JP2004089046A - カンジダアルビカンス菌の検出用プローブおよびそれを用いた方法 - Google Patents

カンジダアルビカンス菌の検出用プローブおよびそれを用いた方法 Download PDF

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Akio Matsuhisa
松久 明生
Soji Eda
江田 宗司
Norihiko Sugimoto
杉本 典彦
Takanao Iwami
岩見 高尚
Kanako Abe
安部 加奈子
Naoko Kawaguchi
川口 直子
Keiji Uehara
上原 啓嗣
Seiji Yamamoto
山本 誠司
Aya Karashi
芥子 亜矢
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Abstract

【課題】検体内に取り込まれたカンジダ アルビカンス菌の存在を特異的かつ迅速に検出する手段を提供する。
【解決手段】カンジダ アルビカンス菌に対して特異的な交差反応を示し、かつカンジダ アルビカンスの特定な塩基配列またはその配列と70%以上の相同性を有する塩基配列、又はある特定な塩基配列に対して相補的な塩基配列を含む、カンジダ アルビカンス菌の検出用プローブにある。また、該検出プローブを用いたカンジダ アルビカンス菌の検出方法も提供される。本検出方法は、(a)臨床検体より取得した食細胞を支持体上に固定し、(b)固定した食細胞の細胞膜の透過性を亢進させる化学処理を行い、(c)食細胞に含まれる感染症原因菌のDNAを得、(d)ストリンジェントな条件下で、得られたDNAと検出用プローブとの間でハイブリダイゼーションを行いそのシグナルを検出する。
【選択図】     図12

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般的には、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)菌の検出技術の改良に関し、詳細には、カンジダ アルビカンス菌の検出のための新規のプローブ、これらプローブを利用したカンジダ アルビカンス菌の検出方法、およびこれら方法の関連技術に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
カンジダ アルビカンス菌は、正常人の口腔咽頭、消化管、膣などに常在している真菌であり、感染経路として、性交感染、自己感染、産道感染、院内感染、家族間感染などがある。
【0003】
カンジダ アルビカンス菌による感染症には、浅在性カンジダ症と深在性カンジダ症とに大別される。 この内、浅在性カンジダ症においては、皮膚の灼熱感および掻痒感、鵞口瘡、口内炎、膣炎、子宮頚部炎等の臨床症状が現れ、一方で、深在性カンジダ症においては、咽頭炎、気管支炎、膀胱炎、敗血症、膿血症、網脈絡膜炎、心内膜炎、脳における微小膿瘍の形成等の臨床症状が現れる。 特に、悪性腫瘍、白血病、膠原病、後天性免疫不全症候群(AIDS)等の原疾患、それに、当該原疾患に対する治療のために生体の感染防衛機構が低下している状態の患者、あるいはカテーテル装着、手術等により局所的感染防御能が低下している患者に対して、その病原性をよく発揮し、敗血症等の重篤な症状へ進展する可能性が高い。
【0004】
また、敗血症、膿血症および心内膜炎等に移行すると、予後は極めて悪いことが明らかとなっている。 敗血症の状態がさらに進行すると、ショックや、汎発性血管内凝固症候群(DIC)、成人呼吸促進症候群(ARDS)などを合併し、多臓器障害を引き起こして、死に至る場合がよくある。
【0005】
浅在性カンジダ症は、診断・治療が比較的容易であり、少数の難治例を除いて抗真菌薬の投与により通常は短期間に治癒する。 しかし、深在性カンジダ症は、現在市販されている診断キットの感度および再現性が完全ではなく、また、カンジダ アルビカンス菌に対する特異性が低いなど、改善すべき点が多いのが実情である。 カンジダ アルビカンス菌が原因となる敗血症は重篤な感染症であり、正確な診断に導かれた早期の抗菌薬治療の有無が、患者の予後を左右するといえる。 従って、当該技術分野の従事者、特に、臨床医からは、カンジダ アルビカンス菌に関する迅速で確実な検査方法の確立が切望されていた。
【0006】
現在、浅在性カンジダ症起因菌の同定および検出方法として、生標本の直接検鏡法や真菌培養・グラム染色法などが、一般的に用いられている。 しかし、カンジダ アルビカンス菌は常在菌であるので、これら検出方法は、感染症原因菌の可能性を示唆できても、感染症原因菌の特定には至らない。 また、これら検出方法によれば、検査結果が得られるまでに、通常、48時間〜72時間もの時間を要するため、その迅速性に問題があった。 さらに、培養方法や培養条件によっては、コンタミネーションを引き起こしてしまい、検査結果の信頼性を損なう場合もある。
【0007】
深在性カンジダ症起因菌の同定および検出方法としては、血清診断法を利用する方法が一般的である。 例えば、▲1▼ カンジダ属真菌に特徴的な代謝産物であるD−アラビニトールを測定する方法[商品名:アラビニテック・オート、極東製薬工業(Soyama, K. et al.; Clin. Chim. Acta, 149, pp.149−154 (1985)、Soyama, K. et al.; Jpn. J. Med. Mycol., 27, pp.165−169 (1986))]、▲2▼ 真菌全般に共通して存在する抗原である(1→3)−β−D−グルカンを測定する方法[商品名:ファンギテックGテスト、生化学工業(Obayashi, T. et al.; Lancet, 345, 8941, pp.17−20 (1995))、商品名:β−グルカンテストワコー、和光純薬工業(Mori, T et al.; E. J. Clin. Chem. Clin. Biochem., 35, pp.553−560 (1997))]、および▲3▼ 真菌細胞壁成分のマンナン多糖体を抗原とする抗体をラテックス粒子と結合させるラテックス凝集法[Phillips, P et al.; J. Clin. Microbiol., 28, pp.2320−2326 (1990)、Mitsutake, K. et al.; J. Clin. Microbiol.,34, pp.1918−1921 (1996)]などの方法が挙げられる。 その他に、真菌に対する遺伝子診断法として、▲4▼ PCR法を利用した方法も開発されてきている(J. Med. Microbiol., 40, pp.358−364 (1994))。
【0008】
方法▲1▼は、カンジダ属に対しては有効であるが、カンジダ アルビカンス菌に特異的ではない。 また、抗菌剤の投与などによりカンジダ属真菌の増殖が抑えられると、D−アラビニトールの血清中濃度が低下することから、検査前に抗菌剤を投与されてしまうと正確に判定できないおそれがある。 加えて、方法▲1▼での正診率は、他の方法に比較して低いという難点がある。 方法▲2▼では、真菌の正診率は高いが、カンジダ属真菌に対する特異性は低く、カンジダ属真菌あるいはカンジダ アルビカンス菌が特定できないという問題がある。 方法▲3▼では、宿主の体内に侵入しないコロニゼーションでも陽性になることがある。 また、真菌細胞壁成分を標的としているため、カンジダ属真菌に対する特異性は低く、カンジダ属真菌あるいはカンジダ アルビカンス菌が特定できないという問題がある。
【0009】
方法▲4▼では、培養法や血清診断法と比較して、感度・特異性は高い方であるが、検査の迅速性は血清診断よりも劣っている。 また、真菌の属または菌種を特異的に検出するPCR法では、第1次のPCRでの産物の属または菌種に特異的な配列に基づいた第2次のPCRを行う方法も提案されている。 しかし、単一の検体に対してPCRを2回行うことは、操作が煩雑になるために、臨床上利用しにくいという問題がある。 このように、カンジダ アルビカンス菌が関与する感染症にあっては、迅速・確実な診断が求められているにもかかわらず、従来の診断方法では、十分対応できていなかったのが実情である。
【0010】
従って、感染症原因菌の確定と、それに即した抗生物質の選択が従前より必要とされていたにもかかわらず、臨床的にカンジダ アルビカンス菌による感染症の可能性が疑われた投階で、検出結果が出るのを待たずに治療に踏み込んでいるのが、大方の臨床現場での実情である。 すなわち、起因菌不明のまま、最も広範囲な種類の菌に対して有効な抗生物質をまず投与し、1〜2日間様子を見て、効果が現れないと別の抗生物質に切換えるという試行錯誤的な方法に頼っているのである。
【0011】
このような諸問題を解決するために、本出願人は、貪食細胞に貪食された外来微生物の検出および/または同定のための方法を発明した(特公平7−40号)。
【0012】
すなわち、この方法によれば、貪食細胞中に存在する外来微生物由来の遺伝子は、これら遺伝子に対して特異的にハイブリダイゼーション可能なプローブを用いたin situハイブリダイゼーションによって検出される。 具体的には、この方法は、生体由来の臨床検体より取得した食細胞を固定し、これら食細胞に対して細胞膜の透過性を亢進させるための処理を施し、食細胞内に取り込まれた感染症原因菌のDNAを露出し、ストリンジェントな条件下で感染症原因菌のDNAにハイブリダイゼーション可能な検出用DNAプローブを用いたin situハイブリダイゼーションを行い、および、ハイブリダイズシグナルの出現の有無によって感染症原因菌を検出および/または同定する、との一連の工程を含む。
【0013】
敗血症が疑われた患者の血液を、この方法に従って検査したところ、血液培養法と比較して約4倍の感度で菌を検出し、さらに24時間以内に判定を終えることができたことから、この方法は感染症分野において脚光を浴びている。
【0014】
また、本出願人は、カンジダ アルビカンス菌が保有するDNAと特異的に反応するプローブも発明している(日本国特許第2558420号)。 それらプローブは、カンジダ アルビカンス菌の存在を的確に検出し、なおかつ検出精度も高い。
【0015】
そのため、患者に投与する抗生物質を選択する上での、貴重な判断材料を提供する可能性が注目されている。
【0016】
このように、本願発明は、カンジダ アルビカンス菌の検出感度および/またはカンジダ アルビカンス菌に対する特異性がさらに改善された新規プローブ、特に、ハイブリダイゼーション用プローブの提供に加え、これらプローブを利用することで、従前の検出方法よりも検出効率ならびに検出感度に優れた検出方法や検出手段の実現をも、その目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手投】
本発明は、従来技術で認識されていた上掲の様々な不都合に鑑みて発明されたものであって、その要旨とするところは、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)菌に対して特異的な交差反応を示し、かつ(a) 配列番号:1乃至3のいずれかに記載の塩基配列;(b) 塩基配列(a)と70%以上の相同性を有する塩基配列;または、(c) 塩基配列(a)および/または塩基配列(b)に対して相補的な塩基配列を含む、カンジダ アルビカンス菌の検出用プローブにある。
【0018】
また、本発明によれば、前述した検出用プローブを用いたカンジダ アルビカンス菌の検出方法も提供される。 この検出方法は、(a) 臨床検体より取得した生体由来の食細胞を支持体上に固定し、(b) 固定した食細胞の細胞膜の透過性を亢進する化学処理を行い、(c) 食細胞に含まれる感染症原因菌の染色体DNAを得、(d) ストリンジェントな条件下で、得られた染色体DNAと本発明の検出用プローブとの間でin situハイブリダイゼーションを行い、および(e) ハイブリダイゼーションシグナルを検出する工程を含む。
【0019】
さらに、本発明の他の態様によれば、感染症原因菌の検出方法が提供される。
【0020】
この検出方法は、(1) 感染症原因菌の染色体DNAを得、(2) 本発明の検出用プローブを構成する塩基配列の少なくとも一部からなるプライマーを調製し、(3)得られた染色体DNAと当該プライマーとの共存系でのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって当該DNAを増幅し、および(4) 増幅されたDNAを検出する工程を含む。
【0021】
そして、本発明のさらに他の態様によれば、食細胞に貪食された外来微生物の遺伝子を観察する方法が提供される。 この観察方法は、(i) 臨床検体より取得した生体由来の食細胞を支持体上に固定し、(ii) 固定した食細胞の細胞膜の透過性を亢進する化学処理を行い、(iii) 食細胞に含まれる感染症原因菌の染色体DNAを得、(iv) ストリンジェントな条件下で、得られた染色体DNAと本発明の検出用プローブとのin situハイブリダイゼーションを行い、(v) ハイブリダイゼーションシグナルを検出し、(vi) 工程(i)〜(v)を繰り返して実施し、および(vii) ハイブリダイゼーションシグナルの経時的変化をモニターする工程を含む。
【0022】
加えて、本発明のさらに他の態様によれば、本発明の検出用プローブ、食細胞含有検体調製器具、支持担体、細胞膜用化学処理剤、DNA露出処理剤、ハイブリダイゼーション用具およびハイブリダイゼーションシグナル検出器具を含むカンジダ アルビカンス菌の検出キットが提供される。
【0023】
そして、本発明のさらに別の態様によれば、チップ基板および当該基板の表面にその一端が固定されてなる本発明の検出用プローブまたはその断片とを具備したDNAチップが提供される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本願発明を詳細に説明する。
【0025】
定 義
まず、本明細書で使用する「臨床検体」の語は、生体由来の食細胞が含まれる臨床検体を総称するものであり、例えば、血液、組織液、リンパ液、脳脊髄液、膿、粘液、鼻水、痰などの体液が挙げられる。 また、糖尿病、腎障害、肝障害などの病態によっては、尿、腹水、透析排液などの他に、鼻腔、気管支、皮膚、各種臓器、骨などを洗浄した後の組織洗浄液にも生体由来の食細胞が含有されるため、これらも臨床検体の範疇に包含される。 加えて、皮膚、肺、腎、粘膜などの組織も本発明の臨床検体として用いることができる。 これはすなわち、食細胞の一つであるマクロファージには、単球、肺胞マクロファージ、腹腔マクロファージ、固定マクロファージ、遊離マクロファージ、ハンゼマンマクロファージ、炎症性マクロファージ、肝クッパー細胞、脳ミクログリア細胞などの様々な形態に変化するため、血液のみならず、これらを含有する組織までもが本発明の臨床検体として用いることができることによる。 例えば、腎炎が疑われる患者から、腎生検に従って腎組織を採取し、トリプシン等の酵素を用いることによって細胞を剥離してこの組織内に存在する食細胞を取得し、得られた食細胞を用いることで、腎炎の原因微生物を検出および同定することができる。
【0026】
次に、本明細書で使用する「食細胞」の語は、外来微生物を含めた異物を自身の細胞内に取り込むことのできる細胞を指すものであって、例えば、マクロファージ、単球、好中球、好酸球などが挙げられる。 また、U937細胞、HL60細胞などの食細胞系も、本発明において好適に使用することができる。
【0027】
食細胞(白血球)画分は、公知の方法によって臨床検体から取得することができる。 例えば、約5mlのヘパリン加静脈血(白血球数の少ない場合は10ml)を採取し、この血液と血液分離試薬[塩化ナトリウム225mgとデキストラン(分子量 200,000〜300,000)1.5gを含み、滅菌精製水にて全量を25mlに調製したもの]とを4:1程度の割合で混和した後、約10℃〜約40℃で、約15分〜約120分間、好ましくは、約37℃で、約30分間静置することによって、白血球画分(上層)を取得することができる。
【0028】
食細胞の固定
このようにして得た白血球画分を、約0℃〜約20℃にて、約100×g〜約500×gで、約3分〜約60分間、好ましくは、約4℃にて、約140×g〜約180×gで、約10分間遠心分離することによって、白血球を得ることができる。
【0029】
遠心分離の際に赤血球が混入してしまった場合には、溶血操作を行うのが好ましい。 例えば、白血球のペレットに滅菌精製水1mlを加えて懸濁した後、直ちに、過剰量のPBS[塩化ナトリウム18.24g、リン酸一水素ナトリウム12水和物6.012gおよびリン酸二水素ナトリウム二水和物1.123gを含み、かつ滅菌精製水で全量を120mlに調製したもの(以下、単に『PBS原液』と称する)を、滅菌精製水で20倍に希釈して得たもの](以下、単に『PBS』と称する)を加えて等張化した後、再度、約4℃の温度下にて、約140×g〜約180×gで、約10分間遠心分離する。
【0030】
あるいは、このような遠心分離を行わなくとも、貪食細胞が本質的に有する接着能力を利用して、以下のようにして、スライドグラスに接着させることもできる。 白血球を固定する方法として、例えば、カルノア固定を行うことができる。 具体的には、白血球を支持できる担体(支持担体)に白血球のペレットを載置し、カルノア固定液(エタノール:クロロホルム:酢酸=6:3:1で混合して得た液)に20分間程度浸した後、約50%〜約90%、好ましくは、約75%のエタノール液に約5分間浸して、完全に風乾する。
【0031】
このような支持担体としては、不溶性素材から形成されたものが好ましく、例えば、ガラス、金属、合成樹脂(ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ナイロン、ポリアセタール、フッ素樹脂など)、多糖類(セルロース、アガロースなど)が好適に使用できる。 不溶性支持担体の形状としては、例えば、板状、盆状、球状、繊維状、棒状、盤状、容器状、セル、管状等の種々の形状とすることができる。
【0032】
特に、本発明の実施態様において好ましい支持担体として、スライドグラスがある。 このようなスライドグラスとして、例えば、スライドグラス(商品番号MS311BL:日本エアーブラウン社製)がある。 このMS311BLスライドグラスは、その表面に、直径5mmの円形ウェルを14個有している。
【0033】
また、実際の適用を考慮すれば、支持担体への細胞の接着性を改善する目的で、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS、SIGMA社)を、その表面にコートしてなるAPSコートスライドグラスが好ましい。 その他に、ポリ−L−リジンやゼラチンをコートしてなるスライドグラスも好適に使用できる。 これらAPSコートスライドグラスの作製手順は、まず、スライドホルダーにスライドグラスを固定する。 固定したスライドグラスを、希釈した中性洗剤に30分以上浸して洗浄し、水道水で洗剤を十分に除去し、精製水で洗浄した後に、高温(100℃以上)で十分に乾燥させ、その後、室温で放置冷却する。 次いで、スライドグラスを2%APS含有アセトンに1分間浸し、直ちにアセトンおよび滅菌精製水で順次軽く洗浄した後に、風乾する。 さらに再度、スライドグラスを1〜10%APS含有アセトンに1分間浸し、直ちにアセトンおよび滅菌精製水で順次軽く洗浄した後に、風乾を行った後、約20℃〜約60℃、好ましくは約42℃で乾燥させることで、APSコートスライドグラスが得られる。
【0034】
APSコートスライドグラス表面に白血球を支持させる場合、各ウェルに白血球が単層に広がるように塗抹して、風乾するのが好ましい。 固定化する食細胞の密度(x個/ml)は、約5×10個/ml<x個/ml<約1×10個/ml、好ましくは、約1×10個/ml≦x個/ml≦約5×10個/mlに調整する。 また、これに対応して、APSコートスライドグラスに固定される1ウェル当たりの白血球の細胞数(y個/ウェル(直径5mm))は、約2.5×10個/ウェル<y個/ウェル<約5×10個/ウェル、好ましくは、約5×10個/ウェル≦y個/ウェル≦約2.5×10個/ウェルに調整する。
【0035】
具体的には、白血球画分を、約4℃にて、約140×g〜約180×gで、10分間遠心分離して得た白血球ペレットに、少量のPBSを加えて懸濁し、血球計算盤を用いて白血球数を計測する。
【0036】
そして、約5×10個/ウェル〜約2.5×10個/ウェルの細胞数となるようにPBSで調製した白血球懸濁液5μlを、APSコートスライドグラスの各ウェルに白血球が単層に広がるように塗抹し、完全に風乾させることによって、白血球がその表面に固定支持されたAPSコートスライドグラスが調製される。
【0037】
細胞膜の透過性亢進処理
食細胞の細胞膜の透過性を亢進させるための処理を行う。 この処理方法として、白血球が固定支持されたAPSコートスライドグラスを、PBSに約3〜約30分間浸し、その後、酵素前処理試薬(サポニン1.25g、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(比重1.068〜1.075(20/4℃)、pH(5w/v%) 5.5〜7.5)1.25ml、PBS原液25mlを混合し、滅菌精製水にて全量50mlに調製したもの)を、滅菌精製水で約2〜約50倍に希釈した溶液に浸し、振とう機で約3〜約30分間振とうする方法を用いることができる。
【0038】
内在細菌DNAの取得
次に、食細胞内に存在する感染症原因菌のDNAを得る。 具体的には、まず、スライドグラス1枚につき酵素試薬(ザイモラーゼ、N−アセチルムラミダーゼ、リゾチームおよび/またはリゾスタフィン;以下、単に『酵素試薬』と称する)に対して、酵素試薬溶解液(フェニルメチルスルフォニルフルオライド(PMSF)含有ジメチルスルフォキシド(DMSO)を、PBSで100倍希釈したもの]を1ml加えて酵素試液を調製した。 その後、約20℃〜約60℃、好ましくは、約37℃〜約42℃の湿潤箱内で、この酵素試薬1mlを白血球塗抹部位に滴下して、約10〜約60分間静置して、感染症原因菌のDNAを露出する。 その後、0.2mol/lの塩酸を含むPBS(PBS原液に塩酸を加え、滅菌精製水で20倍希釈して、塩酸の終濃度を0.2mol/lに調製したもの)に浸し、そのまま振とう機上で約3〜約30分間振とうする。 DMSOは、5%以上の濃度でリゾチームおよびリゾスタフィンの活性を低下させる可能性があるため、5%未満の濃度で使用するのが好ましい。
【0039】
食細胞の形態を保持させる物質であるPMSF以外に、他の公知のプロテアーゼ阻害剤、例えば、トシルリジンクロロメチルケトン(TLCK)およびそれらの混合物などを用いることもできる。 そのような場合は、DMSOなどの溶解剤を適宜変更すればよい。
【0040】
酵素試薬として用いられる各酵素の力価範囲は、次の通りである。 リゾスタフィンの力価範囲は、約1単位/ml〜約1,000単位/ml、好ましくは、約10単位/ml〜約100単位/mlである。 また、N−アセチルムラミダーゼの力価範囲は、約10単位/ml〜約10,000単位/ml、好ましくは、約100単位/ml〜約1,000単位/mlである。そして、リゾチームの力価範囲は、約1,000単位/ml〜約1,000,000単位/ml、好ましくは、約10,000単位/ml〜約100,000単位/mlである。 なお、原因菌がカンジダ アルビカンス菌等の真菌である場合には、ザイモラーゼを使用することが重要で、その力価範囲は、約50〜約500単位/ml、好ましくは、約100単位/ml〜約500単位/mlであり、また、ザイモラーゼを使用する場合、PMSFまたは公知のプロテアーゼ阻害剤を併用するのが特に好ましい。 さらに、ザイモラーゼを使用するときは、ザイモラーゼ単独または上記の他の酵素を混合して使用しても良い。
【0041】
また、グラム陽性菌とグラム陰性菌の菌体成分の違い、すなわち、ペプチドグリカンまたはリポポリサッカライドの違いにより、使用酵素を適宜選択することができる。 特に、グラム陽性菌とグラム陰性菌の種別にかかわらず、より効果的に菌体を溶菌させるために、2種類以上の酵素を使用することもできる。 リゾチーム、リゾスタフィン、およびN−アセチルムラミダーゼの3種類の酵素を混合した酵素試薬を使用することによって、1種類の酵素に依った場合と比較して溶菌活性が高まる。
【0042】
酵素試薬の至適酵素処理温度は、約26℃〜約59℃、好ましくは、約37℃〜約42℃に設定する。 また、酵素試薬の酵素処理時間は、少なくとも約15分以上、好ましくは、約15分〜約120分、あるいは、少なくとも約20分以上、好ましくは、約30分〜約60分とする。
【0043】
N−アセチルムラミダーゼに関しては、エンテロコッカス フェカーリス(Enterococcus faecalis)の熱処理乾燥粉末ならびにN−アセチルムラミダーゼと共に、2mmol/l 塩化マグネシウムを含む5mmol/lトリス塩酸緩衝液(pH 6.0)中にて、37℃で、5分間反応させた場合、600nmでの吸光度が下がる現象が認められる。 また、ストレプトコッカス サリヴァリウス(Streptococcus salivarius:IFO 3350)の熱処理細胞を、37℃、pH 7.0の条件下で、1分間に1μgを溶菌する酵素活性を1単位とした場合、2,000単位/mg以上の活性を示すN−アセチルムラミダーゼを使用することが望ましい。
【0044】
リゾチームに関しては、ミクロコッカス ルテウス(Micrococcus luteus)とリゾチームと共に、PBS中にて、37℃で、5分間反応させた場合、600nmの吸光度が下がる現象が認められる。
【0045】
また、Micrococcus luteusを、35℃、pH 6.2の条件下で、1分間に540nmの吸光度を0.001下げる時の酵素活性を1単位とした場合、50,000単位/mg以上の活性を示すリゾチームを使用することが望ましい。
【0046】
リゾスタフィンに関しては、スタフィロコッカス エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)とリゾスタフィンが共に、PBS中にて、37℃で、5分間反応させた場合、600nmの吸光度が下がる現象が認められる。 また、スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus)を、37℃、pH 7.5の条件下で、10分間で、620nmの吸光度を0.240から0.125に下げる酵素活性を1単位とした場合、500単位/mg以上の活性を示すリゾスタフィンを使用することが望ましい。
【0047】
ザイモラーゼ(商品名:ザイモリエイス、生化学工業)は、アルスロバクタールテサル(Arthrobacter lutesu1)の培養液から調製された酵素で、酵母生細胞の細胞壁に対する溶解活性が大きい。 ザイモラーゼに含まれる細胞壁溶解に関与する必須酵素は、β−1,3−グルカン・ラミナリペンタオヒドロラーゼ(β−1,3−glucan laminaripentaohydrolase)であり、これは、β−1,3−結合のグルコースポリマーに作用して、主生成物としてラミナリペンタオースを生成する。 ザイモリエイス−100Tは、硫安分画に精製され、さらにアフィニティークロマトグラフィーにより精製された酵素であって(Kitamura, K. et al., J. Ferment. Technol., 60, p.257 (1982))、100,000単位/gの活性を有している。 しかしながら、この酵素の活性は、基質となる酵母の種類、培養条件および生育時期により変化することが知られている(Kitamura, K. et al., J. Gen. Appl. Microbiol., 20, p.323 (1974);Kitamura, K. et al., Agric. Biol. Chem., 45, p.1761 (1981); Kitamura, K. et al., Agric. Biol. Chem., 46, p.553 (1982))。 ザイモリエイス−100Tは、β−1,3−グルカナーゼを約1.0×10単位/g、プロテアーゼを約1.7×10単位/g、そして、マンナーゼを約6.0×10単位/gを含み、DNaseおよびRNaseは認められない(Kitamura, K. et al., J. Gen. Appl. Microbiol., 18, p.57 (1972))。 また、ザイモリエイスの至適pHは約5.5〜約8.5であり、約6.5〜約7.5のpHが特に至適性に優れており、至適温度は約25〜約55℃であり、約35〜約45℃の温度が特に望ましい。
【0048】
さらに、酵母(対数増殖期細胞)に対する溶菌スペクトラム(属名)として、Ashbya、Candida、Debaryomyces、Eremothecium、Endomyces、Hansenula、Hanseniaspora、Kloekera、Kluyveromyces、Lipomyces、Metschkowia、Pichia、Pullularia、Torulopsis、Saccharomyces、Saccharomycopsis、Saccharomycodes、Schwanniomycesなどがある。 特に、カンジダ属には、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ パラシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ ガラクタ(Candida galacta)、カンジダ ギリエルモンジ(Candida guilliermondii)、カンジダ クルセイ(Candida krusei)等がある。
【0049】
これらの属に属する菌も、本発明の適用対象に加えることができる。
【0050】
ザイモラーゼの賦活剤として、SH化合物、例えば、システイン、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトールなどを用いることができる。 ザイモラーゼは、ビール酵母懸濁液を基質として、約25℃の温度下で、約2時間置いた反応液(ザイモラーゼ:0.05〜0.1mg/溶液mlの1ml、基質:ビール酵母懸濁液(2mg乾燥重量/ml)3ml、緩衝液:M/15リン酸緩衝液(pH 7.5)5mlを含み、滅菌精製水1mlで全量を10mlに調製したもの)でのA800を30%減少するに必要な酵素活性を1単位とする。 なお、ザイモリエイス−100Tは、約100,000単位/gの活性を有している。
【0051】
酵素試薬溶解液として用いられる(プロテアーゼから白血球を保護してその形態を保持させるために添加される)PMSFは、約10μmol/l 以上の濃度で効果が認められ、約0.1mmol/l 以上の濃度では、白血球の形態の劣化が完全に抑制されていたことから、約10μmol/l〜約10mmol/l、好ましくは、約0.1mmol/l〜約1mmol/lの範囲であることが好ましい。 また、ジメチルスルフォキシド(DMSO)の濃度としては、約5%未満の濃度で使用でき、約2%以下の濃度が好ましく、約1%程度の濃度が最も好ましい。 従って、酵素試薬溶解液としては、0.1mol/l PMSF含有DMSOを、PBSで約100〜約1,000倍希釈して調製したものが好ましい。
【0052】
感染症原因菌のDNAを得た後に、細胞膜タンパク質のアセチル化工程を加えてもよい。 具体的には、アセチル化試薬(トリエタノールアミン7.46gと適量の塩酸を含み、かつ適量の滅菌精製水で全量を50mlとしたもの)に無水酢酸を加え、滅菌精製水で約2〜約50倍に希釈し、好ましくは、約10倍に希釈して、無水酢酸の終濃度を約0.1〜約3.0%、好ましくは、約0.8%に調製したアセチレーション試薬にスライドグラスを浸し、振とう機上で約5〜約30分間振とうする。 その後、スライドグラスを、75%、85%、98%のエタノールに順に、それぞれ約2〜約5分間ずつ浸して、完全に風乾させる。
【0053】
また、アセチル化工程の後に、感染症原因菌のDNAをアルカリ処理する工程を挿入することができる。 これにより、感染症原因菌のDNAは、一本鎖のDNAになる。 具体的には、スライドグラスを、約10mmol/l 〜約300mmol/l、好ましくは約70mmol/lの濃度の水酸化ナトリウムを含むPBS(PBS原液に水酸化ナトリウムを加え、滅菌精製水で約20倍希釈し、水酸化ナトリウムの終濃度を70mmol/l に調製したもの)に約2〜約5分間浸して、アルカリ処理を行う。 その後、スライドグラスを、75%、85%、98%のエタノールに順に、それぞれ約2〜約5分間ずつ浸して、完全に風乾させる。
【0054】
In situ ハイブリダイゼーション
ストリンジェントな条件下にて、感染症原因菌のDNAとハイブリダイゼーション可能な検出用DNAプローブを用いてin situハイブリダイゼーションを行う。
【0055】
In situハイブリダイゼーションを実施するにあたって、まず、プローブ希釈液を用いて調製した検出用DNAプローブ含有液(プローブ液)を塗抹部位に塗布し、約25℃〜約50℃、好ましくは、約37℃〜約42℃の湿潤箱内で、約1〜約3時間、好ましくは、約2時間静置させる。 その後、ハイブリダイゼーション洗浄液[ハイブリダイゼーション原液(塩化ナトリウム13.15gとクエン酸三ナトリウム2水和物6.615gとを含み、滅菌精製水にて全量を75mlに調整したもの、以下、単に、『ハイブリダイゼーション原液』と称する)を、ハイブリダイゼーション原液:滅菌精製水:ホルムアミド=5:45:50の割合で混合して調製したもの]を3つの染色ビンに用意し、それぞれを順に、約35〜約45℃、好ましくは、約42℃で、約10分間ずつ浸す。 その後、PBSに浸したままで、振とう機上で、約5〜約30分間振とうさせる。 詳細には、プローブ希釈液は、サケ精子DNA 600μl、100×デンハート溶液50μl、前出のハイブリダイゼーション原液500μl、ホルムアミド2250μl、50%硫酸デキストラン1000μlを含んでいる。 プローブ液には、15ngの各検出用DNAプローブを含有せしめるのが好ましく、プローブ希釈液にて全量を50μlとするのが望ましい。
【0056】
SA、SE、PA、EF、EKのプローブ(各プローブの調製方法については、日本国特許第2798499号を参照されたい)の濃度については、約0.06ng/μlの濃度では検出が不調(以下、「不適」と称する)であり、また、約0.6ng/μlの濃度では検出可能(以下、「適」と称する)であったことから、少なくとも約0.1ng/μl以上の濃度に調整すべきである。 さらに、約2.4ng/μlおよび約3.0ng/μlの濃度では「不適」であり、また、約1.8ng/μlの濃度では「適」であったため、約2.2ng/μl以下の濃度に調整すべきである。 従って、好ましいプローブ濃度は、約0.1〜約2.2ng/μl、好ましくは、約0.6〜約1.2ng/μlとする。 特に、本発明のカンジダ アルビカンスに対するプローブについて2.0ng/μlのプローブ濃度で試験したところ、「適」であることを証明している。 また、陽性コントロールおよび陰性コントロールの至適濃度は、それぞれ約0.4〜約2.0ng/μlおよび約0.6〜約2.0ng/μlとし、好ましくは、両者共に約0.6〜約1.0ng/μlの濃度とするのが良い。
【0057】
また、ハイブリダイゼーションの試験時間は、少なくとも約30分以上、好ましくは、約60分以上、より好ましくは、約90分以上とする。 最も好ましくは、ハイブリダイゼーション時間を、約120分〜約900分に設定すべきである。
【0058】
In situハイブリダイゼーションの実施において、検出感度を高める観点からして、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤の使用が好ましい。 SDSの好ましい濃度は、約1%以下、より好ましくは、約0.1%〜約0.75%、さらに好ましくは約0.25%〜約0.5%である。 SDSは、ハイブリダイゼーションの際に用いる溶液に添加されていればよく、プローブ希釈液またはプローブ液に事前に混合して用いてもよい。
【0059】
また、検出用プローブとしては、約200〜約600塩基長、好ましくは、約200〜約500塩基長、最も好ましくは、約200〜約300塩基長の長さを有する1種以上の核酸断片とするのが好ましい。 これはすなわち、食細胞内へのプローブの導入を円滑にし、かつ取り込まれている外来微生物の遺伝子への確実な接触が許容されることによる。 ところで、対象となるプローブの塩基長は、必ず上記塩基長範囲に収まらなければならないことを意味するものではなく、プローブ塩基長の分布に上記範囲の塩基長が含まれていればよい。 これらプローブは、1種で用いても数種(1種以上)で用いても良い。 1種以上のプローブとは、一菌種に対してハイブリダイズできる複数種のプローブであってもよく、また、一菌種に対してプローブは1つであるが、菌種が複数種存在するためにプローブの種類が複数種となっていてもよく、プローブの種類が1種以上であれば特に制限されない。
【0060】
なお、プローブは、食細胞自体との交差反応性に乏しい(ハイブリダイズしない)配列を有するDNA断片を含むものとすることが好ましく、プローブの起源種と異なる他の菌種に由来する遺伝子とハイブリダイズするものであってはならない。
【0061】
例えば、サブトラクション法を用いれば、短時間で特異プローブを作成することができる。 これらプローブは、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ビオチン、ジゴキシゲニン(ジゴキシゲニン(DIG)−11−dUTP)等の非放射性同位体標識用物質を用いて、定法のニックトランスレーション法に従って、調製およびラベルすることができる。 プローブの鎖長は、ニックトランスレーション反応において添加するDNaseIとDNAポリメラーゼIの量比を変化させることによって、最も効率よく標識付け可能なように制御できる。
【0062】
一例として、本願発明のプローブCA−50(配列番号:1)の2μgを効率よくラベル化し、また、外来微生物DNAと効率よくin situハイブリダイズ可能なプローブ鎖長(200〜300)にするためには、全量100μlの反応液中に、10U/μlのDNAポリメラーゼIの2μlに対し、全量100μlの反応液中に約10〜約350mU、好ましくは、約25〜約200mU、より好ましくは、約50〜約150mUに調製されたDNaseIを6μl存在するように調製する。 この場合、各酵素の容量および反応液全量などは、上記した至適反応条件の比率が一定である限り、適宜変更してもよい。 換言すれば、全量100μlでの20UのDNAポリメラーゼIに対して、DNaseIの濃度を、約10〜約350mU、好ましくは、約25〜約200mU、より好ましくは、約50〜約150mUの濃度に調整する。 さらに換言すれば、1単位のDNAポリメラーゼIに対して、約0.5/1000〜約17.5/1000、好ましくは、約1.25/1000〜約10/1000、より好ましくは、約2.5/1000〜約7.5/1000単位のDNaseIを用いてニックトランスレーション反応を行うのが望ましい。 また、1μgのDNAに関して着眼すれば、10UのDNAポリメラーゼIに対して、DNaseIを約5〜約175mU、好ましくは、約12.5〜約100mU、より好ましくは、約25〜約75mUにすればよい。 他のプローブに関しては、上記した至適反応条件を参考にして、DNA量、DNAポリメラーゼIおよびDNaseIに関する至適反応条件を決定することができる。 加えて、効率よくラベル化でき、しかも外来微生物DNAと効率よくin situハイブリダイゼーションできるプローブ鎖長(約200〜約300塩基長)に調節することもできる。
【0063】
ところで、in situハイブリダイゼーションを実施する際に用いられる「ストリンジェントな条件」とは、例えば、ホルムアミド約30%〜約60%、好ましくは、約50%の存在下、約30〜約50℃、好ましくは、約38〜約42℃でインキュベートし、その後、洗浄を行う条件である。
【0064】
In situハイブリダイゼーションを行った後、ブロッキングの工程を加えることもできる。 具体的には、湿潤箱内でスライドグラス1枚につきブロッキング試薬(ウサギ正常血清2mlとPBS原液0.5mlを含み、かつ滅菌精製水にて全量を10mlに調製したもの)1mlを塗抹部位に滴下し、約15〜約60分間静置する。 その後、ブロッキング試薬を除去する。
【0065】
ハイブリダイズシグナルの検出
菌由来の遺伝子(ゲノムDNAまたはRNA)とハイブリダイズした結果に生じるシグナルを検出するために、定法の抗原−抗体反応等を利用した呈色反応を行う。
【0066】
すなわち、ハイブリダイゼーションを終えた試料を充分に洗浄した後に、ブロッキング処理を行い、次いで、抗FITC抗体、抗ジゴキシゲニン抗体などの接合物、例えば、アルカリホスファターゼ接合物を用いて処理し、その後、接合物の発色系にてシグナルを発色して、ハイブリダイゼーションの状況を確認する。 例えば、プローブとして、ジゴキシゲニン−11−dUTPでラベルしたプローブを用いた場合、抗ジゴキシゲニン−アルカリホスファターゼ接合物を用い、一般に使用されるアルカリホスファターゼに対する基質(ニトロブルーテトラゾリウムおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート等)を利用して検出すればよい。
【0067】
呈色反応の後に洗浄して得た塗沫標本は、ナフトールブラック、Fast Green(20mg/50ml、Wako Chemicals社製)等で対比染色を行い、光学顕微鏡(蛍光顕微鏡)によって検鏡すると細胞内シグナルが観察される。
【0068】
詳細には、ハイブリダイゼーションによるシグナルを得るには、例えば、検出用DNAプローブとしてジゴキシゲニン標識DNAプローブを用いる場合には、標識抗体(アルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体溶液1.05単位、バッファーA(トリエタノールアミン746mg、塩化ナトリウム17.5mg、塩化マグネシウム6水和物20.3mg、塩化亜鉛1.36mg、ウシ血清アルブミン1000mgおよび適量の塩酸を含み、かつ滅菌精製水適量にて全量を100mlに調製したもの)12.6μlにて全量を14μlに調製したもの)を標識抗体希釈液(トリス−(ヒドロキシメチル)−アミノメタン8.48mg、塩化ナトリウム6.14mgおよび塩酸適量を含み、かつ適量の滅菌精製水で全量を0.7mlに調製したもの)で約10〜約200倍、好ましくは、約50倍に希釈した標識抗体液を調製し、これを塗抹部位に10μlずつ滴下し、約15〜約60分間静置する。 その後、標識抗体洗浄液(1mlのポリソルベート20と50mlのPBS原液を含み、かつ滅菌精製水にて全量を100mlに調製したもの)を約2〜約50倍、好ましくは、約10倍に希釈した溶液に浸し、そのままの状態で、振とう機上で約5〜約30分間振とうする。 この操作を2回繰り返した後、発色前処理液1(トリス−(ヒドロキシメチル)−アミノメタン6.06g、塩化ナトリウム2.92gおよび適量の塩酸を含み、かつ適量の滅菌精製水にて全量を50mlに調製したもの)と発色前処理液2(塩化マグネシウム6水和物5.08gを含み、かつ滅菌精製水にて全量を50mlに調製したもの)を等量混合し、滅菌精製水で5倍程度に希釈した発色前処理液に浸し、そのままの状態で振とう機上で約5〜約30分間振とうする。その後、スライドグラス1枚につき発色試薬(ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルフォスフェイト(BCIP))1mlを、0.2μmシリンジトップフィルターを装着したディスポーザブルシリンジでろ過しながら、スライドグラスの塗抹部位に滴下し、湿潤箱中で約10℃〜約45℃、好ましくは、約37℃で、約15〜約60分間遮光静置する。 その後、発色試薬洗浄液(トリス−(ヒドロキシメチル)−アミノメタン606mg、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム2水和物186mgおよび適量の塩酸を含み、かつ適量の滅菌精製水にて全量を50mlに調製したもの)を約2〜約50倍、好ましくは、約10倍に希釈した溶液に約2〜約10分間浸し、風乾した後、対比染色液(ファストグリーンFCF(食用緑色3号)50mgを含み、かつ適量の滅菌精製水にて全量を約50mlに調製したもの)を約2〜約50倍、好ましくは、約10倍に希釈した溶液、それに約0.1〜約5%、好ましくは、約1%の酢酸溶液に浸す。 その後、前出の発色試薬洗浄液を約2〜約50倍、好ましくは、約10倍に希釈した溶液に再度浸して余分の対比染色液を洗い流し、完全に風乾する。 また、発色試薬は、個別に調製した試薬でもよい。
【0069】
アルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体溶液は、ブロッティング用メンブレンに、ジゴキシゲニンをラベルしたDNAを1ngブロットし、ブロッキング後、10,000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体溶液で処理し、発色基質(NBT/BCIP)を反応させると、DNAのブロッティング部位が発色し、ジゴキシゲニンがラベルされていないDNAで同様の操作をしても発色は認められないものを使用するのが望ましい。 また、抗ジゴキシゲニン抗体は、ヒツジ由来のものが好ましい。 詳細には、免疫処置したヒツジ血清より、イオン交換クロマトグラフィーと抗体カラムクロマトグラフィーを経て精製したものが好ましい。
【0070】
発色試薬(NBT/BCIP溶液、pH 9.0〜10.0)としては、ニトロテトラゾリウムブルー(NBT)3.3mg、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルフォスフェイト(BCIP)1.65mg、N,N−ジメチルホルムアミド99μg、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン121mg、適量の塩酸、塩化ナトリウム58.4mg、および塩化マグネシウム6水和物101.6mgを含み、かつ適量の滅菌精製水にて全量を約10mlに調製したものが好ましい。 この発色試薬としては、アルカリフォスファターゼをラベルしたタンパク質をブロッティング用メンブレンにブロットし、発色試薬でメンブレンを遮光室温で処理すると、ブロット部位に暗紫色のシグナルが現れる試薬が好ましい。
【0071】
このような対比染色を行う場合、シグナルと細胞のコントラストをさらに明確にさせるため、食用色素、例えば、黄色4号(タートラジン)を使用することができる。 その理由として、基質によって紫色を呈色し、また、ナフトールブラックにより青色を呈色するなど、発現した色が互いに類似していると、明確な対比染色が行いにくいことが挙げられる。 後述するように、これまでに試されなかった食用色素を用いたところ、対比染色時の色相の差異が明確になり、実用的であることが判明した。
【0072】
ところで、ジゴキシゲニンを標識化する方法として、ニックトランスレーション法を用いることができる。 また、ジゴキシゲニンを標識化するその他の方法として、PCR法、ランダムプライマーラベリング法、in vitroトランスクリプションラベリング法、ターミナルトランスフェラーゼラベリング法なども使用可能である。
【0073】
交差反応の有無の判定は、光学顕微鏡(蛍光顕微鏡)で鏡検(×1,000)した際に、単一ウェルにおいて、対比染色液によって染色された細胞において、青紫色の発色が1つでも認められた場合に陽性と判定する。
【0074】
また、検出用プローブの調製方法は、日本国特許第2965544号を参照することで明らかになろう。
【0075】
さらに、本発明のプローブ(プローブCA−50、配列番号:1)を、例えば、ワーキングセルバンクから釣菌して培養するには、ワーキングセルバンク(CA−50)を、白金耳または使い捨てプラスチックループ等で釣菌して、これを滅菌シャーレ内に置いた50μg/mlアンピシリン含有L−ブロス固形培地に画線塗抹する。 一晩培養した後、シングルコロニーを採取し、50μg/mlアンピシリン含有のL−ブロス培地5mlに植菌して、37℃で終夜振とう培養する[前培養]。 次いで、前出の固形培地400mlが入った培養用フラスコに、前培養液を2.5mlずつ植菌して、約37℃で終夜振とう培養する[本培養]。
【0076】
そして、プローブCA−50のプラスミドDNAを抽出すべく、本培養した培養液を約4℃にて、約4,000×gで10分間遠心分離して集菌する。 培養上清を除去し、STE(10mmol/l トリス塩酸(pH 8.0)、1mmol/l エチレンジアミン−四酢酸2ナトリウム塩(EDTA)、0.1mmol/l 塩化ナトリウム)を20ml加えて菌体を再懸濁し、約4℃にて、4,000×gで10分間遠心分離して集菌する。 10mg/mlリゾチームを含む溶液−1(50mmol/l グルコース、25mmol/l トリス塩酸(pH 8.0)、10mmol/l EDTA)5mlを加え、菌体を懸濁して、室温で5分間放置する。 溶液−2(0.2mmol/l 水酸化ナトリウム、1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))10mlを加え、転倒混和して、氷上で10分間放置する。 氷冷した溶液−3(3mol/l 酢酸カリウム(pH 4.8))7.5mlを加え、転倒混和して氷上で10分間放置する。 高速冷却遠心機を用いて、約4℃にて、約45,000×gで30分間遠心分離した後、上清を回収し、室温になるまで放置する。 その後、0.6容量(約24ml)のイソプロパノールを加え、転倒混和して、室温で15分以上放置する。 高速冷却遠心機を用いて、約25℃にて、約28,000×gで30分間遠心分離した後、上清を捨て、70%エタノールでペレットを洗浄し風乾する。 風乾した後、TE(10mmol/l トリス塩酸(pH 8.0)、1mmol/l EDTA)を8ml加えて、溶解する[プラスミドDNAの抽出]。
【0077】
次に、プローブCA−50含有プラスミドDNAの精製を行う。 得られたプラスミドDNAに、10mg/mlエチジウムブロマイド800μlおよび塩化セシウム8.6gを加え、転倒混和して溶解させる。 その溶解液を超遠心用チューブに入れ、キャップまたはシールをする。 垂直型ローターにより、約20℃にて、約500,000×gで約5時間超遠心した後、紫外線ライト照射下で注射筒または注射針を使用して、プラスミドDNAのバンドを分取する。 分取したプラスミドDNA溶液に、等量のTE飽和 l−ブタノールを加えて転倒混和し、微量高速遠心機を用いて、約15,000×gで、5分間遠心分離し、上清を取り除く。 この操作を繰り返し、プラスミドDNA溶液中のエチジウムブラマイドを取り除く。 次に、TEを加えて1.5mlの体積とし、脱塩カラム(NAP−10)で脱塩する。 脱塩したプラスミドDNA溶液に、3mol/l 酢酸ナトリウム溶液を30μl加えて混和した後、3倍量の99.5%エタノールを加えて転倒混和し、−約20℃で、30分以上放置する。 その後、微量冷却高速遠心機を用いて、4℃にて、15,000×gで20分間遠心分離して上清を除いた後、冷70%エタノールを加えて懸濁する。 そして、再度、微量冷却高速遠心機を用いて、4℃にて、15,000×gで20分間遠心分離して上清を除き、プラスミドDNAの沈渣を減圧下で乾固させる。 プラスミドDNAに100μlのTEを加えて完全に溶解させ、260nmの吸光度で濃度を測定する[プローブCA−50含有プラスミドDNAの精製]。 その後、プローブCA−50含有プラスミドDNAの制限酵素処理、およびアガロース電気泳動によるプローブCA−50のサイズチェックを行う。
【0078】
次いで、プローブCA−50含有プラスミドDNAの制限酵素処理およびアガロース電気泳動によるプローブCA−50の精製を行う。 そのために、分子量確認が終了したプローブCA−50含有プラスミドDNA1mgを、制限酵素HindIII単独もしくは他の制限酵素と組み合わせて、37℃で、1.5時間以上の時間をかけて反応を進行せしめて消化する。
【0079】
プラスミドDNAを消化した後、反応液の一部を0.8%アガロースで電気泳動して、消化が完全に終了したことを確認する。 消化を確認した後、分取用の0.8%アガロースゲルで電気泳動し、プローブCA−50のバンドを採取する。 採取したプローブCA−50をアガロースゲルから抽出および精製して、吸光度計にてその濃度を測定する。
【0080】
精製したプローブCA−50の一部を、0.8%アガロースゲルで電気泳動し、シングルバンドであることを確認する。
【0081】
次に、プローブCA−50のラベル化を行うために、以下の表1に記載の組成を有する反応液において、精製したプローブCA−50の2μgに対してジゴキシゲニンの標識付けを行う。
【0082】
【表1】
Figure 2004089046
【0083】
表1において、「X」とは、プローブ原液の濃度に応じて好ましいプローブ濃度となるように添加することができる容量を指し、この容量に伴い精製水量Yを決定して最終容量を調整する。
【0084】
標識付けした後、反応液にTEを100μl 加えて反応を停止させる。 反応停止液をスピンカラムに注入し、約4℃にて、約380×gで約10分間遠心分離して、遊離のヌクレオチドを除く。 次に、溶出液の濃度を吸光度計により測定し、TEで約10ng/μl に調製する。
【0085】
標識付けを確認するために、標識付けしたプローブCA−50の0.5μlをメンブレンに滴下して、風乾する。 ブロッキング試薬にこのメンブレンを浸し、室温で30分間ブロッキングする。 0.1mol/l トリス塩酸(pH 7.5)と0.15mol/l 塩化ナトリウムで5,000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体溶液に、そのメンブレンを室温で30分間浸す。 0.1mol/l トリス塩酸(pH 7.5)および0.15mol/l 塩化ナトリウムにメンブレンを浸し、室温で約10分間振とうして、2回洗浄する。 0.5mol/l トリス塩酸(pH 9.5)、0.15mol/l 塩化ナトリウム、50mmol/l 塩化マグネシウムに、室温下で、メンブレンを約10分間浸す。
【0086】
室温および遮光下で、発色試薬にメンブレンを、約10分間浸す。 メンブレンをTEに浸し、発色を停止させる。 スポット下部分の青紫色の発色で、標識付の確認を行う。
【0087】
1mlのディスポーザブルシリンジに、少量の滅菌済みグラスウールを充填してスピンカラムを作製する。 1mmol/l トリス塩酸(pH 7.5)、1mmol/lのEDTA、0.1% SDSで膨潤させたセファデックスG−50をシリンジに充填する。 15mlのディスポーザブルコニカルチューブにシリンジを入れ、約4℃にて、約320×gで約10分間遠心分離し、過剰の緩衝液を落とす。 ディスポーザブルコニカルチューブからシリンジを抜き、排出された緩衝液を捨てた後、1.5mlのエッペンドルフ型チューブをディスポーザブルコニカルチューブの底に入れ、その上にシリンジを入れる。
【0088】
ドットブロットハイブリダイゼーション
プローブの特異性を確認するために、以下の手順に従って、ドットブロットハイブリダイゼーションを行う。
【0089】
まず、スポットした各ゲノムDNAを変性するために、定法に従い0.5mol/l 水酸化ナトリウム、1.5mol/l 塩化ナトリウム溶液で飽和した濾紙(ワットマン社製3MM)上に、調製した各種細菌ゲノム100ng をナイロンメンブレン(ポールバイオダインタイプB、日本ポール社製)にスポットし、風乾したメンブレンを10分間静置する。 次に、0.5mol/l トリス塩酸(pH 7.5)、1.5mol/l 塩化ナトリウム溶液で飽和した前出の濾紙上に10分間静置して変性DNAを中和する。 さらに2×SSC(Standard Saline Citrate)溶液で飽和した前記濾紙上に5分間静置し、洗浄する。
【0090】
そして、メンブレンを風乾し、2×SSC溶液にメンブレンを浸し、5分間浸透する。 定法に従い、プラスチックバッグ内でプレハイブリタイゼーション溶液にメンブレンを浸し、42℃で、60分間親和させる。 プラスチックバッグ内でプローブ400ngを含むハイブリタイゼーション溶液の15mlにメンブレンを浸し、42℃で、一晩反応させる。 次に、2×SSC、0.1% SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)溶液にメンブレンを浸し、5分間洗浄する(この工程を2回繰り返す)。 その後、0.1×SSC、0.1%SDS溶液にメンブレンを浸し、60℃で、10分間洗浄する(この工程を3回繰り返す)。 2×SSC溶液にメンブレンを浸し、5分間洗浄する。 メンブレンを3%ウシ血清アルブミン、1%ブロッキングバッファー(ベーリンガー社製)、0.1mol/l トリス塩酸(pH 7.5)、0.15mol/l 塩化ナトリウムを含む溶液にメンブレンを浸し、30分間緩慢に振とうする。
【0091】
次いで、アルカリフォスフアターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体(ベーリンガー社製)を、0.1mol/l トリス塩酸(pH 7.5)および0.15mol/l 塩化ナトリウム溶液で5,000倍希釈した溶液にメンブレンを浸し、30分間緩慢に振とうする。 次に、0.1mol/l トリス塩酸(pH 7.5)、0.15mol/l 塩化ナトリウム溶液にメンブレンを浸し、15分間振とうする(この工程を2回繰り返す)。 0.1mol/l トリス塩酸(pH 9.5)、0.1mol/l 塩化ナトリウム、5mmol/l 塩化マグネシウムを含む溶液にメンブレンを浸し、5分間振とうする。 NBT−BCIP溶液(GIBCO BRL社製)にメンブレンを浸し、遮光下で発色反応させる。 TE(10mmol/l トリス塩酸(pH 8.0)、1mmol/l EDTA)にメンブレンを浸し、発色反応を止め、風乾する。 プレハイブリダイゼーション溶液およびハイブリダイゼーション溶液の組成を、以下の表2に示す。
【0092】
【表2】
Figure 2004089046
【0093】
前述したin situハイブリダイゼーション工程において使用される界面活性剤としては、公知の界面活性剤が使用できる。
【0094】
界面活性剤は、アニオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤および両性界面活性剤に大別される。
【0095】
アニオン界面活性剤とは、陰イオン界面活性剤とも称されるものであって、水中で電離して有機陰イオンとなるものである。 界面活性剤の分子中の親油基をRとして表現すると、RCOONa、RSONa、RSONaの式で表される。 RCOONaのように弱酸性基を含有するものでは、その水溶液は加水分解しやすく弱アルカリ性を呈するが、RSONa, RSONaなどの強酸性基を有するものでは、その水溶液は、加水分解を受けにくく、中性を呈する。 陰イオン性であるから、多量の陽イオン性物質の存在で界面活性を失うことがあり、また強酸性にした時にも失活する。
【0096】
非イオン性界面活性剤とは、親水基が非イオン性のものをいう。 親水基として酸化エチレン基(−CHCHO−)が多用され、この官能基の数が多くなるに従って、親水性が増す。 反対に、親油基の炭素数が増加すると、親油性が増加する。
【0097】
従って、親水性・親油性を様々に変化させた界面活性剤が得られるのが特徴である。 非イオン性界面活性剤は、水中で電離せず、無機塩の影響も受けにくいため、生体に及ぼす作用も少ない。 しかも、洗浄作用は、強力で、泡立ちは比較的少ないため、洗剤のみならず、医薬品、化粧品、食品などの様々な用途で使用される。 水溶性の非イオン性界面活性剤は、温度が上昇すると、ある時点で水に溶解しにくくなり、水溶液が濁り出すが、これは親水基と水との水素結合が切断されるために生じる。
【0098】
カチオン界面活性剤は、陽イオン界面活性剤とも称され、これは、水中で、電離して有機陽イオンとなるものである。 カチオン界面活性剤は、一般に洗浄作用は大きくはないが、細菌などのアニオン性のものと強く結合するため、殺菌作用が大きい。 また、繊維やプラスチックでの帯電防止能もある。 代表的なカチオン界面活性剤であるドデシルトリメチルクロリド[C1225(CHN]Clは水溶性であるが、一方で、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド[(C1225(CHN]Clは水に溶解しにくく、水中では2分子膜状のベシクルを形成し、これはベンゼンには溶解する。
【0099】
両性界面活性剤とは、分子内にアニオン基とカチオン基の両者を併せ持っている界面活性剤である。 水溶液中での電離状態はアミノ酸に類似しており、両性界面活性剤には、アミノ酸誘導体が多く存在する。 従って、アミノ酸と同様に等電点を有し、等電点よりアルカリ性側にある場合にはアニオン界面活性剤として、酸性側にある場合にはカチオン界面活性剤として作用する。 等電点で水溶性は最低となり、表面張力も最も低下する。 両性界面活性剤は、殺菌剤、帯電防止剤などの用途に用いられている。
【0100】
また、アニオン界面活性剤は、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型およびリン酸エステル型に分類され、非イオン性界面活性剤は、エステル型、エーテル型、エステルエーテル型およびアルカノールアミド型に分類される。 カチオン界面活性剤は、アルキルアミン塩型および第四級アンモニウム塩型に分類され、両性界面活性剤は、カルボキシベタイン型、2−アルキルイミダゾリンの誘導型およびグリシン型に分類される。
【0101】
さらに、アニオン界面活性剤のカルボン酸型は、脂肪酸モノカルボン酸塩、N−アシルサルコシン塩およびN−アシルグルタミン酸塩に細分される。 それぞれの代表例として、脂肪酸モノカルボン酸塩として、ラウリン酸ナトリウムおよび薬用石鹸が、N−アシルサルコシン塩として、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−アシルグルタミン酸塩、それに、N−ラウロイルグルタミン酸二ナトリウムなどがある。 また、スルホン酸型は、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル(分岐鎖)ベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物およびN−メチル−N−アシルタウリン塩に細分される。 その代表例として、ジアルキルスルホコハク酸塩として、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、また、アルカンスルホン酸塩としてドデカンスルホン酸ナトリウム、また、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩として直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが、そして、アルキル(分岐鎖)ベンゼンスルホン酸塩として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、また、アルキルナフタレンスルホン酸塩として、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、それに、N−メチル−N−アシルタウリン塩としてはN−メチル−N−ステアロイルタウリンナトリウムなどがある。 また、硫酸エステル型は、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩および油脂硫酸エステル塩に細分される。 その代表例として、アルキル硫酸塩として、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)およびセチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩はポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどがある。 また、リン酸エステル型は、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩に細分される。 その代表例として、アルキルリン酸塩として、モノラウリルリン酸二ナトリウムがある。
【0102】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩には、リン酸ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルおよびリン酸ポリオキシエチレンオレイルエーテル(8MOL)がある。
【0103】
非イオン性界面活性剤のエステル型は、脂肪酸グリセリン、脂肪酸ソルビタンおよび脂肪酸ショ糖エステルに細分される。 それぞれの代表例として、脂肪酸グリセリンとして、モノステアリン酸グリセリン、脂肪酸ソルビタンとしてはモノステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、ポリソルベート60およびポリソルベート80、脂肪酸ショ糖エステルはステアリン酸ショ糖エステルがある。 また、エーテル型は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールに細分される。 その代表例として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルおよびポリオキシエチレンセチルエーテルなどがあり、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとして、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよびポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルがある。 また、エステルエーテル型は、脂肪酸ポリエチレングリコールおよび脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンに細分される。 それそれの代表例として、脂肪酸ポリエチレングリコールには、オレイン酸ポリエチレングリコールが、また、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンには、パルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタンおよびポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどがある。 また、アルカノールアミド型は、脂肪酸アルカノールアミドだけであり、ラウリン酸ジエタノールアミドがその代表例である。
【0104】
カチオン界面活性剤のアルキルアミン塩型には、モノアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩およびトリアルキルアミン塩があり、モノステアリルアミン塩酸塩がその代表例である。 また、第四級アンモニウム塩型は、塩化(または臭化、沃化)アルキルトリメチルアンモニウム、塩化(または臭化、沃化)ジアルキルジメチルアンモニウム、および塩化アルキルベンザルコニウムに細分される。それぞれの代表例として、塩化(または臭化、沃化)アルキルトリメチルアンモニウムとして、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムが、塩化(または臭化、沃化)ジアルキルジメチルアンモニウムとして、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムが、また、塩化アルキルベンザルコニウムとして、塩化ラウリルベンザルコニウムがある。
【0105】
両性界面活性剤のカルボキシベタイン型には、アルキルベタインしかなく、ラウリルベタインが、その代表例である。 また、2−アルキルイミダゾリンの誘導型としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインだけであり、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが、その代表例として挙げられる。 また、グリシン型として、アルキル(またはジアルキル)ジエチレントリアミノ酢酸があり、その代表例として、ジオクチルジエチレントリアミノ酢酸がある。
【0106】
さらに、上掲のものに加えて、Triton X−100、ラウリルサルコシン、サポニン、BRIJ35、アルキルアリルポリエーテルアルコール、高級アルコール硫酸化物、N−ココイル−L−アルギニンエチルエステルDL−ピロリドンカルボン酸塩、N−ココイル−N−メチルアミノエチルスルホン酸ナトリウム、コレステロール、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、スクワラン、ステアリルアルコール、ステアリン酸ポリオキシル40、セタノール、セトマクロゴール1000、セバシン酸ジエチル、ノニルフェノキシポリオキシエチレンエタン硫酸エステルアンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ポリオキシル35ヒマシ油、マクロゴール400、N−ヤシ油脂肪酸アシルL−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩、ラウリルジメチルアミンオキシド液、ラウロマクロゴール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、CHAPS、デオキシコール酸、ジギトニン、n−ドデシルマルトシド、ノニデットP40、n−オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、ラウリル酸シュクロース、ドデシルポリ(エチレングリコールエーテル)n,n−ドデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルフォネート等も利用することができる。
【0107】
上掲の各種界面活性剤は、in situハイブリダイゼーションの工程において使用されることが重要であり、その使用方法は特に限定されない。 例えば、プローブ液またはプローブ希釈液中に混合されていてもよいし、プローブ液とは別に調製した界面活性剤を含有する溶液を、プローブ液を塗抹部位に塗布する前、同時または後に添加してもよいし、当業者は適宜変更することができる。
【0108】
なお、本発明において、必要に応じて、陽性コントロールフローブを調製することもできる。 例えば、まず、U937細胞(ATCC CRL−1593.2)のゲノムDNAの抽出と精製を行うために、37℃、5%炭酸ガスインキュベーター内で、RPMI1640培地(25ml)を入れた細胞培養フラスコ(175cm)内でU937細胞を培養する。
【0109】
U937培養液を50mlの遠沈管に入れ、4℃にて、220×gで10分間遠心分離し、U937細胞を回収する。 細胞を10mlのPBSで懸濁洗浄し、再度4℃にて、180×gで10分間遠心分離し、細胞を回収する。 その後、上清を廃棄して、細胞を1mlの200μg/mlプロテネースK含有1%SDS含有TE溶液で懸濁し、37℃で30分間放置する。 フェノール抽出を3〜4回繰り返し、除蛋白を行う。 エタノール沈殿によって析出したゲノムを回収し、500μlの2.5μgリボヌクレアーゼ含有滅菌精製水に溶解し、42℃で30分間放置する。 フェノール抽出を2〜3回繰り返し、除蛋白を行う。 エタノール沈殿によって析出したゲノムを回収し、500μlのTEに溶解する。 その後、吸光度計により濃度を測定し、ジゴキシゲニンラベルに供することにより、陽性コントロールプローブを作製することができる。
また、陽性コントロールプローブは、U937ゲノムを100ngスポットしたメンブレンに、陽性コントロールプローブをドットハイブリダイゼーションした時に、ハイブリッド形成が確認できるものを用いるのがよい。
【0110】
同様に、必要に応じて、陰性コントロールプローブを公知の方法で調製することもできる。
【0111】
その他の実施態様
本発明の検出方法を利用したカンジダ アルビカンス菌の検出および/または同定用キットも、本発明によって提供される。 本発明のキットによれば、DNAを得る工程で使用される酵素(DNA露出処理剤)が、少なくとも、ザイモラーゼを含み、その他にも、リゾスタフィン、リゾチームおよびN−アセチルムラミダーゼからなるグループから選択される1種以上の酵素を具備していてもよく、また、界面活性剤が添加されたプローブ液、それに、1種以上の検出用DNAプローブを具備している。 本発明のキットには、以下の実施例に例示するような、血液分離試薬、酵素前処理試薬、酵素試薬、アセチル化試薬、プローブ液、ブロッキング試薬、標識抗体、標識抗体希釈液、発色前処理液−1、発色前処理液−2、発色試薬、対比染色液、PBS原液、ハイブリダイゼーション原液、標識抗体洗浄液、発色試薬洗浄液、APSコートスライドグラス、プローブ希釈液、バッファーA等を利用することが可能である。 これらの内、少なくとも、酵素試薬とプローブ液とを含むことが好ましい。 また、クロロホルム、エタノール、無水酢酸、DMSO、PMSF、ホルムアミド、酢酸、塩酸、水酸化ナトリウム等の各種試薬を用いることも可能である。 さらに、低速遠心機、恒温器、血球計算盤、振とう機、湿潤箱、恒温槽、光学顕微鏡、可変式ピペット、採血管、チップ、ピペット、染色ビン、メスシリンダー、注射筒、0.2μmシリンジトップフィルターなどの器具を装備していてもよい。
【0112】
本発明によれば、生体由来の食細胞を含む臨床検体中に含まれる、食細胞によって貪食された外来微生物の遺伝子をモニターする方法が提供される。
【0113】
また、本発明によれば、原因菌の候補となる微生物の遺伝子を同定する工程を含み、同定された結果に基づいて敗血症原因菌または菌血症原因菌を特定する方法も提供される。 この方法によれば、様々な敗血症が疑われた患者血液の診断に実際に応用したところ、投与された抗菌薬の影響を受けることなく、血液培養法に比べて約4倍の感度で起因菌を検出することができ、検出菌株の一致率は良好であることが明らかになっている。 そして、血液培養では、検査に少なくとも3日以上、通常は14日程度を要するのに比較して、本発明の方法によれば全操作完了までに約8時間という極めて短時間の簡便な操作によって正確な結果を得ることができる。 従って、本発明の方法によれば、敗血症または菌血症などの、速やかに、かつ的確な対処が必要とされる感染症の診断や予後診断のモニター等において非常に有用なマーカーが提供されるのである。
【0114】
また、本発明のプローブの塩基配列情報を参照してプライマーをデザインすれば、ハイブリダイゼーションを行わなくとも、PCR法によるDNAの増幅によって、感染症原因菌の同定も可能となるのである。
【0115】
さらに、本願発明のプローブまたはその断片をDNAチップに組み込んで利用できることも明らかである。 そうすれば、DNAチップを用いて、カンジダ アルビカンス菌の存在の確定が可能となる。
【0116】
加えて、本発明で開示した塩基配列は、カンジダ アルビカンス菌のゲノミックDNAをランダムにクローニングして得られたものであり、それ故、本発明の塩基配列の有用性はその相補鎖にまで及ぶものである。 さらに、野性株が保有するDNAに変異部分が存在することは当然考えられるが、一般的に、本発明のプローブと70%程度、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上のホモロジーを有する塩基配列は、本発明の目的を達成することができると考えられるので、本発明にはこれら相同配列も当然に包含されるものである。
【0117】
臨床検体からのカンジダ アルビカンス菌の一般的な検出手順の事例を、以下に詳述する。
実施手順例
(1)  採血および血液検体の処理
臨床検体として、敗血症が疑われた患者より採取した血液検体を用いる。 各患者からヘパリン加静脈血10mlを採取し、採取した血液と血液分離試薬(塩化ナトリウム225mg、デキストラン(分子量:200,000〜300,000)1.5g、滅菌精製水にて全量25mlに調製したもの)を4:1の割合で混和した後、37℃で30分間静置することにより、白血球画分(上層)を取得する。 このようにして得た白血球画分を4℃にて160×gで10分間遠心分離することによって、白血球を得る。
次に、得られた白血球のペレットに滅菌精製水1mlを加えて懸濁し、直ちに過剰量のPBS(塩化ナトリウム18.24g、リン酸一水素ナトリウム12水和物6.012g、リン酸二水素ナトリウム2水和物1.123g、滅菌精製水にて全量120mlにしたもの(PBS原液)を滅菌精製水にて20倍に希釈したもの)を加えて等張化した後、再度4℃下で、160×gで10分間遠心分離を行う。
【0118】
(2)  白血球の固定
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS、SIGMA社)をスライドグラス(商品番号MS311BL、日本エアーブラウン社製)にコートしてなるAPSコートスライドグラスを使用する。
【0119】
APSコートスライドグラスの作製に当たって、まず、スライドホルダーにスライドグラス(MS311BL)を固定した後、希釈した中性洗剤中に30分以上浸して洗浄し、水道水で洗剤を十分に取り除き、次に、スライドグラスを精製水にて洗浄し、高温(100℃以上)で十分に乾燥させた後、室温で放置冷却する。 その後、スライドグラスを2%APS含有アセトンに1分間浸し、直ちにアセトン及び滅菌精製水で順次軽く洗浄した後、風乾する。 さらに再度、スライドグラスを2%APS含有アセトンに1分間浸し、直ちにアセトンおよび滅菌精製水で順次軽く洗浄する。 その後、風乾のための操作を行った後に、42℃で乾燥させることで、APSコートスライドグラスを作製する。
【0120】
白血球画分を、4℃にて160×gで10分間遠心分離して得た白血球ペレットに、少量のPBSを加えて懸濁し、血球計算盤を用いて白血球数を計測する。
【0121】
細胞数が1×10個/ウェルとなるようにPBSで調製した白血球懸濁液5μlを、APSコートスライドグラスの各ウェルに白血球が単層に広がるように塗抹し、完全に風乾することにより、白血球をAPSコートスライドグラスに支持させる。
【0122】
その後、カルノア固定液(エタノール:クロロホルム:酢酸=6:3:1で混合して得た固定液)に20分間浸した後、75%エタノール液に5分間浸し、完全に風乾させる。
【0123】
(3)  白血球細胞膜の透過性亢進処理
PBSに10分間浸した後、酵素前処理試薬(サポニン1.25g、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(比重1.068〜1.075(20/4℃)、pH(5w/v%) 5.5〜7.5)1.25ml、PBS原液25mlを混合し、滅菌精製水で全量を50mlに調製したもの)を滅菌精製水で10倍に希釈した溶液に浸し、振とう機で10分間振とうさせる。
【0124】
(4)  菌体壁の溶菌酵素処理
スライドグラス1枚につき酵素試薬(ザイモラーゼ200単位/ml、N−アセチルムラミダーゼ1,000単位/ml、リゾチーム100,000単位/mlおよび/またはリゾスタフィン100単位/ml)に酵素試薬溶解液(PBSで0.1mol/l フェニルメチルスルフォニルフルオライド(PMSF)含有ジメチルスルフォキシド(DMSO)を100倍希釈して調製したもの)を1ml加えて酵素試液を調製する。 その後、感染症原因菌のDNAを得るために、37℃〜42℃の湿潤箱中で、この酵素試液1mlを白血球塗抹部位に滴下し、30分間静置することによって、感染症原因菌のDNAを露出させる。 その後、0.2mol/l 塩酸含有PBS(PBS原液に塩酸を加え、滅菌精製水にて20倍希釈し、塩酸の終濃度を0.2mol/lに調製したもの)に浸し、そのまま振とう機上で10分間振とうする。
【0125】
(5)  細胞膜タンパク質のアセチル化
アセチル化試薬(トリエタノールアミン7.46gと適量の塩酸を含み、適量の滅菌精製水で全量を50mlとしたもの)に無水酢酸を加え、滅菌精製水で10倍希釈し、無水酢酸の終濃度を0.8%に調整したアセチレーション試薬にスライドグラスを浸し、振とう機上で10分間振とうする。 その後、75%、85%、98%エタノールに、順次3分間ずつ浸し、完全に風乾させる。
【0126】
(6)  菌体 DNA のアルカリ処理[二本鎖 DNA から一本鎖 DNA への変性]
スライドグラスを、70mmol/l 水酸化ナトリウム含有PBS(PBS原液に水酸化ナトリウムを加え、滅菌精製水で20倍希釈し、水酸化ナトリウムの終濃度を70mmol/l に調製したもの)に3分間浸す。 その後、75%、85%、98%エタノールに、順次3分間ずつ浸し、完全に風乾させる。
【0127】
(7)  ハイブリダイゼーション
プローブ希釈液(0.5%SDS、サケ精子DNA600μl、100×デンハート溶液50μl、ハイブリダイゼーション原液500μl、ホルムアミド2250μl、50%硫酸デキストラン1000μlが含まれる)にて調製したジゴキシゲニン標識DNAプローブ15ngを含有する液(プローブ液、1.0ng/μl)を塗抹部位に塗布し、37℃〜42℃の湿潤箱内に2時間静置させる。 ジゴキシゲニン標識DNAプローブは、ニックトランスレーション法で調製する。 その後、ハイブリダイゼーション洗浄液(ハイブリダイゼーション原液(塩化ナトリウム13.15g、クエン酸三ナトリウム2水和物6.615g、滅菌精製水にて全量75mlに調製したもの、前出)をハイブリダイゼーション原液:滅菌精製水:ホルムアミド=5:45:50の割合で混合して調製したもの)を3つの染色ビンに用意し、順次、42℃で10分間ずつ浸す。 その後、PBSに浸し、そのまま振とう機上で10分間振とうする。
【0128】
ジゴキシゲニンを標識付けしたDNAプローブは、CA−50、CA−51およびCA−69のプローブ配列を用いて、ニックトランスレーション法により調製する。
【0129】
(8)  ブロッキング
In situハイブリダイゼーションを行った後、ブロッキングの操作を行う。
【0130】
具体的には、湿潤箱内にてスライドグラス1枚につきブロッキング試薬(ウサギ正常血清2mlとPBS原液0.5mlを含み、滅菌精製水で全量を10mlに調製したもの)1mlを塗抹部位に滴下し、これを30分間静置する。 その後、ブロッキング試薬を除去する。
【0131】
(9)  標識抗体との反応
標識抗体(アルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体溶液1.05単位、バッファーA(トリエタノールアミン746mg、塩化ナトリウム17.5mg、塩化マグネシウム6水和物20.3mg、塩化亜鉛1.36mg、ウシ血清アルブミン1000mgおよび塩酸適量を含み、滅菌精製水適量で全量を100mlに調製したもの)12.6μlにて全量を14μlに調製したもの)を、標識抗体希釈液(トリス−(ヒドロキシメチル)−アミノメタン8.48mg、塩化ナトリウム6.14mgおよび適量の塩酸を含み、適量の滅菌精製水で全量を0.7mlに調製したもの)で50倍希釈した標識抗体液を調製し、この標識抗体液を塗抹部位に10μlずつ滴下し、これを30分間静置する。 その後、標識抗体洗浄液(1mlのポリソルベート20と50mlのPBS原液を含み、滅菌精製水で全量を100mlに調製したもの)を10倍に希釈した溶液に浸し、そのまま振とう機上で10分間振とうさせた。 この操作を2回繰り返した後、発色前処理液1(トリス−(ヒドロキシメチル)−アミノメタン6.06g、塩化ナトリウム2.92gおよび適量の塩酸を含み、適量の滅菌精製水で全量を50mlに調製したもの)と発色前処理液2(塩化マグネシウム6水和物5.08gを含み、滅菌精製水で全量を50mlに調製したもの)を等量混合し、滅菌精製水で5倍に希釈した発色前処理液に浸し、そのまま振とう機上で10分間振とうする。
【0132】
(10)  シグナル検出
スライドグラス1枚につき発色試薬[ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルフォスフェイト(BCIP)溶液、pH 9.0〜10.0:NBT 3.3mg、BCIP 1.65mg、N,N−ジメチルホルムアミド99μg、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン121mg、適量の塩酸、塩化ナトリウム58.4mgおよび塩化マグネシウム6水和物101.6mgを含み、適量の滅菌精製水で全量を10mlに調製したもの]1mlを、0.2μmシリンジトップフィルターを装着したディスポーザブルシリンジを用いてろ過しながら、スライドグラスの塗抹部位に滴下し、湿潤箱内で、37℃で、30分間遮光静置する。 その後、発色試薬洗浄液(トリス−(ヒドロキシメチル)−アミノメタン606mg、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム2水和物186mgおよび適量の塩酸を含み、適量の滅菌精製水で全量を50mlに調製したもの)を10倍に希釈した溶液に5分間浸し、風乾した後、対比染色液(ファストグリーンFCF(食用緑色3号)50mg、滅菌精製水にて全量50mlに調製したもの)を10倍に希釈した溶液および1%酢酸溶液に浸す。 その後、前記発色試薬洗浄液を10倍に希釈した溶液に再度浸して余分の対比染色液を洗い流し、完全に風乾させる。
【0133】
(11)  判 定
判定は、光学顕微鏡で鏡検(×1,000)した場合に、単一のウェル内の対比染色液により染まった細胞に於いて、青紫色の発色シグナルが1つでも認められた場合に「陽性」と判定する。
【0134】
【実施例】
本発明を、実施例に沿って以下に詳細かつ具体的に説明するが、これら実施例の開示に基づいて、本発明が限定的に解釈されるべきでないことは勿論である。
【0135】
実施例1:カンジダ   アルビカンス (Candida albicans) 菌検出用プローブ
(1)  カンジダ   アルビカンス菌特異的サブトラクトライブラリーの作製
カンジダ アルビカンス(Candida albicans)菌由来DNAプローブの選別は、CLONTECH PCR−Select Bacterial Genome Subtraction Kit(CLONTECH社製)を用いた。 Candida albicans(ATCC 14053)およびカンジダ トロピカリス(Candida tropicalis:ATCC 66029)ゲノムDNA 2μgをキットに添付されていた制限酵素RsaIで完全消化し、エタノール沈澱により精製し、6.5μlの滅菌蒸留水
に溶解した。 RsaI消化したCandida albicansゲノムDNA 1.2μlを滅菌蒸留
水1.8μlで希釈し、このDNA試料にキットに添付されていた2種類のアダプターをライゲートした。 反応液組成は、反応液1[DNA試料1μl、DNAライゲーションバッファー(キットに添付のもの)2μl、T4 DNAリガーゼ(キットに添付のもの)1μl、滅菌蒸留水4μl、アダプター1(キットに添付のもの)2μl]、反応液2[DNA試料1μl、DNAライゲーションバッファー2μl、T4 DNAリガーゼ1μl、滅菌蒸留水4μl、アダプター2R(キットに添付のもの)2μl]であり、16℃で一晩反応した。 次に、反応液1および反応液2にRsaI消化したカンジダ トロピカリスゲノムDNAを加えて、1回目のハイブリダ
イゼーションを行った。 反応液組成は、ハイブリダイゼーション液1[反応液1を1μl、RsaI消化カンジダ トロピカルスゲノムDNA2μl、ハイブリダ
イゼーションバッファー(キットに添付のもの)1μl]、ハイブリダイゼーション液2[反応液2を1μl、RsaI消化カンジダ トロピカリスゲノムDNA2
μl、ハイブリダイゼーションバッファー1μl]であり、ミネラルオイルを重層し、98℃で1.5分間熱変性した後、63℃で1.5時間保温した。 ハイブリダイゼーション液2を直前に熱変性したRsaIで消化したカンジダ トロピカリスゲ
ノムDNA(RsaIで消化したカンジダ トロピカリスゲノムDNA1μlにバイブ
リダイゼーションバッファー1μlを加え、98℃で1.5分間熱変性した)と混合し、さらにハイブリダイゼーション液2に加えた。 この混合液を63℃で一晩保温し、2回目のハイブリダイゼーションを行った。 一晩保温後、Dilutionバッファー200μLを加え、63℃で7分間保温した。 このハイブリダイゼーション混合液を添付のPCRプライマー1(5’−CTAATACGACTCACTATAGGGC−3’;配列番号:4)を用いて1回目のPCRを行った。 反応組成は、ハイブリダイゼーション混合液1μl、10×Ex Taqバッファー2.5μl、dNTP混合液2μl、PCRプライマー1を1μl、滅菌蒸留水18μl、Takara Ex Taq 0.5μl(以上、Takara社製)であり、PCRは、94℃で25秒間の熱変性、66℃で30秒間のアニーリング、72℃で1.5分間の伸長反応からなるサイクルを30サイクル行い、また繰り返し反応を行う前に、72℃で2分間の伸長反応、94℃で25秒間の熱変性工程を含むプログラムを実施した。
【0136】
第1回目のPCR後、nested PCRを実施した。 滅菌蒸留水で40倍に希釈した第1回目のPCRによる産物1μlを鋳型とし、プライマーとして、キットに添付されていたNested プライマー1(5’−TCGAGCGGCCGCCCGGGCAGGT−3’;配列番号:5)およびNested プライマー2R(5’−AGCGTGGTCGCGGCCGAGGT−3’;配列番号:6)を用いて、第1回目のPCRと同様の反応組成で行った。 PCRは、94℃で10秒間の熱変性、68℃で30秒間のアニーリング、72℃で1.5分間の伸長反応からなるサイクルを10サイクル行い、また繰り返し反応を行う前に、94℃で25秒間の熱変性工程を含むプログラムを実施した。 以上のPCR反応は、Takara PCR Thermal CyclerPERSONAL(Takara社製)により行った。 得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動によって確認した後、バンドをゲルより切り出し、GENECLEAN IIキット(BIO101社製)を用いて精製した。 精製したDNA断片は、pT7Blueベクター(Novagen社製)に組み込んだ。 組み換えたベクターは、コンピテントセルJM109細胞(Takara社製)に形質転換し、カンジダ アルビカンス菌特異的サブトラクトライブラリーとした。
【0137】
(2)  カンジダ   アルビカンス菌特異的クローンの選抜
得られたライブラリーからカンジダ アルビカンス菌に特異的なクローンを選抜するために、以下の方法によって、各種真菌DNAとの反応性を検討した。 形質転換体を100μg/mlアンピシリンを含むLB培地で培養し、アルカリSDS法によりプラスミドDNAを抽出した。 得られたプラスミドDNAを鋳型とし、ジゴキシゲニン−dUTPを用いてラベルした。 反応組成は、プラスミドDNA 50ng、10×Ex Taqバッファー5μl、PCR Dig Labeling Mix(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)5μl、Nestedプライマー1を1μl、Nestedプライマー2を1μl、滅菌蒸留水17μl、Takara Ex Taq 0.5μlであり、PCRは、94℃で30秒間の熱変性、55℃で30秒間のアニーリング、72℃で1分間の伸長反応からなるサイクルを35サイクル行い、また繰り返し反応を行う前に、96℃で1分間の熱変性工程を含むプログラムを実施した。 得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動後、バンドをゲルより切り出し、SUPREC−01(Takara社製)を用いて精製し、DNAプローブとした。
【0138】
各種真菌ゲノムDNA 50ngをPALL Biodyne Bメンブレン(PALL社製)にスポットし、風乾した後、0.5M NaCl、1.5M NaClで10分間アルカリ変性し、0.5M Tris−HCl (pH 7.5)、1.5M NaClで10分間中和して風乾したものを、ドットブロットハイブリダイゼーションの試料とした。 メンブレンをExpressHybハイブリダイゼーション溶液(CLONTECH社製)で、68℃で、1時間インキュベートした後、10ng/ml DNAプローブを含むExpressHybハイブリダイゼーション溶液で、60℃で、終夜ハイブリダイゼーションを実施した。 終夜ハイブリダイゼーション後、メンブレンを2×SSC、0.1%SDSで5分間2回洗浄し、60℃で、0.2×SSC、0.1%SDSによる 15分間の洗浄を2回行った。 バッファー2[1%ブロッキング試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)、100mM Tris−HCl(pH 7.5)、150mM NaCl]で30分間インキュベートした後、抗ジゴケシゲニン抗体希釈液[抗ジゴケシゲニン抗体(ロシュ・ダイアグノスティックス社製をバッファー2で5000倍希釈したもの)]で30分間インキュベートした。 バッファー1[100mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl]で15分間2回洗浄し、バッファー3[100mM Tris−HCl(pH9.5)、100mM NaCl、50mM MgCl]で平衡化した。 NBT/BCIP(GIBCO BRL社製)でインキュベートし発色させた後、TEバッファーで反応を停止した。
【0139】
その結果、カンジダ アルビカンス菌に特異的に反応するクローンを選抜し、これらをプローブCA−50、CA−51、CA−69と命名した。
【0140】
(3)  塩基配列の決定
プローブCA−50(配列番号:1)、CA−51(配列番号:2)、CA−69(配列番号:3)の塩基配列の決定は、以下のように実施した。
【0141】
すなわち、DYEnamic ET Terminator Cycle Sequencing Kit(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いてシークエンシング反応を行い、ABI PRISM 377 DNA Sequencer(Applied Bio System社製)で解析し、塩基配列を決定した。 シークエンシング反応液組成は、プラスミドDNA 500ng、プレミックス8μl、プライマー3μlを滅菌蒸留水で20μlとしたものであり、95℃で20秒間、50℃で15秒間、60℃で1分間を30サイクル行った。 プライマーは、Universal Cycleプライマー(5’−GTTTTCCCAGTCACGA−3’;配列番号:7)、M13 Reverse プライマー(5’−CAGGAAACAGCTATGAC−3’;配列番号:8)および合成プライマーを用いた。
【0142】
実施例2:各プローブの特異性の検討
実施例1で選抜した各プローブと各種感染症原因菌株のDNAとの反応性を、以下の方法により検討した。
【0143】
まず、検討対象菌株として、下記表3に列挙した臨床分離株および寄託菌株を準備(全64種類)した。 表3に示した各種細菌および真菌ゲノムDNA50ngをメンブレンにスポットし、ドット・ブロット・ハイブリダイゼーション法により各プローブの特異性の検討を行った。 具体的には、各臨床菌株または寄託菌株に関して、実施例1に記載の方法に従って、各菌株が保有するDNAを抽出し、抽出したDNAの一定量(例えば、約10〜約100ng)をナイロンフィルターにスポットして、アルカリ変性したものをドット・ブロット・ハイブリダイゼーションの試料とした。 次いで、Digoxigenin−11−dUTP(BRL社製)でラベルしたプローブで、マニアティスのマニュアル(T. Maniatis, et al., Molecular Cloning(A Laboratory Manual Second Edition), Cold Spring Harbour Laboratory (1989))に従い、45%ホルムアミド、5×SSC、42℃の条件下で、終夜ハイブリダイゼーションを実施した。 終夜ハイブリダイゼーションを終えた試料に関して、同マニュアルに従い、55℃にて0.1×SSC、0.1%SDSによる20分間の洗浄を2回行った後に、Anti−Dig−ALP conjugates(BRL社製)で検出および発色させ、ハイブリダイゼーションの状況を確認した。 表3に示した結果から明らかなように、CA−50、CA−51、CA−69のいずれもが、カンジダ アルビカンス菌のゲノムDNAに対してのみ特異的に反応することが確認された。
【0144】
【表3A】
Figure 2004089046
【0145】
【表3B】
Figure 2004089046
【0146】
同様に、表3に示した結果から、いずれのプローブもカンジダ アルビカンス菌に由来するDNAに対してのみ反応性を示し、他の菌種由来のDNAに対して反応性(ハイブリッドの形成)が認められず、その特異性が確認された。
【0147】
実施例3:各プローブの種特異性の検討
実施例1で選抜した各プローブとカンジダ属およびその他真菌のDNAとの反応性を、以下の方法により検討した。
【0148】
まず、検討対象菌株として、下記表4に列挙した臨床分離株および寄託菌株を準備(全17種類)した。 表4に示したカンジダ属およびその他真菌ゲノムDNA 50ngをメンブレンにスポットし、実施例2に示した方法により各プローブの特異性の検討を行った。 その結果、表4に示す様に、CA−50、CA−51、CA−69のいずれもが、カンジダ アルビカンス菌のゲノムDNAにのみ特異的に反応することが確認された。
【0149】
【表4】
Figure 2004089046
【0150】
表4に示した結果から明らかなように、いずれのプローブもカンジダ アルビカンス菌に由来するDNAに対してのみ反応性を示し、カンジダ属の他の菌種由来のDNAに対して反応性(ハイブリッドの形成)が認められず、その種特異性が確認された。
【0151】
実施例4:塗抹固定する至適白血球数(貪食細胞数)の検討
APSコートスライドグラスのウェル(直径5mmの円形ウェル)に塗抹する至適白血球数の検討を行った。
【0152】
ヘパリン加健常ヒト血液10mlを採取し、前出の実施手順例(1)の記載に従って白血球を採取した。 次に、得られた白血球を、適量のPBSを用いて懸濁した後、血球計算盤を用いて1ml当たりの白血球数を測定し、(a)1×10個/mlを始点として、(b)5×10個/ml、(c)1×10個/ml、(d)5×10個/ml、(e)1×10個/ml、(f)5×10個/ml、および(g)1×10個/mlの希釈系列を調製した後、各々5μlをスライドグラスに塗抹した。 風乾した後、カルノア固定(実施手順例(2)参照)を行い、直ちに対比染色液で染色し、実施手順例(11)に記載した方法を用いて判定を行った。
【0153】
その結果、細胞数が1×10個/mlでは細胞数が過剰であり、検出不適であった。 また、5×10個/ml以下では、ウェルに観察される細胞数が少なく、検出不適であった。 よって、固定化する食細胞の密度(x個/ml)が、5×10個/ml<x個/ml<1×10個/ml、好ましくは、1×10個/ml≦x個/ml≦5×10個/mlに調製したものを使用するのが好ましいことが判明した。 また、これに対応して、APSコートスライドグラスに固定される1ウェル当たりの白血球の細胞数(y個/ウェル(直径5mm))は、2.5×10個/ウェル<y個/ウェル<5×10個/ウェル、好ましくは5×10個/ウェル≦y個/ウェル≦2.5×10個/ウェルとなるように調製するのがよいことも判明した。
【0154】
実施例5:溶菌酵素ザイモラーゼの至適力価の検討
カンジダ アルビカンス菌を溶菌して、そのDNAを得るためのザイモラーゼの至適力価を検討した。
【0155】
カンジダ アルビカンス菌をYPD培地に植菌し、30℃で一昼夜培養した。 その後、基質としてカンジダ アルビカンス菌をPBSにて懸濁した溶液(基質1)と、カルノア固定した後に、70%エタノールに浸し、風乾し、PBSにて懸濁した溶液(基質2)の2種類を調製した。
【0156】
反応は、ザイモラーゼ/PBSを0.5ml、基質を1.5ml、そしてM/15リン酸緩衝液を2.5mlを含み、0.5mlの滅菌精製水で全量を5.0mlに調製したものを用いた。 その後、37℃で、2時間反応させ、OD800を測定した。 また、ザイモラーゼ(ザイモリエイス−100T)濃度として、0mg/ml、0.01mg/ml、0.025mg/ml、0.05mg/ml、0.1mg/ml、0.25mg/ml、0.5mg/ml、1mg/ml、2.5mg/ml、5mg/mlのものを用いた。
【0157】
その結果、基質1を用いた場合のそれぞれのOD800値は、0.533、0.521、0.553、0.554、0.548、0.417、0.394、0.288、0.163、0.113であり、基質2を用いた場合のそれぞれのOD800値は、0.445、0.411、0.359、0.282、0.232、0.146、0.115、0.096、0.08、0.057であった。 基質1および基質2共に、0.5mg/ml〜5mg/ml、特に、1mg/ml〜5mg/mlの濃度範囲が有効であることが判明した。
【0158】
すなわち、ザイモラーゼの使用量は、50単位/ml〜500単位/ml、特に100単位/ml〜500単位/mlであることが好ましい。 また、菌が特定できていない臨床検体を使用する場合には、真菌である場合も考慮してザイモラーゼを適宜添加するのが好ましい。
【0159】
実施例6:カンジダ   アルビカンス菌の貪食サンプルからの検出
(1)  貪食サンプルの作製
(i)  U937細胞の調製
37℃、5%炭酸ガスインキュベーター内で、RPMI 1640培地(25ml)を入れた細胞培養フラスコ(175cm)内でU937細胞(ヒト単球株化細胞、ATCC CRL−1593.2)を培養した。 次に、U937細胞培養液を50mlの遠沈管に入れ、4℃、220×gで10分間遠心分離し、U937細胞を回収した。 その後、回収したU937細胞を、200μlのPBSで懸濁し、血球計算盤で細胞数を計算し、細胞数を約1×10個/μl〜約2×10個/μlに調製した。
【0160】
(ii)  細菌貪食サンプルの調製
カンジダ アルビカンス菌を、5mlのYPD培養液に植菌し、37℃で8時間以上培養した。 培養した菌液を、4℃、2,000×gで10分間遠心分離して集菌した。
【0161】
上清を捨てた後、菌のペレットを5mlのPBSで懸濁し、再度4℃、2,000×gで10分間遠心分離して集菌した。 集菌した菌を5mlのPBSで懸濁した後、PBSにて希釈して、吸光度計により菌液の濁度(O.D.=600nm)を、0.016〜0.024にしたものを15ml調製した。 こうして得られた菌液を、175cmの培養用フラスコに移し、30分間室温で静置した。
【0162】
ヘパリン加健常ヒト血液50mlを採取し、血球分離試薬を4:1の割合で加え、37℃で30分間静置し、白血球画分を分取し、これをPBSで50mlにした。 培養用フラスコ内の上清を静かに捨て、PBSで希釈した白血球画分を10mlずつフラスコに加え、室温で10分間静置した。 培養用フラスコ内の上清を捨て、フラスコの底に付着した白血球を0.02%EDTA含有PBS 10mlで15mlの遠沈管に回収し、4℃、140×g〜180×gで10分間遠心分離し、白血球を収集した。 収集した白血球に赤血球の混入が認められたので、1mlの滅菌精製水にて白血球の沈渣を穏やかに懸濁して溶血させた後、PBSを14ml加えて等張化し、再度4℃、140×g〜180×gで10分間遠心分離を行い、白血球を収集した。 収集した白血球をPBSで懸濁し、血球計算盤にて細胞数を計測し、1×10個/μl〜5×10個/μlの密度に調製した。
【0163】
こうして得られた貪食サンプルを、CA貪食サンプルとした。
【0164】
当該貪食サンプルの利点は、▲1▼ カンジダ アルビカンス菌が検出される臨床検体の入手が困難であり、そのため本発明のプローブの特異性評価などの各種試験ができないという問題点を、臨床検体の代わりに人為的に作製した当該貪食サンプルを使用することにより回避できる、▲2▼ 本発明のプローブまたはキット等の特異性試験、感度試験、再現性試験などの性能試験に利用できる、そして、▲3▼貪食サンプルで得られた各種試験結果を、臨床検体に適用できる、ことなどが挙げられる。
【0165】
(iii)  塗抹固定
(i)で得たU937細胞と、(ii)で調製した各細菌貪食サンプルを、APSコートスライドグラスの各ウェルに5μlずつ塗抹し、風乾させた。
【0166】
次に、実施例4(2)に記載のカルノア固定液にスライドグラスを20分間浸した後、75%エタノールに5分間浸し、カルノア固定液を洗浄して風乾させた後、試験に使用するまで4℃で保存した(実施手順例(2)参照)。 次いで、固定サンプルの前処理を、実施手順例(3)に記載の手順に従って行った。
【0167】
(2)  貪食サンプルの規格及び試験方法
(i)  細胞数
各細菌貪食サンプルのスライドグラスに塗抹固定すべき細胞数を、約5.0×10〜約2.5×10個/ウェルとし、また、U937細胞の細胞数を、約5.0×10〜約1.0×10個/ウェルとした。
【0168】
(ii)  貪食率
スライドグラスに塗抹固定した細菌貪食サンプルをアクリジンオレンジ染色液で染色し、蛍光顕微鏡(×1,000)で無作為に約200個の細胞を計測した。
【0169】
計測した細胞の中で、細胞内に細菌を貪食している細胞を陽性細胞とし、以下の数式に従って貪食率を算出した。
【0170】
【数1】
Figure 2004089046
【0171】
この時に算出したCA貪食サンプルの貪食率(%)は、10%以上であった。
【0172】
(3)  試験方法
実施例7(1)および(2)に記載の方法で調製した貪食サンプルを検体とした。
【0173】
使用したCA貪食サンプルの貪食率は16%であり、約1.3×10個/ウェルであった。 貪食サンプルを塗抹したスライドグラスを用いて、実施手順例(2)〜(11)に記載の方法に従って各プローブの特異性を検討した。 プローブCA−50の結果を図1に、プローブCA−51の結果を図2に、そして、プローブCA−69の結果を図3にそれぞれ示した。 また、プローブCA−50、CA−51およびCA−69を混合した場合の特異性の結果を、図4に示した。
【0174】
(4)  結 果
プローブCA−50、CA−51およびCA−69のいずれもが、貪食細胞中に取り込まれたカンジダ アルビカンス菌由来のDNAと特異的にハイブリダイズすることが判明した。 また、混合プローブ(プローブCA−50、CA−51およびCA−69の混在体)においては、単独プローブに比較して強いシグナルが得られることが判明した。 このことから、使用するプローブは複数種混合して使用するのが好ましいことが明らかとなった。
【0175】
貪食サンプルで得られた結果は、臨床検体にも適用できるので、本発明のプローブは、臨床検体においても有用であることが証明された。
【0176】
実施例7:真菌以外の菌種に対する溶菌酵素の選択
スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus:ATCC 12600)、スタフィロコッカス エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis:ATCC 14990)、シュードモナス アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa:ATCC 10145)、エンテロコッカス フェカーリス(Enterococcus faecalis:ATCC 19433)、エシェリキア コリ(Escherichia coli:ATCC 11775)を溶菌するための酵素条件を検討した。
【0177】
スタフィロコッカス アウレウスおよびスタフィロコッカス エピデルミディスに対しては、溶菌酵素としてリゾスタフィン(Bur. J. Biochem., 38, 293−300,1973)を使用した。 また、エンテロコッカス フェカーリスに対しては、N−アセチルムラミダーゼ(Archs. Oral Biol., 23, 543−549, 1978)とリゾチーム(生化学工業)を使用した。 また、シュードモナス アエルギノーザおよびエシェリキア コリについては、70mmol/l の水酸化ナトリウム含有PBS(前出)を使用した。
【0178】
上記各種細菌を、5mlのBHI液体培地(ブレインハートインフュージョン液体培地(DIFCO社製))に植菌し、37℃で、8時間以上培養した。 培養した菌液を、4℃、2,000×gで10分間遠心分離して集菌した。 このようにして集めた菌をPBSに懸濁し試料とした。 溶菌は、マイクロプレートリーダーを用い、吸光度600nmにおける菌液の濁度の減少により評価した。
【0179】
その結果、スタフィロコッカス アウレウスおよびスタフィロコッカス エピデルミディスは、リゾスタフィンによって溶菌した。 シュードモナス アエルギノーザおよびエシェリキア コリについては、70mmol/l の水酸化ナトリウム含有PBS(前出)によって溶菌したため、酵素処理は不要であった。 また、エンテロコッカス フェカーリスについては、N−アセチルムラミダーゼ単独よりも、リゾチームと併用した方が優れた溶菌活性が得られることが判明した。 また、貪食作用を受けて取り込まれた菌が、例えば、シュードモナス アエルギノーザおよびエシェリキア コリなどである場合には、アルカリ処理に際して菌の細胞壁が溶解され、遺伝子が露出した状態となるので、必ずしもこの酵素処理を行う必要はない。 また、アルカリ処理は、実施手順例(6)に記載の手順に従って行うこともできる。 しかしながら、確実に菌の細胞壁を溶解するのであれば、酵素処理を行う方がよいと考えられる。
【0180】
本発明において外来微生物を溶解するために使用される前処理用の各酵素は、前述したような細菌株に対して有効であるのみならず、他のスタフィロコッカス(Staphylococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、バシルス(Bacillus)属およびミクロコッカス(Micrococcus)属を初めとする他の菌種等でも有効である。 また、かような酵素は、ザイモラーゼに加えて、各々単独で用いることもできる。 さらに、菌が特定できていない臨床検体を使用する場合、またはキットに酵素を付属させる場合には、酵素試薬を構成する酵素を複数混合するのが有効であり好ましい。
【0181】
なお、図5に、(a) スタフィロコッカス アウレウスおよびスタフィロコッカス エピデルミディス、(b) シュードモナス アエルギノーザおよびエシェリキアコリ、ならびに(c) エンテロコッカス フェカーリスに関して実施した試験結果を示した。
【0182】
実施例8:酵素溶解液でのジメチルスルフォキシド (DMSO) の至適濃度の検討
酵素試薬に含有されるプロテアーゼは白血球の形態を劣化させるので、白血球の形態を保持させるために添加するPMSFの溶解剤である、ジメチルスルフォキシド(DMSO)の酵素活性に及ぼす影響を検討した。
【0183】
エンテロコッカス フェカーリスを50mlのBHI液体培地(前出)に植菌し、37℃で8時間以上培養した。 この培養液を、4℃で、2,000×gで10分間遠心分離して集菌し、PBSにて懸濁した後、オートクレーブ(120℃、10分)で熱処理を行った。 次に、4℃で、2,000×gで10分間遠心分離し、上清を捨て、1mlのPBSで沈渣を懸濁させた後、凍結乾燥させた。 この凍結乾燥試料を、0〜10%DMSO含有5mmol/l トリス−塩酸(pH 6.0)、2mmol/l 塩化マグネシウムで懸濁し、N−アセチルムラミダーゼに対する試料とした。 また、ミクロコッカス ルテウス(Micrococcus luteus:JCM 1464)を、5mlのBHI液体培地(前出)に植菌し、37℃で8時間以上培養した。 培養した菌液を4℃で、2,000×gで10分間遠心分離して集菌した。 上清を捨て、菌のペレットを5mlのPBSで懸濁洗浄し、再度4℃にて、2,000×gで、10分間遠心分離して集菌した。
【0184】
このようにして集めた菌を、0〜10%DMSO含有PBSで懸濁し、リゾチームに対する試料とした。 一方、スタフィロコッカス エピデルミディスをリゾチームの場合と同様にして培養、集菌し、0〜10%DMSO含有PBSで懸濁し、リゾスタフィンに対する試料とした。
【0185】
酵素活性は、マイクロプレートリーダーを用い、吸光度600nmにおける試料の濁度の減少により評価した。 ただし、本試験でのそれぞれの酵素力価は、(a) N−アセチルムラミダーゼ 300単位/ml、(b) リゾチーム 10,000単位/ml、(c) リゾスタフィン50単位/mlとし、酵素活性に対するDMSOの影響を検討した。 それぞれの酵素活性を、単位時間当たりにおける菌濁度(O.D.=600nm)の減少で評価した結果、DMSOは、N−アセチルムラミダーゼ活性に対しては殆ど影響を与えなかったが、リゾチームおよびリゾスタフィンに対しては、共に5%以上のDMSOで活性の低下が認められた。 また、2%以下のDMSOの濃度では、酵素活性の低下は認められなかった。 ゆえに、PMSFを溶解させるDMSO濃度は少なくとも5%未満、好ましくは2%以下、さらには1%程度とするのが好ましい。 また、上記設定した濃度においてはザイモラーゼの活性に何ら悪影響を与えなかったので、ザイモラーゼに対するDMSOの濃度も同一とした。
【0186】
その検討結果を、図6(a)〜(c)および下記表5に示した。
【0187】
【表5】
Figure 2004089046
【0188】
実施例9:酵素溶解液でのフェニルメチルスルフォニル
フルオライド (PMSF) の至適濃度の検討   
酵素試薬に含有されるプロテアーゼは、白血球の形態を劣化させるので、白血球の形態を保持させるために添加するフェニルメチルスルフォニルフルオライド(PMSF:PIERCE社製)の効果を検討した。
【0189】
100μlのジメチルスルフォキシド(DMSO:和光純薬社製)にPMSFを溶解し、PMSFの終濃度が0(無添加)〜1mmol/l となるようにPBSで10mlに希釈した。 この溶液に、プロテアーゼの力価が0.2単位/mlとなるよう、プロテイネースK(ベーリンガーマンハイム社製)を添加した。 ヘパリン加健常ヒト血液5mlを採取し、実施手順例(1) に記載の方法に従って白血球を採取した。 次に、白血球を適当量のPBSで懸濁して、血球計算盤で細胞数を計測し、細胞数を、約5×10〜約2.5×10個/ウェルに調製し、その5μlをAPSコートスライドグラスのウェルに塗抹し、風乾した後、実施手順例(2)に記載のカルノア固定法に従って固定した。
【0190】
このサンプルを用いて、実施手順例(3)および(4)に記載の方法に従って試験を行った。 1μmol/l 〜1mmol/l のPMSFの濃度で試験を実施した結果、10μmol/l 以上の濃度で効果が認められ、0.1mmol/l 以上のPMSF濃度では、白血球の形態の劣化が完全に抑制されていた。
【0191】
その結果を、プロテアーゼ0.2単位/mlのみ(図7(a))、PMSF1μmol/ml添加(図7(b))、PMSF 10μmol/ml添加(図7(c))、PMSF 0.1mmol/ml添加(図7(d))、およびPMSF 1mmol/ml添加(図7(e))に、それぞれ示した。
【0192】
実施例 10 :溶菌酵素(酵素試薬)の至適酵素処理条件[力価]の検討
(1)  貪食サンプルの作製
(i)  U937細胞の調製
実施例6(1)(i)に記載の方法により U937細胞を調製した。
【0193】
(ii)  細菌貪食サンプルの調製
スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus:ATCC 12600)、スタフィロコッカス エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis:ATCC 14990)、シュードモナス アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa:ATCC 10145)、エンテロコッカス フェカーリス(Enterococcus faecalis:ATCC 19433)、エシェリキア コリ(Escherichia coli:ATCC 11775)を、各々5mlのBHI培養液に植菌し、37℃で8時間以上培養した。 その後、実施例6(1)(ii)に準じて、それぞれSA貪食サンプル、SE貪食サンプル、PA貪食サンプル、EF貪食サンプル、EK貪食サンプルを作製した。
【0194】
(iii)  塗抹固定
実施例6(1)(iii)に準じて行った。
【0195】
(2)  貪食サンプルの規格及び試験方法
(i)  細胞数
実施例6(2)(i)と同様とした。
【0196】
(ii)  貪食率
実施例6(2)(ii)と同様にして算出した。 この時に得られた各細菌貪食サンプルの貪食率(%)は、10%以上であった[図8で矢印にて示す、貪食に特徴的な形態変化が認められた細胞]。
【0197】
(3)  試験方法
実施例10(1)および(2)に記載の方法で調製した貪食サンプルを検体とした。
【0198】
使用したSA貪食サンプルの貪食率は23%であり、約1.98×10個/ウェルであった。 SE貪食サンプルの貪食率は27%であり、約1.74×10個/ウェルであった。
【0199】
また、EF貪食サンプルの貪食率は34%であり、約6.40×10個/ウェルであった。 各貪食サンプルを塗抹したスライドグラスを用いて、実施手順例4(3)に記載の方法に従って酵素前処理を行った。 次に、酵素前処理済みのスライドグラスを湿潤箱に置き、各種力価に調製した各酵素溶液1mlを検体塗抹部位に滴下して反応させた。 その後、0.2mol/l 塩酸含有PBS、70%エタノールにそれぞれ10分間浸し、風乾させた。 このスライドグラスを70mmol/l 水酸化ナトリウム含有PBSに3分間、70%エタノールに10分間浸した後に風乾し、1%アクリジンオレンジ染色液で染色した。 その後、蛍光顕微鏡(×1,000)により評価した。
【0200】
スタフィロコッカス アウレウスおよびスタフィロコッカス エピデルミディスは、リゾスタフィンで至適力価の検討を行った。 エンテロコッカス フェカーリスは、N−アセチルムラミダーゼとリゾチームの併用で至適力価を検討するため、N−アセチルムラミダーゼを100単位/mlに固定した場合のリゾチーム至適力価の検討と、リゾチームを10,000単位/mlに固定した場合のN−アセチルムラミダーゼ至適力価の検討を行った。 判定は、酵素処理することで菌体が白血球内で確認されなくなった事例について「適」とした。
【0201】
(4)  結 果
スタフィロコッカス アウレウスの溶菌においては、リゾスタフィンの力価は1単位/mlで十分効果を示すが、スタフィロコッカス エピデルミディスの溶菌には、10単位/ml以上のリゾスタフィン力価が必要であった(表6)。 従って、リゾスタフィンの至適力価を、10単位/ml〜100単位/mlに設定した。
【0202】
【表6】
Figure 2004089046
【0203】
また、エンテロコッカス フェカーリスの溶菌においては、リゾチームの力価を10,000単位/mlで固定したとき、N−アセチルムラミダーゼ力価が10単位/ml以下では溶菌されなかった(表7)。 リゾチームについては、N−アセチルムラミダーゼ力価を100単位/mlに固定した場合、リゾチーム力価が1,000単位/ml以下では溶菌されなかった(表7)。 従って、N−アセチルムラミダーゼの至適力価は100単位/ml〜1,000単位/ml、リゾチームの至適力価は10,000単位/ml〜100,000単位/mlに設定した。 また、シュードモナス アエルギノーザに対しても、同様の力価で使用することができる。
【0204】
【表7】
Figure 2004089046
【0205】
実施例10(3)で「適」と判定した一例を、図9に示す。 図9において、(a) は酵素処理前のスタフィロコッカス アウレウスの貪食サンプル、(b) は酵素処理前のエンテロコッカス フェカーリスの貪食サンプル、(c) はサンプル(a)を酵素処理した後、そして、(d)はサンプル(b)を酵素処理した後の様子をそれぞれ示している。
【0206】
貪食サンプルを用いて得られたこれら結果を臨床検体に応用したところ、同様の結果を得ることができた。 それ故、本発明の臨床検体の感染症原因微生物同定における上記各酵素の至適力価も同様とした。
【0207】
実施例 11 :溶菌酵素(酵素試薬)の至適酵素処理条件[温度]の検討
各貪食サンプルを塗抹したスライドグラスを用いて、実施例10(3)に記載の方法に準じて酵素試薬の至適温度を検討した。 ただし、本試験の酵素処理時間を30分、検討温度は、4℃、25℃、37℃、42℃、60℃とし、各酵素力価は、N−アセチルムラミダーゼ(100単位/ml、生化学工業社製)、リゾチーム(10,000単位/ml、生化学工業社製)、リゾスタフィン(10単位/ml、SIGMA社製)とした。
【0208】
各酵素は、実施例7に記載の通り、対象となる菌に対応したものを使用した。
【0209】
使用したSA貪食サンプルの貪食率は22%であり、約1.12×10個/ウェルであった。 SE貪食サンプルの貪食率は29%であり、約1.62×10個/ウェルであった。また、EF貪食サンプルの貪食率は23%であり、約1.38×10個/ウェルであった。
【0210】
判定は、実施例10(3)に記載の方法に準じて行った。 その結果、スタフィロコッカス アウレウスは、4℃〜60℃の温度範囲において、白血球の菌体は確認されなかった。 また、スタフィロコッカス エピデルミディスは、処理温度4℃および25℃では白血球中の菌体が残存していたが、37℃以上では菌体が確認されなかった。 そして、エンテロコッカス フェカーリスでは、処理温度4℃、25℃および60℃で菌体が残存していたが、37℃および42℃では菌体の残存が確認されなかった。
【0211】
これらのことから、至適酵素処理温度を37℃〜42℃に設定した。
【0212】
なお、実施例6に記載の方法に準じてCA貪食サンプルを作製し、ザイモラーゼの温度条件をこれと同一にしたところ、好ましい結果が得られたので、ザイモラーゼの至適温度もこれと同一に設定した。 その結果を、表8に示した。
【0213】
【表8】
Figure 2004089046
【0214】
貪食サンプルを用いて得られたこれら結果を臨床検体に応用したところ、同様の結果を得ることができた。 それ故、本発明の臨床検体の感染症原因微生物同定における酵素処理の至適温度も同様とした。
【0215】
実施例 12 :溶菌酵素(酵素試薬)の至適酵素処理条件[時間]の検討
実施例10(1)および(2)に記載の方法で作成した貪食サンプルを検体として、溶菌酵素の至適酵素処理時間を検討した。
【0216】
検討した時間は、0分、10分、20分、30分、60分、120分とした。
【0217】
各酵素は、実施例7に記載の通り、対象となる菌に対応したものを使用した。
【0218】
使用したSA貪食サンプルの貪食率は18%であり、約7.80×10個/ウェルであった。 SE貪食サンプルの貪食率は34%であり、約1.10×10個/ウェルであった。また、EF貪食サンプルの貪食率は28%であり、約1.30×10個/ウェルであった。
【0219】
各貪食サンプルを塗抹したスライドグラスを用いて、実施例10(3)に記載の方法に準じて検討した。 ただし、本試験の酵素処理温度は37℃、各酵素力価はN−アセチルムラミダーゼ(100単位/ml)、リゾチーム(10,000単位/ml)、リゾスタフィン(10単位/ml)とした。
【0220】
判定は、実施例10(3)に記載の方法に準じて行った。 その結果、スタフィロコッカス アウレウス、スタフィロコッカス エピデルミディス、エンテロコッカス フェカーリス貪食サンプルのいずれもが、酵素処理時間20分以上(0分および10分においては「不適」であった)で、白血球中に菌体は確認されなかったことから、少なくとも15分以上、好ましくは20分以上、さらに至適酵素処理時間を30分〜60分とするのが好ましい、ことが明らかとなった。
【0221】
なお、実施例6に記載の方法に準じてCA貪食サンプルを作製し、ザイモラーゼの処理時間条件をこれと同一にしたところ、好ましい結果が得られたので、ザイモラーゼの至適時間もこれと同一に設定した。 その結果を、表9に示した。
【0222】
【表9】
Figure 2004089046
【0223】
貪食サンプルを用いて得られたこれら結果を臨床検体に応用したところ、同一の結果を得ることができた。 それ故、本発明の臨床検体の感染症原因微生物同定における酵素処理の至適時間も同一とした。
【0224】
実施例 13 :プローブ濃度の検討
本発明のin situハイブリダイゼーション反応において、プローブ濃度は、ハイブリッド形成速度に影響を与える主要な因子である。 プローブ濃度が低すぎると反応速度の低下を招き、シグナルが明確でなくなる可能性がある。 また、過剰量のプローブの使用は、非特異的反応を招きかねない。 それ故、各種プローブ液について、至適濃度を検討した。
【0225】
まず、実施例10(1)および(2)に記載の方法で調製した貪食サンプルを検体とした。 使用したSA貪食サンプルの貪食率は24%であり、約1.48×10個/ウェルであった。 SE貪食サンプルの貪食率は28%であり、約2.07×10個/ウェルであった。 PA貪食サンプルの貪食率は18%であり、約1.50×10個/ウェルであった。また、EF貪食サンプルの貪食率は24%であり、約1.72×10個/ウェルであった。EK貪食サンプルの貪食率は12%であり、約1.63×10個/ウェルであった。
【0226】
各貪食サンプルを塗抹したスライドグラスを用いて、実施例10(3)に記載の方法に準じて検討した。 プローブとして、ジゴキシゲニン標識したものを使用し、スタフィロコッカス アウレウス(SA−24、SA−36、SA−77の混合物)、スタフィロコッカス エピデルミディス(SE−3、SE−22、SE−32の混合物)、エンテロコッカス フェカーリス(EF−1、EF−7、EF−27の混合物)、シュードモナス アエルギノーザ(PA−2−31、PA−13−3の混合物)、エシェリキア コリ(EC−24、ET−49、KI−50の混合物)に対する各プローブ濃度を、それぞれ0.04ng/μl、0.4ng/μl、1.2ng/μl、1.8ng/μl、2.4ng/μl、3ng/μlに調製した(日本国特許第2798499号参照)。
【0227】
貪食サンプルを塗抹したスライドグラス(図10参照)に、上記の各種濃度に調製したプローブ液を使用し、実施手順例(3)〜(11)に記載の方法に従って検討した。 ただし、使用したプローブは、各菌に対応したものを使用した。 また、実施例10(4)に示した力価の酵素を3種類混合して用いた。
【0228】
その結果、低濃度(0.06ng/μl)ではシグナルが明確でなくなり、高濃度(2.4ng/μlおよび3ng/μl)ではバックグラウンドの増大が認められた。  また、0.06ng/μlにおいては「不適」であり、0.6ng/μlにおいては「適」であったことから、少なくとも0.1ng/μl以上とするのが好ましい。 さらに、2.4ng/μlでは「不適」であり、1.8ng/μlでは「適」であったことから、2.2ng/μl以下の濃度とすることが、好ましいことが明らかとなった。 それ故、SA、SE、PA、EF、EKのプローブ濃度を、0.1〜2.2ng/μl、好ましくは0.6〜1.2ng/μlとした。
【0229】
なお、実施例6に記載の方法に準じてCA貪食サンプルを作製し、本発明のカンジダ アルビカンスに対するプローブについて2.0ng/μlのプローブ濃度で試験したところ、「適」であることを証明している。
【0230】
貪食サンプルを用いて得られたこれら結果を臨床検体に応用したところ、同様の結果を得ることができた。 このことから、本発明の臨床検体の感染症原因微生物同定における上記各プローブの至適濃度も同様とした。
【0231】
実施例 14 :ハイブリダイゼーション温度の検討
ハイブリダイゼーション反応における反応温度は、ハイブリッド形成速度とハイブリッドの安定性に影響を与えるパラメーターである。 ハイブリダイゼーション反応を高温下で行うと、細胞の形態が劣化することが知られていることから、至適温度の検討(4℃、25℃、37℃、42℃、50℃、60℃)を行った。
【0232】
まず、実施例10(1)および(2)に記載の方法で作成した貪食サンプルを検体とした。 使用したSA貪食サンプルの貪食率は31%であり、約1.38×10個/ウェルであった。 SE貪食サンプルの貪食率は42%であり、約1.95×10個/ウェルであった。 PA貪食サンプルの貪食率は15%であり、約1.30×10個/ウェルであった。また、EF貪食サンプルの貪食率は48%であり、約1.05×10個/ウェルであった。EK貪食サンプルの貪食率は17%であり、約1.85×10個/ウェルであった。 貪食サンプルおよびU937細胞を塗抹固定したスライドグラス(図11を参照)を使用して、実施手順例(3)〜(11)に記載の方法に従い検討した。 ただし、使用したプローブは、対象となる菌に対応したものを使用した(実施例13を参照)。 また、実施例10(4)に示した力価の酵素を、3種類混合して用いた。
【0233】
その結果、ハイブリダイゼーション温度が4℃以下では、ハイブリッド形成速度が低下し、各種プローブで安定なシグナルが観察されなかった。 また、60℃においては細胞形態の変化が認められ、安定なシグナルが観察されなかった。
【0234】
また、25℃および50℃では、37℃および42℃に比べ、シグナルが明確でなかったが検出することは可能であった。 従って、至適ハイブリダイゼーションの温度は、25℃〜50℃、より好ましくは37〜42℃に設定するとよい。
【0235】
なお、実施例6に記載の方法に準じて作製したCA貪食サンプルおよび本発明のプローブを用いて前記温度条件でハイブリダイゼーションを行ったところ、好ましい結果が得られた。従って、本発明のプローブを用いたハイブリダイゼーションの温度条件も、前記温度条件と同一とした。
【0236】
貪食サンプルを用いて得られたこれら結果を臨床検体に応用したところ、同様の結果を得ることができた。 それ故、本発明の臨床検体の感染症原因微生物同定におけるハイブリダイゼーションの至適温度も同様とした。
【0237】
実施例 15 :ハイブリダイゼーション時間の検討
実施例10(1)および(2)に記載の方法で調製した貪食サンプルを検体とし、10分、60分、90分、120分、180分、900分間のハイブリダイゼーション時間について検討した。
【0238】
使用したSA貪食サンプルの貪食率は47%であり、約1.45×10個/ウェルであった。 SE貪食サンプルの貪食率は47%であり、約1.33×10個/ウェルであった。PA貪食サンプルの貪食率は17%であり、約1.95×10個/ウェルであった。 また、EF貪食サンプルの貪食率は41%であり、約1.45×10個/ウェルであった。 EK貪食サンプルの貪食率は20%であり、約1.23×10個/ウェルであった。
【0239】
貪食サンプルおよびU937細胞を塗抹固定したスライドグラス(図11に示すものと同じ)を使用して、実施手順例(3)〜(11)に記載の方法に従って検討を行った。 ただし、使用したプローブは、各菌に対応したものを使用した(実施例13参照)。 また、実施例10(4)に示した力価の酵素を、3種類混合して用いた。
【0240】
その結果、ハイブリダイゼーション時間が10分ではシグナルが観察されなかったが、60分以上でシグナルが観察され、90分以上で安定したシグナルが観察された。 また、ハイブリダイゼーション時間を900分としても、シグナルの検出には変化は認められなかった。 従って、少なくとも30分以上、好ましくは60分以上、より好ましくは90分以上とするのが好ましい。 さらに、至適ハイブリダイゼーション時間として、120分〜900分の時間を設定するのが好ましい。
【0241】
なお、実施例6に記載の方法に準じて作製したCA貪食サンプルおよび本発明のプローブを用いて前記時間条件でハイブリダイゼーションを行ったところ、好ましい結果が得られた。 従って、本発明のプローブを用いたハイブリダイゼーションの時間条件も、前記温度条件と同一とした。
【0242】
貪食サンプルを用いて得られたこれら結果を臨床検体に応用したところ、同様の結果を得ることができた。 従って、本発明の臨床検体の感染症原因微生物同定におけるハイブリダイゼーションの至適時間も同様とした。
【0243】
実施例 16 :ハイブリダイゼーション溶液に添加する界面活性剤の影響
実施例6に記載の方法で作成したCA貪食サンプルを検体とした。
【0244】
プローブ(プローブCA−50、CA−51およびCA−69)希釈液に各種界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を0.5%添加し、実施手順例の記載に従ってハイブリダイゼーションを行ったところ、0.5%のSDSを添加することにより検出感度が飛躍的に増強した。 また、ラウリルサルコシン、BRIJ 35、ツイーン20(Tween 20)によっても検出感度を高めることができる。
【0245】
また、SDSの好ましい濃度は、1%以下、より好ましくは0.1%〜0.75%、さらに好ましくは0.25〜0.5%である。
【0246】
貪食サンプルを用いて得られたこれら結果を臨床検体に応用したところ、同様の結果を得ることができた。 ゆえに、臨床検体においてもin situハイブリダイゼーションの工程に界面活性剤、特に、SDSを添加するのが好ましい。
【0247】
実施例 17 :ハイブリダイゼーションの際に使用するプローブ鎖長の検討
カンジダ アルビカンス菌プローブ(プローブCA−50、配列番号:1)を用いて、ジゴキシゲニンにてラベル化を行った。
【0248】
まず、精製したDNAプローブ1μgを、10×L.B.(0.5mol/l トリス塩酸(pH 7.5)5μl、50mmol/l 塩化マグネシウム、0.5mgウシ血清アルブミン)5μl、100mmol/l ジチオスレイトール5μl、dNTPs(A、G、C)各1nmol、ジゴキシゲニン−dUTP(Dig−dUTP)0.5nmol、dTTP各0.5nmol、DNase3μl(25mUおよび50mU相当量)、10U/μl DNAポリメラーゼ1μlを含み、適量の滅菌精製水で全量を50μlとなるように調製した。 15℃、2時間でジゴキシゲニンラベル化を行った。 ラベル化した後、5分間煮沸して反応を停止させた。 反応停止液をスピンカラム(CENTRI−SEP COLUMUNS CS901、PRINCETON SEPARATIONS, INC.)に注入し、25℃で2分間遠心分離(3,000×g)を行って、遊離しているヌクレオチドを除去した。
【0249】
そして、溶出液の濃度を吸光度計により測定し、3%アガロースゲルにて電気泳動してサイズを確認した。 次に、サザンブロッティング法によりアガロースゲル中のDNAをニトロセルロース膜に転写させた。 その後、2%ブロッキング試薬(ロシュ社製)に30分間浸した後、1/5,000量のアルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体を加えて30分間浸した。 次に、100mmol/lのトリス塩酸(pH 7.5)、150mmol/l塩化ナトリウムにて10分間振とうし、2回洗浄した。 そして、100mmol/lのトリス塩酸(pH 9.5)、150mmol/l塩化ナトリウムにて10分間振とうして洗浄した。 その後、前出のNBT/BCIP溶液に浸して発色させた。 最後に、精製水に浸し、発色を止めて乾燥させた。
【0250】
その結果を、図12に示す。 図12から明らかなように、50mUのDNase(図12のレーン2)を用いて、主として約200〜約300塩基長に分布するように切断した場合に、ラベル効率が高いことが示された。 こうして得られた検出用プローブを、貪食サンプルや感染症患者からの臨床検体を用いた本発明の感染症原因微生物の検出方法において使用し、ハイブリダイゼーションを行ったところ、優れた感度でシグナルが検出された。 従って、効率よくカンジダ アルビカンス菌を検出する上で、ハイブリダイゼーションに使用するプローブの鎖長としては、約200〜約600塩基長、好ましくは約200〜約500塩基長、そして、最も好ましくは約200〜約300塩基長が良いことが判明した。 また、シグナルの検出の際に約500塩基長を超えるプローブ鎖長を用いた場合にはバックグラウンドの増大が認められることから、約500塩基長を超えないのが好ましい。
【0251】
【発明の効果】
このように、本発明の検出用プローブは、in situハイブリダイゼーションに適用することで、短時間の内に、検出対象菌に対して安定なシグナルを発現することができるため、迅速かつ的確な検査結果をもたらすことが可能となる。
【0252】
また、これにより、カンジダ アルビカンス菌のみならず、敗血症や菌血症などの疾患に対する診断材料を医療現場に迅速に提供でき、人命救助の観点からも多大な貢献が期待されるものである。
【0253】
【配列表】
Figure 2004089046
Figure 2004089046
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【図面の簡単な説明】
【図1】CA−50プローブを用いたカンジダ アルビカンス菌の検出系に適用された貪食サンプルの光学顕微鏡(蛍光顕微鏡:×1,000)で確認された発色シグナルを示す図である。
【図2】CA−51プローブを用いたカンジダ アルビカンス菌の検出系に適用された貪食サンプルの光学顕微鏡(蛍光顕微鏡:×1,000)で確認された発色シグナルを示す図である。
【図3】CA−69プローブを用いたカンジダ アルビカンス菌の検出系に適用された貪食サンプルの光学顕微鏡(蛍光顕微鏡:×1,000)で確認された発色シグナルを示す図である。
【図4】CA−50、CA−51およびCA−69による混合プローブを用いたカンジダ アルビカンス菌の検出系に適用された貪食サンプルの光学顕微鏡(蛍光顕微鏡:×1,000)で確認された発色シグナルを示す図である。
【図5】(a) スタフィロコッカス アウレウスとスタフィロコッカス エピデルミディスに対する溶菌酵素の経時的活性、(b) シュードモナス アエルギノーザとエシュリキア コリに対するアルカリ剤に対する活性、および(c) エンテロコッカス フェカーリスに対する溶菌酵素の経時的活性を示すグラフである。
【図6】(a) N−アセチルムラミダーゼ 300単位/ml、(b) リゾチーム10,000単位/ml、および(c) リゾスタフィン50単位/mlに対するDMSOの濃度依存的効果を示すグラフである。
【図7】(a) プロテアーゼ 0.2単位/mlのみ、(b) PMSF1μmol/ml、(c)PMSF 10μmol/ml、(d)PMSF 0.1mmol/ml、および(e)PMSF1mmol/mlに対するPMSFの添加効果を示す図である。
【図8】(a)〜(e)は、貪食サンプルにおいて、細菌が食細胞に貪食されて形態変化を起こしている状態を指し示す図である。
【図9】(a)  酵素処理前のスタフィロコッカス アウレウスの貪食サンプル、(b) 酵素処理前のエンテロコッカス フェカーリスの貪食サンプル、(c)貪食サンプル(a)を酵素処理して得たサンプル、および(d)は貪食サンプル(b)を酵素処理して得た貪食サンプルに対する酵素処理の効果を示す図である。
【図10】In situハイブリダイゼーションでの至適プローブ濃度を検定するための貪食サンプル塗抹用スライドグラスの概略図である。
【図11】In situハイブリダイゼーションでの至適温度を検定するための貪食サンプル塗抹用スライドグラスの概略図である。
【図12】ジゴキシゲニンラベル化CAプローブCA−50の鎖長とジゴキシゲニンによるシグナル強度を示す図である。

Claims (18)

  1. カンジダ アルビカンス(Candida albicans)菌の検出用プローブであって、当該プローブが、カンジダ アルビカンス菌が保有するDNAに対して特異的な交差反応性を示し、かつ以下の塩基配列、すなわち、
    (a) 配列番号:1乃至3のいずれかに記載の塩基配列;
    (b) 塩基配列(a)と70%以上の相同性を有する塩基配列;または、
    (c) 塩基配列(a)および/または塩基配列(b)に対して相補的な塩基配列、
    を含む、ことを特徴とするカンジダ アルビカンス菌の検出用プローブ。
  2. 前記塩基配列が、200〜600塩基長を有する1種以上の核酸断片である請求項1に記載の検出用プローブ。
  3. 前記DNAが、染色体DNAである請求項1または2に記載の検出用プローブ。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の検出用プローブを用いることを特徴とするカンジダ アルビカンス菌の検出方法。
  5. 前記検出方法が、以下の工程、すなわち;
    (a) 臨床検体より取得した生体由来の食細胞を支持担体上に固定し、
    (b) 固定した食細胞の細胞膜の透過性を亢進する化学処理を行い、
    (c) 食細胞に含まれる感染症原因菌の染色体DNAを得、
    (d) ストリンジェントな条件下で、当該DNAと請求項1乃至3のいずれかに記載の検出用プローブとのin situハイブリダイゼーションを行い、および
    (e) ハイブリダイゼーションシグナルを検出する、
    工程を含む請求項4に記載の検出方法。
  6. 前記臨床検体が、血液、組織液、リンパ液、脳脊髄液、膿、粘液、鼻水、痰、尿、腹水、透析排液、組織洗浄液、皮膚、肺、腎、粘膜、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項5に記載の検出方法。
  7. 請求項1乃至3のいずれかに記載の検出用プローブを用いることを特徴とするカンジダ アルビカンス菌の同定方法。
  8. 前記同定方法が、以下の工程、すなわち;
    (a) 臨床検体より取得した生体由来の食細胞を支持担体上に固定し、
    (b) 固定した食細胞の細胞膜の透過性を亢進する化学処理を行い、
    (c) 食細胞に含まれる感染症原因菌の染色体DNAを得、
    (d) 当該DNAをアルカリ変性および中和処理し、および
    (e) ストリンジェントな条件下で、当該DNAと請求項1乃至3のいずれかに記載の検出用プローブとのドットブロットハイブリダイゼーションを行う、
    工程を含む請求項7に記載の同定方法。
  9. 前記臨床検体が、血液、組織液、リンパ液、脳脊髄液、膿、粘液、鼻水、痰、尿、腹水、透析排液、組織洗浄液、皮膚、肺、腎、粘膜、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項8に記載の同定方法。
  10. 感染症原因菌の検出方法であって、以下の工程、すなわち;
    (a) 感染症原因菌の染色体DNAを得、
    (b) 請求項1乃至3のいずれかに記載の検出用プローブを構成する塩基配列の少なくとも一部からなるプライマーを調製し、
    (c) 当該DNAと当該プライマーとの共存系でのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって当該DNAを増幅し、および
    (d) 増幅されたDNAを検出する、
    工程を含む、ことを特徴とする感染症原因菌の検出方法。
  11. 前記感染症原因菌が、カンジダ アルビカンス菌である請求項10に記載の検出方法。
  12. 食細胞に貪食された外来微生物の遺伝子を観察する方法であって、以下の工程、すなわち;
    (a) 臨床検体より取得した生体由来の食細胞を支持体上に固定し、
    (b) 固定した食細胞の細胞膜の透過性を亢進する化学処理を行い、
    (c) 食細胞に含まれる感染症原因菌の染色体DNAを得、
    (d) ストリンジェントな条件下で、当該DNAと請求項1乃至3のいずれかに記載の検出用プローブとのin situハイブリダイゼーションを行い、
    (e) ハイブリダイゼーションシグナルを検出し、
    (f) 工程(a)〜(e)を繰り返して実施し、および
    (g) ハイブリダイゼーションシグナルの経時的変化をモニターする、
    工程を含む、ことを特徴とする食細胞に貪食された外来微生物の遺伝子を観察する方法。
  13. 請求項1乃至3のいずれかに記載の検出用プローブおよびDNA露出処理剤を含む、ことを特徴とするカンジダ アルビカンス菌の検出キット。
  14. 前記DNA露出処理剤が、ザイモラーゼを含む酵素である請求項13に記載の検出キット。
  15. 前記検出用プローブが、界面活性剤と共存している請求項13または14に記載の検出キット。
  16. 前記検出キットが、血液分離試薬、酵素前処理試薬、酵素試薬、アセチル化試薬、ブロッキング試薬、標識抗体、標識抗体希釈液、発色前処理液、発色試薬、対比染色液、PBS原液、ハイブリダイゼーション原液、標識抗体洗浄液、発色試薬洗浄液、プローブ希釈液、バッファーAおよびこれらの組み合わせからなるグループから選択される試薬をさらに含む請求項13乃至15のいずれかに記載の検出キット。
  17. 前記検出キットが、APSコートスライドグラス、低速遠心機、恒温機、血球計算盤、振とう機、湿潤箱、恒温槽、光学顕微鏡、可変式ピペット、採血管、チップ、ピペット、染色ビン、メスシリンダー、注射筒、シリンジトップフィルターおよびこれらの組み合わせからなるグループから選択される器具をさらに含む請求項13乃至16のいずれかに記載の検出キット。
  18. チップ基板および当該基板の表面にその一端が固定されてなるDNA断片を有するDNAチップであって、当該断片が請求項1乃至3のいずれかに記載の検出用プローブまたはその断片である、ことを特徴とするDNAチップ。
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