JP4230609B2 - セル基板、液晶セル及び液晶表示装置 - Google Patents

セル基板、液晶セル及び液晶表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、反りの少ない液晶セルを形成できて液晶表示装置の製造等に好適な光学部材付設型で樹脂系のセル基板に関する。
【0002】
【発明の背景】
液晶表示装置(LCD)の大型化等に伴い、ガラス基板を用いた液晶セルでは重くて嵩高いことから、薄型軽量化などを目的に樹脂基板を用いた液晶セルが提案されている。しかしながら、これまでに提案の樹脂系液晶セルでは、それに偏光板や位相差板等からなる光学素材を接着層を介し接着した場合に反り(カール)問題が発生し実用できない現状である。前記した偏光板等の光学素子は、LCDのキーデバイスでありその使用は不可避である。
【0003】
【発明の技術的課題】
本発明は、光学素材を粘着層を介し接着した場合にも反りが少なくて実用に供しうる薄型軽量の液晶セルを形成しうる樹脂系のセル基板の開発を課題とする。
【0004】
【課題の解決手段】
本発明は、30℃、0.2%の引張り伸び時の弾性率が215kgf/mm以上でガラス転移温度が145℃以上の透明保護層を有する偏光板からなる90℃、15時間加熱後の収縮量が0.8%以下で23〜90℃での線膨張係数が2×10 −4 /℃以下の光学素材の片面又は両面に粘着層を有する光学部材をその粘着層を介して、30℃、0.2%の引張り伸び時の弾性率が300kgf/mm以上の樹脂基板に接着してなり、90℃で150時間加熱した後のカール量が6mm/12吋以下であることを特徴とするセル基板を提供するものである。
【0005】
【発明の効果】
本発明によれば、薄型軽量の樹脂系液晶セルの利点を活かしつつ、その反りを実用上充分な程度に低減でき、樹脂系セル基板によるLCDの大型化等を有利に進めることができる。また光学素子に予め粘着層を付設した光学部材を用いることで液晶セルに簡便に接着できてLCDの組立効率に優れ、品質のバラツキやゴミ等の混入による組立ロスなども予防することができる。
【0006】
【発明の実施形態】
本発明によるセル基板は、30℃、0.2%の引張り伸び時の弾性率が215kgf/mm以上でガラス転移温度が145℃以上の透明保護層を有する偏光板からなる90℃、15時間加熱後の収縮量が0.8%以下で23〜90℃での線膨張係数が2×10 −4 /℃以下の光学素材の片面又は両面に粘着層を有する光学部材をその粘着層を介して、30℃、0.2%の引張り伸び時の弾性率が300kgf/mm以上の樹脂基板に接着してなり、90℃で150時間加熱した後のカール量が6mm/12吋以下である特性を示すものからなる。その例を図1に示した。図は、液晶表示装置としたものを示しており、1,5が光学素材、2が粘着層、3がセル基板、6が液晶セルである。
【0007】
なお11は偏光板、13は位相差板でありこれらが粘着層12を介し積層されて光学素材としての楕円偏光板1を形成しており、それに粘着層2が付設されて光学部材が形成されている。また51は偏光板、52は反射板でありこれらが別個の光学素材5を形成しており、それに粘着層2が付設されて光学部材が形成されている。さらに4は液晶層であり、それがコート層31を設けたセル基板3の間に封入されて液晶セル6を形成している。
【0008】
光学素材としては、例えば偏光板、その偏光板と位相差板を積層した楕円偏光板、反射型偏光板やそれを用いた前記楕円偏光板などの液晶表示装置等の形成に用いられるものが使用され、その種類について30℃、0.2%の引張り伸び時の弾性率が215kgf/mm以上でガラス転移温度が145℃以上の透明保護層を有する偏光板を具備して、90℃、15時間加熱後の収縮量が0.8%以下で23〜90℃での線膨張係数が2×10 −4 /℃以下のものである点を除き特に限定はない。なお前記の楕円偏光板の如き積層タイプの光学素材の場合、その積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。
【0009】
ちなみに前記偏光板の具体例としては、ポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムにヨウ素及び/又は二色性染料を吸着させて延伸した偏光フィルムからなるもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン配向の偏光フィルムからなるものなどがあげられる。偏光フィルムの厚さは通例5〜80μmであるが、これに限定されない。偏光板は、反りを抑制する点よりその偏光フィルムの片面又は両面に30℃での0.2%の引張り伸び時の弾性率が215kgf/mm以上でガラス転移温度が145℃以上の透明保護層を設けたものである。
【0010】
一方、前記した反射型偏光板は、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化をはかりやすいなどの利点を有している。
【0011】
反射型偏光板の形成は、例えば必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。ちなみにその具体例としては、必要に応じマット処理した保護フィルム等の透明保護層の片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。
【0012】
また前記の透明保護層に微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。なお反射層は、その反射面が透明保護層や偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0013】
前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護層は、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。
【0014】
透明保護層の表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0015】
なお上記の保護フィルムや透明保護層の形成には、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れるポリマーなどが好ましく用いられる。その例としては、ポリエステル系樹脂やアセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂やポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂やポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂、あるいはアクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系やシリコーン系等の熱硬化型、ないし紫外線硬化型の樹脂などがあげられる。
【0016】
透明保護層は、ポリマーの塗布方式やフィルムとしたものの積層方式などの適宜な方式で形成してよく、厚さは適宜に決定してよい。一般には500μm以下、就中1〜300μm、特に5〜200μmの厚さとされる。なお表面微細凹凸構造の透明保護層の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカやアルミナ、チタニアやジルコニア、酸化錫や酸化インジウム、酸化カドミウムや酸化アンチモン等からなる、導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。微粒子の使用量は、透明樹脂100重量部あたり2〜25重量部、就中5〜20重量部が一般的である。
【0017】
反りを抑制する点より用いる光学素材としての偏光板は、30℃において0.2%の引張り伸びを与えた場合の弾性率が215kgf/mm以上の透明保護層を有するものであることに加えて、ガラス転移温度が145℃以上の透明保護層を有するものである。
【0018】
一方、上記した光学素材を形成することのある位相差板の具体例としては、ポリカーボネートやポリビニルアルコール、ポリスチレンやポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレートやポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルムなどがあげられる。位相差板は、2種以上の位相差層を積層して位相差等の光学特性を制御したものとして形成することもできる。
【0019】
また上記した光学素材である楕円偏光板又は反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等としたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置の製造効率を向上させうる利点がある。
【0020】
上記において反りを抑制する点より用いる光学素材は、90℃で15時間加熱した後における収縮量が0.8%以下のものであることに加えて、23〜90℃の温度範囲における線膨張係数が2×10−4/℃以下のものである。
【0021】
光学部材は、図例の如く光学素材1,5の片面又は両面にセル基板3等の他部材との接着を目的とする粘着層2を付設することにより形成することができる。その粘着層は適宜な粘着剤にて形成しうるが、光学部材の浮き(剥離)やセル基板の反りを防止する点よりは、90℃における1000%弾性率が3〜10g/mm、就中4〜8g/mmの粘着層にて形成することが好ましい。また接着力については特に限定はないが、接着ミス時の液晶セルの再利用などの点よりは樹脂基板に対する90度剥離(常温〜70℃、剥離速度300mm/分)に基づいて400〜1000g/25mmとすることが好ましい。
【0022】
粘着層の形成には、前記の如く例えばアクリル系重合体やシリコーン系ポリマー、ポリエステルやポリウレタン、ポリエーテルや合成ゴムなどの適宜なポリマーをベースポリマーとする粘着性物質や粘着剤を用いることができ、特に限定はない。就中アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。また吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0023】
なお粘着層には、例えば天然物や合成物の樹脂類、就中、粘着性付与樹脂、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤や酸化防止剤などの粘着層に添加されることのある適宜な添加剤を含有させることもできる。また微粒子を含有させて光拡散性を示す粘着層とすることもできる。
【0024】
光学素材への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒に粘着性物質ないしその組成物を溶解又は分散させて10〜40重量%程度の粘着剤液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で光学素材上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを光学素材上に移着する方式などがあげられる。
【0025】
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として光学素材の片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に光学素材の表裏において異なる組成又は種類等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、被着体の種類等に応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmとされる。粘着層が光学部材の表面に露出する場合には、実用に供するまでの間その表面をセパレータなどで被覆保護しておくことが好ましい。
【0026】
なお上記した偏光板や位相差板や粘着層等の光学部材を形成する各層は、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの適宜な方式により紫外線吸収能をもたせることもできる。
【0027】
光学部材は、その粘着層2を介し樹脂基板3に接着して図に例示した如き形態のセル基板とされるが、その接着処理は液晶セルとした後のセル基板に対して行うこともできる。すなわち液晶セルは、光学部材をその粘着層を介し予め樹脂基板に接着してなるセル基板を用いて形成してもよいし、当該光学部材を接着する前の樹脂基板をセル基板に用いて液晶セルを形成した後そのセル基板に対し光学部材を接着して所定形態のセル基板、ひいては液晶セルとしてもよい。
【0028】
前記において本発明によるセル基板は、光学部材を接着した状態でそれを90℃で150時間加熱した場合にカール量が6mm/12吋以下である特性を示すものとしたものである。これにより液晶セルとした場合の反りを抑制できて、樹脂基板からなる実用性に優れる液晶表示装置を得ることができる。
【0029】
セル基板の形成に用いる樹脂基板は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの適宜な樹脂にて形成することができる。透明導電膜を付設する際の耐熱性などの点より好ましく用いうる樹脂基板は、ガラス転移温度が130℃以上、就中150℃以上、特に160℃以上の樹脂からなるものである。また樹脂基板は透明性や耐衝撃性に優れることが好ましく、就中、光透過率が80%以上であるものが好ましい。
【0030】
さらに液晶の変質防止や液晶セルとした場合の耐久性などの点より耐薬品性、光学的等方性、低吸水性、低透湿性、酸素等のガスバリア性に優れる樹脂基板が好ましい。なお光学部材の温度や湿度による寸法変化に耐えて反りの生じることを抑制する点などより、30℃において0.2%の引張り伸びを与えた場合の弾性率が300kgf/mm以上の樹脂基板が用いられる。
【0031】
ちなみに前記の樹脂基板を形成する樹脂の例としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂や、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル、ポリジアリルフタレート、ポリイソボニルメタクリレートなどの熱硬化性樹脂などがあげられる。かかる樹脂は、1種又は2種以上を用いることができ、他成分との共重合体や混合物などとしても用いうる。
【0032】
上記した性能の点などより特に好ましく用いうる樹脂基板は、エポキシ系樹脂、就中、脂環式エポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤とリン系硬化触媒を含有するエポキシ系組成物の硬化体からなるものである。その脂環式エポキシ樹脂としては、種々のものを用いることができ、特に限定はない。
【0033】
酸無水物系硬化剤としては例えば無水フタル酸、3.6エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などがあげられ、就中ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの無色ないし淡黄色の酸無水物が好ましく用いうる。酸無水物系硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂における1エポキシ当量あたり0.5〜1.3当量が好ましい。
【0034】
リン系硬化触媒としてはアルキルホスフィン類、ホスフィンオキサイド類、ホスホニウム塩類などがあげられる。その配合量は、酸無水物系硬化剤100重量部あたり、0.2〜10重量部、就中0.5〜4重量部が好ましい。
【0035】
樹脂基板の形成は、例えばキャスティング成形方式、流延成形方式、射出成形方式、ロール塗工成形方式、押出成形方式、トランスファ成形方式、反応射出成形方式(RIM)などの適宜な方式で行うことができる。その形成に際しては、必要に応じて例えば染料、変性剤、変色防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、反応性希釈剤、非反応性希釈剤などの適宜な添加剤を透明性を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0036】
樹脂基板の厚さは、薄型化や軽量性、強度や変形防止性などの点より1mm以下、就中0.8mm以下、特に0.1〜0.5mmが好ましい。なお樹脂基板は、単層物や積層物として形成されていてよく、従って樹脂基板の前記厚さは、同種又は異種の樹脂からなる2層又は3層以上の積層物として達成されていてもよい。
【0037】
樹脂基板には、基板の湾曲や液晶の変質等の原因となる水分や酸素の遮蔽を目的に必要に応じてガスバリア層を設けることができる。ガスバリア層は通例、耐久性や良変形性等を目的に高分子皮膜にて形成される。その高分子としては例えばポリビニルアルコールやその部分ケン化物、エチレン・ビニルアルコール共重合体やポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデンなどの酸素透過係数が小さいポリマーが好ましく用いうる。特にガスバリア性や水分の拡散性ないし吸水度の均一化などの点より、ビニルアルコール系ポリマーが好ましい。
【0038】
ガスバリア層の形成は、キャスティング方式やスピンコート方式等の適宜な塗工方式による高分子溶液の展開方式などにより行うことができる。ガスバリア層の厚さは、透明性や着色の防止、酸素や水蒸気等のガスバリア性などの点より、15μm以下、就中1〜10μmが好ましい。
【0039】
また図例の如く樹脂基板3の粘着層2との接着面には、粘着層との接着力の制御や表面の硬質化による耐擦傷性の向上などを目的に、必要に応じてコート層31を設けることもできる。樹脂基板が上記したガスバリア層を有する場合には、そのガスバリア層の上方にコート層は設けられる。コート層は、透明な硬質膜を形成する適宜な架橋性樹脂にて形成でき就中、多官能性単量体を光触媒等を介して紫外線照射により三次元架橋しうるようにした、例えばウレタンアクリレート系やエポキシ系などの紫外線硬化樹脂が好ましく用いうる。
【0040】
コート層の形成は、キャスティング方式やスピンコート方式やディッピング方式等の適宜な塗工方式で樹脂液を樹脂基板ないしガスバリア層等の上に展開して架橋処理する方法などにより行うことができる。コート層の厚さは、適宜に決定でき一般には200μm以下、就中100μm以下、特に1〜50μmとされる。
【0041】
さらに樹脂基板の前記コート層の付設側とは反対側となる透明導電膜の付設側には、その透明導電膜の密着性の向上などを目的に必要に応じて無機酸化物層を設けることもできる。その無機酸化物層は、透明層を形成する公知の無機酸化物にて形成でき、就中、前記の密着性などの点より金属アルコキシドの加水分解・重縮合体にて形成することが好ましい。
【0042】
前記の金属アルコキシドとしては、例えばアルコキシシラン、アルコキシアルミニウム、アルコキシチタン、アルコキシアンチモン、アルコキシジルコンなどの、加水分解・重縮合により透明な無機酸化物を形成する適宜なものを用いうる。就中、反応の容易性等の点より好ましく用いうる金属アルコキシドは、アルコキシシランである。
【0043】
ちなみに前記アルコキシシランの具体例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシランの如きテトラアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、n-プロピルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、エチルトリ-n-プロポキシシラン、イソプロピルトリ-n-プロポキシシラン、n-プロピルトリ-n-プロポキシシラン、γ-クロロプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-クロロプロピルトリ-n-プロポキシシラン、メチルジメトキシイソプロポキシシラン、メチルメトキシジイソプロポキシシラン、エチルジエトキシイソプロポキシシラン、エチルエトキシジイソプロポキシシラン、メチルジエトキシイソプロポキシシラン、メチルエトキシジイソプロポキシシランの如きモノアルキルトリアルコキシシランなどがあげられる。
【0044】
無機酸化物層の形成は、例えば金属アルコキシドと水をアルコール等の適宜な親水性溶媒に溶解させた溶液を例えばキャスティング方式やスピンコート方式やディッピング方式などの適宜な方式で樹脂基板の所定面に展開し、それを必要に応じ加熱処理して水や溶媒を蒸発させながら金属アルコキシドを加水分解・重縮合させ、無機酸化物とする方法などにより行うことができる。形成する無機酸化物層の厚さは、使用目的等に応じて適宜に決定することができ、一般には50μm以下、就中20μm以下、特に0.1〜5μmとされる。
【0045】
前記展開液の調製に際しては、2種以上の金属アルコキシドを用いることもできる。また加水分解・重縮合反応の促進の点よりは展開液のpHを2〜5に調整することが好ましい。その調整には、硝酸、塩酸、酢酸などの適宜な酸を用いうる。なお金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応は、常温にても進行するが、反応を速やかに行わせる点よりは80〜200℃で30〜120分間加熱することが好ましい。
【0046】
また無機酸化物層には、凹凸構造に基づくアンカー効果等による透明導電膜等の密着力のより向上などを目的として、無機酸化物粒子を分散含有させることもできる。その無機酸化物粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化アンチモン、ジルコニアなどからなる、無機酸化物層中で透明性を示す適宜な粒子を用いることができ、就中、アルミナ粒子が好ましい。
【0047】
本発明によるセル基板は、図例の如く液晶表示装置、就中、液晶セル6の形成に好ましく用いうる。特に液晶セルの形成には、厚さ0.4mmの場合に基づいて分光光度計による波長600nmの光の透過率が60%以上、就中80%以上の透明性を示すものが好ましく用いられる。
【0048】
液晶セルの形成に際してはセル基板には、必要に応じ密着力の向上等を目的としたSiOx層などを介して透明導電膜が設けられる。その透明導電膜の形成には、例えば酸化インジウム、酸化スズ、インジウム・錫混合酸化物、金、白金、パラジウム、透明導電塗料などの適宜なものを用いることができ、公知物のいずれも用いうる。
【0049】
また透明導電膜の形成も、例えば真空蒸着法やスパッタリング法等により付設する方式や透明導電塗料を塗布する方式などの従来に準じた方式にて行うことができる。従って透明導電膜を所定の電極パターン状に直接形成することも可能である。
【0050】
本発明においてセル基板の反り防止などの点より好ましい透明導電膜は、SiOx層を介してインジウム・錫混合酸化物を主成分とする膜を設けたものである。なおSiOx層の形成は、前記した透明導電膜の形成方法に準じた方法で行うことができる。
【0051】
液晶セルの形成は、例えば図例の如く前記した透明導電膜を電極パターン化したセル基板3を対向配置し、その間に液晶層4を封入する方法などにより行うことができる。透明導電膜上に必要に応じて設けられる液晶配列用の配向膜も同様に従来に準じた方式で行うことができる。形成する液晶セルは、例えばTN型、STN型、TFT型、強誘電性液晶型など任意である。
【0052】
実用時の反りを抑制する点より好ましく用いうる液晶セルは、90℃で150時間加熱した後におけるカール量が1.5mm/3.8吋以下のものである。液晶表示装置は、図例の如く液晶セル6を形成するセル基板3の片側又は両側に、光学部材(1,5)がその粘着層2を介して接着された構造を有するものとして形成することができる。なお図例の装置は、液晶セル6の視認背面側に反射層52を有する偏光板51を設けた反射型のものを示している。
【0053】
液晶表示装置の形成に際して光学部材は、上記したように予めセル基板に接着されていてもよいし、液晶セルを形成後にそのセル基板に対して接着してもよい。その接着に際しては、偏光板や位相差板等が所定の配置位置となるように行われ、その配置位置は従来に準じることができる。
【0054】
本発明によるセル基板は、その光学部材における光学素材がポリマーフィルムからなる場合、柔軟性を有して湾曲面や大面積面等への適用が容易であり、例えば薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、TN型やSTN型に代表される単純マトリクス駆動型のものなどの適宜なタイプの液晶セルに適用して種々の液晶表示装置を形成することができる。
【0055】
【実施例】
実施例1
下式で表される脂環式エポキシ樹脂100部(重量部、以下同じ)とメチルヘキサヒドロ無水フタル酸125部とトリ−n−ブチルオクチルホスホニウムブロマイド1部からなる混合物を型に注入し、120℃で2時間硬化処理して厚さ0.4mmの樹脂基板を得た。30℃、0.2%引張り伸び時の弾性率は300kgf/mmである。
Figure 0004230609
【0056】
次に、前記樹脂基板の片面にスピンコート方式で、下式で表されるウレタンアクリレート系樹脂を塗布し、紫外線を照射して架橋処理し厚さ5μmのコート層を形成し、セル基板を得た。
Figure 0004230609
【0057】
一方、ポリビニルアルコール系偏光フィルムの両面にポリビニルアルコール系接着層を介し30℃、0.2%引張り伸び時の弾性率が230kgf/mmで、ガラス転移温度が155℃のトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フイルム社製、TD80U)からなる透明保護層を接着してなる、90℃、15時間加熱後の収縮量が0.4%で、23〜90℃における線膨張係数が1.7×10−4/℃の偏光板の片面に厚さ25μmの粘着層を設けて光学部材を得た。
【0058】
前記の粘着層は、アクリル酸イソオクチル100部、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート1部及びアゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチル200部と共に四ツ口フラスコに加えて撹拌下に約60℃で反応させて得たポリマー溶液に、その固形分100部あたり1部のイソシアネート系架橋剤を配合してアクリル系粘着剤を得、それをシリコーン系剥離剤の表面コートを設けたポリエステルフィルムからなるセパレータ上に塗工し150℃で5分間加熱処理して形成したものをセパレータと共に移着した。
【0059】
上記で得た12吋サイズ(185mm×250mm)のセル基板のコート面上に前記した同サイズの光学部材をその粘着層を介し2kgのゴムローラを一往復させる方式で圧着し、50℃、5気圧のオートクレーブ中に15分間放置して接着状態を熟成した後、室温に冷却して光学部材接着のセル基板を得た。
【0060】
実施例2
実施例1で得た3.8吋サイズ(65mm×86mm)のセル基板2枚を用いて液晶セルを形成し、その片面に前記偏光板と位相差板を積層した楕円偏光板に前記の粘着層を設けた同サイズの光学部材をその粘着層を介し2kgのゴムローラを一往復させる方式で圧着し(視認側)、液晶セルの他面に前記偏光板と反射板を積層した反射偏光板に前記の粘着層を設けた同サイズの光学部材をその粘着層を介し2kgのゴムローラを一往復させる方式で圧着し、それを50℃、5気圧のオートクレーブ中に15分間放置して接着状態を熟成した後、室温に冷却して液晶表示装置を得た。
【0061】
比較例1
ポリビニルアルコール系偏光フィルムの両面にポリビニルアルコール系接着層を介し30℃、0.2%引張り伸び時の弾性率が200kgf/mmで、ガラス転移温度が135℃のトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フイルム社製、T80U)からなる透明保護層を接着してなる、90℃、15時間加熱後の収縮量が0.9%で、23〜90℃における線膨張係数が2.4×10−4/℃の偏光板の片面に厚さ25μmの粘着層を設けて光学部材を得、それを用いたほかは実施例1に準じてセル基板を得た。
【0062】
比較例2
比較例1と同様の光学部材を用いたほかは実施例2に準じて液晶表示装置を得た。
【0063】
評価試験
カール量
実施例1、比較例1で得た12吋サイズの光学部材接着のセル基板及び実施例2、比較例2で得た3.8吋サイズの液晶表示装置を90℃の乾燥機中に150時間投入して取り出し、その24時間後室温に冷却したものを偏光板(視認側)を上側にして定盤上に置き、各4コーナーにおける定盤からの浮き量を測定して、その平均値をカール量とした。なお液晶表示装置では反射層の浮き量に基づいてカール量を評価した。
【0064】
前記の結果を次表に示した。
Figure 0004230609

【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の断面図
【符号の説明】
1,5:光学素材
11,51:偏光板
13:位相差板
52:反射層
2:粘着層
3:樹脂基板(セル基板)
6:液晶セル
4:液晶層

Claims (5)

  1. 30℃、0.2%の引張り伸び時の弾性率が215kgf/mm以上でガラス転移温度が145℃以上の透明保護層を有する偏光板からなる90℃、15時間加熱後の収縮量が0.8%以下で23〜90℃での線膨張係数が2×10 −4 /℃以下の光学素材の片面又は両面に粘着層を有する光学部材をその粘着層を介して、30℃、0.2%の引張り伸び時の弾性率が300kgf/mm以上の樹脂基板に接着してなり、90℃で150時間加熱した後のカール量が6mm/12吋以下であることを特徴とするセル基板。
  2. 請求項において、光学素材が反射型若しくはその他の偏光板又は楕円偏光板であるセル基板。
  3. 請求項1又は2に記載のセル基板を用いてなることを特徴とする液晶セル。
  4. 請求項において、90℃で150時間加熱後のカール量が1.5mm/3.8吋以下である液晶セル。
  5. 請求項又はに記載の液晶セルを用いてなることを特徴とする液晶表示装置。
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