JP3619833B2 - ステアロイル−CoAデサチュラーゼの遺伝子型に基づき、牛肉の風味や食感の良さ等を判定する方法 - Google Patents

ステアロイル−CoAデサチュラーゼの遺伝子型に基づき、牛肉の風味や食感の良さ等を判定する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステアロイル-CoAデサチュラーゼの遺伝子型に基づき、脂肪中の不飽和脂肪酸含有量の多寡を判定する方法に関し、より具体的にはその判定結果に基づき、より風味や食感の良い肉質の牛かどうか等を判定する方法に関するものである。本発明は、特に、畜産(牛の飼育・繁殖・育種・改良等)、牛肉の生産加工、酪農、乳製品(牛乳および牛乳を原材料に使用したバター等の加工食品)の生産加工等の諸分野に有用な技術を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
牛の体脂肪の不飽和度は、牛肉の肉質における食感や風味に関係することが知られている。一般に、体脂肪の不飽和度が高いと融点が低く、牛肉を口に入れたときに口溶けの良い食感や風味を与える肉質ということができる。
【0003】
しかし、牛がこのような肉質を持つかどうかを判定するためには、実際にその牛肉を食して調べる感応試験などによるほかなく、より客観的で簡易かつ効率的な判定方法、例えば、牛の特定の遺伝子型に基づいて簡易にその牛肉の肉質を判定するといった検査方法は従来存在しなかった。
【0004】
ところで、牛の体脂肪を不飽和化する酵素として、ステアロイル-CoAデサチュラーゼ(stearoyl-CoA desaturase(SCD))が知られている。この酵素は、生体内において脂質の生合成や分解に重要な役割を果たすステアロイル-CoAを不飽和化する酵素であり、その牛(Bos taurus)由来のタンパク質のアミノ酸配列および遺伝子のcDNA配列については、下記の非特許文献1に記載されている。これらの配列情報は、本発明者らの提出によるものである。
【0005】
【非特許文献1】
DDBJ/EMBL/GenBank databases:アクセッション番号AB075020
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、牛の体脂肪の不飽和度(換言すれば、不飽和脂肪酸含有量の多寡)は、牛肉の風味や食感等に関係しており、牛の特定の遺伝子型に基づいて不飽和脂肪酸含有量の多寡を判定することができれば、その牛肉の風味や食感等を簡易に検査できることにもなる。そして、このような遺伝子型に基づく判定方法は、単に風味や食感の良い肉質を持つ肉用種(肉牛)の選別に役立つばかりでなく、例えば種付けの際、遺伝子型に基づき分類された、より風味や食感の良い肉質を持つ牛同士を交配させる等して、牛の育種や品種改良などにも有用である。
【0007】
また、牛の体脂肪の不飽和度は、牛肉の摂食によるコレステロール蓄積とも関係しており、牛肉を主食とする欧米先進国において特に重要視されている牛の重要な形質である。このような健康面、病気予防の点からも、遺伝子型に基づき不飽和脂肪酸含有量の多寡を判定する方法は、その有用性が高いものと考えられる。
【0008】
さらに、乳用種(乳牛)における乳脂肪中の不飽和の程度についても、バター等の乳製品の食感や味覚に影響を与えると考えられ、例えば、乳脂肪中の不飽和脂肪酸含有量が高く融点が低い牛乳を原材料に使用したバターは、口溶けの良い、より柔らかな食感が得られるものと考えられる。遺伝子型に基づき不飽和脂肪酸含有量の多寡を判定する上記の判定方法は、このようなより柔らかな食感の乳製品を生産するための牛乳・乳牛の選別などにも有用である。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、その目的は、牛の遺伝子型に基づいて脂肪中の不飽和脂肪酸含有量の多寡を簡易かつ精度良く判定するための判定方法を提供すること、さらに、その判定結果に基づいて牛肉の風味や食感等をより客観的に判定する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、特に前記ステアロイル-CoAデサチュラーゼ遺伝子に着目し、同遺伝子と牛体脂肪の不飽和度との関連について鋭意研究した結果、(1) 同遺伝子において複数の一塩基多型(SNP)が存在すること、(2) これら一塩基多型における塩基の種類にしたがって分類すると、同遺伝子の遺伝子型として大別して2つのハプロタイプが存在すること、(3) さらに、この2つのタイプ間で牛体脂肪の不飽和度が有意に異なること、等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、産業上有用な方法・物として、下記A)〜)の発明を含むものである。
A) ステアロイル -CoA デサチュラーゼの遺伝子型に基づき、牛の体脂肪における不飽和脂肪酸含有量の多寡を判定し、その結果に基づき、風味や食感の良い牛肉が得られる牛かどうかを判定する方法であって、
下記(1)〜(8)の何れかの塩基を検定することによって、ステアロイル -CoA デサチュラーゼの遺伝子型を決定し、第878番目の塩基がシトシン(C)の場合である「A型」のハプロタイプをホモで有する牛は、同塩基がチミン(T)の場合である「V型」のハプロタイプをホモで有する牛に比べて、風味や食感の良い肉質を持つと評価する方法。
(1) 配列番号1に示される遺伝子の塩基配列中、グアニン(G)又はアデニン(A)の何れかである多型部位に相当する第702番目の塩基
(2) 同塩基配列中、シトシン(C)又はチミン(T)の何れかである多型部位に相当する第762番目の塩基
(3) 同塩基配列中、チミン(T)又はシトシン(C)の何れかである多型部位に相当する第878番目の塩基
(4) 同塩基配列中、チミン(T)又はシトシン(C)の何れかである多型部位に相当する第1905番目の塩基
(5) 同塩基配列中、シトシン(C)又はチミン(T)の何れかである多型部位に相当する第3143番目の塩基
(6) 同塩基配列中、アデニン(A)又はグアニン(G)の何れかである多型部位に相当する第3351番目の塩基
(7) 同塩基配列中、アデニン(A)又はグアニン(G)の何れかである多型部位に相当する第3537番目の塩基
(8) 同塩基配列中、アデニン(A)又はグアニン(G)の何れかである多型部位に相当する第4736番目の塩基
B) 上記A)記載の判定方法であって、被検体の牛から調製したゲノムDNAまたはcDNAを鋳型にして上記(1)〜(8)の何れかの塩基を含む遺伝子領域を増幅する工程と、得られた増幅断片を制限酵素によって消化し、その切断の有無によりステアロイル -CoA デサチュラーゼの遺伝子型を判定する工程とを含む判定方法。
C) 上記B)記載の判定方法であって、上記増幅工程において配列番号5の塩基配列を有するフォワードプライマー及び配列番号6の塩基配列を有するリバースプライマーを用いたPCR法による増幅を行うと共に、制限酵素に Nco I を用いることを特徴とする判定方法。
D) 上記A)記載の判定方法であって、DNAチップ等の遺伝子多型検出器具を用いて上記(1)〜(8)の何れかの塩基を検定することを特徴とする判定方法。
E) 黒毛和種などの肉用種から得られる肉質の判定に用いることを特徴とする上記A)〜D)の何れかに記載の判定方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的態様、技術的範囲等について詳しく説明する。
【0013】
(1) 本発明の判定方法
本発明の判定方法は、前述のとおり、ステアロイル-CoAデサチュラーゼの遺伝子型に基づき、牛の体脂肪または乳脂肪における不飽和脂肪酸含有量の多寡を判定する方法である。
【0014】
本明細書において、「牛」とは、ウシ属(Bos)に属する動物を意味するが、特に家畜牛(Bos primigenius)を意味するものとする。この「家畜牛」には、ヨーロッパ牛(Bos taurus)とインド牛(Bos indicus)とが含まれ、ヨーロッパ牛(Bos taurus)には、黒毛和種(Japanese Black)、褐毛和種、無角和種、日本短角種などの和牛、及び、ホルスタイン種、ジャージー種、肉用ショートホーン種、ヘレフォード種、アバデイーンアンガス種などのヨーロッパ家畜牛が包含されるものとする。判定対象(被検体)となる「牛」は、肉用種(肉牛)、乳用種(乳牛)のいずれであってもよい。
【0015】
また、本明細書において、「ステアロイル-CoAデサチュラーゼ(stearoyl-CoA desaturase。以下、略して「SCD」という。)」とは、ステアロイル-CoAを不飽和化する牛由来の酵素である。配列番号1には、本発明者らが黒毛和種から単離しその配列を決定したSCD遺伝子のcDNA配列が、配列番号2には、同遺伝子がコードするSCDタンパク質のアミノ酸配列がそれぞれ示される。同cDNA配列並びにアミノ酸配列は、DDBJ/EMBL/GenBank databasesのアクセッション番号AB075020に記載される配列と同一であるが、後述の一塩基多型(SNP)の表記の点で相違する。
【0016】
図1は、上記SCD遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)領域並びに非翻訳領域(5’UTR及び3’UTR)を模式的に示すものである。図中の各数字は、ORF領域の第1番目のヌクレオチドを「1」とし、同位置を基点として各位置が同位置から何番目のヌクレオチドに相当するかその番号を示している。
【0017】
同図の下側には、本発明者らが詳細に調査検討した結果、SCD遺伝子(非翻訳領域を含む)上で見出した8つの一塩基多型(SNP)が示される。これらの一塩基多型(SNP)は、SCD遺伝子の塩基配列上に生じた変異ともいえるが、以下では、これら一塩基多型(SNP)の位置を多型部位と称し、各多型部位の塩基を5’側から順番に下記(1)〜(8)の塩基と称することにする。
(1) グアニン(G)又はアデニン(A)の何れかである多型部位に相当する第702番目の塩基
(2) シトシン(C)又はチミン(T)の何れかである多型部位に相当する第762番目の塩基
(3) チミン(T)又はシトシン(C)の何れかである多型部位に相当する第878番目の塩基
(4) チミン(T)又はシトシン(C)の何れかである多型部位に相当する第1905番目の塩基
(5) シトシン(C)又はチミン(T)の何れかである多型部位に相当する第3143番目の塩基
(6) アデニン(A)又はグアニン(G)の何れかである多型部位に相当する第3351番目の塩基
(7) アデニン(A)又はグアニン(G)の何れかである多型部位に相当する第3537番目の塩基
(8) アデニン(A)又はグアニン(G)の何れかである多型部位に相当する第4736番目の塩基
【0018】
配列番号1の塩基配列においては、上記8つの多型部位の塩基のそれぞれを、ユニバーサルコード「r」又は「y」の何れかで表記している。
【0019】
尚、上記(1)〜(8)の塩基に付されている番号は、本発明者らがその配列を決定した、配列番号1に示されるSCD遺伝子のcDNA配列にしたがって翻訳領域(ORF領域)の第1番目のヌクレオチドから数えて何番目に該当するかを示すものである。他方、SCD遺伝子のゲノムDNA配列の場合、イントロン配列が介在するため、上記(1)〜(8)の塩基は、第1エクソンの第1番目のヌクレオチドから数えた番号が上記cDNA配列上の番号とは異なるものとなる。したがって、ゲノムDNA配列の場合は、上記(1)〜(8)の塩基の各位置を示す番号について、イントロン配列を考慮して読み替えて(もしくはエクソン領域上の番号として)解釈するものとする。
【0020】
また、配列番号1に示されるcDNA配列は、黒毛和種から単離したSCD遺伝子の塩基配列であり、黒毛和種以外の牛では、突然変異などによりSCD遺伝子上(特に非翻訳領域(UTR))において1〜数個の塩基の欠失または挿入等が生じている可能性がある。この場合、上記(1)〜(8)の塩基の各位置を示す番号については、このような塩基の欠失または挿入等を考慮して読み替えて解釈するものとする。
【0021】
図1に示すように、上記(1)〜(8)の塩基のうち、上記(1)〜(3)の塩基がORF領域内に存在する。さらに、このうち第3番目の多型部位の塩基、即ち上記(3)の塩基がチミン(T)であるかシトシン(C)であるかに応じて、コードするアミノ酸の置換をもたらすことが判明した。上記(3)の塩基がチミン(T)のときは、コードするアミノ酸はバリン(Val)であり、シトシン(C)のときは、コードするアミノ酸はアラニン(Ala)である。このように、上記(3)の塩基(換言すれば、第878番目の塩基)の置換はアミノ酸置換を生じさせる。本発明者らは、バリン(Val)をコードする前者の遺伝子型を便宜上「V型」と呼び、アラニン(Ala)をコードする後者の遺伝子型を便宜上「A型」と呼ぶこととした。
【0022】
また、上記8つの一塩基多型(SNP)は互いに独立した関係にはなく、原則として連鎖していることが大量の遺伝子解析の結果判明した。例えば、第878番目の塩基が「V型」であるチミン(T)のときは、同じ遺伝子上の他の7つの一塩基多型(SNP)は原則として図1の左側に表記される塩基であった。反対に、第878番目の塩基が「A型」であるシトシン(C)のときは、同じ遺伝子上の他の7つの一塩基多型(SNP)は原則として図1の右側に表記される塩基であった。このことは、遺伝子型が「V型」か「A型」かを調べる場合、第878番目の塩基を直接調べる方法以外に、他の一塩基多型(SNP)の塩基を調べることによって第878番目の塩基を間接的に調べることができることを意味する。
【0023】
尚、例外的に、第878番目の塩基と他の一塩基多型(SNP)の塩基とが上記の関係で連鎖していない遺伝子も稀に存在した。しかしこの場合でも、ORF領域内の上記(1)〜(3)の塩基はすべて連鎖していたので、第702番目の塩基または第762番目の塩基を調べることによって、遺伝子型が「V型」か「A型」かを間接的に調べることが可能である。
【0024】
このように、SCD遺伝子の遺伝子型には、大別して「V型」と「A型」の2つのハプロタイプが存在することが分かったが、さらなる調査検討の結果、上記SCD遺伝子の遺伝子型と牛の体脂肪の不飽和度(換言すれば、不飽和脂肪酸含有量の多寡)とが関連することを見出した。即ち、上記「V型」と「A型」との間で、牛の体脂肪の不飽和度が有意に異なることが判明した。結果の詳細は後述の実施例において説明するが、被検体の牛の体脂肪における一価不飽和脂肪酸(MUFA)含有量の割合は、A型のSCD遺伝子をホモで有する場合(A/A)、V型とA型のSCD遺伝子をヘテロで有する場合(V/A)、V型のSCD遺伝子をホモで有する場合(V/V)の順番で高い値を示した(例えば、後述の表1参照)。
【0025】
前述のように、牛の体脂肪の不飽和度は、牛肉の肉質における食感や風味に関係しており、一般に、体脂肪の不飽和度が高いと融点が低く、牛肉を口に入れたときに口溶けの良い食感や風味を与える肉質ということができる。したがって、SCD遺伝子の遺伝子型が(A/A)の牛は、(V/V)の牛に比べて風味や食感の良い肉質を持つと評価することができる。このように、SCD遺伝子の遺伝子型を調べることにより、牛の体脂肪の不飽和度のみならず、より風味や食感の良い牛肉が得られる牛かどうかを判定することが可能になる。
【0026】
さらに、ホルスタイン種について調査したところ、上記と同様、SCD遺伝子の遺伝子型と体脂肪の不飽和度とが関連しており、「V型」に比べ「A型」のほうが体脂肪の不飽和度が高かった。ホルスタイン種の雌は乳用牛であり、乳脂肪の不飽和度についてもSCD遺伝子の遺伝子型と関連し、「V型」に比べ「A型」のほうが乳脂肪の不飽和度が高く、さらに、乳脂肪の不飽和度が高く融点が低い牛乳を原材料に使用したバター等の乳製品は、口溶けの良い、より柔らかな食感が得られると考えられる。このように、SCD遺伝子の遺伝子型を調べることにより、乳用牛の乳脂肪の不飽和度、さらに、より柔らかい食感の乳製品(牛乳および牛乳を原材料に使用したバター等の加工食品)が得られる牛かどうかの判定も可能と考えられる。
【0027】
本発明の判定方法において、SCD遺伝子の遺伝子型を調べる方法は特に限定されるものではなく、SCD遺伝子上の第878番目の塩基がチミン(T)であるかシトシン(C)であるかを直接的または間接的に調べることが可能な従来公知の方法を適用することができる。PCR-RFLP法を用いて前記(1)〜(3)の何れかの塩基を検定することによりSCD遺伝子の遺伝子型を調べる方法は簡易な方法であり、精度も良好であるので、以下ではこの方法について簡単に説明する。
【0028】
(2) PCR-RFLP法によるSCD遺伝子型の判定方法
判定に供する遺伝子試料は、ゲノムDNAであってもcDNAであっても何れでもよい。ゲノムDNAの場合は、被検体の牛(屠殺前後を問わない)の任意の器官・組織・細胞(血液、羊水中の細胞、採取した組織等を培養した細胞を含む)から常法に従ってDNAを精製・抽出すればよい。後述の実施例では筋肉組織からゲノムDNAを調製している。cDNAの場合は、被検体の牛の任意の器官・組織・細胞から常法に従ってmRNAを精製・抽出した後、逆転写酵素によって合成すればよい。
【0029】
次に、一塩基多型(SNP)における塩基の同定(SNPタイピング)のため、上記の方法で調製したゲノムDNAまたはcDNAを鋳型にしてPCR法を行い、前記(1)〜(3)の何れかの塩基を含む遺伝子領域を増幅する。その後、得られた増幅断片を適当な制限酵素によって消化し、その切断の有無によりSCD遺伝子の遺伝子型を判定する。
【0030】
上記PCR法における各条件、使用する試薬・プライマーおよび制限酵素などは特に限定されるものではないが、以下では、後述の実施例において使用した条件等について、遺伝子試料がゲノムDNAの場合とcDNAの場合とに分けて説明する。
【0031】
〔A〕 遺伝子試料がゲノムDNAの場合
PCR反応液の組成は、ゲノムDNA20ngに、TaKaRa Ex Taq polymerase HS 0.5 Unit、10×Taq polymerase buffer 2.0μl、25mM dNTP mix 1.6μl、フォワードプライマー(10pmol)及びリバースプライマー(10pmol)各1.0μlを加えたものを超純水で20μlにメスアップした。使用したプライマー、制限酵素等は、前記(1)〜(3)の何れの塩基を検定するかで以下のように異なる。
【0032】
〔A−1〕 第878番目の塩基を直接検定する場合
この場合、設計したフォワードプライマー及びリバースプライマーの配列はそれぞれ下記(a),(b) に示すとおりである。
Figure 0003619833
【0033】
上記リバースプライマーの配列は、イントロン内の塩基配列をもとに設計したものである。PCRの反応条件は、まず、(1)94℃ 2分00秒、次に、(2)94℃ 0分30秒、65℃ 0分30秒、72℃ 1分00秒を1サイクルとして、これを35サイクル行い、最後に、(3)72℃ 7分00秒、に設定した。
【0034】
上記PCR法によって323bpのPCR増幅産物を得た。このPCR産物を制限酵素Fnu 4HIで処理すると、第878番目の塩基がチミンの場合、PCR産物のこの部位は同制限酵素で切断されない。このとき、コードするアミノ酸はバリンに相当するため、遺伝子型はV型と判定される。一方、第878番目の塩基がシトシンの場合は、この部位は制限酵素Fnu 4HIで切断されるので、切断される場合はA型と判定される。
【0035】
〔A−2〕 第702番目の塩基を検定する場合
この場合、設計したフォワードプライマー及びリバースプライマーの配列はそれぞれ下記(c),(d) に示すとおりである。
Figure 0003619833
【0036】
PCRの反応条件は、上記〔A−1〕の場合と同じである。このPCR法によって392bpのPCR増幅産物を得た。このPCR産物を制限酵素Nco Iで処理すると、第702番目の塩基がアデニンの場合、PCR産物のこの部位は同制限酵素で切断される。このとき、第878番目の塩基はシトシンであるから、遺伝子型はA型と判定される。一方、第702番目の塩基がグアニンの場合は、この部位は制限酵素Nco Iで切断されないので、切断されない場合はV型と判定される。
【0037】
〔A−3〕 第762番目の塩基を検定する場合
この場合、設計したフォワードプライマー及びリバースプライマーの配列はそれぞれ下記(e), (f) に示すとおりである。
Figure 0003619833
【0038】
上記フォワードプライマーの第22番目の塩基(g)については、SCD遺伝子の塩基配列上ではチミンであるが、プライマー合成の際、この部位にグアニンを合成することによりRsa Iの制限酵素認識部位を導入した。
【0039】
PCRの反応条件は、前記〔A−1〕の場合と同様であるが、前記(2)のステップにおける温度65℃を60℃に変更した。このPCR法によって121bpのPCR増幅産物を得た。このPCR産物を制限酵素Rsa Iで処理すると、第762番目の塩基がシトシンの場合、PCR産物のこの部位は同制限酵素で切断される。このとき、第878番目の塩基はチミンであるから、遺伝子型はV型と判定される。一方、第762番目の塩基がチミンの場合は、この部位は制限酵素Rsa Iで切断されないので、切断されない場合はA型と判定される。
【0040】
〔B〕 遺伝子試料がcDNAの場合
PCR反応液の組成は、ゲノムDNA のときと同様、cDNA20ngに、TaKaRa Ex Taq polymerase HS 0.5 Unit、10×Taq polymerase buffer 2.0μl、25mM dNTP mix 1.6μl、フォワードプライマー(10pmol)及びリバースプライマー(10pmol)各1.0μlを加えたものを超純水で20μlにメスアップした。使用したプライマー、制限酵素等は、前記(1)〜(3)の何れの塩基を検定するかで以下のように異なる。
【0041】
〔B−1〕 第878番目の塩基を直接検定する場合
この場合、設計したフォワードプライマー及びリバースプライマーの配列はそれぞれ下記(g),(h) に示すとおりである。
Figure 0003619833
【0042】
PCRの反応条件は、前記〔A−1〕の場合と同じである。このPCR法によって335bpのPCR増幅産物を得た。このPCR産物を制限酵素Fnu 4HIで処理すると、第878番目の塩基がチミンの場合、PCR産物のこの部位は同制限酵素で切断されない。このとき、コードするアミノ酸はバリンに相当するため、遺伝子型はV型と判定される。一方、第878番目の塩基がシトシンの場合は、この部位は制限酵素Fnu 4HIで切断されるので、切断される場合はA型と判定される。
【0043】
〔B−2〕 第702番目の塩基を検定する場合
この場合、設計したフォワードプライマー及びリバースプライマーの配列はそれぞれ下記(i),(j) に示すとおりである。
Figure 0003619833
【0044】
PCRの反応条件は、前記〔A−1〕の場合と同じである。このPCR法によって1468bpのPCR増幅産物を得た。このPCR産物を制限酵素Nco Iで処理すると、第702番目の塩基がアデニンの場合、PCR産物のこの部位は同制限酵素で切断される。このとき、第878番目の塩基はシトシンであるから、遺伝子型はA型と判定される。一方、第702番目の塩基がグアニンの場合は、この部位は制限酵素Nco Iで切断されないので、切断されない場合はV型と判定される。
【0045】
〔B−3〕 第762番目の塩基を検定する場合
この場合、設計したフォワードプライマー及びリバースプライマーの配列はそれぞれ下記(k), (l) に示すとおりである。
Figure 0003619833
【0046】
上記フォワードプライマーの第22番目の塩基(g)については、前記〔A−3〕と同様、SCD遺伝子の塩基配列上ではチミンであるが、プライマー合成の際、この部位にグアニンを合成することによりRsa Iの制限酵素認識部位を導入した。
【0047】
PCRの反応条件は、前記〔A−3〕の場合と同じである。このPCR法によって265bpのPCR増幅産物を得た。このPCR産物を制限酵素Rsa Iで処理すると、第762番目の塩基がシトシンの場合、PCR産物のこの部位は同制限酵素で切断される。この場合、第878番目の塩基はチミンであるから、遺伝子型はV型と判定される。一方、第762番目の塩基がチミンの場合は、この部位は制限酵素Rsa Iで切断されないので、切断されない場合はA型と判定される。
【0048】
尚、上記PCR-RFLP法の何れの場合も、制限酵素の反応は、PCR産物10μlに各制限酵素に対応する緩衝液2.0μlと制限酵素2Unitとを添加した後、超純水で20μlにメスアップし、この反応液を37℃下で一晩反応させた。電気泳動の条件は、3.0%アガロースゲルを用いて、100V、30分間電気泳動を行った。
【0049】
図3には、電気泳動の結果が示される。この結果は、前記〔A−2〕のゲノムDNAを遺伝子試料に用い、第702番目の塩基を検定した場合のものであり、後述の実施例は基本的にこの方法を用いてSCD遺伝子の遺伝子型を判定している。同図に示すように、短いバンドのみの場合はA/A型、長いバンドのみの場合はV/V型、両方のバンドが現れた場合はV/A型と判定できる。このように、PCR-RFLP法によれば簡便かつ精度良くSCD遺伝子の遺伝子型を調べることができる。
【0050】
(3) 本発明の判定方法の変更態様
前述したように、本発明の判定方法は、上記(2)のPCR-RFLP法に限定されるものではない。例えば、PCR-RFLP法により判定するにしても、各反応条件、使用する試薬・プライマー・制限酵素などは様々に変更可能である。尚、上記(2)のPCR-RFLP法において、プライマーの設計は、ヘテロタイプの検出を確認するため及び制限酵素による切れ残りの可能性を排除するため、PCR増幅産物中の検出したい多型部位の塩基以外にも制限酵素認識部位が含まれるようプライマーの位置を設定した。また、電気泳動において異なるDNAバンドが重なって写らないようにするため、切断されたDNA断片の大きさが一致しないようプライマーの位置を設定した。
【0051】
勿論、本発明の判定方法は、PCR-RFLP法以外の方法を使用してもよい。SCD遺伝子上の前記(3)の塩基(第878番目の塩基)を直接的または間接的に検定可能な方法であれば、塩基配列上の点変異を検出する方法、一塩基多型(SNP)における塩基を検定する方法(SNPタイピング)など従来公知の種々の方法を適用することができる(例えば、文献「ポストシークエンスのゲノム科学(1) SNP遺伝子多型の戦略」(中山書店)参照)。
【0052】
一例として、DNAチップ等の遺伝子多型検出器具を用いた判定方法を挙げることができる。この方法は、前記(1)〜(8)の何れかの塩基を検定するためのプローブを基板上に配置したDNAチップ(または同種の器具)を作製し、このDNAチップ等を用いて被検体からの遺伝子試料とプローブとのハイブリダイゼーションシグナルの有無により、一塩基多型(SNP)のタイピングを行う方法である。プローブには、前記(1)〜(8)の多型部位の何れかの塩基を含む塩基配列またはその相補配列を用いることができる。尚、ここで、「DNAチップ」とは、主として、合成したオリゴヌクレオチドをプローブに用いる合成型DNAチップを意味するが、PCR産物などのcDNAをプローブに用いる貼り付け型DNAマイクロアレイをも包含するものとする。このような本発明の判定方法に利用可能なDNAチップ等の遺伝子多型検出器具も本発明に含まれる。
【0053】
その他にも、本発明の判定方法として、PCR-SSCP法などの点変異検出法を用いてもよいし、本発明の判定方法において、PCR法以外の他の増幅方法(例えば、RCA法など)を用いてもよい。また、RFLP法の代わりに、DNA増幅後に塩基配列決定装置(シークエンサー)などで直接増幅断片の塩基配列を決定し、SNPのタイピングを行ってもよい。
【0054】
尚、SCD遺伝子の塩基配列は、ウシ属(Bos)に属する動物間、さらにヨーロッパ牛(Bos taurus)に属する動物間でも、前記8つの一塩基多型(SNP)以外に変異が生じている可能性がある。つまり、厳密には配列番号1に示される塩基配列とは異なるSCD遺伝子配列を持つ牛も存在する可能性があるが、このような牛に対しても前述した本発明の判定方法を用いてSCD遺伝子の遺伝子型を調べることにより、体脂肪または乳脂肪の不飽和度の判定は可能である。
【0055】
また、被検体の牛が遺伝子組換え法などにより人為的に作出された牛の場合は、SCD遺伝子にも人為的に変異が導入されている可能性があるが、このような場合も上記と同様に本発明の判定方法を適用することができる。
【0056】
被検体の牛から調製する遺伝子試料はDNAであってもRNAであってもよいし、遺伝子試料の調製方法も特に限定されるものではない。また、SCD遺伝子の遺伝子型は、タンパク質をコードするコード配列以外に、非翻訳領域(UTR)の配列やイントロン配列などから決定してもよい。
【0057】
(4) 本発明の利用分野(有用性)
本発明の判定方法は、SCD遺伝子の遺伝子型に基づき、脂肪中の不飽和脂肪酸含有量の多寡を判定する方法であり、畜産(牛の飼育・繁殖・育種・改良等)、牛肉の生産加工、酪農、乳製品の生産加工等の分野に利用可能である。
【0058】
前述したように、牛の体脂肪の不飽和度は、牛肉の肉質における食感や風味に関係しており、一般に、体脂肪の不飽和度が高いと融点が低く、牛肉を口に入れたときに口溶けの良い食感や風味を与える肉質ということができる。したがって、本発明の判定方法により、黒毛和種などの肉用種(肉牛)について、より風味や食感の良い肉質を持つ牛かどうかを評価することができる。さらに、この評価結果をもとに、例えば種付けの際、遺伝子型に基づき分類された、より風味や食感の良い肉質を持つ牛同士を交配させる等して、牛の育種や品種改良などにも利用できる。
【0059】
また、乳脂肪の不飽和度が高いと融点が低く、このような牛乳を原材料に使用したバター等の乳製品は、口溶けの良い、より柔らかな食感が得られると考えられる。したがって、本発明の判定方法により、ホルスタイン種などの乳用種(乳牛)について、より柔らかい食感の乳製品が得られる牛かどうかを評価することができる。さらに、上記の肉牛と同様、この評価結果を乳牛の育種や品種改良などに役立てることができる。
【0060】
尚、牛の体脂肪の不飽和度は、牛肉の摂食によるコレステロール蓄積とも関係しており、このような健康面、病気予防の点からも、本発明の判定方法により体脂肪の不飽和度を判定する方法は、その有用性が高い。例えば、低い融点の脂肪を持つ牛肉は、牛肉を主食とする欧米諸国において、健康に良いヘルシー牛肉の生産や販売に繋がるものとして重要である。
【0061】
さらに、遺伝子組換え法などを用いて牛の品種改良を行ったり、畜産等の分野に有用な遺伝子実験を行う場合にも、対象となる牛や精子、受精卵などの選別に本発明の判定方法を利用できる。その他、出産前の判定も可能であり、例えば子宮の羊水から牛胎児由来の細胞を採取し、その細胞から遺伝子試料を調製し、より風味や食感の良い肉質を持つ牛かどうか等を判定すればよい。
【0062】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0063】
本実施例では、被検体の牛(黒毛和種)から調製したゲノムDNAを遺伝子試料に用い、前述のPCR-RFLP法により判定を行った。また、本実施例では、第702番目の塩基を調べることで、SCD遺伝子の遺伝子型がV型であるかA型であるかを判定した。PCR法に使用した試薬、反応条件などは前述したとおりであり、ここではその説明を省略する。尚、図2は、SCD遺伝子のcDNAの翻訳領域の塩基配列を示すものであるが、PCR法に使用したフォワードプライマー及びリバースプライマーに相当する位置についても同図に示される。図中、四角で囲んだCCATGGの配列は制限酵素Nco I認識部位を示す。このうち第3番目が前記の第702番目のSNPに対応するが、この位置の塩基がA(アデニン)の場合はNco Iで切断されるので短いDNA断片が得られる。このとき、第878番目の塩基はC(シトシン)であるため、短いDNA断片が得られた場合は遺伝子型はA型と判定される。一方、第702番目の塩基がG(グアニン)の場合はNco Iで切断されないので、短いDNA断片が得られず、このとき、第878番目の塩基はT(チミン)であるため、遺伝子型はV型と判定される(図3参照)。
【0064】
下記表1は、上記の判定方法により被検体の各牛の遺伝子型を決定した結果であるが、あわせて各遺伝子型ごとに牛の腎周囲脂肪における不飽和脂肪酸含有量を測定した結果について表の右欄に示される。
【0065】
【表1】
Figure 0003619833
【0066】
上記表1に示すように、SCD遺伝子型の1要因で分散分析した結果、脂肪中の不飽和脂肪酸含有量は、A/A型、V/A型、V/V型の順番で高い値を示した。尚、表中の異なる肩文字は危険率5%以下で有意差を示す。
【0067】
同様にして、ロース芯内脂肪における不飽和脂肪酸含有量のSCD遺伝子型間の違いを調べた。その結果を下記表2に示す。
【0068】
【表2】
Figure 0003619833
【0069】
この場合は、SCD遺伝子型間で不飽和脂肪酸含有量に有意差は認められなかったが、上記表2に示すように、A/A型とV/V型とを比較すると、A/A型で不飽和脂肪酸含有量の高い値を示した。
【0070】
さらに、僧帽筋脂肪における不飽和脂肪酸含有量のSCD遺伝子型間の違いを調べた。その結果を下記表3に示す。
【0071】
【表3】
Figure 0003619833
【0072】
上記表3に示すように、SCD遺伝子型の1要因で分散分析した結果、SCD遺伝子型がA/A型、V/A型、V/V型の順番で、不飽和脂肪酸含有量は高い値を示した。尚、表中の異なる肩文字は有意差を示す。「MUFA」は一価の不飽和脂肪酸の合計である。
【0073】
上記表3には各脂肪の融点の測定結果についてもあわせて示される。これからもわかるように、不飽和脂肪酸含有量が高いと融点が低くなり、それだけ口溶けの良い柔らかな肉質が得られるものと考えられる。
【0074】
次に、SCDの遺伝子型頻度と遺伝子頻度の地域間の差異について調査した結果を下記表4に示す。
【0075】
【表4】
Figure 0003619833
【0076】
調査対象の牛は、平成14年7〜9月の間に大阪市場に出荷された肉牛であり、各地域は出荷元であり、記号で示される。表4から、SCDの遺伝子型頻度が地域により異なっているのがわかる。また、この調査の結果、口溶けの良い柔らかな肉質と評価される但馬牛では、A型の遺伝子頻度が高かった。
【0077】
さらに、黒毛和種以外にホルスタイン種についてSCDの遺伝子型を調査し、遺伝子型と不飽和脂肪酸含有量との関連性について調べたところ、V型に比べて、A型で不飽和脂肪酸含有量の高い値を示した。この結果は、黒毛和種に限らず、他の種類の牛においてもSCD遺伝子型と脂肪中の不飽和脂肪酸含有量とが関連していることを示すものである。
【0078】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、ステアロイル-CoAデサチュラーゼの遺伝子型に基づき、牛の体脂肪または乳脂肪における不飽和脂肪酸含有量の多寡を判定する方法に関するものであり、前述したとおり、より風味や食感の良い牛肉(または乳製品)が得られる牛かどうか等の判定、さらに牛の育種や品種改良などに利用できるほか種々の有用性を有するものである。
【配列表】
Figure 0003619833
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Figure 0003619833
Figure 0003619833
Figure 0003619833

【図面の簡単な説明】
【図1】牛のSCD遺伝子上に見出された8つの一塩基多型(SNP)を説明する図である。
【図2】本実施例の判定方法(PCR-RFLP法)において使用したプライマー等を説明する図である。
【図3】本実施例の判定方法における電気泳動の結果を示す図である。

Claims (5)

  1. ステアロイル -CoA デサチュラーゼの遺伝子型に基づき、牛の体脂肪における不飽和脂肪酸含有量の多寡を判定し、その結果に基づき、風味や食感の良い牛肉が得られる牛かどうかを判定する方法であって、
    下記(1)〜(8)の何れかの塩基を検定することによって、ステアロイル -CoA デサチュラーゼの遺伝子型を決定し、第878番目の塩基がシトシン(C)の場合である「A型」のハプロタイプをホモで有する牛は、同塩基がチミン(T)の場合である「V型」のハプロタイプをホモで有する牛に比べて、風味や食感の良い肉質を持つと評価する方法。
    (1) 配列番号1に示される遺伝子の塩基配列中、グアニン(G)又はアデニン(A)の何れかである多型部位に相当する第702番目の塩基
    (2) 同塩基配列中、シトシン(C)又はチミン(T)の何れかである多型部位に相当する第762番目の塩基
    (3) 同塩基配列中、チミン(T)又はシトシン(C)の何れかである多型部位に相当する第878番目の塩基
    (4) 同塩基配列中、チミン(T)又はシトシン(C)の何れかである多型部位に相当する第1905番目の塩基
    (5) 同塩基配列中、シトシン(C)又はチミン(T)の何れかである多型部位に相当する第3143番目の塩基
    (6) 同塩基配列中、アデニン(A)又はグアニン(G)の何れかである多型部位に相当する第3351番目の塩基
    (7) 同塩基配列中、アデニン(A)又はグアニン(G)の何れかである多型部位に相当する第3537番目の塩基
    (8) 同塩基配列中、アデニン(A)又はグアニン(G)の何れかである多型部位に相当する第4736番目の塩基
  2. 請求項1記載の判定方法であって、被検体の牛から調製したゲノムDNAまたはcDNAを鋳型にして上記(1)〜(8)の何れかの塩基を含む遺伝子領域を増幅する工程と、得られた増幅断片を制限酵素によって消化し、その切断の有無によりステアロイル -CoA デサチュラーゼの遺伝子型を判定する工程とを含む判定方法。
  3. 請求項2記載の判定方法であって、上記増幅工程において配列番号5の塩基配列を有するフォワードプライマー及び配列番号6の塩基配列を有するリバースプライマーを用いたPCR法による増幅を行うと共に、制限酵素に Nco I を用いることを特徴とする判定方法。
  4. 請求項1記載の判定方法であって、DNAチップ等の遺伝子多型検出器具を用いて上記(1)〜(8)の何れかの塩基を検定することを特徴とする判定方法。
  5. 黒毛和種などの肉用種から得られる肉質の判定に用いることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の判定方法。
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