JP4219168B2 - １，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン及びフッ化水素の共沸様組成物 - Google Patents

Description

技術分野
本発明は、１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン（ＨＣＦＣ−１２２３ｘｄ）及びフッ化水素の共沸組成物並びに共沸様組成物に関する。

背景
近年、完全にハロゲン化されたクロロフルオロカーボン（ＣＦＣ）が地球のオゾン層に対して有害であるということが万国共通の懸念となっている。したがって、塩素置換基が少ないか又は全く含有しないフッ素置換ハイドロカーボンを使用する動きが世界的に存在する。この点において、オゾン層破壊の可能性がゼロのハイドロフルオロカーボン（ＨＦＣ）である１，１，３，３，３−ペンタフルオロプロパンは、冷却系におけるジクロロジフルオロメタンや発泡剤としてのトリクロロフルオロメタンなどのクロロフルオロカーボンの代替物と考えられている。ＨＦＣ、すなわち、炭素、水素及びフッ素だけを含有する化合物を製造することは、溶媒、発泡剤、冷却剤、洗浄剤、エアロゾル噴霧体、熱伝達媒体、誘電体、消化用組成物及び動力サイクルの作業流体として使用するための環境的に望ましい製品を提供するという重要なテーマとなっている。フッ化水素を種々のハイドロクロロカーボン化合物と反応させることによりＨＦＣなどのフルオロカーボンを製造することは、当技術分野において既知である。そのようなＨＦＣは、オゾン層破壊種でないことから、ハイドロクロロフルオロカーボン（ＨＣＦＣ）又はクロロフルオロカーボン（ＣＦＣ）よりもはるかに環境的に有利であるばかりでなく、塩素含有性化合物と比べて不燃性であり無毒であるとも考えられている。

１，１，１，３，３−ペンタフルオロプロパン（ＨＦＣ−２４５ｆａ）は、米国特許第５，４９６，８６６号及び５，５７４，１９２号（どちらも参照によりその全体が本明細書中に援用される）に開示されるように当技術分野において周知である。

現在のところ、実質的に純粋な１，１，１，３，３−ペンタフルオロプロパンを製造する際の中間体が、１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン（ＨＣＦＣ−１２２３ｘｄ）及びフッ化水素の共沸又は共沸様混合物であることが分かっている。この中間体は、一旦形成したあと、抽出の手法によりその構成成分へと分離することができる。共沸組成物及び共沸様組成物は、エレクトロニクス産業において半導体をエッチングするための無水（非水系）エッチング剤並びに金属から表面酸化を除去するための組成物としての用途がある。ＨＦから分離した後、ＨＣＦＣ−１２２３ｘｄは医薬中間体として使用することができる。

発明の要旨
一の態様においては、本発明は、本質的に１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン及びフッ化水素からなる共沸組成物を提供する。

本発明は、更に、本質的にフッ化水素約１〜約９０重量パーセント及び１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン約１０〜約９９重量パーセントからなる共沸又は共沸様組成物であって、約１７０kPa（２４psia）〜約５８０kPa（８４psia）の圧力で約２６℃〜約６８℃の沸点を有する組成物を提供する。

別の態様において、本発明は、共沸又は共沸様組成物を形成する方法であって、該方法がフッ化水素約１〜約９０重量パーセント及び１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン約１０〜約９９重量パーセントをブレンドすることを含んでなり、該組成物が、約１７０kPa（２４psia）〜約５８０kPa（８４psia）の圧力で約２６℃〜約６８℃の沸点を有する方法を提供する。

更に別の態様において、本発明は、１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン及び少なくとも１種の不純物の混合物から１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペンを取り出すための方法であって、フッ化水素を該１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン及び該フッ化水素の共沸又は共沸様組成物を形成するのに充分な量で該混合物に添加し、その後、該共沸組成物を該不純物から分離することを含んでなる方法を提供する。

好ましい態様の具体的な説明
ＨＣＦＣ−１２２３ｘｄを調製する方法においては、前駆体試薬をフッ化水素でフッ素化する。そのような前駆体の反応生成物には、ＨＣＦＣ−１２２３ｘｄ、未反応ＨＦ及び他の副生物が含まれる。副生物を除去すると、ＨＣＦＣ−１２２３ｘｄ及びＨＦの二成分の共沸又は共沸様組成物が形成される。次いで、この二成分共沸又は共沸様組成物はその構成成分への分離に利用できる。

流体の熱力学状態は、その圧力、温度、液相組成及び蒸気組成により定義される。真の共沸組成物については、所定の温度及び圧力範囲において液相組成及び蒸気相が本質的に等しい。実際上の観点から、このことは、相変化の間に諸成分を分離することができないということを意味する。本発明の目的のため、共沸様組成物とは、沸騰又は蒸発時にその沸騰特性が一定であり分別されない傾向があるという点から、組成物が真の共沸混合物のようにふるまうことを意味する。沸騰又は蒸発の間に、液相組成はあるとしてもごくわずかだけ変化する。これは、液相組成及び気相組成が蒸発又は凝縮の間に実質的に変化する非共沸様組成物とは対照的である。候補混合物が本発明の意味の範囲内で共沸様であるかどうかを決定する一つのやり方は、混合物のサンプルを、その混合物を別々の成分へと分離すると予想される条件下で蒸留することである。非共沸又は非共沸様である場合は、混合物は分別される、すなわち、最も沸点の低い成分がはじめに蒸留され、以下同様に、その種々の成分へと分離される。混合物が共沸様である場合は、第一留出物カットがわずかに測定可能量得られ、そのカットは全ての混合物成分を含有しており、絶えず沸騰するか又は単一物質のようにふるまう。共沸様組成物の別の特徴は、同じ成分を種々の割合で含有する一定の範囲の組成物が存在し、それらが共沸様であるということである。全てのそのような組成物は本明細書中で使用する「共沸様」という語に含められる。例として、所定の共沸混合物の組成が、組成物の沸点もそうであるように、異なる圧力において少なくともわずかに変動することは周知である。このように、二成分の共沸混合物は、少なくとも、温度及び／又は圧力に依存して組成を変動できるという点で独特なタイプの関係であることを象徴している。当技術分野において周知のように、共沸混合物の沸点は圧力で変動する。

本明細書中で使用するように、共沸混合物は、周囲の混合組成物の沸点に対して上限又は下限の沸点を示す液体混合物である。共沸又は共沸様組成物は、二種又はそれより多い異なる成分の混合物であり、所定の圧力下で液体の形態である場合は、実質的に一定の温度で沸騰し、その温度は諸成分の沸点よりも高くても低くてもよく、また、共沸又は共沸様組成物は、沸騰している液体組成と本質的に同一の蒸気組成を提供する。本発明の目的のために、共沸組成物には、共沸混合物のようにふるまう、すなわち、沸騰又は蒸発時に沸騰特性が一定であり分別されない傾向がある組成物を意味する共沸様組成物が含まれると定義する。このように、沸騰又は蒸発時に形成される蒸気の組成は、もとの液体組成と同じか又は実質的に同じである。それゆえ、沸騰又は蒸発時に、液体組成は、変化するとすれば最小限又は無視できる程度にのみ変化する。このことは、沸騰又は蒸発時に、液体組成が実質的な程度変化する非共沸様組成物とは対照的である。したがって、共沸又は共沸様組成物の本質的な特徴は、所定の圧力で液体組成の沸点が一定であることと、沸騰している組成物の上方の蒸気の組成が沸騰している液体の組成と本質的に同じであること、すなわち、液体組成の諸成分が本質的に分別されないことである。共沸又は共沸様液体組成物を異なる圧力で沸騰させる場合は、共沸組成物の各成分の沸点及び重量パーセントはどちらも変化しうる。このように、共沸又は共沸様組成物は、その諸成分間に存在する関係から、又は諸成分の組成範囲から、又は指定圧力で一定の沸点を有することを特徴とする組成物の各成分の正確な重量パーセントから定義することができる。

本発明は、共沸又は共沸様組成物を形成するための有効量のフッ化水素及びＨＣＦＣ−１２２３ｘｄを含んでなる組成物を提供する。有効量とは、他の成分と組み合わせた場合に共沸又は共沸様混合物を形成をもたらす各成分の量を意味する。本発明の組成物は、好ましくは、本質的にフッ化水素とＨＣＦＣ−１２２３ｘｄのみの組み合わせからなる二成分の共沸混合物である。

好ましい態様においては、本発明の組成物は、ＨＦを約１〜約９０重量パーセント、好ましくは約１０重量パーセント〜約８０重量パーセント、最も好ましくは約４０重量パーセント〜約６０重量パーセント含有する。好ましい態様においては、本発明の組成物は、ＨＣＦＣ−１２２３ｘｄを約１０〜約９９重量パーセント、好ましくは約２０重量パーセント〜約９０重量パーセント、最も好ましくは約４０重量パーセント〜約６０重量パーセント含有する。本発明の組成物は、約１７０kPa（２４psia）〜約５８０kPa（８４psia）の圧力で約２６℃〜約６８℃の沸点を有する。ＨＦが約５５±５重量パーセントでＨＣＦＣ−１２２３ｘｄが約４５±５重量パーセントである共沸組成物又は共沸様組成物は、１６０kPa（２３psia）において約２６℃で沸騰することが分かった。ＨＦが約５０±５重量パーセントでＨＣＦＣ−１２２３ｘｄが約５０±５重量パーセントである共沸組成物又は共沸様組成物は、２９０kPa（４２psia）において約４５℃で沸騰することが分かった。

本発明の別の好ましい態様においては、ＨＣＦＣ−１２２３ｘｄと、例えば、ＨＣＦＣ−１２２３ｘｄを調製する製造工程から生じうる不純物とを含有する混合物からＨＣＦＣ−１２２３ｘｄを取り出すことができる。これは、フッ化水素をＨＣＦＣ−１２２３ｘｄ及び不純物の混合物に添加することにより行われる。その混合物にフッ化水素をＨＣＦＣ−１２２３ｘｄ及びフッ化水素の共沸組成物を形成するのに充分な量添加して、その後、共沸組成物を、例えば、蒸留、洗浄、又は他の当技術分野で認識された分離手段により不純物から分離する。好ましくは、不純物自体は、ＨＣＦＣ−１２２３ｘｄ、フッ化水素、又はＨＣＦＣ−１２２３ｘｄ及びフッ化水素の混合物との近沸騰性（close-boiling）共沸混合物を形成しない。本明細書中で使用するように、近沸騰性共沸混合物という語は、本発明の共沸混合物の１０℃の範囲内に沸点を有する共沸混合物を意味する。

以下の非限定的な実施例は本発明を説明するのに助けとなるものである。
実施例１
１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン（ＨＣＦＣ−１２２３ｘｄ）５０ｇをＨＦ５０ｇに溶解して、不均一系混合物を形成する。２６℃での混合物の蒸気圧は１６０kPa（２３psia）である。

実施例２
１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン５５ｇをＨＦ４５ｇに溶解して、不均一系混合物を形成する。４５℃での混合物の蒸気圧は２９０kPa（４２psia）である。

実施例３
本質的に１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン及びＨＦからなる二成分の組成物について、２６〜６８℃の温度範囲で気−液−液平衡を成立させた。上部液相、底部相、及び気相の組成をサンプリングした。混合物の蒸気圧も記録した。結果を表１に示す。純粋成分の蒸気圧を報告している表１及び表２から、混合物の蒸気圧は、各々個別の成分の蒸気圧よりも高いことが観察される。このことから、混合物は共沸混合物を形成していると結論づけられる。この共沸組成物は、４５℃でＨＦは約５４重量パーセントであり、２６℃でＨＦが約５７重量パーセントであることが分かる。

図１は、ＨＣＦＣ−１２２３ｘｄ及びＨＦについての気−液−液平衡（ＶＬＬＥ）プロットの図である。

Claims (13)

1. １，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン及びフッ化水素を含む共沸又は共沸様組成物。
2. １，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン及びフッ化水素からなる共沸又は共沸様組成物。
3. フッ化水素１〜９０重量パーセント及び１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン１０〜９９重量パーセントを含み、１６０kPa（２３psia）〜５８０kPa（８４psia）の圧力で２６℃〜６８℃の沸点を有する、共沸又は共沸様組成物。
4. フッ化水素１〜９０重量パーセント及び１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン１０〜９９重量パーセントからなり、１６０ kPa （２３ psia ）〜５８０ kPa （８４ psia ）の圧力で２６℃〜６８℃の沸点を有する、共沸又は共沸様組成物。
5. フッ化水素が１０〜８０重量パーセントの量で存在する、請求項１〜４のいずれか１項に記載の組成物。
6. フッ化水素が４０〜６０重量パーセントの量で存在する、請求項１〜４のいずれか１項に記載の組成物。
7. 共沸又は共沸様組成物を形成する方法であって、該方法がフッ化水素１〜９０重量パーセント及び１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン１０〜９９重量パーセントをブレンドすることを含み、該組成物が１６０kPa（２３psia）〜５８０kPa（８４psia）の圧力で２６℃〜６８℃の沸点を有する方法。
8. １，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン及び少なくとも１種の不純物の混合物から１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペンを取り出すための方法であって、フッ化水素を該１，２−ジクロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン及び該フッ化水素の共沸又は共沸様組成物を形成するのに充分な量で該混合物に添加し、その後、該共沸又は共沸様組成物を該不純物から分離することを含んでなる方法。
9. 不純物が含ハロゲン炭素化合物を含んでなる、請求項８記載の方法。
10. 不純物が１，１，１，３，３−ペンタクロロプロパンである、請求項８記載の方法。
11. 分離が蒸留により行われる、請求項８記載の方法。
12. 共沸又は共沸様組成物は、フッ化水素が１０〜８０重量パーセントの量で存在する請求項１〜４のいずれか１項に記載の組成物である、請求項８記載の方法。
13. 共沸又は共沸様組成物は、フッ化水素が４０〜６０重量パーセントの量で存在する請求項１〜４のいずれか１項に記載の組成物である、請求項８記載の方法。

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