JP4241069B2 - センサ付軸受装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転がり軸受の回転速度や位相状態を検出するセンサを備えたセンサ付軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、図5に示すようなセンサ付軸受装置が知られている。図5に示すように、センサ付軸受装置50において、センサ保持装置40は、センサキャリア41内に測定センサ42を収容している。回転軌道輪43には金属スクリーン44を介してホニックホイール45が保持されている。測定センサ42は、センサ保持装置40における、ホニックホイール45に軸方向で対向する位置に保持されている。
ここで、センサ付軸受装置50において、センサ保持装置40の端部40aが、非回転軌道輪(外輪)46の円周溝46a全周に沿ってビーディング固定されている。また、測定センサ42がセンサキャリア41を介して非回転軌道輪46に保持されている(例えば、特開平7−311212号公報)。
【0003】
また、従来、図6及び図7に示すようなセンサ付軸受装置が知られている。図6及び図7に示すように、センサ付軸受装置60は、内輪51及び外輪52間において保持器53によって転動自在に保持された複数の転動体54と回転センサ55とを備えている。
回転センサ55はセンサハウジング56に収容されている。センサハウジング56の外径面には半径方向に突き出した回り止め部材57が設けられている。また、センサハウジング56は、外輪52の内径部に装着された芯金58に固定されている。回り止め部材57が芯金58を貫通して半径方向に突出され、押さえふた59の切欠溝59a内に配置されている。つまり、センサ付軸受装置60は、センサハウジング56を押さえふた59によって回転不能に保持することで、内輪51の回転に伴う外輪52の連れ回りを阻止する構成である(例えば、特開2002−213472号公報)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−311212号公報
【特許文献2】
特開2002−213472号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した図5に示す従来のセンサ付軸受装置50は、外輪46にクリープが生じた場合や、センサ42に接続された図示しない電線やセンサ保持部材40に外部から周方向に大きな荷重が加わった場合には、外輪46の円周溝46aに嵌合されたセンサ保持装置40の端部40aが、加わった荷重によって外輪46に対して周方向に移動することがあった。すると、この移動によるセンサ位置のずれに起因して、測定センサ42の出力信号が乱れる可能性があった。
【0006】
また、図6及び図7に示す従来のセンサ付軸受装置60においては、センサハウジング56に外部から周方向に大きな荷重が加わった場合に、センサハウジング56が加わった荷重によって外輪52に対して周方向に移動する恐れがあった。その場合、上記のセンサ付軸受装置50の場合と同様に、回転センサ55の出力信号が乱れる可能性があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、外部からの荷重によってセンサが固定側軌道輪に対して周方向に移動してセンサの出力信号が乱れることを防止できるセンサ付軸受装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、複数の転動体が一対の軌道輪間に転動自在に組み込まれてなる転がり軸受において、支持する回転軸の状態又は軸受の状態を検出するセンサと、固定側軌道輪の軸方向端部に固定された環状のセンサカバーと、前記センサカバーの内方に固定され、前記センサを内方に保持する環状のセンハウジングと、前記固定側軌道輪における内径面又は外径面の周方向に沿って前記固定側軌道輪の軸心Oに対し偏心して一様でない深さの底部を有して形成される溝と、を備え、前記センサカバーが、前記溝に加締められることにより前記固定側軌道輪に対して前記周方向に移動することなく固定されることを特徴とするセンサ付軸受装置によって達成される。
上記のセンサ付軸受装置は、固定側軌道輪の溝が周方向に一様でない深さを有するため、センサカバーの加締められた箇所が溝に沿って周方向にずれることが規制される。このため、例えば、外輪にクリープが生じた場合やセンサカバーやセンサに接続された電線に過大な荷重が加わった場合でも、センサカバーが固定側軌道輪に対して周方向に移動することを確実に防止することができる。したがって、センサカバーが固定側軌道輪に対して周方向に移動してセンサの出力信号が乱れることを防止することができる。
【0009】
また、上記センサ付軸受装置は、前記溝が、前記固定側軌道輪における内径面又は外径面の周方向に沿って前記固定側軌道輪の軸心Oに対して上側では浅く、下側では深くなるような一様でない深さの底部を有し、前記センサカバーの先端部が、前記溝に嵌合し、径方向外側から加締められることにより前記固定側軌道輪に対して周方向に移動することなく固定される。
【0010】
さらに、上記センサ付軸受装置は、前記溝が、前記固定側軌道輪における内径面又は外径面の周方向に沿って前記固定側軌道輪の軸心Oと同心となるように形成される底部を有し、且つ、前記底部に他の部位より深い凹状部が設けられて、前記センサカバーの先端部が、前記凹状部近傍のみに嵌合し、径方向外側から加締められることにより前記固定側軌道輪に対して周方向に移動することなく固定される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明にかかるセンサ付軸受装置の第1実施形態を示す断面図であり、図2は、図1のセンサ付軸受装置の外輪(固定側軌道輪)を示す断面図である。
図1に示すように、センサ付軸受装置10は、転がり軸受10aと、センサ保持装置20とで概略構成されている。転がり軸受10aは、保持器14にそれぞれ保持された複数の転動体11を、可動側軌道輪である内輪12及び固定側軌道輪である外輪13間に組み込まれて構成される。センサ付軸受装置10における軸方向の一方の端部(図1中、右側端部)側には、センサ保持装置20が設けられる。
【0012】
センサ保持装置20は、支持する回転軸の状態又は軸受の状態を検出するセンサ22と、転がり軸受10aの外輪13の軸方向端部に固定された環状のセンサカバー26と、センサカバー26の内方に固定され、センサ22を内方に保持する環状のセンサハウジング21とを備えている。また、センサ保持装置20は、配線によってセンサ22に接続された回路基板23を有している。
【0013】
内輪(可動側軌道輪)12の外径面端部12aには、磁性材からなる芯金24が圧入又は加締め嵌合されている。この芯金24にはエンコーダ(多極マグネット)25が固定されている。エンコーダ25は、センサ22と径方向に対向するようにセンサカバー26内に収容されている。センセ22は、センサハウジング21の周方向における所定の位置に設けられたセンサ取付溝(図示しない)に嵌合されることで固定される。
【0014】
センサハウジング21には、複数の位置決めピン27が、環状方向に所定の間隔をあけて、それぞれ軸方向に沿って突設されている。各位置決めピン27は、センサカバー26に穿設された対応する嵌合孔26dにそれぞれ嵌挿され、各嵌合孔26dを貫通する。これにより、センサカバー26とセンサハウジング21とが位置決めされるとともに、貫通した各位置決めピン27の先端部(図1中、右端部)がそれぞれ塑性変形され、センサカバー26とセンサハウジング21とが固定される。
【0015】
回路基板23には、センサハウジング21にセンサカバーを取り付けた状態で、位置決めピン27と対応する位置に、貫通孔23aが設けられている。図1に示すように、回路基板23は、センサハウジング21の位置決めピン27を貫通孔23aに貫通させることで、センサカバー26とセンサハウジング21との間に挟持される。なお、図示しないが、回路基板23には、センサ22による検出信号を処理する電子回路が実装されている。
【0016】
上記構成のように、エンコーダ25は回転側軌道輪である内輪12と一体的に回転する。センサ22は、エンコーダ25の回転方向の移動を検出可能な位置検出用ホールIC及び回転数用ホールICからなる。また、位置検出用ホールIC及び回転数用ホールICを設ける代りに、2つのホールICが所定の角度を持って取り付けられている構成としてもよい。この構成において、2つのホールICの角度は出力波形の位相が電気角で90°になるように設置するのが好ましい。
【0017】
なお、上記センサ保持装置20においては、速度センサが構成されているが、これに限らず、温度センサ又は振動センサ等、他のセンサとして構成することもできる。
【0018】
センサカバー26は、例えば磁性材である金属板を板金加工して成形されており、内方にセンサ22を収容可能な環状部26aと、環状部26aの軸方向一端側(図1中、左側)に設けられたフランジ部26bと、環状部26aの軸方向他端側(図1中、右側)に設けられた側面部26cとから構成されている。
【0019】
外輪13の外径面における軸方向端部13aには、外径面周方向にそって連通する溝15が形成されている。
センサカバー26は、フランジ部26bを外輪13の溝15に径方向外方から加締めることにより、外輪13に固定されている。つまり、本実施形態のセンサ付軸受装置10において、センサ保持装置20は、センサカバー26を溝15に加締めることで転がり軸受10aに固定されている。
【0020】
図2に示すように、溝15は、軸方向外側(図2における右側)に外輪13の軸心と同心に形成された同心面15aと、外輪13の軸心Oに対して図2中下側に所定量偏心された底部15bとを備える。ここで、底部15bは、外輪13の軸心Oに対して偏心するように形成され、外輪13の周方向において一様でない深さを有しており、図2中上側では浅く、図2中下側では深くなっている。
【0021】
溝15の同心面15aには、フランジ部26bの内周面が係合され、かつ、溝15の底部15bには、フランジ部26bの先端部(図1中、左端部)が嵌合される。こうすれば、溝15の底部15bが、外輪13の軸心Oに対して所定量偏心しているため、溝15に嵌合された箇所が溝15に沿って外輪13の周方向に移動することが規制される。したがって、センサカバー26が外輪13に対して周方向に移動することを防止することができる。
【0022】
つまり、本実施形態のセンサ付軸受装置10は、外輪13にクリープが生じた場合やセンサ保持装置20やセンサカバー26に接続された電線に過大な荷重が加わった場合に、センサカバー26が外輪(固定側軌道輪)13に対して回転方向に移動して、センサ22の出力信号が乱れることを確実に防止することができる。
【0023】
図3は、本発明にかかるセンサ付軸受装置の第2実施形態における外輪(固定側軌道輪)を示す側面図であり、図4は、図3に示すセンサ付軸受装置の外輪の拡大断面図である。なお、以下に説明する実施形態において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
【0024】
図3及び図4を参照すると、本実施形態のセンサ付軸受装置の外輪33において、溝35の底部35aが、外輪33の軸心と同心に形成され、且つ、底部35aにおける所定箇所(本実施形態においては図3中上方部分)には、底部35aの他の部位より深い凹状部35bが設けられる。言い換えれば、本実施形態においては、底部35aに凹状部35bが設けられることによって、溝35が外輪33の周方向に一様でない深さを有するように構成されている。
その他の構成及び作用については、上記第1実施形態と同様である。
【0025】
なお、外輪33の溝35の凹状部35bは、図3のように1箇所に限られない。例えば、凹状部は、外輪33の周方向にそれぞれ間隔をあけて複数箇所に設けられていてもよい。また、凹状部35bの形状についても、図3に示すように、断面視において半円状に限らず、種々の形状とすることができる。
【0026】
本実施形態によれば、溝35の底部35aが、外輪33の軸心Oと同心に形成されるとともに、底部35aには他の部位より深い凹状部35bが設けられる。
このため、図1,3及び4に示すように、センサカバー26やセンサ保持部材20に接続された電線に過大な荷重が加わった場合でも、センサカバー26が外輪33に対して回転方向にずれることが規制されることで、センサ出力信号の乱れ等を防止することができる。
【0027】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良などが可能である。
上記各実施形態において、外輪13,33の溝15,35の底部15b,35aを、多角形状、うねり形状、又は楕円形状等、少なくとも一部が真円でない形状に形成してもよい。こうすれば、同様に、溝15,35を外輪13,33の周方向に一様でない深さとすることができ、上述した各実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0028】
上記各実施形態では、センサカバー26のフランジ部26bを、必ずしも全周に渡って加締める必要はなく、例えば、溝15,35の底部15b,35aと径方向に対向する部分を含めて2箇所以上を加締める構成としてもよい。
また、上記第2実施形態において、センサカバー26のフランジ部26bと外輪33の溝35の同心面35cとの間に締め代を与えて外輪33とセンサカバー26を固定させ、溝35の凹状部35b近傍のみ加締める構成としてもよい。
【0029】
さらに、上記各実施形態では外輪13,33の外径側にセンサカバー26を取り付ける例として説明したが、外輪13,33の内径側にセンサカバー26を取り付けるように構成することもできる。このとき、溝15、35を外輪13,33の内径側に設ける。また、内輪12が固定側軌道輪である場合には、内輪12の外径側又は内径側にセンサカバー26を取り付ける構成とする。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、外部からの荷重によってセンサが固定側軌道輪に対して周方向に移動してセンサの出力信号が乱れることを防止できるセンサ付軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるセンサ付軸受装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】図1のセンサ付軸受装置の外輪(固定側軌道輪)を示す断面図である。
【図3】本発明にかかるセンサ付軸受装置の第2実施形態において、外輪(固定側軌道輪)を示す側面図である。
【図4】図3に示す外輪の拡大断面図である。
【図5】従来のセンサ付軸受装置を示す要部断面図である。
【図6】従来のセンサ付軸受装置を示す断面図である。
【図7】図6に示すセンサ付軸受装置の拡大断面図である。
【符号の説明】
10 センサ付軸受装置
11 転動体
12 可動側軌道輪(内輪)
13、33 固定側軌道輪(外輪)
14 保持器
15、35 溝
15a 同心面
15b 底部
20 センサ保持装置
21 センサハウジング
22 センサ
23 回路基板
24 芯金
25 エンコーダ
26 センサカバー
Claims (3)
- 複数の転動体が一対の軌道輪間に転動自在に組み込まれてなる転がり軸受において、
支持する回転軸の状態又は軸受の状態を検出するセンサと、
固定側軌道輪の軸方向端部に固定された環状のセンサカバーと、
前記センサカバーの内方に固定され、前記センサを内方に保持する環状のセンハウジングと、
前記固定側軌道輪における内径面又は外径面の周方向に沿って前記固定側軌道輪の軸心Oに対し偏心して一様でない深さの底部を有して形成される溝と、を備え、
前記センサカバーが、前記溝に加締められることにより前記固定側軌道輪に対して周方向に移動することなく固定されることを特徴とするセンサ付軸受装置。 - 前記溝は、前記固定側軌道輪における内径面又は外径面の周方向に沿って前記固定側軌道輪の軸心Oに対して上側では浅く、下側では深くなるような一様でない深さの底部を有し、
前記センサカバーの先端部が、前記溝に嵌合し、径方向外側から加締められることにより前記固定側軌道輪に対して周方向に移動することなく固定されることを特徴とする請求項1に記載のセンサ付軸受装置。 - 前記溝は、前記固定側軌道輪における内径面又は外径面の周方向に沿って前記固定側軌道輪の軸心Oと同心となるように形成される底部を有し、且つ、前記底部に他の部位より深い凹状部が設けられて、
前記センサカバーの先端部が、前記凹状部近傍のみに嵌合し、径方向外側から加締められることにより前記固定側軌道輪に対して周方向に移動することなく固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ付軸受装置。
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