JP4233027B2 - 防食用部材および該防食用部材を取り付けた金属構造体 - Google Patents

防食用部材および該防食用部材を取り付けた金属構造体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁波の照射条件下に曝される金属構造体の腐食を抑制する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電プラントでは、その構成材料として炭素鋼やステンレス鋼、ニッケル合金などが用いられ、原子炉冷却材として水が用いられる。この冷却水は、放射線の照射を受けると放射線分解し、酸素や過酸化水素などの酸化性物質を生成する。生成したこれらの酸化性物質は冷却水中に溶解し、原子炉を構成する材料に腐食あるいは応力腐食割れを生じさせる原因になることが知られている。
【0003】
また、原子力発電プラントからは使用済核燃料が排出されるが、この使用済核燃料を貯蔵あるいは輸送するための密封容器(キャニスタ)の構成材料としても、炭素鋼やステンレス鋼などが用いられているが、この密封容器に結露等が生じたときも、該容器に付着した水が放射線の照射によって分解し、酸化性物質を生成する。また、一般的に用いられているコンクリートキャスクは、コンクリートキャスク本体(遮蔽体)とキャニスタの間に外気を対流させることにより除熱しているが、このとき外気(例えば、潮風)に塩化物イオン等の高腐食性物質が含まれると、この物質は密封容器表面に付着することがある。そのため、この密封容器にも腐食あるいは応力腐食割れを生じる可能性がある。
【0004】
ところで、腐食あるいは応力腐食割れの発生およびこれらの進展は腐食電位に影響を受け、材料の腐食電位が低いほど、腐食あるいは応力腐食割れを起こしにくくなることが知られている。即ち、腐食電位を低くすることによって、材料表面に酸化性物質が殆ど生成しないからである。
【0005】
このような腐食あるいは応力腐食割れの低減対策として、例えば特許文献1や特許文献2には、原子炉内で受ける光や放射線の照射により起電する光触媒物質を、原子炉構造材の表面に付着させることによって原子炉構造材の腐食電位を低くし、腐食あるいは応力腐食割れの発生を抑制する技術が開示されている。この技術では光触媒物質を原子炉構造材の表面に直接付着させる方法として、▲1▼光触媒物質を注入した冷却水を原子炉構造材内に循環させて付着させる方法や、▲2▼ロボットなどを用いて光触媒物質を所定の部位に吹き付ける方法、▲3▼原子炉構造材の表面にPVD法やCVD法などで光触媒物質を含む皮膜を直接形成する方法、などが例示されている。
【0006】
しかし、本発明者らが検討したところ、上記▲1▼の方法では、光触媒物質の適切な注入量を定めるのが難しく、また原子炉構造材の表面に光触媒物質が確実に付着しているかどうかの確認も困難である。また、上記▲2▼の方法では、光触媒物質を所定の部位に付着させることはできるものの、密着性を高めることは困難であった。さらに、上記▲3▼の方法の場合、実操業では原子炉構造材の特定部位に光触媒物質を密着性良く付着させることは難しい。
【0007】
【特許文献1】
特開2001-4789号公報([特許請求の範囲]、[0018]、[0049]〜[0050]、[0081]〜[0083]参照)
【特許文献2】
特開2001-276628号公報([特許請求の範囲]、[0029]、[0034]〜[0035]、[0087]参照)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、電磁波の照射下で用いられる金属構造体の腐食発生を、効率良く簡便に抑制するための防食用部材を提供することにある。また、本発明の他の目的は、電磁波の照射下で用いられる場合でも優れた防食性を示す金属構造体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明に係る防食用部材とは、金属構造物に取り付けることにより該金属構造物における溶接部または異種金属接触部での腐食を抑制するための部材であって、電磁波の照射によって電子を発生する機能層が、導電性基材表面に設けられ、且つ前記導電性基材と前記機能層の間に、導電性基材とは異なる金属よりなる中間層が設けられ、この中間層はCoまたはCrを主体として含む金属からなるものである点に要旨を有する。
【0010】
前記機能層としては、金属酸化物,金属炭化物および金属窒化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。
【0011】
前記導電性基材としては、Fe,Cu,Ti,Zr,Ni,CoおよびCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む金属であることが好ましい。
【0012】
前記中間層の厚みは、0.05μm以上であるものが好ましく、機能層の厚みは1μm〜13mmであるものが好ましい。
【0013】
上記課題を解決することのできた本発明に係る金属構造体とは、電磁波の照射下で用いられる金属構造体に、前記防食用部材を導電状態で取り付けられている点に要旨を有する。前記防食用部材は、前記金属構造体における溶接部または異種金属接触部の近傍に、導電状態で取り付けられているものが好ましい。前記防食用部材における前記機能層の表面積は、前記溶接部または異種金属接触部境界の単位長さ1m当たり25cm2以上であることが好ましい。なお、前記近傍とは、金属構造体における溶接部または異種金属接触部境界から1m以内の領域である。
【0014】
【発明の実施の形態】
原子力発電のプラントでは、例えば、チャンネルボックスやシュラウド、原子炉容器、原子炉容器の蓋、一次系配管などの金属構造体が用いられる。また、原子力発電プラントから排出される使用済核燃料を貯蔵したり、輸送する際に用いる密閉容器として、例えばキャニスタなどの金属構造体が用いられる。そして、これらの金属構造体は、種々の金属同士を溶接したり、ネジ止め等により取り付けられた状態で、電磁波の照射雰囲気に曝される。
【0015】
ところが、これらの金属構造体を電磁波の照射条件下で長期間使用すると、腐食が徐々に進行する。そしてこの腐食は、金属同士を溶接している部位(以下、「溶接部」と称する場合がある)や、ネジ止め等によって異種金属が接触している部位(以下、「異種金属接触部」と称する場合がある)で特に顕著に進行することが知られている。溶接部で腐食が起こりやすい理由は、溶接部は熱影響を受けて金属組織が粗大化する等、母材より不安定な材料となるためである。また、溶接部では溶接時の熱影響を受けて引張残留応力が発生するので、応力腐食割れも生じやすい。一方、異種金属接触部で腐食や応力腐食割れが起こりやすい理由は、各金属のガルバノ電位が異なるために接触部で局所的な電池ができることにより、卑金属側の腐食電位が高くなり易いため(電子を放出するアノード反応となるため)と考えられる。
【0016】
そこで本発明者らは、溶接部や異種金属接触部(以下、「腐食発生部」と称する場合がある)での腐食あるいは応力腐食割れ発生を抑制すべく鋭意検討を重ねた結果、腐食発生部位の近傍に電子供給源を設けてやれば、腐食あるいは応力腐食割れの進行が可及的に抑えられることをつきとめた。また、電磁波の照射によって電子を発生する機能層(例えば、金属酸化物など)を金属構造体表面に直接設けるのではなく、金属構造体とは別部材の導電性基材表面に機能層を設けてやれば、機能層と導電性基材の密着性を高めることができることもつきとめ上記本発明を完成した。以下、本発明の作用効果について詳細に説明する。
【0017】
本発明の防食用部材とは、金属構造物における溶接部または異種金属接触部での腐食(「応力腐食割れ」も含む意味。以下同じ)を抑制するための部材であって、電磁波の照射によって電子を発生する機能層が、導電性基材の表面に設けられているものである。
【0018】
電磁波の照射によって電子を発生する機能層とは、エネルギーが比較的高い電磁波の照射により価電子帯から伝導帯へ励起されて電子を放出する層である。エネルギーが比較的高い電磁波とは、波長が400nm以下の電磁波(即ち、可視光線よりも波長の短い電磁波)であり、具体的には、紫外線や放射線(例えば、α線やβ線、γ線、X線、中性子線等)などが含まれる。
【0019】
電磁波の照射により機能層で発生した電子は、後述する様に、機能層から導電性基材、(中間層、)次いで金属構造体を通して腐食発生部へ供給され、カソード反応を促進することにより該腐食発生部における腐食電位を低下させる。その結果、腐食の発生を大幅に抑制できる。
【0020】
機能層としては、光触媒として用いられる金属酸化物,金属炭化物および金属窒化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む層を設ければ良く、これらを任意に組み合わせた2種以上を混合した層を設けても良い。金属酸化物としては、例えば、TiO2やZrO2,PbO,BaTiO3,Bi23,ZnO,WO3,SrTiO3,Fe23,FeTiO3,KTaO3,MnTiO3,SnO2、Al23などが挙げられる。金属炭化物としては、例えば、Al43やUC,U23,CaC2,SiC,ZrC,W2C,WC,TaC,TiC,Fe3C,HfC,B4C,Mn3Cなどが挙げられる。金属窒化物としては、例えば、AlNやCrN,SiN4,BN,Mg32,Li3Nなどが挙げられる。
【0021】
これらの中でも結晶格子の酸素サイトに空孔が生じやすいという理由で、前記機能層としては金属酸化物を含む層を設けることがより好ましく、金属酸化物の中でもTiO2やZrO2(酸化ジルコニウム)を含む層を設けることがさらに好ましい。特に好ましいのはZrO2を含む層であり、最も好ましくはZrO2からなる層である。ZrO2は、TiO2よりバンドギャップが大きいため、一旦励起された電子を無駄なく利用できるからである。即ち、励起された電子が腐食発生部に供給されることにより、腐食発生部の腐食電位を低下させ、腐食発生を阻止できる。またZrO2は、水の分解に起因する水素発生電位と酸素発生電位にまたがる領域にバンドギャップを有しているため、腐食の進行を一層効率良く抑制できる。なお、ジルコニウム系の金属は、原子炉内で使用されるチャンネルボックスや燃料被覆管などの材料としても既に実用化されており、原子炉内での使用実績もある。この様な観点からも、前記機能層としては、ZrO2を採用することが最も好ましい。
【0022】
機能層の厚みは、電磁波の照射により電子を発生できる程度であれば特に限定されないが、後述する実施例から明らかな様に、この効果を有効に発揮させるには厚みを1μm以上とするのが好ましい。より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは300μm以上、とするのが望ましい。但し、機能層が厚くなり過ぎると機能層自体の剥離を生じるばかりか、コスト高となるので、厚みは13mm以下とするのが好ましい。より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下、特に好ましくは1mm以下とするのが良い。
【0023】
機能層を形成する方法としては、例えば、溶射や蒸着[物理的蒸着(PVD)や化学的蒸着(CVD)など]、スパッタリングなど公知の方法が採用できる。また、シート状に形成した機能層を導電性基材の表面に設けても良い。特に、本発明の防食用部材は、金属構造体自体とは異なる部材に機能層を設けているので、機能層を設ける際の温度や雰囲気等を管理した環境下で上記溶射や蒸着、スパッタリングによって導電性基材(または中間層)表面に機能層を設けることができる。よって、金属構造体表面に直接機能層を設けるよりも、導電性基材(または中間層)と機能層の密着性を高めることができる。
【0024】
本発明の防食用部材は、上記機能層を導電性基材の表面に設けたものである。機能層を設ける基材として導電性材料を用いたのは、前記機能層で発生した電子を、導電性基材を通して金属構造体の腐食発生部へ供給するためである。導電性基材は、導電性を示すものであれば特に限定されず、代表的なものとして、純鉄や炭素鋼,ステンレス鋼,純アルミニウム,アルミニウム合金,純銅,銅合金,純チタン,チタン合金,純ジルコニウム,ジルコニウム合金(ジルカロイ),純ニッケル,ニッケル合金,純コバルト,コバルト合金,純クロム,クロム合金などの金属が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、Fe,Cu,Ti,Zr,Ni,CoおよびCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む金属が好ましく、より好ましくはTi,Zr,Ni,CoおよびCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む金属であり、特にNi,CoおよびCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む金属は、機能層との密着性が良いので導電性基材として好適に用いることができる。
【0026】
特に、Coは中性子の照射により下記式の様に放射化して、60Coはγ線源となることから、予め放射化させて用いることもできるし、使用中に中性子を照射することによりγ線源とすることが期待できる。よって、導電性基材としてCoを含むことにより導電性基材自身からγ線が発生して機能層の電子を励起させることができるので最も好ましい元素である。
59Co+n→60Co
【0027】
なお、Co以外の金属で同様に放射化されるもの(例えば、Mnなど)を用いても良い。
【0028】
Fe,Cu,Ti,Zr,Ni,CoおよびCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む金属とは、NiやCo,Cr,Fe,Cu,Ti,Zrを添加元素として含有する合金(例えば、ステンレス鋼)のみならず、ニッケル合金やコバルト合金,クロム合金,鉄合金,銅合金,チタン合金,ジルコニウム合金の様にNiやCo,Cr,Fe,Cu,Ti,Zrを夫々主体とする合金も含む意味である。主体とは、合金成分のうち含量が最も多いことを指す。また上記金属は、ニッケルとコバルトの合金,コバルトとクロムの合金,クロムとニッケルの合金など任意に組み合わせた合金も含む意味である。このときの組成は特に限定されず、例えばCoとCrの組成が50質量%:50質量%であっても構わない。勿論、上記金属は、純ニッケルや純コバルト、純クロム,純チタン,純鉄,純銅,純ジルコニウムも含む意味である。
【0029】
特にCoおよび/またはCrを含む金属は、機能層との密着性に加えて耐食性も高めるので導電性基材として好適に用いることができる。
【0030】
本発明の防食用部材では、導電性基材の厚みは、防食用部材の基材として要求される強度を有すると共に、電子の流れを阻害しない範囲であれば特に限定されない。
【0031】
ところで、本発明の防食用部材は、導電性基材としてステンレス鋼を採用でき、該ステンレス鋼表面に機能層を被覆形成すれば良いが、ステンレス鋼と機能層の密着性は、導電性基材として例えばCoやCrを主体とするコバルト合金やクロム合金を用いたときよりも劣ることが分かった。そこで、導電性基材と機能層の密着性に注目して検討を重ねたところ、導電性基材と機能層の間に、該導電性基材とは異なる金属よりなる中間層(例えば、NiやCo,Cr,Zr,Ti,Fe,Cuなど)を設けてやれば、密着性を向上できることが判明した。また、機能層を設けた防食用部材に、例えば曲げ加工を施すときは、密着性として耐スクラッチ性に加えて耐曲げ剥離性を高める必要があるが、こうした場合は後述する実施例から明らかな様に、導電性基材と機能層の間に中間層を設けることが必須となる。
【0032】
ここで、導電性基材と異なる金属とは、導電性基材として用いる金属の主成分とは異なる金属元素を主成分とする金属である。なお主成分とは、金属のうち含量が最も多い成分を指す。
【0033】
中間層としては、Fe,Cu,Ti,Zr,Ni,CoおよびCrよりなる群から選ばれる1種を主体として含む金属を設けることが推奨される。密着性に加えて導電性や耐食性も良好となるからである。なお、Fe,Cu,Ti,Zr,Ni,CoおよびCrよりなる群から選ばれる1種を主体として含む金属とは、NiやCo,Cr,Fe,Cu,Ti,Zrを主成分とするニッケル合金やコバルト合金,クロム合金,鉄合金,銅合金,チタン合金,ジルコニウム合金などを意味するが、ニッケルとコバルトの合金,コバルトとクロムの合金,クロムとニッケルの合金など任意に組み合わせた合金も含む意味である。このときの組成は特に限定されず、例えばCoとCrの組成が50質量%:50質量%であっても構わない。勿論、上記金属は、純ニッケルや純コバルト,純クロム,純鉄,純銅,純チタン,純ジルコニウムも含む意味である。純とは純度が99%以上を指す。
【0034】
特にCoまたはCrを主体として含む金属は、機能層との密着性に加えて耐食性も高めるので中間層として好適に用いることができる。
【0035】
また、Co等の金属は、中性子の照射により放射化して、それ自体がγ線源となるから、機能層の電子を効果的に励起させることができる点で好ましい。
【0036】
中間層の厚みは、導電性基材と機能層の密着性を高めると共に、機能層で発生した電子の流れを遮断しない範囲であれば特に限定されないが、後述する実施例から明らかな様に、これらの効果を有効に発揮させるには厚みを0.05μm以上とするのが好ましい。より好ましくは0.05μm超、さらに好ましくは0.1μm以上、一層好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1μm以上、とするのが望ましい。しかし中間層が厚くなり過ぎると、機能層との密着性は劣化しないものの該中間層自体が抵抗となって、機能層で励起生成した電子が基材へ到達し難くなり、また、コスト高となるので中間層の厚みは1.3mm以下とするのがよい。より好ましくは1.0mm未満、さらに好ましくは0.5mm以下、一層好ましくは0.3mm以下、とするのが良い。最も好ましくは20〜100μmの範囲である。
【0037】
中間層を形成する方法は特に限定されず、例えば、蒸着[物理的蒸着(PVD)や化学的蒸着(CVD)など]やスパッタリングなど公知の方法が採用できる。
【0038】
次に、本発明に係る金属構造体について説明する。
【0039】
本発明の金属構造体とは、電磁波の照射下で用いられる金属構造体に、上記防食用部材を導電状態で取り付けたものであり、特に前記金属構造体における溶接部または異種金属接触部の近傍に、上記防食用部材を導電状態で取り付けたものが好ましい。即ち、腐食が発生し易い部位の近傍に、本発明の防食用部材を取り付けることによって、腐食発生部における腐食電位を低下し、腐食発生を抑制できる。つまり、電磁波が防食用部材の機能層に照射されると電子が発生し、この電子は導電性基材を通り(必要に応じて形成された中間層を通り)金属構造体を通して溶接部や異種金属接触部へ供給される。そのため、溶接部や異種金属接触部における腐食電位が低下し、腐食発生が抑制されるのである。
【0040】
溶接部または異種金属接触部の近傍とは、防食用部材における機能層で発生した電子が溶接部や異種金属接触部へ供給される領域を指し、具体的には、溶接部または異種金属接触部境界から1m以内の領域である。溶接部および異種金属接触部境界の概略説明図を図1に示す。
【0041】
図1(a)中、1は溶接部を示しており、金属同士を溶接したときに得られる溶接金属部分である。図1(b)中、2は異種金属接触部境界を示しており、種類の異なる金属板3と4が接触している部分の外周線を指す。
【0042】
機能層で発生した電子は、導電性基材→(必要に応じて形成された中間層→)金属構造体を伝わって腐食発生部方向へ流れるが、このとき溶接部や異種金属接触部では、冷却水中のイオンとの電子の授受によってカソード反応が起こる。これに対し、機能層表面では、照射された電磁波によって電子が生成するアノード反応が起こる。そして、機能層で発生した電子を腐食発生部方向へ到達させるには、カソード反応とアノード反応を組み合わせた電気回路を形成する必要がある。そのため、腐食発生部と機能層を有する防食用部材との距離が大きくなり過ぎると、溶液の導電抵抗が大きくなって電気回路が形成されず、電子が腐食発生部へ供給され難くなる。この様な観点から防食用部材は、溶接部または異種金属接触部境界から1m以内の領域に設けることが推奨される。より好ましくは0.5m以内の領域である。
【0043】
防食用部材は、金属構造体に導電状態で取り付ける必要がある。機能層に電磁波が照射されることによって発生する電子を、腐食発生部に供給するためである。
【0044】
金属構造体に防食用部材を導電状態で取り付ける方法としては、金属構造体と防食用部材との間の導電性を確保できる方法であれば特に限定されず、例えば溶接やボルト止めなどが挙げられる。
【0045】
溶接部または異種金属接触部の近傍に取り付ける防食用部材の大きさ(即ち、機能層の面積)は、前記溶接部または異種金属接触部境界の単位長さ1m当たり25cm2以上とするのが好ましい。面積が25cm2未満では、機能層で発生する電子が少なく、腐食発生部へ供給される電子量の不足により、充分な防食効果が得られなくなる。より好ましくは50cm2以上とするのが好ましい。防食用部材の面積は、大きいほど電磁波の照射によって発生する電子の量が多くなって防食効果は高くなるが、金属構造体の形状からの制約等により、防食用部材の面積の上限値は適宜定めれば良い。
【0046】
なお、防食用部材の大きさを溶接部の単位長さに対して規定した理由は、溶接部の面積は溶材の溶け込み領域であり、溶接部周辺の熱影響部等を明確に特定するのが困難だからである。また、溶接部は、長さ方向と比べると幅は小さいからである。これに対し、防食用部材の大きさを、異種金属接触部境界の単位長さ当たりで規定した理由は、異種金属が接触している部分(面)よりも、異種金属が接触してできる境界部分に腐食が起こりやすいからである。
【0047】
本発明において防食の対象とする金属構造体とは、原子力発電プラント内において冷却水や水溶液中に浸漬されて用いられる金属構造体を指し、例えば、チャンネルボックスやシュラウド、原子炉容器、原子炉容器の蓋、一次系配管などが挙げられる。また、本発明の防食用部材は、使用済核燃料を輸送あるいは貯蔵するための密封容器(キャニスタ)の様に、大気中で用いられる容器に取り付けることによっても防食効果を得ることができる。キャニスタに結露等が生じ、該容器が水と接触することがあるからである。
【0048】
なお、本発明の防食用部材は、水を流通させる管やタンク等の構造物表面に蓄積するスケールや、構造物表面に付着する汚染物質を除去するための清浄用部材としても用いることができる。これは前述した通り、機能層表面に電磁波が照射させると、光触媒作用によって電子正孔が生成されて酸化還元反応が行なわれ、構造物に取り付けられた部材の機能層表面に付着した酸素や水と反応して活性種が生成され、この活性種が機能層表面に付着した汚染物質(例えば、スケールやバクテリア等の有機物など)を分解するからである。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0050】
実施例1
導電性基材の表面に機能層を設けるか、導電性基材の表面に中間層と機能層を設けた防食用部材を作製し、この防食用部材に電磁波を照射して、電磁波の照射後に自然発生する電位を測定した。なお、電磁波照射の影響を充分無視できるように参照電極は鉛ブロックで遮蔽している。
【0051】
導電性基材としては、JIS規格のSUS304LまたはSUS316Lを用いた。導電性基材の大きさは、20mm×30mm×1mm(L×W×T)である。
【0052】
この導電性基材表面に、▲1▼機能層としてZrO2を溶射して被覆形成するか、▲2▼中間層としてCoCr合金を溶射した後、機能層としてZrO2を溶射して被覆形成した。機能層の厚み(溶射皮膜厚み)は300〜900μmとし、中間層の厚みは0〜100μmとした。なお、Co−Cr合金におけるCoとCrの組成は50質量%:50質量%である。導電性基材の種類,中間層の厚みおよび機能層の厚みを夫々下記表1に示す。
【0053】
得られた防食用部材を0.05MのNa2SO4溶液へ浸漬し、この防食用部材に電磁波を照射した。電磁波としてはγ線を照射した。γ線の線源としては60Coを用い、γ線を照射した後、23時間経過後に防食用部材から自然発生する電位を測定した。γ線の照射強度は600Gy/hである。なお、23時間経過後に自然浸漬電位を測定する理由は、電磁波の照射により機能層で電子が発生し、電位が安定するまでに充分な時間(効果発現のために機能層中へ電解質溶液が浸透するのに充分な時間)であることが実験的に確かめられているからである。
【0054】
測定された自然浸漬電位に基づいて腐食電位低下性を評価した。自然浸漬電位に基づいて腐食電位低下性が評価できる理由は、電磁波の照射により機能層で自然発生する電子が多いほど、該機能層を有する防食用部材を金属構造体に取り付けたときに発生した電子が、機能層→(中間層→)導電性基材→金属構造体を経て腐食発生部に多く到達するからであり、これにより腐食電位が低下するからである。腐食電位低下性の評価基準は次の通りである。評価結果を下記表1に併せて示す。なお自然浸漬電位は、対水素標準電極を基準とした電位である。
【0055】
<腐食電位低下性の評価基準>
◎◎:非常に優れている(自然浸漬電位が、−350mV以下)
◎ :優れている(自然浸漬電位が、−350mV超〜−300mV)
○ :良好(自然浸漬電位が、−300mV超〜−250mV)
△ :普通(自然浸漬電位が、−250mV超〜−200mV)
□ :効果はあるが小さい(自然浸漬電位が、−200mV超)
【0056】
【表1】
Figure 0004233027
【0057】
溶射皮膜厚み(機能層の厚み)と自然浸漬電位の関係を図2および3に夫々示す。図2は導電性基材としてSUS304Lを用いたときの結果であり、図3は導電性基材としてSUS316Lを用いたときの結果である。図中、○は中間層を設けていないとき、△は中間層の厚みが20μmのとき、□は中間層の厚みが50μmのとき、◇は中間層の厚みが100μmのとき、の結果を夫々示している。
【0058】
表1および図2〜3から次の様に考察できる。本発明の要件を満足する防食用部材の中で特に中間層を設けたものについては、自然浸漬電位が−300mV以下であり、腐食電位低下性が良い。即ち、機能層において充分な電子が発生しているので、この防食用部材を金属構造体に取り付けることによって、腐食や応力腐食割れの発生し易い部分に効率良く簡便に電子を供給することができる。よって、この防食用部材を取り付けた金属構造体は、優れた防食性を示す。
【0059】
また、中間層を設けていない防食用部材は、中間層を設けたものよりも腐食電位低下性に劣るが、該防食用部材を金属構造体に取り付けることによって腐食や応力腐食割れの発生し易い部分に簡便に電子を供給できる。なお、中間層の厚みは、導電性基材と機能層のコンダクタンスを良好にする程度とすれば良い。
【0060】
なお、本発明の防食用部材は、図4に示す様に金属構造体に取り付ければ良い。図4中、1は溶接部、5は金属構造体、6は防食用部材を夫々示している。
【0061】
実施例2
次に、導電性基材の種類を変えて防食用部材を作製し、該防食用部材について腐食電位低下性と、密着性の一指標として耐スクラッチ性を夫々評価した。
【0062】
防食用部材は下記表2に示す導電性基材の表面に、下記表2に示す機能層を溶射して作製した。導電性基材としては、純Ni,純Co,純CrまたはCo−Cr合金を用いた。「純」とは純度が99%以上を指す。Co−Cr合金のCoとCrの組成は50質量%:50質量%である。この導電性基材の表面に、機能層としてTiO2,WO3またはZrO2のいずれかを溶射して被覆形成した。なお、導電性基材の大きさは、20mm×30mm×1mm(L×W×T)である。また、機能層の厚みは、TiO2:300μm,WO3:300μm,ZrO2:300μmである。
【0063】
得られた防食用部材を0.05MのNa2SO4溶液へ浸漬し、上記実施例1と同じ条件でこの防食用部材に電磁波を照射した後、23時間経過後に防食用部材から自然発生する電位を測定した。測定された自然浸漬電位に基づいて腐食電位低下性を評価し、評価結果を下記表2に併せて示す。
【0064】
一方、得られた防食用部材の耐スクラッチ性を、スクラッチ試験を行なって相対的に評価した。評価基準は次の通りである。結果を表2に示す。
【0065】
<耐スクラッチ性の評価基準>
◎◎:非常に優れている
◎ :優れている
○ :良好
△ :普通
× :劣る
【0066】
【表2】
Figure 0004233027
【0067】
表2から次の様に考察できる。No.31〜34は何れも本発明の要件を満足する防食用部材であり、腐食電位低下性が良く、さらに導電性基材と機能層の耐スクラッチ性(密着性)も良好である。即ち、機能層において充分な電子が発生しているので、この防食用部材を金属構造体に取り付けることによって、腐食や応力腐食割れの発生し易い部分に効率良く簡便に電子を供給することができる。よって、この防食用部材を取り付けた金属構造体は、優れた防食性を示す。また、本発明の防食用部材は、導電性基材表面に機能層を溶射して設けているので、溶射時の温度管理や雰囲気管理を容易に制御できた。そのため、導電性基材と機能層の耐スクラッチ性(密着性)が良好となったと考えられる。
【0068】
特に、導電性基材としてCo−Cr合金を用いると自然浸漬電位が低く、腐食電位低下性が良好となることが分かる。一方、機能層としては、ZrO2を設けた場合に自然浸漬電位が高くなり、腐食電位低下性が良好となることが分かる。
【0069】
実施例3
次に、導電性基材と機能層の間に中間層を設けた防食用部材を作製し、該防食用部材について腐食電位低下性と、密着性の一指標として耐スクラッチ性を夫々評価した。
【0070】
導電性基材は、大きさが20mm×30mm×1mm(L×W×T)のステンレス鋼(SUS304L)を用いた。この導電性基材の表面に、下記表3に示す中間層を溶射して被覆形成した。中間層としては、純Ni,純Co,純CrまたはCo−Cr合金を用いた。「純」とは純度が99%以上を指す。Co−Cr合金におけるCoとCrの組成は50質量%:50質量%である。中間層の厚みは、純Ni:20μm,純Co:20μm,純Cr:20μm,Co−Cr合金:20μmである。この中間層の表面に、機能層としてTiO2,WO3またはZrO2のいずれかを溶射して被覆形成した。なお、機能層の厚みは、TiO2:300μm,WO3:300μm,ZrO2:300μmである。
【0071】
得られた防食用部材について腐食電位低下性と耐スクラッチ性(密着性)を、上記実施例2と同じ条件で試験して評価した。評価結果を下記表3に併せて示す。
【0072】
なおNo.40は比較例であり、ステンレス鋼(SUS304L)製の模擬金属構造体を用い、この金属構造体表面に機能層を直接溶射して被覆形成した。機能層を溶射して形成する際には、金属構造体の温度管理や溶射時の雰囲気管理は行なっていない。
【0073】
【表3】
Figure 0004233027
【0074】
表3から次の様に考察できる。No.35〜39は何れも本発明の要件を満足する防食用部材であり、腐食電位低下性が良く、さらに導電性基材と機能層の耐スクラッチ性(密着性)も良好である。即ち、機能層において充分な電子が発生しているので、この防食用部材を金属構造体に取り付けることによって、腐食や応力腐食割れの発生し易い部分に効率良く簡便に電子を供給することができる。よって、この防食用部材を取り付けた金属構造体は、優れた防食性を示す。また、本発明の防食用部材は、導電性基材表面に機能層を溶射して設けているので、溶射時の温度や雰囲気管理を容易に制御できた。そのため、導電性基材と機能層の耐スクラッチ性(密着性)が良好となったと考えられる。
【0075】
特に、導電性基材と機能層の間に該導電性基材とは異なる金属よりなる中間層を設けると、耐スクラッチ性(密着性)を高めることができる。また、中間層としては、CoまたはCrを主体として含む金属(Co−Cr合金を含む)を設けることが好ましいことが分かる。なお、CoまたはCrを主体として含む金属を設けることによって、機能層の耐スクラッチ性(密着性)向上に加えて、電磁波により励起された触媒作用とCoやCrの助触媒作用が相俟って、耐食性向上効果も得ることができると考えられる。機能層としては、ZrO2を設けることが好ましいことが分かる。
【0076】
なお、No.35はステンレス鋼(導電性基材)の表面に機能層を設けた防食用部材であるが、従来の様に金属構造体の表面に直接機能層を設けるよりも導電性材料と機能層の耐スクラッチ性(密着性)を良好にできる。
【0077】
一方、No.40は比較例であり、模擬金属構造体の表面に直接機能層を溶射して被覆形成しているので、溶射時の温度や雰囲気管理ができておらず、金属構造体と機能層の耐スクラッチ性(密着性)が劣悪となる。よって、機能層を金属構造体表面へ直接被覆形成する方法では、機能層が金属構造体から容易に剥離して金属構造体の防食性を高めることができないと考えられる。
【0078】
実施例4
厚みを種々変化させた中間層と機能層を導電性基材の表面に設けた防食用部材を作製し、この防食用部材に電磁波を照射したときの自然浸漬電位を測定し、この電位に基づいて腐食電位低下性を評価した。なお、電磁波照射の影響を充分無視できるように参照電極は鉛ブロックで遮蔽している。
【0079】
導電性基材としては、JIS規格のSUS316Lを用いた。導電性基材の大きさは、20mm×20mm×1mm(L×W×T)である。
【0080】
この導電性基材の表面に、中間層としてCo−Cr合金を被覆した後、機能層としてZrO2を被覆して防食用部材を得た。中間層と機能層の厚みを夫々下記表4および5に示す。なお、Co−Cr合金の組成は、CoとCrが50質量%:50質量%である。
【0081】
得られた防食用部材をアルゴンガスで脱気した0.05mol/LのNa2SO4溶液に浸漬し、この防食用部材に電磁波を照射した。電磁波としては60Coを線源とするγ線を照射した。照射強度600Gy/hでγ線を照射した後、23時間経過後に試験片から自然発生する電位(自然浸漬電位)を測定した。なお、23時間経過後に自然浸漬電位を測定する理由は、電磁波の照射により機能層で電子が発生し、電位が安定するまでに充分な時間(効果発現のために機能層中へ電解質溶液が浸透するのに充分な時間)であることが実験的に確かめられているからである。
【0082】
測定された自然浸漬電位に基づいて腐食電位低下性を評価した。自然浸漬電位に基づいて腐食電位低下性を評価できる理由は、電磁波の照射により機能層で自然発生する電子が多いほど、該電子が機能層→中間層→導電性基材を通して金属構造体へ多く到達するからであり、これにより腐食電位が低下するからである。腐食電位低下性の評価基準は前記実施例1と同じである。評価結果を下記表4に併せて示す。なお自然浸漬電位は、水素電極基準電位である。
【0083】
次に、密着性の一指標として、上記で得られた防食用部材を90°に折り曲げたときの機能層の剥離状態から、機能層との耐曲げ剥離性(密着性)を評価した。評価基準は次の通りであり、評価結果を下記表5に併せて示す。
【0084】
<耐曲げ剥離性の評価基準>
◎:剥離面積が10%以下(良好)
○:剥離面積が10%超〜20%
△:剥離面積が20%超〜50%
□:剥離面積が50%超〜60%
×:剥離面積が60%超(不良)
【0085】
【表4】
Figure 0004233027
【0086】
【表5】
Figure 0004233027
【0087】
表4および5から明らかな様に、機能層と導電性基材の間に中間層を設けることによって、導電性基材の腐食電位を低下させることができると共に、良好な曲げ耐曲げ剥離性(密着性)を示す防食用部材となる。
【0088】
実施例5
導電性基材の表面に設ける中間層と機能層の種類を変えた防食用部材を作製し、この防食用部材について、上記実施例4と同様に、腐食電位低下性と耐曲げ剥離性(密着性)を夫々評価した。
【0089】
導電性基材は、大きさが20mm×20mm×1mm(L×W×T)のステンレス鋼(SUS316L)を用いた。
【0090】
この導電性基材の表面に、下記表6に示す中間層を被覆形成した。中間層としては、純Fe,純Cu,純Ni,純Co,純Cr,純Ti,純ZrまたはCo−Cr合金を用いた。純とは各元素含量が99質量%以上を指す。Co−Cr合金の組成は、CoとCrが50質量%:50質量%である。なお、中間層の厚みは全て10μmである。
【0091】
この中間層の表面に、下記表6に示す機能層を被覆形成した。機能層としては、WO3,TiO2またはZrO2のいずれかを被覆形成した。なお、機能層の厚みは全て100μmである。
【0092】
得られた試験片について腐食電位低下性と耐曲げ剥離性(密着性)を、上記実施例4と同じ条件で試験して評価した。評価結果を下記表6に併せて示す。
【0093】
【表6】
Figure 0004233027
【0094】
表6から明らかな様に、機能層と導電性基材の間に中間層を設けることによって、腐食電位を低下させることができると共に、良好な耐曲げ剥離性(密着性)を示す防食用部材となる。特に中間層としてNi,Co,Cr,TiまたはZrを含む層を設けると、機能層との耐曲げ剥離性(密着性)を一段と高めることができる。
【0095】
【発明の効果】
本発明によれば、金属構造体とは異なる導電性基材(または中間層)の表面に機能層を設けているので、機能層を形成する際の温度や雰囲気管理を容易にでき、導電性基材と機能層の密着性を飛躍的に高めることができる。そのため電磁波の照射下で用いられる金属構造体の腐食発生を、効率良く簡便に抑制するための防食用部材を提供できる。また、金属構造体において防食が求められる特定部位に本発明の防食用部材を取り付けることによって、電磁波の照射下で用いられる防食性に優れた金属構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 溶接部および異種金属接触部の位置を示す概略図である。
【図2】 溶射皮膜厚み(機能層の厚み)と自然浸漬電位の関係を示すグラフである。
【図3】 溶射皮膜厚み(機能層の厚み)と自然浸漬電位の関係を示すグラフである。
【図4】 金属構造体の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 溶接部
2 異種金属接触部境界
3 金属板
4 金属板
5 金属構造体
6 防食用部材

Claims (8)

  1. 金属構造物に取り付けることにより該金属構造物における溶接部または異種金属接触部での腐食を抑制するための部材であって、
    電磁波の照射によって電子を発生する機能層が、導電性基材表面に設けられ、且つ前記導電性基材と前記機能層の間に、導電性基材とは異なる金属よりなる中間層が設けられ、この中間層はCoまたはCrを主体として含む金属からなるものであることを特徴とする防食用部材。
  2. 前記機能層が、金属酸化物,金属炭化物および金属窒化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものである請求項1に記載の防食用部材。
  3. 前記導電性基材が、Fe,Cu,Ti,Zr,Ni,CoおよびCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む金属である請求項1または2に記載の防食用部材。
  4. 前記中間層の厚みが0.05μm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の防食用部材。
  5. 機能層の厚みが1μm〜13mmである請求項に記載の防食用部材。
  6. 電磁波の照射下で用いられる金属構造体に、前記請求項1〜の何れかに記載の防食用部材が導電状態で取り付けられていることを特徴とする金属構造体。
  7. 前記金属構造体における溶接部または異種金属接触部境界から1m以内の領域に、前記防食用部材を導電状態で取り付けたものである請求項に記載の金属構造体。
  8. 前記防食用部材における前記機能層の表面積が、前記溶接部または異種金属接触部境界の単位長さ1m当たり25cm以上である請求項に記載の金属構造体。
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