JP4223113B2 - 混合紡糸繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、溶融粘度の異なる2種のポリアミドとポリエチレンを同一溶融系で溶融し、混合紡糸して得られる混合紡糸繊維およびその製造方法ならびにこれを用いた皮革様基体の製造方法に関するものである.
【0002】
【従来の技術】
従来、種々のタイプの極細繊維が開発され、高性能合成紙、高性能フィルター、高級人エ皮革の基体、高級繊編物等にその用途が拡大されている。かかる極細繊維のうち特に細い、太さが0.1デニール以下の極細繊維を製造する方法として、非相溶性の2種以上の熱可塑性ポリマーを同一溶融系で溶融して混合紡糸繊維を形成し、その後混合紡糸繊維中の少くとも1種のポリマー成分を溶解除去する方法が知られている。
【0003】
そしてこの混合紡糸繊維を製造する場合、以下の方法が提案されている。たとえば、特開昭54−73102号公報、特公昭55−29166号公報、特公昭61−13032号公報等には、ポリアミド、ポリスチレン及びポリエチレングリコールとからなる混合紡糸繊維を形成し、しかる後混合紡糸繊維中のポリスチレン及びポリエチレングリコールを溶解除去して極細ポリアミド繊維を製造する方法が開示されている。この方法ではポリエチレングリコールが吸湿しやすいため、取扱い性が悪く、かつ紡糸調子の低下を招き易い。また、融点が低いため溶融紡糸機での溶融特性が悪く、溶融ポリマーの押し出しが不安定で、長時間安定して紡糸することが出来ない。さらには、ポリスチレンを使用すると、通常温水浴中で延伸する際に採用されている100℃以下の温度での延伸性が悪く、高い延伸倍率に設定することが困難であり、しかも海成分除去後の極細繊維は、繊維間の膠着が激しくまた繊維長が短く人工皮革用繊維としての性能に劣るものであった。
【0004】
また、特開平4−174767公報には、ポリアミド、ポリエチレン及び酸変性ポリオレフインとから混合紡糸繊維を形成し、得られた混合紡糸繊維からポリエチレンと酸変性ポリオレフインを溶解除去する方法が開示されている。しかしこの方法では、島成分が小さく分散し、得られる極細繊維の繊維長が非常に短かく、しかも海成分除去後の極細繊維は人工皮革としての充分な性能を持つ繊維とはならなかった。
上述のような、いわば島成分を均一に分散させる方法は、いずれも、かえって得られる極細繊維の繊維長が短く、また繊維の膠着が起きやすい方法であり、海成分除去後の極細繊維は人工皮革としての充分な性能を持つ繊維とはならなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
また、従来の混合紡糸方法においても、極細繊維となる分散成分の島数を変える、混合ポリマーの組成比率を変える、溶融系における混合ポリマーの粘度比を規制する等の手法で混合紡糸繊維を得て、これを用いて皮革様シート等が作られている。このような方法によって、混合紡糸繊維の島の分散成分が揃い繊維長が長くなった結果、ある程度まで紡糸が安定化し、人工皮革とした時にその物性が確保出来るようになった。しかしなおこれらの方法は、紡糸条件が非常に限定され、紡糸温度、冷却風量、巻き取り条件等工程上のわずかな変動で、得られる繊維の島数や物性が大きく変わり、長時間安定して同じ品質の繊維を得ることが困難であった。また分散成分が揃うことで、逆に極細繊維とした時の繊維間の膠着が発現し、人工皮革基体としての物性が確保出来ず、膠着により人工皮革基体の触感も不良になる問題があった。
本発明は前述のような問題を解決し、混合溶融紡糸での長時間の運転が可能で工程安定性に優れ、かつ海成分の抽出後の繊維間の膠着がなく、しかも繊維長が充分長く、人工皮革用として優れた混合紡糸繊維を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、メルトフローレート(以下MFRと略す)の異なる2種類のポリアミド側の紡糸原料(Aa)および(Ab)、ならびにポリエチレン側の紡糸原料(B)からなり、(1)から(3)式を同時に満足する混合物を溶融紡糸することにより、混合溶融紡糸での長時間の運転が可能で工程安定性に優れ、かつ海成分の抽出後の繊維間の膠着がなく、しかも繊維長が充分長く、人工皮革用として優れた混合紡糸繊維が得られる本発明に至ったものである。
(1)MFR・Aa=5〜80かつMFR・Ab=5〜80
(2)3≦|MFR・Aa−MFR・Ab|≦15
(3) WAa:WAb=1/9〜9/1
ただし上記式中、MFR・AaとMFR・Abはそれぞれポリアミド側の紡糸原料(Aa)のメルトフローレートとポリアミド側の紡糸原料(Ab)のメルトフローレートを意味する。但しメルトフローレートはいずれもオリフィス口径:2mmφ、荷重:325gで測定した紡糸温度における値である。またWAaおよびWAbはそれぞれ上記混合物中のAa、Abの重量を意味する。
【0007】
また、該混合紡糸繊維を用いた人工皮革基体は以下の工程(1)〜(3)を順次実施することにより得ることが出来る。
(1)該混合紡糸繊維を用いて、不織布を製造する工程、
(2)不織布に弾性重合体を付与する工程、
(3)混合紡糸繊維からポリエチレンを溶解除去する工程、
【0008】
非相溶性の2種以上の熱可塑性ポリマーを同一溶融系で溶融して混合紡糸繊維を形成し、その後混合紡糸繊維中の少くとも1種のポリマー成分を溶解除去する方法は公知である。このような紡糸方法においては、一般に紡糸温度や巻き取り速度等の条件が限定され、工業的に安定し連続して紡糸出来る時間が短く、また得られる繊維の性能が人工皮革基体として不充分である場合が多い等の欠点を有している。
本発明では、ポリアミド成分として、MFRの異なる2種類のポリアミド(Aa)とポリアミド(Ab)を本発明の範囲において混合して用いることに大きな特徴がある。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明におけるMFRはJIS−K7210に準じて、メルトインデクサーを用い2mmφの口径で325gの荷重をかけたときの紡糸温度における10分あたりの吐出重量である。
該混合紡糸繊維を構成する2種類のポリアミドの紡糸温度におけるMFRはいずれも5〜80の範囲になければならない。さらに好ましくは10〜50の範囲である。MFRが5未満の場合には、島成分であるポリアミドは繊維断面方向の島形状は大きく数の少ないものとなり、繊維長方向には太く短いものとなり紡糸時の糸曳性が不良となる。また、延伸工程で断糸し延伸倍率が上がらず、繊維の物性が不十分になる。またMFRが80を超える場合には、ポリアミドの紡糸時の流動性が大きく、分散性がよくなりすぎ、繊維断面の島形状は小さく数の多いものとなり、繊維長方向に細く短くなる。さらに島間の空間が狭いため海成分抽出除去後、極細繊維の膠着が発現し、物性の優れた混合紡糸繊維を得ることが出来ない。
【0010】
本発明は紡糸時のMFRが共に5〜80の範囲内において、MFRに特定の差を持った2種類のポリアミドを混合して使用することを特徴とするものである。すなわち2種類の流動性の異なるポリアミドを混合することにより、紡糸工程においては糸曳性、延伸工程では延伸倍率の向上、海成分抽出後の繊維膠着が起こらないなどの効果が得られるものである。この2種類のポリアミド側の紡糸原料(Aa)と(Ab)の紡糸温度におけるMFRの差は3〜15の範囲にすることが必要である。ポリアミド側の紡糸原料(Aa)と(Ab)のMFRの差が3未満の場合には本発明の効果はなく、ほとんど従来の単一ポリアミド成分と同様の挙動を示す。MFR絶対値の差が15を超える場合には、(Aa)と(Ab)の紡糸時の流動性の差が過大になり、相溶性がかえって悪化し、安定な紡糸を行うことができない。さらに好ましい紡糸時のMFRの差の範囲は5〜10である。2種類のMFRの異なるポリアミドを混合することにより、繊維中の島分布が円周部分では小さく、長いものが緻密に層を作り、中心部分では大きく島と島の空間は広くなる。円周部の小さく長い緻密な部分は紡糸安定性、および延伸倍率向上、繊維物性に効果があり、中心部分の島径が大きく空間のある部分は繊維海成分の抽出除去時の分繊性、すなわち極細繊維の膠着防止に効果がある。
【0011】
従来の単一成分のポリアミドとポリエチレンの混合紡糸においては繊維中の島分布が円周部分から中心部分まで、例えば島径の小さく緻密なものや、あるいは島径の大きく空間の大きい繊維構造となりやすく、また紡糸条件が非常に限定され紡糸温度、冷却風量、巻き取り条件等工程上のわずかな変動で、得られる繊維の島数や島分布が変動しやすい。
本発明では2種類の流動性の異なるポリアミドを混合することにより、適度な島の分布を有するものが得られやすく、紡糸の安定な運転の領域が広く、繊維海成分の抽出除去後、膠着のない繊維が得られる。
【0012】
本発明においては、ポリアミド(Aa)および(Ab)の混合比率はWAa:WAb=1/9〜9/1 の範囲になければならない。Wa、Wbのどちらかが10%未満の場合には本発明の効果はなく、従来の単一ポリアミド成分のものと差がなく、紡糸の安定性が悪く、物性の優れた混合紡糸繊維を得ることは出来ない。
【0013】
本発明において高い物性値を持つ繊維が安定的に得られる理由としては、MFRの異なる2種類のポリアミド側の紡糸原料(Aa)とポリアミド側の紡糸原料(Ab)およびポリエチレン側の紡糸原料(B)から(1)式〜(3)式を同時に満足する混合物を溶融紡糸延伸した結果、従来の混合紡糸繊維とくらべて島成分の繊維長方向の長さの分布がより広くなっているものと推定する。従来の単一成分のポリアミドとポリエチレンの混合紡糸においては分散したポリアミドの糸断面方向の直径は比較的揃ったものとなる。この場合に比較的直径が細かくなるような紡糸条件においては海成分除去後得られる極細成分が除去の工程で膠着を起こしやすく、また直径が太くなるような紡糸条件においては延伸工程で島成分が充分繊維長方向にのばされない結果物性が上がらない傾向があった。本発明では上述の(1)から(3)式を同時に満足する混合物を溶融紡糸することによりこれらの問題を解決するものである。
【0014】
本発明で用いられるポリアミドは、ナイロン−6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン−10、前記ポリアミド類の2つまたはそれ以上の共重合ポリアミド類から選ぶことができる。本発明のポリアミドとしては、特にナイロン−6またはナイロン−66がポリエチレンとの取り扱い性、溶融特性などの点で好ましい。
【0015】
また本発明で用いられるポリエチレン(B)は通常工業的に利用されているポリエチレンがいずれも使用でき、密度0.910〜0.925の低密度ポリエチレン、同じく密度0.926〜0.940の中密度ポリエチレン、同じく密度0.941〜0.965の高密度ポリエチレンのいずれであってもよい。中でも炭素数が4〜8の α−オレフインとエチレンを共重合させることによって得られる直鎖状低密度ポリエチレンとして市販されているものはその取り扱い性、溶融特性、紡糸性、温水中延伸性、特定溶剤での溶解除去性の観点からとくに好ましい。またかかるポリエチレンの紡糸時のMFRは20〜100の範囲にあるのが好ましい。
【0016】
本発明においては、ポリアミド側の紡糸原料(Aa)とポリアミド側の紡糸原料(Ab)との合計量とポリエチレン側の紡糸原料(B)との好適な混合比率(Aa)+(Ab):(B)は30:70〜60:40の範囲である。ポリアミドが30%未満の場合には紡糸性は良いが被抽出成分が多く、経済的に好ましくない。また得られる極細繊維の物性も弱くなる。ポリアミドの合計量が60%を超す場合には、海島の構造が逆転しやすくなり、ポリアミドからなる極細繊維を得られなくなる。本発明においては、ポリアミド側の紡糸原料(Aa)とポリアミド(Ab)以外のポリアミドを本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよく、さらにポリアミド、ポリエチレン以外のポリマーを同様に本発明の目的を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0017】
これらの紡糸原料の混合方法としては、ポリアミド(Aa)のチップ、ポリアミド(Ab)のチップ、ポリエチレンのチップをチップブレンダー等で混合して得た混合物を、通常の溶融紡糸装置に導入する方法、あるいは、溶融状態のポリアミド、ポリエチレンを溶融紡糸装置のパック内で混合する方法等のいずれの方法でも採用できる。紡糸原料(Aa)、(Ab)および(B)の混合に際しては、必要に応じ帯電防止剤、ニ酸化チタンのごとき艶消し剤、カーボンブラックのごとき着色剤及び熱安定性の酸化防止剤等を添加混合することもできる。もちろん、各々のポリマーを溶融する際に添加してもよい。
【0018】
溶融紡糸の温度は240〜290℃、未延伸糸の捲取速度は200〜800m/分が好ましい。得られた未延伸糸はその後延伸され、太さが1〜10デニール、好ましくは2〜6デニールの混合紡糸繊維とする。延伸温度は、50〜95℃、延伸倍率は2〜5倍が好ましい。さらに得られた延伸糸は捲縮の後、一般的に15〜80mmにカットされる。
【0019】
上記のごとくして混合紡糸繊維のカットファイバーを得て、さらに人工皮革基体とするために以下の工程を順次実施する。
(1)混合紡糸繊維を用いて、不織布を製造する工程、
(2)不織布に弾性重合体を付与する工程、
(3)混合紡糸繊維からポリエチレンを溶解除去する工程、
【0020】
まず捲縮、カットされた極細繊維発生型繊維をカードで開繊し、ウェッバーを通してランダムウェッブまたはクロスラップウェッブを形成し、得られた繊維ウェッブを所望の重さおよび厚さに積層する。かかる極細繊維発生型繊維は単独で、又は通常の太さの繊維(単繊維デニールが0.5〜2.0デニール)と目的にあわせて混合してもよい。
次いで、ウェッブを公知の方法でニードルパンチ処理し不織布とする。ニードルパンチした繊維絡合不織布を加熱、プレスして所望の厚さに調整する。次いで該不織布に弾性重合体組成液を含浸する。含浸する弾性重合体としては従来から人工皮革基体の製造に用いられている樹脂が好適に用いられる。例えばポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリアミノ酸系樹脂、シリコン系樹脂およびこれらの共重合、これらの混合物が使用出来るが、湿式凝固により均一なスポンジ構造が得られる点、機械的物性が優れているなどの点からポリウレタン系樹脂が好適に使用される。弾性重合体組成液は弾性重合体を主体として、重合体に着色剤、凝固調節剤、安定剤、酸化防止剤等を配合し、有機溶剤溶液または水系エマルジョン液として使用する。
【0021】
該弾性重合体の有機溶剤組成液を含浸した絡合不織布基体を次いで該重合体の非溶剤で処理して凝固し、必要に応じて洗浄し、乾燥して繊維質基体とする。繊維質基体に占める弾性重合体の比率は固形分として10〜60重量%が好適である。この弾性重合体の組成比はそれぞれの用途に応じて使い分ければよく、例えばスエード調に仕上げる場合には10から40重量%が好適な範囲であり、銀付きの人工皮革に仕上げる場合には30から60重量%が好適な範囲である。
【0022】
弾性重合体を含浸凝固させた繊維質基体を、繊維中のポリアミド及び弾性重合体の非溶剤でありポリエチレンの溶剤である処理液、例えばトルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤、または分解剤で処理することによりポリエチレンを繊維から除去し、ポリアミド極細繊維と弾性重合体とからなる人工皮革基体とする。前述の繊維同士の膠着はこのような方法により得た人工皮革基体の引裂強力をはじめとする諸物性が劣ったものとなるばかりでなく、基体の触感、風合いにも多大の影響をおよぼす。すなわち、繊維同士の膠着の起こった基布の触感は膠着の起こっていない基布に比較し、ゴワゴワとした触感となり、その商品的価値を著しく落とすものである。
該人工皮革基体は必要により起毛処理、グラビア、エンボス、フィルムコート、染色、等の仕上処理を施し、スエード調または銀面付きの人工皮革製品とする。
【0023】
【実施例】
以下本発明の実施態様を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部、%はすべて重量に関するものである。実施例および比較例において紡糸性、繊維膠着、および抽出糸物性等の評価は以下の方法によった。
【0024】
[紡糸性評価(断糸回数)]
実施例1に記述の紡糸条件において24時間連続運転時の断糸の回数で示した。
【0025】
[繊維膠着の評価]
実施例1および実施例6に記述のように繊維を紡糸、延伸の後繊維不織布とし、ポリウレタンを含浸し、トルエンで抽出し、乾燥した人工皮革基体の組織の断面を電子顕微鏡で観察した。断面の形状で極細繊維同士が離れているものを5、極細繊維同士が膠着しているものを1として5段階で評価した。
【0026】
[抽出糸物性]
実施例1に記述の紡糸、延伸後の繊維を繊維束のまま枠に固定して繊維からポリエチレンをトルエンで80℃で抽出し、乾燥した後、引張試験機でチャック間距離10cm、引張速度100mm/minでの破断強度、伸度を測定した。
【0027】
実施例1〜5、比較例1〜4
MFRの異なる2種類のナイロン6のチップと、直鎖状低密度ポリエチレンチップを加えて第1表に示した構成としてチップブレンダーで混合し、2種類のポリアミドおよびポリエチレンからなる混合物を得た。
この混合物を、紡糸孔数24個の通常の溶融紡糸装置に導入し、紡糸原料の溶融特性にあわせて紡糸温度240〜290℃で紡糸し、単繊維デニールが10デニールのナイロン−6が島でポリエチレンが海となっている、海島型断面構造を有する未延伸糸を得た.この未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸速度50m/分で3.0倍に延伸して、単繊維デニールが3.3デニールの混合紡糸繊維の延伸糸を得た。
この混合紡糸繊維の延伸糸を80℃のトルエン中に30分間浸漬し、ポリエチレンを実質的に全部溶解除去したところ、極細ポリアミド繊維の集束体からなる糸条が得られた。混合紡糸繊稚の特性及びそれから得られた極細ポリアミド繊維の物性は第1表のようになった。
【0028】
本発明の、MFRの異なる2種類のポリアミド側の紡糸原料(Aa)と側の紡糸原料ポリアミド(Ab)および側の紡糸原料ポリエチレン(B)からなり、(1)から(3)式を同時に満足する混合物を溶融紡糸する方法(実施例1〜5)に従えば、混合紡糸繊維の紡糸性が良好で長時間安定して紡糸することが出来、得られた混合紡糸繊維は十分な長さを有する極細ポリアミド繊維に変形できることがわかる。
【0029】
一方、ポリアミド成分の紡糸時のMFRが本発明の範囲より小さい場合(比較例1)には繊維膠着は比較的起こりにくいが、延伸工程で断糸が多く繊維物性が上がらない。また一方のポリアミド成分の紡糸時のMFRが本発明の範囲より大きい場合(比較例2)には繊維の膠着が大きくやはり繊維の物性が上がらないことがわかる。
また2種類のポリアミド成分の差が本発明の範囲より小さい場合(比較例3)には繊維膠着により繊維物性が上がらず、また2種類のポリアミド成分の差が本発明の範囲より大きい場合(比較例4)には紡糸性が非常に不安定となり、断糸回数が多いことがわかる。また、2種類のポリアミドの混合比が本発明の範囲より小さい場合(比較例5)にも、繊維同士の膠着により繊維物性が良くないことがわかる。
【0030】
実施例6、比較例6
実施例1および比較例2の混合紡糸繊維を実施例1と同様に延伸、捲縮、カットしカット長さ51mmのステープルを得た。このステープルをカージングし、重ね合わせてニードルパンチして目付500g/m 2 の不織布を作成した。この不織布にポリエーテル系ポリウレタンの15%ジメチルホルムアミド溶液を含浸し、ジメチルホルムアミド水溶液により湿式凝固し、水洗した後85℃トルエンにより海成分のポリエチレンを抽出除去し、人工皮革基体を得た。
本発明の方法(実施例1)の混合紡糸繊維より得た人工皮革基体は引裂強力が高く、風合いが柔らかいものが得られた。一方、2種類のポリアミドのMFRが本発明の範囲より少ない、比較例の混合紡糸繊維より得た人工皮革基体は引裂強力が低く、ボキボキとした風合の基布となった。
【0031】
【表1】
【0032】
【発明の効果】
以上に詳述した本発明の方法によれば、混合溶融紡糸での長時間の紡糸運転が可能で工程安定性に優れ、かつ海成分の抽出後の繊維間の膠着がなく、しかも繊維長が充分長い、混合紡糸繊維を得ることが出来る。
本発明方法により得られる極細ポリアミド繊維束を構成する個々の繊維の太さは0.1デニール以下であり、大部分は0.005〜0.1デニールの範囲にある。
このような極細ポリアミド繊維からなる人工皮革基体は繊維同士の膠着がなく、引裂強力をはじめとする物性が優れ、非常に柔らかい手触りを有しており、人工皮革の基布として好ましく用いられる。
Claims (5)
- メルトフローレートの異なる2種類のポリアミド側の紡糸原料(Aa)および(Ab)、ならびにポリエチレン側の紡糸原料(B)からなり、下記(1)から(3)式を同時に満足する混合物を溶融紡糸延伸して単繊度1〜10デニールの混合紡糸繊維を製造する方法。
(1)MFR・Aa=5〜80かつMFR・Ab=5〜80
(2)3≦|MFR・Aa−MFR・Ab|≦15
(3)WAa:WAb=1/9〜9/1
ただし上記式中、MFR・AaとMFR・Abはそれぞれポリアミド側の紡糸原料(Aa)のメルトフローレートとポリアミド側の紡糸原料(Ab)のメルトフローレートを意味する。但しメルトフローレートはいずれもオリフィス口径:2mmφ、荷重:325gで測定した紡糸温度における値である。またWAaおよびWAbはそれぞれ上記混合物中のAa、Abの重量を意味する。 - 請求項1の方法により得られる混合紡糸繊維。
- 請求項1の方法により得られる混紡糸繊維からポリエチレンを除去するポリアミド系繊維の製造方法。
- 請求項3の方法により得られるポリアミド繊維。
- 以下の(1)から(3)の工程を順次行うことを特徴とする皮革様基体の製造方法。
(1)請求項1に記載の混合紡糸繊維を用いて不織布を製造する工程、(2)不織布に弾性重合体を付与する工程、(3)混合紡糸繊維からポリエチレンを溶解除去する工程、
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