JP4430372B2 - 耐食性に優れた金属構造体、前記金属構造体を製造するための材料および前記金属構造体の製法 - Google Patents

耐食性に優れた金属構造体、前記金属構造体を製造するための材料および前記金属構造体の製法 Download PDF

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Description

本発明は、電磁波の照射下で使用される金属構造体、該金属構造体を製造するための材料および前記金属構造体の製法に関するものである。
原子力発電プラントでは、その構成材料として炭素鋼やステンレス鋼,ニッケル合金などが用いられ、原子炉冷却材として水が用いられる。この冷却水は、放射線の照射を受けると放射線分解し、酸素や過酸化水素などの酸化性物質を生成する。生成したこれらの酸化性物質は冷却水中に溶解し、原子炉自体や水冷却系配管などの構造体に腐食あるいは応力腐食割れを生じさせる原因になることが知られている。しかし、構造体に腐食や応力腐食割れが生じても、補修・交換するには原子炉を停止する必要があり、実操業では頻繁に補修・交換するのは困難である。
また、原子力発電プラントからは使用済核燃料が排出されるが、この使用済核燃料を貯蔵あるいは輸送するための密封容器(キャニスタ)などの構造体を構成する材料としても、炭素鋼やステンレス鋼などが用いられており、この密封容器に結露等が生じたときも、該容器に付着した水が放射線の照射によって分解して酸化性物質を生成する。さらに、一般的に用いられているコンクリートキャスクは、コンクリートキャスク本体(遮蔽体)とキャニスタの間に外気を対流させることにより除熱しているが、このとき外気に塩化物イオン等の高腐食性物質が含まれていると(例えば、潮風)、この物質は密封容器表面に付着して腐食あるいは応力腐食割れを生じる可能性がある。しかし、容器内に使用済核燃料を貯蔵している場合は、密閉容器に腐食や応力腐食割れが生じても、補修・交換できないのが現状である。
ところで、腐食あるいは応力腐食割れの発生およびこれらの進展には腐食電位が影響を及ぼし、環境の腐食電位が低いほど腐食あるいは応力腐食割れを起こし難くなることが知られている。そして、腐食あるいは応力腐食割れの低減対策としては、原子炉内で受ける光や放射線の照射により起電する光触媒物質を、原子炉構造材の表面に付着させておくことによって、発生した電子を構造材へ供給し、該環境の腐食電位を低くすることで腐食あるいは応力腐食割れの発生を抑制する技術が開示されている(例えば、特許文献1や特許文献2等)。これらの技術では、原子炉構造材の表面に光触媒物質を直接付着させる方法として、(1)光触媒物質を注入した冷却水を原子炉構造材内に循環させて付着させる方法や、(2)ロボットなどを用いて光触媒物質を所定の部位に吹き付ける方法、(3)原子炉構造材の表面にPVD法やCVD法などで光触媒物質膜を直接形成する方法、などが例示されている。
しかし本発明者らが検討したところ、上記(1)の方法では、光触媒物質の適切な注入量を定めることは難しく、また原子炉構造材の表面に光触媒物質が確実に付着しているかどうかを確認することも困難であった。上記(2)の方法では、光触媒物質を所定の部位に付着させることはできるものの、光触媒物質と原子炉構造材との密着性が悪いため光触媒物質が剥離し易い。上記(3)の方法においては、PVD法やCVD法で光触媒物質膜を直接形成する際には、チャンバー中で減圧処理する必要があり、原子炉構造材の特定部位に光触媒物質膜を密着性良く付着させることは容易でない。よって、上記特許文献1や2に提案されている技術では、原子炉構造材の腐蝕電位を低くできない場合があり、腐蝕あるいは応力腐蝕割れの発生を充分に抑制できないことがあった。
また、光触媒物質膜の形成は難しく、膜欠陥を生じると基材からの剥離と相俟って構造材の耐食性を劣化させるという問題があった。
特開2001-4789号公報([特許請求の範囲]、[0018]、[0049]〜[0050]、[0081]〜[0083]参照) 特開2001-276628号公報([特許請求の範囲]、[0029]、[0034]〜[0035]、[0087]参照)
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、第一の目的は、電磁波の照射下で使用される場合でも良好な耐食性を示す金属構造体を提供することにある。第二の目的は、前記金属構造体を製造するために好適に用いることのできる材料を提供することにある。第三の目的は、前記金属構造体の製法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る耐食性に優れた金属構造体とは、電磁波の照射下で使用される金属構造体であって、基材の一部または全部に、耐食性を高めるための導電性中間層を介して、電磁波の照射によって電子を発生する機能層が設けられている点に要旨を有する。
前記耐食性に優れた金属構造体を製造するために好適に用いることのできる材料とは、基材の一部または全部に、耐食性を高めるための導電性中間層を介して、電磁波の照射によって電子を発生する機能層が設けられている点に要旨を有する。
前記導電性中間層としては、Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiおよびZrよりなる群から選ばれる1種以上を含むものが好ましい。また、前記導電性中間層としては、腐食電位を低下させる作用を有するものが好ましい。前記導電性中間層の厚みは0.05μm以上であり、且つ、前記機能層の厚みは1μm〜13mmであるものが好ましい。前記機能層としては、金属酸化物,金属炭化物および金属窒化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。
前記耐食性に優れた金属構造体を製造するための方法とは、基材表面の一部または全部に、耐食性を高めるための導電性中間層を設け、さらに該導電性中間層の表面に、電磁波の照射によって電子を発生する機能層を設ける点に要旨を有する。
本発明によれば、電磁波の照射下で使用される場合でも良好な耐食性を示す金属構造体を提供することができる。また、前記金属構造体を製造するための材料を提供することができる。さらに、前記金属構造体の製法を提供することができる。
上述した様に、原子炉構造材と光触媒物質との密着性は良好とは言えず、光触媒物質が剥離すると防食効果が発揮されなくなる。また、光触媒物質膜の形成は難しく、膜欠陥が生じると構造材からの剥離と相俟って構造材表面が腐食環境下に曝され、構造材の耐食性を著しく劣化させる原因となる。その一方で、放射線の照射下で使用される構造体を補修・交換することは非常に難しい。
そこで本発明者らは、構造材の耐食性向上を目指して、様々な角度から検討してきた。その結果、構造材を構成する材料と光触媒物質の間に、耐食性を高めるための導電性中間層を設けてやれば良いことを見出し、本発明を完成した。以下、本発明の作用効果について説明する。
本発明の金属構造体とは、基材の一部または全部に、耐食性を高めるための導電性中間層を介して、電磁波の照射によって電子を発生する機能層が設けられているものである。
電磁波の照射によって電子を発生する機能層とは、エネルギーが比較的高い電磁波の照射により価電子帯から伝導帯へ励起されて電子を放出する層である。後述する様に、機能層で発生した電子が、機能層から導電性中間層を通して基材へ供給されることにより、基材でのカソード反応が促進されて腐食電位が低下し、基材の腐食および応力腐蝕割れ(以下「腐食」で代表する場合がある)が大幅に抑制されるのである。
ここで、エネルギーが比較的高い電磁波とは、波長が400nm以下の電磁波(即ち、可視光線よりも波長の短い電磁波)であり、具体的には、紫外線や放射線(例えば、α線やβ線、γ線、X線、中性子線等)などが含まれる。
機能層を設ける位置やその面積は特に限定されず、基材の一部に設けても良いし、基材の全部に設けても良い。但し、機能層を基材の全部(全面)に設けるとコスト高となるので、機能層は基材の一部に設けることが好ましい。特に、腐食や応力腐食割れは基材同士を接続した溶接部等の部位で発生し易いので、基材同士の接続部近傍の周囲に機能層を設けることが推奨される。また、機能層は基材の片面(おもて面又はうら面)のみに設けても良いし、両面(おもて面とうら面)に設けても構わないが、水と接触する面に設ける必要がある。
本発明の金属構造体は、前記機能層と前記基材の間に、基材の耐食性を高めるための導電性中間層を設けることが重要である。中間層として導電性の層を設けることによって機能層で発生した電子が導電性中間層を通って基材へ供給され、基材におけるカソード反応が促進されて腐食電位を低下し、防食効果が得られるからである。そして、機能層と基材の間に導電性中間層を設けることによって、上記機能層に多少の欠陥が生じても基材表面が腐食環境下に曝されることはなく、金属構造体の耐食性を高めることができる。
従って、上記導電性中間層は、機能層で発生した電子が基材へ移動するのを遮断しないものであれば特に限定されず、良導体のみならず半導体であってもよい。つまり、導電性中間層は、機能層で発生した電子がわずかでも基材へ供給されればよいのである。但し、基材と同一組成の材料を中間層として設けたとしても機能層との密着性向上効果は望めないので、基材と同一組成の材料は除かれる。
なお、基材の種類は特に限定されず、炭素鋼やステンレス鋼、ニッケル合金、ジルカロイ(ジルコニウム金属)などの金属が一般に用いられる。
本発明の金属構造体は、後述する様に、金属構造体の一部または全部に、上記導電性中間層を介して機能層を設けても製造できるが、基材の一部または全部に、耐食性を高めるための導電性中間層を介して、電磁波の照射によって電子を発生する機能層が設けられている金属構造体用材料を用いて製造しても構わない。即ち、この金属構造体用材料は、温度や雰囲気等を厳密に管理した環境下で基材表面に導電性中間層や機能層を設けることができるので、密着性が良好で欠陥の少ない材料を得ることができる。その結果、この金属構造体用材料を用いて製造される金属構造体は、耐食性に優れたものとなる。
ところで、導電性中間層の構成素材としては、Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiおよびZrよりなる群から選ばれる1種以上を含むものが好ましい。これらの元素を含む層は、酸化物等よりも欠陥の発生が少なく、特に金属は延性が高いため成膜の際の熱応力を緩和できるので、機能層に欠陥が生じたとしても基材が腐食環境下に露出し難く、基材の耐食性が向上するからである。
より好ましくはNi,Co,Cr,TiおよびZrよりなる群から選ばれる1種以上を含むものがよい。これらの元素は、環境の腐食電位を低下させる作用を有するからである。
Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiおよびZrよりなる群から選ばれる元素の含量は特に限定されないが、これらの元素を導電性中間層に対して10質量%程度以上含有してやれば導電性が良好となるので好ましい。より好ましくは20質量%程度以上、さらに好ましくは50質量%程度以上である。なお、残部は特に限定されないが、例えば、酸化物等が挙げられる。
より具体的には、(1)Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiまたはZrのいずれか1種を50質量%以上含む鉄合金,銅合金,ニッケル合金,コバルト合金,クロム合金,チタン合金またはジルコニウム合金、(2)Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiおよびZrよりなる群から選ばれる1種を90質量%以上含む金属、(3)Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiおよびZrよりなる群から選ばれる1種を99質量%以上含む純鉄や純銅,純ニッケル,純コバルト,純クロム,純チタン,純ジルコニウム、などが例示される。
また、導電性中間層は、上記元素群から任意に選択される2種以上を含む合金でも良く、例えば、ニッケルとコバルトの合金,コバルトとクロムの合金,クロムとニッケルの合金などが挙げられる。このときの合金組成は特に限定されず、例えばCoとCrの組成が50質量%:50質量%であっても構わない。特にCo,NiまたはCrを主体として含む金属は、機能層との密着を高める作用に加えて耐食性も高めるので導電性中間層として好適に用いることができる。またCoは、中性子の照射により下記式の様に放射化し、60Coはγ線源となる。よって、導電性中間層としてCoを含有させることで、Coを予め放射化させるか、使用中に中性子を照射することによりγ線源とすることが期待でき、この層自体からγ線が発生して機能層の電子を励起させることも可能となる。
59Co+n→60Co
導電性中間層の厚みは、基材と機能層の密着性を高めると共に、機能層で発生した電子の流れを遮断しない範囲であれば特に限定されないが、後述する実施例から明らかな様に、これらの効果を有効に発揮させるには厚みを0.05μm以上とするのが好ましい。より好ましくは0.05μm超、さらに好ましくは0.1μm以上、一層好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1μm以上、とするのが望ましい。しかし導電性中間層が厚くなり過ぎると、機能層との密着性は劣化しないものの該中間層自体が抵抗となって、機能層で励起生成した電子が基材へ到達し難くなり、また、コスト高となるので導電性中間層の厚みは1.3mm以下とするのがよい。より好ましくは1.0mm未満、さらに好ましくは0.5mm以下、一層好ましくは0.3mm以下、とするのが良い。最も好ましくは20〜100μmの範囲である。
一方、機能層の厚みは、電磁波の照射により電子を発生できる程度であれば特に限定されないが、後述する実施例から明らかな様に、この効果を有効に発揮させるには厚みを1μm以上とするのが好ましい。より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上とするのが望ましい。但し、機能層が厚くなり過ぎると、機能層自体の剥離を生じるので、厚みは13mm以下とするのが好ましい。より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下、特に好ましくは1mm以下とするのが良い。
機能層の好ましい構成素材としては、光触媒として用いられる金属酸化物,金属炭化物および金属窒化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものを挙げることができ、これらを任意に組み合わせた2種以上を混合した層を設けても良い。金属酸化物としては、例えば、TiO2やZrO2,Al23,PbO,BaTiO3,Bi23,ZnO,WO3,SrTiO3,Fe23,FeTiO3,KTaO3,MnTiO3,SnO2などが挙げられる。金属炭化物としては、例えば、Al43やUC,U23,CaC2,SiC,ZrC,W2C,WC,TaC,TiC,Fe3C,HfC,B4C,Mn3Cなどが挙げられる。金属窒化物としては、例えば、AlNやCrN,SiN4,BN,Mg32,Li3Nなどが挙げられる。
上記機能層の中でも結晶格子の酸素サイトに空孔が生じやすいという理由で、金属酸化物を含む層がより好ましく、金属酸化物の中でも酸化チタン(TiO2),酸化ジルコニウム(ZrO2)および酸化アルミニウム(Al23)より選ばれる1種以上を含む層がさらに好ましい。特に好ましくはZrO2である。ZrO2はバンドギャップが大きいため、一旦励起された電子を無駄なく利用できるからである。即ち、励起された電子が基材へ供給されることにより環境の腐食電位を低下させ、腐食を抑制できる。またZrO2は、水の分解に起因する水素発生電位と酸素発生電位との間にまたがる領域にバンドギャップを有しているため、腐食の進行を一層効率良く抑制できる。なお、ジルコニウム系の金属は、原子炉内で使用されるチャンネルボックスや燃料被覆管などの材料としても既に実用化されており、原子炉内での使用実績もある。この様な観点からも、前記機能層としては、ZrO2を採用することが最も好ましい。
本発明の金属構造体は、上述した様に、基材表面に導電性中間層を介して機能層を設けた金属構造体用材料を用いて製造することができるが、基材表面の一部または全部に、耐食性を高めるための導電性中間層を設け、さらに該導電性中間層の表面に、電磁波の照射によって電子を発生する機能層を設けることによっても製造できる。
導電性中間層や機能層を形成する方法としては、例えば、溶射や蒸着[物理的蒸着(PVD)や化学的蒸着(CVD)など]、スパッタリングなど公知の方法が採用できる。また、シート状に形成した導電性中間層(または機能層)を基材(または導電性中間層)の表面に設けても良い。特に、本発明の金属構造体用材料は、基材表面に導電性中間層と機能層を設ける際に、温度や雰囲気等を管理できるので、性状が良好な材料となる。
本発明における金属構造体とは、主として原子力発電プラント内で冷却水や水溶液と接触する環境下で用いられる構造物であり、例えば、チャンネルボックスやシュラウド、原子炉容器、原子炉容器の蓋、水冷却配管などの金属構造体を指す。また、使用済核燃料を輸送あるいは貯蔵するための密封容器(キャニスタ)の様に、大気中で用いられる金属構造体も本発明の金属構造体に含まれる。キャニスタに結露等が生じ、該容器が水と接触することがあるからである。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1
厚みを種々変化させた導電性中間層と機能層を基材表面に設けた試験片を作製し、この試験片に電磁波を照射したときの自然浸漬電位を測定し、この電位に基づいて腐食電位低下性(耐応力腐食割れ性)を評価した。なお、電磁波照射の影響を充分無視できるように参照電極は鉛ブロックで遮蔽している。
また、作製した試験片を90°に折り曲げ、機能層の剥離状態から機能層との密着性を評価した。
基材としては、JIS規格のSUS316Lを用いた。基材の大きさは、20mm×20mm×1mm(L×W×T)である。
この基材の表面(おもて面)に、導電性中間層としてCoCr合金を被覆した後、機能層としてZrO2を被覆して試験片を得た。導電性中間層と機能層の厚みを夫々下記表1に示す。なお、CoCr合金の組成は、CoとCrが50質量%:50質量%である。また、おもて面のうち機能層を設けていない端面と、基材のうら面にはマスキングしている。
得られた試験片をアルゴンガスで脱気した0.05mol/LのNa2SO4溶液に浸漬し、この試験片に電磁波を照射した。電磁波としては60Coを線源とするγ線を照射した。照射強度600Gy/hでγ線を照射した後、23時間経過後に試験片から自然発生する電位(自然浸漬電位)を測定した。なお、23時間経過後に自然浸漬電位を測定する理由は、効果発現のために機能層中へ電解質溶液が浸透する時間が必要であることが実験的に確かめられているからである。
測定された自然浸漬電位に基づいて腐食電位低下性を評価した。自然浸漬電位に基づいて腐食電位低下性を評価できる理由は、電磁波の照射により機能層で自然発生する電子が多いほど、該電子が機能層→導電性中間層を通して基材(金属構造体)へ多く到達するからであり、これにより腐食電位が低下するからである。腐食電位低下性の評価基準は次の通りである。評価結果を下記表1に併せて示す。なお自然浸漬電位は、水素電極基準電位である。
<腐食電位低下性の評価基準>
◎◎:非常に優れている(自然浸漬電位が、−350mV以下)
◎ :優れている(自然浸漬電位が、−350mV超〜−300mV)
○ :良好(自然浸漬電位が、−300mV超〜−250mV)
△ :普通(自然浸漬電位が、−250mV超〜−200mV)
□ :効果はあるが小さい(自然浸漬電位が、−200mV超)
一方、上記で得られた試験片を90°に折り曲げて機能層との密着性を評価した。評価基準は次の通りであり、評価結果を下記表1に併せて示す。
<密着性の評価基準>
◎:剥離面積が10%以下(良好)
○:剥離面積が10%超〜20%
△:剥離面積が20%超〜50%
□:剥離面積が50%超〜60%
×:剥離面積が60%超(不良)
Figure 0004430372
表1から明らかな様に、機能層と基材の間に導電性中間層を設けることによって、環境の腐食電位を低下させることができると共に、機能層との密着性を高めることができる。
実施例2
次に、基材表面に設ける導電性中間層と機能層の種類を変えた試験片を作製し、この試験片について腐食電位低下性と密着性を評価した。
基材は、大きさが20mm×20mm×1mm(L×W×T)のステンレス鋼(SUS316L)を用いた。
この基材の表面に、下記表2に示す導電性中間層を被覆形成した。導電性中間層としては、純Fe,純Cu,純Ni,純Co,純Cr,純Ti,純Zr,CoCr合金またはNiCr合金を用いた。純とは各元素含量が99質量%以上を指す。CoCr合金の組成はCoとCrが50質量%:50質量%、NiCr合金の組成はNiとCrが50質量%:50質量%である。なお、導電性中間層の厚みは全て10μmである。
この導電性中間層の表面に、下記表2に示す機能層を被覆形成した。機能層としては、WO3,TiO2,ZrO2またはAl23のいずれかを被覆形成した。なお、機能層の厚みは全て100μmである。
得られた試験片について腐食電位低下性と密着性を、上記実施例1と同じ条件で試験して評価した。評価結果を下記表2に併せて示す。
Figure 0004430372
表2から明らかな様に、機能層と基材の間に導電性中間層を設けることによって、腐食電位を低下させることができると共に、機能層との密着性を高めることができる。特に導電性中間層としてNi,Co,Cr,TiまたはZrを含む層を設けると、機能層との密着性を一段と高めることができる。

Claims (6)

  1. 電磁波の照射下で使用される金属構造体であって、
    基材の一部または全部に、耐食性を高めるための導電性中間層を介して、電磁波の照射によって電子を発生する機能層が設けられており、
    前記導電性中間層が、
    (1)Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiまたはZrのいずれか1種を50質量%以上含む鉄合金,銅合金,ニッケル合金,コバルト合金,クロム合金,チタン合金またはジルコニウム合金、
    (2)Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiおよびZrよりなる群から選ばれる1種を90質量%以上含む金属、
    (3)Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiおよびZrよりなる群から選ばれる1種を99質量%以上含む純鉄,純銅,純ニッケル,純コバルト,純クロム,純チタン,または純ジルコニウム、
    (4)ニッケルとコバルトの合金、コバルトとクロムの合金、またはクロムとニッケルの合金、
    のいずれかからなることを特徴とする耐食性に優れた金属構造体。
  2. 請求項1に記載の金属構造体を製造するための材料であって、
    基材の一部または全部に、耐食性を高めるための導電性中間層を介して、電磁波の照射によって電子を発生する機能層が設けられており、
    前記導電性中間層が、
    (1)Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiまたはZrのいずれか1種を50質量%以上含む鉄合金,銅合金,ニッケル合金,コバルト合金,クロム合金,チタン合金またはジルコニウム合金、
    (2)Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiおよびZrよりなる群から選ばれる1種を90質量%以上含む金属、
    (3)Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiおよびZrよりなる群から選ばれる1種を99質量%以上含む純鉄,純銅,純ニッケル,純コバルト,純クロム,純チタン,または純ジルコニウム、
    (4)ニッケルとコバルトの合金、コバルトとクロムの合金、またはクロムとニッケルの合金、
    のいずれかからなることを特徴とする耐食性に優れた金属構造体用材料。
  3. 前記導電性中間層が、腐食電位を低下させる作用を有するものである請求項1または2に記載の金属構造体または金属構造体用材料。
  4. 前記導電性中間層の厚みが0.05μm以上であり、且つ、
    前記機能層の厚みが1μm〜13mmである請求項1〜のいずれかに記載の金属構造体または金属構造体用材料。
  5. 前記機能層が、金属酸化物,金属炭化物および金属窒化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものである請求項1〜のいずれかに記載の金属構造体または金属構造体用材料。
  6. 請求項1に記載の金属構造体を製造するための方法であって、
    基材表面の一部または全部に、耐食性を高めるための下記(1)〜(4)のいずれかからなる導電性中間層を設け、さらに該導電性中間層の表面に、電磁波の照射によって電子を発生する機能層を設けることを特徴とする耐食性に優れた金属構造体の製法。
    (1)Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiまたはZrのいずれか1種を50質量%以上含む鉄合金,銅合金,ニッケル合金,コバルト合金,クロム合金,チタン合金またはジルコニウム合金。
    (2)Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiおよびZrよりなる群から選ばれる1種を90質量%以上含む金属。
    (3)Fe,Cu,Ni,Co,Cr,TiおよびZrよりなる群から選ばれる1種を99質量%以上含む純鉄,純銅,純ニッケル,純コバルト,純クロム,純チタン,または純ジルコニウム。
    (4)ニッケルとコバルトの合金、コバルトとクロムの合金、またはクロムとニッケルの合金。
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