JP4239032B2 - 脂肪酸合成酵素の遺伝子型に基づき牛筋肉内脂肪における脂肪酸含有量の多寡を判定する方法及び該結果に基づき牛肉の食味の良さを判定する方法 - Google Patents

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Description

本発明は脂肪酸合成酵素(Fatty acid synthase; FASN)の遺伝子型に基づき、筋肉内脂肪に含まれる脂肪酸の組成のうち特にオレイン酸の多寡を判定することにより、優れた食味を備えた牛または牛肉であるかを判定する方法に関するものである。また同判定結果に基づき、優れた食味を備えた牛肉が得られる牛を選抜・育種する方法に関するものである。本発明は、特に、畜産(牛の飼育・繁殖・育種・改良等)や牛肉の生産加工等の分野に有効な技術を提供するものである。
牛肉の筋肉内脂肪に含まれる脂肪酸のうち、最も多くふくまれているのが炭素数18の1価不飽和脂肪酸(オレイン酸)であり、特に黒毛和種の肉は、外国品種のそれと比べた場合、オレイン酸含有量が有意に高い事が報告されている(非特許文献1参照)。一般に黒毛和種の肉は、外国品種のそれと比べ、日本人が好む優れた食味を備えると言われるが、その要因のひとつとして、外国品種の肉と比べた場合の和牛肉に含まれるオレイン酸含有量の高さが関係していると考えられている(非特許文献2参照)。
オレイン酸もふくめた牛肉の脂肪酸組成を測定するためには、ドラフトなど規模の大きな実験設備を必要とし、また正確なデータを出すためには、技術的な習熟も不可欠である。更に、この測定には多くの時間を要するため、一時に多数のサンプルを処理することが難しく、しかも脂肪酸抽出などの段階において多量の有機溶媒を使用するため、測定者の健康に及ぼす悪影響も無視出来ないなど、多くの問題を含んでいる。
一方、現在、日本国内の肉用牛育種は、日本食肉格付協会により格付された枝肉成績に基づいておこなわれている。
しかし、食味に関与する脂肪酸組成などの形質は、上記の通り煩雑な理化学分析を経なければならないため、枝肉成績と異なり、データを容易に得る事が出来ない。そのため、これまでこの形質が改良目標とされることはなく、このままの状況が続く限りにおいては、今後もそれに採用される可能性が低いことは想像に難くない。
よって、簡便な装置で実施でき、しかも技術的な習熟もあまり必要としない、遺伝子の塩基配列に基づいて牛肉の脂肪酸組成を判定する方法の開発が求められていた。
これまで、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ(SCD)の遺伝子型を利用して牛肉の脂肪融点並びに脂肪酸の不飽和度を判定することにより、牛肉の食味を評価する技術が既に特許化されている(特許文献1)。
特許文献1に記されている、SCD遺伝子を利用した牛肉の食味の判定は、牛肉中に含まれる脂肪融点との関係、および脂肪酸の不飽和度との関係に基づいてなされるものである。この場合の脂肪酸組成の不飽和度は、牛肉中に含まれる脂肪酸の飽和脂肪酸含有率と1価不飽和脂肪酸含有率の各総和の比によって算出されるものであり、脂肪酸の種類毎にそれぞれの多寡を知ることは出来ない。
ところで、牛筋肉内の脂肪酸を合成する酵素として、脂肪酸合成酵素(FASN)遺伝子が知られている。この酵素は、生体内における脂肪酸合成を担う酵素の一つであり、その牛(Bos taurus)由来全遺伝子配列、および推定されるアミノ酸配列については、下記の非特許文献3に記載されている。
しかし、脂肪酸合成酵素の遺伝子型に基づき脂肪酸組成の判定を行う方法はこれまで知られていなかった。
May S.G. et al., Comparison of sensory characteristics and fatty acid composition between Wagyu crossbred and Angus steers., Meat Science 35, 289-298(1993) 松原ら, 市販牛肉の等級別分析評価と消費性向, 兵庫県農業技術センター研究報告(畜産編)34, 10-15(1998) DDBJ/ EMBL/ GenBank databases : アクセッション番号AF285607 特開2004-261014号公報
上述のように、牛の筋肉内脂肪の脂肪酸組成は牛肉の食味に関係しており、その中でも特にオレイン酸含有率の高い牛肉の食味が優れていると言われることから、もし牛の特定の遺伝子の塩基配列に基づいてその多寡を判定することが出来れば、その牛肉の食味を簡易に検査出来る事になる。さらに、この情報を育種選抜に利用することで、これまで不可能に近かった牛肉の食味を改良することも可能となる。
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、その目的は、牛の遺伝子型に基づいて筋肉内脂肪中に含まれる脂肪酸組成を判定する方法、とりわけオレイン酸含有量の多寡を簡易かつ高精度に判定するための判定方法を提供すること、さらにその判定結果に基づいて、牛肉の食味をより客観的に判定する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題に鑑み、特に前記脂肪酸合成酵素遺伝子に着目し、同遺伝子と牛筋肉内脂肪に含まれる脂肪酸組成、とりわけオレイン酸含有量の多寡との関連について鋭意研究した結果、(1)同遺伝子において2ヶ所の1塩基多型(SNP)が存在すること、(2)これら1塩基多型はそれぞれの間にたった14塩基をおいて隔てられるのみで非常に近接しており、2種類のハプロタイプが存在すること、さらに、(3)この2つのハプロタイプ間で、牛筋肉内脂肪に含まれるオレイン酸含有量が有意に異なること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
特許文献1に記されている、SCD遺伝子を利用した牛肉の食味の判定にあっては、前述の通り脂肪酸の種類毎にそれぞれの多寡を知ることは出来ない。
これに対し、本発明のFASN遺伝子の遺伝子型を利用する方法によれば、牛肉中に含まれる脂肪酸の不飽和度にとどまらず、脂肪酸の各種類の多寡までをも判定することが出来る。すなわち、たとえば牛肉の食味との関係が示唆されている、オレイン酸をはじめとする炭素数18の1価不飽和脂肪酸の含有率の多寡を判定することが出来、また、これ以外の脂肪酸(C14、C16の各脂肪酸;飽和・不飽和共に含む)それぞれの含有率についても判定が可能である。
牛体が自己の体内において生合成可能な脂肪酸のうち、現在は上記のオレイン酸についてその食味との関係が示唆されているが、今後の研究進展に伴い食味に影響を及ぼす事が考えられるオレイン酸以外の脂肪酸、あるいは人間の健康にとって好ましい(あるいは好ましくない)脂肪酸等が明らかにされる可能性がある。
本発明はこのような脂肪酸の種類別にそれぞれの多寡を判定することが出来る点において、特許文献1の発明よりも優れていると言える。
即ち、本発明は、産業上有用な方法・物として下記の発明を含むものである。
請求項1に係る本発明は、下記の<1>および/または<2>の塩基を検定することによって決定される脂肪酸合成酵素の遺伝子型に基づき、牛の筋肉内脂肪における脂肪酸含有量の多寡を判定する方法である。
<1>配列表の配列番号1に示される塩基配列中、アデニン(A)又はグアニン(G)の何れかである多型部位に相当する第16,024番目の塩基
<2>同塩基配列中、チミン(T)又はシトシン(C)の何れかである多型部位に相当する第16,039番目の塩基
請求項2に係る本発明は、脂肪酸がオレイン酸である、請求項1に記載の方法である。
請求項3に係る本発明は、下記の工程(a)および(b)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の判定方法である。
(a)被検体の牛から調製したゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とする遺伝子増幅反応によって、上記<1>および<2>の塩基を含む遺伝子領域を増幅する工程
(b)前記工程(a)で得られた増幅断片を制限酵素によって消化し、その切断の有無に基づいて脂肪酸合成酵素の遺伝子型を判定する工程
請求項4に係る本発明は、上記工程(a)における遺伝子増幅反応が、配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列表の配列番号4に示される塩基配列からなるリバースプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応法によって行なわれ、かつ、上記工程(b)における制限酵素として、HhaIおよびNciIを用いることを特徴とする請求項3に記載の判定方法である。
請求項5に係る本発明は、DNAチップを用いて上記<1>および/または<2>の塩基を検定することを特徴とする請求項1または2に記載の判定方法である。
請求項6に係る本発明は、サーマルサイクラーと蛍光検出器とを備えたポリメラーゼ連鎖反応装置を用いて上記<1>および/または<2>の塩基を検定することを特徴とする請求項1または2に記載の判定方法である。
請求項7に係る本発明は、牛が肉用種である請求項1〜6の何れか1項に記載の判定方法である。
請求項8に係る本発明は、牛が、肉用としても利用される乳用種である請求項1〜6の何れか1項に記載の判定方法である。
請求項9に係る本発明は、配列表の配列番号1に示される塩基配列のうち、上記<1>および/または<2>の塩基を含む遺伝子領域に対して特異的に結合するヌクレオチドプローブを含む、請求項1、2、5〜8のいずれか1項に記載の判定方法において用いられる遺伝子多型検出用キットである。
請求項10に係る本発明は、配列番号1に示される塩基配列のうち、上記<1>および/または<2>の塩基を含む遺伝子領域を、遺伝子増幅反応により特異的に増幅するためのプライマーを含む、請求項1〜8の何れか1項に記載の判定方法において用いられる遺伝子多型検出用キットである。
請求項11に係る本発明は、上記<1>および/または<2>の塩基を含む遺伝子領域を、遺伝子増幅反応により特異的に増幅するためのプライマーである。
請求項12に係る本発明は、上記<1>および/または<2>の塩基を含む遺伝子領域に対して特異的に結合するヌクレオチドプローブである。
請求項13に係る本発明は、請求項1〜8の何れか1項に記載の判定方法の結果に基づき、オレイン酸含有量の多い牛肉が得られる牛かどうかを判定する方法である。
請求項14に係る本発明は、請求項1〜8の何れか1項に記載の判定方法の結果に基づき、オレイン酸含有量の多い牛肉が得られる牛を選抜・育種する方法である。
本発明によれば、脂肪酸合成酵素(FASN)遺伝子型に基づき、牛肉中に含まれる脂肪酸の不飽和度にとどまらず、脂肪酸の各種類の多寡までをも判定することが出来る。さらに、それに基づき食味に優れる牛肉を生産する牛であるかどうか等の判定、更に牛の育種や品種改良などを行なう方法を提供することができ、種々の有用性を有するものである。
また、従来の牛肉の脂肪酸組成測定が煩雑かつ熟練を要するものであったのに対し、本発明によれば、サーマルサイクラー、電気泳動漕など取扱いも簡便で、操作の習熟等もさほど必要としない実験器具を使用するのみで脂肪酸含有量の多寡を判定することができる。また、多数のサンプルを効率的かつ高精度に判定することが出来る。
さらに、現在脂肪酸組成を測定するためには、と畜後サンプルを採取する必要があるが、本発明によれば、生体のうちに(採血あるいは毛根採取等により)DNAサンプルを確保すればよく、おおよそ30ヶ月にも及ぶ肉牛の飼養期間を待たずに脂肪酸組成を判定することが出来る。
以下、本発明の具体的態様、技術的範囲等について詳しく説明する。
(1)本発明の判定方法
請求項1に記載の本発明は、前述の通り、脂肪酸合成酵素の遺伝子型に基づき、牛の筋肉内脂肪における脂肪酸含有量の多寡を判定する方法を提供するものである。
本明細書において、「牛」とは、ヨーロッパ牛(Bos taurus)を意味するものとする。このヨーロッパ牛には黒毛和種(Japanese Black)などの和牛、および、ホルスタイン種、ヘレフォード種、アバディーンアンガス種、リムジン種などのヨーロッパ家畜牛が包含されるものとする。判定対象(被検体)となる「牛」は肉用種(肉牛)、または肉用としても利用される乳用種(乳牛)のいずれであってもよい。
また、本明細書において「脂肪酸合成酵素(Fatty Acid Synthase:以下、略して「FASN」ということもある。)」とは、生体内において脂肪酸を生合成する牛由来の酵素である。配列表の配列番号1には、非特許文献3によって示されるFASN遺伝子の全ゲノムDNA配列が、配列番号2には、同配列によってコードされるFASN蛋白質のアミノ酸配列が、それぞれ示される。配列番号1のDNA配列並びに配列番号2のアミノ酸配列は、非特許文献3によって示される配列と同一であるが、後述の1塩基多型(SNP)の表記の点で相違する。
図1は、上記FASN遺伝子の第34エキソンおよび第35エキソンを含むゲノムDNA部分配列を模式的に示してある。図中、大きな四角形は各エキソンを示し、小さな四角形はそれを挟む各イントロン領域を示す。図中の各数字は、配列表の配列番号1に示されるFASN遺伝子のゲノムDNA配列の第1番目のヌクレオチドを基点として、各位置が何番目のヌクレオチドに相当するかを示している。
図1の下側には、本発明者らが詳細に調査検討した結果、FASN遺伝子(非翻訳領域は含まず)上で見出した2つのアミノ酸置換を伴う1塩基多型(SNP)が示される。
本発明者らが同遺伝子に注目し、詳細な解析を行うに至った背景には、黒毛和種とリムジン種からなる遺伝子解析用のF2家系集団の解析により、牛19番染色体に脂肪酸組成に関与する遺伝子領域を特定したという経緯がある。同領域内においてより強く形質と連鎖する部位にFASN遺伝子が存在し、その機能から脂肪酸組成への関与を推定した。そのため、同遺伝子の解析にあたっては、F2家系集団のP世代(始祖となる世代)である黒毛和種・リムジン種各2頭、計4頭におけるFASN遺伝子cDNAの全配列を決定し、その違いを詳細に調査した。
図1の下側に示した2ヶ所の1塩基多型(SNP)は、従ってこれら4頭間で最初に観察されたものである。以下では、これら2ヶ所の1塩基多型(SNP)をそれぞれ5’側から順番に下記<1>、<2>の塩基と称する事にする。
<1>配列表の配列番号1に示される塩基配列中、アデニン(A)又はグアニン(G)の何れかである多型部位に相当する第16,024番目の塩基
<2>配列表の配列番号1に示される塩基配列中、チミン(T)又はシトシン(C)の何れかである多型部位に相当する第16,039番目の塩基
配列表の配列番号1の塩基配列においては、上記2つの多型部位の塩基それぞれを、ユニバーサルコード「r」または「y」で表記している。
尚、上記<1>、<2>の塩基に付されている番号は、配列表の配列番号1に示されるFASN遺伝子のゲノムDNA配列の第1番目のヌクレオチドから数えて何番目に該当するかを示すものである。
他方、cDNA配列にはイントロン部分が含まれず、エキソン部分のみが繋がった状態にあるため、FASN遺伝子のcDNA配列における上記<1>、<2>の塩基に相当する塩基の番号は、上記<1>、<2>に記載の番号とは当然異なるものとなる。
したがって、本発明の判定方法において判定対象である牛のcDNAを判定試料として用いる場合は、上記<1>、<2>の塩基の各位置を示す番号について、第34エキソン以前のイントロン配列を考慮して読み替えて解釈するものとする。
また、配列表の配列番号1に示される配列は、非特許文献3の著者らが調査した、何らかのヨーロッパ牛品種から単離されたFASN遺伝子のゲノムDNA配列であり、これ以外の牛品種では、突然変異などにより、配列番号1に示される配列において1〜数個の塩基の欠失または挿入等が生じている可能性がある。この場合、上記<1>、<2>の塩基の各位置を示す番号については、このような塩基の欠失または挿入等を考慮して読み替えて解釈するものとする。
図1に示すように、上記<1>、<2>の塩基はともに第34エキソンに含まれ、共にオープンリーディングフレームに含まれていることがわかった。
<1>の塩基がアデニン(A)であるかグアニン(G)であるかに応じて、コードするアミノ酸の置換をもたらす事が判明した。上記<1>の塩基がアデニン(A)のときは、コードするアミノ酸はスレオニン(Thr)であり、グアニン(G)のときは、コードするアミノ酸はアラニン(Ala)である。
また、<2>の塩基がチミン(T)であるかシトシン(C)であるかによっても、コードするアミノ酸の置換をもたらす事が判明した。上記<2>の塩基がチミン(T)のときは、コードするアミノ酸はトリプトファン(Trp)であり、シトシン(C)のときは、コードするアミノ酸はアルギニン(Arg)である。
このように、上記<1>、<2>の塩基の置換はアミノ酸置換を生じさせる。
また、上記<1>、<2>の1塩基多型(SNP)は互いに独立した関係にはなく、原則として連鎖していることが、その後の多数の遺伝子解析の結果判明した。すなわち、
(i)上記<1>の塩基がアデニン(A)のときは上記<2>の塩基はチミン(T)
であるのに対し、
(ii)上記<1>の塩基がグアニン(G)のときは上記<2>の塩基はシトシン(C)
であった。本発明者らは、便宜上これら2種類のハプロタイプを、それぞれの塩基置換にともなってコードされるアミノ酸の1文字表記で表現することとした。すなわち、(i)のハプロタイプをスレオニン(Thr=T)−トリプトファン(Trp=W)型(TW型)とし、また(ii)のハプロタイプをアラニン(Ala=A)−アルギニン(Arg=R)型(AR型)と呼ぶこととした。
尚、例外的に、<1>の塩基と<2>の塩基との組み合わせが上述の通りではない個体も存在するようである。非特許文献3に記載のFASN遺伝子塩基配列においては、上記<1>に相当する部分の塩基がアデニン(A)ホモであるのに対し、上記<2>に相当する部分の塩基がシトシン(C)ホモであった。本発明者らの調査した範囲内においてこの様なケースは存在しなかったため、これらのハプロタイプを持った場合の形質との関連については確認出来ていない。
従って、もしこれらのハプロタイプを保有する牛が存在した場合は、牛肉の筋肉内脂肪における脂肪酸含量の多寡を判定することは出来ない。
しかし、本発明者らは、国内の黒毛和種・ホルスタイン種の各種雄牛群、黒毛和種肥育牛群、さらに国内で繋養される肉用外国品種群等、あわせて1,000頭を超えるサンプルについてFASN遺伝子型のタイピングを行ったが、<1>の塩基と<2>の塩基との間で組み換えを起こしている個体を検出した例が無いことから、存在しないとは言い切れないものの、日本国内においてはこの様な組み換えを起こしたFASN遺伝子型を保有する牛を検出する可能性は極めて低いと考えてよいと思われる(非特許文献3の著者らは海外の研究グループであり、彼らが日本国内の牛の塩基配列を決定し、それを登録しているとは考えにくい)。
したがって、本発明において判定対象(被検体)となる牛としては、国内で繁養される牛、つまり、国内で生まれ、飼育されている牛が好ましい。なお、本発明者らは国内で繁養される牛のみを調査したため、海外で繁養される外国品種におけるFASN遺伝子型の頻度等を知ることは出来ていないが、海外で繁養される外国品種についても、ハプロタイプの型が日本国内で観察されたものと同型(つまり、TW型またはAR型)である場合には、本発明の判定対象(被検体)とすることができる。
また、前述のように<1>と<2>の塩基の間で組み換えを起こしている例が検出されていないことから、本発明においては、<1>または<2>の塩基を検定することによってFASN遺伝子型を決定することができるが、<1>、<2>ともに検定することが好ましい。
このように、FASN遺伝子の遺伝子型には2つのハプロタイプが存在することが解ったが、更なる調査検討の結果、上記FASN遺伝子の遺伝子型と、牛の筋肉内脂肪に含まれる脂肪酸のうち、オレイン酸含有量の多寡との間に、特に有意な関係が存在することを見出した。
即ち、上記「TW型」と「AR型」との間で、牛の筋肉内脂肪に含まれるオレイン酸などの脂肪酸含量が有意に異なる事を明らかにした。結果の詳細は後述の実施例においても説明するが、オレイン酸含有量の割合は、TW型のFASN遺伝子をホモで有する場合(TW/TW)、TW型とAR型のFASN遺伝子をヘテロで有する場合(TW/AR)、AR型のFASN遺伝子をホモで有する場合(AR/AR)の順番で高い値を示した。
したがって、本発明においては、判定対象の牛が持つFASN遺伝子における上記<1>および/または<2>の塩基を検定し、遺伝子型が上記TW/TW型、TW/AR型およびAR/AR型のいずれであるか決定することによって、牛の筋肉内脂肪における脂肪酸含有量の多寡を判定することができる。
本発明により判定できる脂肪酸としては特に制限されず、不飽和脂肪酸であっても飽和脂肪酸であってもよい。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸など炭素数が18である1価不飽和脂肪酸などが挙げられる。飽和脂肪酸としては、ミリスチン酸など炭素数が14であるものや、パルミチン酸など炭素数が16であるものなどが挙げられる。
前記のように、牛筋肉内脂肪に含まれる脂肪酸のうちオレイン酸は最も多く含まれる脂肪酸であり、また牛肉の食味との関係が示唆されている脂肪酸である。従って、FASN遺伝子の遺伝子型がTW/TW型の牛は、AR/AR型の牛に比べてより食味のよい肉質を持つと評価することが出来る。
このように、FASN遺伝子の遺伝子型を調べることにより、牛筋肉内脂肪に含まれる脂肪酸組成のみならず、より優れた食味を備えた牛肉が得られる牛かどうかを判定することが可能になる。
なお、各種脂肪酸含量は、例えば以下の方法で測定することができる。
試料の牛肉約1gにメタノールクロロホルム溶液40mlを加え、ホモジナイズ後7分間振とう抽出する。その後、上清をロータリーエバポレーターで減圧乾固し、脂質試料とする。
次に、基準油脂分析法に従って、けん化後、メチルエステル化する。すなわち、試料に1規定水酸化カリウムメタノール溶液を加え、水浴上で還流加熱して、けん化し、続いて、三フッ化ホウ素メタノール試薬を加え、メチル化する。ヘキサンに転溶後、分離し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、ガスクロマトグラフへ供する。
なお、ガスクロマトグラフの条件は、以下に示すとおりである。
(ガスクロマトグラフの分析条件)
カラム CP-Sil88Wcot 0.25mm x 50m
キャリアーガス ヘリウム
注入温度 220℃
カラム温度 160℃ 恒温
検出 FID
本発明の判定方法において、FASN遺伝子の遺伝子型を調べる方法は特に限定されたものではなく、FASN遺伝子上の上記<1>の塩基がアデニン(A)であるかグアニン(G)であるか、および上記<2>の塩基がチミン(T)であるかシトシン(C)であるかを、直接的または間接的に調べることが可能な従来公知の方法を適用することができる。
PCR-RFLP(restriction fragment length polymorphism)法を用いて前記<1>、<2>の塩基を検定することによってFASN遺伝子の遺伝子型を調べる方法は最も簡易であり、かつ精度も良好であるので、以下はこの方法について簡単に説明する。
(2)PCR-RFLP法によるFASN遺伝子の型判定方法
PCR-RFLP法とは、検出したい変異部位を含む遺伝子領域をPCR法により増幅し、PCR産物を当該変異部位を認識する制限酵素で消化した後、電気泳動によってDNA断片の分子量を調べることにより、制限酵素による切断の有無、すなわち変異の有無を検出する方法である。
はじめに、被検体の牛から遺伝子試料を調製する。
判定に供する遺伝子試料は、ゲノムDNAであってもcDNAであってもよい。ゲノムDNAの場合は、被検体の牛(屠殺前後を問わない)の任意の器官・組織・細胞(血液、羊水中の細胞、採取した組織等を培養した細胞を含む)から定法に従ってDNAを精製・抽出すればよい。後述の実施例では筋肉組織からゲノムDNAを調製している。cDNAの場合は、被検体の牛(屠殺前後を問わない)の任意の器官・組織・細胞(血液、羊水中の細胞、採取した組織等を培養した細胞を含む)から定法に従ってmRNAを精製・抽出した後、逆転写酵素によってcDNAを合成すればよい。
次に、1塩基多型(SNP)における塩基の同定(SNPタイピング)のため、上記の方法で調製したゲノムDNAまたはcDNAを鋳型にしてPCR法を行い、前記<1>および/または<2>、好ましくは<1>および<2>の2ヶ所の塩基を含む遺伝子領域を増幅する。その後、得られた増幅断片を適当な制限酵素によって消化し、その切断の有無によりFASN遺伝子の遺伝子型を判定する。
上記PCR法における各条件、使用する試薬・プライマーおよび制限酵素などは特に限定されるものではないが、以下では後述の実施例において使用した条件等について、遺伝子試料としてゲノムDNAを利用した場合またはcDNAを利用した場合に分けて説明する。
〔A〕遺伝子試料がゲノムDNAの場合
PCR反応液としては、ゲノムDNA20ngにAB gene Taq polymerase 0.25Unit、10×Taq polymerase buffer 1.5μl、10mM dNTP mix 1.25μl、フォワードプライマー(6.25pmol)およびリバースプライマー(6.25pmol)各0.25μlを加えた物を超純水で15μlにメスアップしたものを用いることができる。
ここで、前記フォワードプライマーおよびリバースプライマーとしては、前記<1>および/または<2>、好ましくは<1>および<2>の塩基を含む遺伝子領域を特異的に増幅できるオリゴヌクレオチドであればよい。
例えば、フォワードプライマーは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の一部であり、かつ、検出したい変異部位よりも5’末端側に位置する任意の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとすることができる。また、リバースプライマーは、配列表の配列番号1に示す塩基配列の一部であり、かつ、検出したい変異部位よりも3’末端側に位置する任意の塩基配列に対する相補的塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとすることができる。
上記プライマーペアは、好ましくは15〜50個、さらに好ましくは18〜27個のヌクレオチドからなるものが好ましく、またPCR法によって得られる増幅産物の長さについては、特に限定されるものではないが100〜500塩基となるようにするのが好ましい。
具体的には、配列表の配列番号3に示すフォワードプライマー(FASN_F)、および配列表の配列番号4に示すリバースプライマー(FASN_R)を例示することができる。このフォワードプライマーはFASN遺伝子第34エキソン内の、またリバースプライマーはFASN遺伝子第35エキソン内の、各塩基配列を元にそれぞれ作成したものである。
PCRの反応条件は、まず(1)94℃4分、次に(2)94℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 30秒を1サイクルとして、これを35サイクル行い、最後に(3)72℃ 7分に設定すればよい。
配列表の配列番号3,4に示すプライマーペアを用いた上記PCR法により、336bpのPCR増幅産物を得ることができる。
多型の検出に使用する制限酵素等は、前記<1>、<2>の何れの塩基を検定するかによって、以下のように異なる。
〔A−1〕前記<1>の塩基を検定する場合
上記で得られたPCR増幅産物を制限酵素HhaIで処理すると、前記<1>の塩基がアデニンである場合、PCR産物の<1>の多型部位は同制限酵素で切断されない。このとき、コードするアミノ酸はスレオニンに相当するため、遺伝子型はT型と判定される。
一方、前記<1>の塩基がグアニンである場合、PCR産物の<1>の多型部位は同制限酵素で切断される。このとき、コードするアミノ酸はアラニンに相当するため、遺伝子型はA型と判定される。
〔A−2〕前記<2>の塩基を検定する場合
上記で得られたPCR増幅産物を制限酵素NciIで処理すると、前記<2>の塩基がチミンである場合、PCR産物の<2>の多型部位は同制限酵素で切断されない。このとき、コードするアミノ酸はトリプトファンに相当するため、遺伝子型はW型と判定される。
一方、前記<2>の塩基がシトシンである場合、PCR産物の<2>の多型部位は同制限酵素で切断される。このとき、コードするアミノ酸はアルギニンに相当するため、遺伝子型はR型と判定される。
〔B〕遺伝子試料がcDNAの場合
PCR反応液としては、ゲノムDNAのときと同様、cDNA20ngにAB gene Taq polymerase 0.25Unit、10×Taq polymerase buffer 1.5μl、10mM dNTP mix 1.25μl、フォワードプライマー(6.25pmol)およびリバースプライマー(6.25pmol)各0.25μlを加えた物を超純水で15μlにメスアップしたものを用いることができる。
この場合においても、使用するプライマーはゲノムDNAの時と全く同じものを用いてよい。即ち、前記<1>および/または<2>、好ましくは<1>および<2>の塩基を含む遺伝子領域を特異的に増幅できるものであればよい。
具体的には、フォワードプライマーとして配列表の配列番号3記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、またリバースプライマーとして配列番号4記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてよい。
前述の通り、配列表の配列番号3記載のフォワードプライマーは第34エキソン内の、また配列表の配列番号4記載のリバースプライマーは第35エキソン内の、各塩基配列に基づいて作成されたものであるが、遺伝子試料としてcDNAを用いる場合、スプライシングによりイントロン部分が切り取られている分、遺伝子試料としてゲノムDNAを用いる場合と比べ、そのPCR増幅断片は短くなる。
これにより、もし用いたcDNA中にゲノムDNAが消化されずに残っていた場合には、PCR反応後において1つのレーンに2つの増幅断片が検出されることになる。すなわち、遺伝子試料としてcDNAを用いる場合は、本フォワードおよびリバース各プライマーを用いてPCRを行うことで、ゲノムDNAのコンタミネーションの確認も可能である。
PCRの反応条件は、これもゲノムDNAの時と同様、まず(1)94℃4分、次に(2)94℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 30秒を1サイクルとして、これを35サイクル行い、最後に(3)72℃ 7分に設定すればよい。
配列表の配列番号3,4に示すプライマーペアを用いた上記PCR法により、226bpのPCR増幅産物が得られる。
図1には、これらPCR反応に用いる配列番号3および配列番号4に示されるプライマーの各位置を、白抜き矢印記号によりそれぞれ模式的に示した。右方向を向いた白抜き矢印記号はフォワードプライマーを、左方向を向いた白抜き矢印記号はリバースプライマーをそれぞれ示している。
遺伝子試料としてゲノムDNAを用いる場合、これら白抜きの矢印によって挟まれる断片全体(プライマー部分を含む)が増幅されるのに対し、遺伝子試料としてcDNAを用いる場合は第34エキソンと第35エキソンとに挟まれるイントロン部分が切り取られる結果、遺伝子試料としてゲノムDNAを用いる場合よりも短い断片が増幅される。
多型の検出に使用する制限酵素等は前記<1>、<2>の何れの塩基を検定するかによって異なるが、上記〔A〕における〔A−1〕および〔A−2〕記載のものと同様であり、また処理方法および検出方法についても全く同様に行うことができる。結果の判定法についても全く同様である。
尚、遺伝子試料がゲノムDNAの場合およびcDNAの場合の何れにおいても、PCR-RFLP処理は以下のように行なうことができる。すなわち、HhaIを用いる場合は、PCR産物5μlにバッファー0.5μl、BSA 1μl、およびHhaI 5Uを添加したのち超純水で10μlにメスアップし、反応液とする。また、NciIを用いる場合は、PCR産物5μlにバッファー0.5μl、およびNciI 5Uを添加したのち超純水で10ulにメスアップし、反応液とする。次に、これらの反応液を37℃下で一晩反応させる。電気泳動の条件は2%アガロースゲルを用いて、100V、30分間電気泳動を行う。
図2には電気泳動の結果が示される。これらの結果は、配列表の配列番号3,4に示すプライマーペアおよびHhaIを用いて前記<1>の塩基を検出した場合のものであり、レーン1〜3は遺伝子試料としてcDNAを用いた結果を示し、レーン4〜6は遺伝子試料としてゲノムDNAを用いた結果を示す。
図のレーン1および4に示すように、分子量の大きいバンド(各々226bp及び336bp)のみ出現した場合、前記<1>の塩基はアデニンのホモであり、コードされるアミノ酸によって示すとTホモ型と判定される。また、図のレーン3および6に示すように、分子量の小さいバンド(各々74bp、152bp及び262bp)のみ出現した場合、前記<1>の塩基はグアニンのホモであり、コードされるアミノ酸によって示すとAホモ型と判定される。さらに、図のレーン2および5に示すように、上記の大小2つのバンドが出現した場合は、遺伝子型はヘテロと判定できる。
このように、PCR-RFLP法によれば、簡便かつ精度よくFASN遺伝子の遺伝子型を調べる事ができる。
また、前述の通り、FASN遺伝子の2つの1塩基多型(SNP)はその間僅か14塩基を隔てるのみで非常に近接しているため、これらによって形成されるハプロタイプは殆ど固定されたものと考えてよく、従って基本的にはどちらか一方の変位を検出すれば自ずともう一方の型も判定出来ると考えてよい。
しかし前述の通り、TW型およびAR型以外のハプロタイプが存在する可能性、すなわち2つの1塩基多型(SNP)の間で組み換えを起こしている個体が存在する可能性を完全に否定する事は出来ないため、FASN遺伝子型の判定においては、2ヶ所の1塩基多型(SNP)を共に確認することでより正確性は高まる。
(3)本発明の判定方法の変更態様
前述したように、本発明の判定方法は、上記(2)のPCR-RFLP法に限定されるものではない。例えばPCR-RFLP法により判定するとしても、各反応条件、使用する試薬・プライマー・制限酵素などは様々に変更可能である。
もちろん、本発明の判定方法においては、PCR-RFLP法以外の方法を使用してもよい。FASN遺伝子上の前記<1>および/または<2>の塩基を直接的または間接的に検出可能な方法であれば、塩基配列上の点変異を検出する方法、1塩基多型(SNP)における塩基を検定する方法(SNPタイピング)など従来公知の種々の方法を適用することが出来る。
一例として、サーマルサイクラーと蛍光検出器とを備えた、変異検出・リアルタイムPCR(定量PCR)が共に可能であるPCR装置(たとえば、ロッシュ・ダイアグノスティックス社が開発した商品名「ライトサイクラーシステム」がある。)を用いた判定方法を挙げることが出来る。
この方法では、前記<1>および/または<2>の塩基を含む遺伝子領域をPCR法により増幅するためのプライマーペアおよび、3’末端が蛍光物質FITC(Fluorescein Iso Thio Cyanate)で標識された変異検出用プローブならびに、5’末端が蛍光物質LC-RED(Light Cycler-Red)で標識され、かつ3’末端がリン酸化されているアンカープローブを、それぞれ適宜設計して用いる。これらは、適切な業者等に依頼して作成することもできる。
次に、これらのプライマー、変異検出用プローブおよびアンカープローブを、被検体からの試料DNAと共にDNA合成酵素を含む適切な試薬と混合し、ライトサイクラーシステムを利用した増幅反応を行う。このとき用いる変異検出用プローブは、目的とする変異部分(すなわち<1>および/または<2>の塩基)を覆う様に設計されているため、もし変異があった場合では、変異がなかった場合と比べDNAの変成温度に差が生ずるため、それを利用して多型を検出することができる。
上記の判定方法に利用可能な変異検出用プローブとしては、上記<1>および/または<2>の塩基を含む遺伝子領域に対して特異的に結合し、かつ、3’末端が蛍光物質FITCで標識されているヌクレオチドプローブであればよい。中でも、20〜30個のヌクレオチドからなるものが好ましい。当該ヌクレオチドプローブの配列は、例えば、配列表の配列番号1に示される塩基配列の一部であり、かつ、上記<1>および/または<2>の塩基を含む配列又はその相補配列を用いることができる。
その他にも、本発明の判定方法の一態様として、DNAチップ等の遺伝子多型検出器具を用いた判定方法や、PCR-SSCP(single-strand conformation polymorphism)法などの点変異検出法を用いる方法を挙げることができる。
尚、ここで「DNAチップ」とは、主として合成したオリゴヌクレオチドをプローブに用いる合成型DNAチップを意味するが、PCR産物などのcDNAをプローブに用いる貼り付け型DNAマイクロアレイをも包含するものとする。
DNAチップを用いて上記<1>および/または<2>の塩基を検定するには、これらの何れかの塩基を検定するためのプローブを基盤上に配置したDNAチップ(または同種の器具)を作成し、このDNAチップ等を用いて被検体の牛からの遺伝子試料とプローブとのハイブリダイゼーションを行い、ハイブリダイゼーションシグナルの有無により1塩基多型のタイピングを行えばよい。
上記のDNAチップ等に用いるプローブには、上記<1>および/または<2>の塩基を含む遺伝子領域に対して特異的に結合するヌクレオチドプローブを用いることができ、具体的には、配列表の配列番号1に示される塩基配列の一部であり、かつ、上記<1>および/または<2>の多型部位の塩基を含む塩基配列またはその相補配列を用いる事が出来る。中でも、20〜30個のヌクレオチドからなるものが好ましい。
また、PCR-RFLP法を用いる本発明の判定方法において、PCR法の代わりに他の増幅方法(例えばRCA(Rolling Circle Amplification)法など)を用いてもよく、さらにはDNA増幅後、RFLP法の代わりに、塩基配列決定装置(DNAシーケンサー)などにより直接増幅断片の塩基配列を決定し、1塩基多型(SNP)のタイピングを行ってもよい。
尚、FASN遺伝子の塩基配列は、ヨーロッパ牛(Bos taurus)に属する動物間でも、前記<1>、<2>の1塩基多型(SNP)以外にも変異が生じている可能性がある。つまり、厳密には配列表の配列番号1に示される塩基配列とは異なるFASN遺伝子配列を持つ牛も存在する可能性があるが、この様な牛に対しても、前述した本発明の判定方法を用いてFASN遺伝子の遺伝子型を調べることにより、筋肉内脂肪における脂肪酸含量の多寡の判定、ならびにそれに基づく牛肉の食味の良さの判定は可能である。
また、被検体の牛が遺伝子組換え法などにより人為的に作出された牛である場合、FASN遺伝子も人為的に変異が導入されている可能性があるが、この様な場合も、上記と同様に本発明の判定方法を適用することが出来る。
被検体の牛から調製する遺伝子試料はDNAであってもRNAであってもよい。また、遺伝子試料の調製方法についても常法で行なえばよく、特に限定されるものではない。
(4)本発明の利用分野(有用性)
本発明の判定方法は、FASN遺伝子の遺伝子型に基づき、牛の筋肉内脂肪中に含まれる脂肪酸組成、特にオレイン酸含有量の多寡を判定する方法であり、畜産(牛の飼育・繁殖・育種・改良等)、牛肉の生産加工等の分野に利用可能である。
前述のとおり、牛の筋肉内脂肪に含まれる脂肪酸のうち最も多く含まれているのがオレイン酸であり、特に黒毛和種の肉は外国品種のそれと比べてオレイン酸含有量が有意に高い事が知られ、日本人が好む牛肉の良好な食味に大きく影響を与える事が示唆されている。
従って、本発明の判定方法により、黒毛和種などの肉用種(肉牛)または肉用としても供されるホルスタイン種等の乳用種について、より良好な食味を備えた肉質を持つ牛かどうかを評価することが出来る。さらに、この評価結果を基に、遺伝子型に基づき分類されたより食味の優れた肉質を持つ牛同士を交配させる等して、これまで不可能に近かった牛肉の食味を改良することも可能となる。
さらに、遺伝子組換え法などを用いて牛の品種改良を行ったり、畜産等の分野に有用な遺伝子実験を行う場合にも、対象となる牛や精子、受精卵などの選別に本発明の判定方法を利用出来る。そのほか、出産前の判定も可能であり、例えば子宮の羊水から牛胎児由来の細胞を採取し、その細胞から遺伝子試料を調製し、より食味に優れる牛肉を生産する牛かどうか等を判定することができる。
以下に実施例等を挙げて本発明を具体的に説明する。
下記の実施例では、被検体の牛(黒毛和種、リムジン種、ヘレフォード種、アンガス種、ホルスタイン種ならびに、これらの交雑種)の筋肉組織から常法により調製したゲノムDNAを遺伝子試料に用い、前述のPCR-RFLP法により判定を行なった。
また、下記の実施例では、前記<1>の塩基を調べることで、FASN遺伝子の遺伝子型(ハプロタイプ型)がTW型であるか、AR型であるかを判定した。
PCR法に使用した試薬、反応条件などは上記で例示したとおりであり、ここではその説明は省略する。なお、PCR法においてプライマーペアは配列表の配列番号3、4に示すものを用いた。
(1)FASN遺伝子型と各種脂肪酸含有量の関連性
下記表1は、上記判定方法により、前述の黒毛和種とリムジン種からなる遺伝子解析用のF2家系集団においてFASN遺伝子の遺伝子型判定を行った結果と、それぞれの遺伝子型における筋肉内脂肪に含まれる脂肪酸の平均値、標準偏差を、それぞれ示したものである。なお、遺伝子型はそれぞれの塩基置換に伴ってコードされるアミノ酸型で構成されるハプロタイプで示した。
なお、表1において、C14:0はミリスチン酸、C16:0はパルミチン酸、C18:1はオレイン酸を示す。
ここで、各種脂肪酸含有量は以下の方法で測定した。
試料の牛肉約1gをガラス遠沈管にとり、そこに生理食塩水20mlとメタノールクロロホルム溶液(クロロホルム・メタノール・ブチルヒドロキシトルエンを各2リットル・1リットル・15mgで混合したストック溶液)40mlをそれぞれ投入し、ホモジナイザーにより均質化した。これを分液ロートにあけ7分間攪拌し、無水硫酸ナトリウムを通して濾過した。これをエバポレーターで減圧乾固し、脂質試料とした。
続いて試料に1規定水酸化カリウムメタノール溶液5mlを加え、95℃の水浴上で1時間還流加熱して、けん化し、その後ジエチルエーテル10mlを加え、攪拌し、上清を捨てた。そこに6規定硫酸1mlと石油エーテル10mlを入れ攪拌し、上清を別の試験管に移した。これをエバポレーターで減圧乾固し、そこに三フッ化ホウ素メタノール溶液1mlを加え、95℃の水浴上で5分間還流加熱してメチル化した。ヘキサンを加え転溶後、分離し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、ガスクロマトグラフへ供し、脂肪酸組成の測定を行った。
なお、ガスクロマトグラフの条件は、以下に示すとおりである。
(ガスクロマトグラフの分析条件)
カラム CP-Sil88Wcot 0.25mm × 50m
キャリアーガス ヘリウム
注入温度 220℃
カラム温度 160℃ 恒温
検出 FID
上記の通り、FASN遺伝子型を要因とする一元配置分散分析を行った結果、筋肉内脂肪における脂肪酸含有量は、ハプロタイプ型の分類により、脂肪酸種毎にそれぞれ異なっていた。炭素数14並びに16の各飽和脂肪酸においては、AR/AR型、TW/AR型、TW/TW型の順に各含有量は高い値を示した。これに対し、炭素数18の1価不飽和脂肪酸(オレイン酸)は、TW/TW型、TW/AR型、AR/AR型の順にその含有量は高い値を示した。
前述の通り、オレイン酸含有量は和牛肉の食味との関連が示唆されているが、この結果から、FASN遺伝子の2つの対立遺伝子のうち、TW型の対立遺伝子を保有する牛はAR型の対立遺伝子を保有する牛よりもオレイン酸含有量が高く、逆にこれ以外の脂肪酸含有量は低くなる傾向を示すことが分かった。すなわち、FASN遺伝子の遺伝子型を調べることにより、牛肉の食味の良さをも判定することが可能であることが示された。
なお、表1中、肩文字a、b、cはp<3.93×10-20で、またd、e、fはp<0.002で、またg、h、iはp<2.4×10-6で、それぞれ有意差が認められた。
(2)黒毛和種Aの半兄弟集団におけるFASN遺伝子型とオレイン酸含有量の関連性
しかし、上記(1)で得られた結果は、あくまで黒毛和種と肉用外国品種であるリムジン種との品種間差であるため、国内の黒毛和種において、FASN遺伝子型の筋肉内脂肪に含まれるオレイン酸含有量に及ぼす影響を確認する必要があった。そこで、山形県内で繋養される黒毛和種肥育牛のうち、有名種雄牛Aの半兄弟集団サンプルを収集し、ゲノムDNAを抽出して、FASN遺伝子型の調査を行った。
下記表2には、有名種雄牛Aの半兄弟集団サンプルにおいてFASN遺伝子型判定を行った結果と、筋肉内脂肪に含まれるオレイン酸含有量の平均値、標準偏差をそれぞれ示したものである。なお、オレイン酸含有量の測定は、上記(1)と同様に行なった。
上記の通り、表1で遺伝子解析用F2集団において見られたものと同様の傾向を、黒毛和種有名種雄牛Aの半兄弟集団においても確認することが出来た。すなわち、筋肉内脂肪に含まれるオレイン酸含有量は、TW/TW型、TW/AR型、AR/AR型の順に高い値を示した。表2中の異なる肩文字は、p<2.2×10-10で有意差を示す。この結果から、FASN遺伝子型は、黒毛和種の筋肉内脂肪に含まれるオレイン酸含有量に対しても効果を持つことが示された。
なお、この有名種雄牛Aの半兄弟サンプルにおいても、上記表1で示した遺伝子解析用F2集団の結果同様、オレイン酸以外の複数の脂肪酸種においてFASN遺伝子型との有意な関係を認めたが、上記表2には特に牛肉の食味との関係が示唆されるオレイン酸含有量との関係についてのみ示した。
(3)黒毛和種3頭の半兄弟集団におけるFASN遺伝子型とオレイン酸含有量の関連性
その後、引き続いて山形県内で繋養される黒毛和種肥育牛集団のサンプル収集を重ねた結果、前述の有名種雄牛Aとは異なる、有名種雄牛3頭からなる半兄弟集団サンプルを確保出来た。これらについても上記(1)と同様にゲノムDNAを抽出してFASN遺伝子型の調査を行った。
下記表3は、有名種雄牛3頭からなる半兄弟集団サンプルにおいて、FASN遺伝子型判定を行った結果と、筋肉内脂肪におけるオレイン酸含有量の平均値、標準偏差をそれぞれ示したものである。
表3の通り、上記(1)、(2)でこれまで確認されたものと同様の傾向が示された。ただし、この集団においてAR型をホモで持つ個体は1頭も存在しなかった。これについては、用いた半兄弟集団の父である3頭の有名種雄牛それぞれのFASN遺伝子型が偶然にも全てTW型のホモであったことが判明し、それが原因であることがわかった。表3中の異なる肩文字はp<5.7×10-4で有意差を示す。
なお、この場合においても、オレイン酸以外の複数の脂肪酸種においてFASN遺伝子型との有意な関係を認めたが、上記表3には、特に牛肉の食味との関係が示唆されるオレイン酸含有量との関係についてのみ示した。
以上、表1〜3に示した通り、FASN遺伝子型が黒毛和種の筋肉内脂肪に含まれるオレイン酸含有量の多寡に対して効果を持つことが更に明白となった。
(4)FASN遺伝子の遺伝子型頻度および遺伝子頻度における品種間差
次に、FASN遺伝子のアミノ酸置換を伴う2つの1塩基多型(SNP)によって構成されるハプロタイプ型で示した遺伝子型頻度と、同じくハプロタイプ型で示した対立遺伝子頻度の、品種間における差異について調査した。
すなわち、下記表4に示す各品種の牛の種雄牛凍結精液から常法により抽出したゲノムDNAをサンプルとして用いて、上記(1)と同様にFASN遺伝子型の調査を行った。なお、ここで用いた黒毛和種およびホルスタイン種の種雄牛凍結精液は、共にすべて国内に流通しているものを用いている。結果を表4に示す。
上記の通り、黒毛和種と乳用種であるホルスタイン種、並びに肉用の外国品種との間では、FASN遺伝子型頻度および遺伝子頻度共に大きな差が見られる事が分かった。すなわち、筋肉内脂肪におけるオレイン酸含有量をより多くする効果を持つFASNハプロタイプ型、つまりTW型が、黒毛和種では他品種と比べ多く広まっていることが明らかとなった。
黒毛和種の肉はホルスタイン種や肉用の外国品種と比べて日本人が好む優れた食味を持つ事が一般的に広く認識されており、また、そこにオレイン酸含有量の多寡が関与することも示唆されているが、上記で見られたFASN遺伝子型頻度および遺伝子頻度の差異は、この黒毛和種が持つ優れた食味の牛肉を生産する能力を裏付けているともいえる。
牛脂肪酸合成酵素遺伝子の第34エキソン上に見出された2ヶ所の1塩基多型(SNP)、およびこれらのSNPを検出するためのPCRプライマーのおおよその位置を説明する図である。 PCR-RFLP法を用いた本発明の判定方法における電気泳動結果を示す図である。
符号の説明
図1中、右方向を向いた白抜き矢印記号はフォワードプライマー(配列表の配列番号1)を、左方向を向いた白抜き矢印記号はリバースプライマー(配列表の配列番号2)を、それぞれ示している。

Claims (14)

  1. 下記の<1>および/または<2>の塩基を検定することによって決定される脂肪酸合成酵素の遺伝子型に基づき、牛の筋肉内脂肪における脂肪酸含有量の多寡を判定する方法。
    <1>配列表の配列番号1に示される塩基配列中、アデニン(A)又はグアニン(G)の何れかである多型部位に相当する第16,024番目の塩基
    <2>同塩基配列中、チミン(T)又はシトシン(C)の何れかである多型部位に相当する第16,039番目の塩基
  2. 脂肪酸がオレイン酸である、請求項1に記載の方法。
  3. 下記の工程(a)および(b)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の判定方法。
    (a)被検体の牛から調製したゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とする遺伝子増幅反応によって、上記<1>および<2>の塩基を含む遺伝子領域を増幅する工程
    (b)前記工程(a)で得られた増幅断片を制限酵素によって消化し、その切断の有無に基づいて脂肪酸合成酵素の遺伝子型を判定する工程
  4. 上記工程(a)における遺伝子増幅反応が、配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列表の配列番号4に示される塩基配列からなるリバースプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応法によって行なわれ、かつ、上記工程(b)における制限酵素として、HhaIおよびNciIを用いることを特徴とする請求項3に記載の判定方法。
  5. DNAチップを用いて上記<1>および/または<2>の塩基を検定することを特徴とする請求項1または2に記載の判定方法。
  6. サーマルサイクラーと蛍光検出器とを備えたポリメラーゼ連鎖反応装置を用いて上記<1>および/または<2>の塩基を検定することを特徴とする請求項1または2に記載の判定方法。
  7. 牛が肉用種である請求項1〜6の何れか1項に記載の判定方法。
  8. 牛が、肉用としても利用される乳用種である請求項1〜6の何れか1項に記載の判定方法。
  9. 上記<1>および/または<2>の塩基を含む遺伝子領域に対して特異的に結合するヌクレオチドプローブを含む、請求項1、2、5〜8のいずれか1項に記載の判定方法において用いられる遺伝子多型検出用キット。
  10. 上記<1>および/または<2>の塩基を含む遺伝子領域を、遺伝子増幅反応により特異的に増幅するためのプライマーを含む、請求項1〜8の何れか1項に記載の判定方法において用いられる遺伝子多型検出用キット。
  11. 上記<1>および/または<2>の塩基を含む遺伝子領域を、遺伝子増幅反応により特異的に増幅するためのプライマー。
  12. 上記<1>および/または<2>の塩基を含む遺伝子領域に対して特異的に結合するヌクレオチドプローブ。
  13. 請求項1〜8の何れか1項に記載の判定方法の結果に基づき、オレイン酸含有量の多い牛肉が得られる牛かどうかを判定する方法。
  14. 請求項1〜8の何れか1項に記載の判定方法の結果に基づき、オレイン酸含有量の多い牛肉が得られる牛を選抜・育種する方法。
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