JP4235073B2 - アルミニウム系材料のろう付け用フラックス粉末及び該フラックス粉末の塗工方法 - Google Patents
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しかし、このKF−AlF3系フラックスは、マグネシウム(Mg)が含有したアルミニウム系材料のろう付けには十分な性能を示さないという欠点を有している。具体的には、0.4重量%を越えるMgが含有したアルミニウム系材料のろう付けでは、次の式(1)に示すように、ろう付け中にMgとフラックスが反応してフラックスの主成分であるKAlF4が消費され、高融点のKMgF3やAlF3が生成、析出する。このKMgF3やAlF3がフラックス層の融点を上昇させ、溶融時の流動性を著しく低減させる。従って、溶融したフラックスは十分な広がり性が得られず、フラックスの主成分であるKAlF4が反応により消費されるため、アルミニウム系材料表面の酸化被膜の除去が十分に行われない。
従って現状のフラックスでは、Mg含有アルミニウム系材料へのろう付けには、Mgを含有しないアルミニウム系材料への塗布量の約5倍量程度を塗布しなければ、十分な広がり性が得られず、材料表面の酸化被膜の除去が行われないという問題があった。
また、上記特許文献2に示されたフラックスでは、高価なセシウムが原料に用いられていることから、一般的に使用されるろう付け用としては経済的ではなく、実用化されていない。また、このセシウム含有フラックスに含まれるセシウム化合物が吸湿性を有しているため、セシウム含有フラックスを使用することで、ろう付け設備の腐食の問題が発生する。
請求項1に係る発明では、粉末の組成をK/Alモル比1.20〜1.40、F/Alモル比4.05〜4.30の範囲内、粉末に含まれるK2AlF5・H2O含有量を24重量%以下とし、かつ、粉末をX線回折分析したときのK2AlF5・H2Oによる最大ピーク強度がKAlF4による最大ピーク強度の23%以下となるように規定することで、Mg含有アルミニウム系材料のろう付けにおいて、従来のフラックス粉末に比べて溶融時の流動性及び広がり性が増加し、材料表面の酸化被膜の除去にも優れ、Mg含有アルミニウム系材料に対して従来のフラックス粉末を用いた場合に比べてその塗布量を大幅に低減し、良好なろう付けを得ることができる。また、非腐食性で安全性に優れ、かつ比較的安価で経済的に優れ、広く一般用に使用することができる。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、粉末のメジアン径が10μm〜30μmであるフラックス粉末である。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に係る発明であって、粉末が凝集粒子、柱状粒子及び針状粒子からなる群より選ばれた形状を有するフラックス粉末である。
請求項5に係る発明では、従来の湿式塗工で行われていた塗工工程前後における洗浄工程及び乾燥工程が必要なくなるため、ろう付けの雰囲気炉への水分持ち込みをなくすことができる。
このようにフラックス粉末を調製することにより、Mg含有量が0.2重量%〜0.5重量%のアルミニウム系材料のろう付けにおいて、従来のフラックス粉末に比べて溶融時の流動性及び広がり性が増加し、材料表面の酸化被膜の除去にも優れ、Mg含有アルミニウム系材料に対して従来のフラックス粉末を用いた場合に比べてその塗布量を大幅に低減し、良好なろう付けを得ることができる。また、非腐食性で安全性に優れ、かつ比較的安価で経済的に優れ、広く一般用に使用することができる。
3Mg + 2KAlF4 + K3AlF6 → 3KMgF3(s)↓ + K2AlF5 + 2Al↓ ……(3)
このような反応により、KAlF4の消費が抑制され、高融点のAlF3の析出も防止することができる。しかしながら従来より使用されているKF−AlF3系フラックス粉末の製造は、図1(a)〜(c)及び次の式(4)〜式(6)で示される湿式反応によって製造される。
HAlF4 + KOH → KAlF4↓ ……(5)
HAlF4 + HF + 2KOH → K2AlF5・H2O↓ + H2O ……(6)
従って、フラックス粉末の組成をK/Alモル比1.10以上としてもK2AlF5・H2Oの形態の結晶粒子が存在することになる。この結晶水を含有するK2AlF5・H2Oは、ろう付け工程において水蒸気を発生し、アルミニウム系材料表面の酸化被膜を増加させる。従って、フラックスの流動性が低減する。
先ず、白金皿の風袋重量を測定し、その重量をAとする。次いで、フラックス粉末試料10gを白金皿に正確に秤取る。このときの白金皿とフラックス粉末試料10gの重量をBとする。次に、試料を載せた白金皿表面をアルミ箔で覆い、アルミ箔表面に約2mm程度の大きさの穴を20箇所程度開ける。次に、白金皿を電気マッフル炉内に入れて、炉内を500±5℃に加熱し、約15分間保持する。加熱後は白金皿を電気マッフル炉から取り出し、デシケーターに保持して室温にまで放冷する。続いて放冷した白金皿の重量を秤量する。この秤量した重量をCとする。
このようにして得られる加熱減量は、フラックス粉末中のK2AlF5・H2Oの結晶水が加熱により失われることに起因しているため、K2AlF5・H2O含有量を次の計算式によって計算することができる。
上記計算式において、218.2はK2AlF5・H2Oの分子量を、18.0はH2Oの分子量をそれぞれ示す。
従来フラックス粉末の塗工方法は、フラックス粉末を水に分散させたスラリーを使用して散布したり、浸漬等を行うことにより被塗工材料に5〜10g/m2程度塗工することが一般的であり、この湿式塗工では塗工前に被塗工材料の溶剤洗浄、塗工後の乾燥工程やその乾燥設備が必要となる。この湿式塗工では、ろう付けの雰囲気炉への水分持ち込みも増加する可能性もあるほか、本発明のフラックス粉末では水との接触で再び結晶水を含有することになるため、Mg含有アルミニウム系材料のろう付けでその性能を発揮することができない。
<実施例1>
先ず、次の表1に示す組成比を有するフラックス粉末サンプルをNo.1〜No.10まで製造した。製造したNo.1〜No.10のサンプルは、K/Alモル比が1.29〜1.33、F/Alモル比が4.09〜4.19の範囲内であり、粉末に含まれるK2AlF5・H2O含有量が8.12重量%〜23.52重量%であり、相対強度は6〜23であった。また各サンプルの200メッシュ篩透過率は50%〜89%であった。
次いで、マグネシウム含有量が0.4重量%のアルミニウム系材料A及びマグネシウムを含有しないアルミニウム系材料Bをそれぞれ用意した。次に、各材料A及びBの表面にサンプル2mgを塗工して、600℃に維持した雰囲気炉に収容して、約6分間保持した。加熱後、材料を雰囲気炉より取出し、材料表面で溶融したサンプルの広がり性を測定した。アルミニウム系材料A及びBへの広がり性試験結果を図4に示す。
<比較例1>
次の表1に示す組成比を有するフラックス粉末サンプルNo.11〜No.17を用いた以外は実施例1と同様にして広がり性を測定した。アルミニウム系材料A及びBへの広がり性試験結果を図4に示す。なお使用したNo.11〜No.17サンプルはK2AlF5・H2O含有量が本発明の範囲外である。
Claims (5)
- 粉末中にKAlF4、K2AlF5、K2AlF5・H2O及びK3AlF6をそれぞれ含み、マグネシウム含有量が0.2重量%〜0.5重量%のアルミニウム系材料のろう付けに用いるフラックス粉末において、
前記粉末の組成がK/Alモル比1.20〜1.40、F/Alモル比4.05〜4.30の範囲を有し、
前記粉末に含まれるK2AlF5・H2O含有量が24重量%以下であり、
かつ、
前記粉末をX線回折分析したときのK2AlF5・H2Oによる最大ピーク強度がKAlF4による最大ピーク強度の23%以下である
ことを特徴とするアルミニウム系材料のろう付け用フラックス粉末。 - 平均粒径5μm未満の粉末を20重量%未満の割合で含み、平均粒径75μm以上の粉末を5重量%未満の割合で含み、かつ残部の粉末が平均粒径5μm以上でかつ平均粒径75μm未満である請求項1記載のフラックス粉末。
- 粉末のメジアン径が10μm〜30μmである請求項1又は2記載のフラックス粉末。
- 粉末が凝集粒子、柱状粒子及び針状粒子からなる群より選ばれた形状を有する請求項1ないし3いずれか1項に記載のフラックス粉末。
- 請求項1ないし4いずれか1項に記載のフラックス粉末をアルミニウム系材料のろう付け位置に静電塗装により塗布するフラックス粉末の塗工方法。
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