JP4219619B2 - 造粒炭及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、造粒炭及びその製造方法に関する。本発明の造粒炭は、吸着性能及び硬度に優れているので、気相又は液相で、脱臭用、溶剤回収用、自動車燃料蒸散防止用、触媒用などの用途に好ましく使用される。
【0002】
【従来の技術】
近年、吸着操作を効果的に行うため、造粒炭、ブロック、ハニカムなどの形態の活性炭成形体が用いられており、なかでも、コスト、性能、取り扱い性などの点で造粒炭が主に使用されている。造粒炭は、主原料となる炭素質材料にコールタールピッチ、パルプ廃液、廃糖蜜などのバインダーを加えて造粒した後、数100℃で炭化し、さらに、600〜1100℃の高温下で水蒸気や炭酸ガスなどの酸化性ガスの雰囲気下で賦活を行って製造する、いわゆる造粒後賦活により多く製造されている。
【0003】
一方、活性炭にバインダーを加えて造粒する、いわゆる賦活後造粒法による造粒炭も知られている。例えば、特公昭48−7194号公報に、予め4〜40メッシュ(4.75〜0.420mm)の粒状活性炭と耐油性短繊維を混合し、吸着用の容器に充填したものに、ブタジエン−アクリロニトリル系、ウレタン系、スチレン−ブタジエン系などの耐油性エマルジョン型ラテックスを用いて粟おこし状に結合一体化させ、乾燥してブロック状の成形体を作る方法が開示されている。
【0004】
また、特公平5−26747号公報に、予め賦活して得た粉末活性炭に、ベントナイト白土、水ガラスなどの無機系バインダーを加えて造粒し、数100℃で焼成して製造する方法が開示されており、特開平2−80315号公報に、光学的に異方性であるメソカーボンマイクロビーズを原料として賦活した活性炭を、セルロース系樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ベントナイト、コールタールピッチなど少なくとも1種類を用いて造粒する方法が開示されている。
【0005】
さらに、特開昭52−108388号公報には、粉末活性炭にアルギン酸又はカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩などの水溶性の有機系バインダーで造粒し、乾燥固化した後、カルシウム、バリウム、銅、鉄、クロムなどの2価又は3価の金属でナトリウムを置換することで、耐水性に優れ、強度の大きな造粒炭を製造する方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の技術には次のような問題点がある。すなわち、炭素質材料にバインダーを加え、成形した後に炭化、賦活する造粒後賦活法による造粒炭は、高温に加熱する工程での熱ひずみや賦活収縮により、ひび割れや粉化が起こりやすく、特に高度に賦活した高性能品を得ようとする場合、その影響が顕著に現れるため、高い吸着性能と高硬度の両立は困難であった。また、吸着性能、細孔分布などは、原料の選択と賦活条件により通常コントロールされるが、任意に調整することは難しかった。
【0007】
特公昭48−7194号公報に開示された方法は、振動摩耗を抑制するには有効であるが、本発明のような直径2〜6mm程度の通常の造粒炭そのものの成形には適用困難であるのと、容器に詰められているためバルクで使用することができ難い問題があった。しかも、個々の造粒炭の強度を高めるものではない。また、耐油性エマルジョンにカルボキルメチルセルロース(CMC)を混合することもできると記載されているが、CMCの混合の必要性については全く触れられておらず強度向上効果も明らかにされていない。
【0008】
特公平5−26747号公報によれば、賦活後成形法としてベントナイトなどの無機系バインダーを使用する方法が開示され、ベースとなる活性炭を比較的自由に選定できる利点はあるが、灰分となる無機系の不純物が増加するだけでなく、充填密度も必要以上に高くなり、さらに約600℃以上の高温熱処理が必要になるなどの問題がある。
【0009】
特開平2−80315号公報に開示された方法は、メソカーボンマイクロビーズはピッチを精製して造粒炭とするので、もともと高価であるのと、酸化性ガスとの反応速度が遅いため、反応促進剤を添加するか、KOHなどのアルカリで賦活する必要があり、通常の酸化性ガス賦活と比べてコストアップになる。さらに、特開昭52−108388号公報に開示された方法は、バインダーとしてアルギン酸などのナトリウム塩を使用し、後工程で2〜3価の金属と置換する方法であるため、工程が複雑であり、必然的にコストアップになる。したがって、本発明の目的は、吸着性能と硬度に優れた用途の広い有用な造粒炭と工業的に有利な造粒炭の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するためには、活性炭の特性及びバインダーの選定が重要であることに着目し、鋭意検討を重ね本発明に至った。すなわち、本発明は、粉末又は粒状の活性炭にバインダーを加えて造粒した造粒炭であって、活性炭100重量部に、バインダーとして、アクリル系、アクリル・スチレン系からなる群(A群)から選ばれる少なくとも1種類2〜40重量部と、カルボキシメチルセルロース系、ポリビニルアルコール系からなる群(B群)から選ばれる少なくとも1種類0.5〜10重量部を用いて造粒されたマイクロストレングス硬度が15%以上である造粒炭である。
【0011】
また、本発明のもう一つの発明は、粉末又は粒状の活性炭100重量部に、アクリル系、アクリル・スチレン系からなる群(A群)から選ばれる少なくとも1種類2〜40重量部と、カルボキシメチルセルロース系、ポリビニルアルコール系からなる群(B群)から選ばれる少なくとも1種類0.5〜10重量部のバインダーを加えて混練し、造粒して得た造粒炭を200℃以下で乾燥、硬化した後、常温まで冷却することを特徴とする造粒炭の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する活性炭の原料となる炭素質材料としては、賦活することによって活性炭を形成するものであればとくに制限はなく、植物系、鉱物系、天然素材及び合成素材などの等方性の炭素質材料から広く選択することができる。具体的には、植物系の炭素質材料として、木材、木炭、ヤシ殻などの果実殻、鉱物系の炭素質材料として、石油系及び/又は石炭系ピッチ、コークス、天然素材として、木綿、麻などの天然繊維、レーヨン、ビスコースレーヨンなどの再生繊維、アセテート、トリアセテートなどの半合成繊維、合成素材として、ナイロンなどのポリアミド系、ビニロンなどのポリビニルアルコール系、アクリルなどのポリアクリロニトリル系、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリウレタン、フェノール系樹脂、塩化ビニル系樹脂などを例示することができる。
【0013】
炭素質材料の形状は限定されるものではなく、粒状、微粉状、繊維状、シート状など種種の形状のものを使用することができるが、粒子サイズは0.3mm以下のものが造粒に適しており、好ましい。
【0014】
造粒炭は、吸着塔への充填や抜き取り、吸着操作による摩擦や圧力などに対する機械的強度に優れるだけでなく、耐水及び耐油性にも優れることが望ましく、本発明の最大の特徴は、かかる目的に対し、添加するバインダーを選定したことにある。本発明の造粒炭は、バインダーとして、アクリル系、アクリル・スチレン系からなる群(A群)から選ばれる少なくとも1種類と、カルボキシメチルセルロース系、ポリビニルアルコール系からなる群(B群)から選ばれる少なくとも1種を用いて製造される。B群のバインダーは水溶液とするのが好ましい。
【0015】
バインダーの添加量は、活性炭100重量部に対しA群2〜40重量部及びB群0.5〜10重量部とし、粉末又は粒状の活性炭にバインダーを添加した後、ニーダーなどで混練される。混練物は、次いでペレッターなどの造粒機で造粒され、200℃以下の温度で乾燥、硬化されて造粒炭が製造される。
【0016】
本発明において、粉末又は粒状の活性炭として、少なくとも細孔分布及び/又は吸着特性の異なる2種類以上をブレンドした活性炭を使用すると、任意の細孔径分布を有する造粒炭を容易に製造することができ、吸着性能を任意にコントロールすることが可能となり、好ましい。
【0017】
本発明の造粒炭において、硬度はコークスの強度試験法であるマイクロストレングス硬度で15%以上である必要がある。マイクロストレングス硬度(MS硬度)とは、コークスの強度試験法の一種でそれを造粒炭に適用したものであるが、簡単に述べると、試料5gと直径8mmの鋼球10個とを直径1インチ長さ12インチの鉄製容器に入れ、25rpmで1000回転させた後、目開き0.3mmの標準篩の上に止まった重さを%で表示したものである。
【0018】
本発明の造粒炭の吸着性能は、ベンゼン吸着能を測定することによって確認することができる。ベンゼン吸着能はJIS K1474溶剤蒸気の吸着性能の測定に準拠して測定することができ、飽和濃度の1/10の濃度における平衡吸着能で表す。本発明の造粒炭において、造粒することによるベンゼン吸着能の低下は軽微であり、原料活性炭に対し70〜90%の性能を確保することができる。また、活性炭の中心細孔径は水蒸気吸着法による細孔分布曲線から求めた。以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、配合割合は全て重量部である。
【0019】
【実施例】
実施例1〜9及び比較例1〜3
ベンゼン吸着能50%、比表面積1400m2/g、水蒸気吸着法による細孔分布で、中心細孔径30Å、粒度0.1mm以下の石炭系粉末活性炭に、B群バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(以下CMCとする)量を3部に固定し、A群バインダーであるアクリル・スチレン系エマルジョン(ASE)の混合比を3〜30部まで変化させたものについて、ベンゼン吸着性能とMS硬度を測定した(実施例1〜5)。また、A群をASE10部に固定し、B群CMC量を1〜5部に変化させた場合のベンゼン吸着能とMS硬度を測定した(実施例6〜7)。造粒炭サイズはダイス孔径を変えることにより調節した。造粒炭サイズの効果を実施例8〜9に示す。
【0020】
A群及びB群をそれぞれ単独で使用した場合について同様にベンゼン吸着能とMS硬度を測定した(比較例1〜2)。さらに、CMC量を3部に固定し、ASE量を少なくした場合について測定し、比較例3に示した。
【0021】
【表1】
【0022】
実施例11〜14
B群をCMC3部に固定し、A群をアクリル系エマルジョン(AE)に変更した場合のベンゼン吸着能、MS硬度の測定結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
実施例15〜18
A群をASE10部に固定し、B群をポリビニルアルコール(PVA)に変更した場合のベンゼン吸着能、MS硬度の測定結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
比較例3〜5
B群をCMC3部に固定し、A群についてフェノール樹脂エマルジョンを8〜42部添加した場合のベンゼン吸着能、MS硬度の測定結果を表4に示す。
【0027】
【表4】
【0028】
比較例6〜7
バインダーとしてベントナイトを使用した場合のベンゼン吸着能、MS硬度の測定結果を表5に示す。
【0029】
【表5】
【0030】
実施例19及び比較例8〜9
図1に示されるように、水蒸気吸着法で測定される小さい細孔を有するヤシ殻活性炭と大きな細孔を有する石炭系活性炭を重量比1:1でブレンドしたものに、実施例3と同一の処方により造粒炭を製造した。造粒炭の細孔分布曲線を図2に示す。このように、細孔分布などの異なる2種類の活性炭を適宜ブレンドすることにより、所望とする細孔分布を示す造粒炭とすることができ、したがって、各用途に応じた吸着性能を有するように任意にコントロールすることが可能となる。
【0031】
実施例20〜21及び比較例10
自動車燃料蒸散防止用活性炭の代表的な性能評価法である、ASTM D5228によるブタンワーキングキャパシティー(BWC)が12g/dlで、充填密度0.40g/mlの石炭系粒状活性炭を0.1mm以下の粒度に粉砕したものについて、実施例3及び13の条件で造粒炭を製造し、BWCを測定した(各々実施例20及び21)。結果を表6に示す。比較のため、もとの石炭系活性炭のBWCを測定し、結果を併記した。
【0032】
【表6】
【0033】
【発明の効果】
本発明により、用途の広い有用な造粒炭と工業的に有利な造粒炭の製造方法を提供することができる。本発明の造粒炭は、吸着性能に優れていることは勿論、強度が大きいため、輸送や使用中の微粉の発生が少なく、振動や衝撃が加わる様な従来の造粒炭が使用し難い用途にも適用できるので、気相又は液相に好ましく使用することができる。また、複数種の活性炭をブレンド使用することにより、細孔分布及び吸着性能を任意にコントロールすることができるので、窒素、メタン、ブタン、トルエンなどの単一組成の吸着除去用だけでなく、脱臭用、溶剤回収用、自動車燃料蒸散防止用、触媒用など種々の用途に適用可能な造粒炭を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例19で使用したヤシ殻活性炭と石炭系活性炭の細孔分布図である。
【図2】実施例19における造粒炭の細孔分布図である。
Claims (4)
- 粉末又は粒状の活性炭にバインダーを加えて造粒した造粒炭であって、活性炭100重量部に、バインダーとして、アクリル系、アクリル・スチレン系からなる群(A群)から選ばれる少なくとも1種類2〜40重量部と、カルボキシメチルセルロース系、ポリビニルアルコール系からなる群(B群)から選ばれる少なくとも1種類0.5〜10重量部を用いて造粒されたマイクロストレングス硬度が15%以上である造粒炭。
- 該粉末又は粒状の活性炭の粒度が0.3mm以下である請求項1記載の造粒炭。
- 粉末又は粒状の活性炭100重量部に、アクリル系、アクリル・スチレン系からなる群(A群)から選ばれる少なくとも1種類2〜40重量部と、カルボキシメチルセルロース系、ポリビニルアルコール系からなる群(B群)から選ばれる少なくとも1種類0.5〜10重量部のバインダーを加えて混練し、造粒して得た造粒炭を200℃以下で乾燥、硬化した後、常温まで冷却することを特徴とする造粒炭の製造方法。
- 該粉末又は粒状の活性炭が、少なくとも細孔分布及び/又は吸着特性の異なる2種類以上をブレンドした活性炭である請求項3記載の造粒炭の製造方法。
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