JP4224339B2 - リサイクルあるいはリユース可能なガラス繊維紙粉砕物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は気体用、液体用各種フィルタや建材、プリント積層板用などに使用されるガラス繊維紙のリサイクルおよびリユースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガラス繊維紙は、高強度、高剛性、各種繊維径のバリエーション、寸法安定性、電気絶縁性などガラス繊維の特性を生かし、気体用、液体用各種フィルタや建材、プリント積層板用等多くの分野に使用されている。近年、環境面の重視で産業廃棄物の処分が困難になってきており、これまで廃棄してきた製造工程から発生する製品にならないガラス繊維濾紙や使用済みガラス繊維紙についても、リサイクルあるいはリユースする必要性が出てきた。
【0003】
しかしながら、ガラス繊維紙を構成するガラス繊維は繊維同士の接着性が無く紙の強度物性が不足することから、繊維が合成樹脂などの有機バインダーで固められている場合がほとんどである。そのため、製紙工程、後加工工程等で発生する不用なガラス繊維紙を廃棄する際、木材パルプを原料とした木材繊維紙の古紙原料のように再使用(リサイクル)したくても、有機バインダーが原料分散を阻害しガラス繊維紙の品質を著しく阻害する問題があった。また、ガラス繊維紙をガラス繊維メーカーで熔融して再繊維化したくても、ガラス組成が合わなかったり、有機バインダーに含まれる無機成分が繊維化を阻害したりするため、再繊維化は困難であった。
【0004】
さらに廃棄処分するにしても、ガラス繊維は不燃であるので焼却炉で処分できず、結局、産業廃棄物として埋め立てするしかなかった。しかし、近年、環境面の重視で産業廃棄物の処分が困難になってきており、今まで廃棄してきたガラス繊維紙についても、リサイクルあるいはリユースすることがますます求められている。
【0005】
従来、ガラス繊維を配合したプラスチック成型材料の分野では、リサイクルあるいはリユースのための様々な試みが行われてきた。例えば、表皮材、ガラス繊維を含む廃棄ポリウレタン製品を粉砕して細片化し、これにガラス長繊維とイソシアネート系結合剤を水とともに混合して圧縮成型する方法(特許文献1)、ガラス繊維を主基材とするフェノール樹脂成形材料硬化物の廃材を粒径0.5mm以下に微粉砕し、充填材として再利用したフェノール樹脂成形材料(特許文献2)などがある。しかし、ガラス繊維紙はこれまで粉砕処理化された例は無かった。これは、硬度のある成形材料と異なり、ガラス繊維紙は薄く柔軟なため粉砕処理が難しいためである。
【0006】
また、廃材からガラス繊維のみを回収する例もある。例えば、ガラス繊維強化プラスチック廃材を反応容器内で超臨界水又は亜臨界水と接触・反応させてプラスチックのみを分解し、ガラス繊維のみを回収・再利用する方法(特許文献3)、あるいはエアフィルタ用濾材に使われた使用済みのガラス繊維紙について、不活性ガス中で可燃物(バインダー分)のみを加熱分解し・洗浄してガラス繊維を回収する方法(特許文献4)が提案されている。しかし、これら方法は処理工程が複雑で設備等のイニシャルコスト、エネルギー等のランニングコストがかかり、現実的とは言えない。
【0007】
ガラス繊維紙をリサイクルあるいはリユースする低コストでシンプルな方法が求められている。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−88865号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平10−182933号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平10−87872号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2002−143616号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ガラス繊維を主体繊維とするガラス繊維紙において、不用となったガラス繊維紙をリサイクルあるいはリユース可能な形態物とすることである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この課題は、ガラス繊維を主体繊維としたガラス繊維紙を、有機バインダー樹脂分を残したまま引き裂き方式で乾式破砕することにより元の繊維長および繊維径に近くした破砕物であることを特徴とする、リサイクルあるいはリユース可能なガラス繊維紙粉砕物によって解決される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一つの実施態様は、ガラス繊維紙に付着している有機樹脂バインダー量が20重量%以下であることである。
【0015】
別の有利な実施態様の一つは、ガラス繊維紙の主体繊維がウール状のガラス短繊維である。
【0016】
本発明のガラス繊維紙粉砕物はガラス繊維紙を引き裂き方式で乾式粉砕することにより得られるものであり、粉砕物がバージンのガラス繊維の繊維経と繊維長に近いこと、具体的には電子顕微鏡観察においてガラス繊維が全くまたは殆ど切断されていないことが観察されることであり、かつ目視の範囲内で粉砕物中に未粉砕の紙の塊が無く、また粉状でもなく、嵩高なバージン原料に近い形態となる。
【0017】
ここで、「引き裂き」とは紙を2箇所で固定し、互いに正反対の方向への負荷をかけて紙を裂くことであり、引き裂き方式による乾式粉砕(“引き裂き乾式粉砕”とも言う)はこの「引き裂き」作用を利用したものである。
【0018】
従来、ガラス繊維含有のプラスチック成型材料にくらべガラス繊維紙は薄く柔軟なため、粉砕機の刃のかかりが悪く粉砕しにくいと考えられてきた。また、ガラス繊維自身が脆いので粉砕条件が厳しいと粉々になり、繊維形状が無くなってしまうと考えられてきた。しかし、粉砕装置、条件設定の最適化により、前記の粉砕物が得られることが分かった。
【0019】
これまでのプラスチック成型材料の場合、粉砕機の刃で「削り取る」ようにして粉砕物が得られる。一方、ガラス繊維紙の場合は、ガラス繊維の脆さのため「削り取る」ことに対し弱く、繊維を粉々にしてしまい、これまで良好な粉砕物は得られなかった。
【0020】
そこで、ガラス繊維紙の引き裂き強度が比較的に弱いことに着目し、「引き裂き」作用を利用して粉砕処理を行うとガラス繊維を粉々にせずに繊維形状を残したまま粉砕できることが、鋭意検討の結果、わかった。これは、粉砕処理工程で紙を「削り取る」よりも「引き裂く」ことでガラス繊維から有機バインダーの樹脂膜を引き剥がして紙層から繊維を引き抜く効果が出ているためと考えられる。ガラス繊維自身は高強度であるから、このような「引き裂き」には強く、繊維の折れ、劣化は少なく、また有機バインダーの接着力やバインダー膜強度はガラス繊維に比べれば相対的にかなり低いことが、効果を上げていると推測される。
【0021】
本発明の粉砕物に類似のものとして古紙の乾式解繊による粉砕物があるが、古紙原料の木材セルロース繊維は非常に柔軟性があり、一方、硬くて脆いガラス繊維紙で古紙解繊粉砕物に似たものが得られたことは、全く予想外のことであり、かつ新規の発見であった。
【0022】
粉砕処理に際し、事前に処理する各ガラス繊維紙について、粉砕装置の選定、条件設定調整の作業が必要である。粉砕装置としては、例えば従来一般に使われている木片、プラスチック製品、古紙用の乾式破砕機、粉砕機、解繊機を使用することができ、最適条件で本発明の粉砕物を得ることができる。
【0023】
粉砕方式としては、ハンマーミル、ロータリーカッター、歯車型など様々あるが、処理条件の調整によって「引き裂き」方式条件にすることが可能な場合があり、特に方式は限定されない。処理前のガラス繊維紙の性状により最適方式、条件が決められる。一般に、「引き裂く」条件にするためには、処理条件を弱めた方が良い場合が多い。
【0024】
ガラス繊維紙のバインダー量もまた、粉砕状態に影響する。バインダー量が多いと樹脂膜が引き剥がしにくくなり、粉砕物が目視できる位の塊となり、逆に粉砕条件を厳しくするとバインダー樹脂とともにガラス繊維も粉々に粉砕されてしまう。有機バインダー量は20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
【0025】
またガラス繊維紙に使用されるガラス繊維は、大別すると繊維径6μm〜数十μm、繊維長3〜30mm程度のガラス長繊維と、繊維径6μm以下、繊維長2〜3mm以下のウール状ガラス短繊維がある。このうち、ガラス長繊維は繊維長が長いためガラス短繊維に比べ粉砕で折れやすく、比較的、ガラス短繊維の方が本発明のガラス繊維紙粉砕物を得られやすい。
【0026】
この点で、気体用、液体用各種フィルタ用濾紙に使用されるガラス繊維紙はガラス短繊維の配合率が高く、有機バインダー分もほとんどの場合10重量%以下なので、粉砕物を得るには好ましい。
【0027】
本発明のガラス繊維紙粉砕物は、バージンのガラス繊維素材に近いので、様々なリサイクルやリユースのケースに使用可能である。
【0028】
例えば、リサイクル用途に使用するには、製品のバージン原料に一部配合すれば良い。繊維形状が残っているので、製品性能を余り損なうことがなく使用できる。仮にガラス繊維紙粉砕物が粉々になった場合、繊維としての特性が生かせないので、製品性能を低下させてしまう。また、未粉砕の紙の塊があると、製品中の異物となってしまう。
【0029】
粉砕物のガラス繊維には有機物バインダー分がそのまま残っているので、多量に配合すると製品物性に影響を及ぼす場合があり、製品毎に最適な配合量を決定すべきである。
【0030】
また、ガラス繊維のリユースとしては、プラスチック製品の補強材料、温湿度変化による伸縮防止材、防音材、保温材、不燃材等の用途が挙げられる。
【0031】
【実施例】
次に、実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0032】
ガラス繊維粉砕物の作成
ウール状ガラス短繊維が主体である目付重量71g/m2のHEPA(高性能エアフィルタ)用濾材の端材50kgを、(有)吉工 社製RC−250型粉細機で微粉砕処理を行った。この処理により得られたガラス繊維粉砕物を走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維の折れ、粉状化は見られなかった。また、目視で未粉砕の塊は見られなかった。
【0033】
ガラス繊維粉砕物の使用例
上記で得られたガラス繊維粉砕物30重量%、平均繊維経0.65μmのバージンウール状ガラス繊維42重量%、平均繊維径2.70μmのバージンウール状ガラス繊維25重量%、平均繊維径6μmのチョップドガラス繊維3重量%を、濃度0.5%、硫酸酸性PH2.5でパルパーにて離解した。次いで抄紙機にて抄紙して湿紙を得た。次に、バインダー液組成が、アクリル系ラテックス(商品名:ボンコートAN−155,製造元:大日本インキ化学工業(株))を固形分濃度2.4重量%となるように調製したバインダー液を湿紙に付与し、その後130℃のドライヤーで乾燥し、目付重量70g/m2、バインダー付着量5.5%のHEPA用濾材を得た。
【0034】
上記使用例の比較例
上記使用例において、原料配合が平均繊維経0.65μmのバージンウール状ガラス繊維60重量%、平均繊維径2.70μmのバージンウール状ガラス繊維35重量%、平均繊維径6μmのチョップドガラス繊維5重量%とした以外は上記例と同様にして、目付重量71g/m2、バインダー付着量5.5%のHEPA用濾材を得た。
以上の実施例および比較例で得られた濾材の物性は、表1に示す通りになった。
【0035】
ガラス繊維粉砕物30%配合品はオールバージン配合品と比較しても、濾材物性に劣る点がないことがわかる。
【0036】
実施例及び比較例の分析は下記の方法で行った。
(1)圧力損失
自製の装置を用いて、有効面積100cm2の濾紙に面風速5.3cm/secで通風し
た時の圧力損失を微差圧計で測定した。
(2)DOP捕集効率
ラスキンノズルで発生させた多分散DOP粒子を含む空気を、有効面積100cm2の濾紙に面風速5.3cm/secで通風した時のDOPの捕集効率をリオン(株)社製レーザーパーティクルカウンターを使用し測定した。なお、対象粒径は0.3μm〜0.4μmとした。
(3)引張強度
引張強度は、JIS P8113に準拠して、濾材のMD方向(縦目方向)より1インチ幅にカットした試験片をスパン長100mm、引張速度15mm/分で定速引張試験機を用い測定した。
(4)折目付強度
引張強度試験と同様にMD方向(縦目方向)より1インチ幅にカットした試験片を採取する。その試験片に厚さ1mmの金属角板を当て、180°、5回折ったものを引張強度試験と同様に測定する。ガラス繊維が粉砕劣化した場合、折目付強度が低下するので、ガラス繊維形状保持の一つの指標となる。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、比較的低コストで複雑な工程も必要なしに、リサイクル、あるいはリユース可能なガラス繊維粉砕物を提供することができる。
Claims (1)
- 繊維径6μm以下、繊維長2〜3mm以下のウール状のガラス短繊維を主体繊維とした有機樹脂バインダー量が10重量%以下で付着してなるHEPA(高性能エアフィルタ)用濾材を、ロータリーカッター式粉細機を用いて、有機バインダー樹脂分を残したまま引き裂き方式で乾式破砕することにより元の繊維長および繊維径に近いウール状のガラス短繊維を主体繊維とした破砕物であることを特徴とする、HEPA(高性能エアフィルタ)用濾材にリサイクルあるいはリユースするためのHEPA(高性能エアフィルタ)用濾材粉砕物。
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