以下、添付図面を参照しながら本発明による半導体レーザ素子及び半導体レーザ素子アレイの実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明による半導体レーザ素子アレイの第1実施形態の構成を示す概略斜視図である。図1を参照すると、半導体レーザ素子アレイ1は、複数の半導体レーザ素子3が一体に形成されてなる。半導体レーザ素子アレイ1が備える半導体レーザ素子3の数は幾つでもよく、一つのみ備える場合はアレイではなく単体の半導体レーザ素子となる。半導体レーザ素子アレイ1は、所定の軸Aの方向に並んで設けられ、互いに対向する光出射面1a及び光反射面1bを有している。光出射面1a上には、複数の半導体レーザ素子3それぞれのレーザ光出射端4eが水平方向に並んで配置されている。レーザ光出射端4eからは、所定の軸Aの方向にレーザ光が出射される。
複数の半導体レーザ素子3のそれぞれは、リッジ状に成形された凸部25を有している。凸部25は、第1の部分25a及び第2の部分25bからなる。第1の部分25aの一端は光出射面1aに達しており、第1の部分25aの他端は第2の部分25bの一端と繋がっている。第2の部分25bの他端は、光反射面1bに達している。第1の部分25a及び第2の部分25bは、その長手方向が光出射面1a及び光反射面1bに対して斜めになるように設けられている。また、第1の部分25a及び第2の部分25b同士も、互いの長手方向が交差するように繋がっている。半導体レーザ素子3には、凸部25に対応して屈折率型の導波路が生成される。レーザ光出射端4eは、この導波路の光出射面1a側の端面である。複数の半導体レーザ素子3は、所定の軸Aの方向と交差する方向に並んで配置されて一体に形成されている。
図2(a)及び図2(b)は、図1に示した半導体レーザ素子アレイ1のI−I断面及びII−II断面をそれぞれ示す拡大断面図である。図2(a)及び図2(b)を参照すると、半導体レーザ素子アレイ1を構成する半導体レーザ素子3は、基板11を備えている。また、半導体レーザ素子3は、第2導電型半導体層であるn型クラッド層12、第2光ガイド層13、量子井戸構造を有する活性層14、第1光ガイド層15、並びに第1導電型半導体層であるp型クラッド層16を備えている。n型クラッド層12、第2光ガイド層13、活性層14、第1光ガイド層15、及びp型クラッド層16は、基板11上に順に積層されている。このうち、p型クラッド層16及び第1光ガイド層15は第1の半導体部31を構成しており、基板11、n型クラッド層12、及び第2光ガイド層13は第2の半導体部32を構成している。第1の半導体部31にはリッジ部9が設けられている。リッジ部9の外側の層には、p型クラッド層16と電気的に接続されるp型キャップ層17が設けられている。リッジ部9は、基板11の光出射面1a側の面上に設けられた第1の部分9aと、基板11の光反射面1b側の面上に設けられた第2の部分9bとを有している。凸部25の第1の部分25aは、リッジ部9の第1の部分9aとp型キャップ層17とにより構成される。凸部25の第2の部分25bは、リッジ部9の第2の部分9bとp型キャップ層17とにより構成される。
リッジ部9の第1の部分9aの両側には、第1の部分9aの両側面に隣接して薄厚部10aが形成されている。薄厚部10aは、第1の半導体部31がエッチングされることにより形成された比較的薄い部分であり、基板11の光出射面1a側の面上に設けられる。同様に、リッジ部9の第2の部分9bの両側には、第2の部分9bの両側面に隣接して薄厚部10bが形成されている。薄厚部10bは、第1の半導体部31がエッチングされることにより形成された比較的薄い部分であり、基板11の光反射面1b側の面上に設けられる。本実施形態では、薄厚部10bの厚さtbは薄厚部10aの厚さtaよりも厚く形成されている。
p型キャップ層17よりも更に外側の層には外部からの電流を注入するp側電極層19が設けられている。p型キャップ層17とp側電極層19との間には絶縁層18が設けられており、絶縁層18は凸部25上の部分に開口部18aを有している。p側電極層19は開口部18aにおいてp型キャップ層17にのみ電気的に接触するようになっているので、外部からの電流注入はp型キャップ層17にのみ限定してなされる。また、基板11の各半導体層と反対側の面上にはn側電極層20が形成されている。なお、基板11の半導体材料としては、例えばn型GaAsが用いられる。また、基板11上に積層される各層の材料としては、例えば表1に示す組み合わせ1〜3が好適である。
基板11上に積層される各層の具体的な材料組成としては、例えば表2に示す組成を挙げることができる。また、各層の好適な厚さを表2にあわせて示す。
また、p型キャップ層17は、例えばp−GaAsからなる。p側電極層19は、例えばTi/Pt/Auからなる。n側電極層20は、例えばAuGe/Auからなる。絶縁層18は、例えばSiN、SiO2、Al2O3のうち少なくとも一種類の材料からなる。
p型キャップ層17に電流が注入されると、凸部25の第1の部分25a及び第2の部分25bに対応する活性層14の領域(換言すれば、リッジ部9に対応する領域)が活性領域となる。このとき、活性層14には実効的な屈折率差が生じるため、リッジ部9の第1の部分9aに対応する活性層14内に屈折率型の導波路4(4a)が生成され、リッジ部9の第2の部分9bに対応する活性層14内に屈折率型の導波路4(4b)が生成される。
ここで、図3及び図4を参照して第1の半導体部31について説明する。図3は第1の半導体部31を含む積層体8の斜視図、図4(a)は積層体8の平面図、図4(b)は図4(a)に示した積層体8のIII−III断面を示す断面図、図4(c)は図4(a)に示した積層体8のIV−IV断面を示す断面図である。積層体8は、n型クラッド層12、第2光ガイド層13、活性層14、第1光ガイド層15、並びにp型クラッド層16からなる。
第1の半導体部31には、光出射面1a及び光反射面1bに達する凸状のリッジ部9が設けられている。リッジ部9は第1の部分9a及び第2の部分9bからなる。リッジ部9の第1の部分9aの一端は光出射面1aに達しており、第1の部分9aの他端は第2の部分9bの一端と繋がっている。第2の部分9bの他端は、光反射面1bに達している。また、第1の半導体部31は、リッジ部9の第1の部分9aに沿った薄厚部10aと、リッジ部9の第2の部分9bに沿った薄厚部10bとを有する。先に述べたように、薄厚部10a及び10bは第1の半導体部31がエッチングされることにより形成される。そして、エッチング時間が調整されることにより、薄厚部10bの厚さtbが薄厚部10aの厚さtaよりも厚く形成される。
リッジ部9の第1の部分9aは、端面9eと、互いに対向する一対の側面9g及び9hとを有している。一対の側面9g及び9hは、それぞれリッジ部9の第1の部分9aの領域を規定しており、第1の部分9aと薄厚部10aとの境界となっている。端面9eは、光出射面1a上にある。側面9gは端面9eの一端からリッジ部9の第2の部分9bまで延び、側面9hは端面9eの他の一端からリッジ部9の第2の部分9bまで延びている。側面9g及び9hは、厚さ方向から見た平面図において、光出射面1a及び光反射面1bに対し相対角度θ1を有するように設けられている。
リッジ部9の第2の部分9bは、端面9fと、互いに対向する一対の側面9i及び9jとを有している。一対の側面9i及び9jは、それぞれリッジ部9の第2の部分9bの領域を規定しており、第2の部分9bと薄厚部10bとの境界となっている。端面9fは、光反射面1b上にある。側面9iは端面9fの一端から第1の部分9aの側面9gまで延び、側面9jは端面9fの他の一端から第2の部分9bの側面9hまで延びている。側面9i及び9jは、厚さ方向から見た平面図において、光出射面1a及び光反射面1bに対し相対角度θ2(≠θ1)を有するように設けられている。
活性層14にはリッジ部9の形状に対応した導波路4が生成される。ここで、図5は、活性層14内に生成される導波路4の平面図である。導波路4は、リッジ部9への電流注入により生じる活性層14内部での実効的な屈折率分布によって形成される屈折率型導波路である。本実施形態では、活性層14にはリッジ部9の第1の部分9a及び第2の部分9bにそれぞれ対応して導波路4の第1の部分4a及び第2の部分4bが生成される。導波路4の第1の部分4aには、リッジ部9の端面9eに対応してレーザ光出射端4eが生成される。また、導波路4の第1の部分4aには、リッジ部9の側面9g、9hそれぞれに対応して導波路4の側面の一部となる一対の側面4g、4hが生成される。導波路4の第2の部分4bには、リッジ部9の端面9fに対応してレーザ光反射端4fが生成される。また、導波路4の第2の部分4bには、リッジ部9の側面9i、9jそれぞれに対応して導波路4の側面の他の一部となる一対の側面4i、4jが生成される。レーザ光出射端4e及びレーザ光反射端4fは、活性層14のへき開面の一部であり、レーザ光Lに対する共振面として機能する。また、側面4g〜4jは、導波路4内外の屈折率差によって生じる面であり、屈折率が連続的に変化している場合にはそれぞれが或る一定の厚さを有してもよい。側面4g〜4jは、導波路4内で発生したレーザ光Lを当該側面への入射角度によって選択的に透過又は反射させる反射面として機能する。
導波路4の第1の部分4aにおける側面4g及び4hと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θ1(すなわち、リッジ部9の第1の部分9aにおける側面9g及び9hと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θ1)は、導波路4の第1の部分4aの側面4g、4hにおける全反射臨界角θcaに基づいて決定される。ここで、導波路4の側面における全反射臨界角とは、屈折率型導波路である導波路4の内外の実効的な屈折率差によって規定される全反射臨界角である。また、全反射臨界角θcaは、第1の半導体部31の薄厚部10aの厚さtaに依存する。相対角度θ1が全反射臨界角θcaに基づいて決定されることにより、導波路4の第1の部分4aの一対の側面4g、4hが、光出射面1a側または光反射面1b側から所定の軸Aの方向に沿って入射するレーザ光Lを全反射させる。
また、導波路4の第2の部分4bにおける側面4i及び4jと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θ2(すなわち、リッジ部9の第2の部分9bにおける側面9i及び9jと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θ2)は、導波路4の第2の部分4bの側面4i、4jにおける全反射臨界角θcbに基づいて決定される。ここで、全反射臨界角θcbは第1の半導体部31の薄厚部10bの厚さtbに依存するが、薄厚部10aの厚さtaと薄厚部10bの厚さtbとが互いに異なることにより、側面4i、4jにおける全反射臨界角θcbは側面4g、4hにおける全反射臨界角θcaとは異なる値となる。相対角度θ2が全反射臨界角θcbに基づいて決定されることにより、導波路4の第2の部分4bの一対の側面4i、4jは、光出射面1a側または光反射面1b側から所定の軸Aの方向に沿って入射するレーザ光Lを全反射させる。
図5に示すように、レーザ光反射端4fにおいて所定の軸Aの方向に沿って略垂直に反射したレーザ光Lは、第2の部分4bの側面4jに角度θ2で入射し、全反射する。そして、レーザ光Lは側面4iに角度θ2で入射し、全反射する。側面4iにおいて反射したレーザ光Lは第1の部分4aの側面4gに角度θ1で入射し、全反射する。そして、レーザ光Lは側面4hに角度θ1で入射し、全反射する。こうして、側面4g〜4jで全反射したレーザ光Lは所定の軸Aの方向に沿って進み、レーザ光出射端4eに達する。レーザ光出射端4eに達したレーザ光Lの一部は、レーザ光出射端4eを透過して外部へ出射される。また、他のレーザ光Lはレーザ光出射端4eにおいて所定の軸Aの方向に沿って略垂直に反射し、再び側面4g〜4jで全反射してレーザ光反射端4fに戻る。このようにして、導波路4内のレーザ光Lは、レーザ光出射端4eとレーザ光反射端4fとの間を往復し、共振することとなる。
なお、導波路4の第1の部分4aの長さ及び側面4g及び4h同士の間隔は、レーザ光出射端4eとレーザ光反射端4fとの間で共振するレーザ光Lが、第1の部分4aの一対の側面4g及び4hのそれぞれにおいて同じ回数反射するように設けられる。同様に、導波路4の第2の部分4bの長さ及び側面4i及び4j同士の間隔は、レーザ光出射端4eとレーザ光反射端4fとの間で共振するレーザ光Lが、第2の部分4bの一対の側面4i及び4jのそれぞれにおいて同じ回数反射するように設けられる。
ここで、レーザ光Lが上記した光路に限定されるしくみについて説明する。図6は、側面4hに様々な入射角θiで入射するレーザ光L1〜L3について説明するための図である。なお、図6において、側面4hを側面4gに置き換えても同様の作用が得られる。また、側面4hを側面4iまたは4jに、レーザ光出射端4eをレーザ光反射端4fに、角度θ1を角度θ2にそれぞれ置き換えても、同様の作用が得られる。
図6を参照すると、側面4hに角度θ1(>θca)と等しい入射角θiで入射したレーザ光L1は、側面4hにおいて全反射し、レーザ光出射端4eに対し所定の軸Aの方向に沿って垂直に入射する。そして、レーザ光L1は、レーザ光出射端4eにおいて反射したのち、同一の光路を辿って戻る。従って、レーザ光L1は同一光路上を共振することとなる。
これに対し、側面4hに角度θ1よりも小さな入射角θi=θ1−Δθで入射したレーザ光L2は、θ1−Δθが全反射臨界角θcaよりも小さいと、側面4hを透過することとなり、共振しない。また、側面hに角度θ1よりも大きな入射角θi=θ1+Δθで入射したレーザ光L3は、入射角θiが全反射臨界角θcaよりも大きいために側面4hにおいて全反射するが、レーザ光出射端4eにおいて反射した後、再度側面4hに入射する際に入射角θiがθi=θ1−Δθとなる。θ1−Δθの値が全反射臨界角θcaよりも小さいと、レーザ光L3も、結局側面4hを透過することとなり、共振しない。このように、側面4h(または側面4g)においては、Δθがθ1−Δθ≧θcaを満たす場合に入射角θi(θ1+Δθ≧θi≧θ1−Δθ)で側面4h(4g)に入射するレーザ光Lのみが選択的に共振することとなる。また、同様に、側面4i、4jにおいては、Δθがθ2−Δθ≧θcbを満たす場合に入射角θi(θ2+Δθ≧θi≧θ2−Δθ)で側面4i、4jに入射するレーザ光Lのみが選択的に共振することとなる。
ここで、図7(a)は、レーザ光Lの角度成分と第1の部分4aの側面4g及び4hにおける反射率との相関を示すグラフである。なお、図7(a)において、θca1は先に述べたθiの下限であり、θcaと一致する。また、θca2はθiの上限であり、θ1+(θ1−θca)と一致する。また、図7(a)に基づく以下の作用は、第2の部分4bにおいても同様である。
図7(a)を参照すると、θ1−Δθ≧θca1の範囲、及びθ1+Δθ≦θca2の範囲では、側面4g及び4hにおいて反射率が1すなわちレーザ光Lが全反射していることがわかる。そして、この範囲以外では、反射率が急激に減少しておりレーザ光Lが側面4g及び4hを透過していることがわかる。すなわち、レーザ光Lの角度θがθ<θca1またはθ>θca2である場合には、導波路4の第1の部分4aにおいて除去されることとなる。なお、このように、第1の部分4aにおいてはレーザ光Lの角度成分のうち所定範囲以外の成分が除去されることから、図7(a)を、レーザ光Lの角度成分に対する第1の部分4aのフィルタ特性ということもできる。
図7(b)は、θ1をθcaにより近づけた場合の、レーザ光Lの角度成分と第1の部分4aの側面4g及び4hにおける反射率との相関を示すグラフである。図7(b)に示すように、θ1をθcaに近づけると、側面4g及び4hにおいて全反射されるレーザ光Lの角度範囲(=2Δθ)がより狭くなる。しかし、側面4g及び4hにおける全反射臨界角θcaや相対角度θ1は、注入キャリア密度の増大や温度上昇に伴う実効屈折率の変化、或いは製造誤差等によって設計値に対しずれが生じる場合が多い。特にGaAs系半導体では、活性層における屈折率の温度変化率は導波路内外の屈折率差に対して約一桁小さいだけなので、例えば電流注入に伴う素子の温度変化が10℃以上あれば(通常は10℃〜30℃)、導波路内外の屈折率差に無視できない影響を及ぼし、全反射臨界角が変化する。また、キャリア密度が変化すると、プラズマ効果によって実効屈折率が変化する。従って、図7(a)に示したように、θ1とθcaとの差θ1−θcaを余裕をもって設定することが望ましい。
図8(a)〜図8(c)は、本実施形態の半導体レーザ素子3における、レーザ光Lの角度成分に対する導波路4のフィルタ特性を説明するためのグラフである。図8(a)及び図8(b)は、それぞれレーザ光Lの角度成分に対する第1の部分4a及び第2の部分4bのフィルタ特性を示すグラフである。また、図8(c)は、レーザ光Lの角度成分に対する導波路4全体でのフィルタ特性を示すグラフである。先に述べたように、導波路4の第1の部分4aでは、θ1とθcaとの差θ1−θcaが余裕をもって設定されるので、レーザ光Lの角度範囲が或る一定の幅2Δθ1を有する(図8(a))。導波路4の第2の部分4bもまた、θ2とθcbとの差θ2−θcbが余裕をもって設定されるので、レーザ光Lの角度範囲が或る一定の幅Δθ2を有する(図8(b))。そして、先に述べたように第1の部分4aにおける全反射臨界角θcaと第2の部分4bにおける全反射臨界角θcbとは互いに異なるため、差θ1−θcaと差θ2−θcbとを略同じ値に設定すると、全反射臨界角θcaと全反射臨界角θcbとの相違分だけ角度範囲が互いにずれることとなる。導波路4内を共振するレーザ光Lは第1の部分4a及び第2の部分4bの双方においてフィルタリングされるため、導波路4全体でのフィルタ特性は、図8(c)に示すグラフのように、第1の部分4aのフィルタ特性(図8(a)のグラフG1)と第2の部分4bのフィルタ特性(図8(b)のグラフG2)とを合成した特性となる。従って、導波路4内を共振するレーザ光Lの角度範囲の幅は、2Δθ1及び2Δθ2よりも狭い幅2Δθ3となる。
このように、本実施形態の半導体レーザ素子3及び半導体レーザ素子アレイ1によれば、レーザ光Lの角度範囲をより狭く制限することができるので、空間横モードがほぼ単一であるレーザ発振(空間横シングルモード)が得られ、レーザ光出射端4eから出射されるレーザ光Lの強度分布は所定の軸Aの方向と平行な方向付近に偏り、その出射パターンは単峰性となる。また、シングルモード型のように導波路幅が制限されないので、導波路4の幅を拡張することによりレーザ光Lの水平方向の出射角をより狭くできるとともに、より強い強度のレーザ光Lを出射することが可能となる。
ここで、半導体レーザ素子アレイ1の製造方法について図9(a)〜図9(d)を参照しながら説明する。図9(a)〜図9(d)は、各製造工程における半導体レーザ素子アレイ1の拡大断面図を示している。まず、n型GaAsの基板11を準備し、基板11上に順に、n型Al0.35Ga0.65Asを1.2μm、ノンドープAl0.15Ga0.85Asを0.4μm、In0.2GaAs量子井戸構造を80Å、ノンドープAl0.15Ga0.85Asを0.4μm、p型Al0.35Ga0.65Asを1.2μm、p型GaAsを0.1μmエピタキシャル成長させ、それぞれn型クラッド層12、第1光ガイド層13、活性層14、第2光ガイド層15、p型クラッド層16、及びp型キャップ層17を形成する(図9(a)参照)。
続いて、p型キャップ層17側にフォトワークによりリッジ部9に対応する形状に保護マスク37を形成し、p型キャップ層17、p型クラッド層16、及び第1光ガイド層15をエッチングすることにより、リッジ部9を含む第1の半導体部31を形成する。このとき、エッチングを活性層14に達しない深さで停止することにより、薄厚部10a(10b)を形成する。また、このとき、薄厚部10a及び薄厚部10bの厚さを、例えばエッチング時間によって制御する。具体的には、薄厚部10a及び薄厚部10bのうち厚い方の厚さにあわせて、第1の半導体部31をエッチングする。そして、厚い方の薄厚部の表面をフォトレジストで被覆し、よりエッチングレートの遅いエッチャントを用いて第1の半導体部31を更にエッチングすることにより、他方(薄い方)の薄厚部を形成する(図9(b)参照)。
続いて、SiN膜といった絶縁材料を結晶表面全体に堆積し、フォトワークによりリッジ部9に対応する位置のSiN膜を除去し、絶縁層18を形成する(図9(c)参照)。続いて、Ti/Pt/Au膜でp側電極層19を結晶表面全体に形成する。また、基板11側の表面の研磨、化学処理を行い、AuGe/Auによりn側電極層20を形成する(図9(d)参照)。こうして、半導体レーザ素子アレイ1(半導体レーザ素子3)が完成する。
続いて、本実施形態の半導体レーザ素子3による効果を説明する。先に述べたように、半導体レーザ素子3によれば、レーザ光Lの角度範囲をより狭く制限することができるので、出射パターンを単峰性とすることができる。また、導波路4の幅を拡張することによりレーザ光Lの水平方向の出射角をより狭くできるとともに、より強い強度のレーザ光Lを出射することが可能となる。
また、本実施形態による半導体レーザ素子3では、光出射面1aと光反射面1bとの間で導波路4内を共振するレーザ光L1が、一対の側面4g及び4h(或いは4i及び4j)のそれぞれにおいて同じ回数反射するように、第1の部分4a及び第2の部分4bそれぞれの長さ及び側面間隔が設定されている。これにより、レーザ光Lは光出射面1a及び光反射面1bの双方において所定の軸Aの方向に沿って略垂直に入射/反射することができる。また、レーザ光Lが導波路4の側面4g〜4jにおいて少なくとも1回ずつ全反射するので、導波路4内において光出射面1aと光反射面1bとを直線で結ぶような光路は存在しない。従って、本実施形態の半導体レーザ素子3によれば、導波路4内のレーザ光Lの光路を好適に制限することができる。
また、本実施形態による半導体レーザ素子3では、導波路4の側面の各部分である側面4g〜4jにおける全反射臨界角θca及びθcbを、側面4g〜4jに対応するリッジ部9の側面9g〜9jのそれぞれに沿った薄厚部10a及び10bの厚さta及びtbを調整することによって任意に設定できる。従って、本実施形態の半導体レーザ素子3によれば、導波路4の側面のうち少なくとも一部分における全反射臨界角が他の部分における全反射臨界角と異なる構成を容易に実現できる。また、半導体レーザ素子3のようなリッジ構造は、構造が比較的単純であり、上記製造方法で示したように半導体の再成長プロセスを必要としない。従って、信頼性が高い半導体レーザ素子3を提供できる。なお、図10に示す半導体レーザ素子3aのように、p側電極層19aが第1の半導体部31のリッジ部9上のみに設けられることによって、導波路4の複数の側面4g〜4jにおける全反射臨界角θca及びθcbをさらに容易に制御することができる。
また、本実施形態による半導体レーザ素子アレイ1によれば、上記効果を有する半導体レーザ素子3を複数備えることによって、大きな強度のレーザ光を出射することができるとともに、レーザ光Lの水平方向の出射角を小さくすることができる。
さらに、本実施形態による半導体レーザ素子アレイ1は、次の効果を有する。すなわち、半導体レーザ素子アレイ1では、第1の半導体部31のリッジ部9によって、活性層14に対して電流が部分的に集中して注入される。これにより、隣り合う半導体レーザ素子3の導波路4同士での光の結合や干渉が生じにくくなる。従って、導波路4同士の間隔を比較的狭くすることが可能になるので、導波路4をより多く設けることができ、大出力で安定したレーザ光を出射することができる。さらに、活性層14に対して電流が部分的に集中して注入されることにより、電気・光変換効率が高まり、無効電流を低減できるので、半導体レーザ素子3の熱発生を低減できる。従って、半導体レーザ素子アレイ1の信頼性が高まり、長寿命化を実現できる。
ここで、実施例として、具体的な数値の一例を示す。半導体レーザ素子3が表2に示したような材料組成からなる場合、導波路4内部の屈折率n1は約3.332となる。そして、薄厚部10a及び10bの厚さta、tbを制御することによって、第1の部分4aの外部における屈折率n2を3.324とし、第2の部分4bの外部における屈折率n3を3.3217とする。このとき、第1の部分4aの側面4g、4hにおける全反射臨界角θcaは、θca=sin−1(n2/n1)=86°となる。また、第2の部分4bの側面4i、4jにおける全反射臨界角θcbは、θcb=sin−1(n3/n1)=85.5°となる。ここで、差Δθ1=θ1−θca及び差Δθ2=θ2−θcbの双方を1°と設定すると、θ1=87°、θ2=86.5°となる。このとき、レーザ光Lの角度範囲幅2Δθ1及び2Δθ2はそれぞれ2°となるが、θcaとθcbとが互いに0.5°離れているため、第1の部分4aにおける角度範囲と第2の部分4bにおける角度範囲とを合成した角度範囲の幅2Δθ3は1.5°となる。
(第1の変形例)
次に、上記実施形態による半導体レーザ素子アレイ1(半導体レーザ素子3)の第1の変形例について説明する。図11は、本変形例による半導体レーザ素子が有する導波路41を示す平面図である。導波路41は、第1〜第4の部分41a〜41dを有する。第1の部分41aは、導波路41の側面の一部分として、互いに対向する一対の側面41g及び41hを有する。第1の部分41aの一端はレーザ光出射端41eとなっており、他端は第2の部分41bの一端と繋がっている。第2の部分41bは、導波路41の側面の他の一部分として、互いに対向する一対の側面41i及び41jを有する。第2の部分41bの他端は第3の部分41cの一端と繋がっている。第3の部分41cは、導波路41の側面の他の一部分として、互いに対向する一対の側面41k及び41lを有する。第3の部分41cの他端は、第4の部分41dの一端と繋がっている。第4の部分41dは、導波路41の側面の他の一部分として、互いに対向する一対の側面41m及び41nを有する。第4の部分41dの他端は、レーザ光反射端41fとなっている。
第1の部分41aの側面41g及び41hは、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θ1を有する。第2の部分41bの側面41i及び41jは、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θ2を有し、側面41g及び41hと角θ1+θ2を成して繋がっている。第3の部分41cの側面41k及び41lは、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θ3を有し、側面41i及び41jと角θ2+θ3を成して繋がっている。第4の部分41dの側面41m及び41nは、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θ4を有し、側面41k及び41lと角θ3+θ4を成して繋がっている。角θ1〜θ4は、互いに異なる角度に設定される。第1の部分41aの側面41g及び41hにおける全反射臨界角θca、第2の部分41bの側面41i及び41jにおける全反射臨界角θcb、第3の部分41cの側面41k及び41lにおける全反射臨界角θcc、及び第4の部分41dの側面41m及び41nにおける全反射臨界角θcdは、θ1〜θ4それぞれがθca〜θcdそれぞれに対して所定角度大きくなるように、薄厚部の厚さ等によって制御される。なお、図11において、補助線Bは光出射面1a及び光反射面1bと平行な補助線である。
レーザ光反射端41fを所定の軸Aの方向に沿って反射したレーザ光Lは、側面41n、41m、41k、41l、41j、41i、41g、41hの順に全反射されることによって、所定の軸Aの方向に沿ってレーザ光出射端41eに入射することとなる。レーザ光出射端41eに達したレーザ光Lの一部はレーザ光出射端41eにおいて反射し、上記と同様の光路を逆に辿ってレーザ光反射端41fに達する。このようにして、レーザ光Lは、レーザ光出射端41eとレーザ光反射端41fとの間を共振する。
本発明による半導体レーザ素子では、本変形例のように、相対角度及び全反射臨界角が互いに異なる部分を導波路側面が幾つ含んでも良い。導波路側面がこのような部分を多く含むほど、レーザ光Lの角度成分に対するフィルタ効果を高めることができる。
(第2の変形例)
次に、上記実施形態による半導体レーザ素子アレイ1(半導体レーザ素子3)の第2の変形例について説明する。図12は、本変形例による半導体レーザ素子が有する導波路42を示す平面図である。導波路42は、第1の部分42a及び第2の部分42bを有する。第1の部分42aは、導波路42の側面の一部分として、互いに対向する一対の側面42g及び42hを有する。第1の部分42aの一端はレーザ光出射端42eとなっており、他端は第2の部分42bの一端と繋がっている。第2の部分42bは、導波路42の側面の他の一部分として、互いに対向する一対の側面42i及び42jを有する。第2の部分42bの他端は、レーザ光反射端42fとなっている。
第1の部分42aの側面42g及び42hは、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θ1を有する。第2の部分42bの側面42i及び42jは、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θ2を有し、側面42g及び42hと角θ1+(π[rad]−θ2)を成して繋がっている。角θ1及びθ2は、互いに異なる角度に設定される。第1の部分42aの側面42g及び42hにおける全反射臨界角θca、及び第2の部分42bの側面42i及び42jにおける全反射臨界角θcbのそれぞれは、θ1及びθ2それぞれがθca及びθcbそれぞれに対して所定角度大きくなるように、薄厚部の厚さ等によって制御される。
レーザ光反射端42fを所定の軸Aの方向に沿って反射したレーザ光Lは、側面
42j、42i、42h、42gの順に全反射されることによって、所定の軸Aの方向に沿ってレーザ光出射端42eに入射することとなる。レーザ光出射端42eに達したレーザ光Lの一部はレーザ光出射端42eにおいて反射し、上記と同様の光路を逆に辿ってレーザ光反射端42fに達する。このようにして、レーザ光Lは、レーザ光出射端42eとレーザ光反射端42fとの間を共振する。
本発明による半導体レーザ素子では、本変形例のように、導波路42の側面の各部分が光出射面1a及び光反射面1bに対して互いに同じ方向に傾いていてもよい。このような構成によっても、上記実施形態による半導体レーザ素子と同様の効果を得ることができる。
(第3の変形例)
次に、上記実施形態による半導体レーザ素子アレイ1(半導体レーザ素子3)の第3の変形例について説明する。図13は、本変形例による半導体レーザ素子が有する導波路43を示す平面図である。導波路43は、第1の部分43aと、第3の部分43cと、第1の部分43a及び第3の部分43cの間に位置する第2の部分43bとを有する。第1の部分43aは、導波路43の側面の一部として、互いに対向する一対の側面43g及び43hを有する。第1の部分43aの一端はレーザ光出射端43eとなっており、他端は第2の部分43bの一端と繋がっている。第2の部分43bは、導波路43の側面の他の一部として、互いに対向する一対の側面43i及び43jを有する。第2の部分43bの他端は、第3の部分43cの一端と繋がっている。第3の部分43cは、導波路43の側面の他の一部として、互いに対向する一対の側面43k及び43lを有する。第3の部分43cの他端は、レーザ光反射端43fとなっている。
第1の部分43aの側面43g及び43hは、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θ1を有する。第2の部分43bの側面43i及び43jは、所定の軸Aの方向に沿って延びており、光出射面1a及び光反射面1bに対して略垂直に延びている。第3の部分43cの側面43k及び43lは、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θ2を有し、側面43g及び43hに対して相対角度θ1+θ2を有する。角θ1及びθ2は、互いに異なる角度に設定される。第1の部分43aの側面43g及び43hにおける全反射臨界角θca、及び第3の部分43bの側面43k及び43lにおける全反射臨界角θccのそれぞれは、θ1及びθ2それぞれがθca及びθccそれぞれに対して所定角度大きくなるように、薄厚部の厚さ等によって制御される。
レーザ光反射端43fを所定の軸Aの方向に沿って反射したレーザ光Lは、側面43l、43kの順に全反射されることによって、所定の軸Aの方向に沿って導波路43の第2の部分43bに達する。レーザ光Lは、第2の部分43bの側面43i及び43jに沿って第2の部分43bを通過する。レーザ光Lは、第1の部分43aにおいて側面43g、43hの順に全反射されることによって、所定の軸Aの方向に沿ってレーザ光出射端43eに入射することとなる。レーザ光出射端43eに達したレーザ光Lの一部はレーザ光出射端43eにおいて反射し、上記と同様の光路を逆に辿ってレーザ光反射端43fに達する。このようにして、レーザ光Lは、レーザ光出射端43eとレーザ光反射端43fとの間を共振する。
本発明による半導体レーザ素子では、本変形例のように、第1の部分43aと第3の部分43cとの間に位置し、所定の軸Aの方向に沿った側面43i及び43jを有する第2の部分43bを有することが好ましい。これにより、レーザ光Lが導波路43内を共振する際の各部分の境目での角度変化を緩和することができるので、各部分の境目におけるレーザ光Lの損失を低減することができる。また、レーザ光出射端43e及びレーザ光反射端43fにおいて所定の軸Aの方向と異なる方向へ出射されるレーザ光L(サイドモード光)を抑制することができる。
(第2の実施の形態)
図14(a)及び図14(b)は、本発明による半導体レーザ素子アレイの第2実施形態の構成を示す断面図である。図14(a)は、本実施形態による半導体レーザ素子アレイの、図1に示したI−I断面と同様の断面における断面図である。また、図14(b)は、本実施形態による半導体レーザ素子アレイの、図1に示したII−II断面と同様の断面における断面図である。
本実施形態の半導体レーザ素子3bと第1実施形態の半導体レーザ素子3との相違点の一つは、薄厚部10の厚さである。本実施形態の半導体レーザ素子3bでは、薄厚部10はリッジ部9のどの部分に沿っているかに拘わらず、均一な厚さを有する。また、本実施形態の半導体レーザ素子3bと第1実施形態の半導体レーザ素子3との相違点の他の一つは、電流ブロック部の有無である。本実施形態の半導体レーザ素子3bは、第1実施形態の絶縁層18に代えて電流ブロック部21a〜21dを備えている。なお、半導体レーザ素子3bの他の構成については、第1実施形態の半導体レーザ素子3の構成と同様なので、詳細な説明を省略する。
電流ブロック部21a〜21dは、リッジ部9に電流を集中的に流すための部分である。電流ブロック部21a〜21dは、例えば第1の半導体部31とは反対導電型の半導体や、或いは絶縁性材料によって構成される。本実施形態では、電流ブロック部21a〜21dは例えばn−GaAs或いはn−AlxGa1−xAs(0<x<0.3)からなる。電流ブロック部21a及び21bは、それぞれリッジ部9の第1の部分9aの側面9g及び9hに沿って薄厚部10上に設けられる(図14(a))。電流ブロック部21c及び21dは、リッジ部9の第2の部分9bの側面9i及び9jに沿って薄厚部10上に設けられる(図14(b))。p側電極層22は、リッジ部9上及び電流ブロック部21a〜21d上にわたって設けられており、リッジ部9上においてp型キャップ層17と接触している。
活性層14には、リッジ部9に対応する部分に集中的に電流が流れることにより、リッジ部9の形状に対応した屈折率型の導波路5が形成される。この導波路5の側面5g〜5jは、導波路5内外の屈折率差によって生じる面であり、屈折率が連続的に変化している場合には或る一定の厚さを有してもよい。
導波路5の第1の部分5aにおける側面5g、5hと光出射面1a及び光反射面1b(図1参照)との相対角度は、側面5g、5hにおける全反射臨界角θcaに基づいて決定される。本実施形態において、全反射臨界角θcaは、電流ブロック部21a及び21bの材料組成に依存する。すなわち、電流ブロック部21a及び21bの材料組成(例えば、n−AlxGa1−xAsの組成比x)を変化させると、電流ブロック部21a及び21bの屈折率が変化する。従って、側面5g、5hにおける実効的な屈折率差が変化するので、全反射臨界角θcaが変化することとなる。
また、導波路5の第2の部分5bにおける側面5i、5jと光出射面1a及び光反射面1b(図1参照)との相対角度は、側面5i、5jにおける全反射臨界角θcbに基づいて決定される。全反射臨界角θcbは、電流ブロック部21c及び21dの材料組成に依存する。従って、電流ブロック部21a、21bの材料組成と電流ブロック部21c、21dの材料組成とを個別に制御することにより、第2の部分5bの側面5i、5jにおける全反射臨界角θcbと第1の部分5aの側面5g、5hにおける全反射臨界角θcaとを互いに異なる任意の値とすることができる。
このように、本実施形態の半導体レーザ素子3bによれば、導波路5の側面5g〜5jにおける全反射臨界角θca(θcb)を、各側面5g〜5jに対応するリッジ部9の側面9g〜9jのそれぞれに沿った電流ブロック部21a〜21dの材料組成を調整することによって任意に設定することができる。従って、本実施形態の半導体レーザ素子3bによれば、導波路5の側面のうち少なくとも一部分における全反射臨界角が他の部分における全反射臨界角と異なる構成を容易に実現できる。特に、本実施形態の半導体レーザ素子3bでは、全反射臨界角θca(θcb)を電流ブロック部21a〜21dの材料組成によって調整できるため、上記第1実施形態のようにエッチング深さによって調整する方法と比較して、より精度よく全反射臨界角θca(θcb)を制御することができる。
なお、本実施形態では薄厚部10の厚さを均一としたが、電流ブロック部の材料組成を均一とし、薄厚部の厚さによって導波路側面の全反射臨界角を制御してもよい。或いは、電流ブロック部の材料組成と薄厚部の厚さとの双方によって導波路側面の全反射臨界角を制御してもよい。
(第3の実施の形態)
図15(a)及び図15(b)は、本発明による半導体レーザ素子アレイの第3実施形態の構成を示す断面図である。図15(a)は、本実施形態による半導体レーザ素子アレイの、図1に示したI−I断面と同様の断面における拡大断面図である。また、図15(b)は、本実施形態による半導体レーザ素子アレイの、図1に示したII−II断面と同様の断面における拡大断面図である。本実施形態の半導体レーザ素子アレイは、いわゆる埋め込みヘテロ構造を有する複数の半導体レーザ素子3cによって構成されている。
図15(a)及び図15(b)を参照すると、本実施形態の半導体レーザ素子3cは、第1の半導体部33と、第2の半導体部34と、第1の半導体部33及び第2の半導体部34の間に設けられた活性層35とを備えている。第1の半導体部33は、p型クラッド層27及び第1光ガイド層26を含んでいる。第2の半導体部34は、n型半導体からなる基板11、n型クラッド層23、及び第2光ガイド層24を含んでいる。また、半導体レーザ素子3cは、p型キャップ層28を備えている。n型クラッド層23、第2光ガイド層24、活性層35、第1光ガイド層26、p型クラッド層27、及びp型キャップ層28は、順に基板11上に積層されており、積層体7を構成している。積層体7は、図15(a)に示す第1の部分7a及び図15(b)に示す第2の部分7bを有する。第1の部分7aは、一対の側面7g及び7hを有する。側面7g及び7hは、積層体7の厚み方向からみて光出射面1a及び光反射面1bに対し相対角度θ1を有する。第2の部分7bは、一対の側面7i及び7jを有する。側面7i及び7jは、積層体7の厚み方向からみて光出射面1a及び光反射面1bに対し相対角度θ2(≠θ1)を有する。活性層35の側面35g〜35jは、それぞれ積層体7の側面7g〜7jに含まれる。
また、半導体レーザ素子3cは、電流ブロック部29a〜29dと、p側電極層30と、n側電極層20とを備えている。このうち、n側電極層20の構成は上記第1実施形態と同様である。
電流ブロック部29a〜29dは、活性層35へ電流を狭窄して流すための部分である。電流ブロック部29a〜29dは、例えばi−AlxGa1−xAs(0<x<0.3)といったノンドープの半導体材料、或いは絶縁性材料によって構成される。電流ブロック部29a及び29bは、それぞれ積層体7の側面7g及び7hに沿って(すなわち活性層35の側面35g及び35hに沿って)、基板11上に設けられる(図15(a))。また、電流ブロック部29c及び29dは、それぞれ積層体7の側面7i及び7jに沿って(すなわち活性層35の側面35i及び35jに沿って)、基板11上に設けられる(図15(b))。p側電極層30は、積層体7上及び電流ブロック部29a〜29d上にわたって設けられており、積層体7上においてp型キャップ層28と接触している。
活性層35には、側面35g〜35jにおいて活性層内外に屈折率差が生じることにより、導波路2が形成される。この導波路2は、積層体7の第1の部分7aに形成される第1の部分2aと、積層体7の第2の部分7bに形成される第2の部分2bとを有する。導波路2の第1の部分2aは、導波路2の側面の一部分として、活性層35の側面35g及び35hによって規定される側面2g及び2hを有する。側面2g及び2hは、光出射面1a及び光反射面1b(図1参照)に対し相対角度θ1を有する。また、導波路2の第2の部分2bは、導波路2の側面の他の一部分として、活性層35の側面35i及び35jによって規定される側面2i及び2jを有する。側面2i及び2jは、光出射面1a及び光反射面1bに対し相対角度θ2(≠θ1)を有する。
導波路2の第1の部分2aにおける側面2g、2hと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θ1は、側面2g、2hにおける全反射臨界角θcaに基づいて決定される。本実施形態において、全反射臨界角θcaは、電流ブロック部29a及び29bと活性層35との屈折率差に依存する。この屈折率差は、例えば電流ブロック部29a及び29bの材料組成を調整することによって任意に設定することができる。
また、導波路2の第2の部分2bにおける側面2i、2jと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度は、側面2i、2jにおける全反射臨界角θcbに基づいて決定される。全反射臨界角θcbは、電流ブロック部29c及び29dと活性層35との屈折率差に依存する。この屈折率差は、例えば電流ブロック部29c及び29dの材料組成を調整することによって任意に設定することができる。従って、電流ブロック部29a、29bと活性層35との屈折率差、及び電流ブロック部29c、29dと活性層35との屈折率差をそれぞれ制御することにより、導波路2の第1の部分2aの側面2g、2hにおける全反射臨界角θcaと第2の部分2bの側面2i、2jにおける全反射臨界角θcbとを異なる値とすることができる。
このように、本実施形態の半導体レーザ素子3cによれば、導波路2の側面2g〜2jにおける全反射臨界角θca(θcb)を、該側面2g〜2jそれぞれに対応する電流ブロック部29a〜29dと活性層35との屈折率差を調整することによって任意に設定することができる。従って、導波路2の側面のうち少なくとも一部分における全反射臨界角が他の部分における全反射臨界角と異なる構成を容易に実現できる。
(第4の実施の形態)
次に、本発明による半導体レーザ素子アレイの第4実施形態について説明する。図16は、本実施形態の半導体レーザ素子アレイが備える第2の半導体部の一部を示す斜視図である。図17(a)は、図16に示すV−V断面における半導体レーザ素子アレイの拡大断面図である。図17(b)は、図16に示すVI−VI断面における半導体レーザ素子アレイの拡大断面図である。
本実施形態の半導体レーザ素子アレイは、複数の半導体レーザ素子3dを備える。半導体レーザ素子3dは、第2の半導体部61を備える。図16、図17(a)及び図17(b)を参照すると、第2の半導体部61は、n型半導体からなる基板51と、基板51上に積層されたn型クラッド層52と、n型クラッド層52上に積層された第2光ガイド層53とを含んで構成されている。また、第2の半導体部61は、光出射面1a側に配置された第1の面61cと、光反射面1b側に配置された第2の面61dとを有する。第1の面61cは、第2の面61dよりも低く(すなわち、基板51の裏面からの距離が短く)形成されている。
また、第2の半導体部61は、リッジ部61a及び61bを有する。リッジ部61aは、第1の面61cを分割する位置に形成されており、第1の面61cとリッジ部61aとの境界となる一対の側面61g及び61hを有する。側面61g及び61hは、第2の半導体部61の厚み方向からみて光出射面1a及び光反射面1bに対し相対角度θ1を有する。リッジ部61aの一端は光出射面1aまで延びて端面61eとなっており、リッジ部61aの他端はリッジ部61bの一端と繋がっている。また、リッジ部61bは、第2の面61dを分割する位置に形成されており、第2の面61dとリッジ部61bとの境界となる一対の側面61i及び61jを有する。側面61i及び61jは、第2の半導体部61の厚み方向からみて光出射面1a及び光反射面1bに対し相対角度θ2を有する。リッジ部61bの他端は、光反射面1bまで延びて端面61fとなっている。第1の面61cが第2の面61dよりも低く形成されているため、第1の面61cを基準とするリッジ部61aの側面61g、61hの高さhaは、第2の面61dを基準とするリッジ部61bの側面61i、61jの高さhbよりも高くなっている。
第2の半導体部61のリッジ部61a及び61bは、基板51のリッジ部61a及び61bに対応する部分以外をエッチングすることによって形成される。このとき、第1の面61cに対応する基板51の領域と第2の面61dに対応する基板51の領域とで異なるエッチング時間を適用することにより、第1の面61cを第2の面61dよりも低く形成できる。
また、半導体レーザ素子3dは、第1の半導体部60と、第1の半導体部60及び第2の半導体部61の間に位置する活性層54と、p型キャップ層57とを備える。第1の半導体部60は、第1光ガイド層55及びp型クラッド層56を含んで構成される。活性層54、第1光ガイド層55、p型クラッド層56、及びp型キャップ層57は、リッジ部61a及び61b上を含む第2の半導体部61上に順に積層される。
また、半導体レーザ素子3dは、絶縁膜58、p側電極層59、及びn側電極層64を備える。p側電極層59はp型キャップ層57上に設けられており、絶縁膜58はp側電極層59とp型キャップ層57との間に設けられている。絶縁膜58には、第2の半導体部61のリッジ部61a及び61bに対応する領域に第1の電流集中手段として開口部58aが形成されており、開口部58aを介してp側電極層59とp型キャップ層57とが互いに接触している。また、絶縁膜58の開口部58aに対応するp型クラッド層56の領域は、第2の電流集中手段としてZnが拡散されて低抵抗領域56aとなっている。開口部58a及び低抵抗領域56aは、活性層54におけるリッジ部61a及び61b上の領域に電流を流すための手段である。n側電極層64は、第1の面61c及び第2の面61dとは反対側の基板51の面上に設けられている。
活性層54には、絶縁膜58の開口部58aに対応する領域(すなわち、リッジ部61a及び61bに対応する領域)に集中的に電流が流れることにより、リッジ部61a及び61bの形状に対応した導波路6の第1の部分6a及び第2の部分6bが生成される。この導波路6の側面6g〜6jは、活性層54を覆う第1光ガイド層55及びp型クラッド層56と活性層54との屈折率差によって生じる面であり、その平面形状がリッジ部61a及び61bの側面61g〜61jにより規定される。なお、第1光ガイド層55及びp型クラッド層56の屈折率が連続的に変化している場合には、導波路6の側面6g〜6jは或る一定の厚さを有してもよい。
導波路6の第1の部分6aにおける側面6g及び6hと光出射面1a及び光反射面1b(図1参照)との相対角度θ1は、側面6g及び6hにおける全反射臨界角θcaに基づいて決定される。本実施形態において、側面6g及び6hのそれぞれにおける全反射臨界角θcaは、側面6g及び6hに対応するリッジ部61aの側面61g及び61hそれぞれの高さhaに依存する。
また、導波路6の第2の部分6bにおける側面6i及び6jと光出射面1a及び光反射面1b(図1参照)との相対角度θ2は、導波路6の第2の部分6bの側面6i、6jにおける全反射臨界角θcbに基づいて決定される。側面6i及び6jのそれぞれにおける全反射臨界角θcbは、側面6i及び6jに対応するリッジ部61bの側面61i及び61jそれぞれの高さhbに依存する。従って、リッジ部61aの側面61g、61hの高さhaとリッジ部61bの側面61i、61jの高さhbとを個別に制御することにより、第1の部分6aの側面6g、6hにおける全反射臨界角θcaと、第2の部分6bの側面6i、6jにおける全反射臨界角θcbとを、互いに異なる任意の値とすることができる。
このように、本実施形態の半導体レーザ素子3dによれば、導波路6の側面6g〜6jにおける全反射臨界角θca(θcb)を、側面6g〜6jに対応するリッジ部61a(61b)の側面61g〜61jの高さを調整することによって任意に設定することができる。従って、半導体レーザ素子3dによれば、導波路6の側面のうち少なくとも一部分における全反射臨界角が他の部分における全反射臨界角と異なる構成を容易に実現できる。特に、本実施形態の半導体レーザ素子3dは、構造が比較的単純であり、半導体の再成長プロセスを必要としない。従って、信頼性が高い半導体レーザ素子3dを提供できる。
側面6g及び6h(または側面6i及び6j)における全反射臨界角θca(θcb)は、リッジ部61a(61b)上の第1光ガイド層55及びn型クラッド層56の材料組成にも依存する。従って、第1光ガイド層55及びn型クラッド層56の材料組成をリッジ部61a上及びリッジ部61b上のそれぞれにおいて個別に制御することにより、第1の部分6aの側面6g、6hにおける全反射臨界角θcaと第2の部分6bの側面6i、6jにおける全反射臨界角θcbとを互いに異なる任意の値とすることができる。
また、本実施形態では第2の半導体部61のリッジ部61a及び61bが、基板51のリッジ部61a及び61bに対応する部分以外をエッチングすることによって形成されている。リッジ部61a及び61bは、これ以外にも、例えば平坦な基板上に積層されたn型クラッド層または第2光ガイド層をエッチングすることによっても形成可能である。
図18(a)及び(b)は、本実施形態の半導体レーザ素子3dの変形例として、半導体レーザ素子3eの構成を示す断面図である。図18(a)は、図16に示すV−V断面における半導体レーザ素子3eの断面図である。図18(b)は、図16に示すVI−VI断面における半導体レーザ素子3eの断面図である。
本変形例の半導体レーザ素子3eが上記実施形態の半導体レーザ素子3dと異なる点は、電流集中手段の構成である。本変形例の半導体レーザ素子3eは、上記実施形態の絶縁膜58を備えておらず、p型クラッド層56に低抵抗領域56aも形成されていない。本変形例の半導体レーザ素子3eでは、これらの電流集中手段に代えて、高抵抗領域63が形成されている。高抵抗領域63は、第1の半導体部60のうち、リッジ部61a及び61b上を除く領域のp型キャップ層57側に形成されている。高抵抗領域63は、例えば第1の半導体部60にプロトンを注入することにより形成される。本変形例の半導体レーザ素子3eでは、電流集中手段である高抵抗領域63がリッジ部61a及び61b上の活性層54の領域に電流を集中させることによって、活性層54に導波路6が生成される。
本変形例の半導体レーザ素子3eでは、上記実施形態の半導体レーザ素子3dと同様に、リッジ部61a(61b)の側面61g〜61jの高さを調整することによって全反射臨界角θca(θcb)を任意に設定することができる。或いは、第1光ガイド層55及びn型クラッド層56の材料組成を調整することにより、全反射臨界角θca(θcb)を任意に設定することができる。
また、側面6g及び6h(または側面6i及び6j)における全反射臨界角θca(θcb)は、高抵抗領域63と活性層54との間隔にも依存する。従って、高抵抗領域63と活性層54との間隔を、リッジ部61aに沿った部分とリッジ部61bに沿った部分とのそれぞれにおいて個別に調整することによって、全反射臨界角θca(θcb)を任意に設定することもできる。なお、高抵抗領域63と活性層54との間隔は、例えば第1の半導体部60に対するプロトンの打ち込み深さを制御することによって調整することができる。
(第5の実施の形態)
続いて、本発明による半導体レーザ素子アレイの第5実施形態の構成を説明する。図19は、本実施形態の半導体レーザ素子アレイが備える半導体レーザ素子3fの構成を示す断面図である。本実施形態の半導体レーザ素子3fが第1実施形態の半導体レーザ素子3と異なる点は、第1の半導体部71の構成である。半導体レーザ素子3fの第1の半導体部71以外の構成については、第1実施形態の半導体レーザ素子3と同様なので詳細な説明を省略する。
ここで、図20及び図21を参照して第1の半導体部71について説明する。図20は第1の半導体部71を含む積層体80の斜視図、図21(a)は積層体80の平面図、図21(b)は図21(a)に示した積層体80のVII−VII断面を示す断面図である。積層体80は、n型クラッド層12、第2光ガイド層13、活性層14、及び第1の半導体部71からなる。第1の半導体部71は、活性層14上に設けられており、第1光ガイド層15及びp型クラッド層16を含んで構成されている。
第1の半導体部71は、光出射面1a及び光反射面1bに達する凸状のリッジ部73を有する。リッジ部73の一方の端面73eは、光出射面1a上にある。リッジ部73の他方の端面73fは、光反射面1b上にある。また、第1の半導体部71は、リッジ部73の一方の側面73gに沿った薄厚部74aと、リッジ部73の他方の側面73hに沿った薄厚部74bとを有する。薄厚部74a及び74bは、第1の半導体部71がエッチングされることにより形成される。そして、このエッチング時間が調整されることにより、薄厚部74bの厚さtbが薄厚部74aの厚さtaよりも厚く形成される。
リッジ部73の側面73gは、厚さ方向から見た平面図において、光出射面1a及び光反射面1bに対し相対角度θ1を有するように設けられている。また、側面73hは、厚さ方向から見た平面図において、光出射面1a及び光反射面1bに対し相対角度θ2(≠θ1)を有するように設けられている。
活性層14には、リッジ部73の形状に対応した屈折率型の導波路44が形成される。ここで、図22は、活性層14内に形成される導波路44の平面図である。導波路44は、リッジ部73への電流注入により生じる活性層14内部での実効的な屈折率分布によって形成される屈折率型導波路である。本実施形態では、導波路44にはリッジ部73の端面73eに対応してレーザ光出射端44eが形成され、リッジ部73の端面73fに対応してレーザ光反射端44fが形成される。また、導波路44にはリッジ部73の側面73g、73hそれぞれに対応して、一対の側面44g、44hが形成される。側面44g及び44hのそれぞれは、本実施形態において導波路44の側面の一部分及び他の一部分を構成する。レーザ光出射端44e及びレーザ光反射端44fは、活性層14のへき開面の一部であり、レーザ光Lに対する共振面として機能する。また、側面44g及び44hは、導波路44内外の屈折率差によって生じる面であり、屈折率が連続的に変化している場合にはそれぞれが或る一定の厚さを有してもよい。側面44g及び44hは、導波路44内で発生したレーザ光Lを当該側面への入射角度によって選択的に透過又は反射させる反射面として機能する。
導波路44の側面44gと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θ1(すなわち、リッジ部73の側面73gと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θ1)は、導波路44の側面44gにおける全反射臨界角θcaに基づいて決定される。全反射臨界角θcaは、第1の半導体部71の薄厚部74aの厚さtaに依存する。相対角度θ1が全反射臨界角θcaに基づいて決定されることにより、導波路44の側面44gが、光反射面1b側から所定の軸Aの方向に沿って入射するレーザ光Lを全反射させる。
また、導波路44の側面44hと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θ2(すなわち、リッジ部73の側面73hと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θ2)は、導波路44の側面44hにおける全反射臨界角θcbに基づいて決定される。ここで、全反射臨界角θcbは第1の半導体部71の薄厚部74bの厚さtbに依存するが、薄厚部74aの厚さtaと薄厚部74bの厚さtbとが互いに異なることにより、側面44hにおける全反射臨界角θcbは側面44gにおける全反射臨界角θcaとは異なる値となる。相対角度θ2が全反射臨界角θcbに基づいて決定されることにより、導波路44の側面44hが、光出射面1a側から所定の軸Aの方向に沿って入射するレーザ光Lを全反射させる。なお、温度変化等による全反射臨界角θca及びθcbの変動分を吸収するために、θ1とθcaとの差θ1−θca(=Δθ1)、及びθ2とθcbとの差θ2−θcb(=Δθ2)は、所定の大きさをもって設定される。
図22に示すように、レーザ光反射端44fにおいて所定の軸Aの方向に沿って略垂直に反射したレーザ光Lは、側面44gに角度θ1で入射し、全反射する。そして、レーザ光Lは側面44hに角度θ2で入射し、全反射する。こうして、側面44g及び44hで全反射したレーザ光Lは所定の軸Aの方向に沿って進み、レーザ光出射端44eに達する。レーザ光出射端44eに達したレーザ光Lの一部は、レーザ光出射端44eを透過して外部へ出射される。また、他のレーザ光Lはレーザ光出射端44eにおいて所定の軸Aの方向に沿って略垂直に反射し、再び側面44g及び44hで全反射してレーザ光反射端44fに戻る。このようにして、導波路44内のレーザ光Lは、レーザ光出射端44eとレーザ光反射端44fとの間を往復し、共振することとなる。
導波路44では、θ1とθcaとの差θ1−θcaが所定の大きさをもって設定されるので、側面44gにおいて反射可能なレーザ光Lの角度範囲が或る一定の幅2Δθ1を有する(図8(a)参照)。また、θ2とθcbとの差θ2−θcbが所定の大きさをもって設定されるので、側面44hにおいて反射可能なレーザ光Lの角度範囲が或る一定の幅2Δθ2を有する(図8(b)参照)。そして、先に述べたように側面44gにおける全反射臨界角θcaと側面44hにおける全反射臨界角θcbとは互いに異なるため、差θ1−θcaと差θ2−θcbとを略同じ値に設定すると、全反射臨界角θcaと全反射臨界角θcbとの相違分だけ角度範囲が互いにずれることとなる。導波路44内を共振するレーザ光Lは側面44g及び44hの双方においてフィルタリングされるため、導波路44全体でのフィルタ特性は、側面44gのフィルタ特性と側面44hのフィルタ特性とを合成した特性となる。従って、導波路44内を共振するレーザ光Lの角度範囲の幅は、2Δθ1及び2Δθ2よりも狭い幅2Δθ3となる(図8(c)参照)。
このように、本実施形態の半導体レーザ素子3fによれば、第1実施形態の半導体レーザ素子3と同様に、レーザ光Lの角度範囲をより狭く制限することができる。従って、空間横モードがほぼ単一であるレーザ発振(空間横シングルモード)が得られ、レーザ光出射端44eから出射されるレーザ光Lの強度分布は所定の軸Aの方向と平行な方向付近に偏り、その出射パターンは単峰性となる。また、導波路44の幅を拡張することによりレーザ光Lの水平方向の出射角をより狭くできるとともに、より強い強度のレーザ光Lを出射することが可能となる。
なお、本実施形態では、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θ1、θ2を有する側面44g、44hが導波路44の全域にわたって延びているが、光出射面1a及び光反射面1bに対して全反射臨界角に基づく相対角度を有する部分は、導波路44の一部分であってもよい。このような構成であっても、レーザ光Lの角度範囲を狭く制限することができる。
また、先に示した特許文献3に開示された半導体レーザーは、斜光出射用の半導体レーザーであり、レーザー活性領域(すなわち導波路)の両側の屈折率を非対称とすることにより、共振面(光出射面及び光反射面)に垂直なレーザー活性領域から斜め方向にレーザ光を出射するものである。従って、少なくとも導波路側面の相対角度と全反射臨界角との間に相関がない点において、本実施形態の半導体レーザ素子3fとは全く異なるものである。
本発明による半導体レーザ素子及び半導体レーザ素子アレイは、上記各実施形態及び変形例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記各実施形態においてリッジ型や埋め込みヘテロ型などの半導体レーザ素子構造を示したが、本発明はこれらの構造に限られるものではなく、導波路を有する半導体レーザ素子及び半導体レーザ素子アレイであれば適用できる。また、上記各実施形態ではGaAs系半導体レーザ素子を例示したが、本発明の構成は、GaN系やInP系など、他の材料系の半導体レーザ素子にも適用できる。
1…半導体レーザ素子アレイ、1a…光出射面、1b…光反射面、4…導波路、3,3a〜3f…半導体レーザ素子、4e…レーザ光出射端、4f…レーザ光反射端、4a…第1の部分、4b…第2の部分、4g〜4j…側面、8…積層体、9…リッジ部、9a…第1の部分、9b…第2の部分、9g〜9j…側面、9e,9f…端面、10a,10b…薄厚部、11…基板、12…n型クラッド層、13…第2光ガイド層、14…活性層、15…第1光ガイド層、16…p型クラッド層、17…p型キャップ層、18…絶縁層、18a…開口部、19…p側電極層、20…n側電極層、25…凸部、25a…第1の部分、25b…第2の部分、31…第1の半導体部、32…第2の半導体部。