JP4233706B2 - 船外機の排気通路構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンから排出される排気ガスを導く排気通路に排気ガスを浄化する触媒コンバータを設けた船外機の排気通路構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、船外機はエンジンを収容するエンジンルームと、エンジンによって駆動される駆動軸を収容すべく前記エンジンルームから下方に延びるケース体とを備えており、エンジンから排出された排気ガスはケース体の内部を下方に導かれて水中に排出される。
【0003】
また前記ケース体の内部に設けた排気通路に排気ガスを浄化する触媒コンバータを備えた船外機が、特開平8−312365号公報により公知である。このものは、触媒コンバータが上流側の導入用排気管と下流側の導出用排気管とを備えており、導入用排気管の上端の取付フランジがケース体の内部にボルト止めで固定されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特開平8−312365号公報に記載された船外機のケース体は、筒状のエクステンションケースと、エンジンブロックを支持すべくエクステンションケースの上端に結合されるマウントケースと、エクステンションケースの下端に結合されるギヤケースとから構成されている。そして触媒コンバータはエクステンションケースの内部に収納されているため。その触媒コンバータをメンテナンスするにはエクステンションケースからマウントケースを分離する必要がある。しかしながら、マウントケースやエクステンションケースは重量の大きい大型部品であり、しかも船外機を船体に支持する取付ブラケットに弾性マウント装置を介して支持されているため、それらを分離するには極めて面倒な作業が必要になってメンテナンス性が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、船外機の排気通路に設けられた触媒コンバータのメンテナンス性を高めることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、4サイクルエンジンから排出される排気ガスを導く排気通路に排気ガスを浄化する触媒コンバータを設けた船外機の排気通路構造において、エンジンの駆動力をプロペラに伝達する駆動軸が貫通するオイルケースに、排気通路の少なくとも一部の通路壁と、エンジンの潤滑油を貯留するオイルパンとを一体に形成すると共に、該オイルケース内で前記通路壁とオイルパン外壁との対向面間に冷却水通路を形成し,更にそのオイルケースの、船体前後方向で後方側の側壁には、前記排気通路が開口する接続部を形成し、前記接続部に着脱自在に結合されて排気ガスが流通する蓋体とオイルケースとによって囲まれる空間に前記触媒コンバータを配置したことを特徴とする船外機の排気通路構造が提案される。
【0007】
上記構成によれば、ケース体であるオイルケースの、船体前後方向で後方側の側壁の接続部に着脱自在に結合した蓋体と、該オイルケースとによって囲まれる空間に触媒コンバータを配置したので、オイルケースを分解することなく、前記蓋体をオイルケースから分離するだけで触媒コンバータを露出させてメンテナンスを行うことが可能になり、メンテナンス性が大幅に向上する。また、オイルケースに4サイクルエンジンの潤滑油を貯留するオイルパンが一体に形成されていても、そのオイルパンによって触媒コンバータのメンテナンス性が阻害されることがない。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記触媒コンバータを前記蓋体側に支持したことを特徴とする船外機の排気通路構造が提案される。
【0009】
上記構成によれば、触媒コンバータを蓋体側に支持したので、予め触媒コンバータを蓋体に組み付けてサブアセンブリを構成することにより触媒コンバータの取扱性や組付作業性を高めることができるだけでなく、触媒コンバータを蓋体ごとオイルケースから分離してメンテナンス性を更に高めることができる。
【0010】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記触媒コンバータを前記オイルケース側に支持したことを特徴とする船外機の排気通路構造が提案される。
【0011】
上記構成によれば、触媒コンバータをオイルケース側に支持したので、蓋体をオイルケースから分離しても触媒コンバータに連なる排気通路が切り離されることがなく、従って排気通路のシール構造を簡略化することができる。
【0012】
尚、実施例の排気通路形成部材48は本発明の蓋体に対応する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図9は本発明の一実施例を示すもので、図1は船外機の全体側面図、図2は図1の要部拡大断面図、図3は図2の3−3線断面図、図4は図1の4−4線矢視図、図5は図2の要部拡大図、図6は図5の6−6線矢視図、図7は図5の7−7線矢視図、図8は触媒コンバータの側面図、図9は図8の9方向矢視図である。
【0015】
図1〜図3に示すように、船外機Oの上部に搭載された2気筒4サイクルエンジンEは、クランクケース111 および上下2個のシリンダボア112 ,112を一体に備えたエンジンブロック11と、エンジンブロック11に結合されたシリンダヘッド12と、シリンダヘッド12に結合されたヘッドカバー13とを備えており、エンジンブロック11に形成された2個のシリンダボア112 ,112 に摺動自在に嵌合する2個のピストン14,14が、エンジンブロック11に支持したクランクシャフト15にコネクティングロッド16,16を介して連接される。
【0016】
エンジンブロック11から上方に突出するクランクシャフト15の軸端部に、発電機17およびリコイルスタータ18が同軸上に設けられる。シリンダヘッド12およびヘッドカバー13間に区画された動弁室19にはカムシャフト20が支持されており、その上端に設けたカムプーリ21とクランクシャフト15の上部に設けたクランクプーリ22とがタイミングベルト23で接続される。シリンダヘッド12に形成した吸気ポート24および排気ポート25をそれぞれ開閉する吸気弁26および排気弁27が、前記カムシャフト20にそれぞれ吸気ロッカーアーム28および排気ロッカーアーム29を介して接続される。エンジンEの右側面に配置された吸気消音器30、チョークバルブ31および可変ベンチュリ型キャブレタ32が前記吸気ポート24に接続される。
【0017】
クランクシャフト15の軸線は上下方向に配置され、かつシリンダボア112,112 の軸線は、クランクケース111 側が前方を向いてシリンダヘッド12側が後方を向くように前後方向に配置される。2個のピストン14,14のクランク位相は同位相であり、その点火時期は360°ずれている。クランクシャフト15には、ピストン14,14の往復質量に対抗するバランス率100%のカウンターウエイト151 …が設けられる。
【0018】
上記構造のエンジンEの下面にオイルケース41の上面が結合され、このオイルケース41の下面にエクステンションケース42の上面が結合され、このエクステンションケース42の下面にギヤケース43の上面が結合される。オイルケース41の外周と、エンジンEの下半部の外周とが、エクステンションケース42の上端に結合されたアンダーカバー44によって覆われ、このアンダーカバー44の上端に結合されたエンジンカバー45によってエンジンEの上半部が覆われる。
【0019】
図2から明らかなように、オイルケース41はオイルパン411 を一体に備えており、その内部にオイルストレーナ46を備えたサクションパイプ47が収納される。オイルケース41の後面には排気通路形成部材48が結合され、またエクステンションケース42の内部には隔壁421 を介して排気膨張室49が区画される。
【0020】
クランクシャフト15の下端に接続された駆動軸50はオイルケース41を貫通してエクステンションケース42に形成した駆動軸室51の内部を下方に延び、後端にプロペラ52を備えてギヤケース43に前後方向に支持されたプロペラ軸53の前端に前後進切換機構54を介して接続される。
【0021】
船外機Oを船体Sに着脱自在に取り付けるための取付ブラケット55は、逆J字状の取付ブラケット本体56と、この取付ブラケット本体56に螺合する押しねじ57とを備える。取付ブラケット本体56に支点ピン58を介して揺動アーム59の前端が枢支されており、この揺動アーム59の後端にパイプ状のスイベルケース60が一体に結合される。取付ブラケット本体56には多数のピン孔561 …が設けられており、スイベルケース60に固定した係止板601 に形成したピン孔と前記取付ブラケット本体56の何れかのピン孔561 …とにピン61を挿通することにより、支点ピン58まわりの船外機Oのチルト角を調整することができる。
【0022】
スイベルケース60の内部に相対回転自在に嵌合するスイベル軸62は、その上端および下端にそれぞれマウントフレーム63およびセンターフレーム64を備える。上側のマウントフレーム63は左右一対のアッパーマウント65,65を介してオイルケース41に弾性的に接続され、下側のセンターフレーム64はロアマウント66を介してエクステンションケース42に弾性的に接続される。オイルケース41の前端には操舵ハンドル67が固定されており、この操舵ハンドル67を握って左右に操作することにより、オイルケース41をスイベル軸62まわりに左右に揺動させて船外機Oを操舵することができる。
【0023】
図2および図4から明らかなように、図示せぬ冷却水ポンプで汲み上げられた冷却水は、エンジンブロック11およびオイルケース41の合わせ面に形成された冷却水通路w1 ,w2 に供給され、そこから二股に分岐してエンジンブロック11およびシリンダヘッド12に供給される(図4の矢印b参照)。エンジンブロック11およびシリンダヘッド12を冷却した冷却水はエンジンブロック11の下面に形成した冷却水通路w3 に供給され(図4の矢印c参照)、そこからオイルケース41に形成した冷却水通路w4 を経てエクステンションケース42の内部に排出される。
【0024】
図4〜図7から明らかなように、排気通路形成部材48は、その前面に形成した割り面481 をオイルケース41の後面に形成した割り面412 に当接させた状態で、6本のボルト71…でオイルケース41に結合される。排気通路形成部材48の内部には上下両面が開口した円筒状の触媒コンバータ支持部482 が形成されており、そこに触媒コンバータ72が支持される。
【0025】
図8および図9を併せて参照すると明らかなように、触媒コンバータ72は、ハニカム状の断面を有して円柱状に形成された触媒担体73と、この触媒担体73を内部に収納した円筒状ケース74と、円筒状ケース74の上面を閉塞するフランジ75とを備えており、円筒状ケース74を排気通路形成部材48の触媒コンバータ支持部482 に上方から嵌合させ、フランジ75を貫通する2本のボルト76,76を触媒コンバータ支持部482 に締結することにより固定される。円筒状ケース74の上部の一側面には排気ガス流入口741 が形成され、円筒状ケース74の下面には排気ガス流出口742 が形成される。
【0026】
エンジンEの排気ポート25から出た排気ガスは、エンジンブロック11の内部に形成した主排気通路113 からオイルケース41に形成した第1主排気通路e1 に流入し(図4の矢印a参照)、そこからオイルケース41に形成した連通口e2 と、排気通路形成部材48に形成した第2主排気通路e3 と、触媒コンバータ72の円筒状ケース74の排気ガス流入口741 とを通過して、触媒担体73の上部空間e4 に流入する。前記上部空間e4 から触媒担体73を下方に通過して浄化された排気ガスは、円筒状ケース74の排気ガス流出口742 と、触媒コンバータ支持部482 の下面開口とを通過して、オイルケース41および排気通路形成部材48間に形成された主排気膨張室e5 に流入し、更に主排気膨張室e5 の上部からオイルケース41に形成した連通孔e6 とオイルケース41に形成した第3主排気通路e7 とを通過して、エクステンションケース42の排気膨張室49に排出される。
【0027】
エクステンションケース42の排気膨張室49から上方に延びる副排気通路e8 が前記第3主排気通路e7 の左側に平行に形成されており、その副排気通路e8 を上方に流れた排気ガスは、オイルケース41に形成した連通孔e9 と、オイルケース41および排気通路形成部材48間に形成した第1副排気膨張室e10と、絞り効果を有する幅狭部e11と、第2副排気膨張室e12とを通過して、排気通路形成部材48の後面に設けた排気出口e13から空気中に排出される。そして主排気膨張室e5 の下端が水抜き孔e14を介して第3主排気通路e7 に連通し、また排気通路形成部材48に形成した負圧抜き孔e15を介して主排気膨張室e5 および第1副排気膨張室e10が連通する。
【0028】
而して、触媒コンバータ72をメンテナンスするには、先ずアンダーカバー44を取り外してオイルケース41の後面に6本のボルト71…で固定した排気通路形成部材48を分離する。そして2本のボルト76,76で固定した触媒コンバータ72を排気通路形成部材48から分離することにより、該触媒コンバータ72のメンテナンスを行うことができる。
【0029】
以上のように、オイルケース41の後面に着脱自在に設けた排気通路形成部材48と該オイルケース41とに囲まれた空間に触媒コンバータ72を配置したので、オイルケース41から排気通路形成部材48を取り外すだけで触媒コンバータ72を露出させることができる。従って、オイルケース41からエンジンブロック11やエクステンションケース42を分離する面倒な作業を行うことなく、触媒コンバータ72を簡単にメンテナンスすることができる。また触媒コンバータ72をオイルケース41の内部に設けるとオイルパン411 が邪魔になって触媒コンバータ72をメンテナンスするための空間を確保するのが難しくなるが、本実施例ではオイルパン411 に邪魔されないように触媒コンバータ72を露出させて効率的なメンテナンスを行うことができる。
【0030】
更に、触媒コンバータ72が排気通路形成部材48側に支持されているので、触媒コンバータ72と排気通路形成部材48とでサブアセンブリを構成することができる。その結果、触媒コンバータ72を排気通路形成部材48ごとインナーケース41から分離してメンテナンス性を更に高めることができるばかりか、触媒コンバータ72の取扱性や組付作業性を高めることができる。
【0031】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0032】
例えば、実施例ではオイルケース41および排気通路形成部材48に囲まれた空間に配置した触媒コンバータ72を排気通路形成部材48側に支持しているが、それをオイルケース41側に支持することが可能である。このようにすれば、排気通路形成部材48をオイルケース41から分離しても触媒コンバータ72に連なる排気通路が切り離されないため、該排気通路のシール構造を簡略化することができる。
【0033】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、ケース体であるオイルケースの、船体前後方向で後方側の側壁の接続部に着脱自在に結合した蓋体と、該オイルケースとによって囲まれる空間に触媒コンバータを配置したので、オイルケースを分解することなく、前記蓋体をオイルケースから分離するだけで触媒コンバータを露出させてメンテナンスを行うことが可能になり、メンテナンス性が大幅に向上する。また、オイルケースにエンジンの潤滑油を貯留するオイルパンが一体に形成されていても、そのオイルパンによって触媒コンバータのメンテナンス性が阻害されることがない。
【0034】
また請求項2に記載された発明によれば、触媒コンバータを蓋体側に支持したので、予め触媒コンバータを蓋体に組み付けてサブアセンブリを構成することにより触媒コンバータの取扱性や組付作業性を高めることができるだけでなく、触媒コンバータを蓋体ごとオイルケースから分離してメンテナンス性を更に高めることができる。
【0035】
また請求項3に記載された発明によれば、触媒コンバータをオイルケース側に支持したので、蓋体をオイルケースから分離しても触媒コンバータに連なる排気通路が切り離されることがなく、従って排気通路のシール構造を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 船外機の全体側面図
【図2】 図1の要部拡大断面図
【図3】 図2の3−3線断面図
【図4】 図1の4−4線矢視図
【図5】 図2の要部拡大図
【図6】 図5の6−6線矢視図
【図7】 図5の7−7線矢視図
【図8】 触媒コンバータの側面図
【図9】 図8の9方向矢視図
【符号の説明】
41 オイルケース
411 オイルパン
48 排気通路形成部材(蓋体)
50 駆動軸
52 プロペラ
72 触媒コンバータ
E エンジン
Claims (3)
- 4サイクルエンジン(E)から排出される排気ガスを導く排気通路に排気ガスを浄化する触媒コンバータ(72)を設けた船外機の排気通路構造において、
エンジン(E)の駆動力をプロペラ(52)に伝達する駆動軸(50)が貫通するオイルケース(41)に、排気通路の少なくとも一部の通路壁と、エンジン(E)の潤滑油を貯留するオイルパン(41 1 )とを一体に形成すると共に、該オイルケース(41)内で前記通路壁とオイルパン外壁との対向面間に冷却水通路(w 4 )を形成し,更にそのオイルケース(41)の、船体前後方向で後方側の側壁には、前記排気通路が開口する接続部を形成し、前記接続部に着脱自在に結合されて排気ガスが流通する蓋体(48)とオイルケース(41)とによって囲まれる空間に前記触媒コンバータ(72)を配置したことを特徴とする船外機の排気通路構造。 - 前記触媒コンバータ(72)を前記蓋体(48)側に支持したことを特徴とする、請求項1に記載の船外機の排気通路構造。
- 前記触媒コンバータ(72)を前記オイルケース(41)側に支持したことを特徴とする、請求項1に記載の船外機の排気通路構造。
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