JP4222871B2 - ノンエンベロープウイルス凝集条件下での濾過によるノンエンベロープウイルスの除去方法 - Google Patents

ノンエンベロープウイルス凝集条件下での濾過によるノンエンベロープウイルスの除去方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、濾過によるウイルスの除去方法に関するものであり、特に、タンパク質とウイルスとが共存する条件下、例えば、精製分離する前の血漿のようにウイルスが混入しているおそれのある溶液から、そのウイルスを除去するのに好適な濾過によるウイルスの除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、人免疫グロブリンや血液凝固第VIII因子のように、タンパク質を分離精製して得られる血漿分画製剤は各種の治療に有効である一方、ウイルスが混入する可能性があることが知られている。そこで、この血漿分画製剤中のウイルスの不活化方法や除去するための様々な技術が提案されており、より効果的な技術が実施されている。
【0003】
例えば、ウイルスを不活化するには、加熱処理や有機溶媒/界面活性剤による処理によってウイルスを死滅させる方法がある。これらの方法は、HIV(Human immunodeficiency virus)やHCV(Hepatitis C virus)等のエンベロープウイルスに対して特に有効な不活化処理として知られている。しかし、ヒトパルボウイルスB19やHAV(Hepatitis A virus)等のノンエンベロープウイルスは、上記処理に対して抵抗性を有しており、エンベロープウイルスに対するほどの効果が期待できない。
【0004】
一方、ウイルスを除去する方法として、濾過膜を用いて濾過することによりウイルスのみを分離する濾過処理方法が知られている。この方法は、ウイルスより小さい孔径を有する濾過膜によってウイルスを分離して除去するものである。従って、タンパク質を変性させることなくウイルスを物理的に除去できるため、血漿分画製剤製造工程では、有効なウイルス除去方法として使用されている。
【0005】
しかしながら、前記濾過処理方法においては、人免疫グロブリンや血液凝固第VIII因子のように分子量の大きいタンパク質を対象とする場合、そのサイズは小型のウイルスとさほど変わらないため、濾過膜による分離が困難となる。すなわち、大きめの孔径を有する濾過膜で濾過すると、タンパク質と小型のウイルスの双方を透過させてしまうし、小さめの孔径を有する濾過膜で濾過すると、双方とも阻止してしまうので分離が難しい。
【0006】
このような濾過処理における問題を解決するために、従来より、精製対象とするタンパク質とウイルスとのサイズに差を生じさせるための技術が各種提案されている。例えば、特開2001−335509号公報には、タンパク質の一種であるフィブリノーゲンを含有する溶液から、濾過膜を用いてウイルスを除去する方法が記載されている(特許文献1)。この方法によれば、フィブリノーゲンを含有する溶液に塩基性アミノ酸またはその塩類、および塩化ナトリウムを含有させるようになっている。これにより、フィブリノーゲンの溶解度を高めることで溶液中のフィブリノーゲンのサイズを小さくして、ウイルスを濾過膜で除去するとされる。
【0007】
また、特開平11−333259号公報には、血液製剤等の医薬品や食品中に含まれるDNAやRNAを除去する方法が記載されている(特許文献2)。この方法は、原液に塩を0.15mol/L以上加えることによりDNAやRNAをミクロの凝集体にして、多孔膜を用いて除去するとされる。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−335509号公報
【特許文献2】
特開平11−333259号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2001−335509号公報に記載された発明においては、フィブリノーゲンの溶解度が高くなる条件を開示しているに過ぎず、他の血漿分画製剤に応用することができない。また、この方法では、濾過膜の孔径より小さいウイルスは、捕捉されずに混入してしまうという問題がある。
【0010】
また、特開平11−333259号公報に記載されている発明においては、医薬品や食品からDNAやRNAなどを完全に除去することは不可能であるという前提で、その除去効率を上げるための条件を規定しているに過ぎない。すなわち、除去対象が細胞やウイルスの構成成分であるDNAやRNAであり、感染性を持つウイルスを対象としていない。また、主要な塩として塩化ナトリウムを想定しているが、特許文献1と同様に塩化ナトリウムではウイルスが凝集しないという問題がある。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、タンパク質およびウイルスが共存する溶液において、目的タンパク質の性質および収率に影響を与えることなく、ウイルスだけを凝集させて、濾過膜によって除去することができるウイルス凝集条件下での濾過によるウイルスの除去方法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るウイルス凝集条件下での濾過によるウイルスの除去方法の特徴は、タンパク質およびウイルスが共存する溶液から濾過により前記ウイルスを除去する方法であって、前記溶液のpHを4〜8に調整するとともに、前記溶液に対してアミノ酸を加えることにより前記溶液中のウイルスを凝集させ、濾過膜で濾過することで前記ウイルスを除去するようにした点にある。
【0013】
また、本発明において、前記アミノ酸は、少なくともグリシン、アラニン、セリン、スレオニンおよびプロリンのいずれかであることが好ましい。これにより、グリシン、アラニン、セリン、スレオニンおよびプロリンは効果的にウイルスを凝集させて所定の濾過膜を通過させない。
【0014】
また、本発明において、前記溶液に加えるグリシンのモル濃度を0.1mol/L〜2.0mol/Lにすることが好ましい。これにより、添加するグリシンを適量に決定し、ウイルスを凝集除去する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る濾過によるウイルスの除去方法の実施形態の一例を図面を用いて説明する。
【0016】
本実施形態における濾過によるウイルスの除去方法は、タンパク質およびウイルスが共存する溶液に対し、この溶液のpHを4〜8の範囲に調整し、アミノ酸を加えることにより、前記ウイルスだけを凝集させ、濾過膜によって濾過することで前記ウイルスを極めて高い効率で除去する方法である。
【0017】
ここで、タンパク質を分離精製する処理には、クロマトグラフィー分画法や塩の濃度差による溶解度の変化を利用した塩析法等、多くの方法が知られているが、本実施形態では、血漿分画方法として広く使用されているコーン分画法を採用している。そして、このコーン分画法による処理後のタンパク質製剤を製造する工程の中に、濾過膜を使用したウイルス除去工程を導入している。なお、本実施形態では、加えるアミノ酸としてグリシンを使用し、タンパク質として人免疫グロブリンを分離精製するようになっている。
【0018】
本実施形態の人免疫グロブリン製剤の製造工程では、コーン分画法により原料血漿から人免疫グロブリンを分離精製する分離精製処理と、この分離精製処理によって分離精製した人免疫グロブリンから濾過膜によってウイルスを除去する濾過処理とが順次行われる。
【0019】
まず、分離精製処理では、原料血漿のpH(Potential Hydrogen:水素イオン濃度指数)、イオン濃度、アルコール濃度、反応温度およびタンパク濃度を適切に組み合わせることによって、原料血漿中に含まれているタンパク質の溶解度をコントロールし、特定のタンパクを沈殿させる。そして、沈殿させたタンパクと上澄みを高速遠心分離器で分離した後、必要な沈殿物または上澄みを採取する。そして、その得られた沈殿物または上澄みに対し、前記条件とは異なる条件を適宜設定することで別のタンパクを沈殿させる。以上の工程を繰り返して原料血漿から不純物を順次除去していくことで、目的タンパクである人免疫グロブリンが高純度で得られる。
【0020】
つぎに、濾過処理では、図1に示すように、分離精製処理において得られたタンパク質である人免疫グロブリン溶液のpHを4〜8に合わせた後(S1)、アミノ酸であるグリシンを添加することでウイルスを凝集させる(S2)。そして、人免疫グロブリン分子を透過させ得る径を有する濾過膜を用いてデッドエンド方式で濾過を行う(S3)。濾過膜の孔径は、人免疫グロブリン分子が通過できれば、できるだけ小さい方がより多種のウイルスを除去できるため、本実施形態では、平均孔径が約35nmの濾過膜を使用した。
【0021】
つぎに、前述した本実施形態における濾過処理方法の効果を確認するために、以下のような実験を行ってウイルスの捕捉能力を示すLRV(Log Reduction Value:対数減少率)を求めた。
【0022】
【実施例1】
「アミノ酸によるウイルスの凝集効果の実験」
本実施例1では、アミノ酸によるウイルスの凝集効果を確認するとともに、ウイルスの凝集に効果的なアミノ酸を検討するため、各種アミノ酸および非アミノ酸溶液中においてウイルスのLRVを求める実験を行った。
【0023】
また、アミノ酸としては、グリシン、アラニン、セリン、スレオニンおよびプロリンを試料として選択した。これらを試料として選択したのは、いずれも水への溶解度が高くて実用的だからである。そして、アミノ酸によるウイルスの凝集効果を比較するために、非アミノ酸である酢酸アンモニウムおよびリン酸バッファ塩を比較試料とした。
【0024】
さらに、ウイルスは、ヒトパルボウイルスB19を使用した。ヒトパルボウイルスB19の大きさは約18〜24nmであり極めて小さい。このヒトパルボウイルスB19の溶液は、ヒトパルボウイルスB19陽性血漿を使用し、抗体による影響を回避するため、抗ヒトパルボウイルスB19IgG陰性の血漿を選択している。また、このヒトパルボウイルスB19溶液中のウイルス含量は1012PCRunit/mLである。
【0025】
まず、pH6.0に調整した0.3mol/Lの上記各種アミノ酸溶液および非アミノ酸溶液を50mL計量後、ヒトパルボウイルスB19溶液を1/100量だけ添加した後、室温で2時間インキュベートしたものをサンプル溶液とした。
【0026】
なお、前記サンプル溶液を濾過させるための濾過膜は、Planova35N(旭化成株式会社製)を使用した。このPlanova35Nは平均孔径が約35nmでセルロース製の濾過膜である。
【0027】
以上のような各種サンプル溶液および濾過膜を準備した後に、各種サンプル溶液に対して濾過処理を行った。この処理では、各種のサンプル溶液を濾過膜によりデッドエンド方式で濾過させた。濾過処理における圧力は0.8kgf/cmに保持し、室温で行った。この濾過処理の結果を図2に示す。
【0028】
図2は、各サンプル溶液を濾過処理した後のヒトパルボウイルスB19のLRVを求めた結果である。ヒトパルボウイルスB19の大きさは約18〜24nmであるから、本来であれば、直径35nmの濾過膜を通過してしまう。図2に示すように、非アミノ酸である酢酸アンモニウムやリン酸バッファ塩溶液では、LRVは1以下を示しており、ヒトパルボウイルスB19の除去効果は低かった。これに対し、各アミノ酸溶液のLRVは高く、最も低いセリンでもLRVが約4.5を示し、プロリンではLRVが5.5、スレオニンのLRVは約7.0、グリシンおよびアラニンでは、LRVが約7.5を示し、極めて高いウイルス除去効果が確認できた。
【0029】
一般に、LRVは1.0未満は除去効果が低いとされ実用性が認められないが、4.0以上であれば極めて除去効果が高いと認められている。したがって、本実施例1で使用したいずれのアミノ酸もウイルス除去効果が極めて高い。特に、グリシンおよびアラニンは、LRVが約7.5と特に高い除去率を示しており、ウイルスの凝集に効果的なアミノ酸であることがわかる。
【0030】
なお、ヒトパルボウイルスB19DNAの検出に際しては、SMItest EX R&D(株式会社ゲノムサイエンス研究所)を用いて抽出し、さらにパルボウイルスB19遺伝子定性キット(株式会社ゲノムサイエンス研究所)を用いて増幅を行って検出した。
【0031】
【実施例2】
「アミノ酸濃度がウイルスの凝集に及ぼす影響を確認する実験」
本実施例2では、アミノ酸の濃度がウイルスの凝集効果に与える影響を調査するため、アミノ酸の濃度を変化させてウイルスのLRVを測定する実験を行った。本実施例2の試料に用いるアミノ酸は、実施例1においてウイルスの除去効果が高かったグリシンを選択した。その他のウイルスや濾過膜は、実施例1と同様のものを使用した。
【0032】
まず、グリシンのモル濃度をそれぞれ0.0mol/L、0.03mol/L、0.1mol/L、0.3mol/L、1.0mol/L、および2.0mol/Lに調整したグリシン溶液(pH6.0)を50mLずつ準備し、ヒトパルボウイルスB19溶液を1/100量だけ添加した後、室温で2時間インキュベートしたものをサンプル溶液とした。
【0033】
つぎに、上記各濃度のサンプル溶液に対し、Planova35Nを用いてデッドエンド方式により濾過処理を行った。このときの圧力は0.8kgf/cmに保持し、室温で行った。この処理後のサンプル溶液について、実施例1と同様の検出法によりヒトパルボウイルスB19のLRVを測定した。この結果を図3に示す。
【0034】
図3に示すように、グリシンが低濃度の領域では、グリシン濃度が高くなるに従ってLRVは高くなり、ウイルスの除去効果が向上している。グリシン濃度が0.1mol/Lのときに、LRVが6.0を超えて、グリシン濃度が0.3mol/Lのときに、LRVが約7.5と最大値を示した。0.3mol/Lよりも高い濃度の領域では、グリシン濃度が1.0mol/Lの場合、LRVは約6.0となり、グリシン濃度が2.0mol/Lの場合、LRVは約5.5になった。実施例2の結果によれば、グリシンの濃度はウイルスのLRVに影響を与えると考えられ、少なくともグリシン濃度が0.1〜2.0mol/Lの範囲では、LRVが5.5以上を示し、グリシン濃度が0.3mol/Lの場合に7.5以上を示して高い凝集効果が認められる。
【0035】
【実施例3】
「溶液のpHがウイルスの凝集に及ぼす影響を確認する実験」
本実施例3では、サンプル溶液のpHがウイルスの凝集効果に与える影響を調査するため、サンプル溶液のpHを変化させてウイルスのLRVを測定する実験を行った。本実施例3で用いるアミノ酸溶液は、実施例1でウイルスの除去効果が高かったグリシンを選択し、その濃度は0.3mol/Lに設定した。そして、pHを3.0、4.0、6.0、7.0、8.0および9.0に調整したサンプル溶液をそれぞれ用意した。その他、サンプル溶液の作成方法および濾過膜による濾過処理方法は、実施例1と同様の条件で行った。図4に実施例3の結果を示す。
【0036】
図4は、サンプル溶液のpH値に対するヒトパルボウイルスB19のLRVを示すグラフである。図4に示すように、サンプル溶液のpHが6.0のときにLRVは最大値約7.5を示し、それより酸性側の領域およびアルカリ側の領域ではLRVは減少する傾向を示した。つまり、サンプル溶液がpH4.0ではLRVが約2.5となり、pH3.0ではLRVが約1.0にまで減少した。また、アルカリ側の領域でもアルカリ性が強くなるほどLRVが減少し、pH7.0ではLRVが約6.0であり、pH8.0ではLRVが約4.5を保持してウイルスの除去効果が認められた。pH9.0ではLRVが1.0以下となりウイルスの除去効果はほとんど認められなかった。本実施例3の結果により、ウイルスの凝集除去の効果は、グリシン溶液のpHに依存することがわかる。本実施例3の場合、pHが4〜8が好ましく、pH6.0近傍がより好ましい。
【0037】
ここで、サンプル溶液のpHが6.0近傍の場合に、ヒトパルボウイルスB19の除去効果が特に高い理由について検討する。ヒトパルボウイルスB19は、VP1、VP2およびNSといったタンパクによりカプシドが形成されている。これらタンパクの推定される等電点は、VP1が6.09であり、VP2が6.40であり、NSが5.75であり、6.0近傍に集中している。これらのことからヒトパルボウイルスB19の凝集は、等電点沈殿効果によるものと考えられる。すなわち、ヒトパルボウイルスB19の等電点にサンプル溶液のpHを合わせると、ウイルス全体の電荷が中和されて凝集しやすくなり、この条件下でグリシン等のアミノ酸を添加することにより、ヒトパルボウイルスB19の凝集が促進されると考えられる。
【0038】
【実施例4】
「濾過膜の孔径がウイルス除去効果に及ぼす影響を確認する実験」
本実施例4では、濾過膜の材質、平均孔径および吸着性の違いがウイルスの除去効果へ与える影響を調査するための実験を行った。本実施例4で用いる濾過膜は、平均孔径35nmのPlanova35N(旭化成株式会社製)、平均孔径50nmのviresolve NFR(日本ミリポア株式会社)、平均孔径75nmのPlanova75N(旭化成株式会社製)および平均孔径220nmのMillex−GS(日本ミリポア株式会社)をそれぞれ用意した。また、Planova35NおよびPlanova75Nはセルロース製であり、viresolve NFRおよびMillex−GSはPVDF(Polyvinylidene Fluoride:ポリビニリデンフルオライド)製である。その他、サンプル溶液の作成方法および濾過膜による濾過処理方法は、実施例1と同様の条件で行った。図5に本実施例4の結果を示す。
【0039】
図5は、濾過膜の孔径に対するヒトパルボウイルスB19のLRVを示している。図5に示すように、濾過膜の孔径が大きくなるに従ってLRVは減少する傾向を示した。ただ、直線的に減少するのではなく、指数関数的に減少した。具体的には、viresolve NFRは、平均孔径が50nmであり、ヒトパルボウイルスB19のサイズの2倍以上大きな孔径を有しているが、LRVが約6.5と極めて高い除去率を示した。さらに、平均孔径がヒトパルボウイルスB19のサイズの4倍近い大きさである75nmのPlanova75Nであっても、LRVが約4.0と高い除去率が得られ、平均孔径がヒトパルボウイルスB19のサイズの10倍ほども大きいMillex−GS(220nm)であっても、LRVは1程度を示した。ウイルスの除去率は凝集体のサイズと濾過膜の平均孔径に依存することが報告されているが、本実施例4によるウイルス凝集体の大きさを推定すると、Planova35NおよびPlanova75Nのデータより、ウイルス凝集体の大きさはそれぞれ平均64nm、77nmと考えられる。ウイルスの除去率と濾過膜の平均孔径が直線的な比例関係にないのは、それらの凝集体のサイズ分布が広いためと考えられる。このように濾過膜の孔径は小さいほど除去効果があるのはもとより、ヒトパルボウイルスB19が相当に大きな凝集体を形成していることが確認できた。
【0040】
また、ヒトパルボウイルスB19の濾過膜への吸着性を調べるため、Planova35Nを用いて吸着実験を行った。この吸着実験は、ヒトパルボウイルスB19溶液内にPlanova35Nを入れて撹拌した後にPlanova35Nを取り除き、その撹拌前後におけるヒトパルボウイルスB19の量を測定した。その結果、吸着処理前と吸着処理後とを比較すると、ヒトパルボウイルスB19のLRVが0.5しか変化しておらず、濾過膜に吸着された状況は認められなかった。これによりウイルスが濾過膜に吸着されて除去されているのではないことが認められた。
【0041】
【実施例5】
「タンパク質が存在する場合のウイルスの凝集効果の確認実験」
本実施例5では、実際にタンパク質が存在する場合におけるウイルスの凝集効果を確認する実験を行った。本実施例5で用いるタンパク質は、人免疫グロブリンおよびアルブミンを使用し、これらを0.3mol/Lのグリシン溶液に溶解させて、5%グロブリン溶液および5%アルブミン溶液を作成した。そして、これらの溶液を50mLずつ準備し、ヒトパルボウイルスB19溶液を1/100量だけ添加した後、室温で2時間インキュベートしたものをサンプル溶液とした。前記各実施例と同様に、これらのサンプル溶液をPlanova35Nを用いてデッドエンド方式で濾過処理を行った。この実験によるウイルスのLRVの結果を図6に示す。なお、比較のため、タンパク質を含まない0.3mol/L濃度のグリシン溶液のLRVも示す。
【0042】
図6に示すように、タンパク質を含まないグリシン溶液(コントロール)のLRVは約7.5であるが、5%グロブリンが存在すると、LRVは約5.0になり、5%アルブミン存在下では、LRVは約2.0になる。これにより、血漿タンパクであるグロブリン、アルブミンに関しては共存させるタンパク質濃度をできるだけ低濃度にする方が高いウイルスの除去効果を期待できる。ところで本実施例5で使用したタンパク質濃度は5%であり、かなり高い濃度にしている。従って、実際の処理においては、さらにタンパク質濃度が低くなると考えられ、除去効果が向上すると予想される。
【0043】
なお、本実施例5では、人免疫グロブリンおよびアルブミンの添加により溶液のタンパク質濃度が高くなっている。このため、ヒトパルボウイルスB19DNAの検出には、タンパク質分解酵素であるproteinase KとSDS(Sodium Dodecyl Sulfate:ドデシル硫酸ナトリウム)によりタンパク質を分解し、phenol/chloroformで抽出したDNA(Deoxyribo Nucleic Acid:デオキシリボ核酸)をNS(NonStructural protein:非構造タンパク)領域に対するnested PCR(Polymerase Chain Reaction)法で分析した。
【0044】
【実施例6】
「他のウイルスに対する凝集効果の確認実験」
本実施例6では、ヒトパルボウイルスB19以外のウイルスに対するアミノ酸の凝集効果を確認する実験を行った。他のウイルス溶液としては、EMC(EncephaloMyoCarditis Virus)溶液およびPPV(PorcineParvo Virus)溶液を用意し、さらにこれらにヒト血漿を含有した溶液を用意した。なお、EMCおよびPPVは、培養液を凍結融解により細胞を破壊してウイルス溶液とした。各ウイルス溶液中のウイルス含量は、それぞれ108.3TCID50/mL、108.4TCID50/mLである。
【0045】
本実施例6では、0.3mol/Lのグリシン溶液(pH6.0)を50mLずつ準備し、上記4種類のウイルス溶液をそれぞれ1/100量だけ添加した後、室温で2時間インキュベートしたものをサンプル溶液とした。そして、これらのサンプル溶液をPlanova35Nによりデッドエンド方式で濾過処理を行った。この処理後のEMCおよびPPVのLRVを図7に示す。
【0046】
図7に示すように、EMCのLRVは3.2以上、PPVのLRVは4.0以上であり、ヒト血漿を含む場合もEMCではLRVが3.7以上、PPVのLRVは3.1以上となり、いずれのウイルスも検出限界以下まで減少した。EMCのサイズは、28〜30nmであり、PPVのサイズは18〜25nmであり、いずれも濾過膜の平均孔径35nmより小さいが、確実に除去されていることが認められる。従って、ヒトパルボウイルスB19以外のウイルスに関しても本実施形態における濾過処理により凝集除去できることが認められる。
【0047】
なお、EMCおよびPPVの検出に際しては、96穴プレートにて培養した4×10cell/0.05mLのVero C1008細胞およびCPK細胞に、MEM培地で5倍段階希釈した検体を0.1mL接種し、6〜10日後に顕微鏡下でCPEの確認を行い、Karber法により50% Tissue Culture Infectious Dose(TCID50)を算出した。
【0048】
以上より、本実施形態によれば、人免疫グロブリンとウイルスとが共存する溶液において、人免疫グロブリンに影響を与えることなく、ウイルスだけを凝集させて、濾過膜によって除去することができる。
【0049】
また、前記溶液に加えるアミノ酸として、グリシン、アラニン、セリン、スレオニンおよびプロリンのいずれかを選択することにより、実用的であって、かつ、効果的にウイルスを凝集させて除去することができる。
【0050】
さらに、前記溶液に加えるグリシンのモル濃度を0.1mol/L〜2.0mol/Lにすることにより、ウイルスを凝集除去することができる。
【0051】
また、本実施形態におけるウイルス除去方法は、中性付近のpHにおいてアミノ酸共存下でウイルスが凝集することを利用していることから、人免疫グロブリン製剤に限らず、他の血漿分画製剤にも適用可能である。
【0052】
なお、本実施形態の各構成は前述したものに限るものではなく、適宜変更することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、タンパク質およびウイルスが共存する溶液において、目的タンパク質の性質および収率に影響を与えることなく、ウイルスだけを凝集させて、濾過膜によって除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る濾過によるウイルスの除去方法を示すフローチャート図である。
【図2】 本実施形態において、溶液に加えるアミノ酸の種類に対するヒトパルボウイルスB19の対数減少率LRVの関係を示すグラフである。
【図3】 本実施形態において、グリシンのモル濃度に対するヒトパルボウイルスB19の対数減少率LRVの関係を示すグラフである。
【図4】 本実施形態において、溶液のpHに対するヒトパルボウイルスB19の対数減少率LRVの関係を示すグラフである。
【図5】 本実施形態において、濾過膜の平均孔径に対するヒトパルボウイルスB19の対数減少率LRVの関係を示すグラフである。
【図6】 本実施形態において、タンパク質存在下におけるヒトパルボウイルスB19の対数減少率LRVを示すグラフである。
【図7】 本実施形態において、ウイルスがEMCおよびPPVの場合の濾過処理による対数減少率LRVを示す表である。

Claims (3)

  1. タンパク質およびノンエンベロープウイルスが共存する溶液から濾過により前記ノンエンベロープウイルスを除去する方法であって、前記溶液のpHを4〜8に調整するとともに、前記溶液に対してアミノ酸を加えることにより前記溶液中のノンエンベロープウイルスを凝集させ、濾過膜で濾過するノンエンベロープウイルス凝集条件下での濾過によるノンエンベロープウイルスの除去方法。
  2. 請求項1において、前記アミノ酸は、少なくともグリシン、アラニン、セリン、スレオニンおよびプロリンのいずれかであるノンエンベロープウイルス凝集条件下での濾過によるノンエンベロープウイルスの除去方法。
  3. 請求項2において、前記グリシンのモル濃度0.1mol/L〜2.0mol/Lであるノンエンベロープウイルス凝集条件下での濾過によるノンエンベロープウイルスの除去方法。
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