JP4223943B2 - 開放型アルカリ蓄電池用ペースト式極板及びそれを用いた開放型アルカリ蓄電池 - Google Patents

Description

本発明は、多孔シートに活物質を充填塗布してなる開放型アルカリ蓄電池用ペースト式極板およびこれを用いた開放形のアルカリ蓄電池に関するものである。

蓄電池用極板、例えばニッケル・カドミウムアルカリ蓄電池用の極板は、ニッケル等の金属製の多孔シートにペースト状活物質を充填塗布し、これを所望の大きさに切断して使用されている。この際、極板の端部、特に切断端部における金属性バリによる短絡を防止するために、該端部を樹脂等で被覆することが知られている（特許文献１）。

特開平５−１９０２００号公報

しかし、ニッケル・カドミウムアルカリ蓄電池で使用されているペースト式カドミウム負極板の様に、多孔シートにペースト状活物質を単に塗布充填した構造である極板は、強度が弱く、多孔シートから活物質が剥離・脱落し易いため、接着剤または樹脂を塗布し固着した極板は、通常の使用時負極からのガス発生が少ない密閉形蓄電池ではそれ程問題とならないが、開放型蓄電池に使用した場合は、充電末期に負極板から比較的激しいガス発生が起きるため、使用中に多孔シートより活物質が剥離したり脱落したりするため、早期に寿命に至ってしまうという問題がある。

上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討した結果、これら樹脂等で被覆されたペースト式極板の被覆する樹脂厚みは端部、即ち端面側と極板縁部である極板表面側で同じ厚さで被覆されていることに着目し、接着剤または樹脂を塗布固着する際、極板表面側に対し切断面である端面側を厚く塗布することで課題を解決したものである。

本発明によれば、接着剤または樹脂を、極板表面側に対し端面側を厚く塗布することで、開放形アルカリ蓄電池用ペースト式極板からの活物質の剥離や脱落を防止し得、極板の耐久性が改善され、開放形アルカリ蓄電池の寿命を向上し得る等の効果を奏するものである。

本発明は、ニッケルパンチングシート等の長尺の多孔シートにペースト状活物質を塗布充填し、これを化成した後または化成せずに所望の大きさの極板に切断した後、端部に接着剤や樹脂を塗布固着し、極板表面側に対し端面部を厚く塗布する。その方法としては、所望の大きさの極板の端部を接着剤や溶けた樹脂に浸漬し、これを引き上げることで、極板端部には多量の接着剤や樹脂が固まりとしてダマの様に付着する。その後付着した接着剤や樹脂が固化しない内にスリットを通して余分な接着剤や樹脂を取り除くものであるが、その際、極板の縁部即ち極板表面側のスリットは狭く、端部側は広くすることで塗布厚みを極板表面側に対し端部側を厚く塗布することが出来、その後塗布した接着剤や樹脂を乾燥し固化させるものである。接着剤を塗布したペースト式極板を図１に示す。１は接着剤等の塗布部、２は多孔シート、３は多孔シートの両面に充填塗布された活物質であり、ａは極板表面側の塗布厚み、ｂは極板端面側の塗布厚み、ｃは極板表面側の塗布幅を示す。

所定の大きさに切断したペースト式カドミウム負極板の端部に、ポリプロピレンを主成分としたホットメルト接着剤を、それぞれ極板表面側の塗布厚みを０．０１ｍｍ、０．０５ｍｍおよび０．１０ｍｍに、切断した端面側塗布厚みを０．５ｍｍに塗布した。そして極板表面側の塗布幅は０．５ｍｍ、１ｍｍ、３ｍｍ、５ｍｍおよび７ｍｍに塗布し固着した表１に示すａからｇの負極板を作製し、これらの作製した各負極板を焼結式ニッケル正極板と組み合わせて開放型ニッケル・カドミウムアルカリ蓄電池を作製した。これらの蓄電池をそれぞれＡからＧとした。

比較例

次に比較例としてペースト式カドミウム負極板の端部に、同様にポリプロピレンを主成分としたホットメルト接着剤を、極板表面側には塗布せず切断端面にのみ０．５ｍｍの厚さに塗布したもの、極板表面側と切断端面側にそれぞれ０．０５ｍｍの同一の塗布厚みとし、極板表面側の塗布幅を１ｍｍとしたもの、および極板表面側にも切断端面側にも全く塗布しないものの３種類を作製した。それらを表１にｈからｊとして示した。これらの作製した各負極板を焼結式ニッケル正極板と組み合わせて上記実施例と同様に開放型ニッケル・カドミウムアルカリ蓄電池を作製した。これらの蓄電池をそれぞれＨからＪとした。

上記の実施例および比較例で作製した各ペースト式カドミウム負極板を、環境温度２５℃、ＫＯＨ水溶液中において、対極としてニッケル板を用いて、−１．６５Ｖ（対ニッケル板）になるまで充電し、１．５Ｖ（対ニッケル板）になるまで放電する充放電を５０回繰り返し、活物質の剥離や脱落の有無を観察した。その結果および脱落した回数を表１に示した。

表１から明らかな通り、本発明品である負極板ａ、ｂ、ｃ、ｄ、ｆおよびｇは５０回充放電するも脱落等はなかった。また、本発明品である負極板ｅは４５回で脱落したが、比較品より良く、剥離・脱落の防止効果は向上している。

次に、実施例および比較例で作製した各ペースト式カドミウム負極板を焼結式ニッケル正極板とセパレータを介して積層した極板群を電槽に収納して公称容量４０Ａｈの開放型ニッケル・カドミウムアルカリ蓄電池を作製し、各蓄電池を、環境温度２５℃において、放電深度６０％で充放電を繰り返したときの寿命に至るまでの回数を測定した。尚、充放電とも０．２５ＣＡの電流で行い、充電量は放電量の１．４倍とし、定格容量の６０％に低下した時を寿命とし、５０回毎に容量を確認した。その結果を表２に示した。

表２から明らかな通り、本発明品はいずれも良い結果が得られ、特に、電池Ｅを除く極板表面側の塗布幅が１ｍｍ以上のものは回数が多く長寿命であった。

更に、極板表面側の塗布幅を種種変えた負極板を用いて各蓄電池を作製し、これを環境温度２５℃において、０．１ＣＡで１５時間充電後、１ＣＡで１Ｖまで放電したときの持続時間を測定し、接着剤を塗布していない蓄電池に対しての容量維持率を求めた。その結果を図１に示した。

極板表面側の塗布幅が広くなるほど、容量維持率が低くなった。この原因は、塗布幅が広くなることで、活物質と電解液との反応面積が少なくなり、利用率が低下したためと考えられる。この結果から極板表面側塗布幅は５ｍｍ以下が好ましい。

更に種種の実験の結果、端面側の塗布厚みは０．１ｍｍ以上が好ましく、また、極板表面側塗布厚みを厚くすることは極板を積層してなる極板群の厚み方向の寸法を大きくすることになるので、その厚みは０．０１〜０．０５ｍｍが好ましい。

端部に接着剤が塗布されたペースト式極板の部分図である。 極板表面側の塗布幅と容量維持率を示す図である。

符号の説明

１ 塗布部
２ 多孔シート
３ 活物質
ａ 極板表面側塗布厚み
ｂ 極板端面側塗布厚み
ｃ 極板表面側塗布幅

Claims (4)

1. 多孔シートに活物質を充填塗布してなる極板の端部に、接着剤または樹脂を塗布固着してなり、該塗布固着する接着剤または樹脂を極板端部の極板表面側に比べ端面側を厚くしたことを特徴とする開放型アルカリ蓄電池用ペースト式極板。
2. 接着剤または樹脂を塗布固着する厚みを、極板表面側は０．０１ｍｍ〜０．０５ｍｍ、端面側は０．１ｍｍ以上としたことを特徴とする請求項１記載の開放型アルカリ蓄電池用ペースト式極板。
3. 接着剤または樹脂を塗布固着する極板表面側の塗布幅を１ｍｍ〜５ｍｍとしたことを特徴とする請求項１または２記載の開放型アルカリ蓄電池用ペースト式極板。
4. 請求項１乃至３に記載の開放型アルカリ蓄電池用ペースト式極板を用いた開放型アルカリ蓄電池。