JP4237590B2 - 紙鳴り音の予測方法 - Google Patents
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Description
そして、この種の紙送り装置では、ローラ間に送り込まれた用紙をローラによって挟持しながらステッピングモータによる回転方向に、順次送り出している。
このため、この種の紙送り装置を備えた複写機やプリンタにおいては、紙鳴り音を極力抑えることが要求されている。
本実施形態の紙鳴り音の予測方法では、振動解析に必要である用紙の物性値を推定し、それにより用紙の有限要素モデルを構築する。次いで、紙送り装置による用紙の搬送時にローラから用紙へ作用する加振力を同定する。その後、これら構築した有限要素モデル及び同定した加振力を用い、さらに、所定のばらつき要因を考慮して紙送り装置における紙鳴り音を予測する。
用紙の有限要素モデルを構築するために、まず、用紙の物性値を推定する。
ここで、振動解析する上で必要となる用紙の物性値としては、ヤング率、ポアソン比、減衰比などである。したがって、これら用紙の物性値であるヤング率、ポアソン比及び減衰比を算出する。
なお、用紙には、漉く方向により縦目及び横目があるため、直交異方性を有する。このため、縦目及び横目のそれぞれの用紙において、物性値を算出する。
実際に記録用紙として用いられている規格の用紙は、その密度と寸法の関係により1次曲げの固有振動数が低く、精度の良い振動解析を行うには不都合であるため、縦目及び横目のそれぞれの用紙について、短冊状に切断した小片の試験紙を用意する。
次いで、図1に示すように、この試験紙1の一端を支持するとともに、試験紙1の先端1aから側方へ所定寸法離れた位置に、点音源としてスピーカ2を設置する。
ρ:試験紙の密度(Kg/m3)
fr:r次曲げの固有振動数(Hz)
ar:r次曲げの固有振動数に応じた係数
t:試験紙の厚さ(m)
である。
前述したように、用紙は直交異方性を有するので、式(2)に示すベッチの相反定理が成り立つ。
γTY:縦目方向に引っ張ったときの横目のポアソン比
である。
r次のモード減衰比ξrは、通常、式(3)のように定義されている。
β:バンド幅の切片
である。
なお、バンド幅Δfとは、r次曲げの固有振動数frでの振幅の最大値から2−1/2の値の周波数の幅であり、図2に示した周波数応答比関数のグラフからバンド幅Δfを算出し、直線の傾きと切片を得て、モード減衰比ξrを求める。なお、固有振動数以外の振動数においては、モード減衰比ではなく、減衰比を用いて算出すると良い。
次に、推定した用紙の物性値を用いて、紙送り装置に設置した状態の用紙の数値モデルを作成する。なお、ここでは、紙送り装置のローラが用紙を拘束しているとして振動解析を行う。
まず、図3に示すように、回転軸11の固定された駆動ローラ12に対して、従動軸13に固定された従動ローラ14をバネ15によって所定の付勢力によって押し付けた紙送り機構16を用意する。この紙送り機構16では、駆動ローラ12と従動ローラ14との間に送り込んだ用紙が、回転軸11がステッピングモータによって回転されることにより、駆動ローラ12と従動ローラ14とに挟持されながら搬送される。なお、これら駆動ローラ12及び従動ローラ14は、それぞれ軸方向に間隔をあけて複数対設ける。本実施形態では、一例として5対の駆動ローラ12及び従動ローラ14を設ける。
そして、ここでは、この紙送り機構16による用紙の搬送時に、駆動ローラ12及び従動ローラ14から用紙にかかる紙面内方向(図中x方向)への加振力を同定する。
そして、このアルミニウム板17を紙送り機構16によって搬送させ、アルミニウム板17の紙面内方向である搬送方向の加速度axを測定する。
なお、紙面外方向(図中y方向)、紙面内方向である搬送方向に直交する方向(図中z方向)の振動は、いずれも搬送方向(図中x方向)の振動と比較した比率が小さいことを、測定により見出した。そのため、紙面外方向(図中y方向)、紙面内方向である搬送方向に直交する方向(図中z方向)の加振力は、ここでは加振力として考慮しない。つまり、紙鳴り音に影響する加振の方向は搬送方向が支配的であるので、用紙にかかる加振力としては、搬送方向だけを考慮すれば良い。但し、3方向について加速度を測定して、それぞれの加振力を求めても良い。
次に、式(5)に示すように、剛体であるアルミニウム板17の紙面内方向の加速度axにアルミニウム板17の質量mを乗じ、駆動ローラ12と従動ローラ14とによる加振点の数n(本実施形態ではn=5)で除することで1つの加振点における加振力Fxを求める。
構築した上記の有限要素モデルに対して、ローラの位置に同定した加振力を与え、振動解析を行う。ここで、紙の振動の周波数特性が予測できる。
さらに、紙の振動を境界条件として放射音解析を行い、単位加振力における紙鳴り音の周波数特性Hを算出する。
これにより、紙鳴り音の予測を行うことができる。
度数分布を用いた統計的な量として、ばらつきUは、式(6)のように表せる。
n:自由度
F2,n−2;α:自由度n1=2、n2=n−2のF分布の100α百分比点
Gxy(f):紙鳴り音と加振力のクロスパワースペクトル
Gxx(f):加振力のオートパワースペクトル
Gyy(f):紙鳴り音のオートパワースペクトル
である。
またここで、複数の種類のつぼ量の異なる紙について、紙鳴り音のばらつきを把握すると良い。
また、紙鳴り音のばらつきを考慮し、紙を送る角度、支持するスパンをパラメータとして紙の搬送状態を変更することにより、ばらつきを加味した紙鳴り音を予測することもでき、さらに開発費の低減、開発時間の短縮を図ることができる。
厚さ9.1×10−5m、密度705Kg/m3の用紙を、長さ0.03m、幅0.01mの短冊形に切断した縦目及び横目の2つの試験紙を用い、上記の実施形態に基づいて、それぞれのヤング率ET,EYを求めた。
r次曲げの固有振動数frは、縦目が41Hz、横目が30Hzであり、また、r次曲げの固有振動数に応じた係数arを1.9とした場合、式(1)から、それぞれのヤング率は、ET=4.5×109Pa、EY=2.4×109Paとなり、また、それぞれのポアソン比は、γYT=0.06、γTY=0.03となった。
推定した上記のヤング率(ET=4.5×109Pa、EY=2.4×109Pa)、ポアソン比(γYT=0.06、γTY=0.03)及びモード減衰比(縦目の1次;3.0%、横目の1次;3.2%)を用いて、A3の用紙がローラに拘束されているとして振動解析を行い、有限要素モデルを作成した。
また、実際に紙送り装置のローラにA3の用紙を拘束させて設置した状態で音響加振を行い、そのときの振動を測定し曲げの固有振動数を求めた。
その結果、図5に示すように、振動解析により得られたローラ間の2次曲げの固有振動数、振動モードは、測定によって求めた固有振動数、振動モードと相関が取れており、用紙の数値モデリングが正しいことが確認された。
まず、縦0.2m、横0.2m、厚さ0.002m、質量0.335kgのアルミニウム板を紙送り機構によって搬送させ、そのときの搬送方向の加速度αx(f)を測定し、その加速度αx(f)から加振力の同定を行った。
ステッピングモータを、駆動周波数200〜1000Hzにて駆動させて装置を駆動させた結果、図6に示すように、ステッピングモータの駆動周波数が高くなるにつれ加振力が小さくなる特性値が得られた。
紙鳴り音を実際に測定し、予測値との比較を行った。
まず、図7及び図8に示すような簡易紙送り装置21を用意する。この簡易紙送り装置21は、中央に紙送り機構22を有し、この紙送り機構22の両側に紙案内部23を有している。
紙送り機構22は、それぞれ回転軸26の軸方向に間隔をあけて、複数対の駆動ローラ25及び従動ローラ24を有し、駆動ローラ25の回転軸26がステッピングモータ27によって回転されるようになっている。
この簡易紙送り装置21では、紙送り機構22の駆動ローラ25と従動ローラ24の間に用紙が挟持された状態にてステッピングモータ27によって駆動ローラ25が回転されると、用紙が駆動ローラ25と従動ローラ24によって挟持されながら搬送される。また、この用紙は、紙送り機構22の両側に設けられた紙案内部23のローラ32間に挟持されながら搬送方向に案内される。
ここで、簡易紙送り装置21で用紙を搬送させたときに発生する特異騒音Pallは、簡易紙送り装置21自体から発生する騒音Pmech及び紙鳴り音Ppaperの二つからなる。
したがって、紙鳴り音Ppaperは、簡易紙送り装置21から発生する騒音Pmechが用紙のない状態での稼働時の騒音であることより、式(7)より算出する。
すなわち、簡易紙送り装置21から発生する紙鳴り音を、本実施形態の紙鳴り音の予測方法により精度良く予測することが可能であることがわかった。
8種類のつぼ量の異なる用紙について簡易紙送り装置21を駆動させ、それぞれの種類の用紙について、紙鳴り音の周波数特性を測定し、加振力が紙のつぼ量によって変化しないとしてばらつきUを求める。
また、8種類のつぼ量の異なる用紙について、上記と同様に数値解析によってばらつきUを算出する。
なお、このときの自由度nは16、F2,n−2;αのαは0.05とし、信頼区間を95%とする。
そして、このようにしてそれぞれ求めたばらつきUを比較した。
表1は、その結果を示すもので、この表1からわかるように、紙鳴り音、正負の最大ばらつきは、ともに実測値と数値解析による予測値とで近い値を示している。
したがって、設計段階で、ステッピングモータの使用を決定すれば、ばらつきを考慮した紙鳴り音の予測が容易に行えることがわかった。
12 駆動ローラ(ローラ)
14 従動ローラ(ローラ)
16 紙送り機構
17 アルミニウム板(薄板)
21 簡易紙送り装置
22 紙送り機構
24 従動ローラ
25 駆動ローラ
26,31 回転軸
32 ローラ
ET,EY ヤング率
Fx 加振力
αx 加速度
γYT,γTY ポアソン比
ξr モード減衰比
Claims (3)
- 回転するローラ間に用紙を送り込んで搬送させる際に生じる紙鳴り音の予測方法であって、
前記用紙の有限要素モデルを構築し、さらに、前記用紙と同形状である薄板を用いて測定された該薄板の搬送方向の加速度に基づいて、前記ローラから前記薄板にかかる加振力を算出し、
前記有限要素モデル、及び、前記ローラから前記用紙にかかる加振力として近似される前記薄板にかかる加振力を用いて振動解析を行い、さらに、紙の振動を境界条件として放射音解析を行い、単位加振力における紙鳴り音の周波数特性を算出することで、前記用紙から生じる紙鳴り音の予測を行うことを特徴とする紙鳴り音の予測方法。 - 請求項1に記載の紙鳴り音の予測方法であって、
前記用紙の周波数特性を測定し、
前記周波数特性から前記用紙のヤング率、ポアソン比及び減衰比を算出し、
前記ヤング率、前記ポアソン比及び前記減衰比からなる物性値を用いて前記用紙の前記有限要素モデルを構築することを特徴とする紙鳴り音の予測方法。 - 請求項1または2に記載の紙鳴り音の予測方法であって、
紙鳴り音に生じるばらつきの要因となる前記用紙におけるばらつき値を算出し、
前記ばらつきの幅を含めて紙鳴り音の予測を行うことを特徴とする紙鳴り音の予測方法。
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