JP4228062B2 - 多孔膜、複合イオン交換膜およびその製造方法 - Google Patents

多孔膜、複合イオン交換膜およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた耐熱性、機械的強度、平滑性および耐層間剥離性を兼ね備えたポリベンゾアゾール系ポリマーよりなる多孔膜およびその製造方法に関するものである。また、本発明は機械的強度とイオン伝導性に優れる複合イオン交換膜、特に高分子固体電解質膜に関するものである。
【0002】
【従来技術】
エレクトロニクスを始めとする技術の発展により、優れた耐熱性と機械的性質を兼ね備えたフレキシブルなフィルムや膜が強く求められている。耐熱性を有する有機ポリマーとしては、アラミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリエーテルケトン等が挙げられる。しかしながら、これらのフィルムは耐熱性の点で不十分であったり(アラミド、芳香族ポリエーテルケトン)、吸湿率が比較的大きく、電気絶縁性や吸湿寸法安定性の点で不満足であったり(アラミド)、成形の工程が煩雑であったり(芳香族ポリイミド)と、それぞれに欠点を有している。
【0003】
特許文献1には、ポリベンゾアゾールが開示されている。ポリベンゾアゾールは、芳香族ポリイミドより更に耐熱性に優れるとともに強力の点でも優れている。しかし、ポリベンゾアゾールは剛直性が高いため液晶構造をとりやすく、フィルムを製膜する際には吐出方向に過度に配向するため、できたフィルムはフィブリル化し易く、製膜方向(MD方向)の機械的強度は強いもののMD方向に直角な方向(TD方向)の機械的強度が弱く裂けやすい欠点を有している。
【0004】
特許文献2には、配向ポリベンゾアゾールフィルムの製造方法が開示されている。しかし、この方法で得られるポリベンゾアゾールフィルムは、製膜も非常に繁雑であり、フィルム厚み方向に対して層間剥離しやすいという問題がある。
【0005】
アプリケーターを用いた流延法による製膜もよく知られた技術ではあるが、ポリベンゾアゾールのような高粘度のドープ溶液では、スキージ方向に筋斑が発生し、平滑なフィルムや膜を得ることができない。
【0006】
一方、近年、エネルギー効率や環境性に優れた新しい発電技術が注目を集めている。中でも高分子固体電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池はエネルギー密度が高く、また、他の方式の燃料電池に比べて運転温度が低いため起動、停止が容易であるなどの特徴を有し、電気自動車や分散発電等の電源装置としての開発が進んできている。また、同じく高分子固体電解質膜を使用し、燃料としてメタノールを直接供給するダイレクトメタノール型燃料電池も携帯機器の電源などの用途に向けた開発が進んでいる。高分子固体電解質膜には通常プロトン伝導性のイオン交換樹脂膜が使用される。高分子固体電解質膜にはプロトン伝導性以外にも、燃料の水素等の透過を防ぐ燃料透過抑止性や機械的強度などの特性が必要である。このような高分子固体電解質膜としては例えば米国デュポン社製ナフィオン(商品名)に代表されるようなスルホン酸基を導入したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜が知られている。
【0007】
固体高分子形燃料電池の高出力化や高効率化のためには高分子固体電解質膜のイオン伝導抵抗を低減させることが有効であり、その方策のひとつとして膜厚の低減が挙げられる。ナフィオンに代表されるような高分子固体電解質膜でも膜厚を低減させる試みが行われている。しかしながら、膜厚を低減させると機械的強度が小さくなり、高分子固体電解質膜と電極をホットプレスで接合させる際などに膜が破損しやすくなったり、膜の寸法の変動により、高分子固体電解質膜に接合した電極がはがれて発電特性が低下したりするなどの問題点を有していた。さらに、膜厚を低減させることで燃料透過抑止性が低下し、起電力の低下や燃料の利用効率の低下を招くなどの問題点を有していた。
【0008】
さらに高分子固体電解質膜は上記に示した燃料電池のイオン交換樹脂膜としての用途だけでなく、アルカリ電解や水からの水素製造のような電解用途、リチウム電池やニッケル水素電池などの種々の電池における電解質用途などの電気化学分野での用途、微小アクチュエータや人工筋肉のような機械的機能材料用途、イオンや分子等の認識・応答機能材料用途、分離・精製機能材料用途など幅広い用途にも適用が可能であり、それぞれの用途においても高分子固体電解質膜の高強度化や薄膜化を達成することでこれまでにない優れた機能を提供することができると考えられる。
【0009】
高分子固体電解質膜の機械的強度を向上させ、寸法変化を抑制する方法として、高分子固体電解質膜に種々の補強材を組み合わせた複合高分子固体電解質膜が提案されている。特許文献3には、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜の空隙部にイオン交換樹脂であるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含浸し、一体化した複合高分子固体電解質膜が記載されている。しかしながら、これらの複合高分子固体電解質膜は補強材がポリテトラフルオロエチレンでできているため、発電時の熱により補強材が軟化し、クリープによる寸法変化を生じやすく、また補強材にパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーの溶液を含浸して乾燥する際に、補強材の空隙部分の容積がほとんど変化しないために補強材の空隙の内部で析出したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーが偏在しやすく、空隙が該ポリマーで完全に充填されるためにはイオン交換樹脂溶液の含浸と乾燥のプロセスを複数回繰り返すなどの複雑なプロセスが必要であり、また、空隙が残りやすいために燃料透過抑止性に優れた膜が得られにくいといった問題点を有していた。また、特許文献4にはパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーの膜内に補強材としてフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンが分散された複合高分子固体電解質膜が記載されている。しかしながら、このような複合高分子固体電解質膜は、補強材が不連続な構造のため十分な機械的強度が得られず、膜の変形が抑制できないために電極のはがれが生じるなどの問題点を有していた。
【0010】
ポリベンゾオキサゾール(PBO)やポリベンズイミダゾール(PBI)のようなポリベンザゾール系ポリマーは高耐熱性、高強度、高弾性率の点で優れることから、高分子固体電解質膜の補強材料に適していることが期待される。
【0011】
特許文献5には光学異方性のポリベンザゾール系ポリマー溶液を製膜してから吸湿による等方化の過程を経て凝固しポリベンザゾールフィルムを得る方法が開示されているが、これに記載されているような方法で得られるポリベンザゾールフィルムは透明な緻密性の高いフィルムであり、イオン交換樹脂を含浸してイオン交換膜とする目的には適していなかった。
【0012】
ポリベンザゾール系ポリマー溶液の成形加工においては、アプリケーターを用いた流延法による製膜もよく知られた技術ではある。しかしながら、ポリマー濃度が1重量%以上のポリベンザゾール系ポリマー溶液を用いた場合、ポリベンザゾール系ポリマー溶液は高粘度となり、スキージ方向に筋斑が発生し、平滑なフィルムを得ることができない。実質的に使用できるポリマー濃度は、せいぜい0.5重量%である。このため、経済性に劣るばかりか、得られた膜の強度および弾性率も不十分であるという問題を有する。流延法により得られたポリベンザゾール系ポリマーからなる膜においては、基盤に接している側の表面構造と基盤に接していない側の表面構造は異なり非対称構造を形成する。基盤に接している側の表面では緻密構造を形成するに対し、基盤に接していない側の表面は多孔構造を形成する。このような非対称構造を形成したポリベンザゾール系ポリマーからなる支持体膜にイオン交換樹脂を含浸させた場合、緻密構造を形成している箇所においては十分にイオン交換樹脂を含浸することができず、得られたイオン交換膜の発電性能は不十分となってしまう問題がある。
【0013】
【特許文献1】
特表昭61−501452号公報
【特許文献2】
特表平6−503521号公報
【特許文献3】
特開平8−162132号公報
【特許文献4】
特開2001−35508号公報
【特許文献5】
特開2000−273214号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決し、優れた耐熱性、機械的強度、平滑性、耐層間剥離性および機能性剤の含浸性を兼ね備えたポリベンゾアゾール系ポリマーよりなる多孔膜およびその製造方法を提供するものである。また、本発明は、耐熱性、機械的強度、平滑性および耐層間剥離性が高く、イオン伝導性に優れた高分子固体電解質膜として使用するのに適した複合イオン交換膜ならびに、その製造方法を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を実施した結果、良好なポリベンザゾール系ポリマーからなる支持体膜の製造を可能とし、優れた複合イオン交換膜の開発に成功した。
【0016】
すなわち、本発明のポリベンゾアゾール系ポリマーよりなる多孔膜は、少なくとも二枚の支持体の間に挟んだポリベンザゾール系ポリマーよりなるポリマードープをロールやスリットまたはプレスを介して薄膜化したものを凝固浴に導き、凝固浴中でフィルム状シートを剥離し凝固させることで製造されてなることを特徴としている。また、本発明の複合イオン交換膜は、前記したポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜にイオン交換樹脂が含浸されてなる複合層と、該複合層を挟む形で該複合層の両面に形成された多孔膜を含まないイオン交換樹脂からなる表面層を形成することを特徴としている。
(1)ポリベンザゾール系ポリマーの等方性溶液を、少なくとも二枚のフィルム状シートの間に挟んだものを凝固浴に導き、凝固浴中でフィルム状シートを剥離し凝固させることで製造した、ポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜。
(2)0.5重量%以上3重量%以下のポリベンザゾール系ポリマーの等方性溶液が、少なくとも2枚のフィルム状シートの間に挟まれた状態で、薄膜化されていることを特徴とする、ポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜。
(3)凝固浴がポリベンザゾール系ポリマーの貧溶媒、または貧溶媒と良溶媒の混合物、または貧溶媒に塩類を含有する溶液であることを特徴とする、ポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜。
(4)フィルム状シートがポリベンザゾール系ポリマーの貧溶媒またはその蒸気を透過させるフィルム状シートであって、該フィルム状シートを透過した該貧溶媒またはその蒸気で該ポリベンザゾール系ポリマーの凝固の少なくとも一部を行うことを特徴とする、ポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜。
(5)0.5重量%以上3重量%以下のポリベンザゾール系ポリマーの等方性溶液を、少なくとも二枚のフィルム状シートの間に挟んだものを凝固浴に導き、凝固浴中でフィルム状シートを剥離し凝固させることを特徴としたポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜の製造方法。
(6)ポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜にイオン交換樹脂が含浸されてなる複合層と、該複合層を挟む形で該複合層の両面に形成された多孔膜を含まないイオン交換樹脂からなる表面層を有する複合イオン交換膜である。
【0017】
【発明の実施形態】
以下、本発明のポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜および複合イオン交換膜について詳細に説明する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の支持体膜として使用されるポリベンザゾール系ポリマーとは、ポリマー鎖中にオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環を含む構造のポリマーをいい、下記一般式で表される繰り返し単位をポリマー鎖中に含むものをいう。
【0019】
【化1】
Figure 0004228062
【0020】
ここで、Ar1,Ar2,Ar3は、芳香族単位を示し、各種脂肪族基、芳香族基、ハロゲン基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基等の置換基を有していても良い。これら芳香族単位は、ベンゼン環などの単環系単位、ナフタレン、アントラセン、ピレンなどの縮合環系単位、それらの芳香族単位が2個以上任意の結合を介してつながった多環系芳香族単位でも良い。また、芳香族単位におけるNおよびXの位置はベンザゾール環を形成できる配置であれば特に限定されるものではない。さらに、これらは炭化水素系芳香族単位だけでなく、芳香環内にN,O,S等を含んだヘテロ環系芳香族単位でも良い。XはO,S,NHを示す。
上記Ar1は、下記一般式で表されるものが好ましい。
【0021】
【化2】
Figure 0004228062
【0022】
ここで、Y1、Y2はCHまたはNを示し、Zは直接結合、−O−,−S−,−SO2−,−C(CH3)2−,−C(CF3)2−,−CO−を示す。
Ar2は、下記一般式で表されるものが好ましい。
【0023】
【化3】
Figure 0004228062
【0024】
ここで、Wは−O−,−S−,−SO2−,−C(CH3)2−,−C(CH3)2−,−CO−を示す。
Ar3は、下記一般式で表されるものが好ましい。
【0025】
【化4】
Figure 0004228062
【0026】
これらポリベンザゾール系ポリマーは、上述の繰り返し単位を有するホモポリマーであっても良いが、上記構造単位を組み合わせたランダム、交互あるいはブロック共重合体であっても良く、例えば米国特許第4703103号、米国特許第4533692号、米国特許第4533724号、米国特許第4533693号、米国特許第4539567号、米国特許第4578432号等に記載されたものなども例示される。
【0027】
これらポリベンザゾール系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
【0028】
【化5】
Figure 0004228062
【0029】
【化6】
Figure 0004228062
【0030】
【化7】
Figure 0004228062
【0031】
【化8】
Figure 0004228062
【0032】
【化9】
Figure 0004228062
【0033】
【化10】
Figure 0004228062
【0034】
【化11】
Figure 0004228062
【0035】
さらに、これらポリベンザゾール系構成単位だけでなく、他のポリマー構成単位とのランダム、交互あるいはブロック共重合体であっても良い。この時、他のポリマー構成単位としては耐熱性に優れた芳香族系ポリマー構成単位から選ばれることが好ましい。具体的には、ポリイミド系構成単位、ポリアミド系構成単位、ポリアミドイミド系構成単位、ポリオキシジアゾール系構成単位、ポリアゾメチン系構成単位、ポリベンザゾールイミド系構成単位、ポリエーテルケトン系構成単位、ポリエーテルスルホン系構成単位などを挙げることができる。
【0036】
ポリイミド系構成単位の例としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
【0037】
【化12】
Figure 0004228062
【0038】
ここで、Ar4は4価の芳香族単位で表されるが、下記構造で表されるものが好ましい。
【0039】
【化13】
Figure 0004228062
【0040】
また、Ar5は二価の芳香族単位であり、下記構造で表されるものが好ましい。ここで示される芳香環上には、メチル基、メトキシ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基等の各種置換基が存在していても良い。
【0041】
【化14】
Figure 0004228062
【0042】
これらポリイミド系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
【0043】
【化15】
Figure 0004228062
【0044】
【化16】
Figure 0004228062
【0045】
ポリアミド系構成単位の例としては、下記構造式で表されるのもが挙げられる。
【0046】
【化17】
Figure 0004228062
【0047】
ここで、Ar6,Ar7,Ar8はそれぞれ独立に下記構造から選ばれるものが好ましい。ここで示される芳香環上には、メチル基、メトキシ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基等の各種置換基が存在していても良い。
【0048】
【化18】
Figure 0004228062
【0049】
これらポリアミド系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
【0050】
【化19】
Figure 0004228062
【0051】
ポリアミドイミド系構成単位の例としては、下記構造で表されるものが挙げられる。
【0052】
【化20】
Figure 0004228062
【0053】
ここで、Ar9は上記Ar5の具体例として示される構造から選ばれるものが好ましい。
【0054】
これらポリアミドイミド構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
【0055】
【化21】
Figure 0004228062
【0056】
ポリオキシジアゾール系構成単位の例としては、下記構造式で表されるものが挙げられる。
【0057】
【化22】
Figure 0004228062
【0058】
ここで、Ar10は上記Ar5の具体例として示される構造から選ばれるものが好ましい。
【0059】
これらポリオキシジアゾール系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
【0060】
【化23】
Figure 0004228062
【0061】
ポリアゾメチン系構成単位の例としては、下記構造で表されるものが挙げられる。
【0062】
【化24】
Figure 0004228062
【0063】
ここで、Ar11,Ar12は、上記Ar6の具体例として示される構造から選ばれるものが好ましい。
【0064】
これらポリアゾメチン系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
【0065】
【化25】
Figure 0004228062
【0066】
ポリベンザゾールイミド系構成単位の例としては、下記構造式で表されるものが挙げられる。
【0067】
【化26】
Figure 0004228062
【0068】
ここで、Ar13、Ar14は上記Ar4の具体例として示される構造から選ばれるものが好ましい。
【0069】
これらポリベンザゾールイミド系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
【0070】
【化27】
Figure 0004228062
【0071】
ポリエーテルケトン系構成単位、ポリエーテルスルホン系構成単位は、一般に芳香族ユニットをエーテル結合とともにケトン結合やスルホン結合で連結した構造を有するものであり、下記構造式から選択される構造成分を含む。
【0072】
【化28】
Figure 0004228062
【0073】
ここで、Ar15〜Ar23はそれぞれ独立に下記構造で表されるものが好ましい。ここで示される芳香環上には、メチル基、メトキシ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基等の各種置換基が存在していても良い。
【0074】
【化29】
Figure 0004228062
【0075】
これらポリエーテルケトン系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
【0076】
【化30】
Figure 0004228062
【0077】
これらポリベンザゾール系ポリマー構成単位と共に共重合できる芳香族ポリマー構成単位は、厳密にポリマー鎖内の繰り返し単位を指しているのではなく、ポリマー主鎖中にポリベンザゾール系構成単位と共に存在できる構成単位を示しているものである。これら共重合できる芳香族ポリマー構成単位は一種だけでなく二種以上を組み合わせて共重合することもできる。このような共重合体を合成するには、ポリベンザゾール系ポリマー構成単位からなるユニット末端にアミノ基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン基等を導入して、これらの芳香族系ポリマーの合成における反応成分として重合しても良いし、これらの芳香族系ポリマー構成単位を含むユニット末端にカルボキシル基を導入してポリベンザゾール系ポリマーの合成における反応成分として重合しても良い。
【0078】
前記ポリベンザゾール系ポリマーは、ポリ燐酸溶媒中で縮合重合されポリマーが得られる。ポリマーの重合度は極限粘度で表され、15dL/g以上が好ましく、より好ましくは20dL/g以上である。この範囲を下回った場合、得られる支持体膜の強度が低く好ましくない。また極限粘度は、35dL/g以下が好ましく、26dL/g以下がより好ましい。この範囲を上回った場合、溶液の粘度が高く加工困難であり、また等方性の溶液が得られるポリベンザゾール系ポリマー溶液の濃度範囲が限られ、等方性の条件での製膜が困難となるため好ましくない。これらの溶液を、ポリリン酸、メタンスルホン酸等の溶媒で希釈して、ポリマードープとして用いる。
【0079】
本発明のポリベンザゾールの多孔膜は、押出しおよび薄膜化、凝固、洗浄および乾燥等の工程により製膜される。均一な多孔質構造を実現する手段としては、製膜された等方性のポリベンザゾール系ポリマー溶液を、貧溶媒と接触させて凝固する方法を用いる。貧溶媒はポリマー溶液の溶媒と混和できる溶媒であって、液相状態であっても気相状態であっても良い。さらに、気相状態の貧溶媒による凝固と液相状態の貧溶媒による凝固を組み合わせることも好ましく用いることができる。凝固に用いる貧溶媒としては、水、酸水溶液や無機塩水溶液の他、アルコール類、グリコール類、グリセリンなどの有機溶媒等を利用することができるが、使用するポリベンザゾール系ポリマー溶液との組み合わせによっては、多孔性支持体膜の表面開孔率や空隙率が小さくなったり、多孔性支持体膜の内部に不連続な空洞ができたりするなどの問題が生じるため、凝固に用いる貧溶媒の選択には特に注意が必要である。本発明における等方性のポリベンザゾール系ポリマー溶液の凝固においては、水蒸気、メタンスルホン酸水溶液、リン酸水溶液、グリセリン水溶液の他、塩化マグネシウム水溶液などの無機塩水溶液などの中から貧溶媒と凝固条件を選択することにより支持体膜表面および内部の構造、空隙率を制御するに至った。特に好ましい凝固の手段は水蒸気と接触させて凝固する方法や、凝固の初期において水蒸気に短時間接触させた後に水に接触させて凝固する方法、メタンスルホン酸水溶液に接触させて凝固する方法などである。
【0080】
本発明におけるポリベンザゾール系ポリマードープの製膜方法は、2枚のフィルム状シートの間に挟んだポリマードープをロールやスリットまたはプレスを介して薄膜化したものを凝固浴に導き、凝固浴中でフィルム状シートを剥離、凝固させる手法が最も好ましい。ここでいう薄膜化とは、上記の手段等を用いて凝固前のポリマードープの状態で、一般的には厚みが10μmから500μm程度にすることを言うが、限定なく市場要求に従って任意に設定できる。ロールやスリットまたはプレスの構成、配置はさまざまな組合わせをとることができる。望ましくは、少なくとも二枚のフィルム状シートの間に挟んだポリマードープを、少なくとも二本のロールの間にはさみ、向かい合ったロールを反対方向に回転させ、薄膜化したポリマードープを送り出す方式である。
【0081】
圧延されたポリマードープを挟んだフィルム状シートは、ガイドロールを介して凝固浴に導かれ、凝固浴中でフィルム状シートを剥離することにより、ポリマードープは凝固し、多孔膜となる。凝固浴中でフィルム状シートを剥離することによりポリマー溶液を完全に凝固する前に、フィルム状シートを透過した貧溶媒またはその蒸気で該ポリベンザゾール系ポリマーの凝固の少なくとも一部を行うことにより、支持体膜表面および内部の構造、空隙率を制御することが可能となる。
【0082】
ここで、最外層のフィルム状シートとポリマードープとの間に多孔質支持体や布帛、不織布等を挟んで複合化膜としてもよい。また、フィルム状シートとして多孔質支持体や布帛、不織布をそのまま用いて複合化膜として用いることもできる。多孔質支持体や布帛、不織布は通気性や液透過性があることが望ましい。該ポリベンザゾール系ポリマーの貧溶媒またはその蒸気を透過させるフィルム状シートとしては、ポリプロピレンからなる多孔質状のフィルム状シートが好ましく、その他ポリエチレン,ポリテトラフルオロエチレン等の各種材質の多孔質状のフィルム状シートが使用可能である。特に、凝固液として水または水とその他の溶媒との混合溶媒や水溶液を用いる場合、水蒸気のみを透過させ液体の水を透過させない、多孔質支持体を用いることが好ましい。これらは、公称孔径が0.03μmから10μm程度の市販のメンブランフィルターや、電池用セパレーター膜を利用できる。
【0083】
ここでいう凝固浴とは、凝固液が入った槽だけでなく、凝固性を有する気体、ミスト、蒸気が存在するゾーンも含む。凝固液としては、水、金属塩水溶液、多価アルコール、非プロトン性極性溶媒、プロトン極性溶媒等さらにはドープ希釈溶媒である、ポリリン酸、メタンスルホン酸の水溶液等が挙げられる。またこれらのミスト、蒸気も挙げられる。凝固液の温度は10℃以上70℃以下が好ましい。さらに好ましくは30℃以上60℃以下である。一般的に膜構造は、ポリマードープフィルムへの凝固液滲入と、ポリマードープ薄膜からのポリマー溶媒の流出のバランスにより、構造が決まる。凝固液温度が低すぎると、凝固液とポリマー溶媒の液液交換が不十分となり、所望の膜構造が得られない。凝固液温度が高すぎると、構造的には望ましいものが得られるが、強度的に非常に弱いものになりやすい。本発明においては、凝固液温度が10℃以上70℃以下が好ましい。さらに好ましくは30℃以上60℃以下で構造および強度的に満足な多孔膜が得られる。
【0084】
本発明で用いるポリベンザゾール系ポリマー溶液は、均一でかつ空隙率の大きな多孔性支持体膜を得るために等方性条件の組成で製膜することが重要であり、ポリベンザゾール系ポリマー溶液の好ましい濃度範囲は、0.3%以上であり、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは0.8%以上である。この範囲よりも濃度が低いとポリマー溶液の粘度が小さくなり、成形加工が困難となり、また経済的にも好ましくないほか、得られる多孔膜の強度が小さくなるため好ましくない。またさらに、濃度範囲は、3%以下が好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。また、この範囲よりも濃度が高いとポリベンザゾール系ポリマーのポリマー組成や重合度によっては溶液が異方性を示すため好ましくない。光学異方性を示すポリベンザゾール系ポリマー溶液から製膜した多孔膜ではイオン交換樹脂を大量に含浸できるような空隙率の大きな連続した空隙を有する多孔性のポリベンザゾール系ポリマー膜が得られないため好ましくない。
【0085】
ポリベンザゾール系ポリマー溶液の濃度を上記で示したような範囲に調整するには次に示すような方法をとる事ができる。すなわち、重合されたポリベンザゾール系ポリマー溶液から一旦ポリマー固体を分離し、再度溶媒を加えて溶解することで濃度調整を行なう方法、さらには、ポリ燐酸中で縮合重合されたままのポリマー溶液からポリマー固体を分離することなく、そのポリマー溶液に溶媒を加えて希釈し、濃度調整を行なう方法、さらにはポリマーの重合組成を調整することで上記濃度範囲のポリマー溶液を直接得る方法などである。
【0086】
ポリマー溶液の濃度調整に用いるのに好ましい溶媒としては、メタンスルホン酸、ジメチル硫酸、ポリ燐酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などがあげられ、あるいはこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒を用いることもできる。中でも特にメタンスルホン酸、ポリリン酸が好ましい。
【0087】
上記のようにして凝固されたポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔性支持体膜は、残留する溶媒によるポリマーの分解の促進や、複合電解質膜を使用する際に残留溶媒が流出するなどの問題を避ける目的で、十分に洗浄することが望ましい。洗浄は多孔性支持体膜を洗浄液に浸漬することで行なうことができる。特に好ましい洗浄液は水である。水による洗浄は、多孔性支持体膜を水中に浸漬したときの洗液のpHが5〜8の範囲になるまで行なうことが好ましく、さらに好ましくはpHが6.5〜7.5の範囲である。
【0088】
押出しおよび薄膜化工程、凝固工程、洗浄工程および乾燥工程等は連続的に行ってもよく、また、バッチ式で行ってもよい。さらに各工程の間に、含浸やコート、ラミネート処理による複合化、延伸、紫外線や電子線、コロナ照射等の表面処理、アニール処理等、目的に応じてその他の特別な工程を加えてもよい。
【0089】
上述のような方法で得られたポリベンザゾール系ポリマーよりなる該多孔性支持体膜にイオン交換樹脂を複合化させ、複合イオン交換膜を得る方法について説明する。即ち、該多孔性支持体膜を乾燥させずに、イオン交換樹脂溶液に浸漬し、該多孔性支持体膜内部の液をイオン交換樹脂溶液に置換してから乾燥させる方法により複合イオン交換膜を得る方法である。多孔性支持体膜内部の液がイオン交換樹脂溶液の溶媒組成と異なる場合には、その溶媒組成にあわせてあらかじめ内部の液を置換しておく方法も採られる。
【0090】
本発明の多孔性支持体膜は乾燥により空隙内部の液体の体積が減少するのにしたがって空隙構造が収縮し、支持体膜の見かけの体積が大幅に減少するという特徴を有する。該多孔性支持体膜の内部にイオン交換樹脂を含浸することなく金属の枠などに固定して面方向の収縮を制限して乾燥させた場合には、収縮は膜厚方向に起こり、該多孔性支持体膜の乾燥後の見かけの膜厚は、乾燥前の膜厚の0.5%から10%の範囲である。
【0091】
該多孔性支持体膜のこのような特徴により、該多孔性支持体膜の空隙内部の液をイオン交換樹脂溶液に置換してから乾燥させた場合、空隙内部に含浸された該イオン交換樹脂溶液の溶媒が蒸発して、該イオン交換樹脂溶液の体積が減少するにつれて該多孔性支持体膜も収縮するので、該多孔膜性持体膜内部の空隙が析出したイオン交換樹脂によって満たされた緻密な複合膜構造を容易に得ることができる。この複合膜構造により、本発明の複合イオン交換膜は優れた燃料透過抑止性を示す。本発明の多孔性支持体膜以外の多孔質支持体膜、例えば、延伸ポリテトラフルオロエチレンポリマー多孔質膜からなる多孔性支持体膜では空隙内部に含浸されたイオン交換樹脂溶液の溶媒が蒸発して該イオン交換樹脂溶液の体積が減少しても、それに伴う多孔性支持体膜の収縮が少ないため、乾燥後の複合膜内部にはイオン交換樹脂で満たされていない空隙が多数できるばかりでなく、多孔性支持体膜の両面に支持体を含まないイオン交換樹脂の表面層が形成されないため好ましくない。
【0092】
該複合イオン交換膜はまた、該多孔性支持体膜が大幅に収縮するため、該イオン交換樹脂溶液の濃度や粘度、溶媒の揮発性などの物性と、該多孔性支持体膜の膜厚や空隙率等の組み合わせを調整することで、該イオン交換樹脂が該多孔性支持体膜の内部空隙を満たした複合層を形成するのと並行して該多孔性支持体膜の両面に付着していた過剰なイオン交換樹脂溶液や、該支持体膜の収縮に伴って該多孔性支持体膜内部から排出されたイオン交換樹脂溶液が該多孔性支持体膜の表面外部で乾燥して該多孔膜支持体を含まないイオン交換樹脂層を形成することにより、結果として該複合層を挟む形で該複合層の両面に多孔性支持体膜を含まないイオン交換樹脂の表面層を形成した構造を容易に実現することができる。
【0093】
本発明の多孔性支持体膜以外の膜、例えばポリテトラフルオロエチレンポリマーからなる多孔性支持体膜は上記で述べたように、大幅な収縮が起こらないため、イオン交換樹脂溶液を含浸して乾燥する際に多孔性支持体膜内部にイオン交換樹脂が析出しても空隙が残ったままの状態となり、また多孔性支持体膜複合層を挟む形のイオン交換樹脂層も形成されない。イオン交換樹脂溶液の含浸、乾燥を複数回繰り返すことで、この状態を低減可能であるが、工程が複雑になるため好ましくない。
【0094】
本発明の複合イオン交換膜に使用されるイオン交換樹脂は特に限定されるものではなく、前述のパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー以外にも、例えばポリスチレンスルホン酸、ポリ(トリフルオロスチレン)スルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリビニルスルホン酸ポリマーの少なくとも一つのアイオノマー、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルホキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンザゾール及びポリアラミドポリマーなどの芳香族ポリマーの少なくとも一つがスルホン化、ホスホン化またはカルボキシル化されたアイオノマー等が適用できる。ここでいうポリスルホンポリマーにはポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン及びポリフェニレンスルホンポリマーの少なくとも一つが含まれる。また、ここでいうポリエーテルケトンポリマーにはポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン−ケトン、ポリエーテルエーテルケトン−ケトンおよびポリエーテルケトンエーテル−ケトンポリマーの少なくとも一つが含まれる。
【0095】
上記に記述したイオン交換樹脂溶液の溶媒はポリベンザゾール系ポリマー多孔性支持体膜を溶解、分解あるいは極端に膨潤させず、かつイオン交換樹脂を溶解できる溶媒の中から選ぶことができる。ただし、イオン交換樹脂溶液を支持体膜に含浸させた後に溶媒を除去してイオン交換樹脂を析出させる為、溶媒は加熱や減圧などの手段を用いて蒸発させるなどして除去することができるものであることが好ましい。ここで、本発明のポリベンザゾール系ポリマー多孔性支持体膜は高い耐熱性を有することから、100℃程度の温度からクリープを生じるポリテトラフルオロエチレン製の多孔性支持体膜を用いる複合イオン交換膜の作製では使用できない高沸点の溶媒を含むイオン交換樹脂溶液を使用して複合イオン交換膜を作製できることも、多くの種類のイオン交換樹脂が選択できるという観点から優れた特徴である。
【0096】
上記に記述したイオン交換樹脂溶液の濃度および、イオン交換樹脂の分子量は特に限定されるものではないが、イオン交換樹脂の種類や得ようとする複合イオン交換膜の膜厚などに応じて適宜選択される。
【0097】
上記のようにして得られる複合イオン交換膜に占めるイオン交換樹脂の含有率は50重量%以上であることが好ましい。さらに好ましくは80重量%以上である。この範囲より小さい含有率の場合、膜の導電抵抗が大きくなったり、膜の保水性が低下したりして、十分な発電性能が得られないため好ましくない。
【0098】
また、本発明の複合イオン交換膜は、上記で記述したように複合層を挟む形で複合層の両面に支持体を含まないイオン交換樹脂からなる表面層を有することを特徴とする。複合イオン交換膜が該複合層と該表面層を有することにより、該複合イオン交換膜は高い機械的強度を有し、かつ、表面に電極層を形成させた場合の電極層との密着性に優れるという特長を有する。該表面層の厚みはそれぞれ1μm以上50μm以下であり、かつ、それぞれが該複合イオン交換膜の全厚みの半分を超えない範囲であることが好ましい。該表面層の厚みが上記範囲よりも小さいと電極層との密着性が悪くなり、イオン伝導性が低下するなどするため好ましくない。また該表面層の厚みが上記範囲よりも大きいと、複合層による補強の効果が複合イオン交換膜の最外表面まで及ばず、複合イオン交換膜が吸湿した場合に表面層のみが大きく膨潤して表面層が複合層から剥離するなどするため好ましくない。該表面層の厚みのさらに好ましい範囲は2μm以上30μm以下である。
【0099】
複合イオン交換膜は機械的強度やイオン伝導性、表面に形成されるイオン交換樹脂層の耐剥離性などの特性をさらに向上させる目的で、複合イオン交換膜を適当な条件で熱処理する方法も好ましく用いることができる。また、表面に形成されるイオン交換樹脂の表面層の厚みを調整するために、該複合イオン交換膜をさらにイオン交換樹脂溶液に浸漬したり、該複合イオン交換膜にイオン交換樹脂溶液を塗布したりしてから乾燥することによりイオン交換樹脂層の付着量を増加させたり、あるいは、イオン交換樹脂溶液に浸漬した後に多孔性支持体膜の表面に付着したイオン交換樹脂溶液の一部をスクレーパー、エアナイフ、ローラーなどで掻き落としたり、ろ紙やスポンジのような溶液吸収性のある材料で吸収したりすることにより、イオン交換樹脂層の付着量を減少させたりする方法も用いることができる。あるいは、熱プレスをかけることによりイオン交換樹脂層の密着性をさらに向上させるなどの方法を併せて用いることもできる。
【0100】
本発明の複合イオン交換膜は高いイオン伝導性を有しながら、機械的強度に優れる。また、その特性を生かして、複合イオン交換膜特に固体高分子形燃料電池の高分子固体電解質膜として利用することができる。
【0101】
(実施例)
以下に本発明の実施例を示すが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中で示される特性は、以下の方法で測定・評価したものである。
(評価法・測定法)
1、透過型電子顕微鏡による構造観察
透過型電子顕微鏡(TEM)による膜の断面構造の観察は以下の方法で行った。まず、観察用試料切片を次のようにして作成した。すなわち、水洗後の多孔性支持体膜試料内部の水をエタノールに置換、さらにエポキシモノマーに十分置換した。試料はそのままエポキシモノマー中で45℃、6時間保持した後、さらに60℃、20時間熱処理することでエポキシを硬化させた(エポキシ包埋)。このようにしてエポキシ包埋された試料はダイヤモンドナイフを備えたミクロトームを用いて、干渉色が銀から金色を示す程度の厚みの超薄切片に調製し、KOH飽和エタノール溶液で15分処理することでエポキシを除去した(脱エポキシ)。さらにエタノール、続いて水で洗浄し、RuO4で染色した試料にカーボン蒸着し、JEOL製TEM(JEM−2010)を用いて加速電圧200kVで観察した。
【0102】
2、原子間力顕微鏡による構造観察
原子間力顕微鏡(AFM)による構造観察は以下の方法で行った。すなわち、Seiko Instruments社製のAFM(SPA300[観察モード:DFMモード、カンチレバー:SI−DF3、スキャナー:FS−100A])を使用し、水中の試料ステージに保持した未乾燥の多孔性支持体膜の表面構造を観察した。
【0103】
3、極限粘度
メタンスルホン酸を溶媒として、0.5g/Lの濃度に調整したポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計を用いて25℃恒温槽中で測定し、算出した。
【0104】
4、多孔性支持体膜厚み
未乾燥の多孔性支持体膜の厚みは次に示す方法により測定した。測定荷重を変更可能なマイクロメータを用い、各荷重における水中での支持体膜の厚みを測定した。測定した厚みを荷重に対してプロットし、直線部分を荷重0に外挿したときの切片の値を厚みとし、一つの試料について5ヶ所で測定した厚みの平均値を支持体膜の厚みとした。
【0105】
5、複合イオン交換膜の厚さおよび、それを構成する層の厚さ
該複合イオン交換膜を構成する複合層および該複合層を挟む形で複合層の両面に形成された多孔性支持体膜を含まないイオン交換樹脂からなる表面層の厚さは、多孔質状のフィルム状幅300μm×長さ5mmに切り出した複合膜片を、ルベアック812(ナカライテスク製)/ルベアックNMA(ナカライテスク製)/DMP30(TAAB製)=100/89/4の組成とした樹脂で包埋し、60℃で12時間硬化させて試料ブロックを作製した。ウルトラミクロトーム(LKB製2088ULTROTOME 5)を用いて平滑な断面が露出するようブロックの先端をダイヤモンドナイフ(住友電工製SK2045)で切削した。このようにして露出させた複合膜の断面を光学顕微鏡で写真撮影し、既知の長さのスケールを同倍率で撮影したものと比較することで測定した。多孔膜支持体の空隙率が大きい場合等で、少なくとも一方の面の表面層とその内側の複合層とが明確な界面を形成せずに界面付近の構造が連続的に変化している場合があるが、その場合は光学顕微鏡で連続的な構造の変化が確認できる部分のうち、複合イオン交換膜の外表面に最も近い部分を複合層の最外表面として、そこから複合イオン交換膜の外表面までの距離を該表面層の厚みとした。
【0106】
6、複合イオン交換膜のイオン交換樹脂(ICP)含有率
複合イオン交換膜のイオン交換樹脂含有率は以下の方法により測定した。110℃で6時間真空乾燥させた複合イオン交換膜の目付けDc[g/m2]を測定し、複合イオン交換膜の作製に用いたのと同じ製造条件の多孔性支持体膜をイオン交換樹脂を複合化させずに乾燥させて測定した乾燥多孔性支持体膜の目付けDs[g/m2]とから、以下の計算によりイオン交換樹脂含有率を求めた。
イオン交換樹脂含有率[重量%]=(Dc−Ds)/Dc×100
また、複合イオン交換膜のイオン交換樹脂含有率は以下の方法によって測定することもできる。すなわち、複合イオン交換膜を複合イオン交換膜中の多孔性支持体膜成分あるいは、イオン交換樹脂成分のいずれかのみを溶解可能な溶剤に浸漬して一方の成分を抽出、除去した後、元の複合イオン交換膜との重量変化を測定することでイオン交換樹脂の含有率を求めることができる。
【0107】
7、強度・引張弾性率
イオン交換膜の強度特性は、気温25℃、相対湿度50%の雰囲気で、オリエンテック社製テンシロンを用いて測定した。試料は幅10mmの短冊状とし、支間長40mm、引っ張り速度20mm/secで測定した応力歪み曲線から算出した。
【0108】
8、イオン導電率
イオン導電率σは次のようにして測定した。自作測定用プローブ(テトラフルオロエチレン製)上で幅10mmの短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中に試料を保持し、白金線間の10kHzにおける交流インピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を10mmから40mmまで10mm間隔で変化させて測定し、極間距離と抵抗測定値をプロットした直線の勾配Dr[Ω/cm]から下記の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルして算出した。
σ[S/cm]=1/(膜幅×膜厚[cm]×Dr)
【0109】
9、ガス透過率
イオン交換膜のガス透過率は以下の方法で測定した。イオン交換膜をメッシュ状のステンレス製サポート上に置き、ホルダーに固定した後、イオン交換膜の一方の面に室温にて水蒸気で飽和したヘリウムガスをゲージ圧が0.09MPaとなるようにして流通させ、イオン交換膜の他方の面に透過してくるヘリウムガスの量を石鹸膜流量計を用いて測定し算出した。
【0110】
10、発電特性
デュポン社製20%ナフィオン(商品名)溶液(品番:SE−20192)に、白金担持カーボン(カーボン:Cabot社製ValcanXC−72、白金担持量:40重量%)を、白金とナフィオンの重量比が2.7:1になるように加え、撹拌して触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が1mg/cm2になるように塗布、乾燥して、電極触媒層付きガス拡散層を作成した。2枚の電極触媒層付きガス拡散層の間に、膜試料を、電極触媒層が膜試料に接するように挟み、ホットプレス法により120℃、2MPaにて3分間加圧、加熱することにより、膜−電極接合体とした。この接合体をElectrochem社製評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込んでセル温度80℃、ガス加湿温度80℃、燃料ガスとして水素300mL/min、酸化ガスとして空気1000mL/minのガス流量において発電特性評価を行った。
【0111】
11.乾燥膜物性
(表面粗さ)
乾燥後の膜を、マイクロマップ社製三次元非接触表面形状計測システムをもちいて、二乗平均粗さの測定をおこなった。
【0112】
12.引張弾性率
乾燥後の膜を縦方向(MD方向)および横方向(TD方向)にそれぞれ長さ100mm、幅10mmの短冊状に切り出して試験片とし、引張測定器(島津製作所製オートグラフ 機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmで引張試験をおこない、引張弾性率を測定した。
【0113】
13.弾性率温度依存性、弾性率保持率
乾燥後の膜を縦方向(MD)および横方向(TD)にそれぞれ長さ40mm、幅5mmの短冊状に切り出して試験片とし、動的粘弾性測定装置(アイティ計測製 機種名DVA−225)を用い、室温から400℃まで、昇温速度5℃/分、10Hzで測定をおこなった。弾性率保持率として300℃/30℃の弾性率比を用いた。
【0114】
14.層間剥離試験
乾燥後の膜を縦方向(MD方向)および横方向(TD方向)にそれぞれ長さ20mm、幅10mmの短冊状に切り出して試験片とし、膜の表裏面に、粘着テープの接着面を張り合わせた。
引張測定器(島津製作所製オートグラフ 機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmで、テープをゆっくりとはがし、両方の粘着テープの粘着面にフィルムが移行する層間剥離現象の有無を調べた。(図3参照)
【0115】
(実施例1)
ポリ燐酸中にIV=24dL/gのポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾールポリマーを14重量%含んだドープにメタンスルホン酸を加えて希釈し、ポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾール濃度2.5重量%の等方性溶液を調製した。この溶液を、公称目開き20μmフィルターを通してから、二本の対向ロールの間にある二枚のポリプロピレンからなる多孔質状のフィルム状シートの間に挟み、二本のロールにおいて、向かい合ったロールを反対方向に回転させ、ドープを圧延しながらポリプロピレンからなる多孔質状フィルム状シートをごと送り出し、25℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽雰囲気において30分間凝固させた後に凝固浴に導いた。凝固液は60℃の水をもちいた。このとき、対向ロール間のギャップを調整し、ドープ厚みで200μmになるようにした。凝固浴中でポリプロピレンからなる多孔質状のフィルム状シートを剥離し、ドープを凝固液に接触させてさらに凝固させた。図2に、製造法の模式図を示した。その後、生成した膜を洗液がpH7±0.5を示すまで水洗を行ってポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔性支持体膜を作成した。作成したポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔性支持体膜は両面に開口部を持つ連続した空孔を有する多孔質の膜であることを原子間力顕微鏡による表面形態観察および、透過型電子顕微鏡による断面形態観察により確認した。乾燥膜については、上記凝固させた膜を水洗した後にテンターで両端を把持しつつ150℃で20秒間熱固定して厚み5.2μmのポリベンザゾール膜を得た。乾燥後の膜を、マイクロマップ社製三次元非接触表面形状計測システムをもちいて、二乗平均粗さの測定をおこなった。層間剥離性、引張弾性率、弾性率温度依存性測定結果を表2に示した。
【0116】
(比較例1)
ポリ燐酸中にIV=24dL/gのポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾールポリマーを14重量%含んだドープにメタンスルホン酸を加えて希釈し、ポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾール濃度2.5重量%の等方性溶液を調製した。この溶液を、70℃に加熱したガラス板上にクリアランス300μmのアプリケータを用いて製膜速度5mm/秒で製膜した。この条件においては、ポリベンザゾール系ポリマー溶液は高粘度となってしまい、スキージ方向に筋斑が発生し、平滑なフィルムを得ることができなかった。このようにしてガラス板上に製膜したドープ膜をそのまま25℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽中に置いて1時間凝固し、生成した膜を洗液がpH7±0.5を示すまで水洗を行ってポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔性支持体膜を作成した。作成した多孔性支持体膜は、基盤に接している側の表面は緻密構造を形成しているのに対して、基盤に接していない側の表面は多孔構造を形成していることを原子間力顕微鏡による表面形態観察および、透過型電子顕微鏡による断面形態観察により確認し、両面に開口部を持たない膜であることを確認した。
【0117】
(比較例2)
ポリ燐酸中にIV=24dL/gのポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾールポリマーを14重量%含んだドープにメタンスルホン酸を加えて希釈し、ポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾール濃度2.5重量%の等方性溶液を調製した。この溶液を、公称目開き20μmフィルターを通してから、二本の対向ロールの間にある二枚のポリエチレンテレフタレートからなるフィルム状シートの間に挟み、二本のロールにおいて、向かい合ったロールを反対方向に回転させ、ドープを圧延しながらポリエチレンテレフタレートからなるフィルム状シートごと送り出し凝固浴に導いた。凝固液は60℃の水をもちいた。このとき、対向ロール間のギャップを調整し、ドープ厚みで200μmになるようにした。凝固浴中でポリエチレンテレフタレートからなるフィルム状シートを剥離し、ドープを凝固液に接触させてさらに凝固させた。その後、生成した膜を洗液がpH7±0.5を示すまで水洗を行ってポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔性支持体膜を作成した。作成したポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔性支持体膜は両面に開口部を持たない膜であることを原子間力顕微鏡による表面形態観察および、透過型電子顕微鏡による断面形態観察により確認した。乾燥膜については、上記凝固させた膜を水洗した後にテンターで両端を把持しつつ150℃で20秒間熱固定して厚み5.4μmのポリベンザゾール膜を得た。 乾燥後の膜を、マイクロマップ社製三次元非接触表面形状計測システムをもちいて、二乗平均粗さの測定をおこなった。層間剥離性、引張弾性率、弾性率温度依存性測定結果を表1に示した。
【0118】
【表1】
Figure 0004228062
【0119】
比較例1から、流延法による製造方法ではポリベンザゾール系ポリマー溶液は高粘度となってしまうためにスキージ方向に筋斑が発生し、平滑な膜フィルムを得ることができない。また、基盤に接している側の表面は緻密構造を形成してしまう。一方、実施例1である本発明による製造方法においてはポリベンザゾール系ポリマー溶液が高粘度であっても平滑な膜フィルムを得ることができ、また両面に開口部を持つ連続した空孔を有する多孔膜を製造することができる。比較例2から、フィルム状シートがポリベンザゾール系ポリマーの貧溶媒またはその蒸気を透過させないフィルム状シートを用いて成形加工後に直ぐに水のように凝固力の強い貧溶媒である凝固液の凝固浴に導き、フィルム状シートを剥離し直接凝固液に接触させて凝固させた場合では、膜の表面構造は緻密化してしまい多孔質状の構造形成を実現させることはできない。
【0120】
(実施例2)
ポリ燐酸中にIV=24dL/gのポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾールポリマーを14重量%含んだドープにメタンスルホン酸を加えて希釈し、ポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾール濃度2.5重量%の等方性溶液を調製した。この溶液を、公称目開き20μmフィルターを通してから、二本の対向ロールの間にある二枚のポリプロピレンからなる多孔質状のフィルム状シートの間に挟み、二本のロールにおいて、向かい合ったロールを反対方向に回転させ、ドープを圧延しながらポリプロピレンからなる多孔質状のフィルム状シートごと送り出し、25℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽雰囲気において30分間凝固させた後に凝固浴に導いた。凝固液は60℃の水をもちいた。このとき、対向ロール間のギャップを調整し、ドープ厚みで200μmになるようにした。凝固浴中でポリプロピレンからなる多孔質状のフィルム状シートを剥離し、ドープを凝固液に接触させてさらに凝固させた。その後、生成した膜を洗液がpH7±0.5を示すまで水洗を行ってポリベンザゾール系ポリマーからなる支持体多孔膜を作成した。この多孔性支持体膜を水中でステンレス製のフレームに固定し、多孔性支持体膜の内部の水をイオン交換樹脂溶液であるデュポン社製20%ナフィオン(商品名)溶液(品番:SE−20192)の溶媒組成とほぼ同じ水:エタノール:1−プロパノール=26:26:48(重量比)の混合溶媒で置換した。この多孔性支持体膜を20%ナフィオン(商品名)溶液に25℃で15時間浸漬した後溶液から取り出し、膜の内部に含浸および膜表面に付着したナフィオン(商品名)溶液の溶媒を風乾により揮発させ乾燥させた。乾燥させた膜は60℃のオーブン中で1時間予備熱処理して残留した溶媒を除いた後、窒素雰囲気下、150℃で1時間熱処理を行なうことにより実施例2の複合イオン交換膜を調製した。
【0121】
(比較例3)
比較例3として、市販されているデュポン社製ナフィオン112(商品名)膜を用いた。この膜は実施例1で用いた20%ナフィオン溶液や実施例2で用いた10%ナフィオン水溶液に含まれるナフィオンポリマーと同じパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーからなるプロトン交換膜であり、固体高分子形燃料電池用のプロトン交換膜として広く用いられているものである。
【0122】
(比較例4)
ポリ燐酸中にIV=24dL/gのポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾールポリマーを14重量%含んだドープにメタンスルホン酸を加えて希釈し、ポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾール濃度8重量%の光学異方性溶液を調製した。この溶液を、公称目開き20μmフィルターを通してから、二本の対向ロールの間にある二枚のポリプロピレンからなる多孔質状のフィルム状シートの間に挟み、二本のロールにおいて、向かい合ったロールを反対方向に回転させ、ドープを圧延しながらポリプロピレンからなる多孔質状のフィルム状シートごと送り出し、25℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽雰囲気において30分間凝固させた後に凝固浴に導いた。凝固液は60℃の水をもちいた。このとき、対向ロール間のギャップを調整し、ドープ厚みで200μmになるようにした。凝固浴中でポリプロピレンからなる多孔質状のフィルム状シートを剥離し、ドープを凝固液に接触させてさらに凝固させた。その後、生成した膜を洗液がpH7±0.5を示すまで水洗を行って多孔性支持体膜を作成した。この支持体膜を水中でステンレス製のフレームに固定し、多孔性支持体膜の内部の水をイオン交換樹脂溶液であるデュポン社製20%ナフィオン(商品名)溶液(品番:SE−20192)の溶媒組成とほぼ同じ水:エタノール:1−プロパノール=26:26:48(重量比)の混合溶媒で置換した。この多孔性支持体膜を20%ナフィオン(商品名)溶液に25℃で15時間浸漬した後溶液から取り出し、膜の内部に含浸および膜表面に付着したナフィオン(商品名)溶液の溶媒を風乾により揮発させ乾燥させた。乾燥させた膜は60℃のオーブン中で1時間予備熱処理して残留した溶媒を除いた後、窒素雰囲気下、150℃で1時間熱処理を行なうことにより比較例4の複合イオン交換膜を調製した。
【0123】
(比較例5)
ポリ燐酸中にIV=24dL/gのポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾールポリマーを14重量%含んだドープにメタンスルホン酸を加えて希釈し、ポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾール濃度2.5重量%の等方性溶液を調製した。この溶液を、70℃に加熱したガラス板上にクリアランス300μmのアプリケータを用いて製膜速度5mm/秒で製膜した。この条件においては、ポリベンザゾール系ポリマー溶液は高粘度となってしまい、スキージ方向に筋斑が発生し、平滑なフィルムを得ることができなかった。このようにしてガラス板上に製膜したドープ膜をそのまま25℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽中に置いて1時間凝固し、生成した膜を洗液がpH7±0.5を示すまで水洗を行って多孔性支持体膜を作成した。この支持体膜を水中でステンレス製のフレームに固定し、多孔性支持体膜の内部の水をイオン交換樹脂溶液であるデュポン社製20%ナフィオン(商品名)溶液(品番:SE−20192)の溶媒組成とほぼ同じ水:エタノール:1−プロパノール=26:26:48(重量比)の混合溶媒で置換した。この多孔性支持体膜を20%ナフィオン(商品名)溶液に25℃で15時間浸漬した後溶液から取り出し、膜の内部に含浸および膜表面に付着したナフィオン(商品名)溶液の溶媒を風乾により揮発させ乾燥させた。乾燥させた膜は60℃のオーブン中で1時間予備熱処理して残留した溶媒を除いた後、窒素雰囲気下、150℃で1時間熱処理を行なうことにより比較例5の複合イオン交換膜を調製した。
【0124】
実施例2、比較例3、4、5の物性値を表1に示す。
【0125】
【表2】
Figure 0004228062
【0126】
実施例2の複合イオン交換膜は比較例3である市販のナフィオン112膜と対比して破断強度ならびに引張弾性率の大きなイオン交換膜であることがわかる。また実施例2の複合イオン交換膜は内部に多孔膜支持体を有するにもかかわらず、多孔膜支持体を含まない比較例3に比べてイオン導電率、発電性能ともに大幅な低下を起こすことなく、ガス透過率は半分以下の小さい値に抑えられており、燃料電池の高分子固体電解質膜として優れた特性を備えていることがわかる。比較例4の光学異方性溶液より得られたポリベンザゾール系ポリマーからなる支持体膜を用いた場合では、イオン導電率、発電性能ともに低下してしまい、燃料電池の高分子固体電解質膜としては優れた特性を備えることはできなかった。比較例5の流延法により製造された多孔性支持体膜を用いた複合イオン交換膜においては、平滑な膜(フィルム)を得ることができないという問題があり、またイオン導電率、発電性能ともに低下してしまい、燃料電池の高分子固体電解質膜としては優れた特性を備えることはできなかった。
【0127】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明は特許請求項範囲に記載のとおりの構成を採用することにより、優れた耐熱性、機械的強度、平滑性、耐層間剥離性および機能性剤の含浸性を兼ね備えたポリベンゾアゾール系ポリマーよりなる多孔膜および機械的強度が高く、イオン伝導性、発電特性、ガスバリヤー性に優れた高分子固体電解質膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複合イオン交換膜の断面構造の模式図である。
【図2】本発明における製造方法の模式図である。
【図3】層間剥離試験の模式図である。
【符号の説明】
1 表面層A、 2 複合層、 3 表面層B、 4 フィルム状シート、 5 ポリベンザゾール系ポリマー溶液、 6 プレスロール、7 凝固浴、 8 凝固液、 9 ガイドロール、 10 ポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜、 11 試験膜、 12 粘着テープ

Claims (5)

  1. ポリベンザゾール系ポリマーの等方性溶液を少なくとも2枚のフィルム状シートの間に挟んだ状態で、凝固浴に導き、凝固浴中でフィルム状シートを剥離し凝固させることで製造した、ポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜であって、該フィルム状シートがポリベンザゾール系ポリマーの貧溶媒またはその蒸気を透過させるフィルム状シートであって、該フィルム状シートを透過した該貧溶媒またはその蒸気で、該ポリベンザゾール系ポリマーの凝固の少なくとも一部を行うことを特徴とする、ポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜。
  2. 0.5重量%以上3重量%以下のポリベンザゾール系ポリマーの等方性溶液が、少なくとも2枚のフィルム状シートの間に挟まれた状態で、薄膜化されていることを特徴とする、請求項1に記載のポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜。
  3. 凝固浴がポリベンザゾール系ポリマーの貧溶媒、または貧溶媒と良溶媒の混合物、または貧溶媒に塩類を含有する溶液であることを特徴とする、請求項1乃至2いずれかに記載のポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜。
  4. 0.5重量%以上3重量%以下のポリベンザゾール系ポリマーの等方性溶液を、少なくとも二枚のフィルム状シートの間に挟んだものを凝固浴に導き、凝固浴中でフィルム状シートを剥離し凝固させることを特徴としたポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜の製造方法であって、該フィルム状シートがポリベンザゾール系ポリマーの貧溶媒またはその蒸気を透過させるフィルム状シートであって、該フィルム状シートを透過した該貧溶媒またはその蒸気で、該ポリベンザゾール系ポリマーの凝固の少なくとも一部を行うことを特徴とした、ポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜の製造方法。
  5. ポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜にイオン交換樹脂が含浸されてなる複合層と、該複合層を挟む形で該複合層の両面に形成された多孔膜を含まないイオン交換樹脂からなる表面層を有する複合イオン交換膜であって、該多孔膜が請求項1乃至いずれかに記載のポリベンザゾール系ポリマーからなる多孔膜である事を特徴とする複合イオン交換膜。
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