JP4226967B2 - 粉体塗料の回収方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、未塗着の粉体塗料の回収方法に関する。例えば、自動車用静電塗装ブースで塗着せずに余剰となった粉体塗料を、再利用目的で確実に回収する方法が要望されている。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の粉体塗料の回収方法として、余剰塗料をオーバースプレー粉の状態で、ダクトやホッパから強力に吸引するものが知られている(例えば、特許文献1)。このものは、ダクトやホッパの開口をスプレー粉の飛来源に接近して設けることにより、その捕集効率を向上させる乾式方法であるが、塗料粉体の一部が、気流から逸脱してダクトやホッパの開口背面に回り込み、回収不能となることは避けられない。
【0003】
そこで、特許文献2に示すものは、排気された塗料粉体を水槽中の水面で捕捉し、水面に浮遊させた状態のまま流動水として回収する湿式法によるものとした。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−328023号公報(第1−2頁、図1)
【特許文献2】
特開平8−24735号公報(第3頁、図2)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2の流動水の界面では、浮遊する塗料粉体の接触面積が大きくなり、周囲の空気との接触により、個々の粉体がメレンゲ状態または継粉(ママコ)状態の集団に生長し易くなる。
【0006】
これを放置すると、メレンゲ状態等の粉体がやがて大量の泡沫を形成し、このような状態で回収した塗料成分で粉体塗料を再生しても、均一球状の粉体微粒子を復元できず、所望の塗着性能を得ることは難しい。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、湿式法による高い捕集効率を維持しつつ、再利用用途に適合し得る粉体塗料を回収する方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、気流に同伴された未塗着の粉体塗料が降り落ちる水槽内の静水中に粉体塗料を浮遊・沈降体として捕集する捕集工程と、この水槽底面に設けた開閉可能な排水口を開いた際に、水流として流出する浮遊・沈降体を脱水して固形体とする脱水工程と、この固形体中の一定粒以下成分をふるい分けて選別捕集する第1分級工程と、この分級工程で選別捕集された固形体中の一定重量以下成分を選別して捕集する第2分級工程とを行うものである。
【0009】
これによれば、粉体塗料を水槽内静水中の浮遊体若しくは沈降体として回収するため、捕集効率を維持できるのはもちろんのこと、空気の介在を避けることができるため、塗料粉体が泡沫状態に成長することがない。そして、この静水中の沈降状態で、水槽底面に設けた排水口からの水流として運搬されるので、空気との接触を抑制することができ、次の脱水工程において気泡を含有するなどの再生時の形状不均一要因を防止できる。
【0010】
そして、脱水工程の後に、一定粒径以下成分を選別捕集する第1分級工程と、一定重量以下成分を選別捕集する第2分級工程とを経ることにより、回収成分の均一性を確保し、また、混入する不純物を除去した顆粒形状として回収することが可能となり、これを再利用して得られる再生微粒子は、粉体塗料として必要な塗着性能を備えることができる。
【0011】
この場合、上記した捕集工程において、水槽底面の浮遊・沈降体の付着部分を振動させる。これは、次の脱水工程で、水槽底面の開閉可能な排水口を開くことにより生じる浮遊体や沈降体を含んだ水流を流出し易くするためである。即ち、排水口を開いて行う排水の前若しくは排水時に、超音波発振器などの振動手段を、浮遊・沈降体の付着部分または付着部分近傍で作動させることにより、付着部分の沈降体及び水槽底面間に間隙が生じ易くなるので、水流による浮遊体や沈降体の流出がスムーズになるのである。
【0012】
また、上記した水槽内の静水を、pH5以下とすることで、上記の工程を行う際も、水槽水が塗料成分などにより腐蝕することが防止できる。このような対策を行うことで、有機化合物を含有する有機塗料などにも対応可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1乃至図5は、本発明により粉体塗料の回収を行う装置の概略図である。図外の自動車用静電塗装ブースの下方に位置する水槽1は、底面2が略中央部3を最深位置とするようにテーパ状に形成され、また、底面中央3には、開閉バルブ4を介して開閉可能な排水口が設けられている。
【0014】
一方、水槽1の無蓋天井部5を最上端として下方に、天井フィルタ6及びすのこ面7が順に設けられ、それぞれ人為的に通流させた下降気流(ダウンフロー)8が通過できるようにしている。また、水槽1の側壁近傍には、側壁1a、1bと所定間隔を保って仕切り板9a、9bが立設される。仕切り板9a、9bは、水槽1の側壁1a、1bを越えない高さで設定され、また、仕切り板9a、9bがそれぞれ側壁1a、1bを包囲して延設され、無蓋の内水槽10a、10bを構成している。この内水槽10a、10bの内部は、水槽1の底面2よりせり上がった底部11a、11bが充填されて設けられる。
【0015】
また、図1に示すように、水槽1の側壁1aには循環水補充口12が設けられ、循環水注入管13から注入される循環水が側壁1aを伝って流下し、内水槽10aを充満させた後、仕切り板9aを伝って流下することにより、水槽1の底面2を浸すように水面が張られている。
【0016】
上記したように注入される循環水は、側壁1a及び仕切り板9aを伝って流下するため、底面2に満たされる水は静水面を形成する。図示しないが、反対側の内水槽10bも同様に構成され、内側の水面がうず流などにより流動することなく静水の状態を維持できるようにしている。
【0017】
即ち、図2の上面図に示すように、水槽1の内側に内水槽1a、1b、1c、1dが底面中央3に位置するダクトを囲繞して配置される。そして、図1に示すように、ダクト3に設けられた開閉バルブ4の開閉により、底面2を覆って張られた水槽水14が流水として排出されるのである。
【0018】
そして、脱水工程のための遠心分離器から成る脱水乾燥装置15が配置され水槽水14の運搬のため、水槽1と脱水装置15との間を配水管や通風管で接続するが、本実施の形態においては、給排水及び給排気を全て循環システムで完結することを前提としている。なお、図中では、給排水の流路を実線で、給排気の流路を点線で示すものとした。
【0019】
リサイクルシステムを構成する給排水サイクルは、排水及び排気両用の主配管16と、循環水注入用の注入管13とにより循環流路を構成する。即ち、主配管16により、水槽1の開閉バルブ4から脱水乾燥装置15に至る間を主バルブ17を介して排水用に接続する。そして、注入管13により、脱水装置15から水槽1に至る間を、注入バルブ18、フィルタ19、紫外線殺菌装置20、第1ポンプ21、貯留槽22、第2ポンプ23を介して循環給水用に接続することで、連続して閉じた循環水流路が形成される。
【0020】
また、他方のリサイクルシステムを構成する給排気サイクルは、図外のクリーンルームからのエア供給を行うフレッシュ空調機24から延伸する給気管25が水槽1の無蓋上部からのダウンフローを供給するという初期構成において、排水及び排気両用の主配管16により、水槽1の開閉バルブ4から脱水乾燥装置15に至る間を主バルブ17を介して排気用に接続する。そして、給気管26により、脱水装置15から水槽1に至る間を、排気バルブ27、通風機28、空調機用バルブ29、リサイクル空調機30を介し、上記の給気管25に合流させて循環給気用に接続することで、連続して閉じた循環エア流路が形成される。
【0021】
ところで、脱水乾燥装置15の脱水作動時には、主バルブ17を閉じることにより、主配管16、給気管26及び給気管25を経由する循環エア流路が断絶することになる。このため、本流路では、開閉バルブ4と主バルブ17との間にバイパス配管31を分岐させて延伸させている。このバイパス配管31は、バイパスバルブ32、ウェットスクラバ33、通風機34及び空調機用バルブ35を介してリサイクル空調機30に接続される。なお、ウェットスクラバ33からはドレン配管36がドレンバルブ37を介して主配管16に接続されている。
【0022】
また、脱水乾燥装置15の乾燥作動時には、通風機38からのドライエアがバルブ39経由で乾燥装置15内を通過して、排気管40に排気されるが、これをリサイクルするため、排気管40をバルブ41とエアフィルタ42とを介してフレッシュ空調機24に接続し、給気管25内に供給するようにした。
【0023】
一方、本発明の回収方法のため、脱水乾燥装置15には、次の分級工程のための振動ふるい装置43とエルボージェット(気流式分級装置)44とが配管により接続されている。即ち、脱水乾燥装置15で得られた乾燥固形物を、振動ふるい装置43により一定粒径以下成分を捕集して、接続管45経由でエルボージェット44に移送する。このとき、除去すべき粒径非適合成分は廃棄用配管46経由で廃棄槽47に回収する。そして、エルボージェット44に移送された選別捕集成分は、さらに一定重量以下成分を捕集し、これを接続管48経由で流動槽49に回収し、再利用塗料に再生するための再処理工程に供される。また、このとき、除去すべき重量不適合成分は廃棄用配管50経由で、やはり廃棄槽47に回収される。
【0024】
本発明の粉体塗料の回収方法は、上記のような装置構成を用いて、未塗着の粉体塗料が降り落ちる水槽内の静水中に粉体塗料を浮遊・沈降体として捕集する捕集工程と、この水槽底面に設けた開閉可能な排水口を開いた際に、水流として流出する浮遊・沈降体を脱水して固形体とする脱水工程と、この固形体中の一定粒経以下成分をふるい分けて選別捕集する第1分級工程と、この分級工程で選別捕集された固形体中の一定重量以下成分を選別して捕集する第2分級工程とを行うものである。
【0025】
即ち、図1に示すように、水槽1の上部に位置する図外の塗装ブースより降り落ちる未塗着の粉体塗料を静水14の水面で捕集することにより、捕集工程とするが、このとき、図1中のすべてのバルブは閉じたままで良い。
【0026】
そして、開閉バルブ4及び主バルブ17を開いたとき、浮遊・沈降体として水槽中静水14に捕集されていた粉体塗料が、水流となって脱水乾燥装置15まで流出する。なお、このとき、図示のように、超音波発信器などの振動手段51を、浮遊・沈降体の付着部分または付着部分近傍で作動させることにより、付着部分の沈降体及び水槽底面間に間隙が生じ易くなり、浮遊体や沈降体を含む水流の流出がスムーズになる。
【0027】
そして、ウェットケーキ状態で運搬された粉体塗料に対し、脱水乾燥装置15の遠心分離駆動モータ52を駆動させて行う脱水工程の状態を図3に示す。図3では、主バルブ17、排気バルブ27、空調機用バルブ29、ドレンバルブ37、バルブ39、バルブ41がそれぞれ閉じられると共に、注入バルブ18、バイパスバルブ32、空調機用バルブ35がそれぞれ開かれる。そして、これにより、脱水乾燥装置15からの排水を注入管13経由で水槽1に循環給水する循環水流路が作動することになる。また、脱水工程中は、主バルブ17を閉じることにより、主配管16、給気管26及び給気管25を経由する循環エア流路を断絶し、バイパス配管31経由でリサイクル空調機30への連通が確立し、給気管25による水槽1へのダウンフローを継続する循環エア流路が作動することになる。
【0028】
次に、脱水工程を経た固形物状態の粉体塗料に対し、脱水乾燥装置15内で行う乾燥工程の状態を図4に示す。図4では、主バルブ17、注入バルブ18、排気バルブ27、空調機用バルブ29、ドレンバルブ37がそれぞれ閉じられると共に、バイパスバルブ32、空調機用バルブ35、バルブ39、バルブ41がそれぞれ開かれる。そして、主バルブ17が閉じているため、主配管16、給気管26及び給気管25を経由する循環エア流路を断絶し、バイパス配管31経由でリサイクル空調機30への連通が確立し、給気管25による水槽1へのダウンフローを継続する循環エア流路が作動すると共に、通風機38経由で供給されるドライエアがバルブ39及びバルブ41を通過する際に、装置15内の固形物状の粉体塗料に対して乾燥雰囲気の環境を実現するのである。
【0029】
最後に、脱水及び乾燥工程を経た固形物状態の粉体塗料に対し、振動ふるい装置43及びエルボージェット44で行う第1及び第2の分級工程の状態を図5に示す。図5では、脱水乾燥装置15で得られた乾燥固形物を、振動ふるい装置43により一定粒径以下成分を捕集して、接続管45経由でエルボージェット44に移送する。このとき、除去すべき粒径非適合成分は廃棄用配管46経由で廃棄槽47に回収する。そして、エルボージェット44に移送された選別捕集成分は、さらに一定重量以下成分を捕集し、これを接続管48経由で流動槽49に回収する。このとき、除去すべき重量不適合成分は廃棄用配管50経由で、やはり廃棄槽47に回収される。そして、流動槽49中の回収物は、再利用塗料に再生するための再処理工程に供されるが、回収物中には従来例のような気泡痕が含まれることもなく、再利用に適したものが得られるのである。
【0030】
なお、水槽1内の静水14をpH5以下とすることで、上記の工程を行う際も、水槽水が塗料成分などにより腐蝕することが防止できる。このような対策を行うことで、有機化合物を含有する有機塗料などにも対応可能となる。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の粉体塗料の回収方法は、粉体塗料を水槽内静水中の浮遊体若しくは沈降体として回収するため、粉体塗料としての再生を阻む要因となる気泡痕を内在することを防止する。しかも、湿式法によるため、高い捕集効率を維持しており、未塗着の粉体塗料の再利用に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の捕集工程を示す装置概略図
【図2】図1の水槽の上面図
【図3】本発明の脱水工程を示す装置概略図
【図4】脱水工程に続く乾燥工程を示す装置概略図
【図5】本発明の第1及び第2の分級工程を示す装置概略図
【符号の説明】
1 水槽
2 底面
3 排水口
4 開閉バルブ
8 ダウンフロー
14 静水
15 脱水乾燥装置
43 振動ふるい装置(第1分級装置)
44 エルボージェット(第2分級装置)
51 超音波発振器(振動手段)

Claims (3)

  1. 水槽水を用いた湿式法で塗料を回収する方法において、気流に同伴された未塗着の粉体塗料が降り落ちる水槽内の静水中に該粉体塗料を浮遊・沈降体として捕集する捕集工程と、該水槽底面の開閉可能な排水口を開く際に水流として流出した浮遊・沈降体を脱水して固形体とする脱水工程と、該固形体中の一定粒以下成分をふるい分けて選別捕集する第1分級工程と、該第1分級工程で選別捕集された固形体中の一定重量以下成分を選別して捕集する第2分級工程とを行うことを特徴とする粉体塗料の回収方法。
  2. 前記捕集工程において、前記水槽底面の浮遊・沈降体付着部分を振動させることを特徴とする請求項1に記載の粉体塗料の回収方法。
  3. 前記捕集工程において、前記水槽内の静水をpH5以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体塗料の回収方法。
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