JP4239703B2 - 車両用通信システム、及び、車載装置 - Google Patents

車両用通信システム、及び、車載装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車外装置と通信可能な車両用通信システム、及び、その車両用通信システムに用いられる車載装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車載装置としては、通信機能を備えたカーナビゲーション装置などが知られている。このようなカーナビゲーション装置は、無線通信可能な携帯電話機等の通信機器を接続するためのコネクタを備えており、コネクタに接続された通信機器を通じて、例えば、外部の広域ネットワークとしてのインターネットにアクセスし、そのネットワーク内に存在するサーバ装置とデータ通信を行う。また、ハンズフリー機能を備えるカーナビゲーション装置は、カーナビゲーション装置に取り付けられたマイク・スピーカ、コネクタに接続された上記通信機器を用いて、車両乗員に対し音声通話サービスを提供する。
【0003】
このような音声通信やデータ通信は、基本的な通信処理動作を行うハードウェア(通信機器)と、そのハードウェアを制御して得られるデータを用いて利用者に各種サービスを提供するアプリケーションと、の連携動作によって実現されている。現在では一般的に、車載装置に上記アプリケーションを実装し、無線通信可能な携帯電話機等のハードウェア(通信機器)については、コネクタによって車載装置に接続できるようにすることで、上記通信機能の実現が図られている。
【0004】
ところで、このように通信機器をコネクタによる外付け式とするのは、携帯電話機等の通信機器を車両に固定してしまうと、車両の所有者が、通信機器を利用しないにもかかわらず基本料金等の通信料金を支払わなければならなくなったり、車両を貸与した際、他人により通信機器が使用された場合にも、その通信料金を車両の所有者側が負担しなければならなくなるためである。また、通信機器を車両に固定しない理由としては、通信技術の進歩による製品改良のスピードが速く、通信機器の買い替えサイクルが短いことも挙げられる。
【0005】
一方、近年では、コンピュータ技術・通信技術の向上に伴い、車両内にLAN(車載LAN)を構築し、ゲートウェイ装置を介して車外装置と、LAN内の端末(車両用電子制御装置:ECU)とを、通信可能にすることが考えられている。そして、今後、このような車両用通信システムを車両に搭載して、車外装置から最新のプログラムを車載LAN内の端末に提供したり、車両診断を遠隔地から行うことが考えられている。このような場合、通信機器を車載装置としてのゲートウェイ装置から着脱自在にしておくと、通信機器をゲートウェイ装置から外しておくだけで、車外装置とゲートウェイ装置との通信を禁止することができるので、通信を用いて悪意の者が車載LAN内の車両情報を盗んだり、車載LAN内のECUを操作するのを防止することができる。
【0006】
しかしながら、通信機器を車両に固定された車載装置から着脱自在にすると、通信機器が盗難されやすくなる。従って、特許文献1記載の技術などを用いて、通信機器が盗難されないように車載装置や通信機器に工夫を施す必要がある。
【0007】
尚、特許文献1記載の盗難防止システムは、電子機器(通信機器)がマスターユニットに接続された時点で、その電子機器をマスターユニットに登録し、電子機器取り外しの際には、認証が成功した場合にのみ、マスターユニットから電子機器に対し取り外し許可の情報を書き込むことで、マスターユニットからの取り外し許可がない状態で上記登録された電子機器がマスターユニットから取り外された場合、その電子機器を他のマスターユニットにて動作しないようにするものである。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−144970号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術を通信機器に適用すると、通信機器に関しての盗難防止の効果はあるものの、通信機器に接続された車載装置が車載LANに接続されている場合には、車載装置が悪意に操作され、通信機器を通じて車外装置に車載LAN内で取り扱われる車両情報などの重要データが盗難されてしまう可能性がある。また、車載装置が車載LANに接続されていなくともプライバシーに関わる個人情報を車載装置が記憶している場合には、同様に個人情報が盗まれてしまう可能性がある。
【0010】
また、通信機器を車載装置から取り外しておけば、通信機器が存在しないため車載装置から通信によって車両情報が持ち出されたりするのを防止することはできるが、外部から他の通信機器が持ち込まれ、不正に車載装置に接続された場合には、車両情報等の盗難を防止することができなくなる。
【0011】
その他、特許文献1記載の技術では、利用者が手順を間違えてマスターユニットから通信機器を取りはずしてしまった場合には、他のマスターユニットで電子機器が動作しなくなってしまうため、通信機器を頻繁に車載装置から取り外して他人に貸与する場合には、大変不便である。
【0012】
また、車両を他人に貸与する際には、通信機器を車載装置から取り外しておくことで、車載装置から通信によって車両情報が持ち出されたりするのを防止することはできるが、通信機器を車載装置から取り外してしまうと、車外装置との間の通信が完全に行えなくなってしまうため、事故時の緊急通報機能など車両乗員の安全を確保するために必要な通信機能までもが利用不可能となってしまうといった問題がある。
【0013】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、車載装置に対して着脱自在に構成された通信機器の盗難を防止すると共に、通信機器を用いた各種情報の盗難を防止することを目的とする。更には、車両や通信機器の貸与時において、その車両の所有者や通信機器の所有者に不利益が及ばないようにし、車両や通信機器の貸与を気軽にできるようにした車両用通信システム及びそれに用いる車載装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1記載の車両用通信システムでは、通信機器が車載装置の接続部に接続されると、車載装置が、その通信機器を用いて車外装置との間で通信を行う。
【0015】
車載装置は、自身の記憶手段にて、当該車載装置の利用者の識別情報と、その利用者に与えられるべき車載装置の利用権限を表す車載装置利用権限情報と、を利用者毎に記憶している。一方、通信機器は、当該通信機器の利用者の識別情報を、自身の記憶手段にて利用者毎に記憶している。ここで、識別情報としては、パスワードや、利用者の指紋、顔などの画像情報、利用者の声紋情報、その組み合わせからなる情報などが挙げられる。
【0016】
通信機器が接続部に接続されると、車載装置は、識別情報取得手段にて当該車載装置の利用者から利用者の識別情報を取得し、その利用者の識別情報と、通信機器の記憶手段から取得した識別情報とを、第一の利用者判別手段にて照合し、その照合結果に基づいて、当該車載装置の利用者が通信機器の利用を許可された正当な利用者であるか否か判断する。具体的には例えば、照合した結果、識別情報取得手段が取得した識別情報と、通信機器の記憶手段に記憶された識別情報とが一致すると、当該車載装置の利用者が通信機器の利用を許可された正当な利用者であると判断する。
【0017】
一方、車載装置は、識別情報取得手段にて当該車載装置の利用者から取得したその利用者の識別情報と、車載装置の記憶手段が記憶する識別情報とを、第二の利用者判別手段にて照合し、その照合結果に基づいて、当該車載装置の利用者が車載装置の利用を許可された正当な利用者であるか否か判断する。
【0018】
そして、第一及び第二の利用者判別手段により利用者が正当な利用者であると判断されると、車載装置は、車載装置利用権限情報に基づき、機能有効化手段にて、通信機器を用いた車載装置の各種通信機能のうち、車載装置の利用者に与えられるべき利用権限に対応した通信機能を利用可能にする。
【0019】
このように構成された請求項1記載の車両用通信システムによれば、車載装置が、通信機器及び車載装置の両装置に記憶された識別情報に基づいて、利用者が正当な利用者か否か判断するため、不正に車載装置及び通信機器が利用されて、車載装置に記憶された車両情報などの個人情報が通信機器を通じて外部に流出するのを防止することができる。また、本発明によれば、正当な利用者しか通信機器を利用することができないため、不正に車載装置から通信機器が取り外され盗難されるのを防止することができる。
【0020】
尚、請求項1記載の車両用通信システムにおいては、通信機器にかかる機能についてなんら制限することなく、その機能を利用可能としてもよいが、利用者に応じて通信機器にかかる機能を制限できるようにすると一層好ましい。このような機能制限を行うことができるようにするためには、請求項2のように、通信機器の記憶手段に、通信機器の利用者に与えられるべき通信機器の利用権限を表す通信機器利用権限情報、を利用者毎に記憶させるとよい。
【0021】
このように構成された請求項2記載の車両用通信システムでは、第一及び第二の利用者判別手段により利用者が正当な利用者であると判断されると、車載装置の機能有効化手段が、通信機器利用権限情報及び車載装置利用権限情報に基づき、車載装置の利用者に与えられるべき通信機器の利用権限に対応する通信機器の機能を用いた当該車載装置の通信機能のうち、車載装置の利用者に与えられるべき車載装置の利用権限に対応した通信機能を利用可能にする。
【0022】
請求項2記載の車両用通信システムによれば、車載装置にかかる機能だけでなく、通信機器にかかる機能についても、利用者毎に、その機能の一部利用を制限することができるため、一部機能を利用すると通信機器に対して課金がなされる場合などには特に便利である。
【0023】
例えば、通信機器が、課金対象の通信機能、非課金対象の通信機能、など複数種類の機能を有している場合、通信機器の所有者以外の者が課金対象の通信機能を利用すると、通信機器の所有者は自身が課金対象の通信機能を利用していないのにもかかわらず、それにかかる料金を支払わなければならなくなる。このような場合、通信機器の所有者に対しては、通信機能の全てが利用できるように権限を与え、所有者以外の者に対しては、非課金対象の通信機能しか利用できないように権限を与えると、通信機器の貸与などにより所有者に不利益が及ぶのを防止することができ、通信機器の貸与などが気軽に行える。
【0024】
また、通信機器が、データ通信機能、音声通信機能などを有している場合に、データ通信機能を、利用者に応じて制限すれば、悪意の利用者によって車載装置からデータが盗難されるのを防止することができる。したがって、通信機器及び車載装置の貸与により所有者に不利益が及ぶのを防止することができ、通信機器及び車載装置の貸与が気軽に行える。
【0025】
尚、通信機器及び車載装置において、同一の利用者については、各装置に同一の識別情報を記憶させるようにしてもよいが、識別情報がパスワードなどである場合には、通信機器及び車載装置における識別情報の一元管理が煩わしい。また識別情報がパスワードである場合に通信機器及び車載装置において同一の識別情報を記憶させておくと、パスワードが悪意の者に知られてしまった場合に、簡単にその者が正当な利用者として通信機器及び車載装置を利用できてしまうので好ましくない。
【0026】
したがって、請求項1,2記載の車両用通信システムは、具体的に請求項3記載のように構成されるとよい。請求項3記載の車両用通信システムでは、識別情報取得手段が、通信機器に対する第一の識別情報と、車載装置に対する第二の識別情報と、を取得する。そして、この車両用通信システムにおける第一の利用者判別手段は、識別情報取得手段が取得した第一の識別情報と、通信機器の記憶手段が記憶する識別情報と、を照合し、第二の利用者判別手段は、識別情報取得手段が取得した第二の識別情報と、車載装置の記憶手段が記憶する識別情報と、を照合する。
【0027】
このように構成された請求項3記載の車両用通信システムによれば、第一及び第二の識別情報を用いて、通信機器及び車載装置の夫々に関し個々に利用者の識別を行うことができるので、悪意の者による不正利用を一層確実に防止することができる。
【0028】
また、識別情報がパスワードである場合には、通信機器や車両(車載装置)を他人に貸与する際に、貸与先の信頼度に応じて異なるパスワードをその貸与先に教えることで、その貸与先の者にパスワードに応じた利用権限を与えることができる。つまり、本発明によれば、通信機器及び車載装置に記憶された識別情報(パスワード)を変更することなく、貸与先の利用者に応じて利用権限を柔軟に変更することができ、通信機器や車両(車載装置)の貸与が気軽に行える。
【0029】
尚、請求項1〜請求項3にかかる発明は、請求項4記載のように、車載装置が車載LAN内の各端末と通信を行う通信手段を備える車両用通信システムに適用されるとよい。車載LAN内では、車両情報などの個人情報や、車両の走行にかかわる重要データが取り扱われるため、不正に車載LAN内の情報が車載装置を用いて取り扱われるとプライバシーやシステム安全上の問題が発生する。一方、本発明(請求項4)記載のように、識別情報を用いて、利用者に応じ車載装置及び通信機器の各機能を制限すれば、車両の所有者に不利益が及ばないようにすることができ、所有者は、車両を貸与する場合に安心して他人にそれを貸与できる。
【0030】
その他、請求項5記載の車載装置は、請求項1記載の車両用通信システムを構成する車載装置である。請求項5記載の車載装置によれば、請求項1記載の車両用通信システムと同様に、車載装置貸与時に貸与先の者に対して利用制限をかけることができ、車載装置内に記憶された個人情報などの重要データの流出等を防止することができる。また、通信機器の盗難を防止することができる。
【0031】
また、請求項6記載の車載装置を用いれば、請求項2記載の車両用通信システムを構築することができ、車載装置にかかる機能だけでなく、通信機器にかかる機能についても、利用者毎に、その機能の一部利用を制限することができる。
【0032】
その他、請求項7記載の車載装置を用いれば、請求項3記載の車両用通信システムを構築することができる。この車載装置では、第一及び第二の識別情報を用いて、通信機器及び車載装置夫々の利用者を識別することができ、悪意の者による車載装置及び通信機器の不正利用を一層確実に防止することができる。
【0033】
また、請求項8記載のように、車載LANに接続され、車載LAN内の各端末と通信を行う通信手段を備える車載装置に対して、請求項5〜請求項7にかかる発明を適用すると、車載LAN内で取り扱われる車両情報などの流出を防止することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例について、図面とともに説明する。図1は、本発明が適用された車両用通信システム1の構成を表すブロック図である。
【0035】
本実施例の車両用通信システム1は、主に、車載装置としての通信ECU10と、車載装置に接続される通信機器としての通信モジュール20と、から構成されている。通信ECU10は、通信モジュール20に対し電気的に接続されるコネクタ11と、当該通信ECU10を統括制御するマイクロコンピュータなどからなる制御部13と、半導体製メモリなどからなり後述する認証情報やパスワード情報、権限情報などを記憶する記憶部15と、車載LAN5に接続され車載LAN5内の各端末との間で通信を行うLANインタフェース部17と、を備える。また、この通信ECU10は、各種情報を車両乗員に表示するための液晶モニタなどからなる表示部18と、車両乗員の操作情報を取得し制御部13に入力する操作部19と、を備える。
【0036】
一方、通信モジュール20は、復変調回路などからなりアンテナ21aを介し無線方式により車外装置3との間で通信を行う無線通信部21と、当該通信モジュール20を統括制御するマイクロコンピュータなどからなる制御部23と、半導体製メモリなどからなり後述する認証情報やパスワード情報、権限情報などを記憶する記憶部25と、上述した通信ECU10のコネクタ11と電気的に接続されるコネクタ27と、を備える。
【0037】
この通信モジュール20の制御部23は、無線通信部21が受信したデータをコネクタ27,11を通じて通信ECU10の制御部13に提供すると共に、通信ECU10の制御部13から送信されてくる送信データをコネクタ11,27を通じて取得し、その送信データを無線通信部21に入力して、無線通信部21に送信データを無線方式で外部の車外装置3に送信させる。
【0038】
ところで、本実施例の通信ECU10の制御部13は、通信モジュール20がコネクタ11に接続されると、記憶部15,25に記憶された認証情報又はパスワード情報を用いて利用者の認証を行う。図2は、通信ECU10の制御部13が起動時に実行する認証処理を表すフローチャートである。
【0039】
認証処理を実行すると、制御部13は、コネクタ11に通信モジュール20が接続されるのを検出するまで待機する(S110)。尚、検出方法は周知技術であるので、ここでは、それについての詳細な説明を省略する。
【0040】
通信モジュール20の接続を検出すると(S110でYes)、制御部13は、処理をS120に移して、通信モジュール20の記憶部25に記憶された認証情報を取得する。この認証情報は、後述するS230で初回認証成功時に通信モジュール20の記憶部25に書き込まれるものである。
【0041】
その後、制御部13は、通信モジュール20から取得した認証情報に基づいて、当該通信ECU10のコネクタ11に接続された通信モジュール20が以前当該通信ECU10にて認証された通信モジュール20であるか否か判断する(S130)。尚具体的に、本実施例では、通信モジュール20の記憶部25に記憶された認証情報と、当該通信ECU10の記憶部15に記憶された認証情報(S235参照)と、を照合することにより、通信モジュール20が以前当該通信ECU10にて認証された通信モジュール20であるか否か判断する。
【0042】
ここで、認証情報が一致しない、若しくは、通信モジュール20の認証情報が空であると、制御部13は、通信モジュール20が以前認証された通信モジュール20ではないと判断し(S130でNo)、表示部18を通じて通信ECU10に対する第一のパスワード及び通信モジュール20に対する第二のパスワードの入力を車両乗員に求める(S140)。この後、制御部13は、車両乗員が操作部19を操作することにより入力した第一及び第二のパスワードを取得する(S145)。
【0043】
その後、制御部13は、当該通信ECU10の記憶部15が記憶するパスワード情報を取得し(S150)、操作部19から入力された第一のパスワードと、記憶部15が記憶する各パスワードとを照合して、第一のパスワードが、予め利用者毎に記憶部15に記憶された複数のパスワードのいずれかと一致するか否か判断する(S160)。
【0044】
図3(a)は、記憶部15が記憶するパスワード情報の構成を表す説明図である。図3(a)に示すように記憶部15には、パスワード情報として、アクセスレベルに応じた利用者毎に、利用者が当該通信ECU10の利用を許可された正当な利用者であるか否かを判断するためのパスワードが記憶されている。また、利用者毎に、その利用者に付与すべき当該通信ECU10の利用権限を表す権限情報が記憶されている。
【0045】
具体的に本実施例の記憶部15は、音楽データや地図データなどのプライバシーレベルの低いデータを取り扱うA種プログラム、車載LAN5内の車両情報(例えば、車両の識別情報や、車両の状態、車載LANの構成を表す情報)など、プライバシーレベルの高い情報を取り扱うB種プログラム、不正アクセスが生じると車両安全上問題のあるECUとの間で通信を行うC種プログラムなど、予めデータの重要度に応じて分類した各プログラムについて、利用者に対して実行権限を与えるか否かについての上記権限情報を利用者毎に記憶している。
【0046】
S160において、制御部13は、操作部19から入力された第一のパスワードが記憶部15に記憶された複数のパスワードのいずれとも一致しないと判断すると(S160でNo)、車両乗員が通信ECU10の正当な利用者ではないとして、表示部18を通じてエラーを表示するなどのエラー処理を実行し(S170)、その後に当該認証処理を終了する。一方、操作部19から入力された第一のパスワードが記憶部15に記憶されたパスワードのいずれかと一致すると、制御部13は、車両乗員が通信ECU10の正当な利用者であるとして、S160でYesと判断し、その一致したパスワードに対応する利用者を判別する(S180)。
【0047】
その後、制御部13は、通信モジュール20の記憶部25からパスワード情報を取得し(S190)、操作部19から入力された第二のパスワードと、記憶部25が記憶する各パスワードとを照合して、第二のパスワードが、通信モジュール20の記憶部25に記憶された複数のパスワードのいずれかと一致するか否か判断する(S200)。
【0048】
図3(b)は、通信モジュール20の記憶部25が記憶するパスワード情報の構成を表す説明図である。図3(b)に示すように記憶部25には、パスワード情報として、アクセスレベルに応じた利用者毎に、利用者が当該通信モジュール20の利用を許可された正当な利用者であるか否かを判断するためのパスワードが記憶されている。また、利用者毎に、その利用者に付与すべき当該通信モジュール20の利用権限を表す権限情報が記憶されている。
【0049】
具体的に、本実施例の通信モジュール20は、音声通信機能、データ通信機能、事故や車両盗難時に使用される指定先への緊急通報機能など、複数の通信機能を有しており、記憶部25は、それら各機能について、利用者に利用権限を付与すべきか否かを表す権限情報を、利用者毎に記憶している。
【0050】
S200において、操作部19から入力された第二のパスワードが記憶部25に記憶された複数のパスワードのいずれとも一致しないと判断すると(S200でNo)、制御部13は、車両乗員が当該通信モジュール20の正当な利用者ではないとして、エラー処理を実行し(S170)、当該認証処理を終了する。
【0051】
一方、操作部19から入力された第二のパスワードが、通信モジュール20の記憶部25に記憶された複数のパスワードのいずれかと一致すると、制御部13は、車両乗員が当該通信モジュール20の正当な利用者であるとして、S200でYesと判断し、その一致したパスワードに対応する利用者を判別する(S210)。
【0052】
その後、制御部13は、S160及びS200での認証が成功したことを証明する情報として、S180及びS210にて判別した利用者の情報などを含み認証が成功したことを示す認証情報を生成し(S220)、それを通信モジュール20の記憶部25に記憶させる(S230)と共に、通信ECU10の記憶部15に記憶させる(S235)。
【0053】
これらの処理が終了すると、制御部13は、処理をS120に移して、通信モジュール20から認証情報を取得し、通信モジュール20が以前認証された通信モジュール20であると判断して(S130でYes)、図4に示す通常処理の実行を開始し(S240)、その後に当該認証処理を終了する。尚、図4は、制御部13が繰り返し実行する通常処理を表すフローチャートである。
【0054】
制御部13は、通常処理の実行を開始すると、通信モジュール20を用いて車外装置3との間の通信を行う通信機能を含む各種機能を実現するプログラムの実行待機状態に入る(S310)。そして、操作部19から処理要求が入力されるとS310でYesと判断し、要求の種類を判別した後(S320)、要求の種類に応じたプログラムを実行し、通信モジュール20等を用いて利用者からの要求に応じた機能を実現する。尚具体的に、上記通信機能としては、音声通話機能、インターネット接続機能、音楽データや地図データなどの有料データ提供機能、道路交通情報などの無料データ提供機能、車載LAN5内の車両情報を取り扱う車両診断機能、緊急通報機能などが挙げられる。
【0055】
ここで、制御部13は、入力された処理要求が、パスワード変更要求及び認証情報消去要求以外の要求であると判断すると、S330に処理を移して、記憶部15に記憶された通信ECU10の利用権限を表す権限情報に基づき、処理要求に対応するプログラムの実行権限が、S180にて判別した利用者にあるか否か判断する。
【0056】
そして、実行権限があると判断すると(S330でYes)、記憶部25に記憶された通信モジュール20の権限情報に基づき、処理要求に対応するプログラムの実行権限が、S210にて判別した利用者にあるか否か判断する(S340)。このS340にて実行権限があると判断すると(S340でYes)、制御部13は、処理要求に対応するプログラムを実行して(S350)、当該処理を終了する。一方、S330若しくはS340にて実行権限がないと判断すると、制御部13は、それに対応するプログラムを実行せずにプログラムの実行を拒否する旨の表示を行い(S360)、その後に当該通常処理を終了する。
【0057】
つまり、制御部13は、処理要求があった際に、S330及びS340の処理にて、記憶部15,25に記憶された権限情報に基づき、車両乗員に付与すべき通信モジュール20の利用権限及び通信ECU10の利用権限に適合するプログラムのみを実行することにより、その利用権限を車両乗員に付与する。したがって、通信ECU10では、車両乗員に与えられるべき通信モジュール20の利用権限に対応する通信モジュール20の機能を用いる当該通信ECU10の通信プログラムのうち、車両乗員に与えられるべき通信ECU10の利用権限に対応した通信プログラムのみが、車両乗員に対して利用可能にされる。
【0058】
その他、制御部13は、S320にて、操作部19から入力された処理要求がパスワード変更要求であると判断すると、S370にて、パスワード変更処理を実行する。パスワード変更処理において、制御部13は、そのパスワード変更要求が、通信モジュール20のパスワードに対するものであるのか、通信ECU10のパスワードに対するものであるのかを判別し、パスワード変更要求が通信モジュール20のパスワードに対するものである場合には、利用者に通信モジュール20の管理者用のパスワード(図3(b)でいうパスワード2−5)を入力させる。
【0059】
そして、入力されたパスワードが、通信モジュール20管理者用のパスワードと一致すると、パスワード変更画面を表示部18に表示して、利用者から新しいパスワードを取得し、その取得後、新しいパスワードを記憶部25に記憶させる。その後、当該通常処理を終了する。一方、パスワード変更要求が通信ECU10のパスワードに対するものである場合には、利用者に通信ECU10の管理者用のパスワード(図3(a)でいうパスワード1−4)を入力させる。
【0060】
そして、入力されたパスワードが、通信ECU10管理者用のパスワードと一致した場合には、パスワード変更画面を表示部18に表示して、利用者から新しいパスワードを取得し、その取得後、新しいパスワードを記憶部15に記憶させる。その後、当該通常処理を終了する。
【0061】
その他、制御部13は、S320にて、操作部19から入力された処理要求が認証情報消去要求であると判断すると、S130の照合で一致した認証情報を、通信ECU10の記憶部15から削除し(S380)、その後に当該処理を終了する。
【0062】
上述した認証処理では、通信モジュール20の記憶部25に記憶された認証情報が通信ECU10の記憶部15に記憶されている認証情報と一致する場合、利用者にパスワードの入力を求めることなく、利用者からの処理要求の受付待機状態(S310)に入るが、上述のS380で認証情報が削除された場合には、次回の認証処理においてS130でNoと判断されるため、その後に行われるパスワードの照合が確実に行われる。
【0063】
したがって、本実施例によれば、通信モジュール20の盗難を防止しつつ、毎回パスワードの入力を求めることなく利用者に通信ECU10及び通信モジュール20を使用させることができる。また、他人に貸与する際に利用者に認証情報を削除させれば通信ECU10及び通信モジュール20の不正利用を防止することができる。
【0064】
以上、本実施例の車両用通信システム1について説明したが、この車両用通信システム1によれば、図5(a)に示すように、A氏所有の車両AをA氏所有の通信モジュールAと共に、B氏に貸与する際に、緊急通報など最低限の機能だけが動作するように所定のパスワードをB氏に教えることで、B氏に緊急通報機能を利用させることができると共に、B氏が通信モジュールAを用いて緊急通報以外の音声通信・データ通信機能を利用するのを防止することができる。
【0065】
したがって、この車両用通信システム1によれば、車両情報などのプライバシーレベルの高い情報が車載LAN5から盗難されるのを防止することができる。また更には、課金対象の通信機能をB氏が利用することにより、A氏が使用してない通信機能の料金を支払わなければならなくなるのを防止することができる。
【0066】
つまり、この車両用通信システム1によれば、車両や通信モジュール20の貸与時において、その車両の所有者や通信モジュール20の所有者に不利益が及ばないようにすることができる。結果、この車両用通信システム1によれば、車両や通信モジュール20の貸与を利用者が気軽に行えるようになる。
【0067】
また、パスワードを知らなければ通信モジュール20を使用することができないため、この車両用通信システム1によれば、通信ECU10に対して着脱自在に構成された通信モジュール20の盗難を防止することができる。
【0068】
その他、B氏は、B氏所有の通信モジュールBについて全てのパスワードを知ることができるため、図5(b)に示すように、A氏所有の車両Aを借り受ける場合に、車両Aに固定されたA氏所有の通信ECU・Aに、B氏所有の通信モジュールBを接続することで、通信機能の制限を受けることなく自由に通信モジュールを利用することができる。
【0069】
一方、B氏は、通信ECU・Aについては、A氏から必要なパスワードを教えてもらわなければ通信ECU・Aを使用できないため、A氏は、B氏に必要最低限の機能を利用させるのに必要なパスワードを教える程度に留めておけば、自車Aのプライバシーに関わる情報がB氏により盗難されるのを防止することができる。
【0070】
また、図5(c)に示すように、A氏は、自身所有の車両Aを利用する際に、B氏から通信モジュールを借り受ければ、自身の通信モジュールAを携帯していなくとも、通信モジュールBを用いて緊急通報などの機能を利用することができる。
【0071】
このように本実施例の車両用通信システム1によれば、通信モジュール20及び通信ECU10の夫々に別個のパスワードを記憶させているため、通信モジュール20又は通信ECU10の貸与時、その貸与先の信頼度に応じて、教えるパスワードを変更すれば、貸与先に応じて利用制限を柔軟に変更することができ、悪意の者による不正利用を充分に防止することができる。
【0072】
尚、本発明の車載装置が備える接続部は、通信ECU10が備えるコネクタ11に相当し、車載装置が備える記憶手段は、識別情報としてのパスワード、及び車載装置利用権限情報を記憶する記憶部15に相当する。その他、通信機器が備える記憶手段は、パスワード及び通信機器利用権限情報を記憶する通信モジュール20の記憶部25に相当する。
【0073】
また、識別情報取得手段は、制御部13が実行するS145の処理にて実現されている。尚、識別情報取得手段が取得する第一の識別情報は、通信モジュール20に対する第二のパスワードに対応し、第二の識別情報は、通信ECU10に対する第一のパスワードに対応する。
【0074】
その他、第一の利用者判別手段は、制御部13が実行するS200の処理にて実現されており、第二の利用者判別手段は、制御部13が実行するS160の処理にて実現されている。また、機能有効化手段は、制御部13が実行するS330〜S360の処理にて実現されており、車載装置が備える通信手段は、LANインタフェース部17に相当する。
【0075】
また、本発明の車両用通信システム及び車載装置は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
【0076】
例えば、上記実施例ではパスワードを用いて利用者が正当な利用者であるか否か判断するようにしたが、パスワード以外の識別情報、例えば、利用者の指紋、声、顔画像等を用いて利用者が正当な利用者であるか否か判断するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例の車両用通信システム1の構成を表すブロック図である。
【図2】 通信ECU10の制御部13が実行する認証処理を表すフローチャートである。
【図3】 記憶部15,25の構成を表す説明図である。
【図4】 通信ECU10の制御部13が実行する通常処理を表すフローチャートである。
【図5】 車両用通信システム1の利用形態に関する説明図である。
【符号の説明】
1…車両用通信システム、3…車外装置、5…車載LAN、10…通信ECU、11,27…コネクタ、13,23…制御部、15,25…記憶部、17…LANインタフェース部、18…表示部、19…操作部、20…通信モジュール、21…無線通信部、21a…アンテナ

Claims (8)

  1. 通信機器と、
    該通信機器と接続される接続部を有し、通信機器が前記接続部に接続されると、該通信機器を用いて車外装置との間で通信を行う車載装置と、
    を備える車両用通信システムであって、
    前記通信機器は、
    当該通信機器の利用者の識別情報を利用者毎に記憶する記憶手段
    を備え、
    前記車載装置は、
    当該車載装置の利用者の識別情報と、該利用者に与えられるべき当該車載装置の利用権限を表す車載装置利用権限情報と、を利用者毎に記憶する記憶手段と、前記通信機器が前記接続部に接続されると、当該車載装置の利用者から該利用者の識別情報を取得する識別情報取得手段と、
    該識別情報取得手段が取得した識別情報と、前記通信機器の記憶手段が記憶する識別情報と、を照合し、その照合結果に基づいて、当該車載装置の利用者が前記通信機器の利用を許可された正当な利用者であるか否か判断する第一の利用者判別手段と、
    前記識別情報取得手段が取得した識別情報と、前記車載装置の記憶手段が記憶する識別情報と、を照合し、その照合結果に基づいて、当該車載装置の利用者が前記車載装置の利用を許可された正当な利用者であるか否か判断する第二の利用者判別手段と、
    前記第一及び第二の利用者判別手段により利用者が正当な利用者であると判断されると、前記車載装置利用権限情報に基づき、当該車載装置が有する前記通信機器を用いた各種通信機能のうち、当該車載装置の利用者に与えられるべき利用権限に対応した通信機能を利用可能にする機能有効化手段と、
    を備えることを特徴とする車両用通信システム。
  2. 前記通信機器の記憶手段は、当該通信機器の利用者に与えられるべき通信機器の利用権限を表す通信機器利用権限情報、を利用者毎に記憶しており、
    前記車載装置の前記機能有効化手段は、前記第一及び第二の利用者判別手段により利用者が正当な利用者であると判断されると、前記通信機器利用権限情報及び前記車載装置利用権限情報に基づき、当該車載装置の利用者に与えられるべき前記通信機器の利用権限に対応する前記通信機器の機能を用いた当該車載装置の通信機能のうち、当該車載装置の利用者に与えられるべき車載装置の利用権限に対応した通信機能を利用可能にすることを特徴とする請求項1記載の車両用通信システム。
  3. 前記識別情報取得手段は、前記通信機器に対する第一の識別情報と、前記車載装置に対する第二の識別情報と、を取得する構成にされており、
    前記第一の利用者判別手段は、前記識別情報取得手段が取得した前記第一の識別情報と、前記通信機器の記憶手段が記憶する識別情報と、を照合し、
    前記第二の利用者判別手段は、前記識別情報取得手段が取得した前記第二の識別情報と、前記車載装置の記憶手段が記憶する識別情報と、を照合することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用通信システム。
  4. 前記車載装置は、
    車載LANに接続され、該車載LAN内の各端末と通信を行う通信手段、
    を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の車両用通信システム。
  5. 利用者の識別情報を利用者毎に記憶する記憶手段を備える通信機器、と接続される接続部を有し、該通信機器が前記接続部に接続されると、該通信機器を用いて車外装置との間で通信を行う車載装置であって、
    当該車載装置の利用者の識別情報と、該利用者に与えられるべき当該車載装置の利用権限を表す車載装置利用権限情報と、を利用者毎に記憶する記憶手段と、
    前記通信機器が前記接続部に接続されると、当該車載装置の利用者から該利用者の識別情報を取得する識別情報取得手段と、
    該識別情報取得手段が取得した識別情報と、前記通信機器の記憶手段が記憶する識別情報と、を照合し、その照合結果に基づいて、当該車載装置の利用者が前記通信機器の利用を許可された正当な利用者であるか否か判断する第一の利用者判別手段と、
    前記識別情報取得手段が取得した識別情報と、前記車載装置の記憶手段が記憶する識別情報と、を照合し、その照合結果に基づいて、当該車載装置の利用者が前記車載装置の利用を許可された正当な利用者であるか否か判断する第二の利用者判別手段と、
    前記第一及び第二の利用者判別手段により利用者が正当な利用者であると判断されると、前記車載装置利用権限情報に基づき、当該車載装置が有する前記通信機器を用いた各種通信機能のうち、当該車載装置の利用者に与えられるべき利用権限に対応した通信機能を利用可能にする機能有効化手段と、
    を備えることを特徴とする車載装置。
  6. 前記通信機器の記憶手段は、当該通信機器の利用者に与えられるべき通信機器の利用権限を表す通信機器利用権限情報を利用者毎に記憶しており、
    前記機能有効化手段は、前記第一及び第二の利用者判別手段により利用者が正当な利用者であると判断されると、前記通信機器利用権限情報及び前記車載装置利用権限情報に基づき、当該車載装置の利用者に与えられるべき前記通信機器の利用権限に対応する前記通信機器の機能を用いた当該車載装置の通信機能のうち、当該車載装置の利用者に与えられるべき車載装置の利用権限に対応した通信機能を利用可能にすることを特徴とする請求項5記載の車載装置。
  7. 前記識別情報取得手段は、前記通信機器に対する第一の識別情報と、前記車載装置に対する第二の識別情報と、を取得する構成にされており、
    前記第一の利用者判別手段は、前記識別情報取得手段が取得した前記第一の識別情報と、前記通信機器の記憶手段が記憶する識別情報と、を照合し、
    前記第二の利用者判別手段は、前記識別情報取得手段が取得した前記第二の識別情報と、前記車載装置の記憶手段が記憶する識別情報と、を照合することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の車載装置。
  8. 車載LANに接続され、該車載LAN内の各端末と通信を行う通信手段、を備えることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれかに記載の車載装置。
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