JP4236417B2 - 合成繊維用処理剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成繊維用処理剤に関する。さらに詳しくは、合成繊維の製造工程や後加工工程において使用され、合成繊維の生産性や品質を向上させるのに有効な合成繊維用処理剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より合成繊維は、紡糸、延伸等の製造工程や、仮撚、整経、製織、製編等の後加工工程において、ガイドや針等との走行摩擦を低減させて毛羽立ちや糸切れ等のトラブルを防止するため、紡糸工程で処理剤が付与されている。
【0003】
かかる処理剤としては、エマルジョン系、ストレート系、鉱物油系、ポリジメチルシロキサン系のものが使用されている。
【0004】
合成繊維の中には、粘着性が大きいため、パーン、ドラム、チーズ等に巻き取られたパッケージから糸条を解舒することが困難なものがあり、糸条の解舒性を向上させるため、金属せっけん等の膠着防止剤を前記エマルジョン系、ストレート系、鉱物油系、ポリジメチルシロキサン系の処理剤に含有させることも行われている。
【0005】
しかし、合成繊維用処理剤が付与された糸条が、ガイドや針等と高速で擦過させられることによってガイドや針等にスカムの脱落、蓄積が発生し、このため糸条に毛羽立ちや糸切れが発生するという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、製造工程や後加工工程においてガイド等へスカム等が脱落、蓄積することを防止し、合成繊維の生産性や品質を向上させるのに有効な合成繊維用処理剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の合成繊維用処理剤は前記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、ステアリン酸と酸化マグネシウムを原料とし、乾式直接法で製造されたジステアリン酸マグネシウム塩、ステアリン酸と水酸化ナトリウムを原料とし、複分解沈殿法で、副成する水溶性塩を多量の洗浄温水を用い精製する工程を経て製造されたジステアリン酸マグネシウム塩、および、ステアリン酸と水酸化マグネシウムを原料とし、湿式直接法で製造されたジステアリン酸マグネシウム塩のいずれかを金属石けんとして含有し、かつ、処理剤中の不純物を測定するための元素分析により検出されるナトリウムとイオウ、または、ナトリウムとイオウと塩素が50ppm以下であることを特徴とする合成繊維用処理剤である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の合成繊維用処理剤は、金属石けんを含有するものである。金属石けんを含有しないと、巻き取られた糸条をパッケージから解舒することが困難となる問題がある。
【0009】
かかる金属石けんとして、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、アイコサン酸、ドコサン酸、ラウリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、オクタン酸、トール油脂肪酸等の脂肪酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、d−ピマル酸、イソ−d−ピマル酸、ポドカルプ酸、アガテンジカルボン酸、安息香酸、ケイ皮酸、p−オキシケイ皮酸、ジテルペン酸等の樹脂酸またはナフテン酸等のアルカリ塩以外の金属塩またはこれらの混合塩が好ましい。
【0010】
金属塩中の金属種としては、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、銀、バリウム、ベリリウム、カドミウム、コバルト、クロム、銅、鉄、水銀、マンガン、ニッケル、鉛、スズ、チタン等が好ましい。
【0011】
このように、使用する金属石けんは、脂肪酸金属塩であるのが好ましく、特にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が好ましいと考えられるが、本発明では特に、後述の各実施例で好結果が得られた特定の製法で製造された金属石けんを含有する。すなわち、ステアリン酸と酸化マグネシウムを原料とし、乾式直接法で製造されたジステアリン酸マグネシウム塩、ステアリン酸と水酸化ナトリウムを原料とし、複分解沈殿法で、副成する水溶性塩を多量の洗浄温水を用い精製する工程を経て製造されたジステアリン酸マグネシウム塩、および、ステアリン酸と水酸化マグネシウムを原料とし、湿式直接法で製造されたジステアリン酸マグネシウム塩のいずれかを金属石けんとして含有する。
【0012】
本発明の合成繊維用処理剤は、金属石けんの他に、平滑剤、帯電防止剤、分散剤等を含有することも好ましい。
【0013】
平滑剤としては、鉱物油等のパラフィン系炭化水素、ヤシ油、牛脂、パーム油、ひまし油、ナタネ油等の天然油脂類、ラウリルオレート、ネオペンチルジラウレート、オレイルオレート、ジオレイルアジペート、2−エチルヘキシルステアレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、ノルマルブチルステアレート、イソラウリルオレート、ネオペンチルグリコールジオレエート、トリメチロールプロパントリ2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート等の脂肪族エステル類、シロキサン単位として、1)ジメチルシロキサン単位から成るポリジメチルシロキサン、2)ジメチルシロキサン単位と炭素数2〜4のアルキル基を含むジアルキルシロキサン単位とから成るポリジアルキルシロキサン類、3)ジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位とから成るポリシロキサン類等のシリコーンオイル等が好ましく使用される。
【0014】
本発明の合成繊維用処理剤に使用する平滑剤は、取り扱い性やガイド類との走行摩擦を低減する観点から、25℃における粘度が5×10-6〜50×10-62 /Sであるのが好ましい。かかる粘度は、JIS−K2283(原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法)に記載された方法で測定され得る。
【0015】
帯電防止剤としては、アルキルサルフェート、脂肪酸石けん、アルキルスルフォネート、アルキル燐酸エステル等のアニオン界面活性剤等が好ましく使用される。
【0016】
分散剤としては、シリコーンレジン、ポリエーテル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、カルボキシアミド変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、有機カルボン酸等が単独または混合物として好ましく使用される。
【0017】
また、本発明の合成繊維用処理剤には必要に応じて、つなぎ剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、濡れ性向上剤等の通常合成繊維処理剤に使用される成分を含有させることも好ましく行われる。これらの金属石けん、平滑剤、帯電防止剤等の含有量は、目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。
【0018】
本発明の合成繊維用処理剤は、不純物が50ppm以下である。不純物とは、前記の金属石けん、平滑剤、帯電防止剤、分散剤等の処理剤に所定の効果を発揮させるために含有させる成分以外のものをいう。とくに本発明では、この不純物は、後述の各実施例に示すように、元素分析により特定される。すなわち、処理剤中の不純物を測定するための元素分析により、ナトリウムとイオウ、または、ナトリウムとイオウと塩素が検出されるものを不純物としている。この不純物におけるナトリウムとイオウ、または、ナトリウムとイオウと塩素が50ppmを越えた場合、ガイド類にスカムの脱落、蓄積が発生する問題がある。
【0019】
不純物は、使用する金属石けん、平滑剤等の製造工程において副成したり、合成繊維用処理剤の製造工程中に混入すると考えられる。
【0020】
一般的に金属石けんは、脂肪酸と金属酸化物、水酸化物とを反応させる直接法または脂肪酸と水酸化ナトリウムをけん化反応させ、金属塩水溶液で複分解させる複分解法等で製造される。
【0021】
金属石けんの製造は、低温の反応条件で微粉末のものを製造することができるため、複分解法が採用されることが一般的であるが、複分解法では多量に副生する塩化ナトリウムや原料として使用する水酸化ナトリウムに不純物として窒素、リン、硫黄、塩素を含む化合物が混入する場合がある。例えば、カリウムイオン、カルシウムイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン等で構成される無機塩が混入する場合があり、これらの不純物、特に水溶性塩を最終工程で精製しても残存する場合がある。
【0022】
本発明の合成繊維用処理剤は、金属石けんに含有する金属種以外の金属を含有する不純物を実質的に含有しないのが好ましい。
【0023】
金属石けんとしてステアリン酸マグネシウムを使用する場合、硫酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムのうち少なくとも一種を不純物として実質的に含有しないのが好ましい。
【0024】
本発明で使用する金属石けん等の固体物質の平均粒子径は、取り扱い性や分散性を向上させる観点から、0.1〜1.0μmであるのが好ましい。
【0025】
本発明の合成繊維用処理剤の製造方法は、特に制限されるものではなく(ただし、金属石けんの製法は、前述の特定の製法に制限される)、例えば、固体であるステアリン酸マグネシウム等の金属石けんと液体であるシリコーンオイル等の平滑剤とを所定割合で混合し、湿式粉砕して金属石けんを分散させる方法が挙げられる。ここで湿式粉砕に用いる粉砕機としては、縦型ビーズミル、横型ビーズミル、サンドグラインダー、コロイドミル等の各種の湿式粉砕機が使用できる。
【0026】
本発明の合成繊維用処理剤は、木綿繊維、羊毛繊維等の天然繊維、レーヨン、ベンベルグ等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリアミド系、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維等の合成繊維に好適に使用され、特にポリウレタン系繊維等の弾性繊維に好適に使用され、フィラメント系、スパン系のいずれにも使用できる。
【0027】
本発明の合成繊維用処理剤の付着量は、繊維の太さ、品種、形態等で適宜選択される。
【0028】
また、繊維への付着は、主として紡糸、延伸等の製造工程で行われるのが好ましく、仮撚、整経、製織、製編等の後加工工程で行われるのも好ましい。付着方法は、ローラー法、ノズル法、スプレー法等を選ぶことができる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。実施例および比較例中の部は重量部、%は重量%を表す。
【0030】
なお、実施例中の各特性の評価方法について最初に説明する。
[合成繊維用処理剤の分散安定性および平均粒子径]
分散安定性に関しては処理剤100mlを密栓付きガラス製100mlメスシリンダーに入れ、40℃にて1週間と1ケ月間放置し、1週間後と1ケ月間後の処理剤の外観を観察し、下記の基準で評価した。
◎:均一な分散状態で外観に変化がなかった。
○:5ml未満の透明層が発生した。
△:5ml以上の透明層が発生した。
×:沈殿が発生した。
【0031】
平均粒子径に関しては膠着防止剤が1000ppmの濃度となるように処理剤を希釈して試料とした。この試料を25℃で超遠心式自動粒度分布測定装置(堀場製作所製CAPA−700)を用いて面積基準の平均粒子径を測定した。
【0032】
[合成繊維への処理剤の付与]
合成繊維として、ポリウレタン糸を用いた。
まず、分子量2900のテトラメチレンエーテルグリコール、ビス−(p−イソシアナートフェニル)−メタンおよびエチレングリコールからなるポリウレタンのN,N’−ジメチルアセトアミド(以下DMACと略する。)溶液(35重量%)を重合しポリマ溶液(A)とした。
【0033】
次に、アメリカ合衆国特許3555115号に開示されたt−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン系染着剤DMAC溶液(35重量%)(B)とアメリカ合衆国特許3553290号に開示されたp−クレゾ−ルとジビニルベンゼンの縮合重合体の2対1重量比の混合物である酸化防止剤DMAC溶液(35重量%)(C)とした。A、B、Cそれぞれを94重量%、4重量%、2重量%で均一に混合し、紡糸溶液とした。ここで得られた紡糸溶液を用いて、ゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分のスピードで乾式紡糸を行い、巻き取り前にオイリングローラーによって合成繊維用処理剤をニート給油して、処理剤の付着量がポリウレタン糸に対し4.0重量%となるように付与された20dtex、モノフィラメントのポリウレタン糸を長さ58mmの円筒状紙管に、巻き幅38mmを与えるトラバースガイドを介して、サ−フェスドライブの巻取機を用いて巻き取り、300gの巻糸体を得た。処理剤の付与量の測定は、JIS−L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)に準じ、抽出溶剤としてn−ヘキサンを用いて抽出した値とした。
【0034】
[合成繊維の評価]
破断強度、破断伸度は、ポリウレタン糸をインストロン4502型引張試験機を用い、引張テストすることにより得た。これらは下記により定義される。
【0035】
5cm(L1)の試料を50cm/分の引張速度で300%伸長を5回繰返した。このときの応力を(G1)とした。次に該長さを30秒間保持した。さらに6回目にポリウレタン糸が切断するまで伸長した。この破断時の応力を(G3)、破断時の試料長さを(L3)とした。
以下、上記の特性は下記式により与えられる。
強度=(G3)
伸度=100×{(L3)−(L1))/(L1)}
【0036】
解舒張力は米国特許4296174号明細書のカラム4、20行から45行および図6に記載される方法を用いて測定した。糸を45.7m/分で巻糸体の側面から引き剥がし、183mを引き剥がす間の平均張力を計測した。計測時の温度は25℃、60%RHにて実施した。計測する巻糸体の位置は巻糸体表層、中央層、最内部層とした。具体的に巻糸体表層とは巻糸体表面から約5グラムの糸を除去した層であった。この理由は巻糸体表面の巻き上げのパターンを故意に変える場合があるからである。最内部層とは巻糸体に巻糸を約5gを残した層。中央層とは巻糸体表層、最内部層の中間の層とした。解舒張力を測定する巻糸体は3ヶ月以上、約20℃にて保管したものを使用した。
【0037】
[スカムの評価]
スカム発生量に関しては、合成繊維の紡糸巻取りの際の評価をスカム評価1とし、巻き取られた巻糸体を使用する際の評価をスカム評価2として評価した。
紡糸巻取りの際の評価は、紡糸巻取機のクロムメッキが施されたサ−フェスドライブロールへのスカムの脱落および蓄積状態を45000km巻き取った時点で、肉眼観察し、次の基準で評価した。
◎:スカムの付着がほとんどなかった。
○:スカムがやや付着しているが、糸の安定走行に問題はなかった。
×:スカムの付着および蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があった。
【0038】
巻き取られた巻糸体を使用する際の評価は、巻糸体をミニチュア整経機に10本仕立て、25℃×65%RHの雰囲気下で糸速度300m/分で1500km巻き取った。このとき、ミニチュア整経機のクシガイドに対するスカムの脱落および蓄積状態を肉眼観察し、次の基準で評価した。
◎:スカムの付着がほとんどなかった。
○:スカムがやや付着しているが、糸の安定走行に問題はなかった。
×:スカムの付着および蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があった。
【0039】
[実施例1]
分散媒体として25℃における粘度が20×10-62 /Sであるシリコーンオイル94.3重量部と分散剤としてアミノ変性シリコーン0.7重量部とを混合したシリコーン混合物を得た(S−1)。次に金属石けんとしてステアリン酸と酸化マグネシウムを原料とし、乾式直接法で製造された、ナトリウム含有量が30ppmのジステアリン酸マグネシウム塩(M−1)4.0重量部を加えて20〜35℃で均一になるまで混合した後、横型ビーズミルを用いて湿式粉砕してジステアリン酸マグネシウム塩(M−1)がコロイド状に分散された分散液からなる合成繊維用処理剤(T−1)を得た。元素分析により処理剤(T−1)中にナトリウム、イオウが3ppm検出され、主たる不純物は硫酸ナトリウムであり、不純物のナトリウム、イオウは50ppm以下であることが判明した
【0040】
処理剤(T−1)の組成および評価を表1に、(T−1)を付与した合成繊維の評価を表2に示す。
解舒張力は、不純物を含有した処理剤(U−1)を用いた比較例1よりやや低く、良好な結果であった。
【0041】
スカム評価1の結果により、スカムの付着がほとんどないことが判明した。
これに対し、不純物を含有した処理剤(U−1)を用いた比較例1はスカムの付着および蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があり、連続紡糸を行うにはクリーニングを実施する必要があった。
【0042】
スカム評価2の結果でも、スカムの付着がほとんどないことが判明した。
これに対し、不純物を含有した処理剤(U−1)を用いた比較例1はスカムの付着および蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があった。
【0043】
[実施例2]
実施例1で使用したシリコーン混合物(S−1)に実施例1で使用した金属石けん(M−1)を実施例1での使用量の1.5倍量である6.0重量部を加えて20〜35℃で均一になるまで混合した後、横型ビーズミルを用いて湿式粉砕してジステアリン酸マグネシウム塩(M−1)がコロイド状に分散された分散液からなる処理剤(T−2)を得た。
【0044】
元素分析により処理剤(T−2)中にナトリウム、イオウ、塩素が4ppm検出され、主たる不純物は硫酸ナトリウムであり、不純物のナトリウム、イオウ、塩素は50ppm以下であった。
【0045】
処理剤(T−2)の組成および評価を表1に、(T−2)を付与した合成繊維の評価を表2に示す。
解舒張力は、不純物を含有した処理剤(U−2)を用いた比較例2よりやや低く、良好な結果であった。
【0046】
スカム評価1の結果により、スカムの付着がほとんどないことが判明した。
これに対し、不純物を含有した処理剤(U−2)を用いた比較例2はスカムの付着および蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があり、連続紡糸を行うにはクリーニングを実施する必要があった。
【0047】
スカム評価2の結果でも、スカムの付着がほとんどないことが判明した。
これに対し、不純物を含有した処理剤(U−2)を用いた比較例2はスカムの付着および蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があった。
【0048】
[実施例3]
実施例1で使用したシリコーン混合物(S−1)に金属石けんとしてステアリン酸と水酸化ナトリウムを原料とする複分解沈殿法で、副成する水溶性塩を多量の洗浄温水を用い精製する工程を経て製造され、ナトリウム含有量が280ppmのジステアリン酸マグネシウム塩(M−2)4.0重量部を加えて20〜35℃で均一になるまで混合した後、横型ビーズミルを用いて湿式粉砕してジステアリン酸マグネシウム塩(M−2)がコロイド状に分散された分散液からなる処理剤(T−3)を得た。(T−3)の不純物を測定するため元素分析を実施した結果、ナトリウム、イオウ、塩素が28ppm検出され、主たる不純物は硫酸ナトリウムであり、不純物のナトリウム、イオウ、塩素は50ppm以下であることが判明した。
【0049】
処理剤(T−3)の組成および評価を表1に、(T−3)を付与した合成繊維の評価を表2に示す。
解舒張力は、不純物を含有した処理剤(U−1)を用いた比較例1よりやや低く、良好な結果であった。
【0050】
スカム評価1およびスカム評価2の結果により、スカムの付着がほとんどないことが判明した。
【0051】
[実施例4]
分散媒体として25℃における粘度が20×10-62 /Sであるシリコーンオイル94.3重量部と分散剤としてカルボキシアミド変性シリコーン0.7重量部とを混合したシリコーン混合物得た(S−2)。シリコーン混合物(S−2)に金属石けんとしてステアリン酸と水酸化マグネシウムを原料とする湿式直説法で製造されたナトリウム含有量が70ppmのジステアリン酸マグネシウム塩(M−3)であるジステアリン酸マグネシウム塩(M−3)を4.0重量部加えて20〜35℃で均一になるまで混合した後、横型ビーズミルを用いて湿式粉砕してジステアリン酸マグネシウム塩(M−3)がコロイド状に分散された分散液からなる処理剤(T−4)を得た。T−4不純物を測定するため元素分析を実施した結果、ナトリウム、イオウが6ppm検出され、主たる不純物は硫酸ナトリウムであり、不純物のナトリウム、イオウは50ppm以下であることが判明した。
【0052】
処理剤(T−4)の組成および評価を表1に、(T−4)を付与した合成繊維の評価を表2に示す。
解舒張力は、不純物を含有した処理剤(U−3)を用いた比較例3よりやや低く、良好な結果であった。
【0053】
スカム評価1の結果により、スカムの付着がほとんどないことが判明した。
これに対し、不純物を含有した処理剤(U−3)を用いた比較例3はスカムの付着および蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があり、連続紡糸を行うにはクリーニングを実施する必要があった。
【0054】
スカム評価2の結果でも、スカムの付着がほとんどなかった。
これに対し、不純物を含有した処理剤(U−3)を用いた比較例3はスカムの付着および蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があった。
【0055】
[比較例1]
分散媒体として25℃における粘度が20×10-62 /Sであるシリコーンオイル94.3重量部と分散剤としてアミノ変性シリコーン0.7重量部とを混合したシリコーン混合物得た(S−1)。次に金属石けんとしてステアリン酸と水酸化ナトリウムを原料とする複分解沈殿法のジステアリン酸マグネシウム塩(N−1)を用いた。(N−1)中のナトリウム含有量は1800ppmであった。シリコーン混合物(S−1)に対し(N−1)を4.0重量部を加えて20〜35℃で均一になるまで混合した後、横型ビーズミルを用いて湿式粉砕してジステアリン酸マグネシウム塩(N−1)がコロイド状に分散された分散液から成る処理剤(U−1)を得た。U−1の不純物を測定するため元素分析を実施した結果、ナトリウム、イオウが300ppm検出され、主たる不純物は硫酸ナトリウムであり、不純物を実質的に含有していたことが判明した。
【0056】
処理剤(U−1)の組成および評価を表1に、(U−1)を付与した合成繊維の評価を表2に示す。
スカム評価1の結果により、スカムの付着および蓄積が多く、スカム評価2の結果でも、スカムの付着および蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があった。蓄積物の主たる成分は硫酸ナトリウム10水和物であった。
【0057】
[比較例2]
シリコーン混合物(S−1)に6.0重量部のジステアリン酸マグネシウム塩(N−1)を加えて20〜35℃で均一になるまで混合した後、横型ビーズミルを用いて湿式粉砕してジステアリン酸マグネシウム塩(N−1)がコロイド状に分散された分散液からなる処理剤(U−2)を得た。U−2の不純物を測定するため元素分析を実施した結果、ナトリウム、イオウ、塩素が470ppm検出され、主たる不純物は硫酸ナトリウムであり、不純物を実質的に含有していたことが判明した。処理剤(U−2)の組成および評価を表1に、(U−2)を付与した合成繊維の評価を表2に示す。
【0058】
スカム評価1の結果により、スカムの付着および蓄積が多く、スカム評価2の結果でも、スカムの付着および蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があった。蓄積物の主たる成分は硫酸ナトリウム10水和物と塩化ナトリウムであった。
【0059】
[比較例3]
シリコーン混合物(S−2)に金属石けんとしてステアリン酸と水酸化ナトリウムを原料とする複分解沈殿法のジステアリン酸マグネシウム塩(N−2)を用いた。元素分析により(N−2)のナトリウム含有量は2200ppmであった。
【0060】
シリコーン混合物(S−2)に対し(N−2)を4.0重量部を加えて20〜35℃で均一になるまで混合した後、横型ビーズミルを用いて湿式粉砕してジステアリン酸マグネシウム塩(N−2)がコロイド状に分散された分散液から成る処理剤(U−3)を得た。U−1の不純物を測定するため元素分析を実施した結果、ナトリウム、イオウが330ppm検出され、主たる不純物は硫酸ナトリウムであり、不純物を実質的に含有していたことが判明した。
処理剤(U−3)の組成および評価を表1に、(U−3)を付与した合成繊維の評価を表2に示す。
【0061】
スカム評価1の結果により、スカムの付着および蓄積が多く、スカム評価2の結果でも、スカムの付着および蓄積が多く、糸の安定走行に大きな問題があった。蓄積物の主たる成分は硫酸ナトリウム10水和物であった。
【0062】
【表1】
Figure 0004236417
【0063】
【表2】
Figure 0004236417
【0064】
【発明の効果】
以上説明した本発明には、合成繊維用処理剤に優れたハンドリング性を付与するとともに合成繊維に優れた解舒性を付与し、加工工程においてもガイド類へのスカムの付着および蓄積を低減できるという効果がある。

Claims (2)

  1. ステアリン酸と酸化マグネシウムを原料とし、乾式直接法で製造されたジステアリン酸マグネシウム塩、ステアリン酸と水酸化ナトリウムを原料とし、複分解沈殿法で、副成する水溶性塩を多量の洗浄温水を用い精製する工程を経て製造されたジステアリン酸マグネシウム塩、および、ステアリン酸と水酸化マグネシウムを原料とし、湿式直接法で製造されたジステアリン酸マグネシウム塩のいずれかを金属石けんとして含有し、かつ、処理剤中の不純物を測定するための元素分析により検出されるナトリウムとイオウ、または、ナトリウムとイオウと塩素が50ppm以下であることを特徴とする合成繊維用処理剤。
  2. 処理対象合成繊維が弾性繊維であることを特徴とする請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
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