JP4228334B2 - 電子写真用感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用感光体(以下、単に「感光体」とも称する)に関し、詳しくは、導電性基体上に有機材料を含む感光層を設けた、電子写真方式のプリンタ、複写機などに用いられる電子写真用感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来は、電子写真用感光体の感光層として、セレンまたはセレン合金などの無機光導電性物質、酸化亜鉛あるいは硫化カドミウムなどの無機光導電性物質を樹脂結着剤中に分散させたものが用いられてきた。近年では有機光導電性物質を用いた電子写真用感光体の研究が進み、感度や耐久性などが改善されて実用化されているものもある。
【0003】
また、感光体には一般に、暗所で表面電荷を保持する機能と、光を受容して電荷を発生する機能と、同じく光を受容して電荷を輸送する機能とが必要であり、一つの層でこれらの機能を併せ持った、所謂単層型感光体と、主として電荷発生に寄与する層と、暗所での表面電荷の保持および光受容時の電荷輸送に寄与する層とに機能分離した層を積層した、所謂積層型感光体とがある。
【0004】
これらの感光体を用いた電子写真法による画像形成には、例えば、カールソン方式が適用される。この方式での画像形成は、暗所での感光体へのコロナ放電による帯電、帯電された感光体表面上への露光による原稿の文字や絵などの静電潜像の形成、形成された静電潜像のトナーによる現像、現像されたトナー像の紙などの支持体への定着により行われ、トナー像転写後の感光体は、除電、残留トナーの除去、光除電などを行った後、再使用に供される。
【0005】
現在実用化されている有機感光体は、従来の無機感光体に比べ、可とう性、膜形成性、低コスト性、安全性など多くの利点があり、材料の多様性からさらに感度、耐久性などの改善が進められている。
【0006】
有機感光体のほとんどは、電荷発生層と電荷輸送層とに機能を分離した積層型の感光体である。一般に、積層型有機感光体は、導電性基体上に、顔料、染料などの電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と、ヒドラゾン、トリフェニルアミンなどの電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層とを順に形成したものであり、電子供与性である電荷輸送物質の性質上、正孔移動型となり、感光体表面を負帯電したときに感度を有する。ところが負帯電型では、正帯電型に比べて帯電時に用いるコロナ放電が不安定であり、また、オゾンや窒素酸化物などを発生させるため、これが感光体表面に吸着して物理的、化学的劣化を引き起こしやすく、さらに、環境を悪化するという問題もある。このような点から、感光体としては、負帯電型感光体よりも使用条件の自由度の大きい正帯電型感光体の方が、その適用範囲は広く有利である。
【0007】
そこで、正帯電型で使用するために、電荷発生物質と電荷輸送物質とを同時に樹脂バインダーに分散させて単層の感光層として使用する方法が提案され、一部実用化されている。しかし、単層型感光体は高速機に適用するには感度が十分ではなく、また、繰り返し特性などの点からもさらに改良が必要である。
【0008】
また、高感度化を目的として機能分離型の積層構造とするため、電荷輸送層上に電荷発生層を積層して感光体を形成し、正帯電型で使用する方法が考えられる。しかし、この方式では電荷発生層が表面に形成されるため、コロナ放電、光照射、機械的摩耗などにより、繰り返し使用時における安定性などに問題がある。この場合、電荷発生層の上にさらに保護層を設けることも提案されているが、機械的摩耗は改善されるものの、感度など電気特性の低下を招くなどの問題がある。
【0009】
さらに、電荷発生層上に電子輸送性の電荷輸送層を積層して感光体を形成する方法も提案されている。この方法に用いられる電子輸送性材料としては、例えば2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノンなどが知られているが、この物質は発ガン性があり、安全上問題がある。その他、特開昭50−131941号公報、特開平6−59483号公報、特開平9−190002号公報、特開平9−190003号公報等において、シアノ化合物やキノン系化合物などが提案されているが、実用化に十分な電子輸送能を有する化合物は得られていないのが実情であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、今まで用いられたことのない新しい電子輸送性の有機材料を感光層中に電荷輸送物質として用いることにより、複写機およびプリンタに使用することのできる高感度、高性能の正帯電型電子写真用感光体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために各種有機材料について鋭意検討する中で、数多くの実験を行った結果、その技術的解明はまだ十分になされてはいないものの、還元電位が低い電荷輸送物質を使用することが電子写真特性の向上に極めて有効であり、以下に示す一般式(I)で表される特定の電子輸送性化合物を電荷輸送物質として使用することにより、正帯電で使用可能な高感度感光体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、上記課題を解決するために、本発明の電子写真用感光体は、導電性基体上に電荷発生物質および電荷輸送物質を含有する感光層を設けた電子写真用感光体において、該感光層が下記一般式(I)、
(式中、R1〜R3は夫々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基若しくはアルコキシ基、ニトロ基、置換基を有してもよいアリール基又は環を形成するための残基を表し、2個以上あるR1〜R3は夫々同一であっても異なっていてもよく、Aは酸素原子又は=CR4R5(但し、R4およびR5は夫々同一でも異なっていてもよく、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す)を表し、mは1又は2を表し、nは1〜5の整数を表す)で示される電子輸送性化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
前記一般式(I)で示される化合物の具体例を、下記の構造式(I−1)〜(I−28)にて示す。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
前記一般式(I)で示される化合物は、通常の方法により合成することができる。例えば、前記構造式(I−4)で示される化合物は、下記構造式(1)で示される化合物を、適当な酸化剤(例えば、過マンガン酸カリウム等)を用いて、有機溶媒(例えば、塩化メチレン等)と水溶液との混合溶媒中で酸化することにより、容易に合成することができる。
【0019】
以下、本発明の感光体の好適例の具体的構成について、図面を参照しながら説明する。図1および図2は、感光体の各種構成例を示す模式的断面図である。
【0020】
図1は、所謂単層型感光体の一構成例を示しており、導電性基体1上に、電荷発生物質と電荷輸送物質とを樹脂バインダー(結着剤)中に分散させた単層の感光層2が設けられ、さらに必要に応じて被覆層(保護層)6が積層されてなる。この単層型感光体は、電荷発生物質を電荷輸送物質および樹脂バインダーを溶解した溶液中に分散せしめ、この分散液を導電性基体上に塗布して感光層を形成することによって作製することができる。さらに、必要な場合は被覆層6を塗布形成することができる。
【0021】
図2は、所謂積層型感光体の一構成例を示しており、導電性基体1上に、電荷発生物質を主体とする電荷発生層3と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層4とが順次積層された感光層5が設けられてなる。この積層型感光体は、導電性基体上に電荷発生物質を真空蒸着するか、あるいは電荷発生物質の粒子を溶剤または樹脂バインダー中に分散させて得た分散液を塗布、乾燥して電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送物質を樹脂バインダー中に溶解又は分散させて得た分散液を塗布、乾燥して電荷輸送層を形成することにより作製することができる。
【0022】
また、図示はしていないが、いずれのタイプの感光体においても、導電性基体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は導電性基体から感光層への不要な電荷の注入防止や、基体表面上の欠陥被覆、感光層の接着性の向上等の目的で必要に応じて設けることができ、樹脂を主成分とする層やアルマイト等の酸化皮膜等からなる。
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態を図2に示す積層型感光体について説明するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
導電性基体1は、感光体の電極としての役目と同時に他の各層の支持体ともなっており、円筒状、板状、フィルム状のいずれでもよく、材質的にはアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルなどの金属、あるいはガラス、樹脂などの上に導電処理を施したものを用いることができる。
【0024】
電荷発生層3は、前記のように電荷発生物質の粒子を樹脂バインダー中に分散させた材料を塗布するか、あるいは真空蒸着などの方法により形成され、光を受容して電荷を発生する。また、その電荷発生効率が高いことと同時に発生した電荷の電荷輸送層4への注入性が重要であり、電場依存性が少なく低電場でも注入の良いことが望ましい。電荷発生物質としては、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、各種アゾ、キノン、インジゴ、シアニン、スクアリリウム、アズレニウム、ピリリウム化合物などの顔料あるいは染料や、セレンまたはセレン化合物などが用いられ、画像形成に使用する露光光源の光波長領域に応じて好適な物質を選ぶことができる。電荷発生層3は電荷発生機能を有すればよいので、その膜厚は電荷発生物質の光吸収係数により決まり、一般的には5μm以下であり、好適には2μm以下である。また、電荷発生層3は、電荷発生物質を主体としてこれに電荷輸送物質などを添加して使用することも可能である。
【0025】
電荷発生層3用の樹脂バインダーとしては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、塩化ビニル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ジアリルフタレート樹脂、メタクリル酸エステルの重合体およびこれらの共重合体などを適宜組み合わせて使用することが可能である。
【0026】
電荷輸送層4は、樹脂バインダー中に電荷輸送物質を分散させた塗膜であり、暗所では絶縁体層として感光体の電荷を保持し、光受容時には電荷発生層から注入される電荷を輸送する機能を発揮する。本発明においては、かかる電荷輸送物質として、本発明に係る電子輸送性化合物である前記一般式(I)で表される化合物の少なくとも一種を含有させることが必要であるが、他の電荷輸送物質を含有させて用いてもよい。
【0027】
電荷輸送層4用の樹脂バインダーとしては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、メタクリル酸エステルの重合体および共重合体等を用いることができる。
【0028】
また、感光体を使用する際に使用上障害となるオゾン劣化などを防止する目的で、電荷輸送層4にアミン系、フェノール系、硫黄系、亜リン酸エステル系、リン系などの酸化防止剤を含有させることも可能である。
【0029】
図1に示す被覆層6は、暗所ではコロナ放電の電荷を受容して保持する機能を有しており、かつ、感光層が感応する光を透過する性能を有し、露光時に光を透過して感光層に到達させ、発生した電荷の注入を受けて表面電荷を中和消滅させることが必要である。被覆層6の材料としては、ポリエステル、ポリアミドなどの有機絶縁性皮膜形成材料を適用することができる。また、これら有機材料とガラス、SiO2などの無機材料、さらには金属、金属酸化物などの電気抵抗を低減せしめる材料とを混合して用いることができる。被覆層6の材料は、前述のように、電荷発生物質の光の吸収極大の波長領域においてできるだけ透明であることが望ましい。
【0030】
被覆層自体の膜厚は、被覆層の配合組成にも依存するが、繰り返し連続使用したときに残留電位が増大するなどの悪影響が出ない範囲で任意に設定することができる。
【0031】
尚、図1に示す単層型感光体の場合においても、前記一般式(I)で表される本発明に係る電子輸送性化合物の少なくとも一種を感光層2中に含有することが必要であるが、その他の材料等は、上述の積層型感光体と同様のものを用いることができ、特に制限されるものではない。好適には、電荷輸送物質として前記一般式(I)の電子輸送性化合物と共に、正孔輸送物質を含有させる。かかる正孔輸送物質としては、ベンジジン誘導体やトリフェニルアミン誘導体などが好ましい。また、この場合の好適添加量は、感光層形成塗膜中に含まれる材料全体に対して、電子輸送性化合物については好適には10〜60重量%、より好適には15〜50重量%であり、正孔輸送物質は好適には10〜60重量%、より好適には20〜50重量%である。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
実施例1
x型無金属フタロシアニン(H2Pc)20重量部と、前記構造式(I−1)で示される化合物100重量部とを、ポリエステル樹脂(商品名バイロン200:東洋紡(株)製)100重量部とテトラヒドロフラン(THF)溶剤とともに3時間混合機により混練して塗布液を調製し、導電性基体としての外径30mm、長さ260mmのアルミニウム製ドラム上に塗布して、乾燥後の膜厚が15μmになるように感光層を塗布形成して、感光体を作製した。
【0033】
実施例2
チタニルフタロシアニン(TiOPc)2重量部と、前記構造式(I−3)で示される化合物40重量部と、正孔輸送物質としての下記式、
で表されるベンジジン誘導体60重量部と、ポリカーボネート樹脂(BP−PC、出光興産(株)製)100重量部とを、塩化メチレンとともに3時間混合機により混練して塗布液を調製し、アルミニウム支持体上に乾燥後の膜厚が15μmになるように感光層を塗布形成して、感光体を作製した。
【0034】
実施例3
チタニルフタロシアニン(TiOPc)2重量部と、前記構造式(I−4)で示される化合物40重量部と、正孔輸送物質としての下記式、
で表されるトリフェニルアミン誘導体60重量部と、ポリカーボネート樹脂(BP−PC、出光興産(株)製)80重量部とを、塩化メチレンとともに3時間混合機により混練して塗布液を調製し、アルミニウム支持体上に乾燥後の膜厚が20μmになるように感光層を塗布形成して、感光体を作製した。
【0035】
実施例4
実施例3において、チタニルフタロシアニンに代えて下記式、
で表されるスクアリリウム化合物を用い、また、前記構造式(I−4)の化合物に代えて前記構造式(I−5)の化合物を用いた以外は実施例3と同様にして、感光体を作製した。
【0036】
実施例5
チタニルフタロシアニン(TiOPc)70重量部と、塩化ビニル共重合体(商品名MR−110、日本ゼオン(株)製)30重量部とを、塩化メチレンとともに3時間混合機により混練して塗布液を調製し、アルミニウム支持体上に乾燥後の膜厚が1μmになるように塗布して、電荷発生層を形成した。次に、前記構造式(I−7)で示される化合物100重量部と、ポリカーボネート樹脂(PCZ−200、三菱ガス化学(株)製)100重量部と、シリコンオイル0.1重量部とを、塩化メチレンにて混合し、電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が7μmとなるように塗布して電荷輸送層を形成し、感光体を作製した。
【0037】
実施例6
実施例3において、チタニルフタロシアニンに代えて下記式、
で示されるビスアゾ顔料を用い、また前記構造式(I−4)の化合物に代えて前記構造式(I−17)の化合物を用いた以外は実施例3と同様にして、感光体を作製した。
【0038】
実施例7
実施例3において、チタニルフタロシアニンに代えて下記式、
で示されるビスアゾ顔料を用い、また前記構造式(I−4)の化合物に代えて前記構造式(I−22)の化合物を用いた以外は実施例3と同様にして、感光体を作製した。
【0039】
感光体の評価
上述の実施例で作製した感光体の電子写真特性を下記の方法で評価した。
感光体に暗所で+4.5kVのコロナ放電を行って感光体表面を正帯電せしめたときの初期の表面電位をVs(V)とし、続いてコロナ放電を中止した状態で5秒間暗所に保持したときの表面電位Vd(V)を測定し、さらに続いて感光体表面に照度100ルックス(lx)の白色光を照射して表面電位Vdが半分になるまでの時間(秒)を求め、感度(半減衰露光量)E1/2 (lx・s)とした。
【0040】
また、照度100ルックスの白色光を10秒間照射したときの表面電位を残留電位Vr(V)とした。また、実施例1〜5については、長波長光での高感度が期待できるので、波長780nmの単色光を用いたときの電子写真特性も同時に測定した。すなわち、Vdまでは同様に測定し、次に白色光の代わりに1μWの単色光(780nm)を照射して感度(μJ/cm2)を求め、また、この光を10秒間感光体表面に照射したときの残留電位Vr(V)を測定した。測定の結果を下記の表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、導電性基体上に設けた感光層に、電荷輸送物質として前記一般式(I)で示される電子輸送性化合物を用いたことにより、正帯電において高感度で電気特性に優れた感光体を得ることができる。また、電荷発生物質は露光光源の種類に対応して好適な物質を選ぶことができ、フタロシアニン化合物、スクアリリウム化合物、ビスアゾ化合物などを用いることにより、半導体レーザプリンタや複写機に使用可能な感光体を得ることができる。さらに、必要に応じて表面に被覆層を設置して耐久性の向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例の単層型電子写真用感光体の模式的構造断面図である。
【図2】本発明の他の例の積層型電子写真用感光体の模式的構造断面図である。
【符号の説明】
1 導電性基体
2 感光層
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 感光層(積層)
6 被覆層(保護層)
Claims (1)
- 導電性基体上に電荷発生物質および電荷輸送物質を含有する感光層を設けた電子写真用感光体において、該感光層が下記一般式(I)、
(式中、R1〜R3は夫々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基若しくはアルコキシ基、ニトロ基、置換基を有してもよいアリール基又は環を形成するための残基を表し、2個以上あるR1〜R3は夫々同一であっても異なっていてもよく、Aは酸素原子又は=CR4R5(但し、R4およびR5は夫々同一でも異なっていてもよく、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す)を表し、mは1又は2を表し、nは1〜5の整数を表す)で示される電子輸送性化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする電子写真用感光体。
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