JP4230896B2 - 形状測定装置及びその校正方法 - Google Patents
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Description
そこで,高精度かつ高速に形状を測定する方法として,干渉計を利用した形状測定方法が注目される(特許文献1及び特許文献2参照)。この方法では,試料の両面側に干渉計を対向配置して両面形状を測定し,表裏の面形状の差から厚さを測定する。
また,特許文献2は,参照面相互の平行度(角度)を検出し,それに基づいて測定結果を補正している。
また,干渉計がフィゾー干渉計である場合は,その光学面を絶対測定する手法として,「3面合わせ」による表面形状測定方法が知られている(特許文献3参照)。
ここで,入射角θはレーザ波長であるλと比較すれば確定的な値ではなく,光学部品の微小な角度変動により変動してしまう。このため,形状測定を実施する都度に入射角θの測定を実施して,精確縞感度を求める必要が生じる。この点は,フィゾー干渉計においても光学部品の平行度の影響により入射角が完全に垂直ではないため縞感度は変動するものと考える必要がある。
また,半導体ウェーハ等の精密製品の形状測定では,厚さ分布がわずか数マイクロメートルの範囲であることが珍しくない。その場合,対向配置された各干渉計により観測される縞数はウェーハの両面でほぼ同数となる。観測している領域で縞数を最も少なくすると,その領域でのそりが測定され,そのときの縞数がnであれば,そりの大きさは,値{(λ/2cosθ)×n}となる。
縞感度(λ/2cosθ)の誤差が試料の両面でそれぞれ(k×100)%であるとすると,一方の面における縞感度誤差に起因する形状誤差は,値{k(λ/2cosθ)×n}となる。試料の厚さは表面の形状と裏面の形状との差として求められるので,厚さの誤差はその2倍である値2{k(λ/2cosθ)×n}となる。
これは,縞数が多くなれば,厚さの誤差が増加することを意味している。したがって,精確に厚さを測定するためには縞感度の測定誤差を小さくすると共に,縞数を可能な限り小さくするように干渉計と試料との角度位置関係を調整する必要が生じる。つまり,参照面と試料表面とができるだけ平行となるように角度位置を調整する必要がある。
また,前掲した3面合わせによる手法をシェアリング干渉計や斜入射干渉計に適用することも考えられる。ところが,これらの干渉計においては参照光と物体光が異なる経路を通ることから測定光の位相分布も校正すべき要素となること,及び,特に斜入射干渉計の場合には,図6に示すように,参照面の2点の位置の光路差が関係していること,といった理由から適用は困難である。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,より低コストにかつ精確に校正処理を実行することができる形状測定装置及び形状測定装置の校正方法を提供することにある。
この構成によって,2つの角度位置関係で前記調整用試料両面のそれぞれの傾きを測定するといった簡易な処理により前記一対の斜入射干渉計各々の縞感度の誤差を補正して形状測定装置の校正を実施することができる。これにより,縞感度の誤差に起因する測定誤差を小さくするために,形状測定手段としての例えば干渉計の参照面と試料とを略平行に設定するためのアクチュエータ等を省略することが可能となるとともに,略平行に設定するのに要する時間を省略することができる。
この構成によって,反転軸により反転される校正用試料両面の形状を測定するといった簡易な処理により得られる測定データを用いて,参照面の変位を表す校正用データを求めることができる。すなわち,薄片の形状を測定する形状測定装置においては,後述するように,厚さ分布が既知である校正用試料を用意することは比較的容易であるが,変形し難い校正用試料を用意することは容易ではない。しかしながら,厚さ分布自体は試料の通常の変形によっては変動しない。このため,校正用試料を反転して各面の形状を測定することにより得られる測定データを用いることによって,薄片の形状を測定する形状測定装置においても精確な校正用データを求めることができる。
これにより,2つの角度位置関係で前記調整用試料両面のそれぞれの傾きを測定するといった簡易な処理により,形状測定結果の傾き誤差の補正量を求める補正関数を設定し,形状測定装置の校正を実施することができる。その結果,縞感度の誤差に起因する測定誤差を小さくするために,例えば,形状測定手段としての干渉計における測定光の入射角度の微調整を行うこと等に要する時間を省略することができる。
式(3):F1−B1−Δ(F1)=F2−B2−Δ(F2)
式(4):F1−B1−Δ(B1)=F2−B2−Δ(B2)
ただし,F:前記板状試料の形状測定の際に前記形状測定手段により測定される前記板状試料の一方の面の傾き,B:前記板状試料の形状測定の際に前記形状測定手段により測定される前記板状試料の他方の面の傾き,F1:前記第1傾き測定手段により測定される前記調整用試料の一方の面の傾き,F2:前記第2傾き測定手段により測定される前記調整用試料の一方の面の傾き,B1:前記第1傾き測定手段により測定される前記調整用試料の他方の面の傾き,B2:前記第2傾き測定手段により測定される前記調整用試料の他方の面の傾き,である。
式(3)及び式(4)の左辺は,前記第1の角度位置関係にあるときの前記調整用試料の厚さ分布の傾きを表し,同右辺は,前記第2の角度位置関係にあるときの前記調整用試料の厚さ分布の傾きを表す。ここで,前記調整用試料の厚さ分布の傾きは,2回の測定において変化しないものであるので,上記左辺と右辺とは等しいという関係が成立し,その関係に基づいて前記傾き誤差の第1の補正量を求める関数Δ(Δ(F)又はΔ(B))を求めることができる。
この場合,式(3)又は式(4)を満たすものとしては,例えば,前記関数Δ(F)が下記の(5)式により表される,又は前記関数Δ(B)が下記の(6)式により表されるものが考えられる。
式(5):
Δ(F)=((F2−B2)−(F1−B1))/(F2−F1)×F+Cp
式(6):
Δ(B)=((F2−B2)−(F1−B1))/(B2−B1)×B+Cp
ただし,Cpは定数である。
前記調整用試料の厚さ分布の傾きが未知である場合,試料の両面側の各形状測定手段相互の傾き差(形状測定手段としての両面側の干渉計における参照面同士の平行度合いの誤差)が存在すると,その傾き差に起因する誤差までは前記補正関数に反映できない。例えば,式(5)又は式(6)における定数Cpの値までは,測定データから求めることができない。
そこで,厚さ分布の傾きが既知の前記傾き調整用試料の両面の傾き差を測定することにより,その測定した傾き差と既知の傾き差との差分を,試料両面側の各形状測定手段相互の傾き差として求め,これを前記補正関数の定数項として反映することが可能となる。これにより,縞感度の誤差に起因する測定誤差を小さくするために,形状測定手段としての例えば干渉計の参照面と試料とを略平行に設定するためのアクチュエータ等を省略することが可能となるとともに,略平行に設定するのに要する時間を省略することができる。ここで,前記第1傾き測定手段及び前記第2傾き測定手段による測定対象である前記調整用試料を,厚さ分布の傾きが既知の前記傾き調整用試料とすれば,前記第1傾き誤差補正量設定手段で用いる測定値(傾き)を前記第2傾き誤差補正量設定手段で用いる測定値と兼用できることはいうまでもない。
即ち,板状試料の両面側に対向配置される一対の斜入射干渉計を用いて前記板状試料の形状を測定する形状測定装置の校正方法において,前記板状試料又は他の板状の試料のいずれかである調整用試料と前記一対の斜入射干渉計とが,前記調整用試料に対する前記一対の斜入射干渉計からの測定光の入射角が所定角度となる第1の角度関係にあるときに前記一対の斜入射干渉計を用いて前記調整用試料両面それぞれの傾きを測定する第1傾き測定工程と,前記調整用試料と前記一対の斜入射干渉計とが,前記調整用試料に対する前記一対の斜入射干渉計からの測定光の入射角が前記第1の角度関係のときとは別の角度となる第2の角度関係にあるときに前記一対の斜入射干渉計を用いて前記調整用試料両面それぞれの傾きを測定する第2傾き測定工程と,前記第1傾き測定工程による前記調整用試料両面それぞれの測定結果の差とが等しいという関係を満たすように前記一対の干渉計各々の縞感度を調整する測定ゲイン調整工程とを備える形状測定装置の校正方法として構成されるものである。
即ち,板状試料の形状を斜入射干渉計を用いて測定する形状測定装置の校正方法において,厚さ分布が一定である校正用試料の一方の面の形状を前記斜入射干渉計を用いて前記校正用試料の所定の反転軸に沿って測定する第1面測定手順と,前記校正用試料を前記反転軸を中心に表裏反転し,前記校正用試料の他方の面の形状を前記斜入射干渉計を用いて前記反転軸に沿って測定する第2面測定手順と,前記第1面測定手順による測定結果と前記第2面測定手順による測定結果との平均値のデータを前記斜入射干渉計が備える参照面の変位を表す校正用データとして演算する校正用データ演算手順とを備えることを特徴とする形状測定装置の校正方法として構成されるものである。
即ち,板状試料の両面側に対向配置される一対の斜入射干渉計を用いて前記板状試料の形状を測定する形状測定装置の校正方法において,前記板状試料又は他の板状の試料のいずれかである調整用試料と前記一対の斜入射干渉計とが,前記調整用試料に対する前記一対の斜入射干渉計からの測定光の入射角が所定角度となる第1の角度関係にあるときに前記一対の斜入射干渉計を用いて前記調整用試料両面それぞれの傾きを測定する第1傾き測定工程と,前記調整用試料と前記一対の斜入射干渉計とが,前記調整用試料に対する前記一対の斜入射干渉計からの測定光の入射角が前記第1の角度関係のときとは別の角度となる第2の角度関係にあるときに前記一対の斜入射干渉計を用いて前記調整用試料両面それぞれの傾きを測定する第2傾き測定工程と,前記第1傾き測定工程による前記調整用試料両面それぞれの測定結果の差と前記第2傾き測定工程による前記調整用試料両面それぞれの測定結果の差とが等しいという関係を満たすように,前記板状試料の形状測定の際に前記一対の斜入射干渉計の一方により測定される前記板状試料の一方の面の傾きを変数とする関数を求め,該関数を前記一対の斜入射干渉計の形状測定結果に対する傾き誤差の補正量を算出するための補正関数として設定する傾き誤差補正関数設定工程と,を有してなることを特徴とする形状測定装置の校正方法として構成されるものである。
また,前記第2の発明によれば,厚さ分布が一定である校正用試料を所定の反転軸により反転して,両面の形状を測定し,この測定結果を用いて斜入射干渉計が備える参照面の変位を表す校正用データが求められる。このため,用意するのが容易な校正用試料を用いて迅速かつ精確に校正用データを求めることができるという効果を奏する。
さらに,前記第3の発明によれば,形状測定結果の傾き誤差の補正量を求めるための補正関数が求められ,この補正関数により精確な誤差調整が可能となる。したがって,簡易かつ迅速に形状測定装置を校正することができるという効果を奏する。特に,試料の両面側の各形状測定手段相互の傾き差に起因する誤差について精確に校正することができるという効果を奏する。
これにより,例えば形状測定手段としての干渉計の参照面と被測定面とを平行に設置するのに必要な機構を省略することができるのでコストダウンが図れる。また,そのような処理を実施するのに要する時間を省略することができるといった効果も奏する。
ここに,図1は本発明の実施形態1に係る形状測定装置の概略構成を示すブロック図である。
形状測定装置Aは,板状の試料Wを間に挟むようにして対向配置され,試料Wの一方の面HW1(以下,便宜的に第1面という)の形状を測定する形状測定手段としての第1干渉計1と,試料Wの他方の面HW2(第2面という)の形状を測定する形状測定手段としての第2干渉計2と,CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)を具備している。上記CPUは後述する各処理を実施する制御装置3を構成している。
第1干渉計1は,可干渉光である測定光を出射するHe−Neレーザ光源11と,測定光を平行ビームとするコリメータレンズ12と,参照面HR1を有する三角プリズム13と,参照面HR1と対向する試料Wの第1面HW1との相対距離を変えるための例えばピアゾ素子からなるアクチュエータ14と,参照面HR1及び第1面HW1における反射光を集光するカメラレンズ15と,CCD受光器16とを含む。
レーザ光源11の出射光の波長をλ,第1面HW1へのレーザの入射角をθとすると,アクチュエータ14により三角プリズム13をλ/8×1/cosθ,2λ/8×1/cosθ,3λ/8×1/cosθ,4λ/8×1/cosθと移動させて,着目点における干渉画像の位相を0°,90°,180°,270°とシフトさせる。
着目点でCCD受光器16により検出される干渉画像(明るさ)をI0(x,y), I90(x,y), I180(x,y), I270(x,y)とすると,干渉画像の初期位相Φ(x,y)は,下記式(1a)で求められる。
Φ(x,y)=arctan(I0−I180)/(I90−I270) …(1a)
得られた干渉画像に位相接続(位相アンラップ)処理を施すことによって,下記式(2a)により示す第1面HW1の形状La(x,y)が求まる。
La(x,y)=(Φ(x,y)/2π)×(λ/2cosθ) …(2a)
ここで,第2干渉計2による形状測定の原理は第1干渉計1の場合と同様である。
また,制御装置3は,測定ゲインを測定するための測定ゲイン測定処理及び校正処理を実施する。これらの処理は,それに対応するプログラムをCPUがメモリから読み出して実行することにより実施される。
以下,便宜上,校正処理の際に測定する試料を試料Wと称するが,これは,必ずしも実際の形状測定対象とする試料(板状試料)である必要はなく,形状測定対象とは別に調整用(校正用)に用意した他の板状の試料であってもよい。以下の校正処理に用いる試料Wは,前記調整用試料の一例である。
ステップS1:干渉計1,2と試料Wとが第1の角度位置関係にあるときに,干渉計1,2を用いて試料Wの第1面の傾きF1及び第2面の傾きB1を測定する(前記第1傾き測定手段の処理の一例)。ここで,第1の角度位置関係は,レーザの試料Wへの入射角が試料Wの形状を測定するのに適当な入射角となる範囲の任意の角度位置関係である。
ステップS2:干渉計1,2と試料Wとが第2の角度位置関係にあるときに,干渉計1,2を用いて試料Wの第1面の傾きF2及び第2面の傾きB2を測定する(前記第1傾き測定手段の処理の一例)。ここで,第2の角度位置関係は,第1の角度位置関係とは別の,レーザの試料Wへの入射角が試料Wの形状を測定するのに適当な入射角となる範囲の任意の角度位置関係である。
ステップS3:前掲したステップS1及びステップS2における測定結果から,2つの角度位置関係における試料W両面の傾きの変化,(F1−F2)及び(B1−B2)を算出する。
ステップS4:縞感度の拘束条件を得る。
すなわち,2つの角度位置関係における試料W両面における傾きの変化は等しくなるので,下記の式(3a)により示す条件が得られる。
F1−F2=B1−B2 …(3a)
すなわち,式(3a)は,F1−F2(第1傾き測定手段により測定される前記調整用試料の一方の面の傾きと第2傾き測定手段により測定される前記調整用試料の一方の面の傾きとの差)と,B1−B2(第1傾き測定手段により測定される前記調整用試料の他方の面の傾きと第2傾き測定手段により測定される前記調整用試料の他方の面の傾きとの差)とが等しいとする関係式であり,この関係式を満たすように,干渉計1,2の測定ゲインを調整するためのパラメータを求める。このパラメータに基づけば,式(3a)を満たすように干渉計1,2の測定ゲインが調整される。
式(3a)を変形すると,
(F1−F2)/(B1−B2)=1
である。この条件が満たされないならばその要因は縞感度の誤差に帰着する。したがって,下記の式(4a)により示す縞感度の拘束条件が得られる。
{λ/2cos(θf)}/{λ/2cos(θb)}={(F1−F2)/(B1−B2)}-1 …(4a)
ただし,λ/2cos(θf):第1干渉計1の縞感度,λ/2cos(θb):第2干渉計2の縞感度,である。ここで,λ/2cos(θf)が,第1干渉計1(前記調整用試料の一方の面側に配置される形状測定手段)の前記測定ゲインK1に相当し,λ/2cos(θb)が,第2干渉計2(前記調整用試料の他方の面側に配置される形状測定手段)の前記測定ゲインK2に相当する。
式(4a)を変形して,下記の式(5a)が得られる。
cos(θf)/cos(θb)=(F1−F2)/(B1−B2) …(5a)
ただし,f,bは,干渉計1,2の測定ゲインを調整するためのパラメータである。
このように,実施形態1の形状測定装置Aにおいては,干渉計1,2と試料Wとが第1の角度位置関係にあるときに干渉計1,2を用いて試料W両面それぞれの傾きF1,B1を測定し(S1),干渉計1,2と試料Wとが第2の角度位置関係にあるときに干渉計1,2を用いて試料W両面それぞれの傾きF2,B2を測定し(S2),これらステップS1,S2の測定結果から前掲した式(5a)に示す縞感度についての条件を導出し,この条件を満足するように測定ゲインを調整する(S3,S4)ことによって,校正処理が行われる。
したがって,試料W又は干渉計1,2の角度位置を変えて試料Wの両面の傾きを2回測定するといった簡易な動作を行うだけで,校正処理の基礎となるデータを取得し,これを用いて前掲したような簡易な演算を行うだけで縞感度の調整量を導出することができる。
また,この実施の形態では干渉画像の位相シフトの方法を90°ごとの4段階としているが,その他の位相シフトの方法でもよい。また,波長掃引法を位相シフトの方法に適用することもできる。
また,レーザ光源11,21にHe−Neガスレーザを用いているが,可干渉光であるコヒーレント光を出射する光源であればよく,半導体レーザを適用することも当然に可能である。
以下,本発明の実施形態2に係る形状測定装置を説明する。実施形態2の形状測定装置は,実施形態1の形状測定装置と基本的構成が同一であり,制御装置において実施される処理が異なるだけである。したがって,以下の説明では図1及びその符号を流用しながら処理の内容のみを説明する。なお,実施形態2の形状測定測定装置は,干渉計を2つ備えるものである必要はなく,1つの干渉計のみを備える形状測定装置であってもよい。
実施形態2の形状測定装置Aにおいても実施形態1におけると同様にして試料Wの表面形状が前記式(2a)により求まる。
実施形態2の制御装置3は,後述するような校正処理を実施する。この処理は,それに対応するプログラムをCPUがメモリから読み出して実行することにより実施される。
実施形態2の校正処理は,厚さ分布が既知である試料W(特許請求の範囲にいう校正用試料に対応する)に対して1つの反転軸Iを設定し,この反転軸Iを中心に試料を表裏反転し,その反転軸Iに沿って試料Wの表裏両面の形状を測定し,各測定結果を平均化し,それにより得られる曲線を形状測定装置Aの校正用曲線として利用する。以下,校正処理の手順を更に詳述する。
ステップS11:試料Wの第1面HW1の形状を干渉計1,2のいずれか一方,例えば干渉計1により測定する。
ここで,図4(a)に示すように,参照面HR1の形状を関数R(x)で表し,第1面HW1の形状を関数WA(x)で表すものとする。このとき,干渉計1により計測されるデータ(第1面計測データという)D1は,下記式(6a)に示すように,両者の差分により表される。
D1=R(x)−WA(x) …(6a)
また,薄片においては,重力によるたわみが問題となる。重力たわみは,試料Wの支持位置,厚さ及びヤング率等の材料特性に基づいて算出し,第1面計測データD1から減算する。この処理を後述するステップS12においても同様に実施することによって重力たわみによる影響を排除することができる。
ステップS12:反転軸により試料Wを反転させて試料Wの第2面HW2の形状を干渉計1により測定する。ただし,ステップS1で干渉計2により第1面HW1の形状を測定した場合は,本ステップS2においても干渉計2により第2面HW2の形状を測定する。
D2=R(x)−WB(x) …(7a)
ステップS13:前記ステップS11及びステップS12の測定結果から校正用データを求める(前記校正用データ演算手段の処理の一例)。
すなわち,前記式(6a)及び式(7a)を用いて,第1面計測データD1と第2面計測データD2とを平均化することによって,下記の式(8a)に示す参照面R(x)についての関係式が得られる。
(D1+D2)/2=R(x)−(WA(x) +WB(x))/2 …(8a)
(D1+D2)/2=R(x)+C …(9a)
ただし,Cは定数である。
すなわち,前記式(9a)の左辺の変化は参照面形状R(x)のみに依存している。したがって,第1面計測データD1と第2面計測データD2との平均値の変化は,参照面R(x)の変位を表すことになるので,これを校正用データとして用いることができる。
ここで,厚さ分布が既知であり,かつ変形し難い校正用試料を半導体ウェーハのような薄片試料の形状,厚さ分布を測定する測定装置のために用意することは困難である。これに対して,変形しやすい薄片においても厚さ分布の変動は無視することができ,かつ校正用試料の厚さ分布は静電容量センサを用いた厚さ計等によって高精度に測定することが可能であるため,厚さが略均一,あるいは厚さ分布が既知の校正用試料を用意することは容易である。したがって,実施形態2の形状測定装置A1によれば,迅速,低コストかつ高精度に校正を行うことが可能となる。
また,校正用試料のそりによる影響は,試料を反転して表裏両面の形状を測定し,この測定値の平均をとることでそりによる影響が打ち消される。したがって,測定値の平均は,厚さ情報と測定装置の校正情報とを含むものになり,試料の厚さ分布が略均一,あるいは既知であることから形状測定装置の校正用データを導出することができる。
また,干渉画像の位相シフトの方法を90°ごとの4段階としているが,その他の位相シフトの方法でもよいこと,波長掃引法を位相シフトの方法に適用することができること,レーザ光源11,21に半導体レーザを適用することができること,も実施形態1と同様である。
次に,本発明の実施形態3に係る形状測定装置を説明する。実施形態3の形状測定装置も,実施形態1の形状測定装置と基本的構成が同一であり,制御装置において実施される処理が異なるだけである。したがって,以下の説明では図1及びその符号を流用しながら処理の内容のみを説明する。
以下,図5を参照して,制御装置3のCPUにより実行される校正処理を説明する。図5は,校正処理の各手順を示すフローチャートである。実施形態3の制御装置3は,図5に示す処理を,それに対応するプログラムをCPUがメモリから読み出して実行することにより実施する。なお,図5において,符号S21,S22,…は,ステップ番号を示す。
ステップS21及びステップ22は,前記実施形態1の図2で示したステップS1及びステップ2と同じ処理であるので詳細については説明を省略する。
但し,ここで測定する試料は,実際の形状測定対象とする試料(板状試料)ではなく,両面の傾きの差(即ち,試料の厚さ分布の傾き)が既知である板状の試料(前記調整用試料の一例,かつ前記傾き調整用試料の一例)であるものとする。以下,便宜上,この傾き調整用試料も試料Wと称することとする。
このステップS21及びS22により,干渉計1,2と試料Wとが,第1の角度位置関係にあるときの試料Wの第1面の傾きF1及び第2面の傾きB1,さらに,前記第1の角度位置関係と異なる他の第2の角度位置関係にあるときの資料Wの第1面の傾きF2及び第2面の傾きB2が測定される。ここで,ステップ21が前記第1傾き測定手段の処理の一例であり,ステップS22が前記第2傾き測定手段の処理の一例である。
ここで,2回の測定(S21とS22)において,試料Wの厚さ分布の傾きは変化しないので,前記第1の角度位置関係での測定データに基づく試料Wの両面の傾き差(即ち,厚さ分布の傾き)と,前記第2の位置関係での測定データに基づく試料Wの両面の傾き差とは等しいといえる。この関係を式で表すと,次の式(1b)又は式(2b)となる(各々式(3),式(4)に相当)。但し,Δは,干渉計1又は2(形状測定手段)による形状測定結果に含まれる傾き誤差(=傾き誤差の補正量)を算出する関数であるとする。
F1−B1−Δ(F1)=F2−B2−Δ(F2) …(1b)
F1−B1−Δ(B1)=F2−B2−Δ(B2) …(2b)
本実施形態3では,この式(1b)又は式(2b)を満たす関数Δを求め,これを補正関数として設定する。この補正関数Δにより求まる値は,干渉計1,2(形状測定手段)による形状測定結果から補正すべき傾き誤差の補正量となる。
Δ(F)=Kf×F+Cp …(3b)
Δ(B)=Kb×B+Cp …(4b)
この式(3b)を式(1b)に,式(4b)を式(2b)に代入すると,Δ(F),Δ(B)は,各々次の式(5b)及び式(6b)で表せる(各々式(5),式(6)に相当)。
Δ(F)=((F2−B2)−(F1−B1))/(F2−F1)×F+Cp …(5b)
Δ(B)=((F2−B2)−(F1−B1))/(B2−B1)×B+Cp …(6b)
ここで,Cpは,干渉計1,2の各参照面HR1,HR2が,ほぼ平行(ほぼ傾き差なし)に設定されていれば,Cp≒0と仮定できる。また,各参照面HR1,HR2の傾き差が既知であれば,その傾き差に対応した定数Cpを設定すればよい。
各参照面HR1,HR2がほぼ平行であれば,このようにして求められるΔ(F)又はΔ(B)のCpに,予め定めた定数(通常は「0」)を設定した関数を,補正関数として設定することも考えられる。
しかし,本実施形態では,関数Δ(F)又はΔ(B)の定数項Cpを,次のステップS24において,測定データから求めるものとする。
なお,Cp=0としたときのΔ(F),Δ(B)を,以下,各々Δ0(F),Δ0(B)と称することとする。
前述したステップS23では,前記補正関数Δのうち,定数項,即ち,各参照面HR1,HR2の傾き差に関する誤差分を除く関数Δ0が求められている。そこで,試料Wの両面の傾き差から関数Δ0に実測値を適用して算出される値を減算した値と,試料Wの両面の既知の傾き差Eとの差が,関数Δに設定されるべき定数項Cpとなる。例えば,Cpは,次の式(7b)又は式(8b)等により求めることができる。
Cp=(F1−B1)−Δ0(F1)−E …(7b)
Cp=(F2−B2)−Δ0(B2)−E …(8b)
このようにして求めたCpを補正関数Δの定数項に設定する。
したがって,試料W又は干渉計1,2の角度位置を変えて試料Wの両面の傾きを2回測定するといった簡易な動作を行うだけで,校正処理の基礎となるデータを取得し,これを用いて前掲したような簡易な演算を行うだけで傾き誤差の補正のための補正関数を導出することができる。
例えば,補正関数Δにより算出される補正量が,試料面のx軸方向における傾き誤差の補正量である場合は,La(x,y)から(Δ(F)×x)又は(Δ(B)×x)の計算値を減算する補正を行う。
本実施形態3では,校正処理における試料の測定回数を最小限にするため,当初から両面の傾き差が既知の試料の測定を行ったが,定数項を考慮しない補正関数を求める段階では,必ずしも両面の傾き差が既知の試料(傾き調整用試料)を用いる必要はない。
W…試料
HR1,HR2…参照面
HW1…第1面
HW2…第2面
1,2…干渉計(形状測定手段)
3…制御装置
S1,S2,,,…処理手順(ステップ)
Claims (8)
- 板状試料の形状を斜入射干渉計を用いて測定する形状測定装置において,
厚さ分布が一定である校正用試料の一方の面の形状を前記斜入射干渉計を用いて前記校正用試料の所定の反転軸に沿って測定する第1面測定手段と,
前記校正用試料を前記反転軸を中心に表裏反転し,前記校正用試料の他方の面の形状を前記斜入射干渉計を用いて前記反転軸に沿って測定する第2面測定手段と,
前記第1面測定手段による測定結果と前記第2面測定手段による測定結果との平均値のデータを前記斜入射干渉計が備える参照面の変位を表す校正用データとして演算する校正用データ演算手段と,
を備えてなることを特徴とする形状測定装置。 - 板状試料の両面側に対向配置される一対の斜入射干渉計を用いて前記板状試料の形状を測定する形状測定装置において,
前記板状試料又は他の板状の試料のいずれかである調整用試料と前記一対の斜入射干渉計とが,前記調整用試料に対する前記一対の斜入射干渉計からの測定光の入射角が所定角度となる第1の角度関係にあるときに前記一対の斜入射干渉計を用いて前記調整用試料両面それぞれの傾きを測定する第1傾き測定手段と,
前記調整用試料と前記一対の斜入射干渉計とが,前記調整用試料に対する前記一対の斜入射干渉計からの測定光の入射角が前記第1の角度関係のときとは別の角度となる第2の角度関係にあるときに前記一対の斜入射干渉計を用いて前記調整用試料両面それぞれの傾きを測定する第2傾き測定手段と,
前記第1傾き測定手段による前記調整用試料両面それぞれの測定結果の差と前記第2傾き測定手段による前記調整用試料両面それぞれの測定結果の差とが等しいという関係を満たすように前記一対の斜入射干渉計各々の縞感度を調整する測定ゲイン調整手段と,
を備えてなる形状測定装置。 - 板状試料の両面側に対向配置される一対の斜入射干渉計を用いて前記板状試料の形状を測定する形状測定装置において,
前記板状試料又は他の板状の試料のいずれかである調整用試料と前記一対の斜入射干渉計とが,前記調整用試料に対する前記一対の斜入射干渉計からの測定光の入射角が所定角度となる第1の角度関係にあるときに前記一対の斜入射干渉計を用いて前記調整用試料両面それぞれの傾きを測定する第1傾き測定手段と,
前記調整用試料と前記一対の斜入射干渉計とが,前記調整用試料に対する前記一対の斜入射干渉計からの測定光の入射角が前記第1の角度関係のときとは別の角度となる第2の角度関係にあるときに前記一対の斜入射干渉計を用いて前記調整用試料両面それぞれの傾きを測定する第2傾き測定手段と,
前記第1傾き測定手段による前記調整用試料両面それぞれの測定結果の差と前記第2傾き測定手段による前記調整用試料両面それぞれの測定結果の差とが等しいという関係を満たすように,前記板状試料の形状測定の際に前記一対の斜入射干渉計の一方により測定される前記板状試料の一方の面の傾きを変数とする関数を求め,該関数を前記一対の斜入射干渉計の形状測定結果に対する傾き誤差の補正量を算出するための補正関数として設定する傾き誤差補正関数設定手段と,を備えてなることを特徴とする形状測定装置。 - 前記傾き誤差補正関数設定手段が,前記傾き誤差の補正量を求める補正関数として,下記式(3)を満たす関数Δ(F)又は下記式(4)を満たす関数Δ(B)を設定するものである請求項3に記載の形状測定装置。
式(3):F1−B1−Δ(F1)=F2−B2−Δ(F2)
式(4):F1−B1−Δ(B1)=F2−B2−Δ(B2)
ただし,F:前記板状試料の形状測定の際に前記形状測定手段により測定される前記板状試料の一方の面の傾き,B:前記板状試料の形状測定の際に前記形状測定手段により測定される前記板状試料の他方の面の傾き,F1:前記第1傾き測定手段により測定される前記調整用試料の一方の面の傾き,F2:前記第2傾き測定手段により測定される前記調整用試料の一方の面の傾き,B1:前記第1傾き測定手段により測定される前記調整用試料の他方の面の傾き,B2:前記第2傾き測定手段により測定される前記調整用試料の他方の面の傾き,である。 - 前記関数Δ(F)が下記の(5)式により表される,又は前記関数Δ(B)が下記の(6)式により表されるものである請求項4に記載の形状測定装置。
式(5):
Δ(F)=((F2−B2)−(F1−B1))/(F2−F1)×F+Cp
式(6):
Δ(B)=((F2−B2)−(F1−B1))/(B2−B1)×B+Cp
ただし,Cpは定数である。 - 板状試料の形状を斜入射干渉計を用いて測定する形状測定装置の校正方法において,
厚さ分布が一定である校正用試料の一方の面の形状を前記斜入射干渉計を用いて前記校正用試料の所定の反転軸に沿って測定する第1面測定手順と,
前記校正用試料を前記反転軸を中心に表裏反転し,前記校正用試料の他方の面の形状を前記斜入射干渉計を用いて前記反転軸に沿って測定する第2面測定手順と,
前記第1面測定手順による測定結果と前記第2面測定手順による測定結果との平均値のデータを前記斜入射干渉計が備える参照面の変位を表す校正用データとして演算する校正用データ演算手順と,
を備えることを特徴とする形状測定装置の校正方法。 - 板状試料の両面側に対向配置される一対の斜入射干渉計を用いて前記板状試料の形状を測定する形状測定装置の校正方法において,
前記板状試料又は他の板状の試料のいずれかである調整用試料と前記一対の斜入射干渉計とが,前記調整用試料に対する前記一対の斜入射干渉計からの測定光の入射角が所定角度となる第1の角度関係にあるときに前記一対の斜入射干渉計を用いて前記調整用試料両面それぞれの傾きを測定する第1傾き測定工程と,
前記調整用試料と前記一対の斜入射干渉計とが,前記調整用試料に対する前記一対の斜入射干渉計からの測定光の入射角が前記第1の角度関係のときとは別の角度となる第2の角度関係にあるときに前記一対の斜入射干渉計を用いて前記調整用試料両面それぞれの傾きを測定する第2傾き測定工程と,
前記第1傾き測定工程による前記調整用試料両面それぞれの測定結果の差とが等しいという関係を満たすように前記一対の干渉計各々の縞感度を調整する測定ゲイン調整工程と,
を備える形状測定装置の校正方法。 - 板状試料の両面側に対向配置される一対の斜入射干渉計を用いて前記板状試料の形状を測定する形状測定装置の校正方法において,
前記板状試料又は他の板状の試料のいずれかである調整用試料と前記一対の斜入射干渉計とが,前記調整用試料に対する前記一対の斜入射干渉計からの測定光の入射角が所定角度となる第1の角度関係にあるときに前記一対の斜入射干渉計を用いて前記調整用試料両面それぞれの傾きを測定する第1傾き測定工程と,
前記調整用試料と前記一対の斜入射干渉計とが,前記調整用試料に対する前記一対の斜入射干渉計からの測定光の入射角が前記第1の角度関係のときとは別の角度となる第2の角度関係にあるときに前記一対の斜入射干渉計を用いて前記調整用試料両面それぞれの傾きを測定する第2傾き測定工程と,
前記第1傾き測定工程による前記調整用試料両面それぞれの測定結果の差と前記第2傾き測定工程による前記調整用試料両面それぞれの測定結果の差とが等しいという関係を満たすように,前記板状試料の形状測定の際に前記一対の斜入射干渉計の一方により測定される前記板状試料の一方の面の傾きを変数とする関数を求め,該関数を前記一対の斜入射干渉計の形状測定結果に対する傾き誤差の補正量を算出するための補正関数として設定する傾き誤差補正関数設定工程と,を有してなることを特徴とする形状測定装置の校正方法。
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