JP4235212B2 - 製紙用ベルト基布及び製紙用ベルト - Google Patents

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Description

本発明は製紙用ベルト基布及び製紙用ベルトに関する。更に詳しくは、耐膨れ性及び耐クラック性が向上された製紙用ベルト基布及び製紙用ベルトに関する。
近年、抄紙機において湿紙の脱水を行うプレスパートではシューを用いたシュープレス装置が利用されている。このシュープレス装置は、プレスロールと、プレスロールの外周形状に則した湾曲面を有するシューとを備え、プレスロールとシューとの間で加圧しながら、両者間に湿紙を走行させることで湿紙の脱水を行う。この際、プレスロールとシューとの間に直接湿紙を走行させるのではなく、例えば、プレスロール側から、湿紙、製紙用フェルト、シュープレス用ベルトの順で湿紙以外に各種製紙用織物等を挟んで脱水を行う。このうちシュープレス用ベルトは、弾性樹脂部と弾性樹脂部内に埋設された基布とを備え、シューに当接して走行するベルトである。このシュープレス用ベルトにマルチフィラメントを利用した技術としては下記特許文献1が挙げられる。
特開2002−275780号公報
上記シュープレス用ベルトは、通常、幅方向(走行方向に垂直な方向)において、その中央部はシューと当接して走行し、両端部はシューと当接せず走行する。このため、中央部に対して両端部は走行が遅れがちとなり、シューと当接される部分と当接されない部分との境界付近の弾性樹脂部等に膨れやクラック等を生じ易いという課題がある。特に近年はシュープレス用ベルトの湿紙供給側表面の弾性樹脂が排水効率向上のために高硬度化されてクラックを生じ易くなる傾向にあることが指摘されている。
このシュープレス用ベルトは各種の機能を有するが、このなかにシューとの摺動による摩擦を軽減するための潤滑油をシュー側表面から湿紙供給側表面へ滲出しないようにする滲出防止機能がある。膨れやクラックを生じることで滲出に直結するわけではないが、潤滑油の滲出防止の観点からは好ましくない。また、湿紙に脱水のための均等で十分な圧力を伝達するという観点からも好ましいものではない。通常、シュープレス用ベルトは100日以上の交換周期で使用されるが、クラックを生じるまでの期間をより長くでき、更には、クラックが生じた場合にもその進展速度が遅いシュープレス用ベルトが求められている。この要求はトランファーベルトやカレンダーベルトにおいても同様である。
本発明は上記課題を解決するものであり、耐膨れ性及び耐クラック性が向上され、更には耐クラック進展性に優れた製紙用ベルト基布及び製紙用ベルトを提供することを目的とする。
本発明者は上記目的を達成すべく、シュープレス用ベルト基布及びシュープレス用ベルトについて検討を行った。この結果、膨れ及びクラック等を生じたシュープレス用ベルトでは、ベルトを構成する基布(シュープレス用ベルト基布)のプレスロール側の上層側を構成する経糸をモノフィラメントとした場合、この糸がフィブリル化(分化)し、更には切断に至っている場合があり、これが膨れ及びクラックの要因となっていることが分かった。更に、この問題は、最上層糸をマルチフィラメント撚糸とすることで効果的に抑制できることを見出した。また、このマルチフィラメント撚糸の強伸度を選択することにより効果的に膨れ及びクラックを抑制でき、特にクラックを生じたとしてもクラックの進展速度を小さくできることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下に示す通りである。
(1)多重織り織布からなり、湿紙供給側の最外面を構成する経糸は隣接された5本あたり2本以上がマルチフィラメント撚糸であり、
上記マルチフィラメント撚糸の伸度2.5%における強度は、1.0〜2.5daNであり、
上記マルチフィラメント撚糸における撚りは、上撚り及び下撚り共に7〜15回/インチであることを特徴とする製紙用ベルト基布。
(2)上記マルチフィラメント撚糸を構成する材料は、アセタール化されたポリビニルアルコール樹脂、及びポリエステル系樹脂のうちの少なくとも1種である上記(1)に記載の製紙用ベルト基布。
(3)上記マルチフィラメント撚糸は、樹脂集束されていない糸である上記(1)又は(2)に記載の製紙用ベルト基布。
(4)上記マルチフィラメント撚糸を構成する材料は、アセタール化されたポリビニルアルコール樹脂であり、
上記マルチフィラメント撚糸は、樹脂集束されていない糸である上記(1)に記載の製紙用ベルト基布。
(5)弾性樹脂部と少なくとも一部が該弾性樹脂部内に埋設された上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載の製紙用ベルト基布とを備え、
該製紙用ベルト基布を構成する上記マルチフィラメント撚糸は、該弾性樹脂部を構成する樹脂に含浸されて埋設されていることを特徴とする製紙用ベルト。
(6)弾性樹脂部と少なくとも一部が該弾性樹脂部内に埋設された上記(4)に記載の製紙用ベルト基布とを備え、
該製紙用ベルト基布を構成する上記マルチフィラメント撚糸は、該弾性樹脂部を構成する樹脂に含浸されて埋設されていることを特徴とする製紙用ベルト。
本発明の製紙用ベルト基布によれば、膨れ及びクラックの発生が抑制された製紙用ベルトを得ることができる。
上記マルチフィラメント撚糸が2本以上のマルチフィラメント原糸を撚ってなる場合は、更に膨れ及びクラックの発生が抑制された製紙用ベルトを得ることができる。
上記マルチフィラメント撚糸の伸度2.5%における強度が0.7〜3.5daNである場合は、更に膨れ及びクラックの発生が抑制されると共に、クラックが発生した場合であってもクラックの進展速度が抑制された製紙用ベルトを得ることができる。
本発明の製紙用ベルトによれば、長期にわたって安定した湿紙脱水を行うことができる。
本発明について、以下詳細に説明する。
[1]製紙用ベルト基布
本発明の製紙用ベルト基布は、多重織り織布からなり、湿紙供給側の最外面を構成する経糸は隣接された5本あたり2本以上がマルチフィラメント撚糸であり、上記マルチフィラメント撚糸の伸度2.5%における強度は、1.0〜2.5daNであり、上記マルチフィラメント撚糸における撚りは、上撚り及び下撚り共に7〜15回/インチであることを特徴とする。
即ち、本発明の製紙用ベルト基布10の一例である4重織りのシュープレス用ベルト基布10における走行方向に垂直な断面を模式的に図1に示す。上記経糸11とは、図1で断面として現れる糸11である。更に、図1に示すように上方が湿紙供給側Uであり、下方がシュー側Dである。本発明の製紙用ベルト基布10は、これらの経糸11のうち、少なくとも湿紙供給側Uの最外面を構成する経糸の隣接された5本のうち2本以上がマルチフィラメント撚糸111であることを特徴とする。
上記「多重織り織布」は、2重(2層)以上の多重織りであればよいが、通常、3重織り以上である。また、その上限は特に限定されないが、通常、6重(6層)以下である。特に3〜5重織りの多重織り織布において好ましい。尚、各層の織り方は特に限定されず、平織りであってもよく、斜織りであってもよく、その他の織り方であってもよく、これらの併用であってもよい。
上記「湿紙供給側」は、製紙用ベルト基布が製紙用ベルト内に埋設されて使用される際に、湿紙が供給されることとなる側である。尚、シュープレス用ベルト及びシュープレス用ベルト基布においては、湿式供給側に対する反対側をシュー側というものとする。
上記「最外面」は、湿紙供給側の基布の最も外側の表面である。この最外層には、通常、経糸と緯糸とが現れる。即ち、最外面は経糸と緯糸とから構成される。
上記「マルチフィラメント撚糸」は、複数本のマルチフィラメントからなる撚糸である。このマルチフィラメント撚糸の構成は特に限定されない。即ち、例えば、(2)モノフィラメントを引き揃えた2本以上のマルチフィラメント原糸を撚り合わせてなるマルチフィラメント撚糸、(2)2本以上のマルチフィラメント撚糸(原糸)を撚り合わせてなるマルチフィラメント撚糸、(3)モノフィラメントを引き揃えた1本のマルチフィラメント原糸を撚ってなるマルチフィラメント撚糸、等が挙げられる。これらのなかでは上記(1)及び上記(2)が好ましい。即ち、2本以上のマルチフィラメント原糸を用いたマルチフィラメント撚糸が好ましい。用いるマルチフィラメント原糸の数は2本以上であればよく特に限定されないが、2〜5本が好ましく、2〜4本がより好ましい。
また、マルチフィラメント撚糸を構成する各モノフィラメントの線径等は特に限定されないが、モノフィラメントは3〜70μm(更に5〜50μm、より更に10〜40μm)が好ましい。更に、マルチフィラメント撚糸は、モノフィラメントを50本以上(より好ましくは50〜250本、更に好ましくは50〜100本)含むことが好ましい。各糸は、非加工糸であってもよく、捲縮加工や嵩高加工等を施した加工糸でもよく、これらを併用してもよい。
また、上記マルチフィラメント撚糸における撚り具合は、上撚り、下撚り共に7〜15回/インチであ、上撚り、下撚り共に8〜10回/インチであることが好ましい。このマルチフィラメント撚糸に換えて非撚マルチフィラメントを用いた場合には後述する弾性樹脂部を構成する樹脂を含浸させると、気泡が内部に残存される等の問題があり好ましくない。
このマルチフィラメント撚糸を構成する材料は特に限定されないが、通常、樹脂を用いる。この樹脂種は特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂であってもよいが、通常、熱可塑性樹脂を用いる。この熱可塑性樹脂としては、ビニル系樹脂(疎水化ポリビニルアルコール樹脂等、特にビニロン)、ポリアミド系樹脂{脂肪族ポリアミド樹脂(ナイロン等)、芳香族ポリアミド樹脂(パラフェニレンジアミンとテレフタル酸との重合体など)}、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂等)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでにビニル系樹脂、ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂が好ましい。尚、マルチフィラメント撚糸は、1種の樹脂からなるモノフィラメントのみからなる糸であってもよく、異なる樹脂からなる2種以上のフィラメントを用いた糸であってもよい(例えば、混紡マルチフィラメント撚糸等)。
上記ビニル系樹脂なかでは、特にビニロンが好ましい。ビニロンはアセタール化されたポリビニルアルコール樹脂である。このアセタール化の程度は特に限定されないが、通常、ビニロン全体に対して50質量%以上(更には60質量%以上、特に65質量%以上、通常100質量%以下)であることが好ましい。
上記ポリアミド系樹脂は、ポリアミド構造を有する樹脂であり、例えば、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン610、ナイロン612等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、共重合体又はブレンド物等を用いてもよい。更に、ポリアミド系樹脂に他のモノマーとの共重合体や、他の樹脂とのブレンド物等を用いることができる。例えば、上記ポリアミド系樹脂にポリエーテルを共重合したブロックポリエーテルアミド系樹脂又は上記ポリアミド系樹脂とブロックポリエーテルアミド系樹脂のブレンド物等を用いることができる。ここで、ブロックポリエーテルアミド系樹脂としては、具体的には、ポリアミド形成性モノマーとジカルボン酸との重縮合によって得られる両末端にカルボキシル基を有するポリアミドと、末端アミノポリオキシアルキレン、及び脂肪族ジアミン又は脂環族ジアミン、芳香族ジアミンから選ばれるジアミンを重縮合させることによって得られるブロックポリエーテルアミド系樹脂(特公昭63−55535号公報)が例示される。
上記ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とグリコールとからなるポリエステルであれば特にその種類に限定はない。例えば、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのジカルボン酸成分及びグリコール成分は各々1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。即ち、具体的には、上記ポリエステル系樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等を挙げることができる。これらは単独でもよく、また、これらの共重合体あるいはブレンド物等を用いることができる。更に、ポリエステル系樹脂に他のモノマーとの共重合体や、他の樹脂とのブレンド物等を用いることができる。
このマルチフィラメント撚糸は、上記最外面を構成する経糸において隣接された5本あたり2本以上を占める。即ち、隣接された経糸のうちの40%以上を占める。従って、例えば、4シャフトの組織では2本以上がマルチフィラメント撚糸であり、8シャフトの組織では4本以上がマルチフィラメント撚糸であることを表す。
上記「隣接された5本あたり2本以上」とは、完全組織のシャフト数には関係なく、隣接された経糸を5本づつ組とした場合に、各組のなかに少なくとも2本以上のマルチフィラメント撚糸が含まれていることを表す。
マルチフィラメント撚糸の構成割合が隣接5本あたり2本未満(即ち、隣接された経糸のうちの40%未満)であると、マルチフィラメント撚糸を用いる効果が十分に得られない場合ある。このマルチフィラメント撚糸の使用量は、隣接5本あたりに2本以上であればよいが、隣接5本あたりに3本以上(即ち、隣接された経糸のうちの60%以上)であることが好ましく、隣接5本あたりに4本以上(即ち、隣接された経糸のうちの80%以上)であることがより好ましく、更には、全ての経糸がマルチフィラメント撚糸であることがより好ましい。これにより耐膨れ性及び耐クラック性がより向上されるからである。
このマルチフィラメント撚糸は、上記の最外面を構成する経糸だけでなく、他の糸にも同様にして用いることができる。即ち、例えば、最外面の経糸と、その内層(2層目)の経糸と、について隣接された5本あたり2本以上(より好ましくは隣接5本に3本以上、更に好ましくは隣接5本に4本以上、特に好ましくは全ての経糸)の割合でマルチフィラメント撚糸を用いることができる(図2参照)。また、更に内層(3層目)の経糸として隣接された5本あたり2本以上(より好ましくは隣接5本に3本以上、更に好ましくは隣接5本に4本以上、特に好ましくは全ての経糸)の割合で用いることもできる(図3参照)。
更には、全ての層を構成する経糸について隣接された5本あたり2本以上(より好ましくは隣接5本に3本以上、更に好ましくは隣接5本に4本以上、特に好ましくは全ての経糸)の割合でマルチフィラメント撚糸を用いることができる(図4参照)。即ち、シュープレス用ベルトにおいてはシュー側の最外面を構成する経糸としてマルチフィラメント撚糸を用いる。この場合は、湿紙供給側におけると同様に耐膨れ性及び耐クラック性がシュー側においても向上される。更に、これらの経糸だけでなく緯糸の少なくとも一部として用いることもができる。
製紙用ベルトのうち、特にシュープレス用ベルトにはシューの幅方向の両端近傍を通過するときに屈曲されて、大きな負荷がかかるために、耐屈曲疲労性に優れている必要があると考えられる。この点において上記経糸にマルチフィラメント撚糸を用いると、糸にかかる負荷を分散させることができ、屈曲疲労を軽減できる。このために糸のフィブリル化及び切断を抑制でき、耐膨れ性及び耐クラック性を向上させることができるものと考えられる。
しかし、上記の耐屈曲疲労性の向上を、糸の強伸度において相対的に強度を過度に向上させて達成しようとすると、より急激に糸が破断し易く、クラックを生じた場合にはクラックの進展速度が大きくなり易い。一方、耐屈曲疲労性の向上を、糸の強伸度において相対的に伸度を過度に向上させて達成しようとすると、シュープレス用ベルトとしての形態保持性が低下され、シュープレス用ベルトとしての機能が低下しがちとなることが考えられる。このような観点から伸度2.5%における強度が1.0〜2.5daNであるマルチフィラメント撚糸を用いる。これにより、クラックの進展速度を低下させ、より脱水機能に優れた製紙用ベルト(シュープレス用ベルト)を得ることができる。
尚、このマルチフィラメント撚糸は、予め集束樹脂等によって集束されていない糸である。マルチフィラメント撚糸が集束樹脂等によって集束されていると、マルチフィラメントを用いることによる効果が得られない。即ち、樹脂集束するとモノフィラメントのように機能してしまうためと考えられる。また、非集束糸を織り込んで基布を形成した後に所望の糸だけを選択的に集束させることはできないため、通常、予め集束させた集束糸を用いて基布を織ることになるが、特に弾性樹脂で集束させた集束糸は織り込むことが困難であるという問題もある。更に、集束糸では、製紙用ベルトを製造する際、製紙用ベルトの弾性樹脂部となる液状樹脂(硬化されて弾性樹脂となる)内に基布を含浸させる際にマルチフィラメント撚糸を構成する複数のモノフィラメントの間に液状樹脂がゆきわたらず、集束糸と弾性樹脂部との間に界面を生じ、製紙用ベルト内部に潜在的なクラック源として内包されることとなると考えられる。これらの観点から上記マルチフィラメント撚糸は、樹脂集束されてない糸である必要がある。
また、いわゆる樹脂止め層を要する場合、樹脂止め層を構成する糸については、樹脂止め効果を得るために引き揃えのマルチフィラメント(又は甘撚りのマルチフィラメント)を用いることが好ましい。この樹脂止め層とは、弾性樹脂部として製紙用ベルトの厚さ方向に異なる材料を用いる場合に利用される層である。通常、製紙用ベルトは、硬化されて弾性樹脂となる液状未硬化樹脂を基布に含浸させた後、基布に含浸された液状未硬化樹脂を硬化させて弾性樹脂部を得るため、所望の層を樹脂止め層とすることで、この層を挟んで上下で異なる弾性樹脂材料からなる弾性樹脂部を備える製紙用ベルトを得ることができる。
[2]製紙用ベルト
本発明の製紙用ベルトは、弾性樹脂部と少なくとも一部が該弾性樹脂部内に埋設された本発明の製紙用ベルト基布とを備え、該製紙用ベルト基布を構成する上記マルチフィラメント撚糸は、該弾性樹脂部を構成する樹脂に含浸されて埋設されていることを特徴とする。
即ち、本発明の製紙用ベルト(シュープレス用ベルト)20の一例を図5に示す。図5は、図1に示した4重織りの製紙用ベルト基布21が弾性樹脂部22内に埋設された製紙用ベルト20である。この製紙用ベルト20では、製紙用ベルト基布21を構成するマルチフィラメント撚糸111が弾性樹脂部22を構成する樹脂に含浸されて埋設されていることを特徴とする。即ち、「含浸されて埋設されている」とは、マルチフィラメント撚糸111を構成する複数のモノフィラメントの各々間に弾性樹脂22を構成する樹脂(弾性樹脂)そのものが介在されていることを表す。但し、含浸させて埋設する方法は特に限定されず、例えば、原料に製紙用ベルト基布を浸漬して含浸させてもよく、原料を製紙用ベルト基布に塗布(スプレー塗布、刷毛塗り等)して含浸させてもよい。
上記「弾性樹脂部」は、製紙用ベルトにおける湿紙供給側の最外面を構成するマルチフィラメント撚糸が埋設されていればよく、その他の部分における弾性樹脂部の有無は特に限定されないが、通常、製紙用ベルト基布全体が埋設されるように配置されるか、製紙用ベルト基布の厚さ方向における湿紙供給側のみに配置される。これらのうちでは前者が好ましい。即ち、製紙用ベルト基布が弾性樹脂部内に完全に埋設されていることが好ましい。
この弾性樹脂部を構成する樹脂はマルチフィラメント撚糸を含浸させて埋設できる弾性樹脂であればよく特に限定されない。このマルチフィラメント撚糸を含浸させて埋設できるためには、通常、所定処理前にはマルチフィラメント撚糸を構成する複数のモノフィラメントの間に行きわたりやすいように粘度の低い樹脂であり、所定の処理をすることで弾性樹脂となるものであることが好ましい。従って、通常、硬化されて弾性を発揮できる弾性樹脂を用いる。このような樹脂としては、ウレタン樹脂が挙げられる。
ウレタン樹脂は、1液タイプであってもよく、2液タイプであってもよいが、1液タイプであることがより好ましい。また、硬化形式は特に限定されず、例えば、水硬化型ウレタン樹脂(NCO末端を有するプレポリマーが水分と反応して硬化されたウレタン樹脂等)、加熱硬化型(イソシアネート基が保護基によって保護されたポリイソシアネートを含み、加熱によって保護基が解離して硬化されたウレタン樹脂等)、溶剤除去硬化型(重合された高分子化ポリウレタンを有機溶剤に溶解させた溶液から、有機溶剤を除去することで硬化されるウレタン樹脂等)、分散媒除去硬化型(水等の分散媒に乳化分散させたウレタンエマルジョンから分散媒を除去することで硬化されるウレタン樹脂等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、製紙用ベルトの湿紙供給側を構成する弾性樹脂部の表面(即ち、製紙用ベルトの湿紙供給側表面)には、排水効率を向上するための排水溝(図5における223)を備えることができる。更に、製紙用ベルトは、無端ベルト状(クローズドタイプ)であってもよく、長尺ベルト状(オープンタイプ)であってもよい。
本発明の製紙用ベルト基布をシュープレス用ベルトとして用いる場合、これを用いる湿紙脱水用シュープレス装置の構成等は特に限定されないが、通常、プレスロールとプレスロールに押し当てられるシューとを備え、プレスロールとシューとの間で加圧しながら湿紙を走行させることで湿紙を脱水できる。
湿紙脱水用シュープレス装置の一例を図6に示す。湿紙脱水用シュープレス装置30は、プレスロール31と、プレスロールの外周に沿った形状の湾曲面321を備えるシュー32とを備える。また、湿紙脱水用シュープレス装置は、このシュー32をプレスロール31に対して加圧できる機構を備える。更に、湿紙脱水用シュープレス装置は、無端ベルト状に形成されたシュープレス用ベルト20を固定ビーム33に挿通して管状に保持し、シュープレス用ベルト20を固定ビーム33の外周を回転させる機構を備える。この湿紙脱水用シュープレス装置は、プレスロール31とシュー32との間に製紙用フェルト34を介して湿紙40を供給することで湿紙35を脱水することができる。
脱水を行う際には、プレスロールとシューとの間に挟まれる各種製紙用織り物は特に限定されないが、通常、プレスロール側から湿紙、製紙用フェルト、シュープレス用ベルトをこの順で介することができる。また、製紙用フェルト、湿紙、製紙用フェルト、シュープレス用ベルトをこの順で介することもできる。更に、その他の製紙用織り物を1種又は2種以上介することができる。
以下、本発明の製紙用ベルト基布及び製紙用ベルトを更に具体的に説明する。尚、実験例1及び2が実施例であり、実験例3及び4が比較例である。
[1]マルチフィラメント撚糸
下記表1に示す特性のマルチフィラメント原糸を各々3本を撚り合わせて実験例1〜4のマルチフィラメント撚糸を得た。得られたマルチフィラメント撚糸について、強伸度試験機(株式会社東洋精機製作所製、形式「ストログラフ V10−B」)を用いて強伸度を測定し、表1に併記した。その結果、実験例1〜4は伸度2.5%における強度が0.77〜3.31であった。実験例1〜4のマルチフィラメント撚糸の伸度2.5%近傍における強度をグラフにして図7に示した。また、伸度2.5%における強度0.7〜3.5dNの範囲を同図内に併記した。
Figure 0004235212
[2]製紙用ベルト
図1に示すものと同じ4重織りの製紙用ベルト基布(経糸68本/インチ且つ緯糸54本/インチ)を製造した。この基布では、湿紙委供給側最外面(最上層)を構成する経糸の全てに実験例1〜4のマルチフィラメント撚糸を各々用いた。また、中上層(上から2層目)の経糸にはPETモノフィラメント(線径0.35mm)を用いた。更に、中下層(上から3層目)の経糸にはPETマルチフィラメント(3000d)を樹脂止め層を形成するように用いた。また、最下層(上から4層目)の経糸にはポリアミドモノフィラメント(線径0.35mm)を用いた。更に、全ての層の緯糸にはPETモノフィラメント(線径0.40mm)を用いた。
また、この製紙用ベルト基布は、湿紙供給側最外面は平織りであり、最下層も平織りとなるように織った。
得られた製紙用ベルト基布の湿紙供給側にウレタンプレポリマーをスプレー塗布し、製紙用ベルト基布の樹脂止め層までの湿紙供給側の部分にウレタンプレポリマーを十分に含浸させた。その後、このウレタンプレポリマーを加熱硬化させて湿紙供給側の弾性樹脂部(図5における221)を形成した。次いで、製紙用ベルト基布の弾性樹脂部が形成されていない一面側(シュー側)にウレタンプレポリマーをスプレー塗布し、製紙用ベルト基布の樹脂止め層までの同一面側(シュー側)の部分にウレタンプレポリマーを十分に含浸させた。その後、このウレタンプレポリマーを加熱硬化させて同一面側(シュー側)の弾性樹脂部(図5における222)を形成して、各々湿紙供給側の最外面を構成する経糸の全てが実施例1〜4のいずれのマルチフィラメント撚糸からなる製紙用ベルトを製造した。
[3]耐久性評価
上記[2]で得られた各製紙用ベルトを抄紙機のプレスパートを構成する湿紙脱水用シュープレス装置に装着し、抄紙を行う。その結果、いずれの製紙用ベルトもクラックは最後期まで発生が認められず、膨れは生じない。即ち、従来のモノフィラメントを上記糸として用いた場合に比べて優れた耐膨れ性及び耐クラック性が得られる。また、使用最後期において発生するクラックは、実験例1のマルチフィラメント撚糸を用いた製紙用ベルトにおける進展速度を100とした場合に、実験例2のマルチフィラメント撚糸を用いた製紙用ベルトでは33であり、実験例3のマルチフィラメント撚糸を用いた製紙用ベルトでは33であり、実験例4のマルチフィラメント撚糸を用いた製紙用ベルトでは66となる。
従って、これらの結果より、マルチフィラメント撚糸を用いることにより、優れた耐膨れ性及び耐クラック性が得ら、長期にわたって使用できる製紙用ベルトが得られる。また、特に強伸度が0.7〜3.5dNの範囲のマルチフィラメント撚糸を用いることにより、特にクラックの進展速度が小さいシュープレス用ベルトが得られる。また、伸度2.5%における強度が0.7dNよりも大きく且つ3.5dNよりも小さい程、よりクラックの進展速度は小さく、シュープレス用ベルトとして優れた性能を発揮できる。
尚、本発明においては、上記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて種々変更した実施例とすることができる。
本発明の製紙用ベルト基布及び製紙用ベルトは、製紙用途に広く利用される。本発明の製紙用ベルト基布及び製紙用ベルトは、抄紙機の湿紙脱水を目的とするシュープレス装置におけるシュープレス用ベルト、製紙機の各所におけるトランファーベルト、カレンダーパートにおけるカレンダーベルトなどに好適に用いられる。
本製紙用ベルト基布(シュープレス用ベルト基布)の一例の走行方向断面を模式的に示す説明図である。 本製紙用ベルト基布(シュープレス用ベルト基布)の他例の走行方向断面を模式的に示す説明図である。 本製紙用ベルト基布(シュープレス用ベルト基布)の更に他例の走行方向断面を模式的に示す説明図である。 本製紙用ベルト基布(シュープレス用ベルト基布)の更に他例の走行方向断面を模式的に示す説明図である。 本製紙用ベルト(シュープレス用ベルト)の一例の走行方向断面を模式的に示す説明図である。 本製紙用ベルト(シュープレス用ベルト)を用いた湿紙脱水用シュープレス装置の一例を説明する模式的な説明図である。 実験例1〜4のマルチフィラメント撚糸の伸度2.5%近傍における強度を示すグラフである。
符号の説明
10;製紙用ベルト基布(シュープレス用ベルト基布)、11;経糸、111;マルチフィラメント撚糸、12;緯糸、20;製紙用ベルト(シュープレス用ベルト)、21;製紙用ベルト基布(シュープレス用ベルト基布)、22;弾性樹脂部、221;湿紙供給側弾性樹脂部、222;シュー側弾性樹脂部、223;排水溝、30;湿紙脱水用シュープレス装置、31;プレスロール、32;シュー、321;湾曲面、33;固定ビーム、34;製紙用フェルト、35;湿紙、U;湿紙供給側、D;シュー側。

Claims (6)

  1. 多重織り織布からなり、湿紙供給側の最外面を構成する経糸は隣接された5本あたり2本以上がマルチフィラメント撚糸であり、
    上記マルチフィラメント撚糸の伸度2.5%における強度は、1.0〜2.5daNであり、
    上記マルチフィラメント撚糸における撚りは、上撚り及び下撚り共に7〜15回/インチであることを特徴とする製紙用ベルト基布。
  2. 上記マルチフィラメント撚糸を構成する材料は、アセタール化されたポリビニルアルコール樹脂、及びポリエステル系樹脂のうちの少なくとも1種である請求項1に記載の製紙用ベルト基布。
  3. 上記マルチフィラメント撚糸は、樹脂集束されていない糸である請求項1又は2に記載の製紙用ベルト基布。
  4. 上記マルチフィラメント撚糸を構成する材料は、アセタール化されたポリビニルアルコール樹脂であり、
    上記マルチフィラメント撚糸は、樹脂集束されていない糸である請求項1に記載の製紙用ベルト基布。
  5. 弾性樹脂部と少なくとも一部が該弾性樹脂部内に埋設された請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の製紙用ベルト基布とを備え、
    該製紙用ベルト基布を構成する上記マルチフィラメント撚糸は、該弾性樹脂部を構成する樹脂に含浸されて埋設されていることを特徴とする製紙用ベルト。
  6. 弾性樹脂部と少なくとも一部が該弾性樹脂部内に埋設された請求項4に記載の製紙用ベルト基布とを備え、
    該製紙用ベルト基布を構成する上記マルチフィラメント撚糸は、該弾性樹脂部を構成する樹脂に含浸されて埋設されていることを特徴とする製紙用ベルト。
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