JP3874227B2 - 粘着型光学部材 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、光学特性の安定性に優れる粘着型光学部材に関する。
【0002】
【発明の背景】
液晶表示装置(LCD)に用いる光学部材、例えば偏光板や位相差板やそれらを積層した楕円偏光板等は、LCDのキーデバイスであり品質のバラツキ防止やLCD組立の効率化などを目的に、その最表面に液晶セル等の他部材と接着するためのアクリル系粘着剤等からなる粘着層を予め付設した状態の粘着型光学部材として、輸送や組立作業等に供される。その場合、最表面に設けた粘着層が露出したままでは、接着力の低下や視認性の阻害等の原因となる汚染物が付着しやすいため、粘着層にセパレータを仮着カバーして保護する対策が採られている。
【0003】
従来、前記のセパレータとしては、ポリエステルフィルムを剥離剤で表面処理して剥離コートを設けたものが知られていた。しかしながら、それを光学部材に設けた粘着層に仮着して輸送したり保管したりしたのちセパレータを剥離して液晶セル等に接着した場合に、輝点等による輝度ムラなどの光学異常を発生する問題点があった。
【0004】
【発明の技術的課題】
本発明は、輝度ムラ等の光学異常を生じない粘着型光学部材の開発を課題とする。
【0005】
【課題の解決手段】
本発明は、光学部材の片面又は両面の最表面に設けた粘着層をセパレータにて仮着カバーしてなり、そのセパレータがポリエステルフィルムに移行防止層を介して剥離コートを設けたものからなり、前記の移行防止層が180℃、5分間の加熱で当該ポリエステルフィルム中からブリードする低分子オリゴマーの移行を防止する、厚さ0.01〜10μ m の硬化樹脂層からなることを特徴とする粘着型光学部材を提供するものである。
【0006】
【発明の効果】
本発明によれば、光学部材に設けた粘着層に仮着して輸送したり保管したりしたのちセパレータを剥離して液晶セル等に接着しても輝点による輝度ムラ等の光学異常を生じず、安定した光学特性を示す粘着型光学部材を得ることができる。これは、上記した特徴のセパレータを用いたことによる。
【0007】
すなわち本発明者らは、上記した輝点等の光学異常問題を克服するために粘着型光学部材を形成する各部材について鋭意研究を重ねた結果、かかる輝点等の発生問題は粘着層に生じた透明結晶に起因する光学用途に特有の問題であり、しかもその透明結晶がセパレータを形成するポリエステルフィルムに基づくものであることを究明し、上記の本発明をなすに到ったものである。
【0008】
【発明の実施形態】
本発明による粘着型光学部材は、光学部材の片面又は両面の最表面に設けた粘着層をセパレータにて仮着カバーしてなり、そのセパレータがポリエステルフィルムに、そのフィルム中から180℃、5分間の加熱でブリードする低分子オリゴマーの移行を防止する、厚さ0.01〜10μ m の硬化樹脂層よりなる移行防止層を介して剥離コートを設けたものからなる。その例を図1に示した。2が光学部材、3が粘着層、4がポリエステルフィルム43に移行防止層42を介して剥離コート41を設けたセパレータであり、1は必要に応じての保護フィルムである。
【0009】
光学部材としては、例えば偏光板や位相差板、それらを積層した楕円偏光板等の液晶表示装置の形成などに用いられる適宜なものを使用でき、その種類について特に限定はない。従って偏光板は、反射型のものなどであってもよい。また位相差板も、1/2や1/4等の波長板や視角補償などの適宜な目的を有するものであってよい。なお前記した楕円偏光板の如き積層タイプの光学部材の場合、その積層は粘着層等の適宜な接着手段を介し行われたものであってよい。
【0010】
ちなみに前記した偏光板の具体例としては、ポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムにヨウ素及び/又は二色性染料を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン配向フィルムからなる偏光フィルムなどがあげられる。また偏光板は、前記偏光フィルムの片面又は両面に保護フィルム等の透明保護層を有するものなどであってもよい。
【0011】
一方、反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化をはかりやすいなどの利点を有する。
【0012】
反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。前記の偏光板、就中、偏光フィルムの片面又は両面に必要に応じて設けられる透明保護層は、図例の如き保護フィルム1に兼ねさせることもできる。
【0013】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護層の片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記の透明保護層に微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。なお反射層は、その反射面が透明保護層や偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0014】
前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護層は、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護層の表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0015】
なお光学部材の表面保護等を目的に必要に応じて配置される上記した保護フィルムや、偏光板における透明保護層の形成には、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れるポリマーなどが好ましく用いられる。その例としては、ポリエステル系樹脂やアセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂やポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂やポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂、あるいはアクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系やシリコーン系等の熱硬化型、ないし紫外線硬化型の樹脂などがあげられる。
【0016】
透明保護層は、ポリマーの塗布方式やフィルムとしたものの積層方式などの適宜な方式で形成してよく、厚さは適宜に決定してよい。一般には500μm以下、就中1〜300μm、特に5〜200μmの厚さとされる。なお表面微細凹凸構造の透明保護層の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカやアルミナ、チタニアやジルコニア、酸化錫や酸化インジウム、酸化カドミウムや酸化アンチモン等からなる、導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。微粒子の使用量は、透明樹脂100重量部あたり2〜50重量部、就中5〜25重量部が一般的である。
【0017】
一方、上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネートやポリビニルアルコール、ポリスチレンやポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレートやポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0018】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学部材としたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0019】
光学部材の片面又は両面の最表面に設ける粘着層は、液晶セル等の他部材と接着するためのものである。その形成には、例えばアクリル系重合体やシリコーン系ポリマー、ポリエステルやポリウレタン、ポリアミドやポリエーテル、フッ素系やゴム系などの適宜なポリマーをベースポリマーとする粘着性物質や粘着剤を用いることができ、特に限定はない。就中、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0020】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0021】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、就中、粘着性付与樹脂、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤や酸化防止剤などの粘着層に添加されることのある適宜な添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0022】
光学部材の片面又は両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。ちなみにその例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒に粘着性物質ないしその組成物を溶解又は分散させて10〜40重量%程度の粘着剤液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で光学部材上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを光学部材上に移着する方式などがあげられる。
【0023】
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として光学部材の片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、光学部材の表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μm、就中5〜200μm、特に10〜100μmとされる。
【0024】
粘着層の露出面に対しては、図例の如く実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータ4が仮着されてカバーされる。本発明にてはそのセパレータとして、図1に例示した如くポリエステルフィルム43に移行防止層42を介して剥離コート41を設けてなるものが用いられる。これにより、輝点等の光学異常の発生を防止することができる。
【0025】
すなわち従来のセパレータによる輝点等の発生問題は、ポリエステルフィルム中の低分子オリゴマー、就中、分子量1000以下の2〜5量体等の低量体が上記したセパレータ上に粘着剤を塗工し乾燥させて粘着層とする際などにおける加熱温度、特に製造効率の向上等を目的とした高温での加熱下にブリードしてアクリル系等の粘着層の表面や内部に浸透し、それが飽和条件等の満足で析出して結晶化し、それが屈折率の異常点となることによる。従って移行防止層を介し当該低分子オリゴマーの移行を防止ないし抑制することにより、輝点等の光学異常の発生問題を回避することができる。
【0026】
セパレータは、例えばポリエステルフィルムの少なくとも粘着層と接着する面に、そのポリエステルフィルムを180℃で5分間加熱したときに当該フィルム表面にブリードする低分子オリゴマーの移行を防止する移行防止層を設け、その上にシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤からなる剥離コートを設ける方式などにより形成することができる。その移行防止層は、上記の点よりポリエステルフィルム中の移行成分、就中、低分子オリゴマーの移行を防止しうる材料にて形成することができる。
【0027】
セパレータを仮着したまま光学部材を検査に供して高精度の検査結果を得る点などより好ましく適用できる移行防止層は、それ自体の移行成分が少なくて透明性に優れ、位相差も少なくて屈折率がポリエステルに可及的に近いものである。かかる移行防止層は、例えばアクリル系やウレタン系、ウレタンアクリル系やシリコーン系の如きコーティング方式等による、熱硬化型や紫外線硬化型等の硬化樹脂層にて形成される。なお移行防止層の厚さは、移行阻止効果や柔軟性等のセパレータの取扱性などの点より0.01〜10μm、特に0.1〜5μmとされる。またセパレータの厚さは5〜300μmが一般的であるが、これに限定されない。
【0028】
なお本発明において、上記した光学部材を形成する偏光板や位相差板、保護フィルムや透明保護層等及び粘着層などの各層は、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの適宜な方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0029】
本発明による粘着型光学部材は、液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。
【0030】
【実施例】
実施例1
トルエン100重量部にウレタンアクリル系紫外線硬化型モノマー100重量部と光重合開始剤3重量部を配合した溶液を、厚さ50μmのPETフィルムの片面に塗布して紫外線で硬化処理し、厚さ1μmの移行防止層を設けた後、その上にシリコーン系剥離剤による剥離コートを設けてセパレータを得た。
【0031】
次に前記セパレータの剥離コート面に、アクリル系粘着剤の20重量%トルエン溶液を塗布し、180℃で5分間乾燥処理して厚さ20μmのアクリル系粘着層を形成し、それを偏光フィルムの両側に透明保護層を設けた厚さ180μmの偏光板の片面にそのセパレータと共に接着し、偏光板の他面に保護フィルムを接着して粘着型光学部材を得た。
【0032】
比較例
移行防止層を設けない他は実施例1に準じてセパレータを形成し、それを用いて粘着型光学部材を得た。
【0033】
評価試験
実施例、比較例で得た粘着型光学部材をそのセパレータを剥がした粘着層を介して、ガラス板の両側にクロスニコルの状態に接着して目視観察した。その結果、実施例1では輝点等の光学異常部分が認められなかったが、比較例では輝点等の光学異常部分が認められた。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学部材例の断面図
【符号の説明】
1:保護フィルム
2:光学部材
3:粘着層
4:セパレータ
41:剥離コート
42:移行防止層
43:ポリエステルフィルム
Claims (2)
- 光学部材の片面又は両面の最表面に設けた粘着層をセパレータにて仮着カバーしてなり、そのセパレータがポリエステルフィルムに移行防止層を介して剥離コートを設けたものからなり、前記の移行防止層が180℃、5分間の加熱で当該ポリエステルフィルム中からブリードする低分子オリゴマーの移行を防止する、厚さ0.01〜10μ m の硬化樹脂層からなることを特徴とする粘着型光学部材。
- 請求項1において、光学部材が偏光板又は位相差板を少なくとも有するものである粘着型光学部材。
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