JP4224971B2 - 人造大理石浴槽およびその製造方法 - Google Patents

人造大理石浴槽およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人造大理石浴槽およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、人造大理石浴槽の製造は、表面にゲルコート層を設けた注型法によるものが多くを占めている。また、人造大理石浴槽をBMC(バルクモールディングコンパウンド)成形材料やSMC(シートモールディングコンパウンド)成形材料をプレス成形法により、製造することも知られている。
【0003】
しかし、注型法による人造大理石浴槽の製造は、ゲルコート塗布等生産工程が煩雑で、樹脂の硬化に時間を要し、生産性に劣るものであった。また、こうして得られる人造大理石浴槽製品は、強度を付与するために肉厚に成形されており、重たく、搬送に不便で、浴槽の施工性に劣るものであった。
【0004】
BMC成形材料あるいはSMC成形材料での人造大理石浴槽の製造は、プレス成形法により生産工程の煩雑さは軽減された。しかし、プレス成形に用いるBMC成形材料あるいはSMC成形材料は浴槽に大理石質感を付与するために短繊維強化材の含有量が、極めて少ない為、該成形材料を多量に用いて浴槽の厚みを厚く成形することで、人造大理石浴槽の強度を確保している。こうしたBMC成形材料あるいはSMC成形材料による人造大理石浴槽も又、注型法による製品同様、重たく、搬送に不便で、浴槽の施工性に劣るものであった。
【0005】
これらの課題を解決するためにプレス成形で薄肉成形した人造大理石浴槽の外面にハンドレイアップ法、スプレーアップ法で繊維強化樹脂層を後成形により設けて補強する方法が考案されている。しかし、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法での繊維強化樹脂層の形成は作業が煩雑になり多大な加工時間を要し、また、繊維強化樹脂層の肉厚にばらつきが発生し補強性能が安定しない等の問題があった。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、搬送に便利な軽量性に優れ、高強度を有し、光沢、深み感等の大理石質感を有するプレス成形法による人造大理石浴槽および合理的で品質安定性に富む製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、プレス成形用一般浴槽金型を用いて、搬送に便利な軽量性に優れ、高強度を有し、光沢、深み感等の大理石質感を有する人造大理石浴槽およびそれを合理的かつ安定した品質を確保して製造する方法を鋭意研究の結果、成形材料を用いて成形された浴槽の外側側面に繊維編み物強化樹脂層を積層することで課題を解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、プレス成形用金型内に、繊維強化材を15重量%以下で含有し、且つその繊維強化材の長さが0.5〜12mmである熱硬化性樹脂成形材料を投入し成形して人造大理石浴槽を得た後、該浴槽の外側側面に、熱硬化性樹脂を含浸した帯状の繊維編み物を連続的に巻き付けて繊維編み物強化樹脂層を形成する、人造大理石浴槽の製造方法、またはプレス成形用金型内に、繊維強化材を15重量%以下で含有し、且つその繊維強化材の長さが0.5〜12mmである熱硬化性樹脂成形材料を投入し成形して人造大理石浴槽を得た後、該浴槽の外側側面に、熱硬化性樹脂を含浸した筒状の繊維編み物を被せ繊維編み物強化樹脂層を形成する、人造大理石浴槽の製造方法に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の人造大理石浴槽は、熱硬化性樹脂成形材料からなる浴槽本体とその外側側面に繊維編み物強化樹脂層を積層してなるものである。
【0011】
本発明に於ける浴槽本体は、プレス成形用一般浴槽金型で熱硬化性樹脂成形材料を用いて成形されたもので、表面が大理石質感であり、所謂人造大理石浴槽である。
【0012】
上記浴槽本体を成形するために用いられるプレス成形用一般浴槽金型とは、浴槽裏面にリブ等の突起形状が成形されない従来の人造大理石浴槽成形用金型、および、浴槽底面裏面、上縁面裏面にリブ等の突起形状が成形される従来のSMC浴槽成形用金型である。
【0013】
また、プレス成形は、上記金型を取り付けたプレス成形装置により行う。該金型は、好ましくは、コア型(雄型)が上型、キャビ型(雌型)が下型としてプレス成形装置に取り付けられている。プレス成形の条件は、金型のコア型(雄型)温度が90〜160℃、より好ましくは120〜140℃、金型のキャビ型(雌型)温度が90〜160℃、より好ましくは100〜130℃の範囲で、加圧力は30〜150kgf/cm、より好ましくは50〜120kgf/cmの範囲である。加圧時間は成形品の肉厚により3〜15分の範囲から適宜設定できる。
【0014】
本発明の浴槽本体の厚みは、好ましくは2〜10mm、軽量性付与のために更に好ましくは、2.5〜6mmである。
【0015】
本発明の浴槽本体に用いられる熱硬化性樹脂成形材料とは、強化繊維としての短繊維、充填剤、熱硬化性樹脂からなる通常の人造大理石浴槽成形用成形材料である。これは、SMC成形材料、BMC成形材料を含むものである。但し、この成形材料中の強化繊維含有率が、好ましくは15重量%以下であり、強化繊維の長さが好ましくは0.5〜12mmである。強化繊維含有率がかかる範囲であれば、浴槽を成形した場合に、製品面の外観に優れ、質感も良好である。この強化繊維は、ガラス繊維が代表的であるが、炭素繊維、アラミド繊維、その他ビニロン繊維、ポリエステル繊維などの有機繊維を単独あるいは併用して用いることができる。形態は、チョップドストランドが好ましい。
【0016】
この成形材料のマトリックス樹脂である熱硬化性樹脂は、好ましくは不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリルシロップ等の液状のものが使用できる。同時に充填剤も併用することができ、かかる充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、アルミナ粉、シリカパウダー、ガラス粉、ガラスビーズ、マイカ、セルロース等が挙げられ、これらの1種以上を混合して用いることができる。
【0017】
プレス成形した浴槽本体の外側側面に積層される繊維編み物強化樹脂層は、通常は該浴槽本体の成形後に形成されるが、場合によっては該浴槽本体と繊維編み物強化樹脂層とを同時に成形しても、繊維編み物強化樹脂層を先に成形し、次いで浴槽本体部分を成形することもできる。
【0018】
繊維編み物強化樹脂層を形成するマトリックスとしての熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルシロップ、ジアリルフタレート樹脂等の液状のものが挙げられる。この熱硬化性樹脂は、上述の熱硬化性樹脂単独で、あるいは熱硬化性樹脂に充填剤を添加して使用に供することができる。かかる充填剤の種類としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、アルミナ粉、シリカパウダー、ガラス粉、ガラスビーズ、マイカ、セルロース等が挙げられ、これらの1種以上を混合して用いることができる。この充填剤を併用する場合には、熱硬化性樹脂100重量部に対して好ましくは10〜150重量部である。
【0019】
繊維編み物の基材としては、ガラス繊維が代表的であるが、炭素繊維、アラミド繊維、その他ビニロン繊維、ポリエステル繊維などを単独或いは併用して用いることができる。
【0020】
繊維編み物とは、トリコット編機などにより、たて編、よこ編、カールマイヤー編などに編織した伸縮性のある布状物であり、紐状、帯状、筒状の形状で、好ましくは帯状および筒状のものである。編み物の単位重量は、好ましくは50〜1000g/m であり、また厚さは、好ましくは0.1〜1.0mmである。
【0021】
帯状の繊維編み物とは、繊維編み物布状物を浴槽本体外側側面への巻き付けを容易にするために所用の幅に調整したもので、浴槽外側側面の高さによって適宜使用できる。浴槽の外側側面の高さと同じ幅に設定することもできるし、浴槽外側側面の高さを均等分割した幅に設定することもできる。
【0022】
帯状の繊維編み物の幅を浴槽外側側面と同じ高さに設定した場合は、1段で巻き付けることができる。また、浴槽外側側面の高さを均等分割した幅に設定した場合は、分割数に応じた段数で巻き付けることができる。尚、製造上の簡便さを考慮すると、その幅は、30〜500mmが好ましい。
【0023】
浴槽本体に帯状の繊維編み物を巻き付けて、熱硬化性樹脂をマトリックスとして繊維編み物強化樹脂層を形成する。ここで帯状の繊維編み物を巻き付けるとは、該帯状物を連続的に浴槽本体の外側側面形状に沿って貼り付けることである。この際、浴槽に対して水平に巻き付けることも、浴槽に対して角度を付けて螺旋状に巻き付けることもできる。繊維編み物強化樹脂層を形成するに当たっては、帯状の繊維編み物に熱硬化性樹脂コンパウンドを含浸した後、浴槽本体外側側面に巻き付けることもできるし、帯状の繊維編み物を浴槽本体外側側面に巻き付けた後、熱硬化性樹脂コンパウンドを塗布、含浸して繊維編み物強化樹脂層を形成することもできる。
【0024】
また、筒状の繊維編み物は、筒の大きさを浴槽本体側面の外周長に相当するように調整した筒状物で、通常上述の帯状の繊維編み物を所用の長さに切断して端部を縫い合わせて、環状にして得られる。また、特殊な編機を用いて所用の太さの筒状物を得ることもできる。筒状物の長さは長側面と短側面で構成される浴槽本体の胴部の高さに合わせる等、適宜調整したものが使用できる。
【0025】
筒状の繊維編み物を用いてプレス成形した浴槽本体の外側側面に繊維編み物強化樹脂層を成形するには、通常浴槽本体外側側面に筒状の繊維編み物を被せることで形成することができる。ここで、筒状の繊維編み物を被せるとは、長側面と短側面で構成される浴槽本体の胴部に浴槽本体の底面側から筒状物を覆う様に被せ、浴槽本体の外側側面形状に沿って貼り付ける、または巻き付けることである。この際、筒状の繊維編み物に熱硬化性樹脂コンパウンドを含浸した後、浴槽本体外側側面に被せることもできるし、筒状の繊維編み物を浴槽本体外側側面に被せた後、熱硬化性樹脂コンパウンドを塗布、含浸して繊維編み物強化樹脂層を形成することもできる。場合によっては繊維編み物強化樹脂層を金型内で予め成形し、次いでその上に浴槽本体部分を成形してもよいし、繊維編み物強化樹脂層と浴槽本体とを同時に成形することもできる。
【0026】
この繊維編み物強化樹脂層は、プレス成形した人造大理石浴槽の補強が目的であって、プレス成形した浴槽と強固に接着されている必要があるため、該樹脂層を設ける前に、浴槽の外側側面をサンディングあるいは脱脂をすることが好ましい。また、繊維編み物強化樹脂層と浴槽との密着性を強固にするために浴槽外側側面にプライマーを塗布することができる。
【0027】
繊維編み物強化樹脂層の厚さは、好ましくは0.1〜15mm、さらに好ましくは0.3〜5mmである。これは、使用する繊維編編み物の厚さ、帯状の繊維編み物の巻き付け回数、筒状の繊維編み物を被せる枚数などによって調整できる。また、繊維編み物強化樹脂層の繊維含有率は好ましくは15〜60重量%の範囲、さらに好ましくは20〜40重量%の範囲で設定できる。
【0028】
本発明の人造大理石浴槽の製造に於いては、成形材料および外側側面に設ける繊維編み物強化樹脂層を構成するものは既述したものが好ましく使用されるが、本発明の効果を達成するものであれば使用することができる。
【0029】
本発明の人造大理石浴槽については、SMC成形材料よりも、BMC成形材料をプレス成形した浴槽本体を用いた場合、繊維強化材の含有率を低減でき、且つ繊維強化材の長さを短くできる等の理由から好ましく、光沢、深み感等の大理石質感が付与されたものを提供することができる。また、繊維編み物を用いて浴槽外側側面に繊維強化樹脂層を形成する本発明の人造大理石浴槽を製造する方法は、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法で繊維強化樹脂層を形成する方法より簡便で合理的なもので、繊維強化樹脂層の厚さは均一で品質安定性に富み、軽量、高強度な人造大理石浴槽を提供することができる。
【0030】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
実施例1
表1に示すBMCを成形材料とし、現有のSMC浴槽成形用金型を用いて浴槽をプレス成形した。この浴槽の外側側面の高さは400mm、外側側面胴部の周長は最上部(上縁面に近い側)が2750mm、最下部(底面に近い側)が2600mmであった。成形条件は、金型温度をコア型(雄型)が125℃、キャビ型(雌型)が105℃、加圧力を100kgf/cm、加圧時間を6分間とした。また、BMCの投入量は、浴槽の底面、上縁面の肉厚が6mm、側面の肉厚が3.5mmとなるように調整した。この浴槽裏面をアセトンで脱脂した。
その後、不飽和ポリエステル樹脂を含浸した帯状のガラス繊維編み物(三重織物製マイクログラスフィットテープ)を浴槽外側側面に螺旋状に同一箇所にガラス繊維編み物が2枚になるように連続的に巻き付け繊維編み物強化樹脂層を形成した。帯状のガラス繊維編み物の伸縮性により浴槽裏面形状に沿ったものであった。この帯状のガラス繊維編み物は、たて編みで編まれたもので、厚さは0.38mm、幅は100mm、単位重量は320g/mであった。形成された繊維編み物強化樹脂層の厚みは1.2mm、ガラス含有率は28重量%であった。
【0032】
実施例2
実施例1同様に成形した浴槽裏面に幅が400mmの帯状ガラス繊維編み物(三重織物製マイクログラスフィットテープ)を用いて周長が2400mmの筒状物を造り、ガラス繊維編み物の伸縮性を活かして筒径を拡げながら、2枚を浴槽外側側面に被せた後、不飽和ポリエステル樹脂を塗布・含浸して繊維編み物強化樹脂層を形成した。ガラス繊維編み物は、たて編みで編まれたもので、厚さは0.38mm、幅は100mm、単位重量は320g/mであった。形成された繊維編み物強化樹脂層の厚みは1.2mm、ガラス含有率は28重量%であった。
【0033】
比較例1
ガラス繊維強化材の含有率が25重量%のSMCを成形材料とし、現有のSMC浴槽成形用金型を用いて浴槽をプレス成形した。浴槽表面、特に上縁面にしわ(成形品表面に発生する材料の波打ち現象)が発生し、質感が劣るものであった。
【0034】
比較例2
実施例1のプレス成形した浴槽の外側側面に、不飽和ポリエステル樹脂を含浸した幅100mmの一般ガラスクロス(平織、厚さが0.22mm、単位重量272g/m)を巻き付けたが、ガラスクロスに伸縮性が無いため、浴槽裏面形状に沿わせることができないため、繊維強化樹脂層を形成することができなかった。
【0035】
比較例3
実施例1のプレス成形した浴槽の外側側面に、ハンドレイアップ法で450g/mのガラス繊維チョップドストランドマット3枚を積層して、繊維強化樹脂補強層を設けた。繊維強化樹脂補強層の厚さは2.5mmであった。積層用樹脂には不飽和ポリエステル樹脂を用いた。
【0036】
【表1】
表 1
Figure 0004224971
【0037】
実施例1、2、比較例1、3で成形した浴槽の性能比較を表2に示した。
【0038】
【表2】
表 2
Figure 0004224971
【0039】
表2の記号は下記の通り。
*1 成形品表面に発生する材料の波打ち現象
*2 浴槽に水を上縁面一杯まで水を入れた時の長側面中央部の変形量。
*3 樹脂の硬化に要する時間は含まない
【0040】
実施例1および2によれば、従来の注型法等による人造大理石浴槽よりも軽量で、従来使用されているSMC浴槽と同等以上の剛性を確保し、作業性が向上し、品質の安定した人造大理石浴槽を合理的に製造することができた。
【0041】
【発明の効果】
本発明は、従来の注型法等による人造大理石浴槽よりも軽量で、従来使用されているSMC一般浴槽と同等以上の剛性を確保した人造大理石浴槽を提供できる。また、本発明は、プレス成形された浴槽の外側側面に帯状の繊維編み物を巻き付け或いは、筒状の繊維編み物を被せて繊維強化樹脂補強層を後成形で設けることにより、搬送に便利な軽量性に優れ、高強度を有し、光沢、深み感等の大理石質感を有するプレス成形法による人造大理石浴槽を安定的かつ合理的に製造する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1図は、本発明の実施例1の浴槽の長手方向の側面図である。
【図2】第2図は、本発明の実施例2の浴槽の長手方向の側面図である。
【図3】第3図は、本発明の実施例1および2の浴槽側面の拡大断面の一部である。

Claims (3)

  1. プレス成形用金型内に、繊維強化材を15重量%以下で含有し、且つその繊維強化材の長さが0.5〜12mmである熱硬化性樹脂成形材料を投入し成形して人造大理石浴槽を得た後、該浴槽の外側側面に、熱硬化性樹脂を含浸した帯状の繊維編み物を連続的に巻き付けて繊維編み物強化樹脂層を形成する、人造大理石浴槽の製造方法。
  2. プレス成形用金型内に、繊維強化材を15重量%以下で含有し、且つその繊維強化材の長さが0.5〜12mmである熱硬化性樹脂成形材料を投入し成形して人造大理石浴槽を得た後、該浴槽の外側側面に、熱硬化性樹脂を含浸した筒状の繊維編み物を被せ繊維編み物強化樹脂層を形成する、人造大理石浴槽の製造方法。
  3. 繊維編み物強化樹脂層が繊維編み物を15〜60重量%で含有する請求項1または2に記載の人造大理石浴槽の製造方法。
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