JP4230643B2 - 触媒担持バグフィルタおよびその製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は触媒担持バグフィルタおよびその製法に関し、さらに詳しくはごみ焼却炉から排出されるばい塵(ダスト)を捕集除去する脱じん装置に用いられる、燃焼排ガス中に含まれるダスト等の除去および窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、ダイオキシンなどの有害ガス成分を分解除去するのに好適な触媒担持バグフィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ごみ焼却炉からの排ガス中に含まれるダイオキシン類などが注目され、ダイオキシン類などの有害物質の排出ガイドラインが改正され、新設全連炉での出口排出ガイドライン値が0.1ng/Nm3と欧米なみに厳しい値に規制された。
上記規制に対応する排ガス処理方法としては、低温バグフィルタ方式、活性炭吸着除去法、触媒方式などが挙げられ、触媒を用いる方法としては触媒塔方式と触媒バグフィルタ方式が知られている。触媒塔方式は、触媒塔を脱じん装置の後流に追設して排ガス処理する方法であり、触媒バグフィルタ方式は、触媒をバグフィルタ内部に担持させて排ガス処理を行う方法である。
【0003】
特開平05−7716号公報には、図7に示す触媒バグフィルタの調整装置を用いて脱硝触媒をバグフィルタに担持させる方法が提案されている。この方法において、触媒バグフィルタは、バグフィルタ固定具24に固定された複数のバグフィルタ23をスラリー槽25に浸漬し、触媒スラリーを触媒スラリタンク26からポンプ27およびスプレーノズル28を介して該バグフィルタ23の上端部から噴射させ、所定時間循環させた後、引き上げて乾燥させることにより得られる。また特開平06−233916号公報には、触媒バグフィルタの再生法として、上記と同様の調整装置により触媒を再担持させる方法が提案されている。これらの方法ではいずれも触媒がバグフィルタに一様に担持され、バグフィルタの長さ方向に触媒担持量の分布を持たせることは考慮されていない。
【0004】
また、上記触媒バグフィルタは、通常のバグフィルタと同様、間欠的にバグフィルタに付着したばいじんを除去するための逆洗操作が行われる。
図8は、逆洗方式を採用した脱じん装置の説明図である。この脱じん装置は、複数の触媒バグフィルタ1が配置されたバグフィルタハウス5と、該複数のバグフィルタ1の上端部からその内部に逆洗用空気3を噴射させる逆洗ノズル2と、該逆洗ノズル2から噴射された逆洗用空気3によって触媒バグフィルタ1の表面から脱離したばいじん4をバグフィルタハウス5の底部から抜出すロータリーバルブ12とを備える。
このような装置において、火炉等で発生した排ガス6は、バグフィルタハウス5に供給され、触媒バグフィルタ1の外面から内面に向かう方向に流れ、排ガス中のばいじん4は、触媒バグフィルタ1の外面に付着して除去され、また排ガス中の有害物質は、触媒バグフィルタ1を通過する際に触媒と接触して分解除去されて清浄化され、該清浄ガス7が、煙突8を介して大気中に放出される。
【0005】
一方、逆洗操作時には、コンプレッサ11によりエアタンク10内の空気が圧縮された逆洗用空気3が、逆洗ノズル2を介して触媒バグフィルタ1の上端部からバグフィルタ1の内面に向かって約0.1秒間吹き込まれ、触媒バグフィルタ1の外表面上に付着したばいじん4を脱離させる。脱離したばいじん9はバグフィルタハウス5の下部に堆積し、ロータリーバルブ12および灰コンベア13により灰ホッパ14に集められ、灰処理装置15により無害化処理が施される。
【0006】
上記触媒バグフィルタとしては、ろ過面積の確保のために図9に示すような直径13〜15cm、長さ5〜7m の長寸の円筒形のものが使用される。従って、逆洗ノズルがバグフィルタ上端部に位置するように配置された逆洗装置を用いた場合、逆洗によって触媒バグフィルタ下部に付着したばいじん等は剥離されにくく、バグフィルタ上部に付着したばいじんが剥離し易くなる。また、上記逆洗操作を繰り返して行うことにより、担持された触媒がばいじんとともに脱離し易くなり、バグフィルタの長さ方向に触媒担持量の減少分布が生じる。図10には、一定期間運転した後のバグフィルタの長さ方向の触媒担持量の分布を示した。この図から明らかなように逆洗ノズルの位置するバグフィルタ上端部から該バグフィルタ全長の10〜20%長さの範囲の触媒担持量が、他の部分の触媒担持量に比べ50〜60%程度低下している。このように、バグフィルタ上端部においては逆洗による担持触媒の減少量が大きくなり、バグフィルタ下部では担持触媒の減少量が小さくなる。バグフィルタに担持された触媒量に分布が生じると、担持触媒の少ない部分ではNOx除去率やダイオキシン除去率の低下が生じ易くなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上述従来技術の問題点を解決し、逆洗操作を繰り返し行った場合でも、排ガス中に含まれるばいじんや有害ガス成分を長期にわたり安定して効率よく除去することができる触媒担持バグフィルタを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願で特許請求される発明は以下のとおりである。
(1) 排ガスに含まれるばいじんおよび有害ガス成分を除去する、付着したばいじんが逆洗ノズルからの噴射流体により払い落とされる触媒担持バグフィルタであって、前記逆洗ノズルの位置するバグフィルタ上端部から該バグフィルタ全長の10〜40%の範囲の触媒担持量が、前記逆洗ノズルの位置するバグフィルタ上端部から該バグフィルタ全長の50〜100%の範囲の触媒担持量の少なくとも1.3倍であることを特徴とする触媒担持バグフィルタ。
(2) バグフィルタに触媒含有液を含浸させた後、該触媒含有液含浸バグフィルタの上端部からその全長の10〜40%の範囲に、前記触媒含有液の触媒濃度の1〜1.5倍の濃度の触媒含有液をさらに含浸させ、該バグフィルタの全長10〜40%の範囲の触媒担持量を、前記逆洗ノズルの位置するバグフィルタ上端部から該バグフィルタ全長の50〜100%の範囲の触媒担持量の少なくとも1.3倍とすることを特徴とする触媒担持バグフィルタの製法。
(3) バグフィルタに触媒含有液を含浸させた後、該触媒含有液含浸バグフィルタをその上端部が下向きとなるように鉛直方向に吊り下げ、該バグフィルタ上端部に前記触媒含有液の一部を移動させ、該バグフィルタの全長10〜40%の範囲の触媒担持量を、前記逆洗ノズルの位置するバグフィルタ上端部から該バグフィルタ全長の50〜100%の範囲の触媒担持量の少なくとも1.3倍とすることを特徴とする触媒担持バグフィルタの製法。
【0009】
【作用】
本発明によれば、逆洗操作を繰り返し行っても、逆洗が効果的に行われるバグフィルタ上部において触媒担持量が他の部分より多くなっているため、逆洗による触媒の脱離量が多くなっても、NOxやダイオキシン類等の有害ガス成分を除去するのに必要な触媒担持量を長時間維持でき、有害ガス成分の除去性能が低下するのを防止することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面により説明する。
図1は、本発明の一実施例を示す触媒担持バグフィルタの製造説明図である。図1において、バグフィルタ19は、一定濃度の触媒スラリ17が貯留されたバグフィルタ浸漬装置8に浸漬され、均一に触媒が担持される。触媒を均一に担持した触媒バグフィルタ19Aは、その上端部Aから長さ方向の10〜40%の範囲部分が、さらに上記触媒スラリ17より高濃度に触媒を含む高濃度触媒スラリ22に浸漬され、引上げられて乾燥装置20により乾燥されて本発明の触媒担持バグフィルタ21とされる。
【0011】
本発明においては、上記高濃度触媒スラリ22の触媒濃度は、該スラリに浸漬して乾燥させた後の当該部分の触媒担持量が、他の部分の触媒担持量より少なくとも1.3倍、好ましくは1.5倍となるように調整される。当該部分の触媒担持量が他の部分より1.5倍未満では逆洗操作後の触媒担持量の減少量が多くなり、有害ガス成分の分解除去性能が低下する。また当該部分の触媒担持量の上限は、バグフィルタの通風損失等により適宜選定するのが好ましい。
【0012】
図2には上記方法で得られた触媒担持バグフィルタの長さ方向の触媒担持量を示した。なお、図2中のバグフィルタ長さ比は、逆洗ノズルが位置するバグフィルタの上端を基準(0%)とし、この部分からの長さ方向の距離をバグフィルタ全長に対する百分率で表した。また触媒担持量比は、上記逆洗ノズルが位置するバグフィルタの上端部からのバグフィルタ長さにおける触媒担持量をバグフィルタの下端部の触媒担持量を100%として、百分率で表した。また、上記本発明における触媒担持バグフィルタを一定時間運転した後の触媒バグフィルタの長さ方向の触媒担持量を図3に示した。バグフィルタ上端部から40%の範囲で触媒の脱離が見られるが、他の部分の触媒担持量より触媒担持量が多く、従って、逆洗による性能低下を抑えることができる。
【0013】
上記で得られた本発明の触媒担持バグフィルタと従来技術による均一に触媒が担持された触媒バグフィルタとを用い、逆洗回数によるNOx除去率(脱硝率)の変化を調べ、その結果を図4に示した。なお、逆洗操作は、逆洗ノズルをバグフィルタハウス内の触媒バグフィルタ上端部に位置させ、エアジェットパルス方式により行った。またガス流速は1m/min 、バグフィルタ温度200℃、NH3/NOxのモル比を1とした。図4から、逆洗回数の増加とともに従来の触媒バグフィルタでは脱硝率が低下し、初期脱硝率75%であったものが、逆洗回数20,000回で50%に低下した。これに対し、本発明の触媒担持バグフィルタでは、逆洗による脱硝率の低下は抑えられており、逆洗回数20,000回での脱硝率は70%以上に維持することができた。
【0014】
図5は、本発明の他の実施例を示す触媒担持バグフィルタの製造説明図である。図5において、図1と異なる点は、バグフィルタ19に触媒スラリ17を含浸させて触媒バグフィルタ19Aとした後、該触媒バグフィルタ19Aの上端部Aが鉛直下向きになるようにバグフィルタ固定具16を用いて固定し、静置または触媒バグフィルタ19Aの長さ方向を中心軸にして回転運動を与え、該バグフィルタに含浸している触媒スラリを下方に移動させ、その後乾燥させることにより、触媒担持バグフィルタの上端部Aの所定範囲の触媒担持量を他の部分に比べて増大するようにした点である。図6は、触媒担持バグフィルタに含浸された触媒スラリの鉛直方向の移動状況を示す図である。このような方法でも、バグフィルタ上端部の所定範囲の触媒担持量を増大させることができ、本発明の目的を達成できる触媒担持バグフィルタを製造することが可能である。
【0015】
また本発明における触媒担持バグフィルタは図1および図5に示す製造方法を組み合わせて得ることもできる。例えば、5〜40重量%の触媒スラリー17が貯留された触媒スラリー含浸装置18にバグフィルタ19を浸漬し、これをバグフィルタ上端部Aが鉛直下向きになるようにバグフィルタ固定具16により固定して静置またはバグフィルタの長さ方向を中心軸にして回転運動を与えた後、さらに上記触媒スラリー17よりも高濃度の6〜50重量%触媒スラリー22に、バグフィルタ上端部から40%長さの部分を再度浸漬させ、該範囲のバグフィルタの触媒担持量がその他の部分に比べて多くなるように担持させることにより得ることができる。
【0016】
【発明の効果】
本発明の触媒担持バグフィルタによれば、逆洗が効果的に行われるバグフィルタ上端部の触媒担持量が他の部分より多くなっているため、逆洗により脱離する触媒量が多くなっても、有害ガス成分の除去に必要な触媒担持量を長期にわたり維持することができ、NOxやダイオキシン類の除去性能への影響を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す触媒担持バグフィルタの製造説明図。
【図2】本発明の触媒担持バグフィルタの長さ方向の触媒担持量を示す図。
【図3】本発明の触媒担持バグフィルタを用いて所定時間運転した後の該バグフィルタの長さ方向の触媒担持量を示す図。
【図4】逆洗回数による脱硝率の変化を示す図。
【図5】本発明の他の実施例を示す触媒担持バグフィルタの製造説明図。
【図6】図5における触媒スラリの移動状況を示す図。
【図7】従来技術による触媒バグフィルタの製造装置を示す図。
【図8】触媒バグフィルタを配置した脱じん装置の説明図。
【図9】触媒バグフィルタと逆洗ノズルの配置を示す図。
【図10】従来の触媒バグフィルタを用いて所定期間運転した後の触媒バグフィルタの長さ方向の触媒担持量を示す図。
【符号の説明】
1…触媒バグフィルタ、2…逆洗ノズル、3…逆洗用空気、4…付着ばいじん、5…バグフィルタハウス、6…排ガス、7…清浄ガス、8…煙突、9…脱離ばいじん、10…エアタンク、11…コンプレッサ、12…ロータリーバルブ、13…灰コンベア、14…灰ホッパ、15…灰処理装置、16…バグフィルタ固定具、17…触媒スラリ、18…バグフィルタ含浸装置、19…バグフィルタ、19A…触媒バグフィルタ、20…乾燥装置、21…触媒担持バグフィルタ、22…高濃度触媒スラリ、23…バグフィルタ、24…バグフィルタ固定具、25…スラリー槽、26…触媒スラリータンク、27…ポンプ、28…スプレーノズル、A…バグフィルタ上端部。

Claims (3)

  1. 排ガスに含まれるばいじんおよび有害ガス成分を除去する、付着したばいじんが逆洗ノズルからの噴射流体により払い落とされる触媒担持バグフィルタであって、前記逆洗ノズルの位置するバグフィルタ上端部から該バグフィルタ全長の10〜40%の範囲の触媒担持量が、前記逆洗ノズルの位置するバグフィルタ上端部から該バグフィルタ全長の50〜100%の範囲の触媒担持量の少なくとも1.3倍であることを特徴とする触媒担持バグフィルタ。
  2. バグフィルタに触媒含有液を含浸させた後、該触媒含有液含浸バグフィルタの上端部からその全長の10〜40%の範囲に、前記触媒含有液の触媒濃度の1〜1.5倍の濃度の触媒含有液をさらに含浸させ、該バグフィルタの全長10〜40%の範囲の触媒担持量を、前記逆洗ノズルの位置するバグフィルタ上端部から該バグフィルタ全長の50〜100%の範囲の触媒担持量の少なくとも1.3倍とすることを特徴とする触媒担持バグフィルタの製法。
  3. バグフィルタに触媒含有液を含浸させた後、該触媒含有液含浸バグフィルタをその上端部が下向きとなるように鉛直方向に吊り下げ、該バグフィルタ上端部に前記触媒含有液の一部を移動させ、該バグフィルタの全長10〜40%の範囲の触媒担持量を、前記逆洗ノズルの位置するバグフィルタ上端部から該バグフィルタ全長の50〜100%の範囲の触媒担持量の少なくとも1.3倍とすることを特徴とする触媒担持バグフィルタの製法。
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