JP4234986B2 - エシェリヒアコリ菌の検出用プローブおよびそれを用いた方法 - Google Patents

エシェリヒアコリ菌の検出用プローブおよびそれを用いた方法 Download PDF

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  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般に、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)菌の検出技術の改良、特に、エシェリヒア コリ菌の検出および同定のための新規のプローブ、これらプローブを利用したエシェリヒア コリ菌の検出および同定方法と、その関連技術に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
大部分のエシェリヒア コリ(Escherichia coli)菌は病気の起因に関与せず、健康なヒトや動物の腸管内に静在している。 しかしながら、一部の大腸菌は病原性を有しており、腹痛、嘔吐、下痢等の消化器系の感染症、それに、尿道炎、膀胱炎、髄膜炎等の非消化器系の感染症を引き起こす。 消化器系の感染症を引き起こす大腸菌は経口的に感染し、腸管で病原性を示すことから下痢性大腸菌あるいは広義の病原性大腸菌と称されている。 そして、一般的に、これら病原性大腸菌は、次の5つのグループに分類することができる。
【0003】
1.毒素原性大腸菌(Enterotoxigenic Escherichia coli;ETEC)、
2.腸管侵入性大腸菌(Enteroinvasive Escherichia coli;EIEC)、
3.腸管病原性大腸菌(Enteropathogenic Escherichia coli;EPEC)、
4.腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic Escherichia coli;EHEC)またはベロトキシン産生性大腸菌(Verotoxin-producing Escherichia coli;VTEC)
5.腸管付着性大腸菌(Enteroadherent Escherichia coli;EAEC)。
【0004】
また、出血性大腸炎の約10%が溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome;以下、単に「HUS」と称する)、血栓性血小板減少性紫斑病および脳症等の重症合併症を引き起こす。 HUSとは、血栓性微小血管障害の形態で乳幼児期に好発する急性腎不全であり、原因として腸管出血性大腸炎、肺炎球菌感染、遺伝、薬剤または膠原病等に伴うものがあり、HUSの中枢神経障害は現在のHUSによる死因の第1位を占めている。
【0005】
現在行われている起因菌の確定診断にあっては、菌の分離とその分離菌の確認という2段階の作業が必要とされている。 菌の分離に使用される培地として、ソルビトール マッコンキー(SMAC)寒天培地、SIB(Sorbitol IPA Bile Salts)寒天培地、それに、SMAC寒天培地にセフィキシムと亜テルル酸カリウムを添加したCT-SMAC寒天培地がある。 さらに、レインボーアガーやクロモアガーを用いた選択培地も利用可能である。 次に、この様にして選択された菌(分離菌)の確認が必須であり、その確認方法として免疫学的反応を利用したラテックス凝集反応法や、EIA法もしくはPCR反応を利用した方法などが用いられている。 しかしながら、このような培養方法によれば、診断結果を得るまでに相当の時間を必要とするので、病態が進行する恐れが多分にある。 また、一般に、このような培養方法は、その操作法が煩雑で、相応の熟練を要するなど、必ずしも実用的でない側面も否めない。
【0006】
感染症の治療は、理論的には第一に起因菌を確定し、第二に起因菌に応じた的確な治療を行うことが重要である。 それを達成するためには、事前に細菌検査などを行う必要があるが、臨床においては急を要することもあり、現実的にはこれら処置が殆ど実施されていないのが現状である。 すなわち、多くの医師は独自の治療経験に基づいて診断や起炎菌の予測を行い、予測された起因菌に対する抗菌薬を投与し治療経過を観察した後に治療を終了するか、起因菌同定の検査結果を待ってから抗菌薬を変更するなどの処置を行っている。 このような現在の治療方針によれば、起因菌に対して効力を示さない抗菌薬が投与される可能性が多分にあり、適切な処置を施せずに患者を危険な状態に放置する可能性も否めず、また、抗菌薬の無駄使いによる医療費の増加が懸念されている。 加えて、感染症を疑われた時点で大量に抗生物質を投与されている場合には、たとえ検体中(特に、血液中)に起因菌が含まれていても、細菌の増菌や増殖が抑えられている場合があり、実際のところ、これらの検体から起因菌を培養できる可能性は極めて低いものとなっている。
【0007】
このように、エシェリヒア コリ菌の確定に至るまでには、血液培養など様々な検査を必要とするので、迅速な確定診断は到底望むべくもなく、また多額の費用を要するなどの問題があった。 さらに、菌の培養に長時間を要する上に、薬剤感受性成績の結果を得るまでに3〜4日の培養がさらに必要であることも、迅速な診断結果の取得を難しくしている。
【0008】
このような背景がゆえに、病原性大腸菌に感染したこと(とりわけ、血液中に病原性大腸菌が存在すること)を早期にかつ正確に診断できる簡便な方法の確立が、臨床現場において待望されてるのである。
【0009】
このような諸問題を解決するために、本出願人は、貪食細胞に貪食された外来微生物の検出および/または同定のための方法を発明した(特許文献1を参照)。 すなわち、この方法によれば、貪食細胞中に存在する外来微生物由来の遺伝子は、これら遺伝子に対して特異的にハイブリダイゼーション可能なプローブを用いたin situハイブリダイゼーションによって検出される。 具体的には、この方法は、生体由来の臨床検体より取得した食細胞を固定し、これら食細胞に対して細胞膜の透過性を亢進させるための処理を施し、食細胞内に取り込まれた感染症原因菌のDNAを露出し、ストリンジェントな条件下で感染症原因菌のDNAにハイブリダイゼーション可能な検出用DNAプローブを用いたin situハイブリダイゼーションを行い、および、ハイブリダイズシグナルの出現の有無によって感染症原因菌を検出および/または同定する、との一連の工程を含む。
【0010】
病原性大腸菌に感染したと疑われる患者の血液を、この方法に従って検査したところ、血液培養法と比較して約4倍の感度で菌を検出し、さらに24時間以内に判定を終えることができたこともあり、この方法は感染症分野において脚光を浴びている。
【0011】
【特許文献1】
特公平07−40号
【0012】
このように、本願発明は、エシェリヒア コリ菌の検出および同定に有用な新規プローブ、特に、ハイブリダイゼーション用プローブを提供する。 それに加えて、これらプローブの利用によって、従前の検出方法よりも検出効率ならびに検出感度に優れた検出方法や検出手段を実現することも、その目的としている。
【0013】
本願発明の方法は、臨床検体が血液である場合に特に有効な手段となりうる。
【0014】
【課題を解決するための手投】
本発明は、従来技術で認識されていた上掲の不都合に鑑みて発明されたものであって、その要旨とするところは、エシェリヒア コリ菌に対して特異的な交差反応を示し、かつ(a) 配列番号:1または2に記載の塩基配列;(b) 塩基配列(a)と70%以上の相同性を有する塩基配列;または、(c) 塩基配列(a)および/または(b)に対して相補的な塩基配列を含む、エシェリヒア コリ菌の検出用プローブにある。
【0015】
また、本発明によれば、前述した検出用プローブを用いたエシェリヒア コリ菌の検出方法も提供される。 この検出方法は、(a) 臨床検体より取得した生体由来の食細胞を支持体上に固定し、(b) 固定した食細胞の細胞膜の透過性を亢進する化学処理を行い、(c) 食細胞に含まれる感染症原因菌の染色体DNAを得、(d) ストリンジェントな条件下で、得られた染色体DNAと本発明の検出用プローブとの間でin situハイブリダイゼーションを行い、そして、(e) ハイブリダイゼーションシグナルを検出する、との工程を含む。
【0016】
さらに、本発明の他の態様によれば、エシェリヒア コリ菌の同定方法が提供される。 この同定方法は、(1) 菌種不明の感染症原因菌の染色体DNAを得、(2) 本発明の検出用プローブを構成する塩基配列の少なくとも一部からなるプライマーを調製し、(3) 得られた染色体DNAと当該プライマーとの共存系でのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって当該DNAを増幅し、そして、(4) 増幅されたDNAを検出する、との工程を含む。
【0017】
また、本発明のさらに他の態様によれば、食細胞に貪食された外来微生物(特に、エシェリヒア コリ菌)の遺伝子を観察する方法が提供される。 この観察方法は、(i) 臨床検体より取得した生体由来の食細胞を支持体上に固定し、(ii)固定した食細胞の細胞膜の透過性を亢進する化学処理を行い、(iii) 食細胞に含まれる感染症原因菌の染色体DNAを得、(iv) ストリンジェントな条件下で、得られた染色体DNAと本発明の検出用プローブとのin situハイブリダイゼーションを行い、(v) ハイブリダイゼーションシグナルを検出し、(vi) 工程(i)〜(v)を繰り返し、そして、(vii) ハイブリダイゼーションシグナルの経時的変化をモニターする、との工程を含む。
【0018】
加えて、本発明のさらに他の態様によれば、本発明の検出用プローブ、食細胞含有検体調製器具、支持担体、細胞膜用化学処理剤、DNA露出処理剤、ハイブリダイゼーション用具、およびハイブリダイゼーションシグナル検出器具を含むエシェリヒア コリ菌の検出キットが提供される。
【0019】
そして、本発明のさらに別の態様によれば、チップ基板および当該基板の表面にその一端が固定されてなる本発明の検出用プローブまたはその断片とを具備したDNAチップが提供される。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本願発明を詳細に説明する。
【0021】
定 義
まず、本明細書で使用する「臨床検体」の語は、生体由来の食細胞が含まれる臨床検体を総称するものであり、例えば、血液、組織液、リンパ液、脳脊髄液、膿、粘液、鼻水、痰などの体液が挙げられる。 また、糖尿病、腎障害、肝障害などの病態によっては、尿、腹水、透析排液などの他に、鼻腔、気管支、皮膚、各種臓器、骨などを洗浄した後の洗浄液にも生体由来の食細胞が含有されるため、これらも臨床検体の範疇に包含される。 本願発明においては、臨床検体が血液である場合において特に有効である。 加えて、皮膚、肺、腎、粘膜などの組織も、本発明の臨床検体として用いることができる。 これはすなわち、食細胞の一つであるマクロファージには、単球、肺胞マクロファージ、腹腔マクロファージ、固定マクロファージ、遊離マクロファージ、ハンゼマンマクロファージ、炎症性マクロファージ、肝クッパー細胞、脳ミクログリア細胞などの様々な形態に変化するため、血液のみならず、これらを含有する組織までもが本発明の臨床検体として用いることができることによる。 例えば、腎炎が疑われる患者から、腎生検に従って腎組織を採取し、トリプシン等の酵素を用いることによって細胞を剥離してこの組織内に存在する食細胞を取得し、得られた食細胞を用いることで、腎炎の原因微生物を検出および同定することができる。
【0022】
次に、本明細書で使用する「食細胞」の語は、外来微生物を含めた異物を自身の細胞内に取り込むことのできる細胞を指すものであって、例えば、マクロファージ、単球、好中球、好酸球などが挙げられる。 また、U937細胞、HL60細胞などの食細胞系も、本発明において好適に使用することができる。
【0023】
食細胞(白血球)画分は、公知の方法によって臨床検体から取得することができる。 例えば、約5mlのヘパリン加静脈血(白血球数の少ない場合は10ml)を採取し、この血液と血液分離試薬[塩化ナトリウム225mgとデキストラン(分子量200,000〜300,000)1.5gを含み、滅菌精製水にて全量を25mlに調製したもの]とを4:1程度の割合で混和した後、約10℃〜約40℃で、約15分〜約120分間、好ましくは、約37℃で、約30分間静置することによって、白血球画分(上層)を取得することができる。
【0024】
食細胞の固定
このようにして得た白血球画分を、約0℃〜約20℃にて、約100×g〜約500×gで、約3分〜約60分間、好ましくは、約4℃にて、約140×g〜約180×gで、約10分間遠心分離することによって、白血球を得ることができる。
【0025】
遠心分離の際に赤血球が混入してしまった場合には、溶血操作を行うのが好ましい。 例えば、白血球のペレットに滅菌精製水1mlを加えて懸濁した後に、直ちに、過剰量のPBS[塩化ナトリウム18.24g、リン酸一水素ナトリウム12水和物6.012gおよびリン酸二水素ナトリウム二水和物1.123gを含み、かつ滅菌精製水で全量を120mlに調製したもの(以下、単に『PBS原液』と称する)を、滅菌精製水で20倍に希釈して得たもの](以下、単に『PBS』と称する)を加えて等張化した後、再度、約4℃の温度下にて、約140×g〜約180×gで、約10分間遠心分離する。
【0026】
あるいは、このような遠心分離を行わなくとも、貪食細胞が本質的に有する接着能力を利用して、以下のようにして、スライドグラスに接着させることもできる。 白血球を固定する方法として、例えば、カルノア固定を行うことができる。 具体的には、白血球を支持できる担体(支持担体)に白血球のペレットを載置し、カルノア固定液(エタノール:クロロホルム:酢酸=6:3:1で混合して得た液)に20分間程度浸した後、約50%〜約90%、好ましくは、約75%のエタノール液に約5分間浸して、完全に風乾する。
【0027】
このような支持担体としては、不溶性素材から形成されたものが好ましく、例えば、ガラス、金属、合成樹脂(ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ナイロン、ポリアセタール、フッ素樹脂など)、多糖類(セルロース、アガロースなど)が好適に使用できる。 不溶性支持担体の形状としては、例えば、板状、盆状、球状、繊維状、棒状、盤状、容器状、セル、管状等の種々の形状とすることができる。
【0028】
特に、本発明の実施態様において好ましい支持担体として、スライドグラスがある。 このようなスライドグラスとして、例えば、スライドグラス(商品番号MS311BL:日本エアーブラウン社製)がある。 このMS311BLスライドグラスは、その表面に、直径5mmの円形ウェルを14個有している。
【0029】
また、実際の適用を考慮すれば、支持担体への細胞の接着性を改善する目的で、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APS、SIGMA社)を、その表面にコートしてなるAPSコートスライドグラスが好ましい。 その他に、ポリ-L-リジンやゼラチンをコートしてなるスライドグラスも好適に使用できる。 これらAPSコートスライドグラスの作製手順は、まず、スライドホルダーにスライドグラスを固定する。 固定したスライドグラスを、希釈した中性洗剤に30分以上浸して洗浄し、水道水で洗剤を十分に除去し、精製水で洗浄した後に、高温(100℃以上)で十分に乾燥させ、その後、室温で放置冷却する。 次いで、スライドグラスを2%APS含有アセトンに1分間浸し、直ちにアセトンおよび滅菌精製水で順次軽く洗浄した後に、風乾する。 さらに再度、スライドグラスを1〜10%APS含有アセトンに1分間浸し、直ちにアセトンおよび滅菌精製水で順次軽く洗浄した後に、風乾を行った後、約20℃〜約60℃、好ましくは約42℃で乾燥させることで、APSコートスライドグラスが得られる。
【0030】
APSコートスライドグラス表面に白血球を支持させる場合、各ウェルに白血球が単層に広がるように塗抹して、風乾するのが好ましい。 固定化する食細胞の密度(x個/ml)は、約5×106個/ml<x個/ml<約1×108個/ml、好ましくは、約1×107個/ml≦x個/ml≦約5×107個/mlに調整する。 また、これに対応して、APSコートスライドグラスに固定される1ウェル当たりの白血球の細胞数(y個/ウェル(直径5mm))は、約2.5×104個/ウェル<y個/ウェル<約5×105個/ウェル、好ましくは、約5×104個/ウェル≦y個/ウェル≦約2.5×105個/ウェルに調整する。
【0031】
具体的には、白血球画分を、約4℃にて、約140×g〜約180×gで、10分間遠心分離して得た白血球ペレットに、少量のPBSを加えて懸濁し、血球計算盤を用いて白血球数を計測する。
【0032】
そして、約5×104個/ウェル〜約2.5×105個/ウェルの細胞数となるようにPBSで調製した白血球懸濁液5μlを、APSコートスライドグラスの各ウェルに白血球が単層に広がるように塗抹し、完全に風乾させることによって、白血球がその表面に固定支持されたAPSコートスライドグラスが調製される。
【0033】
細胞膜の透過性亢進処理
食細胞の細胞膜の透過性を亢進させるための処理を行う。 この処理方法として、白血球が固定支持されたAPSコートスライドグラスを、PBSに約3〜約30分間浸し、その後、酵素前処理試薬(サポニン1.25g、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(比重1.068〜1.075(20/4℃)、pH(5w/v%) 5.5〜7.5)1.25ml、PBS原液25mlを混合し、滅菌精製水にて全量50mlに調製したもの)を、滅菌精製水で約2倍〜約50倍に希釈した溶液に浸し、振とう機で約3〜約30分間振とうする方法を用いることができる。
【0034】
内在細菌DNAの取得
次に、食細胞内に存在する感染症原因菌のDNAを得る。 具体的には、まず、スライドグラス1枚につき酵素試薬(N-アセチルムラミダーゼ、リゾチームおよび/またはリゾスタフィン;以下、単に『酵素試薬』と称する)に対して、酵素試薬溶解液(フェニルメチルスルフォニルフルオライド(PMSF)含有ジメチルスルフォキシド(DMSO)を、PBSで100倍希釈したもの]を1ml加えて酵素試液を調製した。 その後、約20℃〜約60℃、好ましくは、約37℃〜約42℃の湿潤箱内で、この酵素試薬1mlを白血球塗抹部位に滴下して、約10〜約60分間静置して、感染症原因菌のDNAを露出する。 その後、0.2mol/lの塩酸を含むPBS(PBS原液に塩酸を加え、滅菌精製水で20倍希釈して、塩酸の終濃度を0.2mol/lに調製したもの)に浸し、そのまま振とう機上で約3〜約30分間振とうする。 DMSOは、5%以上の濃度でリゾチームおよびリゾスタフィンの活性を低下させる可能性があるため、5%未満の濃度で使用するのが好ましい。
【0035】
食細胞の形態を保持させる物質であるPMSF以外に、他の公知のプロテアーゼ阻害剤、例えば、トシルリジンクロロメチルケトン(TLCK)およびそれらの混合物などを用いることもできる。 そのような場合は、DMSOなどの溶解剤を適宜変更すればよい。
【0036】
酵素試薬として用いられる各酵素の力価範囲は、次の通りである。 リゾスタフィンの力価範囲は、約1単位/ml〜約1,000単位/ml、好ましくは、約10単位/ml〜約100単位/mlである。 また、N-アセチルムラミダーゼの力価範囲は、約10単位/ml〜約10,000単位/ml、好ましくは、約100単位/ml〜約1,000単位/mlである。そして、リゾチームの力価範囲は、約1,000単位/ml〜約1,000,000単位/ml、好ましくは、約10,000単位/ml〜約100,000単位/mlである。 なお、原因菌がカンジダ アルビカンスなどの真菌である場合には、ザイモラーゼを単独あるいは他の酵素と併用して使用するのが好ましく、その力価範囲は、約50〜約500単位/ml、好ましくは、約100単位/ml〜約500単位/mlである。 また、ザイモラーゼを使用する場合、PMSFまたは公知のプロテアーゼ阻害剤を併用するのが特に好ましい。
【0037】
また、グラム陽性菌とグラム陰性菌の菌体成分の違い、すなわち、ペプチドグリカンまたはリポポリサッカライドの違いにより、使用酵素を適宜選択することができる。 特に、グラム陽性菌とグラム陰性菌の種別にかかわらず、より効果的に菌体を溶菌させるために、2種類以上の酵素を使用することもできる。 リゾチーム、リゾスタフィン、およびN−アセチルムラミダーゼの3種類の酵素を混合した酵素試薬を使用することによって、1種類の酵素に依った場合と比較して溶菌活性が高まる。
【0038】
酵素試薬の至適酵素処理温度は、約26℃〜約59℃、好ましくは、約37℃〜約42℃に設定する。 また、酵素試薬の酵素処理時間は、少なくとも約15分以上、好ましくは、約15分〜約120分、あるいは、少なくとも約20分以上、好ましくは、約30分〜約60分とする。
【0039】
N-アセチルムラミダーゼに関しては、エンテロコッカス フェカーリス(Enterococcus faecalis)の熱処理乾燥粉末ならびにN-アセチルムラミダーゼと共に、2mmol/l 塩化マグネシウムを含む5mmol/lトリス塩酸緩衝液(pH 6.0)中にて、37℃で、5分間反応させた場合、600nmでの吸光度が下がる現象が認められる。 また、ストレプトコッカス サリヴァリス(Streptococcus salivarius (IFO 3350)の熱処理細胞を、37℃、pH 7.0の条件下で、1分間に1μgを溶菌する酵素活性を1単位とした場合、2,000単位/mg以上の活性を示すN-アセチルムラミダーゼを使用することが望ましい。
【0040】
リゾチームに関しては、ミクロコッカス ルテウス(Micrococcus luteus)とリゾチームと共に、PBS中にて、37℃で、5分間反応させた場合、600nmの吸光度が下がる現象が認められる。 また、Micrococcus luteusを、35℃、pH 6.2の条件下で、1分間に540nmの吸光度を0.001下げる時の酵素活性を1単位とした場合、50,000単位/mg以上の活性を示すリゾチームを使用することが望ましい。
【0041】
リゾスタフィンに関しては、スタフィロコッカス エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)とリゾスタフィンが共に、PBS中にて、37℃で、5分間反応させた場合、600nmの吸光度が下がる現象が認められる。 また、スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus)を、37℃、pH 7.5の条件下で、10分間で、 620nmの吸光度を0.240から0.125に下げる酵素活性を1単位とした場合、500単位/mg以上の活性を示すリゾスタフィンを使用することが望ましい。
【0042】
ザイモラーゼ(商品名:ザイモリエイス、生化学工業)は、アルスロバクタールテサル(Arthrobacter lutesu1)の培養液から調製された酵素で、酵母生細胞の細胞壁に対する溶解活性が大きい。 ザイモラーゼに含まれる細胞壁溶解に関与する必須酵素は、β-1,3-グルカン ラミナリペンタオヒドロラーゼ(β-1,3-glucan lanimaripentaohydrolase)であり、これは、β-1,3-結合のグルコースポリマーに作用して、主生成物としてラミナリペンタオースを生成する。 ザイモリエイス-100Tは、硫安分画に精製され、さらにアフィニティークロマトグラフィーにより精製された酵素であって(Kitamura, K. et al., J. Ferment. Technol., 60, 257, 1982)、100,000単位/gの活性を有している。 しかしながら、この酵素の活性は、基質となる酵母の種類、培養条件および生育時期により変化することが知られている(Kitamura, K. et al., J. Gen. Appl. Microbiol., 20, 323, 1974;Kitamura, K. et al., Agric. Biol. Chem., 45, 1761, 1981; Kitamura, K. et al., Agric. Biol. Chem., 46, 553, 1982)。 ザイモリエイス-100Tは、β-1,3-グルカナーゼを約1.0×107単位/g、プロテアーゼを約1.7×104単位/g、そして、マンナーゼを約6.0×104単位/gを含み、DNaseおよびRNaseは認められない(Kitamura, K. et al., J. Gen. Appl. Microbiol., 18, 57, 1972)。 また、ザイモリエイスの至適pHは約5.5〜約8.5であり、約6.5〜約7.5のpHが特に至適性に優れており、一方で、至適温度は約25〜約55℃であり、約35〜約45℃の温度が特に望ましい。
【0043】
さらに、酵母(対数増殖期細胞)に対する溶菌スペクトラム(属名)として、Ashbya、Candida、Debaryomyces、Eremothecium、Endomyces、Hansenula、Hanseniaspora、Kloekera、Kluyveromyces、Lipomyces、Metschkowia、Pichia、Pullularia、Torulopsis、Saccharomyces、Saccharomycopsis、Saccharomycodes、Schwanniomycesなどがある。 特に、カンジダ属には、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ パラシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ ガラクタ(Candida galacta)、カンジダ ギリエルモンジ(Candida guilliermondii)、カンジダ クルセイ(Candida krusei)等がある。
【0044】
これらの属に属する菌も、本発明の適用対象に加えることができる。
【0045】
ザイモラーゼの賦活剤として、SH化合物、例えば、システイン、2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトールなどを用いることができる。 ザイモラーゼは、ビール酵母懸濁液を基質として、約25℃の温度下で、約2時間置いた反応液(ザイモラーゼ:0.05〜0.1mg/溶液mlの1ml、基質:ビール酵母懸濁液(2mg乾燥重量/ml)3ml、緩衝液:M/15リン酸緩衝液(pH 7.5)5mlを含み、滅菌精製水1mlで全量を10mlに調製したもの)でのA800を30%減少するに必要な酵素活性を1単位とする。 なお、ザイモリエイス-100Tは、約100,000単位/gの活性を有している。
【0046】
酵素試薬溶解液として用いられる(プロテアーゼから白血球を保護してその形態を保持させるために添加される)PMSFは、約10μmol/l 以上の濃度で効果が認められ、約0.1mmol/l 以上の濃度では、白血球の形態の劣化が完全に抑制されていたことから、約10μmol/l〜約10mmol/l、好ましくは、約0.1mmol/l〜約1mmol/lの範囲であることが好ましい。 また、ジメチルスルフォキシド(DMSO)の濃度としては、約5%未満の濃度で使用でき、約2%以下の濃度が好ましく、約1%程度の濃度が最も好ましい。 従って、酵素試薬溶解液としては、0.1mol/l PMSF含有DMSOを、PBSで約100〜約1,000倍希釈して調製したものが好ましい。
【0047】
感染症原因菌のDNAを得た後に、細胞膜タンパク質のアセチル化工程を加えてもよい。 具体的には、アセチル化試薬(トリエタノールアミン7.46gと適量の塩酸を含み、かつ適量の滅菌精製水で全量を50mlとしたもの)に無水酢酸を加え、滅菌精製水で約2倍〜約50倍に希釈し、好ましくは、約10倍に希釈して、無水酢酸の終濃度を約0.1〜約3.0%、好ましくは、約0.8%に調製したアセチレーション試薬にスライドグラスを浸し、振とう機上で5〜30分間振とうする。 その後、スライドグラスを、75%、85%、98%のエタノールに順に、それぞれ約2〜約5分間ずつ浸して、完全に風乾させる。
【0048】
また、アセチル化工程の後に、感染症原因菌のDNAをアルカリ処理する工程を挿入することができる。 これにより、感染症原因菌のDNAは、一本鎖のDNAになる。 具体的には、スライドグラスを、約10mmol/l 〜約300mmol/l、好ましくは約70mmol/lの濃度の水酸化ナトリウムを含むPBS(PBS原液に水酸化ナトリウムを加え、滅菌精製水で約20倍希釈し、水酸化ナトリウムの終濃度を70mmol/l に調製したもの)に約2〜約5分間浸して、アルカリ処理を行う。 その後、スライドグラスを、75%、85%、98%のエタノールに順に、それぞれ約2〜約5分間ずつ浸して、完全に風乾させる。
【0049】
In situ ハイブリダイゼーション
ストリンジェントな条件下にて、感染症原因菌のDNAとハイブリダイゼーション可能な検出用DNAプローブを用いてin situハイブリダイゼーションを行う。
【0050】
In situハイブリダイゼーションを実施するにあたって、まず、プローブ希釈液を用いて調製した検出用DNAプローブ含有液(プローブ液)を塗抹部位に塗布し、約25℃〜約50℃、好ましくは、約37℃〜約42℃の湿潤箱内で、約1〜約3時間、好ましくは、約2時間静置させる。 その後、ハイブリダイゼーション洗浄液[ハイブリダイゼーション原液(塩化ナトリウム13.15gとクエン酸三ナトリウム2水和物6.615gとを含み、滅菌精製水にて全量を75mlに調整したもの、以下、単に、『ハイブリダイゼーション原液』と称する)を、ハイブリダイゼーション原液:滅菌精製水:ホルムアミド=5:45:50の割合で混合して調製したもの]を3つの染色ビンに用意し、それぞれを順に、約35〜約45℃、好ましくは、約42℃で、約10分間ずつ浸す。 その後、PBSに浸したままで、振とう機上で、約5〜約30分間振とうさせる。 詳細には、プローブ希釈液は、サケ精子DNA 600μl、100×デンハート溶液50μl、前出のハイブリダイゼーション原液500μl、ホルムアミド2250μl、50%硫酸デキストラン1000μlを含んでいる。 プローブ液には、15ngの各検出用DNAプローブを含有せしめるのが好ましく、プローブ希釈液にて全量を50μlとするのが望ましい。
【0051】
エシェリヒア コリ菌のプローブ濃度は、約0.1〜約2.4ng/μl、好ましくは約0.6〜約1.8ng/μl、より好ましくは、約0.6〜約1.2ng/μlとする。
【0052】
また、ハイブリダイゼーションの試験時間は、少なくとも約30分以上、好ましくは、約60分以上、より好ましくは、約90分以上とする。 最も好ましくは、ハイブリダイゼーション時間を120分〜900分に設定すべきである。
【0053】
In situハイブリダイゼーションの実施において、検出感度を高める観点からして、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤の使用が好ましい。 SDSの好ましい濃度は、約1%以下、好ましくは、約0.1%〜約0.75%、より好ましくは約0.25%〜約0.5%である。 SDSは、ハイブリダイゼーションの際に用いる溶液に添加されていればよく、プローブ希釈液またはプローブ液に事前に混合して用いてもよい。
【0054】
また、DNAプローブとしては、約350〜約600塩基長、好ましくは、約350〜約550塩基長、最も好ましくは、約350〜約500塩基長の長さを有する1種以上の核酸断片とするのが好ましい。 これはすなわち、食細胞内へのプローブの導入を円滑にし、かつ取り込まれている外来微生物の遺伝子への確実な接触が許容されることによる。 ところで、プローブの塩基長は、必ず上記塩基長範囲に収まらなければならないことを意味するものではなく、プローブ塩基長の分布に上記範囲の塩基長が含まれていればよい。 これらプローブは、1種で用いても数種(1種以上)で用いても良い。 1種以上のプローブとは、一菌種に対してハイブリダイズできる複数種のプローブであってもよく、また、一菌種に対してプローブは1つであるが、菌種が複数種存在するためにプローブの種類が複数種となっていてもよく、プローブの種類が1種以上であれば特に制限されない。
【0055】
なお、プローブは、食細胞自体との交差反応性に乏しい(ハイブリダイズしない)配列を有するDNA断片を含むものとすることが好ましく、プローブの起源種と異なる他の菌種に由来する遺伝子とハイブリダイズするものであってはならない。
【0056】
例えば、サブトラクション法を用いれば、短時間で特異プローブを作成することができる。 これらプローブは、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ビオチン、ジゴキシゲニン(ジゴキシゲニン(DIG)-11-dUTP)等の非放射性同位体標識用物質を用いて、定法のニックトランスレーション法に従って、調製およびラベルすることができる。 プローブの鎖長は、ニックトランスレーション反応において添加するDNaseIとDNAポリメラーゼIの量比を変化させることによって、最も効率よく標識付け可能なように制御できる。
【0057】
一例として、本願発明のプローブEC-7の2μgを効率よくラベル化し、また、外来微生物DNAと効率よくin situハイブリダイズ可能なプローブ鎖長(350〜600)にするためには、全量100μlの反応液中に、10U/μlのDNAポリメラーゼIの2μlに対し、全量100μlの反応液中に約10〜約350mU、好ましくは、約25〜約200mU、より好ましくは、約50〜約150mUに調製されたDNaseIを6μl存在するように調製する。 この場合、各酵素の容量および反応液全量などは、上記した至適反応条件の比率が一定である限り、適宜変更してもよい。 換言すれば、全量100μlでの20UのDNAポリメラーゼIに対して、DNaseIの濃度を、約10〜約350mU、好ましくは、約25〜約200mU、より好ましくは、約50〜約150mUの濃度に調整する。
【0058】
さらに換言すれば、1単位のDNAポリメラーゼIに対して、約0.5/1000〜約17.5/1000、好ましくは、約1.25/1000〜約10/1000、より好ましくは、約2.5/1000〜約7.5/1000単位のDNaseIを用いてニックトランスレーション反応を行うのが望ましい。 また、1μgのDNAについて着眼すれば、10UのDNAポリメラーゼIに対して、DNaseIを約5〜約175mU、好ましくは、約12.5〜約100mU、より好ましくは、約25〜約75mUにすればよい。 他のプローブに関しては、上記した至適反応条件を参考にして、DNA量、DNAポリメラーゼIおよびDNaseIに関する至適反応条件を決定することができる。 加えて、効率よくラベル化でき、しかも外来微生物DNAと効率よくin situハイブリダイゼーションできるプローブ鎖長(約350〜約600塩基長)に調節することもできる。
【0059】
ところで、in situハイブリダイゼーションを実施する際に用いられる「ストリンジェントな条件」とは、例えば、ホルムアミド約30%〜約60%、好ましくは、約50%の存在下、約30〜約50℃、好ましくは、約38〜約42℃でインキュベートし、その後、洗浄を行う条件である。
【0060】
In situハイブリダイゼーションを行った後、ブロッキングの工程を加えることもできる。 具体的には、湿潤箱内でスライドグラス1枚につきブロッキング試薬(ウサギ正常血清2mlとPBS原液0.5mlを含み、かつ滅菌精製水にて全量を10mlに調製したもの)1mlを塗抹部位に滴下し、約15〜約60分間静置する。 その後、ブロッキング試薬を除去する。
【0061】
ハイブリダイズシグナルの検出
菌由来の遺伝子(ゲノムDNAまたはRNA)とハイブリダイズした結果に生じるシグナルを検出するために、定法の抗原−抗体反応等を利用した呈色反応を行う。
【0062】
すなわち、ハイブリダイゼーションを終えた試料を充分に洗浄した後に、ブロッキング処理を行い、次いで、抗FITC抗体、抗ジゴキシゲニン抗体などの接合物、例えば、アルカリホスファターゼ接合物を用いて処理し、その後、接合物の発色系にてシグナルを発色して、ハイブリダイゼーションの状況を確認する。 例えば、プローブとして、ジゴキシゲニン-11-dUTPでラベルしたプローブを用いた場合、抗ジゴキシゲニン−アルカリホスファターゼ接合物を用い、一般に使用されるアルカリホスファターゼに対する基質(ニトロブルーテトラゾリウムおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート等)を利用して検出すればよい。
【0063】
呈色反応の後に洗浄して得た塗沫標本は、ナフトールブラック、Fast Green(20mg/50ml、Wako Chemicals社製)等で対比染色を行い、光学顕微鏡によって検鏡すると細胞内シグナルが観察される。
【0064】
詳細には、ハイブリダイゼーションによるシグナルを得るには、例えば、検出用DNAプローブとしてジゴキシゲニン標識DNAプローブを用いる場合には、標識抗体(アルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体溶液1.05単位、バッファーA(トリエタノールアミン746mg、塩化ナトリウム17.5mg、塩化マグネシウム6水和物20.3mg、塩化亜鉛1.36mg、ウシ血清アルブミン1000mgおよび適量の塩酸を含み、かつ滅菌精製水適量にて全量を100mlに調製したもの)12.6μlにて全量を14μlに調製したもの)を標識抗体希釈液(トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン8.48mg、塩化ナトリウム6.14mgおよび塩酸適量を含み、かつ適量の滅菌精製水で全量を0.7mlに調製したもの)で約10〜約200倍、好ましくは、約50倍に希釈した標識抗体液を調製し、これを塗抹部位に10μlずつ滴下して、約15〜約60分間静置する。 その後、標識抗体洗浄液(1mlのポリソルベート20と50mlのPBS原液を含み、かつ滅菌精製水にて全量を100mlに調製したもの)を約2倍〜約50倍、好ましくは、約10倍に希釈した溶液に浸し、そのままの状態で、振とう機上で約5〜約30分間振とうする。 この操作を2回繰り返した後、発色前処理液1(トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン6.06g、塩化ナトリウム2.92gおよび適量の塩酸を含み、かつ適量の滅菌精製水にて全量を50mlに調製したもの)と発色前処理液2(塩化マグネシウム6水和物5.08gを含み、かつ滅菌精製水にて全量を50mlに調製したもの)を等量混合し、滅菌精製水で5倍程度に希釈した発色前処理液に浸し、そのままの状態で振とう機上で約5〜約30分間振とうする。 その後、スライドグラス1枚につき発色試薬(ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)/5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルフォスフェイト(BCIP))1mlを、0.2μmシリンジトップフィルターを装着したディスポーザブルシリンジでろ過しながら、スライドグラスの塗抹部位に滴下し、湿潤箱中で約10℃〜約45℃、好ましくは、約37℃で、約15〜約60分間遮光静置する。 その後、発色試薬洗浄液(トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン606mg、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム2水和物186mgおよび適量の塩酸を含み、かつ適量の滅菌精製水で全量を50mlに調製したもの)を約2倍〜約50倍、好ましくは、約10倍に希釈した溶液に約2〜約10分間浸し、風乾した後、対比染色液(ファストグリーンFCF(食用緑色3号)50mgを含み、かつ適量の滅菌精製水にて全量を50mlに調製したもの)を約2倍〜約50倍、好ましくは、約10倍に希釈した溶液、それに約0.1〜約5%、好ましくは、約1%の酢酸溶液に浸す。 その後、前出の発色試薬洗浄液を約2倍〜約50倍、好ましくは、約10倍に希釈した溶液に再度浸して余分の対比染色液を洗い流し、完全に風乾する。 また、発色試薬は、個別に調製した試薬でもよい。
【0065】
アルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体溶液は、ブロッティング用メンブレンに、ジゴキシゲニンをラベルしたDNAの1ngをブロットし、ブロッキング後、10,000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体溶液で処理し、発色基質(NBT/BCIP)を反応させると、DNAのブロッティング部位が発色し、ジゴキシゲニンがラベルされていないDNAで同様の操作をしても発色は認められないものを使用するのが望ましい。 また、抗ジゴキシゲニン抗体は、ヒツジ由来のものが好ましい。 詳細には、免疫処置したヒツジ血清より、イオン交換クロマトグラフィーと抗体カラムクロマトグラフィーを経て精製したものが好ましい。
【0066】
発色試薬(NBT/BCIP溶液、pH 9.0〜10.0)として、ニトロテトラゾリウムブルー(NBT)3.3mg、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルフォスフェイト(BCIP)1.65mg、N,N-ジメチルホルムアミド99μg、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン121mg、適量の塩酸、塩化ナトリウム58.4mg、および、塩化マグネシウム6水和物101.6mgを含み、かつ適量の滅菌精製水にて全量を10mlに調製したものが好ましい。この発色試薬としては、アルカリフォスファターゼをラベルしたタンパク質をブロッティング用メンブレンにブロットし、発色試薬でメンブレンを遮光室温で処理すると、ブロット部位に暗紫色のシグナルが現れる試薬が好ましい。
【0067】
このような対比染色を行う場合、シグナルと細胞のコントラストをさらに明確にさせるため、食用色素、例えば、黄色4号(タートラジン)を使用することができる。 その理由として、基質によって紫色を呈色し、また、ナフトールブラックにより青色を呈色するなど、発現した色が互いに類似していると、明確な対比染色が行いにくいことが挙げられる。 これまでに試されなかった食用色素を用いたところ、対比染色時の色相の差異が明確になり、実用的であることが判明した。
【0068】
ところで、ジゴキシゲニンを標識化する方法として、ニックトランスレーション法を用いることができる。 また、ジゴキシゲニンを標識化するその他の方法として、PCR法、ランダムプライマーラベリング法、in vitroトランスクリプションラベリング法、ターミナルトランスフェラーゼラベリング法なども使用可能である。
【0069】
交差反応の有無の判定は、光学顕微鏡で鏡検(×1,000)した際に、単一ウェルにおいて、対比染色液によって染色された細胞において、青紫色の発色が1つでも認められた場合に陽性と判定する。
【0070】
また、検出用プローブの調製方法は、特許第2965544号を参照することで明らかになろう。
【0071】
さらに、本発明のプローブ(例えば、プローブEC-7)を、例えば、ワーキングセルバンクから釣菌して培養するには、エシェリヒア コリ菌EC-7のワーキングセルバンクを、白金耳または使い捨てプラスチックループ等で釣菌して、これを滅菌シャーレ内に置いた50μg/mlアンピシリン含有L-ブロス固形培地に画線塗抹する。 一晩培養した後、シングルコロニーを採取し、50μg/mlアンピシリン含有のL-ブロス培地5mlに植菌して、37℃で終夜振とう培養する(前培養)。 次いで、前出の液体培地400mlが入った培養用フラスコに、前培養液を2.5mlずつ植菌して、約37℃で終夜振とう培養する(本培養)。
【0072】
そして、エシェリヒア コリ菌EC-7のプラスミドDNAを抽出すべく、本培養した培養液を約4℃にて、約4,000×gで10分間遠心分離して集菌する。 培養上清を除去し、STE(10mmol/l トリス塩酸(pH 8.0)、1mmol/l エチレンジアミン−四酢酸2ナトリウム塩(EDTA)、0.1mmol/l 塩化ナトリウム)を20ml加えて菌体を再懸濁し、約4℃にて、4,000×gで10分間遠心分離して集菌する。 10mg/mlリゾチームを含む溶液-1(50mmol/l グルコース、25mmol/l トリス塩酸(pH 8.0)、10mmol/l EDTA)5mlを加え、菌体を懸濁して、室温で5分間放置する。 溶液-2(0.2mmol/l 水酸化ナトリウム、1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))10mlを加え、転倒混和して、氷上で10分間放置する。 氷冷した溶液-3(3mol/l酢酸カリウム(pH 4.8))7.5mlを加え、転倒混和して氷上で10分間放置する。 高速冷却遠心機を用いて、約4℃にて、約45,000×gで30分間遠心分離した後、上清を回収し、室温になるまで放置する。 その後、0.6容量(約24ml)のイソプロパノールを加え、転倒混和して、室温で15分以上放置する。 高速冷却遠心機を用いて、約25℃にて、約28,000×gで30分間遠心分離した後、上清を捨て、70%エタノールでペレットを洗浄し風乾する。 風乾した後、TE(10mmol/l トリス塩酸(pH 8.0)、1mmol/l EDTA)を8ml加えて、溶解する(プラスミドDNAの抽出)。
【0073】
次に、プローブEC-7含有プラスミドDNAの精製を行う。 得られたプラスミドDNAに対して、10mg/mlエチジウムブロマイド800μlおよび塩化セシウム8.6gを加え、転倒混和して溶解させる。 その溶解液を超遠心用チューブに入れ、キャップまたはシールをする。 垂直型ローターにより、約20℃にて、500,000×gで5時間超遠心した後、紫外線ライト照射下で注射筒または注射針を使用して、プラスミドDNAのバンドを分取する。 分取したプラスミドDNA溶液に、等量のTE飽和 l-ブタノールを加えて転倒混和し、微量高速遠心機を用いて、約15,000×gで、5分間遠心分離し、上清を取り除く。 この操作を繰り返し、プラスミドDNA溶液中のエチジウムブラマイドを取り除く。 次に、TEを加えて1.5mlの体積とし、脱塩カラム(NAP-10)で脱塩する。 脱塩したプラスミドDNA溶液に、3mol/l 酢酸ナトリウム溶液を30μl加えて混和した後、3倍量の99.5%エタノールを加えて転倒混和し、−20℃で、30分以上放置する。 その後、微量冷却高速遠心機を用いて、4℃にて、15,000×gで20分間遠心分離して上清を除いた後、冷70%エタノールを加えて懸濁する。 そして、再度、微量冷却高速遠心機を用いて、4℃にて、15,000×gで20分間遠心分離して上清を除き、プラスミドDNAの沈渣を減圧下で乾固させる。 プラスミドDNAに100μlのTEを加えて完全に溶解させ、260nmの吸光度にて濃度を測定する(プローブEC-7含有プラスミドDNAの精製)。 その後、プローブEC-7含有プラスミドDNAの制限酵素処理、およびアガロース電気泳動によってプラスミドDNAのサイズチェックを行う。
【0074】
次いで、プローブEC-7含有プラスミドDNAの制限酵素処理およびアガロース電気泳動によってプローブEC-7の精製を行う。 そのために、分子量確認が終了したプローブEC-7含有プラスミドDNA1mgを、制限酵素HindIII単独もしくは他の制限酵素と組み合わせて、37℃で、1.5時間以上の時間をかけて反応を進行せしめることにより消化する。
【0075】
プラスミドDNAを消化した後、反応液の一部を0.8%アガロースで電気泳動して、消化が完全に終了したことを確認する。 消化を確認した後、分取用の0.8%アガロースゲルで電気泳動し、プローブEC-7のバンドを採取する。 採取したプローブEC-7をアガロースゲルから抽出および精製して、吸光度計にてその濃度を測定する。
【0076】
精製したプローブEC-7の一部を、0.8%アガロースゲルで電気泳動し、シングルバンドであることを確認する。
【0077】
次に、プローブEC-7のラベル化を行うために、以下の表1に記載の組成を有する反応液において、精製したEC-7の2μgに対してジゴキシゲニンの標識付けを行う。
【0078】
【表1】
Figure 0004234986
【0079】
表1において、「X」とは、プローブ原液の濃度に応じて好ましいプローブ濃度となるように添加することができる容量を指し、この容量に伴い精製水量Yを決定して最終容量を調整する。
【0080】
標識付した後、反応液にTEを100μl 加えて反応を停止させる。 反応停止液をスピンカラムに注入し、約4℃にて、約380×gで約10分間遠心分離して、遊離のヌクレオチドを除く。 次に、溶出液の濃度を吸光度計により測定し、TEで約10ng/μl に調製する。
【0081】
標識付けを確認するために、標識付けしたプローブEC-7の0.5μlをメンブレンに滴下して、風乾する。 ブロッキング試薬にこのメンブレンを浸し、室温で30分間ブロッキングする。 0.1mol/l トリス塩酸(pH 7.5)と0.15mol/l 塩化ナトリウムで5,000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体溶液に、そのメンブレンを室温で30分間浸す。 0.1mol/l トリス塩酸(pH 7.5)および0.15mol/l 塩化ナトリウムにメンブレンを浸し、室温で約10分間振とうして、2回洗浄する。 0.5mol/l トリス塩酸(pH 9.5)、0.15mol/l 塩化ナトリウム、50mmol/l 塩化マグネシウムに、室温下で、メンブレンを約10分間浸す。 室温および遮光下で、発色試薬にメンブレンを、約10分間浸す。 メンブレンをTEに浸し、発色を停止させる。 スポット下部分の青紫色の発色で、標識付の確認を行う。
【0082】
1mlのディスポーザブルシリンジに、少量の滅菌済みグラスウールを充填してスピンカラムを作製する。 1mmol/l トリス塩酸(pH 7.5)、1mmol/lのEDTA、0.1% SDSで膨潤させたセファデックスG-50をシリンジに詰める。 15mlのディスポーザブルコニカルチューブにシリンジを入れ、約4℃にて、約320×gで約10分間遠心分離し、余分の緩衝液を落とす。 ディスポーザブルコニカルチューブからシリンジを抜き、排出された緩衝液を捨てた後、1.5mlのエッペンドルフ型チューブをディスポーザブルコニカルチューブの底に入れ、その上にシリンジを入れる。
【0083】
ドットブロットハイブリダイゼーション
プローブの特異性を確認するために、以下の手順に従って、ドットブロットハイブリダイゼーションを行う。
【0084】
まず、スポットした各ゲノムDNAを変性するために、定法に従い0.5mol/l 水酸化ナトリウム、1.5mol/l 塩化ナトリウム溶液で飽和した濾紙(ワットマン社製3MM)上に、調製した各種細菌ゲノム100ng をナイロンメンブレン(ポールバイオダインタイプB、日本ポール社製)にスポットし、風乾したメンブレンを10分間静置する。 次に、0.5mol/l トリス塩酸(pH 7.5)、1.5mol/l 塩化ナトリウム溶液で飽和した前出の濾紙上に10分間静置して変性DNAを中和する。 さらに2×SSC(Standard Saline Citrate)溶液で飽和した前出の濾紙上に5分間静置し、洗浄する。
【0085】
そして、メンブレンを風乾し、2×SSC溶液にメンブレンを浸し、5分間浸透する。 定法に従い、プラスチックバッグ内でプレハイブリタイゼーション溶液にメンブレンを浸し、42℃で、60分間親和させる。 プラスチックバッグ内でプローブ400ngを含むハイブリタイゼーション溶液の15mlにメンブレンを浸し、42℃で、一晩反応させる。 次に、2×SSC、0.1% SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)溶液にメンブレンを浸し、5分間洗浄する(この工程を2回繰り返す)。 その後、0.1×SSC、0.1%SDS溶液にメンブレンを浸し、60℃で、10分間洗浄する(この工程を3回繰り返す)。 2×SSC溶液にメンブレンを浸し、5分間洗浄する。 メンブレンを3%ウシ血清アルブミン、1%ブロッキングバッファー(ベーリンガー社製)、0.1mol/l トリス塩酸(pH 7.5)、0.15mol/l 塩化ナトリウムを含む溶液にメンブレンを浸し、30分間緩慢に振とうする。
【0086】
次いで、アルカリフォスフアターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体(ベーリンガー社製)を、0.1mol/l トリス塩酸(pH 7.5)および0.15mol/l 塩化ナトリウム溶液で5,000倍希釈した溶液にメンブレンを浸し、30分間緩慢に振とうする。 次に、0.1mol/l トリス塩酸(pH 7.5)、0.15mol/l 塩化ナトリウム溶液にメンブレンを浸し、15分間振とうする(この工程を2回繰り返す)。 0.1mol/l トリス塩酸(pH 9.5)、0.1mol/l 塩化ナトリウム、5mmol/l 塩化マグネシウムを含む溶液にメンブレンを浸し、5分間振とうする。 NBT-BCIP溶液(GIBCO BRL社製)にメンブレンを浸し、遮光下で発色反応させる。 TE(10mmol/l トリス塩酸(pH 8.0)、1mmol/l EDTA)にメンブレンを浸し、発色反応を止め、風乾する。 プレハイブリダイゼーション溶液およびハイブリダイゼーション溶液の組成を、以下の表2に示す。
【0087】
【表2】
Figure 0004234986
【0088】
前述したin situハイブリダイゼーション工程において使用される界面活性剤としては、公知の界面活性剤が使用できる。
【0089】
界面活性剤は、アニオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤および両性界面活性剤に大別される。
【0090】
アニオン界面活性剤とは、陰イオン界面活性剤とも称されるものであって、水中で電離して有機陰イオンとなるものである。 界面活性剤の分子中の親油基をRとして表現すると、RCOONa、RSO3Na、RSO4Naの式で表される。 RCOONaのように弱酸性基を含有するものでは、その水溶液は加水分解しやすく弱アルカリ性を呈するが、RSO3Na, RSO4Naなどの強酸性基を有するものでは、その水溶液は、加水分解を受けにくく、中性を呈する。 陰イオン性であるから、多量の陽イオン性物質の存在で界面活性を失うことがあり、また強酸性にした時にも失活する。
【0091】
非イオン性界面活性剤とは、親水基が非イオン性のものをいう。 親水基として酸化エチレン基(-CH2CH2O-)が多用され、この官能基の数が多くなるに従って、親水性が増す。 反対に、親油基の炭素数が増加すると、親油性が増加する。
【0092】
従って、親水性・親油性を様々に変化させた界面活性剤が得られるのが特徴である。 非イオン性界面活性剤は、水中で電離せず、無機塩の影響も受けにくいため、生体に及ぼす作用も少ない。 しかも、洗浄作用は、強力で、泡立ちは比較的少ないため、洗剤のみならず、医薬品、化粧品、食品などの様々な用途で使用される。 水溶性の非イオン性界面活性剤は、温度が上昇すると、ある時点で水に溶解しにくくなり、水溶液が濁り出すが、これは親水基と水との水素結合が切断されるために生じる。
【0093】
カチオン界面活性剤は、陽イオン界面活性剤とも称され、これは、水中で、電離して有機陽イオンとなるものである。 カチオン界面活性剤は、一般に洗浄作用は大きくはないが、細菌などのアニオン性のものと強く結合するため、殺菌作用が大きい。 また、繊維やプラスチックでの帯電防止能もある。 代表的なカチオン界面活性剤であるドデシルトリメチルクロリド[C12H25(CH3)3N]Clは水溶性であるが、一方で、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド[(C12H25)2(CH3)2N]Clは水に溶解しにくく、水中では2分子膜状のベシクルを形成し、これはベンゼンには溶解する。
【0094】
両性界面活性剤とは、分子内にアニオン基とカチオン基の両者を併せ持っている界面活性剤である。 水溶液中での電離状態はアミノ酸に類似しており、両性界面活性剤には、アミノ酸誘導体が多く存在する。 従って、アミノ酸と同様に等電点を有し、等電点よりアルカリ性側にある場合にはアニオン界面活性剤として、酸性側にある場合にはカチオン界面活性剤として作用する。 等電点で水溶性は最低となり、表面張力も最も低下する。 両性界面活性剤は、殺菌剤、帯電防止剤などの用途に用いられている。
【0095】
また、アニオン界面活性剤は、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型およびリン酸エステル型に分類され、非イオン性界面活性剤は、エステル型、エーテル型、エステルエーテル型およびアルカノールアミド型に分類される。 カチオン界面活性剤は、アルキルアミン塩型および第四級アンモニウム塩型に分類され、両性界面活性剤は、カルボキシベタイン型、2−アルキルイミダゾリンの誘導型およびグリシン型に分類される。
【0096】
さらに、アニオン界面活性剤のカルボン酸型は、脂肪酸モノカルボン酸塩、N-アシルサルコシン塩およびN-アシルグルタミン酸塩に細分される。 それぞれの代表例として、脂肪酸モノカルボン酸塩として、ラウリン酸ナトリウムおよび薬用石鹸が、N-アシルサルコシン塩として、N-ラウロイルサルコシンナトリウム、N-アシルグルタミン酸塩、それに、N-ラウロイルグルタミン酸二ナトリウムなどがある。 また、スルホン酸型は、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル(分岐鎖) ベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物およびN-メチル-N-アシルタウリン塩に細分される。 その代表例として、ジアルキルスルホコハク酸塩として、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルカンスルホン酸塩はドデカンスルホン酸ナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩には直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが、また、アルキル(分岐鎖)ベンゼンスルホン酸塩として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩として、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、N-メチル-N-アシルタウリン塩としてはN-メチル-N-ステアロイルタウリンナトリウムなどがある。
【0097】
また、硫酸エステル型は、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩および油脂硫酸エステル塩に細分される。 その代表例として、アルキル硫酸塩として、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびセチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩はポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどがある。 また、リン酸エステル型は、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩に細分される。 その代表例として、アルキルリン酸塩として、モノラウリルリン酸二ナトリウムがある。
【0098】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩には、リン酸ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルおよびリン酸ポリオキシエチレンオレイルエーテル(8MOL)がある。
【0099】
非イオン性界面活性剤のエステル型は、脂肪酸グリセリン、脂肪酸ソルビタンおよび脂肪酸ショ糖エステルに細分される。 それぞれの代表例として、脂肪酸グリセリンとして、モノステアリン酸グリセリン、脂肪酸ソルビタンとしてはモノステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、ポリソルベート60およびポリソルベート80、脂肪酸ショ糖エステルはステアリン酸ショ糖エステルがある。 また、エーテル型は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールに細分される。 その代表例として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルおよびポリオキシエチレンセチルエーテルなどがあり、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとして、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよびポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルがある。 また、エステルエーテル型は、脂肪酸ポリエチレングリコールおよび脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンに細分される。 それそれの代表例として、脂肪酸ポリエチレングリコールには、オレイン酸ポリエチレングリコールが、また、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンには、パルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタンおよびポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどがある。 また、アルカノールアミド型は、脂肪酸アルカノールアミドだけであり、ラウリン酸ジエタノールアミドがその代表例である。
【0100】
カチオン界面活性剤のアルキルアミン塩型には、モノアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩およびトリアルキルアミン塩があり、モノステアリルアミン塩酸塩がその代表例である。 また、第四級アンモニウム塩型は、塩化(または臭化、沃化)アルキルトリメチルアンモニウム、塩化(または臭化、沃化)ジアルキルジメチルアンモニウム、および塩化アルキルベンザルコニウムに細分される。それぞれの代表例として、塩化(または臭化、沃化)アルキルトリメチルアンモニウムとして、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムが、塩化(または臭化、沃化)ジアルキルジメチルアンモニウムとして、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムが、また、塩化アルキルベンザルコニウムとして、塩化ラウリルベンザルコニウムがある。
【0101】
両性界面活性剤のカルボキシベタイン型には、アルキルベタインしかなく、ラウリルベタインが、その代表例である。 また、2-アルキルイミダゾリンの誘導型としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインだけであり、2-ウンデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが、その代表例として挙げられる。 また、グリシン型として、アルキル(またはジアルキル)ジエチレントリアミノ酢酸があり、その代表例として、ジオクチルジエチレントリアミノ酢酸がある。
【0102】
さらに、上掲のものに加えて、Triton X-100、ラウリルサルコシン、サポニン、BRIJ35、アルキルアリルポリエーテルアルコール、高級アルコール硫酸化物、N-ココイル-L-アルギニンエチルエステルDL-ピロリドンカルボン酸塩、N-ココイル-N-メチルアミノエチルスルホン酸ナトリウム、コレステロール、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、スクワラン、ステアリルアルコール、ステアリン酸ポリオキシル40、セタノール、セトマクロゴール1000、セバシン酸ジエチル、ノニルフェノキシポリオキシエチレンエタン硫酸エステルアンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ポリオキシル35ヒマシ油、マクロゴール400、N-ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩、ラウリルジメチルアミンオキシド液、ラウロマクロゴール、メチルセルロース、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、CHAPS、デオキシコール酸、ジギトニン、n-ドデシルマルトシド、ノニデットP40、n-オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、ラウリル酸シュクロース、ドデシルポリ(エチレングリコールエーテル)n,n-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルフォネート等も利用することができる。
【0103】
上掲の各種界面活性剤は、in situハイブリダイゼーションの工程において使用されることが重要であり、その使用方法は特に限定されない。 例えば、プローブ液またはプローブ希釈液中に混合されていてもよいし、プローブ液とは別に調製した界面活性剤を含有する溶液を、プローブ液を塗抹部位に塗布する前、同時または後に添加してもよいし、当業者は適宜変更することができる。
【0104】
なお、本発明において、必要に応じて、陽性コントロールフローブを調製することもできる。 例えば、まず、U937細胞(ATCC CRL-1593.2)のゲノムDNAの抽出と精製を行うために、37℃、5%炭酸ガスインキュベーター内で、RPMI1640培地(25ml)を入れた細胞培養フラスコ(175cm3)内でU937細胞を培養する。
【0105】
U937培養液を50mlの遠沈管に入れ、4℃にて、220×gで10分間遠心分離し、U937細胞を回収する。 細胞を10mlのPBSで懸濁洗浄し、再度4℃にて、180×gで10分間遠心分離し、細胞を回収する。 その後、上清を廃棄して、細胞を1mlの200μg/mlプロテネースK含有1%SDS含有TE溶液で懸濁し、37℃で30分間放置する。 フェノール抽出を3〜4回繰り返し、除蛋白を行う。 エタノール沈殿によって析出したゲノムを回収し、500μlの2.5μgリボヌクレアーゼ含有滅菌精製水に溶解し、42℃で30分間放置する。 フェノール抽出を2〜3回繰り返し、除蛋白を行う。 エタノール沈殿によって析出したゲノムを回収し、500μlのTEに溶解する。 その後、吸光度計により濃度を測定し、ジゴキシゲニンラベルに供することにより、陽性コントロールプローブを作製することができる。 また、陽性コントロールプローブは、U937ゲノムを100ngスポットしたメンブレンに、陽性コントロールプローブをドットハイブリダイゼーションした時に、ハイブリッド形成が確認できるものを用いるのがよい。
【0106】
同様に、必要に応じて、陰性コントロールプローブを公知の方法で調製することもできる。
【0107】
その他の実施態様
本発明の検出方法を利用したエシェリヒア コリ菌の検出および/または同定用キットも、本発明によって提供される。 本発明のキットによれば、DNAを得る工程で使用される酵素(DNA露出処理剤)が、少なくとも、リゾスタフィン、リゾチーム、N−アセチルムラミダーゼ、ザイモラーゼからなるグループから選択される1種以上の酵素、界面活性剤が添加されたプローブ液、それに、1種以上の検出用DNAプローブを具備している。 本発明のキットには、以下の実施例に例示するような、血液分離試薬、酵素前処理試薬、酵素試薬、アセチル化試薬、プローブ液、ブロッキング試薬、標識抗体、標識抗体希釈液、発色前処理液-1、発色前処理液-2、発色試薬、対比染色液、PBS原液、ハイブリダイゼーション原液、標識抗体洗浄液、発色試薬洗浄液、APSコートスライドグラス、プローブ希釈液、バッファーA等を利用することが可能である。 これらの内、少なくとも、酵素試薬とプローブ液とを含むことが好ましい。 また、クロロホルム、エタノール、無水酢酸、DMSO、PMSF、ホルムアミド、酢酸、塩酸、水酸化ナトリウム等の各種試薬を用いることも可能である。 さらに、低速遠心機、恒温器、血球計算盤、振とう機、湿潤箱、恒温槽、光学顕微鏡、可変式ピペット、採血管、チップ、ピペット、染色ビン、メスシリンダー、注射筒、0.2μmシリンジトップフィルターなどの器具を装備していてもよい。
【0108】
本発明によれば、生体由来の食細胞を含む臨床検体中に含まれる、食細胞によって貪食された外来微生物の遺伝子をモニターする方法が提供される。
【0109】
また、本発明によれば、原因菌の候補となる微生物の遺伝子を同定する工程を含み、同定された結果に基づいて敗血症原因菌または菌血症原因菌を特定する方法も提供される。 この方法によれば、様々な敗血症が疑われた患者血液の診断に実際に応用したところ、投与された抗菌薬の影響を受けることなく、血液培養法に比べて約4倍の感度で起因菌を検出することができ、検出菌株の一致率は良好であることが明らかになっている。 そして、血液培養では、検査に少なくとも3日以上、通常は14日程度を要するのに比較して、本発明の方法によれば全操作完了までに約8時間という極めて短時間の簡便な操作によって正確な結果を得ることができる。 従って、この方法によれば、敗血症または菌血症などの、速やかに、かつ的確な対処が必要とされる感染症の診断や予後診断のモニター等において有用マーカーが提供されるのである。
【0110】
また、本発明のプローブの塩基配列情報を参照してプライマーをデザインすれば、ハイブリダイゼーションを行わなくとも、PCR法によるDNAの増幅によって、感染症原因菌の同定も可能となるのである。
【0111】
さらに、本願発明のプローブまたはその断片をDNAチップに組み込んで利用できることも明らかである。 そうすれば、DNAチップを用いて、エシェリヒア コリ菌の存在の確定が可能となる。
【0112】
加えて、本発明で開示した塩基配列は、エシェリヒア コリ菌のゲノミックDNAをランダムにクローニングして得られたものであり、それ故、本発明の塩基配列の有用性はその相補鎖にまで及ぶものである。 さらに、野性株が保有するDNAに変異部分が存在することは当然考えられるが、一般的に、本発明のプローブと70%程度、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上のホモロジーを有する塩基配列は、本発明の目的を達成することができると考えられるので、本発明にはこれら相同配列も当然に包含されるものである。
【0113】
エシェリヒア コリ菌の検出および同定
臨床検体からのエシェリヒア コリ菌の一般的な検出および同定のための手順の具体例を、以下に詳述する。
【0114】
(1) 採血および血液検体の処理
臨床検体として、敗血症が疑われた患者より採取した血液検体を用いる。 各患者からヘパリン加静脈血10mlを採取し、採取した血液と血液分離試薬(塩化ナトリウム225mg、デキストラン(分子量:200,000〜300,000)1.5g、滅菌精製水にて全量25mlに調製したもの)を4:1の割合で混和した後、37℃で30分間静置することにより、白血球画分(上層)を取得する。 このようにして得た白血球画分を4℃にて160×gで10分間遠心分離することで、白血球を得る。 次に、得られた白血球のペレットに滅菌精製水1mlを加えて懸濁し、直ちに過剰量のPBS(塩化ナトリウム18.24g、リン酸一水素ナトリウム12水和物6.012g、リン酸二水素ナトリウム2水和物1.123g、滅菌精製水にて全量120mlにしたもの(PBS原液)を滅菌精製水にて20倍に希釈したもの)を加えて等張化した後、再度4℃下で、160×gで10分間遠心分離を行う。
【0115】
(2) 白血球の固定
3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APS、SIGMA社)をスライドグラス(商品番号MS311BL、日本エアーブラウン社製)にコートしたAPSコートスライドグラスを使用する。
【0116】
APSコートスライドグラスの作製に当たって、まず、スライドホルダーにスライドグラス(MS311BL)を固定した後、希釈した中性洗剤中に30分以上浸して洗浄し、水道水で洗剤を十分に取り除き、次に、スライドグラスを精製水にて洗浄し、高温(100℃以上)で十分に乾燥させた後、室温で放置冷却する。 その後、スライドグラスを2%APS含有アセトンに1分間浸し、直ちにアセトン及び滅菌精製水で順次軽く洗浄した後、風乾する。 さらに再度、スライドグラスを2%APS含有アセトンに1分間浸し、直ちにアセトンおよび滅菌精製水で順次軽く洗浄する。 その後、風乾する操作を行った後に、42℃で乾燥させることで、APSコートスライドグラスを作製する。
【0117】
白血球画分を、4℃にて160×gで10分間遠心分離することにより得た白血球ペレットに、少量のPBSを加えて懸濁し、血球計算盤を用いて白血球数を計測する。
【0118】
細胞数が1×105個/ウェルとなるようにPBSで調製した白血球懸濁液5μlを、APSコートスライドグラスの各ウェルに白血球が単層に広がるように塗抹し、完全に風乾することにより、白血球をAPSコートスライドグラスに支持させる。
【0119】
その後、カルノア固定液(エタノール:クロロホルム:酢酸=6:3:1で混合して得た固定液)に20分間浸した後、75%エタノール液に5分間浸し、完全に風乾させる。
【0120】
(3) 白血球細胞膜の透過性亢進処理
PBSに10分間浸した後、酵素前処理試薬(サポニン1.25g、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(比重1.068〜1.075(20/4℃)、pH(5w/v%) 5.5〜7.5)1.25ml、PBS原液25mlを混合し、滅菌精製水で全量を50mlに調製したもの)を滅菌精製水で10倍に希釈した溶液に浸し、振とう機で10分間振とうさせる。
【0121】
(4) 菌体壁の溶菌酵素処理
スライドグラス1枚につき酵素試薬(ザイモラーゼ200単位/ml、N-アセチルムラミダーゼ1,000単位/ml、リゾチーム100,000単位/mlおよび/またはリゾスタフィン100単位/ml)に酵素試薬溶解液(PBSで0.1mol/l フェニルメチルスルフォニルフルオライド(PMSF)含有ジメチルスルフォキシド(DMSO)を100倍希釈して調製したもの)を1ml加えて酵素試液を調製する。 その後、感染症原因菌のDNAを得るために、37℃〜42℃の湿潤箱中で、この酵素試液1mlを白血球塗抹部位に滴下し、30分間静置することによって、感染症原因菌のDNAを露出させる。 その後、0.2mol/l 塩酸含有PBS(PBS原液に塩酸を加え、滅菌精製水にて20倍希釈し、塩酸の終濃度を0.2mol/l に調製したもの)に浸し、そのまま振とう機上で10分間振とうする。
【0122】
(5) 細胞膜タンパク質のアセチル化
アセチル化試薬(トリエタノールアミン7.46gと適量の塩酸を含み、適量の滅菌精製水で全量を50mlとしたもの)に無水酢酸を加え、滅菌精製水で10倍希釈し、無水酢酸の終濃度を0.8%に調整したアセチレーション試薬にスライドグラスを浸し、振とう機上で10分間振とうする。 その後、75%、85%、98%エタノールに、順次3分間ずつ浸し、完全に風乾させる。
【0123】
(6) 菌体 DNA のアルカリ処理[二本鎖 DNA を一本鎖 DNA に変性]
スライドグラスを、70mmol/l 水酸化ナトリウム含有PBS(PBS原液に水酸化ナトリウムを加え、滅菌精製水で20倍希釈し、水酸化ナトリウムの終濃度を70mmol/l に調製したもの)に3分間浸す。 その後、75%、85%、98%エタノールに、順次3分間ずつ浸し、完全に風乾させる。
【0124】
(7) ハイブリダイゼーション
プローブ希釈液(0.5%SDS、サケ精子DNA600μl、100×デンハート溶液50μl、ハイブリダイゼーション原液500μl、ホルムアミド2250μl、50%硫酸デキストラン1000μlが含まれる)にて調製したジゴキシゲニン標識DNAプローブ15ngを含有する液(プローブ液、1.0ng/μl)を塗抹部位に塗布し、37℃〜42℃の湿潤箱内に2時間静置させる。 ジゴキシゲニン標識DNAプローブは、ニックトランスレーション法で調製する。 その後、ハイブリダイゼーション洗浄液(ハイブリダイゼーション原液(塩化ナトリウム13.15g、クエン酸三ナトリウム2水和物6.615g、滅菌精製水にて全量75mlに調製したもの、前出)をハイブリダイゼーション原液:滅菌精製水:ホルムアミド=5:45:50の割合で混合して調製したもの)を3つの染色ビンに用意し、順次42℃で10分間ずつ浸す。 その後、PBSに浸し、そのまま振とう機上で10分間振とうする。
【0125】
プローブEC-7およびEC-55にジゴキシゲニンを標識付けするために、ニックトランスレーション法を用いる。
【0126】
(8) ブロッキング
In situハイブリダイゼーションを行った後、ブロッキングの操作を行う。
【0127】
具体的には、湿潤箱内にてスライドグラス1枚につきブロッキング試薬(ウサギ正常血清2mlとPBS原液0.5mlを含み、滅菌精製水で全量を10mlに調製したもの)1mlを塗抹部位に滴下し、これを30分間静置する。 その後、ブロッキング試薬を除去する。
【0128】
(9) 標識抗体との反応
標識抗体(アルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体溶液1.05単位、バッファーA(トリエタノールアミン746mg、塩化ナトリウム17.5mg、塩化マグネシウム6水和物20.3mg、塩化亜鉛1.36mg、ウシ血清アルブミン1000mgおよび塩酸適量を含み、滅菌精製水適量で全量を100mlに調製したもの)12.6μlにて全量を14μlに調製したもの)を、標識抗体希釈液(トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン8.48mg、塩化ナトリウム6.14mgおよび適量の塩酸を含み、適量の滅菌精製水で全量を0.7mlに調製したもの)で50倍希釈した標識抗体液を調製し、この標識抗体液を塗抹部位に10μlずつ滴下し、これを30分間静置する。 その後、標識抗体洗浄液(1mlのポリソルベート20と50mlのPBS原液を含み、滅菌精製水で全量を100mlに調製したもの)を10倍に希釈した溶液に浸し、そのまま振とう機上で10分間振とうさせた。 この操作を2回繰り返した後、発色前処理液1(トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン6.06g、塩化ナトリウム2.92gおよび適量の塩酸を含み、適量の滅菌精製水で全量を50mlに調製したもの)と発色前処理液2(塩化マグネシウム6水和物5.08gを含み、滅菌精製水で全量を50mlに調製したもの)を等量混合し、滅菌精製水で5倍に希釈した発色前処理液に浸し、そのまま振とう機上で10分間振とうする。
【0129】
(10) シグナル検出
スライドグラス1枚につき発色試薬[ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)/5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルフォスフェイト(BCIP)溶液、pH 9.0〜10.0:NBT 3.3mg、BCIP 1.65mg、N,N-ジメチルホルムアミド99μg、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン121mg、適量の塩酸、塩化ナトリウム58.4mgおよび塩化マグネシウム6水和物101.6mgを含み、適量の滅菌精製水で全量を10mlに調製したもの]1mlを、0.2μmシリンジトップフィルターを装着したディスポーザブルシリンジを用いてろ過しながら、スライドグラスの塗抹部位に滴下し、湿潤箱内で、37℃で、30分間遮光静置する。 その後、発色試薬洗浄液(トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン606mg、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム2水和物186mgおよび適量の塩酸を含み、適量の滅菌精製水で全量を50mlに調製したもの)を10倍に希釈した溶液に5分間浸し、風乾した後、対比染色液(ファストグリーンFCF(食用緑色3号)50mg、滅菌精製水にて全量50mlに調製したもの)を10倍に希釈した溶液および1%酢酸溶液に浸す。 その後、前記発色試薬洗浄液を10倍に希釈した溶液に再度浸して余分の対比染色液を洗い流し、完全に風乾させる。
【0130】
(11) 判 定
判定は、光学顕微鏡で鏡検(×1,000)した場合に、単一のウェル内の対比染色液により染まった細胞に於いて、青紫色の発色シグナルが1つでも認められた場合に「陽性」と判定する。
【0131】
【実施例】
本発明を、実施例に沿って以下に詳細かつ具体的に説明するが、これら実施例の開示に基づいて、本発明が限定的に解釈されるべきでないことは勿論である。
【0132】
実施例1:エシェリヒア コリ菌検出用プローブの調製
(1) エシェリヒア コリ菌特異的サブトラクトライブラリーの作製
エシェリヒア コリ菌由来DNAプローブの選別は、CLONTECH PCR-Select Bacterial Genome Subtraction Kit(CLONTECH 社製)を用いた。 Escherichia coli(ATCC 11775)およびEnterobacter cloacae(臨床分離株)ゲノムDNA2μgをキット添付の制限酵素RsaIで完全消化し、エタノール沈澱により精製し、6.5μlの滅菌蒸留水に溶解した。 RsaI消化したエシェリヒア コリゲノムDNA1.2μlを滅菌蒸留水1.8μlで希釈し、このDNA試料にキット添付の二種類のアダプターをライゲートした。 反応液組成は、反応液1[DNA試料1μl、DNA Ligation Buffer(キット添付)2μl、T4 DNA Ligase(キット添付)1μl、滅菌蒸留水4μl、アダプター1(キット添付)2μl]、反応液2[DNA 試料1μl、DNA Ligation Buffer 2μl、T4 DNA Ligase 2μl、滅菌蒸留水 4μl、アダプター2R(キット添付)2μl]であり、16℃で一晩反応した。 次に、反応液1および反応液2にRsaI消化したEnterobacter cloacaeゲノムDNAを加えて、1回目のハイブリダイゼーションを行った。 反応液組成は、ハイブリダイゼーション液1[第一反応液 1μl、RsaI消化Enterobacter cloacaeゲノムDNA2μl、Hybridization Buffer(キット添付)1μl]、ハイブリダイゼーション液2[第二反応液 1μl、RsaI消化Enterobacter cloacae ゲノムDNA2μl、Hybridization Buffer 1μl]であり、ミネラルオイルを重層し、98℃で1.5分間熱変性した後、63℃で 1.5時間保温した。 ハイブリダイゼーション液2を直前に熱変性したRsaI消化Enterobacter cloacaeゲノムDNA(RsaI消化Enterobacter cloacae ゲノムDNA1μl に Hybridization Buffer 1μlを加え、98℃で1.5 分間熱変性した)と混合し、さらにハイブリダイゼーション液2に加えた。 この混合液を63℃で一晩保温し、2回目のハイブリダイゼーションを行った。 一晩保温後、Dilution Buffer 200μl を加え、63℃で7分間保温した。 このハイブリダイゼーション混合液を添付の PCR Primer-1(5'-CTAATACGACTCACTATAGGGC-3'(配列番号:3)) を用いて1回目のPCRを行った。 反応組成は、ハイブリダイゼーション混合液1μl、10×Ex Taq Buffer 2.5μl、dNTP Mixture 2μl、PCR Primer-1 1μl、滅菌蒸留水18μl、Takara Ex Taq 0.5μl(以上 Takara 社製)であり、PCRは、熱変性を94℃、25秒で、アニーリングを66℃、30秒で、伸長反応を72℃、1.5分とする単一サイクルを30サイクル行い、また繰り返し反応に入る前に、伸長反応を72℃、2分で、熱変性を94℃、25秒とするプログラムで行った。 第一PCRの後、nested PCRを行った。 滅菌蒸留水で 40倍に希釈した第一PCR産物1μl を鋳型とし、プライマーは添付の Nested Primer-1(5'-TCGAGCGGCCGCCCGGGCAGGT-3'(配列番号:4))およびNested Primer-2R(5'-AGCGTGGTCGCGGCCGAGGT-3'(配列番号:5))を用いて、第一PCRと同様の反応組成で行った。 PCRは、熱変性を94℃、10秒で、アニーリングを68℃、30秒で、伸長反応を72℃、1.5分とする単一サイクルを10サイクル行い、また繰り返し反応に入る前に、熱変性を94℃、25秒とするプログラムで行った。 以上のPCR反応は、TaKaRa PCR Thermal Cycler PERSONAL(TaKaRa 社製)により行った。
【0133】
得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により確認後、バンドをゲルより切り出し、GENECLEAN II Kit(BIO 101 社製)を用いて精製した。 精製したDNA断片は、pT7Blue Vector(Novagen 社製)に組み込んだ。 組み換えたベクターはコンピテントセル JM109 細胞(TaKaRa 社製)に形質転換し、エシェリヒア コリ特異的サブトラクトライブラリー1とした。
【0134】
また、エシェリヒア コリ(ATCC 11775)および Klebsiella pneumoniae(臨床分離株)ゲノムDNAから、同様の方法を用いて、エシェリヒア コリ特異的サブトラクトライブラリー2を作製した。
【0135】
(2) エシェリヒア コリ特異的クローンの選抜
得られたライブラリー1およびライブラリー2からエシェリヒア コリ特異的クローンを選抜するために、以下の方法により各種細菌DNAとの反応性を検討した。 形質転換体を、100μg/mlアンピシリンを含むLB培地で培養し、アルカリSDS法によりプラスミドDNAを抽出した。 得られたプラスミドDNAを鋳型とし、ジゴキシゲニン-dUTPを用いてラベルした。 反応組成は、プラスミドDNA50ng、10×Ex Taq Buffer 5μl、PCR Dig Labeling Mix(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)5μl、Nested Primer-1 1μl、Nested Primer-2 1μl、滅菌蒸留水17μl、Takara Ex Taq 0.5μlであり、PCRは、熱変性を94℃、30秒で、アニーリングを55℃、30秒で、伸長反応を72℃、1分とする単一サイクルを35サイクル行い、また繰り返し反応に入る前に、熱変性を96℃、1分とするプログラムで行った。 得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動後、バンドをゲルより切り出し、SUPREC-01(Takara 社製)を用いて精製し、DNAプローブとした。
【0136】
各種細菌ゲノムDNA50ngを、PALL Biodyne Bメンブレン(PALL 社製)にスポットし、風乾した後、 0.5M NaOH、1.5 M NaCl で10分間アルカリ変性し、0.5M Tris-HCl (pH 7.5)、1.5M NaCl で10分間中和して風乾したものを、ドットブロットハイブリダイゼーションの試料とした。 メンブレンを、ExpressHyb Hybridization Solution(CLONTECH 社製)で、68℃、1時間インキュベートした後、10ng/ml DNAプローブを含む ExpressHyb Hybridization Solution で、60℃終夜ハイブリダイゼーションを実施した。 終夜ハイブリダイゼーション後、メンブレンを2×SSC、0.1%SDS で、5分間、2回洗浄し、60℃で 0.2×SSC、0.1%SDSによる15分間の洗浄を2回行った。 バッファー-2[1% Blocking reagent(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)、100 mM Tris-HCl (pH 7.5)、150mM NaCl]で30分間インキュベートした後、抗ジゴケシゲニン抗体希釈液[抗ジゴケシゲニン抗体(ロシュ・ダイアグノスティックス社製をバッファー-2で5000倍希釈したもの]で30分間インキュベートした。 バッファー-1[100mM Tris-HCl (pH 7.5)、150mM NaCl]で、15分間、2回洗浄し、バッファー-3[100mM Tris-HCl (pH 9.5)、100mM NaCl、50mM MgCl2]で平衡化した。 NBT/BCIP(GIBCO BRL社製)でインキュベートし発色させた後、TEバッファーで反応を停止した。
【0137】
その結果、Escherichia coli 特異的に反応する2つのクローンを選抜し、これらを、EC-7およびEC-55とそれぞれ命名した。
【0138】
(3 )塩基配列の決定
EC-7およびEC-55の塩基配列の決定は、以下のように実施した。 DYEnamicET Terminator Cycle Sequencing Kit(Amersham Pharmacia Biotech 社製)を用いてシークエンシング反応を行い、ABI PRISM 377 DNA Sequencer(AppliedBio Systems 社製)で解析し、塩基配列を決定した。 シークエンシング反応液組成は、プラスミドDNA 500ng、プレミックス 8μl、プライマー 3μl を滅菌蒸留水で20μl としたものであり、95℃で、20秒、50℃で、15秒、60℃で、1分を30サイクル行った。 プライマーは、Universal Cycle Primer(5'-GTTTTCCCAGTCACGA-3'(配列番号:6))、M13 Reverse Primer(5'-CAGGAAACAGCTATGAC-3'(配列番号:7))および合成プライマーを用いた。 そして、EC-7の塩基配列を、配列番号1に、また、EC-55の塩基配列を、配列番号2に記した。
【0139】
実施例2:プローブの種特異性の検討
実施例1で選抜した各プローブと各種感染症原因菌株のDNAとの反応性を、以下の方法により検討した。
【0140】
まず、検討対象菌株として、エシェリヒア コリ(Escherichia coli ATCC25922)、スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus ATCC25923)、スタフィロコッカス エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis ATCC12228)、シュードモナス アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa ATCC27583)、エンテロコッカス フェカーリス(Enterococcus faecalis 臨床分離株)、エンテロバクター クロアカエ(Enterobacter cloacae 臨床分離株)、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、カンジダ アルビカンス(Candida albicans ATCC14053)およびU937(ヒトゲノムDNA)を準備した。
【0141】
そして、各臨床菌株に関して、実施例1に記載の方法に従って、各菌株が保有するDNAを抽出し、抽出したDNAの一定量(例えば、10〜100ng)をナイロンフィルターにスポットして、アルカリ変性したものをドット ブロット ハイブリダイゼーションの試料とした。 次いで、Digoxigenin-11-dUTP(BRL社製)でラベルしたプローブで、マニアティスのマニュアル(T. Maniatis, et al., Molecular Cloning(A Laboratory Manual Second Edition), Cold Spring Harbour Laboratory (1989))に従い、45%ホルムアミド、5×SSC、42℃の条件下で、終夜ハイブリダイゼーションを実施した。 終夜ハイブリダイゼーションを終えた試料に関して、マニュアルに従い、55℃にて0.1×SSC、0.1%SDSによる20分間の洗浄を2回行った後に、Anti-Dig-ALP conjugates(BRL社製)で検出および発色させ、ハイブリダイゼーションの状況を確認した。
【0142】
その結果、プローブEC-7およびEC-55は、いずれもエシェリヒア コリ菌のゲノムDNAに対してのみ特異的に反応することが確認された。
【0143】
実施例3:貪食サンプルからのエシェリヒア コリ菌の検出
(1) 貪食サンプルの作製
(i) U937細胞の調製
37℃、5%炭酸ガスインキュベーター内で、RPMI 1640培地(25ml)を入れた細胞培養フラスコ(175cm3)内にて、U937細胞(ヒト単球株化細胞、ATCC CRL-1593.2)を培養した。 次に、U937細胞培養液を50mlの遠沈管に入れ、4℃、220×gで10分間遠心分離し、U937細胞を回収した。 その後、回収したU937細胞を、200μlのPBSで懸濁し、血球計算盤で細胞数を計算し、細胞数を約1×104個/μl〜約2×104個/μlに調製した。
【0144】
(ii) 細菌貪食サンプルの調製
エシェリヒア コリ菌を、5mlのBHI培養液に植菌し、37℃で8時間以上培養した。 培養した菌液を、4℃、2,000×gで10分間遠心分離して集菌した。 上清を捨てた後、菌のペレットを5mlのPBSで懸濁し、再度4℃、2,000×gで10分間遠心分離して集菌した。 集菌した菌を5mlのPBSで懸濁した後、PBSにて希釈して、吸光度計により菌液の濁度(O.D.=600nm)を、0.016〜0.024にしたものを15ml調製した。 このようにして得た菌液は、175cm3の培養用フラスコに移し、30分間室温で静置させた。
【0145】
ヘパリン加健常ヒト血液50mlを採取し、血球分離試薬を4:1の割合で加え、37℃で30分間静置し、白血球画分を分取し、これをPBSで50mlにした。 培養用フラスコ内の上清を静かに捨て、PBSで希釈した白血球画分を10mlずつフラスコに加え、室温で10分間静置させた。 培養用フラスコ内の上清を捨て、フラスコの底に付着した白血球を0.02%EDTA含有PBS 10mlで15mlの遠沈管に回収し、4℃、140×g〜180×gで10分間遠心分離し、白血球を収集した。 収集した白血球に赤血球の混入が認められたので、1mlの滅菌精製水にて白血球の沈渣を穏やかに懸濁して溶血させた後、PBSを14ml加えて等張化し、再度4℃、140×g〜180×gで10分間遠心分離を行い、白血球を収集した。 収集した白血球をPBSで懸濁し、血球計算盤にて細胞数を計測し、約1×104個/μl〜約5×104個/μlに調製した。
【0146】
このようにして得られた貪食サンプルを、EC貪食サンプルとした。
【0147】
当該貪食サンプルの利点は、(1) エシェリヒア コリ菌が検出される臨床検体の入手が困難であり、そのため本発明のプローブの特異性評価などの各種試験ができないという問題点を、臨床検体の代わりに人為的に作製した当該貪食サンプルを使用することにより回避できること、(2) 本発明のプローブまたはキット等の特異性試験、感度試験、再現性試験などの性能試験に利用できること、(3) 貪食サンプルで得られた各種試験結果を、臨床検体に適用できること、(4) 温度条件、反応時間条件、酵素処理条件などの各種条件設定に利用できること、などが挙げられる。
【0148】
(iii) 塗抹固定
(i)で得たU937細胞と、(ii)で調製したEC貪食サンプルを、APSコートスライドグラスの各ウェルに5μlずつ塗抹し、風乾させた。
【0149】
次に、カルノア固定液にスライドグラスを20分間浸した後、75%エタノールに5分間浸し、カルノア固定液を洗浄して風乾させた後、試験に使用するまで4℃で保存する(検出手順(2)を参照のこと)。 次いで、固定サンプルの前処理を、検出手順(3)に記載の手順に従って行った。
【0150】
(2) 貪食サンプルの規格及び試験方法
(i) 細胞数
細菌貪食サンプルのスライドグラスに塗抹固定する細胞数を、約5.0×104〜約2.5×105個/ウェルとし、また、U937細胞の細胞数を、約5.0×104〜約1.0×105個/ウェルとした。
【0151】
(ii) 貪食率
スライドグラスに塗抹固定した細菌貪食サンプルをアクリジンオレンジ染色液で染色し、蛍光顕微鏡(×1,000)で無作為に約200個の細胞を計測した。
【0152】
計測した細胞の中で、細胞内に細菌を貪食している細胞(貪食に特徴的な形態変化が認められた細胞)を陽性細胞とし、以下の数式に従って、貪食率を算出した。
【0153】
【数1】
Figure 0004234986
【0154】
(3) 試験方法
調製した貪食サンプルを検体とした。 使用したEC貪食サンプルを塗抹したスライドグラスを用いて、各プローブの特異性を検討した。
【0155】
(4) 結 果
プローブEC-7およびEC-55ともに、貪食細胞中に取り込まれたエシェリヒア コリ菌由来のDNAと特異的にハイブリダイズすることが判明した。 図1には、プローブEC-7とエシェリヒア コリ菌由来DNAとのハイブリダイズ状況(矢印箇所)を、同様に、図2には、プローブEC-55とエシェリヒア コリ菌由来DNAとのハイブリダイズ状況(矢印箇所)を示している。 また、混合プローブ(プローブEC-7とEC-55との混合プローブ)においては、単独のプローブに比較して強いシグナルが得られることが判明した。 このことから、使用するプローブは複数種混合して使用するのが好ましい。
【0156】
貪食サンプルで得られた結果は臨床検体に適用できるので、本発明のプローブは臨床検体においても有用であることが証明された。
【0157】
【発明の効果】
このように、本発明の検出用プローブによれば、それをin situハイブリダイゼーションに適用することで、極めて短時間の内に、検出対象菌に対して安定なシグナルを発現することができるため、迅速かつ的確な検査結果をもたらすことが可能となる。
【0158】
また、これにより、エシェリヒア コリ菌のみならず、敗血症や菌血症などの疾患に対する診断材料を医療現場に迅速に提供でき、人命救助の観点からも多大な貢献が期待されるものである。
【0159】
【配列表】
Figure 0004234986
Figure 0004234986
Figure 0004234986
Figure 0004234986
Figure 0004234986

【図面の簡単な説明】
【図1】 エシェリヒア コリ菌由来DNAとプローブEC-7とのハイブリダイゼーションを示す顕微鏡写真である。
【図2】 エシェリヒア コリ菌由来DNAとプローブEC-55とのハイブリダイゼーションを示す顕微鏡写真である。

Claims (2)

  1. 配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなり、かつエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)菌が保有するDNAに対して特異的な交差反応性を示す、ことを特徴とするプローブ。
  2. 配列番号:2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなり、かつエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)菌が保有するDNAに対して特異的な交差反応性を示す、ことを特徴とするプローブ。
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