JP4240865B2 - 難燃性フィルタ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力発電所等の原子力施設における放射性気体廃棄物の処理に使用して好適な難燃性フィルタ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、放射性気体廃棄物には、塵埃に付着したダスト状のものとガス状のものとがある。ダスト状の放射性気体廃棄物は、プレフィルタ、中性能エアフィルタ及び高性能エアフィルタ(high efficency particulate air filter ;HEPA filter)を通じて処理される。
【0003】
高性能エアフィルタは0.3μm(ミクロン)の粒子に対して99.97%以上の除去効率を持ち、濾過面積を大きくするためアコーディオン形にフィルタを折り曲げ、濾材と濾材の間には波形のセパレータ(アルミ等が用いられている)を挟み、平面形フィルタの濾過面積をみかけ断面の60倍程度大きくしている。また、高温、多湿にも耐えるものも製品化されている(参考文献:日刊工業新聞社、書籍名:放射線防護の基礎、著者:辻本 忠/草間 朋子)。
【0004】
さらに濾過面積をみかけ断面より大きくするために特許第2665691号では円筒形フィルタが開示されている。
この特許発明では、濾過面積を大きくするためアコーディオン形にフィルタを折り曲げ(本明細書では、これをプリーツ状と称する)、このプリーツ状に折り込んだ濾材を円筒形に丸め、その円筒の内部空洞側から円筒外周方向に空気を流す構成をとっている(又はその逆方向に流す方法も一般に行われている)。さらに、内壁形状は通常の円筒形ではなく、空気流入口の開口面積を大きくし空気出口に向かって開口面積を小さくした円錐台形の形にしている。また、開示されているフィルタの濾材補強材としては金網が使用されている。
一方、濾紙についての特徴は記載されていない。目的が異なると思われるがプリーツ状の濾紙を円形にしたフィルタ製品は一般市場で見かける。
【0005】
高性能を有する難燃性フィルタは、0.3μm(ミクロン)の粒子に対しては99.97%以上の除去効率を必要とする。この高性能を保証する濾紙は、きめ細かで柔らかい。この濾紙をプリーツ状に仕上げて円筒形に加工するには、濾紙を補強することが必要であり、また、その補強材は網状にすることが必要であった。金網を使用すると金網によって濾紙は破損することがある。
【0006】
小さい面積で大容量にしたいという要求を満たすためにフィルタの外形は平面形から円筒形になるが、プリーツ状にした濾材の鋭角同志が接触するという問題があった。また、プリーツの間隔を保持することが難しく、濾紙自体柔らかいので形を崩して埋没する恐れがあった。濾紙を表裏から補強することが必要となり、それには特定の弾性を有する素材の選択と、網状に補強する際の線径と粒子との組み合わせの設定が問題であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術が有している上述した問題点を解決するためには、きめ細かで柔らかい濾紙をプリーツ状に仕上げた上で円形に加工することが必要であり、そのために補強材が必要である。しかしながら、補強素材によっては濾紙を破壊することがあり、濾紙を破壊しない補強素材と難燃性を兼ねた素材が必要である。補強素材としては、特定の弾性があって、網状に補強する際の、線径と粒子との組み合わせが行い易い素材であること、また、プリーツ状に加工し易く、型崩れの生じない、難燃性であることが必要であるが、このように素材に対する選定には問題があった。
【0008】
また、濾紙には、MIL−STD MIL−F−51079Cに規定された高性能空気清浄フィルタ用紙であるとともに難燃性を必要とする。
このような種々の要求と制約のもと、本発明は、難燃性と強度、及び弾性があって、放射性気体廃棄物の処理に適した難燃性フィルタとその製造方法を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するフィルタとして、本発明は、プリーツ状のガラス濾紙で構成した円筒形フィルタの内部空洞部から同濾紙を通過させて外周方向に気体を流して粉塵を除去するフィルタにおいて、0.3μmのフタル酸ジオクチル粒子の捕獲率が面風速5.33cm/秒の条件下で99.9%以上の性質を示すガラス濾紙を、網状にしたフッソ樹脂のエチレン/テトラフルオロエチレン(以下ETFEと称する)共重合体で挟んで表裏から押圧補強したものをプリーツ状に折り込み円筒形とした円筒形フィルタ、及び金属製、好ましくはSUS304製で、中心に孔を設けた蓋と孔を設けない蓋とを前記円筒形フィルタの端部に接着した難燃性フィルタを提供する。
【0010】
本発明のフィルタは、MIL規格を満たす、通常HEPAと呼ばれているガラス繊維濾紙を採用していて難燃性であり、しかも、原子力設備から出る放射性気体廃棄物の処理に高温で多湿な悪条件のもとで用いても高性能であって、安全である。
【0011】
また、本発明によるフィルタは、ETFE共重合体を網状にした補強素材でガラス濾紙の両面を挟んだもので円筒形フィルタが構成されているので、補強素材には弾性があって、これでガラス濾紙の両側から押圧して補強してもガラス濾紙を破壊することがない。
また、網状にしたETFE共重合体で補強したガラス濾紙はプリーツ状に加工し易く、また、型崩れを起こすことがない。
【0012】
本発明の難燃性フィルタに用いる網状にしたETFE共重合体としては、線径0.12〜0.25mm、粒度20〜60メッシュの組み合わせとしたものを使用すると、柔らかいガラス濾紙を両面から最適状態で補強することができる。
【0013】
また、本発明は、前記課題を解決するフィルタの製造方法として、粉塵を捕獲する濾紙と同濾紙の表裏を補強材で覆いプリーツ状に成形したフィルタの製造方法において、リールスタンドにガラス濾紙と網状にしたETFE共重合体とを供給準備する工程と、前記網状にしたETFE共重合体を用いて前記ガラス濾紙を表裏から挟みスリッタ機械を通して押圧補強する工程と、前記押圧補強した素材をプリーツ状に折り込んで鋭角としたフィルタの先端を加熱してレシプロ折りする工程と、前記フィルタの円の大きさに合わせた折り込み数に裁断し同フィルタの裁断面を2液性エポキシ樹脂を用いて円筒形に接着加工する工程とによって円筒形フィルタを構成する難燃性フィルタの製造方法を提供する。
【0014】
本発明のこの製造方法によれば、網状にしたETFE共重合体で表裏両面から押圧補強したガラス濾紙をプリーツ状に折り込んで、その折り込みによって鋭角とされた先端を加熱してレシプロ折りすることにより型崩れしない状態にして前記した本発明の難燃性フィルタを連続して工業的に製造することができる。
【0015】
このレシプロ折り工程における加熱は、100〜120°Cで行うことによって、プリーツ状に折り込まれて形勢された鋭角の先端を良好に保持できるものとすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す実施の形態により、本発明を詳細に説明する。まず、難燃性フィルタの製造方法から説明する。図1は、難燃性フィルタの製造装置の概略図である。
1は、リールスタンドで、このリールスタンド1は、フィルタを補強するためフィルタの外周に用いる難燃性を有した素材を巻き込んだリールスタンドである。該リールスタンド1に巻き込まれている素材はフッソ樹脂でETFE共重合体製である。10は、リールスタンド1から巻き戻されたETFE共重合体を示している。
【0017】
該樹脂は溶融加工ができて、しかも機械的強靱さをもったフッソ樹脂として開発された。広い範囲にわたる組成のETFE共重合体は早くから研究されていたが、ストレスクラッキングを起こすため、長い間工業化されなかったものである。この問題点は第3成分を共重合することによって解決されたものである。
【0018】
3成分共重合は水中で乳化重合、縣濁重合いずれでも用いられる。ETFEはエチレンとテトラフルオロエチレンの繰り返し単位が交互する交互重合体であって、交互構造は75%以上である。エチレン/テトラフルオロエチレンの1対1共重合物はポリフッソ化ビニリデンの異性体、すなわちフッ化ビニリデンが重合するときに頭一頭、尾一尾付加した構造をとるが、ポリフッソ化ビニリデンよりはるかに高い融点を示し、また、誘電率も低い。
【0019】
ETFE樹脂の融点は、エチレンとテトラフルオロエチレンのモル比、交互性の度合い、及び第3成分の量に影響される。典型的な試料では270℃の融点を示し、交互性100%では318°Cと推定されている。ETFEはアジピン酸イソプチルに230°C以上で溶解する。
濾紙を補強するETFE10の最適補強寸法として、▲1▼線径は0.12〜0.25(mm)ミリメートル、▲2▼粒度は20〜60メッシュとする組み合わせとした。
【0020】
2は、リールスタンドで、フィルタの本体となる素材、すなわちガラス濾紙20を巻き込んだリールスタンドである。ガラス濾紙20はガラス繊維製のいわゆる高性能空気清浄フィルタ用紙である。ガラス濾紙20は、MIL−STD MIL−F−51079Cに規定されており、0.3μm(ミクロン)のフタル酸ジオクチル粒子(略語:DOP粒子)の捕獲率が面風速5.33cm/秒の条件下で99.97%以上の性質を示し、通常HEPAフィルタと呼ばれているガラス繊維濾紙であると規定されている。このようなガラス濾紙20を難燃性フィルタの濾紙として採用する。
【0021】
リールスタンド2から繰り出すガラス濾紙20を中心にして、該ガラス濾紙20を挟むように表面、裏面からリールスタンド1からETFE10が繰り出される。ガラス濾紙20とETFE10とは次工程のスリッタ機械3で押圧される。
【0022】
スリッタ機械3では、ガラス濾紙20を中心にして表裏両面をETFE10で挟みスリッタ機械3を通過させると一枚の平面形フィルタができる。押圧された平面形フィルタは次工程のレシプロ折り機械4でレシプロ折りされる。
レシプロ折り機械4では、濾過面積を大きくするためフィルタをアコーディオン形、すなわち、プリーツ状に折り込む。
プリーツ状に折り込まれた鋭角の先端部分は、鋭角を保持するため加熱部で加熱される。加熱部で加熱する最適温度は100〜120°Cである。
【0023】
加熱の工程が終了すると、円筒形とするに必要な折り込み数量に合わせてフィルタの裁断を行い、裁断面を2液性エポキシ樹脂を用いて円筒形に接着加工する。
円筒形に接着加工をした円筒形フィルタ31の両端部に、図3に示すように、材質SUS304金属製の蓋を被せる。金属の蓋は円筒形フィルタ31の円と同じ大きさで中心に孔34を開けた蓋33と、全面に孔のない蓋32との2種の蓋からなり、これを円筒形フィルタ31の上下に2液性エポキシ樹脂を用いて接着加工する。
【0024】
円筒形フィルタ31に金属製の蓋32,33を接着加工して難燃性フィルタ30を完成する。難燃性フィルタ30の完成品は、機械及び器具の部品用プラスチック材料の燃焼試験に関するUL安全規格であるUL94の試験に合格する。
図2は、前記したように得られた本発明のフィルタ素材の断面図である。図2において、10はETFEで、20はガラス濾紙である。
【0025】
図3に示す難燃性フィルタ30の使用方法は、円筒形フィルタ31の蓋の孔34の開いた方から気体を流入させ円筒形フィルタ31内部空洞からプリーツ状のガラス濾紙を通過させて円筒形外周方向に気体を流して、粉塵を捕獲するもである。
【0026】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明が、この実施形態に限定されず、特許請求の範囲に示す本発明の範囲内において、種々の変更、変形を加えてよいことは言うまでもない。
例えば、前記した実施形態では、網状にしたETFE共重合体として、線径0.12〜0.25mm、粒度20〜60メッシュの組み合わせとしたものを使用 しているが、この組合せ以外の組み合わせを採用してもよい。
また、前記した実施形態では、レシプロ折り工程における加熱を、100〜120°Cで行っているが、この温度の範囲外で行うことも差支えない。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、プリーツ状のガラス濾紙で構成した円筒形フィルタの内部空洞部から同濾紙を通過させて外周方向に気体を流して粉塵を除去するフィルタにおいて、0.3μmのフタル酸ジオクチル粒子の捕獲率が面風速5.33cm/秒の条件下で99.9%以上の性質を示し、通常HEPAと呼ばれているガラス濾紙を、網状にしたフッソ樹脂のETFE共重合体で挟んで表裏から補強押圧したものをプリーツ状に折り込み、それを円筒形とした円筒形フィルタ、及び好ましくはSUS304による金属製で中心に孔を設けた蓋と孔を設けない蓋とを前記円筒形フィルタの端部に接着して構成した難燃性フィルタを提供する。
【0028】
このように構成した本発明によるフィルタは、MIL規格を満たすガラス繊維濾紙を採用した難燃性であって、高性能、安全であり、原子力設備から出る高温、多湿状態の放射性気体廃棄物の処理用に好適である。
【0029】
また、本発明によるフィルタは、ETFE共重合体を網状にした補強素材でガラス濾紙の両面を挟んだもので円筒形フィルタが構成されているので、補強素材には弾性があって、これでガラス濾紙の両側から押圧して補強してもガラス濾紙を破壊することがない上、プリーツ状に加工し易く、また、型崩れを起こすことがない。
【0030】
本発明の難燃性フィルタにおいて、網状にしたETFE共重合体として線径0.12〜0.25mm、粒度20〜60メッシュの組み合わせとしたものを使用したものは、柔らかいガラス濾紙が両面から最適状態で補強されたものとなっている。
【0031】
また、本発明は、粉塵を捕獲する濾紙と同濾紙の表裏を補強材で覆いプリーツ状に成形したフィルタの製造方法において、リールスタンドにガラス濾紙と網状にしたETFE共重合体とを供給準備する工程と、前記網状にしたETFE共重合体を用いて前記ガラス濾紙を表裏から挟みスリッタ機械を通して押圧補強する工程と、前記押圧補強した素材をプリーツ状に折り込んで鋭角としたフィルタの先端を加熱してレシプロ折りする工程と、前記フィルタの円の大きさに合わせた折り込み数に裁断し同フィルタの裁断面を2液性エポキシ樹脂を用いて円筒形に接着加工する工程とによって円筒形フィルタを構成する難燃性フィルタの製造方法を提供する。
【0032】
本発明のこの製造方法によれば、網状にしたETFE共重合体で表裏両面から押圧補強したガラス濾紙をプリーツ状に折り込んで、その折り込みによって鋭角とされた先端を加熱してレシプロ折りすることにより型崩れしない状態にした本発明の難燃性フィルタを連続して製造することができる。
【0033】
このレシプロ折り工程における加熱を、100〜120°Cで行う製造方法としたものは、プリーツ状に折り込まれて形勢された鋭角の先端を良好に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による難燃性フィルタの製造装置の1例を示す概略図。
【図2】本発明による難燃性フィルタを構成するフィルタ素材を示す断面図。
【図3】本発明による難燃性フィルタの1例を一部切り欠いて示す斜視図。
【符号の説明】
1 リールスタンド
2 リールスタンド
3 スリッタ機械
4 レシプロ折り機械
5 フィルタ
10 エチレン/テトラフルオロエチレン(ETFE)共重合体
20 ガラス濾紙
30 難燃性フィルタ
31 円筒形フィルタ
32 蓋
33 蓋
34 孔

Claims (4)

  1. プリーツ状のガラス濾紙で構成した円筒形フィルタの内部空洞部から同濾紙を通過させて外周方向に気体を流して粉塵を除去するフィルタにおいて、0.3μmのフタル酸ジオクチル粒子の捕獲率が面風速5.33cm/秒の条件下で99.9%以上の性質を示すガラス濾紙を、網状にしたフッソ樹脂のエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体で挟んで表裏から押圧補強したものをプリーツ状に折り込み、それを円筒形とした円筒形フィルタ、及び金属製で中心に孔を設けた蓋と孔を設けない蓋とを前記円筒形フィルタの端部に接着したことを特徴とする難燃性フィルタ。
  2. 前記網状のフッソ樹脂のエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体は、線径0.12〜0.25mmと粒度20〜60メッシュの組み合わせとしたことを特徴とする請求項1に記載の難燃性フィルタ。
  3. 粉塵を捕獲する濾紙と同濾紙の表裏を補強材で覆いプリーツ状に成形したフィルタの製造方法において、リールスタンドにガラス濾紙と網状にしたエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体とを供給準備する工程と、前記網状にしたエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体を用いて前記ガラス濾紙を表裏から挟みスリッタ機械を通して押圧補強する工程と、前記押圧補強した素材をプリーツ状に折り込んで鋭角としたフィルタの先端を加熱してレシプロ折りする工程と、前記フィルタの円の大きさに合わせた折り込み数に裁断し同フィルタの裁断面を2液性エポキシ樹脂を用いて円筒形に接着加工する工程とによって円筒形フィルタを構成することを特徴とする難燃性フィルタの製造方法。
  4. 前記フィルタの鋭角を保持するため、前記フィルタの先端を加熱するレシプロ折り工程の温度を100〜120°Cに設定することを特徴とする請求項3に記載の難燃性フィルタの製造方法。
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