JP4238393B2 - 染着重合体粒子及びそれを含む水性インク組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、染料の紫外線劣化が抑えられ、その効果が長期に渡って持続される染着重合体粒子に関する。また、本発明は、この染着重合体粒子を含み、耐光性に優れた印刷物を得ることができ、且つ紙などの浸透性のある基材に印刷した場合にも、十分な耐光性が得られる水性インク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、紙或いはポリオレフィン、ポリエステル等の合成樹脂フィルムからなる基材に印刷する場合、グラビア印刷又はフレキソ印刷用の有機溶剤を含有する印刷インクが用いられてきた。しかし、このような有機溶剤を含有する印刷インクでは、火災、爆発の危険性があるとともに、安全衛生、公害等の面からも好ましくなく、有機溶剤の含有量が少ない、望ましくは有機溶剤を含まない水性インクへの移行が検討され、実用化もされている。
【0003】
このような印刷インクの性能は、一般に、インクに含まれるバインダに依存しており、優れた性能のインクを得るためにはバインダの選択が重要である。水性インクにおいてはエマルジョンタイプ、水溶性タイプ等、種々のバインダが提供されており、密着性、耐水性などに優れた印刷皮膜(インクが基材に塗布され、乾燥した後、形成される文字、図形、模様等を意味する。)を形成することができる。しかし、このように優れた性能のバインダを使用したとしても、特に、着色剤として染料を使用した場合は、明度及び彩度に優れ、美しい色相が得られる反面、その紫外線劣化による褪色等が大きな問題となり、これを抑えるため、通常、紫外線吸収剤が配合される。
【0004】
紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の汎用のものが使用されているが、これらはいずれも染料或いはバインダとの相溶性に劣り、分子量もそれほど大きくはない。そのため、経時的にブリードアウトしてしまって十分な耐光性が長期に渡って維持されないとの問題がある。また、紙等の浸透性のある基材では、印刷時に、媒体の水などとともに紫外線吸収剤が紙等を透過してしまい、印刷塗膜(インクが基材に印刷され、乾燥する前の塗膜を意味する。)に当初より所要量の紫外線吸収剤が含まれておらず、その結果、染料の紫外線劣化が十分に防止されず、印刷皮膜の耐光性が低下するとの問題もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の問題を解決するものであり、紫外線吸収性能を有する重合体粒子を染料によって染着することにより、染料の紫外線劣化が長期に渡って安定して防止される染着重合体粒子を提供することを目的とする。また、本発明は、この染着重合体粒子を含み、優れた耐光性が安定して維持され、且つ紙などの浸透性のある基材であっても、耐光性に優れた印刷物を得ることができる水性インク組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1発明の染着重合体粒子は、アクリル系単量体を含むベース単量体とUV吸収性単量体を用いて得られた重合体粒子が、染料によって染色されている染着重合体粒子であって、上記UV吸収性単量体は、p−メタクリロイルオキシフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、及び2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチル−3’−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールからなる群から選択されることを特徴とする。また、第6発明の水性インク組成物は、染着重合体粒子を含んでいることを特徴とする。
【0007】
上記「染料」は特に限定されず、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料、油性染料及び反応性染料等を、重合体粒子の種類などによる染着の容易さ等を勘案しつつ適宜選択し、使用することができる。
【0008】
例えば、直接染料としては、
〔1〕C.I.ダイレクトブラック17、19、22、32、38、51、56、62、71、74、75、77、94、105、106、107、108、112、113、117、118、132、133、146、154及び168
〔2〕C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、110、142及び144
〔3〕C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230及び231
【0009】
〔4〕C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、120、123、158、160、163、165、168、19、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、225、226、236、237、246、248及び249
〔5〕C.I.ダイレクトオレンジ8、26、79、83及び89
〔6〕C.I.ダイレクトグリーン6、59及び80、などが挙げられる。
【0010】
酸性染料としては、
〔1〕C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、29、31、48、50、51、52、58、60、62、63、64、67、72、76、77、94、107、108、109、110、112、115、118、119、121、12、131、132、139、140、155、156、157、158、159及び191
〔2〕C.I.アシッドイエロー1、3、11、17、19、23、25、29、36、38、40、42、44、49、59、61、70、72、75、76、78、79、98、99、110、111、127、131、135、142、162、164及び165
【0011】
〔3〕C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、57、75、77、80、82、85、87、88、89、92、94、97、106、111、114、115、117、118、119、129、130、131、133、134、138、143、145、154、155、158、168、180、183、184、186、194、198、209、211、215、219、249、252、254、262、265、274、282、289、303、317、320、321及び322
〔4〕C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、54、59、60、62、72、74、78、80、82、83、90、92、93、100、102、103、104、112、113、117、120、126、127、129、130、131、138、140、142、143、151、154、158、161、166、167、168、170、171、182、183、184、187、192、199、203、204、205、229、234、236、249、などを挙げることができる。
【0012】
塩基性染料としては、
〔1〕C.I.ベーシックブラック2及び8
〔2〕C.I.ベーシックイエロー1、2、11、28、35、36、40及び50
〔3〕C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39及び40
〔4〕C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、9、19、21、22、24、25、26、28、29、40、41、44、45、47、54、58、59、60、64、65、66、67、68及び93
〔5〕C.I.ベーシックオレンジ2、14、15、21、22、30、32、33及び34
〔6〕C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、16、21、25、26、27及び28
〔7〕C.I.ベーシックグリーン1、4及び6
〔8〕C.I.ベーシックブラウン1、11及び12、などが挙げられる。
【0013】
分散染料としては、
〔1〕C.I.ディスパーズイエロー3、5、12、54、64及び82
〔2〕C.I.ディスパーズレッド54、58、60、88、92、127及び191
〔3〕C.I.ディスパーズブルー7、56、60、73、81及び91
〔4〕C.I.ディスパーズオレンジ11、13、29及び73
〔5〕C.I.ディスパーズバイオレッド57、などを挙げることができる。
【0014】
油性染料としては、
〔1〕C.I.ソルベントブラック3、5、7、27、28、29及び34
〔2〕C.I.ソルベントイエロー2、14、16、21、25、29、33、40、44、56、82、88、89、93、116、150、151及び163
〔3〕C.I.ソルベントレッド7、8、18、23、24、27、49、82、83、84、109、111、122、125、127、130、132、135、146、218、225及び230
〔4〕C.I.ソルベントブルー5、12、14、25、35、38、48、67、68、70、83、111及び132
〔5〕C.I.ソルベントグリーン3及び7、などが挙げられる。
【0015】
反応性染料としては、
〔1〕C.I.リアクティブブラック1、3、4、5、6、8、9、10、12、13、14及び18
〔2〕C.I.リアクティブイエロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37及び42
〔3〕C.I.リアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63及び64
〔4〕C.I.リアクティブブルー1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44及び46、などを挙げることができる。
【0016】
また、染着の方法も特定はされず、
(1)アニオン性の重合体粒子に塩基性染料を吸着させる方法、
(2)カチオン性の重合体粒子に酸性染料を吸着させる方法、
(3)官能基を有する重合体粒子の表面に、この官能基を利用して反応性染料を化学的に結合させる方法、
(4)染料の単量体を重合させることにより、着色した重合体粒子を直接得る方法、
(5)重合体粒子を得るための単量体の重合を、染料の存在下に行う方法、
(6)重合体粒子を分散染料により染着する方法、
【0017】
(7)水にある程度溶解し得る有機溶剤に染料を溶解して溶液を調製し、この溶液と重合体粒子とを混合する方法、
(8)油性染料を油性の有機溶剤に溶解させた溶液を、水系媒体に微分散させて得られるエマルジョンを重合体粒子と混合する方法等、各種の方法によって染着させることができる。これらの方法のうちでは、重合体粒子の製造のしやすさ、染着重合体粒子の安定性などの点で、特に(1)及び(8)の染着方法が好ましい。
これら染料は紫外線吸収性官能基を有する重合体粒子100重量部あたり、通常、0.1〜1000重量部、好ましくは0.5〜200重量部、更に好ましくは1〜100重量部使用される。
【0018】
第1発明における上記「重合体粒子」は、重合体の生成において、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の単量体(以下、「ベース単量体」という。)と、紫外線吸収性官能基を有する単量体[アクリル系単量体(酸及びエステル並びにメタクリル系単量体のすべてを意味するものとする。)と共重合させる「UV吸収性単量体a」]とを共重合させることにより得ることができる。このように、紫外線吸収性官能基は重合体粒子に化学結合、特に共有結合によって結合されているため、化合物として配合される通常の紫外線吸収剤のようにブリードアウトすることがなく、染料の紫外線劣化が長期に渡って防止され、形成される印刷皮膜の優れた耐光性が安定して維持される水性インク組成物を得ることができる。
【0019】
また、第2発明は、ポリシロキサン系重合体又は含フッ素系重合体の存在下、アクリル系単量体及びUV吸収性単量体aを重合させることにより得られた複合体たる重合体粒子が、染料によって染色されている染着重合体粒子であって、
上記UV吸収性単量体aは、p−メタクリロイルオキシフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、及び2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチル−3’−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールからなる群から選択されることを特徴とする。
【0020】
また、第3発明は、アクリル系単量体にUV吸収性単量体aを共重合させたアクリル系重合体の存在下、重合性シラン化合物を重合させることにより得られた複合体たる重合体粒子が、染料によって染色されている染着重合体粒子であって、
上記UV吸収性単量体aは、p−メタクリロイルオキシフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、及び2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチル−3’−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールからなる群から選択されることを特徴とする。
これらのいずれの染着重合体粒子によっても、第1発明と同様、染料の紫外線劣化が長期に渡って防止され、優れた耐光性を有する印刷皮膜が形成される水性インク組成物を得ることができる。また、第1乃至第3発明の染着重合体粒子は、バインダ機能を有している。そのため、この染着重合体粒子を含む第7発明の水性インク組成物では、通常用いられているバインダは必要としないが、併用することもできる。
【0021】
UV吸収性単量体aとしては、上述のようにp−メタクリロイルオキシフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチル−3’−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等を使用することができる。
【0022】
このようにUV吸収性単量体aは、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系或いはシアノアクリレート系等の紫外線吸収性官能基を有しており、その優れた紫外線劣化防止性能によって染料の紫外線劣化が防止される。これらUV吸収性単量体aは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらUV吸収性単量体a、或いはその他の紫外線吸収性官能基を有する単量体のうちで、含フッ素系単量体と共重合し得る単量体を使用することにより、紫外線吸収性官能基を有する含フッ素系重合体を得ることができる。
【0023】
UV吸収性単量体aは、この単量体とアクリル系単量体との合計量を100重量部(以下、単に「部」という。)とした場合に、0.5〜60部、特に1〜50部、更には2〜40部とすることが好ましい。また、UV吸収性単量体a等、紫外線吸収性官能基を有する単量体の合計量は、紫外線吸収性官能基を有する重合体粒子又は複合体粒子を100部とした場合に、0.5〜80部、特に1〜60部、更には2〜40部とすることが好ましい。UV吸収性単量体a、或いはその他の紫外線吸収性官能基を有する単量体が過少であると、長期に渡り安定した耐光性を得ることができない。更に、これら紫外線吸収性官能基を有する単量体が過多であると、安定した重合が困難になることがある。
【0024】
第1発明における重合体粒子は、ベース単量体と、紫外線吸収性官能基を有する単量体(UV吸収性単量体a)とを、水或いは水系媒体中で乳化重合する方法、これらの単量体を溶液重合した後、水系媒体に再乳化させる方法(以下、単に「再乳化法」という。)等により製造することができる。この乳化重合は、ラジカル重合開始剤を使用し、ソープフリー系或いは乳化剤の存在下で行うことができる。
【0025】
ベース単量体としては、以下の各種のものを用いることができる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、iso−アミル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート類;
【0026】
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート、p−メトキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルコキシ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート類;
【0027】
アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジルメチルアクリレート、エポキシ化シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の不飽和エポキシ化合物類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;
パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;
【0028】
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)ジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロキシプロピオキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル]プロパン、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート類;
【0029】
スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等の芳香族ビニル化合物類;
【0030】
(メタ)アクリロニトリル、クロトンニトリル、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート、ケイ皮酸ニトリル等のシアノ基含有不飽和単量体類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、脂肪酸ビニルエステル等のハロゲン化ビニル化合物類;
1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン類;
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、チッソ(株)製のサイラプレーンFM0711(商品名)等の重合性シリコーン類;
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート等の重合性ヒンダードアミン系光安定化剤類;
【0031】
ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシアミル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ(シクロ)アルキルモノ(メタ)アクリレート類;
【0032】
3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の置換ヒドロキシ(シクロ)アルキルモノ(メタ)アクリレート類;
グリセリンのモノ−又はジ−(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのモノ−またはジ−(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのモノ−、ジ−又はトリ−(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールの遊離水酸基含有(メタ)アクリレート類;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド等のN−メチロール化不飽和カルボン酸アミド類;
【0033】
2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル基含有(メタ)アクリレート類;
2−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、2−ジエチルアミノエチルアクリルアミド、2−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、3−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアミノアルキル基含有アクリルアミド類;
2−(ジメチルアミノエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(ジメチルアミノエトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレート類;
【0034】
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、へキサヒドロフタル酸モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル等のカルボキシル基含有不飽和単量体或いはその無水物類;
(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等の不飽和カルボン酸のアミド類或いはイミド類;
【0035】
N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−iso−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジ(n−プロピル)アクリルアミド、N,N−ジ(iso−プロピル)アクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジ(n−プロピル)メタクリルアミド、N,N−ジ(iso−プロピル)メタクリルアミド等のアルキル基の炭素数がl〜10であるN−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド類;
【0036】
(メタ)アクロレイン、クロトンアルデヒド、ホルミルスチレン、ホルミル−α−メチルスチレン、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミドピバリンアルデヒド、3−(メタ)アクリルアミドメチル−アニスアルデヒド、及び下記の式(1)によって表されるβ−(メタ)アクリロイルオキシ−α,α−ジアルキルプロパナール類等のアルド基を有するエチレン性不飽和化合物類;
【0037】
【化1】
[この式(1)において、R1は水素原子又はメチル基、R2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、R3は炭素数l〜3のアルキル基、R4は炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
【0038】
ジアセトン(メタ)アクリルアミド、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニル−n−プロピルケトン、ビニル−iso−プロピルケトン、ビニル−n一ブチルケトン、ビニル−iso−ブチルケトン、ビニル−tert−ブチルケトン等)、ビニルフェニルケトン、ビニルベンジルケトン、ジビニルケトン、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニトリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−(メタ)アクリレート−アセチルアセテート等のケト基を有するエチレン性不飽和化合物類;
【0039】
これらのうち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、1,3−ブタジエン、イソプレン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンのモノ−又はジ−(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどが好ましい。
【0040】
ラジカル重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物からなる酸化剤と、含糖ピロリン酸鉄処方、スルホキシレート処方、含糖ピロリン酸鉄及びスルホキシレート混合処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤を使用することができる。また、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩を用いることもできる。
【0041】
更に、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2−カルバモイルアザイソブチロニトリル等のアゾ化合物、及びベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物などを使用することもできる。このラジカル重合開始剤としては、レドックス系開始剤及び過硫酸塩が特に好ましい。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、使用する単量体の全量を100部とした場合に、通常、0.05〜5部であり、特に0.1〜2部とすることが好ましい。
【0042】
乳化剤としては、陰イオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、陽イオン性乳化剤、両性乳化剤等、いずれも使用することができるが、特に、分子中にエチレン性不飽和結合を有する反応性乳化剤が好ましい。
【0043】
陰イオン性乳化剤としては、高級アルコール硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル若しくはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩等が挙げられる。また、陰イオン性反応性乳化剤としては、花王株式会社製の商品名「ラテムルS−180A」、三洋化成株式会社製の商品名「エレミノールJS−2」、第一工業製薬株式会社製の商品名「アクアロンHS−10」、旭電化工業株式会社製、商品名「アデカリアソープSE−10N」、及び日本乳化剤株式会社製の商品名「Antox MS−60」等を使用することができる。
【0044】
非イオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。更に、非イオン性反応性乳化剤としては、第一工業製薬株式会社製の商品名「アクアロンRN−20」、旭電化工業株式会社製の商品名「アデカリアソープNE−20」等を用いることができる。また、陽イオン性界面活性剤としては、アルキルピリジニルクロライド、アルキルアンモニウムクロライド等を挙げることができ、両性乳化剤としては、ラウリルベタインが好ましい。
【0045】
これら乳化剤の使用量は、使用する単量体の全量を100部とした場合に、通常、5部以下、特に0.1〜4部、更には0.5〜3部とすることができる。更に、乳化重合は、耐光性に優れる印刷皮膜を形成するために、ソープフリー系で行うことが望ましく、反応性乳化剤を使用することが好ましい。この乳化重合は、ラジカル重合開始剤、乳化剤の他、必要に応じて連鎖移動剤、電解質、pH調整剤等を配合し、使用する単量体の全量を100部とした場合に、通常、100〜500部の水を使用し、重合温度5〜100℃、好ましくは40〜100℃、更には50〜90℃、重合時間0.1〜10時間、特に2〜8時間の条件において行うことができる。
【0046】
乳化重合の重合方式としてはバッチ方式、単量体を分割又は連続して供給する方式、単量体のプレエマルジョンを分割又は連続して添加する方式、或いはこれらの方式を段階的に組み合わせた方式等を採用することができる。また、特に、水溶性の低いベース単量体を使用する場合等においては、高圧ホモジナイザ又は超音波分散機等を用いて、全単量体、水及び乳化剤を強制乳化させて予めプレエマルジョンを調製した後、バッチ方式、プレエマルジョンを分割又は連続して添加する方式等により重合することが好ましい。尚、その際の重合転化率は、99%以上であることが好ましい。
【0047】
また、再乳化法における溶液重合に際しては有機溶媒、ラジカル重合開始剤等が使用される
この有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類及び1,4−ジオキサン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等を使用することができる。
【0048】
溶液重合において使用されるラジカル重合開始剤としては、前記の乳化重合におけると同様の各種のラジカル開始剤等を挙げることができ、アゾ化合物及び有機過酸化物が特に好ましい。溶液重合におけるラジカル重合開始剤の使用量は、使用する単量体の全量を100部とした場合に、通常、0.1〜20部、好ましくは0.5〜10部とすることができる。また、溶液重合時に予め前記乳化重合時に使用されるような反応性乳化剤を使用し、再乳化時の自己乳化機能を付与することもできる。この場合の反応性乳化剤の使用量は、使用する単量体の全量を100部とした場合に、通常、20部以下、特に15部以下、更には10部以下とすることができる。更に、この溶液重合に際しては、有機溶媒、ラジカル重合開始剤の他に、必要に応じて連鎖移動剤等を併用することもできる。
また、この溶液重合は、10〜1000部の有機溶媒を用い、重合温度5〜100℃、好ましくは40〜100℃、更には50〜90℃、重合時間0.1〜10時間、特に2〜8時間の条件において行うことができる。
【0049】
溶液重合により得られる重合体溶液に、水及び必要に応じて中和剤、乳化剤等を加え、加熱または非加熱下で攪拌して、重合体溶液を再乳化させるか、或いは必要に応じて中和剤、乳化剤等を加えた水中に、重合体溶液を滴下し、加熱又は非加熱下で攪拌して、この重合体溶液を再乳化させることにより、目的とする重合体粒子を含む水系分散体を生成させることができる。尚、溶液重合の際に使用した有機溶媒は、再乳化後に加熱、水蒸気蒸留等により、分散系から減量させるか、実質的にそのすべてを除去することが望ましい。
【0050】
更に、重合体粒子は、ベース単量体の一部を使用し、乳化重合法又は再乳化法によってエマルジョンを生成させ、このエマルジョンに含まれる重合体粒子をシードとして、残りの単量体を乳化重合することによって生成させることもできる。この方法において使用される単量体、ラジカル重合開始剤、及び必要に応じて添加される乳化剤、連鎖移動剤等の各成分、並びに重合条件は、前記の乳化重合法の場合と同様である。
【0051】
本発明においては、第2,3発明のように、複合体からなる粒子を使用することができる。このような複合体粒子は、下記[1]〜[2]の方法等によって製造することができ、ポリシロキサン系重合体及び/又は含フッ素系重合体が共存することにより、この複合体は優れた耐候性、耐水性等を有し、印刷物の耐光性等、耐久性がより向上する。
【0052】
[1]水系媒体に分散した紫外線吸収性官能基を有する又は有しないポリシロキサン系重合体粒子の存在下、アクリル系単量体及びUV吸収性単量体aのうちの少なくともアクリル系単量体を重合させる。
[2]水系媒体に分散した紫外線吸収性官能基を有する又は有しない含フッ素系重合体粒子の存在下、アクリル系単量体及びUV吸収性単量体aのうちの少なくともアクリル系単量体を重合させる。
尚、[2]では重合性シラン化合物等を更に配合し、重合させることもできる。
【0053】
重合性シラン化合物としては、下記の一般式(2)
RnSi(OR’)4−n (2)
(式中、Rは炭素数1〜8の有機基、R’は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基、nは0〜2の整数である。)で表されるアルコキシシラン類、及び下記の一般式(3)
R''mSiO(4−m)/2 (3)
(式中、R''は置換又は非置換の1価の炭化水素基、mは0〜3の整数である。)で表される構造単位を有する直鎖状、分岐状若しくは環状のシロキサン類等を用いることができ、一般式(2)で表されるアルコキシシラン類が好ましい。
【0054】
以下、重合性シラン化合物としてアルコキシシラン類を用いる場合について説明するが、ポリシロキサン系重合体は、その他の重合性シラン化合物を用いる場合も同様にして製造することができる。
【0055】
一般式(2)において、Rの炭素数1〜8の有機基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基及びn−オクチル基等のアルキル基が挙げられる。また、γ−クロロプロピル基、γ−ブロモプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−(メタ)アクリルロイルオキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、γ−アミノプロピル基、ビニル基、フェニル基及び3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基等を挙げることができる。尚、Rはカルボニル基を有していてもよい。
【0056】
更に、R’の炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。
【0057】
このようなアルコキシシラン類の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−iso−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン及び3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0058】
また、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン及びジエチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
【0059】
これらのアルコキシシランのうちでは、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランが好ましい。これらのアルコキシシラン類は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。また、このアルコキシシラン類は、チタン、アルミニウム等を含む金属アルコキシド若しくはシランカップリング剤と併用することもできる。
【0060】
次に、前記[1]の方法においては、水系媒体に分散したポリシロキサン系重合体粒子は、重合性シラン化合物を、ホモミキサー又は超音波混合機等を用いて、アルキルベンゼンスルホン酸等の強酸性乳化剤の水溶液中で混合し、重合することによって調製することができる。その際、必要に応じてグラフト交叉剤を共重合させることもできる。この重合性シラン化合物としては、前記の一般式(2)で表されるアルコキシシラン類、及び前記の一般式(3)で表される構造単位を有するシロキサン類等が挙げられ、特に一般式(3)で表される環状のシロキサン類が好ましい。
【0061】
一般式(3)によって表される環状のシロキサン類において、R''の置換又は非置換の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、ビニル基及びフェニル基、或いはこれらの炭化水素基をハロゲン原子、シアノ基等で置換した基などを挙げることができる。この環状のシロキサン類の具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン等が挙げられる。
【0062】
また、必要によって共縮合されるグラフト交叉剤としては、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、2−(m−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、(m−ビニルフェニルメチル)ジメチルイソプロポキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルフェノキシ)プロピルメチルジエトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、1−(o−ビニルフェニル)−1,1,2−トリメチル−2,2−ジメトキシジシラン、1−(p−ビニルフェニル)−1,1−ジフェニル−3−エチル−3,3−ジエトキシジシロキサン等が挙げられる。
【0063】
また、m−ビニルフェニル−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ジフェニルシラン、〔3−(p−イソプロペニルベンゾイルアミノ)プロピル〕フェニルジプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、アリルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
【0064】
これらのうちでは、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシランが好ましく、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシランが特に好ましい。これらグラフト交叉剤の使用量は、重合性シラン化合物とグラフト交叉剤の合計量を100部とした場合に、0.1〜50部、特に0.5〜10部、更には0.5〜5部とすることが好ましい。
【0065】
重合性シラン化合物の配合、及び重合時に使用される強酸性乳化剤は、重合性シラン化合物の乳化剤として作用する他、この化合物の重合反応の開始剤となるものである。強酸性乳化剤の使用量は、重合性シラン化合物とグラフト交叉剤の合計量を100部とした場合に、通常、0.1〜10部であり、0.5〜5部とすることが好ましい。水の使用量は、重合性シラン化合物とグラフト交叉剤の合計量を100部とした場合に、通常、100〜500部であり、200〜400部とすることが好ましい。また、重合温度は、通常、5〜100℃である。
【0066】
更に、ポリシロキサン系重合体粒子は、その分子鎖末端が、水酸基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基及びメチルジフェニルシリル基等により封鎖されていてもよい。また、このポリシロキサン系重合体粒子の平均粒子径は、強酸性乳化剤及び水の量、重合温度、ホモミキサー或いは超音波混合機等による分散の程度を制御すること等によって容易に調整することができる。このようにして得られるポリシロキサン系重合体粒子は、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0067】
このようにして水系媒体に分散したポリシロキサン系重合体粒子を生成させ、その存在下にアクリル系単量体及びUV吸収性単量体aのうちの少なくともアクリル系単量体を重合する。この[1]の方法におけるアクリル系単量体の使用量は、ポリシロキサン系重合体粒子を100部とした場合に、5〜500部であり、特に10〜400部とすることが好ましい。アクリル系単量体の使用量が5部未満では、特に印刷塗膜形成性等の加工性、印刷皮膜と基材との密着性等が低下する傾向にあり、一方、500部を越える場合は、ポリシロキサン系重合体が有する優れた耐候性及び耐久性等が十分に発揮されないことがある。
【0068】
[1]の方法は乳化重合によって行うことが好ましく、この乳化重合では少なくともラジカル重合開始剤及び乳化剤が使用される。このラジカル重合開始剤としては、第1発明におけると同様のものを使用することができ、特にレドックス系開始剤及び有機過酸化物が好ましい。このラジカル重合開始剤の使用量は、使用される単量体の全量を100部とした場合に、通常、0.05〜5部であり、0.1〜2部とすることが好ましい。また、乳化剤としては、ポリシロキサン系重合体の分散体を製造する際に使用されるアルキルベンゼンスルホン酸等の強酸性乳化剤が好適であるが、必要に応じて第1発明において使用される乳化剤等、他の乳化剤を併用することもできる。
【0069】
乳化重合は、ラジカル重合開始剤の他、強酸性乳化剤及び必要に応じて追加の乳化剤、連鎖移動剤、各種電解質及びpH調整剤等を併用して行うことができる。使用される単量体の全量を100部とした場合に、通常、100〜500部の水、所定量のラジカル重合開始剤を使用し、重合温度5〜100℃、好ましくは50〜90℃、重合時間0.1〜10時間の条件で行われる。その際、ポリシロキサン系重合体粒子が分散した水系媒体に、直接、アクリル系単量体、ラジカル重合開始剤等を、一括、分割又は連続して添加し、重合させることが好ましい。また、重合転化率は、99%以上であることが好ましい。
【0070】
更に、前記[2]の方法において、含フッ素系重合体粒子としては、好ましくはフッ化ビニリデン系重合体からなる粒子を使用することができる。フッ化ビニリデン系重合体としては、フッ化ビニリデンの単独重合体或いは共重合体が使用される。このフッ化ビニリデンの共重合体において、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン等の含フッ素モノオレフィン類が挙げられる。また、含フッ素系重合体の重合時、UV吸収性単量体a、或いはその他の紫外線吸収性官能基を有する単量体を共重合させることにより、紫外線吸収性官能基を有する含フッ素系重合体とすることもできる。
【0071】
フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、パーフルオロ(メタ)アクリル酸、パーフルオロ(メタ)アクリル酸の(シクロ)アルキルエステル、(メタ)アクリル酸のフルオロ(シクロ)アルキルエステル等の含フッ素アクリル系単量体を挙げることができる。更に、プロピレン、シクロヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル等のモノエチレン性不飽和単量体、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の脂肪族共役ジエン類等のフッ素を含まない単量体が挙げられる。これらの共重合可能な単量体は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。尚、フッ化ビニリデンの共重合体におけるフッ化ビニリデンの量比は、通常、50%以上とする。
【0072】
フッ化ビニリデン系重合体としては、フッ化ビニリデンの単独重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の2元共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の3元共重合体が好ましい。また、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン2元共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン3元共重合体が特に好ましい。これらのフッ化ビニリデン系重合体は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
フッ化ビニリデン共重合体における各単量体の組成比は、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン2元共重合体、或いはフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン2元共重合体の場合、フッ化ビニリデンを50〜90%、テトラフルオロエチレン又はヘキサフルオロプロピレンを50〜10%とすることが好ましい。更に、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン3元共重合体の場合、フッ化ビニリデンを50〜80%、テトラフルオロエチレンを10〜40%、ヘキサフルオロプロピレンを5〜40%とすることが好ましい。尚、このフッ化ビニリデン系重合体の重量平均分子量は、通常、1万〜20万である。
【0074】
水系媒体に分散したフッ化ビニリデン系重合体粒子は、
〔1〕他の単量体の存在下又は非存在下に、フッ化ビニリデンを水系媒体中で乳化重合する方法、
〔2〕他の単量体の存在下又は非存在下に、フッ化ビニリデンを溶液重合した後、得られるフッ化ビニリデン系重合体溶液を水系分散体に転相する方法、
〔3〕他の単量体の存在下又は非存在下に、フッ化ビニリデンを沈澱重合した後、得られる重合体粒子を水系媒体に分散させる方法、等によって調製することができる。
これら〔1〕〜〔3〕の方法のうちでは、〔1〕の乳化重合する方法が、得られるフッ化ビニリデン系重合体のエマルジョンを、そのまま次工程のアクリル系単量体等の重合工程において使用することができる点で好ましい。
【0075】
フッ化ビニリデン系重合体粒子の平均粒子径は、水性インク組成物における所望の平均粒子径に応じて適宜調整し得るが、0.001〜0.5μmであることが好ましく、0.01〜0.3μmであることがより好ましい。このようにして得られるフッ化ビニリデン系重合体粒子は、1種のみであってもよいし、2種以上が併存していてもよい。
【0076】
水系媒体に分散した含フッ素系重合体粒子の存在下に、アクリル系単量体他の所要の単量体を重合させるには、通常、乳化重合法が採用される。この[2]の方法におけるアクリル系単量体等の使用量は、含フッ素系重合体粒子を100部とした場合に、20〜500部であり、特に40〜300部とすることが好ましい。アクリル系単量体等の使用量が、20部未満では、特に造膜性等の加工性及び印刷皮膜の基材との密着性などが低下する傾向にある。また、この使用量が500部を越える場合は、含フッ素系重合体の有する優れた耐候性及び耐久性等が十分に発揮されないことがある。
【0077】
この乳化重合は、ラジカル重合開始剤を使用し、乳化剤を添加し、又は添加せずに実施される。使用されるラジカル重合開始剤及び乳化剤としては、第1発明におけると同様のものを使用することができる。ラジカル重合開始剤の使用量は、使用される単量体の全量を100部とした場合に、通常、0.05〜5部であり、0.1〜2部とすることが好ましい。また、乳化剤の使用量は、使用される単量体の全量を100部とした場合に、通常、5部以下、特に2部以下である。更に、乳化重合に際しては、ラジカル重合開始剤、乳化剤の他、必要に応じて連鎖移動剤、各種電解質、pH調整剤等を併用することもできる。この乳化重合の条件は特に制限されるものではなく、水系媒体中、所定の量比のラジカル重合開始剤及び乳化剤を使用し、重合温度30〜100℃、特に60〜100℃、重合時間1〜30時間、特に1〜10時間の条件で行うことができる。また、その際の重合転化率は、99%以上であることが好ましい。
【0078】
乳化重合に際して、含フッ素系重合体粒子及びアクリル系単量体等は、
(a)含フッ素系重合体粒子が分散した水系媒体に単量体の全量を一括して添加する方法、
(b)含フッ素系重合体粒子が分散した水系媒体に単量体の一部を仕込んで反応を開始させた後、残りの単量体を分割又は連続して添加する方法、
(c)含フッ素系重合体粒子が分散した水系媒体に単量体の全量を分割又は連続して添加する方法、
(d)単量体を水系媒体中で重合しつつ、含フッ素系重合体粒子を分割又は連続して添加する方法、等によって添加することができる。
【0079】
これらの方法のうちでは、特に(a)の方法が好ましく、また、(b)の方法において、初めに仕込むアクリル系単量体等を使用される単量体の全量の50%以上とする方法が好ましい。水系媒体に分散した含フッ素系重合体粒子の存在下に行われるアクリル系単量体等の乳化重合は、1種のシード重合と考えることができる。その反応挙動は必ずしも明らかではないが、添加されたアクリル系単量体等が主として含フッ素系重合体粒子に吸収或いは吸着され、この粒子を膨潤させながら重合が進行していくものと考えられる。
【0080】
従って、[2]の方法により得られる複合体粒子における各々の重合体成分の存在形態としては、含フッ素系重合体とアクリル系重合体等とのグラフト結合型、含フッ素系重合体をコア、アクリル系重合体等をシェルとするコアシェル型、含フッ素系重合体とアクリル系重合体等が単一粒子内に均一に混在した均質型、及びこれらの混合型が考えられるが、特に印刷皮膜の耐光性を重視する場合は、均質型であることが好ましい。複合体粒子が均質型であることは、示差走査型熱量分析において単一のガラス転移点を示すことにより容易に確認することができる。
【0081】
第1発明の重合体粒子及び第2,3発明の複合体粒子の平均粒子径は、第4発明のように0.001〜0.8μm、特に0.01〜0.6μm、更には0.02〜0.4μmであることが好ましい。これら重合体粒子等の平均粒子径が0.001μm未満のものを製造することは困難であり、一方、この平均粒子径が0.8μmを越える場合は、重合体粒子等が沈降することがあり、保存安定性が低下する。また、第4発明において、[1]の方法により得られる複合体粒子の平均粒子径を小さくすることにより、分散系の粘度は上昇するものの、形成される印刷皮膜の耐水性及び機械的強度が向上させることができる。そのため、耐水性或いは機械的強度等が特に重視される用途においては、複合体粒子の平均粒子径をより小さく、具体的には0.02〜0.1μm程度とすることが好ましい。この平均粒子径は、アクリル系重合体粒子の平均粒子径、重合性シラン化合物等の吸収量などを適宜調整することにより所定の範囲のものとすることができる。
【0082】
更に、[1]の方法により得られる複合体粒子の平均粒子径を上記の範囲とすることにより、優れた造膜性を有し、分散系の安定性が保たれ、且つ良好な物性を有する印刷皮膜を形成することができる。この平均粒子径は、ポリシロキサン系重合体粒子の平均粒子径を所定の範囲に制御することにより調整することができる。また、[2]の方法により得られる複合体粒子の平均粒子径が小さい場合は、分散系の粘度が上昇して固形分の量比を高くすることが困難となり、使用条件によっては大きな機械的剪断力が作用する場合、凝固物が発生し易くなる。一方、平均粒子径が大きいと、分散系の貯蔵安定性が低下する傾向にある。この平均粒子径は、含フッ素系重合体粒子の平均粒子径を制御することにより容易に調整することができる。
【0083】
尚、本発明において、重合体粒子或いは複合体粒子を構成するアクリル系重合体がカルボニル基含有単量体を含む単量体からなる場合は、これらの粒子を構成する重合体或いは複合体はヒドラジノ基含有架橋剤により架橋されていてもよい。このヒドラジノ基含有架橋剤は、1分子中に2個以上のヒドラジノ基を有する化合物であり、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド及びイタコン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0084】
更に、これらの多官能性ヒドラジン誘導体の少なくとも一部のヒドラジノ基を、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、ジアセトンアルコール等のカルボニル化合物と反応させることによりブロックした化合物(以下、「ブロック化多官能性ヒドラジン誘導体」という。)、例えば、アジピン酸ジヒドラジドモノアセトンヒドラゾン、アジピン酸ジヒドラジドジアセトンヒドラゾン等も使用することができる。このようなブロック化多官能性ヒドラジン誘導体を使用することにより、水系分散体の架橋反応の進行を適度に抑えることができるため、特に水性インクとして重要な再分散性をさらに向上させることができる。
【0085】
ヒドラジノ基含有架橋剤は、水系分散体を調製する適宜の工程で配合することができる。重合体粒子或いは複合体粒子の製造中又は製造後に配合することができるが、これら粒子の製造時の凝固物の発生を抑え、重合安定性を維持するためには、ヒドラジノ基含有架橋剤の全量を、これらの粒子を製造した後に配合することが好ましい。
【0086】
ヒドラジノ基含有架橋剤の配合量は、カルボニル基含有アクリル系重合体に含まれるカルボニル基1モルに対してヒドラジノ基が、通常、0.1〜10モルであり、0.2〜5モル、特に0.5〜3モル、更には0.8〜2モルとすることが好ましい。ヒドラジノ基含有架橋剤の量比が0.1モル未満では、架橋効果が得られにくく、一方、この量比が10モルを越える場合は、印刷皮膜の耐光性や耐水白化性が低下する傾向にある。
このヒドラジノ基含有架橋剤は、そのヒドラジノ基が、印刷塗膜の乾燥過程で、カルボニル基含有アクリル系重合体に含まれるカルボニル基と反応して網目構造を形成する作用を有する。この架橋反応に際しては、通常、触媒を用いなくてもよいが、場合により硫酸亜鉛、硫酸マンガン、硫酸コバルト等の水溶性金属塩等の触媒を添加することもできる。
【0087】
本発明の染着重合体粒子及び水性インク組成物には、目的に応じて以下の添加剤を配合することができる。
耐光性を更に向上させるための光安定化剤として、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系等の、従来よりインク組成物において用いられている光安定化剤を使用することができる。この光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及びテトラキシ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等のヒンダードアミン系の光安定化剤が好ましい。
【0088】
また、添加型の紫外線吸収剤を使用することもできる。このような添加型紫外線吸収剤は特に限定されるものではなく、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの無機系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールなどの有機紫外線吸収剤などを使用することができる。これらのうち好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、並びに微粒子状の酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化セリウムなどの無機系紫外線吸収剤であり、微粒子状の無機系紫外線吸収剤の好ましい粒子径は0.001〜0.2μmである。
【0089】
光安定化剤、添加型紫外線吸収剤の配合量は、染着重合体粒子及び水性インク組成物に含まれる固形分を100重量部とした場合に、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.02〜5重量部とすることができる。光安定化剤、添加型紫外線吸収剤の配合量が0.01重量部未満であると、十分な添加効果が得られず、一方、10重量部を越えると、この水性インク組成物を用いて形成される印刷皮膜の表面に汚れが発生することがある。
【0090】
更に、水性インク組成物の印刷塗膜形成性、濡れ性を向上させるために、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−プロピルセロソルブ、iso−プロピルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ、n−ヘキシルセロソルブ等のセロソルブ類、メチルカルビトール、エチルカルビトール等のカルビトール類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブアセテート類及びトリ−n−ブトキシメチルフォスフェート等のフォスフェート類等の有機溶剤を配合することができる。
これらの有機溶剤の配合量は、水性インク組成物の全量の、通常、50%以下、好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。
【0091】
加えて、再分散性を更に補う目的でエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類やグリセリン等、保湿剤として使用できる有機溶剤も配合することができる。
【0092】
また、その他の添加剤として、水性樹脂として一般に用いられている水溶性若しくは水分散性の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂等のカルボキシル化芳香族ビニル樹脂、ウレタン樹脂等を使用することができる。この他、消泡剤、増粘剤、熱に対する安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤、染料、顔料及び防カビ剤等を用いることもできる。
【0093】
以上のようにして得られる第1乃至第5発明の染着重合体粒子は、紫外線吸収性官能基を含む重合体或いは複合体が染料によって染色されているため、染着重合体粒子に含まれる染料の紫外線劣化が抑えられる。しかも、これらの重合体粒子等は、通常の紫外線吸収剤のように容易にブリードアウトすることがない。そのため、この染着重合体粒子を含む第6発明の水性インク組成物を使用して得られる印刷物では、長期に渡って優れた耐光性が維持される。また、この水性インク組成物では、基材が紙などの浸透性のあるものの場合に、紫外線吸収剤が基材を透過してしまって、十分な劣化防止の効果が得られないといった問題もない。そのため、グラビア、フレキソなどの印刷インク、筆記具用インクやOA機器用インク等として、紙、プラスチックの成形品やフイルム、ガラス、金属、セラミック等の種々の被印刷体に適用することができる。
【0094】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明する。但し、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
また、物性の測定は下記の方法によって行った。
【0095】
(1)平均粒子径の測定及び物性の評価
〔1〕平均粒子径;動的光散乱式粒子径測定装置(大塚電子株式会社製、型式「LPA−3100」)によって測定される重量平均粒子径である。
〔2〕耐光性;水性インク組成物をガラス板に塗布し、膜厚5μmの塗膜を形成し、25℃、63%RHの雰囲気下に24時間放置して試験片を得る。この試験片の初期の色濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、型式「RD−917」)によって測定する。その後、キセノンフェードメータ(スガ試験機株式会社製)を用いて、ブラックパネル温度63℃、70%RHの雰囲気下、試験片を20、50及び100時間紫外線に暴露する。次いで、暴露後の試験片の色濃度を測定し、初期濃度に対する保持率を評価する。評価基準は下記のとおりである。
◎;保持率90%超、○;保持率80〜90%、△;保持率50〜70%、×;保持率50%未満。
【0096】
〔3〕耐水性;水性インク組成物をガラス板に塗布し、膜厚5μmの塗膜を形成し、25℃、63%RHの雰囲気下に24時間放置して試験片を得る。この試験片を20℃の蒸留水に48時間浸漬した後の塗膜の外観を目視により観察し、評価する。評価基準は下記のとおりである。
◎;しみ或いは塗膜の膨れなどがまったく認められない。○;しみ或いは塗膜の膨れなどが一部に認められる。×;塗膜が溶解、脱落している。
〔4〕耐光性の効果持続性;耐水性を試験した後に再び上記〔2〕と同様の方法で耐光性を評価する。評価基準は耐光性の場合と同様である。
〔5〕保存安定性;水性インク組成物を50℃で一ヶ月放置した後、その状態を目視で観察した。評価基準は下記のとおりである。
○;変化がない。×;沈降、分離、増粘(固化)している。
【0097】
(2)重合体粒子又は複合体粒子を含む水系分散体の調製
合成例1[重合体粒子(1−1)]
攪拌機、温度計、ヒータ、単量体添加用ポンプ及び窒素ガス導入装置を備えたステンレス鋼製オートクレーブに、初期成分として、水100部、反応性乳化剤(花王株式会社製、商品名「ラテムルS−180A」、以下、「反応性乳化剤」という。)2部(固形分換算)及び過硫酸カリウムの5%水溶液0.5部(固形分換算)を仕込み、気相部を15分間窒素ガス置換した後、75℃に昇温した。
【0098】
その後、追加成分として、水50部、反応性乳化剤1部(固形分換算)、紫外線吸収性官能基を有する単量体である2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(表1において「RUVA」と略記する。)5部、及び表1に記載の種類及び配合量の単量体の混合物、を3時間かけて連続的に添加しつつ80℃で乳化重合を行い、添加終了後85〜95℃で更に2時間熟成し、25℃まで冷却した後、アンモニアでpH8に調整した。次いで、多官能性ヒドラジン誘導体であるアジピン酸ジヒドラジド(ADH)0.5部(ケト基に基づくカルボニル基とヒドラジノ基との当量比;0.9)を添加した後、約1時間攪拌し、200メッシュの金網で濾過して重合体粒子(1−1)を含む水系分散体を得た。この重合体粒子(1−1)の平均粒子径は0.06μmであった。
【0099】
合成例2[重合体粒子(1−2)]
初期成分としての反応性乳化剤を0.01部、追加成分としての反応性乳化剤を2部、RUVAを3部とし、表1に記載の種類及び配合量の単量体の混合物を使用し、ADHを用いなかった他は合成例1と同様にして重合体粒子(1−2)を含む水系分散体を得た。この重合体粒子(1−2)の平均粒子径は0.30μmであった。
【0100】
合成例3[複合体粒子(1−3)]
合成例1の場合と同様のオートクレーブに、含フッ素系重合体であるフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体粒子(重量比;60/25/15)を含む水分散液(平均粒子径;120nm、固形分;30%)100部(固形分換算)、反応性乳化剤1部、RUVA2部、及び表1に記載の種類及び配合量の単量体(表1における「RHALS」は、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレートである。)の混合物、を仕込み、80℃に昇温した。
【0101】
その後、過硫酸カリウムの5%水溶液0.3部(固形分換算)を加え、85〜90℃で3時間重合し、アクリル系重合体と含フッ素系重合体とが同一粒子内に共存する複合体粒子を含む水分散液を得た。次いで、25℃まで冷却し、ジエタノールアミンでpH8に調整した後、200メッシュの金網で濾過して複合体粒子(1−3)を含む水系分散体を得た。この複合体粒子(1−3)の平均粒子径は0.15μmであった。
【0102】
合成例4[重合体粒子(1−4)]
合成例1の場合と同様のオートクレーブに、エタノール100部、2,2−アゾビスイソブチロニトリル2部(固形分換算)、及び表1に記載の種類及び配合量の単量体の混合物、を仕込み、気相部を15分間窒素ガス置換した後、60℃に昇温し、l時間重合した。その後、70〜75℃で更に4時間熟成し、25℃まで冷却した後、アンモニアでpH9に調整した。次いで、得られた重合体溶液を水300部及び乳化剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「ハイテノールN−08」)l部の混合溶液に攪拌しながら徐々に添加し、再乳化を行って水分散液を得た。次いで、この水分散液の全量をナス型フラスコに移し、ロータリーエバポレータによりエタノールを除去した後、200メッシュの金網で濾過して重合体粒子(l−4)を含む水系分散体を得た。この重合体粒子(1−4)の平均粒子径は0.20μmであった。
【0103】
合成例5[複合体粒子(1−5)]
合成例1の場合と同様のオートクレーブに、初期成分として、水100部、反応性乳化剤0.5部、過硫酸カリウムの5%水溶液0.4部を仕込み、気相部を15分間窒素ガス置換した後、75℃に昇温した。その後、追加成分として、水50部、反応性乳化剤1部、及び表1に記載の種類及び配合量の単量体の混合物、を3時間かけて連続的に添加しつつ80℃で乳化重合を行い、添加終了後、85〜95℃で更に2時間熟成し、25℃まで冷却した後、アンモニアでpH8に調整して水分散液を得た。
【0104】
次いで、この水分散液に、メチルトリエトキシシラン10部を添加し、25℃で約1時間攪拌し、水分散液に含まれる重合体粒子にメチルトリエトキシシランを吸収させた後、70℃に昇温し、3時間縮合を行い、アクリル系重合体とポリシロキサンとが同一粒子内に共存する複合体粒子を含む水分散体を得た。その後、25℃まで冷却し、ADH1.2部(ケト基に基づくカルボニル基とヒドラジノ基との当量比;1.1)を添加し、約l時間攪拌した後、200メッシュの金網で濾過して複合体粒子(1−5)を含む水系分散体を得た。この複合体粒子(1−5)の平均粒子径は0.08μmであった。
【0105】
合成例6[重合体粒子(1−6)]
重合に際し使用する単量体等を表1のように変更した以外は、合成例1と同様にして重合体粒子(1−6)を含む水系分散体を得た。この重合体粒子(1−6)の平均粒子径は0.10μmであった。
以上、合成例1〜6の配合組成及び得られた重合体粒子等の平均粒子径を表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
比較合成例1[重合体粒子(2−1)]
重合に際し使用する単量体等を表2のように変更した以外は、合成例5と同様にして複合体粒子(2−1)を含む水系分散体を得た。この複合体粒子(2−1)の平均粒子径は0.05μmであった。
比較合成例2[重合体粒子(2−2)]
重合に際し使用する単量体等を表2のように変更した以外は、合成例1と同様にして重合体粒子(2−2)を含む水系分散体を得た。この重合体粒子(2−2)の平均粒子径は0.85μmであった。
【0108】
比較合成例3[複合体粒子(2−3)]
重合に際し使用する単量体等を表2のように変更した以外は、合成例3と同様にして複合体粒子(2−3)を含む水系分散体を得た。この複合体粒子(2−3)の平均粒子径は0.15μmであった。
比較合成例4[重合体粒子(2−4)]
重合に際し使用する単量体等を表2のように変更した以外は、合成例1と同様にして乳化重合を行い、25℃まで冷却した後、アンモニアでpH8に調整した。次いで、得られた水分散液に、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の水分散液(クラリアント社製、商品名「Sanduvor PT21 Disp.」)2部を添加し、十分に攪拌した後、200メッシュの金網で濾過して重合体粒子(2−4)と紫外線吸収剤とを含む水系分散体を得た。この重合体粒子(2−4)の平均粒子径は0.07μmであった。
以上、比較合成例1〜4の配合組成及び得られた重合体粒子等の平均粒子径を表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
(3)染着重合体粒子又は染着複合体粒子を含む水分散液(比較例5は除く。)の調製
実施例1
トルエン80部に油性染料であるC.I.ソルベントイエロー40を4部溶解して染料溶液を調製した。一方、ソディウムドデシルサルフェート1部を水300部に溶解して水溶液を調製し、これに上記染料溶液を加え、攪拌しながら超音波を30分間照射し、染料を微分散させて染料エマルジョンを調製した。この染料エマルジョン全量と、合成例1の水系分散体[重合体粒子(1−1)を100部含む。]及び水900部とを混合し、12時間攪拌することにより、重合体粒子(1−1)を染色した。その後、これらの全量をナス型フラスコに移し、ロータリーエバレータによってトルエンを除去し、更に固形分が20%になるまで濃縮した。次いで、この濃縮液を200メッシュの金網で濾過し、染着重合体粒子を含む水分散液を得た。
【0111】
実施例2
合成例2で得られた重合体粒子(1−2)を含む水系分散体を用い、実施例1と同様にして染着重合体粒子を含む水分散液を得た。
実施例3
合成例3で得られた複合体粒子(1−3)を含む水系分散体を用い、実施例1と同様にして染着複合体粒子を含む水分散液を得た。
【0112】
実施例4
水100部に、塩基性染料であるC.I.ベーシックイエロー40を4部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを2部(固形分換算)、及びナフタレンスルホン酸を2部(固形分換算)添加し、均一に混合した。その後、これを合成例4の水系分散体[重合体粒子(1−4)を100部含む。]に添加し、徐々に昇温し、95℃で2時間保持して染色した。これを200メッシュの金網で濾過して染着重合体粒子を含む水分散液を得た。
【0113】
実施例5
重合体粒子(1−4)を含む水系分散体に代えて複合体粒子(1−5)を含む水系分散体を用いた他は実施例4と同様にして染着複合体粒子を含む水分散液を得た。
実施例6
重合体粒子(1−4)を含む水系分散体に代えて重合体粒子(1−6)を含む水系分散体を用いた他は実施例4と同様にして染着重合体粒子を含む水分散液を得た。
【0114】
比較例1
重合体粒子(1−1)を含む水系分散体に代えて複合体粒子(2−1)を含む水系分散体を用いた他は実施例1と同様にして染着重合体粒子を含む水分散液を得た。
比較例2
重合体粒子(1−1)を含む水系分散体に代えて重合体粒子(2−2)を含む水系分散体を用いた他は実施例1と同様にして染着重合体粒子を含む水分散液を得た。
比較例3
重合体粒子(1−4)を含む水系分散体に代えて複合体粒子(2−3)を含む水系分散体を用いた他は実施例4と同様にして染着複合体粒子を含む水分散液を得た。
【0115】
比較例4
重合体粒子(1−4)を含む水系分散体に代えて重合体粒子(2−4)を含む水系分散体を用いた他は実施例4と同様にして染着重合体粒子を含む水分散液を得た。
比較例5
重合体粒子(1−1)100部を含む水系分散体に対して、酸性染料であるC.I.アシッドイエロー23を4部添加し、混合した後、200メッシュの金網で濾過して重合体粒子と染料とを含む水分散液を得た。
【0116】
(4)水性インク組成物の調製
実施例1〜6及び比較例1〜4の染着重合体粒子或いは染着複合体粒子を含む水分散液(固形分換算で15部の染着重合体粒子又は染着複合体粒子を含む。)と、イソプロピルアルコール5部及び水80部とを混合し、攪拌した後、200メッシュの金網で濾過することにより、水性インク組成物を得た。一方、比較例5の混合液の場合も、同様にして水性インク組成物を得た。
【0117】
実施例1〜6の染着重合体粒子或いは染着複合体粒子の組成、並びにそれらを用いた水性インク組成物の組成及びその耐光性等の評価結果を表3に示す。また、比較例1〜4の染着重合体粒子或いは染着複合体粒子の組成、比較例5の重合体粒子と染料との混合物の組成、並びにそれらを用いた水性インク組成物の組成及びその耐光性等の評価結果を表4に示す。
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
表3の結果によれば、実施例1〜6の染着重合体粒子或いは染着複合体粒子を使用した水性インク組成物では、耐光性、耐水性、耐光性の効果持続性に優れた皮膜が形成され、保存安定性も良好である。また、実施例4のRUVAの配合量の多い染着重合体粒子を用いた水性インク組成物では、より優れた耐光性を有する皮膜が形成されている。更に、含フッ素系重合体を含む実施例3の染着複合体粒子が使用されている水性インク組成物では、得られる皮膜は特に耐水性に優れている。また、ポリシロキサン系重合体を含む実施例5の複合体粒子が用いられている水性インク組成物でも、実施例4の染着重合体粒子の場合ほどではないが、形成される皮膜の耐光性が更に向上している。
【0121】
一方、表4の結果によれば、比較例1〜3の染着重合体粒子或いは染着複合体粒子を使用した水性インク組成物では、紫外線吸収性官能基を有する単量体が共重合されていないため、比較例1のポリシロキサン系重合体を含む染着複合体粒子を使用した水性インク組成物、及び比較例3の含フッ素系重合体を含む染着複合体粒子を用いた水性インク組成物であっても、形成される皮膜の耐光性が非常に劣っている。また、比較例2の平均粒子径が0.8μmを越えている染着重合体粒子を含む水性インク組成物では、保存安定性も劣っている。更に、紫外線吸収性官能基を有さない比較例4の染着重合体粒子に、ベンゾトリアゾール系の通常の紫外線吸収剤が配合されている水性インク組成物でも、やや改善はみられるものの皮膜の耐光性は十分ではない。また、合成例1の紫外線吸収性官能基を有する重合体粒子を含んではいるものの、これを単に染料と混合しただけの比較例5では、皮膜の耐光性が不十分であり、耐水性も劣っている。
【0122】
【発明の効果】
第1発明の染着重合体粒子は、紫外線吸収性官能基を含む重合体粒子が染着されてなるものであり、染料の紫外線劣化が抑えられる。また、第2,3発明の染着重合体粒子は、アクリル系重合体と、ポリシロキサン系重合体及び/又は含フッ素系重合体によって構成される複合体粒子からなり、耐水性等がより向上する。しかも、これら染着重合体粒子は、通常の紫外線吸収剤のように容易にブリードアウトすることがないため、長期に渡って優れた紫外線劣化防止性能が維持される。更に、第6発明の水性インク組成物は、第1乃至第5発明の染着重合体粒子を含んでいるため、耐光性に優れた印刷物を得ることができる。
Claims (6)
- アクリル系単量体を含むベース単量体とUV吸収性単量体を用いて得られた重合体粒子が、染料によって染色されている染着重合体粒子であって、
上記UV吸収性単量体は、p−メタクリロイルオキシフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、及び2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチル−3’−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールからなる群から選択されることを特徴とする染着重合体粒子。 - ポリシロキサン系重合体又は含フッ素系重合体の存在下、アクリル系単量体及びUV吸収性単量体を重合させることにより得られた複合体たる重合体粒子が、染料によって染色されている染着重合体粒子であって、
上記UV吸収性単量体は、p−メタクリロイルオキシフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、及び2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチル−3’−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールからなる群から選択されることを特徴とする染着重合体粒子。 - アクリル系単量体にUV吸収性単量体を共重合させたアクリル系重合体の存在下、重合性シラン化合物を重合させることにより得られた複合体たる重合体粒子が、染料によって染色されている染着重合体粒子であって、
上記UV吸収性単量体は、p−メタクリロイルオキシフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、及び2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチル−3’−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールからなる群から選択されることを特徴とする染着重合体粒子。 - 平均粒子径が0.001〜0.8μmである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の染着重合体粒子。
- 上記染料は、上記重合体粒子100重量部あたり、0.1〜1000重量部である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の染着重合体粒子。
- 請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の染着重合体粒子を含むことを特徴とする水性インク組成物。
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