成されていない領域の境界周辺をターゲットとして、基板温度463Kで真空蒸着を行った。図6に、得られたフラーレン分子の薄膜表面のSEM観察写真(1000倍)を示す。図6のSEM観察写真においては、上方が、下地に鉄フタロシアニン薄膜が配置されている領域であり、また、下方が、基板表面の熱酸化膜(SiO2層)がそのまま下地となっている領域であり、その境界が写真の左右に斜めに横切っている。
【0058】
図6のSEM観察写真における、上方のフラーレン分子の結晶グレインは、下方に比べて極めて大きなサイズとなっている。このことから、下地に鉄フタロシアニン薄膜を配置することで、その効果によって、フラーレン分子の結晶グレインを大きく成長させ得ることがわかる。このようなフラーレン分子の結晶グレイン成長に対する鉄フタロシアニン分子の効果は、本発明者らにより、このたび初めて見出されたものである。
【0059】
一般に、フタロシアニン分子をシリコンの熱酸化膜やガラス表面に蒸着すると、ほぼ垂直に立った状態に配向して、分子面相互が重なり合ってスタックした状態の結晶構造をとることが知られている。そのため、本実験での鉄フタロシアニン薄膜表面は、フタロシアニンの分子の外周部分が露出した状態であり、その分子外周にある炭素6員環の配置が、フラーレン分子の結晶グレイン成長に関与していると推測される。事実、本発明者らは、銅フタロシアニン(CuPc)、コバルトフタロシアニン(CoPc)、ニッケルフタロシアニン(NiPc)、無金属フタロシアニン(H2Pc)を使用して同様の実験を行っているが、その場合にも、同様のフラーレンの結晶グレイン成長となり、フタロシアニン分子に含まれる中心金属の影響は、極めて小さいことが確認されている。
【0060】
(実験7)
鉄フタロシアニン(FePc)単結晶を用意した。用意した鉄フタロシアニン単結晶の表面に、フラーレン分子の真空蒸着を行った。図7(a)に、得られたフラーレン分子の薄膜表面のSEM観察写真(20000倍)を示す。また、図7(b)には、図7(a)に示されるフラーレン分子の薄膜表面の一部拡大写真(67000倍)を示す。これらの写真中に描かれている矢印は、鉄フタロシアニン単結晶(針状)の長軸方向を示すものである。
【0061】
図7(a)および(b)のSEM観察写真に示されているように、全てのフラーレン分子の結晶グレインに共通して、テンプレートとして用いた鉄フタロシアニン単結晶の長軸方向を含む規則的な構造となっている。図7(a)と(b)とを比較すると、大小さまざまなサイズの結晶グレインが存在するものの、それらは相互に相似形であり、同じ対称性を示すことがわかる。さらに、それら結晶グレインが、それぞれ分離した状態(島状)で成長していることから、ボルマー−ウェーバー(Volmer−Weber)様式のエピタキシャル成長に分類することができる。
【0062】
また、前出した他の4種類のフタロシアニン(CuPc、CoPc、NiPcおよびH2Pc)の単結晶をテンプレートとして用いて、本実験と同様にしてフラーレン分子の結晶グレイン成長を確認したところ、本実験と同様の結果を得た。したがって、フタロシアニン単結晶を用いた場合においても、その中心金属の影響は極めて小さいことが確認されている。
【0063】
(実験8)
次に、結晶サイズ(針状結晶の太さ=フタロシアニン分子の単結晶における長軸方向に直交する断面の径)の異なる鉄フタロシアニン単結晶を用いた実験を行った。
【0064】
まず、テンプレートとして、結晶サイズが約1μmのフタロシアニン分子の単結晶(a)と、約0.05μmのフタロシアニン分子の単結晶(b)とを用意した。これら単結晶の形成条件は、以下の通りである。
【0065】
石英管と加熱ヒーターとで構成された加熱電気炉を用いた。前記石英菅には、大気の流入を防ぐ機構を設け、分子の酸化・分解を防止するようにガス(水素ガス(還元ガス)とアルゴンガス(希ガス)とを1:4に混合したもの)をフローさせた。加熱電気炉中の温度は673K(400℃)に設定した。それぞれの結晶サイズとするには、育成(成長)時間をコントロールすることで行った((a)30分、(b)5分。なお、前記(実験7)で用いた単結晶は2時間。)。なお、大きく成長したものは、超音波で破壊したり、ピンセットで劈開することで細く小さくした。
【0066】
それぞれのフタロシアニン分子の単結晶に対して、上記(実験7)と同様の条件で、真空蒸着を行った。得られたフラーレン分子の結晶グレインの様子を表すSEM観察写真を図8(a)および(b)に示す。図8(a)は、結晶サイズが約1μmの単結晶(a)のSEM観察写真(2500倍)であり、図8(b)は、結晶サイズが約0.05μmの単結晶(b)のSEM観察写真(2000倍)である。
【0067】
図8(a)のSEM観察写真では、鉄フタロシアニン単結晶を覆い隠す(取り囲む)ようにフラーレン分子の結晶グレインが成長し、図8(b)のSEM観察写真では、細いフタロシアニン単結晶(写真略中央の薄い針状の白い物体)を軸に、略垂直方向に平板状の結晶グレインが成長している。明らかに、上記(実験7)の結果とは異なった成長形態を示している。
【0068】
このメカニズムに関して、定かでは無いが、テンプレートとして鉄フタロシアニン単結晶を用いた場合、その結晶サイズにより、得られるフラーレン分子の結晶グレインの結晶構造が変化することが、(実験7)および(実験8)からわかる。すなわち、テンプレートとして用いるフタロシアニン分子の単結晶における、長軸方向に直交する断面の径を調整することにより、選択的に付着させるフラーレン分子の結晶形態を、目的等に応じて適宜制御することできることがわかる。
【0069】
(実験9)
次に、鉄フタロシアニン結晶をテンプレートとして利用して、微小なフラーレン結晶を用いたフラーレンデバイス(フラーレン−フタロシアニン複合体FET)を製造する実験を行った。
【0070】
まず、基板Aの表面に、結晶サイズ(針状結晶の太さ)約200nmの鉄フタロシアニン結晶をテンプレートとして配置した。具体的には、顕微鏡の視野の中で、XYZ方向に微粗動のできるマイクロマニピュレータで結晶をつかみ採り、基板上の所定の位置・方向となるように配置した。
【0071】
次に、矩形状のAu/Ti電極(上層:厚さ15nmのAu層、下層:厚さ5nmのTi層)を2つ、一辺が平行に約2.5μm離間して対向し、かつ、両電極の間隙からテンプレートとしての前記鉄フタロシアニン結晶が表出するように、前記鉄フタロシアニン結晶の両端を覆う状態で形成した。
【0072】
より具体的には、基板Aの表面全面に前記鉄フタロシアニン結晶の上からレジストを形成し、前記Au/Ti電極が形成されるべき領域に光を照射して前記レジストを現像して、前記Au/Ti電極が形成されるべき領域のみが開口したマスク状のレジストとした。そして、その上からTi層、次いでAu層を蒸着した上で前記レジストをリフトオフして、目的のAu/Ti電極を形成した。この段階では、基板Aの表面に前記鉄フタロシアニン結晶が載置され、その上に、前記鉄フタロシアニン結晶の中途のみが露出した状態で、Au/Ti電極が形成されている。前記鉄フタロシアニン結晶は、Au/Ti電極によって固定された状態となっている。
【0073】
前記鉄フタロシアニン結晶における露出した部位をターゲットとして、フラーレン分子を蒸着した。蒸着後の状態のSEM観察写真(5000倍)を図9に示す。
図9に示すように、前記鉄フタロシアニン結晶に対して、位置選択的にフラーレン分子の結晶グレインが形成されていることがわかる。なお、図9に示すように、Au/Ti電極に覆われている前記鉄フタロシアニン結晶が存在する部位にも位置選択的にフラーレン分子の結晶グレインが形成されているが、当該部位は、Au/Ti電極に亀裂等の欠陥が生じて、前記鉄フタロシアニン結晶がテンプレートとして機能しているものと推測される。
【0074】
本実験では、フタロシアニン結晶をテンプレートとして用いることにより、デバイスの機能部位に対して、フラーレン単結晶を位置選択的に成長させることができることが認められる。フタロシアニン分子の単結晶の育成は、比較的簡単であることから、その細さや長さ等を適宜コントロールすることにより、様々なデバイス形態に対してテンプレートとして利用できる。さらに、フタロシアニン結晶上に形成されるフラーレン分子の結晶は、エピタキシャル成長することから、フラーレン分子の結晶方位を特定したデバイス特性の制御も期待できる。
【0075】
図9のSEM観察写真からは、対向する2つのAu/Ti電極をソースおよびドレイン電極とし、対向する2つのAu/Ti電極を橋渡しするように、前記鉄フタロシアニン結晶およびフラーレン分子の結晶からなる複合体がデバイスの機能部位として形成され、かつ、基板自体(より正確には、Au/Ti電極が配置された面と、熱酸化膜であるSiO2層を介して裏面側となるSi層)をゲート電極とする、微小なフラーレン−フタロシアニン複合体FETが構成されていることがわかる。
【0076】
得られたフラーレン−フタロシアニン複合体FETについて、200Kの環境下での電気特性を評価した。図10(a)および(b)に、その電気特性の結果をグラフにて示す。図10(a)は、縦軸をソース−ドレイン間電流、横軸をソース−ドレイン間電圧として、ゲート電圧を−10Vから30Vの間で10V刻みで変化させて測定された電流−電圧特性をプロットしたものであり、凡例はゲート電圧のプロット記号を示すものである。一方、図10(b)は、縦軸をソース−ドレイン間電流、横軸をゲート電圧として、電流−電圧特性をプロットしたものである。
【0077】
これらグラフから、200Kもの温度においても、本実験で得られたフラーレン−フタロシアニン複合体FETは、n型半導体特性を有するフラーレンFETとして機能することがわかる。鉄フタロシアニン単結晶を含まない、フラーレン分子の結晶のみのFET(例えば、前記(実験5)で得られたフラーレンFETデバイス)とは異なる特性を示していることもわかる。
【0078】
さらに、本実験で得られた鉄フタロシアニン単結晶を含むフラーレン−フタロシアニン複合体FETと、鉄フタロシアニン単結晶を含まない、フラーレン分子の結晶のみのFET(具体的には、前記(実験5)で得られたフラーレンFET)との、電気伝導における温度依存性について比較試験を行った。このとき、ゲート電圧はゼロボルト(Vg=0)で試験を行った。結果を図11にグラフにて示す。図11のグラフは、縦軸をソース−ドレイン間電流、横軸を動作時の温度(1000/T(K-1))として、プロットしたものである。
【0079】
図11のグラフから、鉄フタロシアニン単結晶を含まない、フラーレン分子の結晶のみのFET(実験5)よりも、鉄フタロシアニン単結晶を含むフラーレン−フタロシアニン複合体FET(本実験)の方が、電流をよく流すことがわかる。
【0080】
250Kよりも低温では、双方ともに直線的な温度依存性を示し、熱活性的な電気伝導モデルを適用することができる。その傾き(Arrheniusプロットにおける傾き)から活性化エネルギーをそれぞれ求めると、0.32eV((実験5)のフラーレンのみのFET)、および0.19eV(本実験のフタロシアニン−フラーレン複合体FET)であり、それら電気伝導には異なる特性のキャリア(例えばトラップレベルが異なる)が関与している。このキャリアは、フタロシアニン単結晶(p型)とフラーレン分子の結晶(n型)とのpn接合界面において電荷交換されたキャリアである。その活性化エネルギーの値は、(実験5)のフラーレンのみのFET構造において、18Vものゲート電圧を印加した時に発生するキャリアの活性化エネルギーに等しく、良質なp−n接合界面が形成されていることがわかる。
【0081】
本発明によるこの良好なp−n接合を利用することで、極めて高い特性を発揮し得るデバイスとして、太陽電池(Solar−Cell)がある。光照射時に、それら接合界面では高い電荷分離特性を示すことが報告されている。従来、太陽電池の構成としては、蒸着による多層薄膜が使用されてきたが、本発明により得られる単結晶面の接合を用いれば、より高いデバイス特性の太陽電池を容易に得ることができる。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、フラーレン分子ないしその結晶を基板上にデバイスの構成要素として含むフラーレンデバイスであって、大気中での構造劣化や酸素吸着等による品質低下を抑制し、高品質のものが得られるフラーレンデバイスの製造方法、およびその製造方法により得られる高品質のフラーレンデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (実験1)により得られたフラーレン薄膜(集合体ないし結晶)の走査電子顕微鏡(SEM)観察写真(20000倍)であり、(a)は基板温度300K、(b)は基板温度438K、(c)は基板温度473K、(d)は基板温度498Kの条件のものである。
【図2】 (実験2)により得られたフラーレン分子の結晶グレインのSEM観察写真(6700倍)である。
【図3】 (実験4)により得られたフラーレン分子の結晶グレインのSEM観察写真(10000倍)である。
【図4】 (実験5)により得られたフラーレン分子の結晶グレインのSEM観察写真(20000倍)である。
【図5】 (実験5)により得られたフラーレンFETについて、200Kの環境下での電気特性を評価した結果を示すグラフであり、(a)は、縦軸をソース−ドレイン間電流、横軸をソース−ドレイン間電圧として、ゲート電圧を−10Vから30Vの間で10V刻みで変化させて測定された電流−電圧特性をプロットしたものであり、(b)は、縦軸をソース−ドレイン間電流、横軸をゲート電圧として、電流−電圧特性をプロットしたものである。
【図6】 (実験6)により得られたフラーレン分子の薄膜表面のSEM観察写真(1000倍)である。
【図7】 (実験7)により得られたフラーレン分子の薄膜表面のSEM観察写真であり、(a)は20000倍の写真、(b)はに示されるフラーレン分子の薄膜表面の一部拡大写真(67000倍)である。
【図8】 (実験8)により得られたフラーレン分子の薄膜表面のSEM観察写真であり、(a)は結晶サイズが約1μmの単結晶(a)のSEM観察写真(2500倍)であり、図8(b)は、結晶サイズが約0.05μmの単結晶(b)のSEM観察写真(2000倍)である。
【図9】 (実験9)において、フラーレン分子を蒸着した後の状態のSEM観察写真(5000倍)である。
【図10】 (実験9)により得られたフラーレン−フタロシアニン複合体FETについて、200Kの環境下での電気特性を評価した結果を示すグラフであり、(a)は、縦軸をソース−ドレイン間電流、横軸をソース−ドレイン間電圧として、ゲート電圧を−10Vから30Vの間で10V刻みで変化させて測定された電流−電圧特性をプロットしたものであり、凡例はゲート電圧のプロット記号を示すものである。一方、図10(b)は、縦軸をソース−ドレイン間電流、横軸をゲート電圧として、電流−電圧特性をプロットしたものである。
【図11】 (実験9)で得られた、鉄フタロシアニン単結晶を含むフラーレン−フタロシアニン複合体FETと、(実験5)で得られた、鉄フタロシアニン単結晶を含まない、フラーレン分子の結晶のみのFETとの、電気伝導における温度依存性について行った比較試験の結果を示すグラフである。

Claims (10)

  1. 基板上の所定の位置に、少なくともチタンを含む金属膜の縁端部、または、フタロシアニン分子からなるテンプレートを配置し、該テンプレートに対してフラーレン分子を蒸着させることで、前記所定の位置に選択的にフラーレン分子を付着させることを特徴とするフラーレンデバイスの製造方法。
  2. 前記所定の位置に選択的に付着させるフラーレン分子を結晶化させることを特徴とする請求項1に記載のフラーレンデバイスの製造方法。
  3. 前記テンプレートが、少なくともチタンを含む金属膜の縁端部であり、当該縁端部を前記所定の位置にパターン化して露出させることを特徴とする請求項に記載のフラーレンデバイスの製造方法。
  4. 前記テンプレートが、フタロシアニン分子であり、該フタロシアニン分子が、単結晶であることを特徴とする請求項に記載のフラーレンデバイスの製造方法。
  5. 得られるフラーレンデバイスが特定の結晶方位となるように、フタロシアニン分子の単結晶の結晶方位を揃えることを特徴とする請求項に記載のフラーレンデバイスの製造方法。
  6. 前記フタロシアニン分子の単結晶における長軸方向に直交する断面の径を調整することにより、前記所定の位置に選択的に付着させるフラーレン分子の結晶形態を制御することを特徴とする請求項に記載のフラーレンデバイスの製造方法。
  7. 前記テンプレートが、フタロシアニン分子であり、該フタロシアニン分子が、鉄フタロシアニン、コバルトフタロシアニン、ニッケルフタロシアニンおよび無金属フタロシアニンからなる群より選ばれる少なくとも1種の分子を含むことを特徴とする請求項に記載のフラーレンデバイスの製造方法。
  8. 前記基板上においてフラーレン分子の結晶が一様に成長する温度範囲を超えた高温で基板を加熱させつつ、フラーレン分子を蒸着させ、位置選択的にフラーレン分子を結晶成長させることを特徴とする請求項1に記載のフラーレンデバイスの製造方法。
  9. 基板上の所定の位置に、デバイスの構成要素としてのフラーレン分子が配されてなり、該フラーレン分子が、請求項1に記載のフラーレンデバイスの製造方法により選択的に付着されたものであることを特徴とするフラーレンデバイス。
  10. 電界効果トランジスターとして機能することを特徴とする請求項に記載のフラーレンデバイス。
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