従来の直管式コリオリ流量計1にあっては、耐振性向上と振動漏洩とをなくすために、フローチューブ3の振動に対して反対方向に振動する質点、すなわちカウンタバランス4を設けて振動を相殺するような構造をとっている。また、従来の直管式コリオリ流量計1にあっては、駆動装置7と検出器8とを外筒2でなくカウンタバランス4に設置するような構造をとるとともに、駆動装置7と検出器8とを設置したカウンタバランス4を外筒2でなくフローチューブ3の二箇所に連結ブロック5を介してそれぞれ固定するような構造をとっている(直管式コリオリ流量計1に対して外乱が作用した場合に、検出器8に直接ノイズが重畳しないようにするための構造。また、最も振動が容易な低次の曲げ振動(外乱により生じる最も主要なモード)と駆動モードとを異なったものとするための構造)。さらに、従来の直管式コリオリ流量計1にあっては、板バネ6を設けて連結ブロック5の位置を固定し、結果、振動の方向性を決定するような構造をとっている(板バネ6を設けることで、連結ブロック5に振動時において回転中心が存在する)。
ところで、このような構造をとる従来の直管式コリオリ流量計1にあっては、フローチューブ3とカウンタバランス4とを連結する連結ブロック5が上述の如く剛体であることから、次のような問題点を有している。すなわち、フローチューブ3に軸力が発生すると、一対の連結ブロック5の間、及びフローチューブ3の両端と連結ブロック5との間に局所的な応力が生じてしまい、場合によってはフローチューブ3に応力が残留したり、フローチューブ3が塑性変形してしまったりする恐れがあるという問題点を有している。
以下、模式図を用いてフローチューブ3に作用する軸応力について説明する。尚、軸応力による不具合を分かり易くするため、以下の説明では拡大開口部9の機能(バネ作用)を無視して説明するものとする。図9(a)〜(d)はフローチューブ3の内部に流れる被測定流体の温度を上昇させた時のフローチューブ3とカウンタバランス4との状態を示す模式図、図9(e)はフローチューブ3とカウンタバランス4と連結ブロック5と板バネ6との位置関係を示す斜視図である。
フローチューブ3に被測定流体を流し駆動装置7を共振駆動させると、図9(a)に示すような軌跡でフローチューブ3及びカウンタバランス4が振動する。被測定流体の温度が上昇しない状態においては、全体の温度が均等(温度変化が生じてない)であり、この時、一対の連結ブロック5の間、及びフローチューブ3の両端と連結ブロック5との間には、まだ軸応力が発生してないことになる(但し、駆動中は振動による応力が別に作用する)。
被測定流体を流し続けこの温度を上昇させると、温度変化によってフローチューブ3には、軸方向に伸びようとする力が発生する。これに対して、上記温度変化の熱が伝わりきれてないカウンタバランス4には、フローチューブ3程の伸びの力が発生せず、結果、連結ブロック5の間の距離はほぼ変わらないままとなる。従って、図9(b)に示すようにフローチューブ3には、振動による応力の他に、圧縮となる局所的な軸応力が発生することになる。
その後、温度変化による熱に馴染んだカウンタバランス4が軸方向に伸びると、これに合わせて連結ブロック5の間の距離も長くなり、連結ブロック5の間で生じていた軸応力は図9(c)に示すように緩和されることになる。しかしながら、フローチューブ3の両端と連結ブロック5との間の圧縮となる軸応力は逆に増大することから、フローチューブ3には、局所的に大きな軸応力が作用することになる。
全体の温度が均等になり、フローチューブ3の固定端間の距離も伸びて長くなると、図9(d)に示すようにフローチューブ3の全体に軸応力がなくなり、結果、状態が安定する。
図10(a)〜(d)はフローチューブ3の内部に流れる被測定流体の温度を降下させた時のフローチューブ3とカウンタバランス4との状態を示す模式図である。図10(a)は、被測定流体の温度が高く全体の温度が均等な状態を示しており、この状態においては、フローチューブ3の全体に軸応力が作用してないことになる。
被測定流体の温度を降下させると、温度変化によってフローチューブ3には、軸方向に縮もうとする力が発生する。これに対して、カウンタバランス4の長さ、すなわち連結ブロック5間の距離、フローチューブ3の固定端間の距離には変化が見られず、図10(b)に示すようにフローチューブ3には、引っ張りとなる局所的な軸応力が作用することになる。
その後、温度変化による熱に馴染んだカウンタバランス4が軸方向に縮むと、これに合わせて連結ブロック5の間の距離も短くなり、連結ブロック5の間で生じていた軸応力は図10(c)に示すように緩和されることになる。しかしながら、フローチューブ3の両端と連結ブロック5との間の引っ張りとなる軸応力は逆に増大することから、フローチューブ3には、局所的に大きな軸応力が作用することになる。
全体の温度が均等になり、フローチューブ3の固定端間の距離も縮んで短くなると、図10(d)に示すようにフローチューブ3の全体に軸応力がなくなり、結果、状態が安定する。
以上の説明からも分かるように、従来の直管式コリオリ流量計1は、フローチューブ3に作用する軸応力を管軸方向に分散させ難い構造となっている。従って、従来の直管式コリオリ流量計1は、温度変化に弱い構造となっている。
尚、本願発明者は、上記問題点の解決策の一つとして、曲げの三次モード振動でフローチューブを駆動することを考えている。三次モード振動を採用しようとする理由は、従来のカウンタバランスがなくとも振動漏洩を最小とすることが可能な駆動モードであると考えているからである。本願発明者は、フローチューブの三次モードでの節位置を安定させることも考えている。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、フローチューブに作用する軸応力を分散させることが可能であるとともに、フローチューブの三次モードでの節位置を安定させることが可能な直管式コリオリ流量計を提供することを課題とする。
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の直管式コリオリ流量計は、弾性連結部材と台座とフローチューブ三次モード節位置安定化構造とを有する直管式コリオリ流量計であって、これは、被測定流体が流れる直管状のフローチューブと、該フローチューブを三次モード振動で駆動する駆動装置と、前記フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差を検出する一対の検出手段と、前記駆動装置及び前記一対の検出手段の各コイルを固定した状態で前記フローチューブの外側に位置する剛性のある台座と、前記フローチューブの三次モード節位置となる二箇所で前記台座を連結する一対の弾力性のある弾性連結部材とを備え、前記フローチューブの軸方向をZ軸、該Z軸に直交する前記駆動装置の駆動方向をX軸、さらに前記Z軸及び前記X軸に直交する方向をY軸とすると、前記弾性連結部材は、前記X軸方向及び前記Y軸方向の各剛性よりも前記Z軸方向の剛性の方が低い構造となる弾性体、且つ、前記Z軸を中心とする回転方向及び前記X軸を中心とする回転方向の各剛性よりも前記Y軸を中心とする回転方向の剛性の方が低い構造となる弾性体であり、このような前記弾性連結部材を連結する前記台座には、連結及びウェイト付加のためのウェイト付加用ブラケットを設けることを特徴としている。
請求項2記載の本発明の弾性連結部材と台座とフローチューブ三次モード節位置安定化構造とを有する直管式コリオリ流量計は、請求項1に記載の発明を受けるもので、前記弾性連結部材は、前記Y軸方向に伸びるY軸方向伸び部分を有し、前記ウェイト付加用ブラケットは、前記Y軸方向伸び部分を介して前記弾性連結部材との連結を図るとともに前記Y軸方向の更なるウェイト付加を図るY軸方向アーム部を有することを特徴としている。
請求項3記載の本発明の弾性連結部材と台座とフローチューブ三次モード節位置安定化構造とを有する直管式コリオリ流量計は、請求項1又は請求項2に記載の発明を受けるもので、前記ウェイト付加用ブラケットは、前記X軸方向の更なるウェイト付加を図るX軸方向ウェイト付加部を有することを特徴としている。
請求項4記載の本発明の弾性連結部材と台座とフローチューブ三次モード節位置安定化構造とを有する直管式コリオリ流量計は、請求項3に記載の発明を受けるもので、前記X軸方向ウェイト付加部は、ウェイト付加位置を可変とする機構、ウェイト質量を可変とする機構、或いは、ウェイト付加位置とウェイト質量の両方を可変とする機構を有することを特徴としている。
このような特徴を有する本発明によれば、駆動装置及び検出手段の各コイルを固定するための台座が、フローチューブの本来持っている三次モードの節位置となる二箇所に弾性連結部材を介して設けられる。この台座は、駆動装置を駆動してフローチューブを振動させた時も振動せずに、一定位置を保つことが可能な部材として設けられる。台座は、円筒体となる構造の他に、本発明では剛性を高めることを目的として、断面視矩形の筒状体となる構造も採用される。
弾性連結部材は、台座をフローチューブに連結するために設けられる。また、弾性連結部材は、フローチューブに作用する軸応力を全体に分散させるために設けられる。弾性連結部材は、温度変化に対し強い構造とするために有用な部材として設けられる。弾性連結部材は、フローチューブの軸方向に対して剛性が弱く、その他の方向に対しては剛性が高くなるように構造が決定される。また、弾性連結部材は、三次モード振動の動きを阻害しないように、振動方向に対して回転自由支持端となるように構造が決定される。
弾性連結部材は、ウェイト付加用ブラケットを介して台座に連結される。三次モードの節位置となるフローチューブの二箇所には、ウェイト付加用ブラケットの存在によって集中的にウェイトが付加される。ウェイトが付加されると、フローチューブの三次モードでの節位置が安定する。具体的には、密度による節位置の移動が減り、三次モード振動が安定する。更に、ウェイト付加用ブラケットのX軸方向にウェイトを付加し、位置、質量、或いはこれら両方を可変することができる機構を設ければ、最も効率よく回転方向の慣性モーメントに影響を与えることから、流れ方向の振動バランスの調整を容易に行うことができる。
その他、本発明は、温度変化に対してより一層強い構造とするために、フローチューブ、台座、及び弾性連結部材の線膨張係数を同じにすることが好ましい。尚、検出手段は、コイル及びマグネットの構成に限らないものとする。例えば、加速度センサ、光学的手段、静電容量式、歪み式(ピエゾ式)等の変位、速度、加速度のいずれかを検出する手段であればよいものとする。
請求項1に記載された本発明によれば、フローチューブに作用する軸応力を分散させることができるという効果を奏する。従って、従来よりも温度変化に対する強さを向上させることができるという効果を奏する。また、請求項1に記載された本発明によれば、従来用いていたカウンタバランスを不要にすることができるという効果を奏する。これにより、被測定流体の密度変化とカウンタバランスの慣性モーメント(質量)とにより生じるアンバランス、すなわち被測定流体の密度が変わってもカウンタバランスの慣性モーメントが不変であることに起因するアンバランスを解消することができるという効果を奏する。従って、器差シフトやバラツキ、さらには密度計測(周波数)に対するシフトもなくすことができるという効果を奏する。さらに、請求項1に記載された本発明によれば、フローチューブの三次モードでの節位置を安定させることができるという効果を奏する。これにより、より良い形態のものを提供することができるという効果を奏する。
請求項2に記載された本発明によれば、位相差の低下を最小限に抑えるとともに、フローチューブの三次モードでの節位置を更に安定させることができるという効果を奏する。これにより、一層良い形態のものを提供することができるという効果を奏する。
請求項3、4に記載された本発明によれば、慣性モーメントを変化させることができるという効果を奏する。また、振動バランスを調整することができるという効果を奏する。これにより、一層良い形態のものを提供することができるという効果を奏する。
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。図1は本発明の弾性連結部材と台座とフローチューブ三次モード節位置安定化構造とを有する直管式コリオリ流量計の一実施の形態を示す図であり、(a)は直管式コリオリ流量計の断面図、(b)はフローチューブと台座と弾性連結部材との位置関係を示す斜視図である。また、図2及び図3の各(a)〜(d)は図1の直管式コリオリ流量計のフローチューブの内部に流れる被測定流体の温度を上昇、降下させた時のフローチューブと台座と弾性連結部材との状態を示す模式図、図4及び図5は三次モードでの節位置とウェイトの関係を示す模式図である。
図1において、本発明の直管式コリオリ流量計21は、先ず従来例と同じものとなる構成部材から挙げると、外筒2と、フローチューブ3と、駆動装置(図示省略。図8中の引用符号7が参考となる。以下同様)と、一対の検出器(検出手段)8と、一対の接続フランジ(ここでは1つのみ図示)11とを備えて構成されている(他の一般的な構成部材については省略する)。また、本発明の直管式コリオリ流量計21は、主要な構成部材となる、台座22と、一対の弾性連結部材23と、一対のウェイト付加用ブラケット24とを備えて構成されている。
後述するが、一対のウェイト付加用ブラケット24は、各々、台座22の端部に設けられ、一対の弾性連結部材23は、ウェイト付加用ブラケット24を介して台座22をフローチューブ3に連結するように構成されている。本発明の直管式コリオリ流量計21においては、一対の弾性連結部材23がウェイト付加用ブラケット24に連結することによって節位置安定化構造が構成されているものとする。
本発明の直管式コリオリ流量計21は、従来のカウンタバランス4(図8参照)を設けなくとも振動漏洩を最小にし、また、温度変化に対する強さを従来よりも向上させるために、フローチューブ3を曲げの三次モード振動にて駆動する点と、台座22及び弾性連結部材23を構成部材に加える点と、フローチューブ3の三次モードでの節位置を安定させるためにウェイト付加用ブラケット24を構成部材に加える点とが特徴になっている。その他、構造の特徴としては、従来の板バネ6(図8参照)を設けなくとも、弾性連結部材23がフローチューブ3の振動方向に対して回転自由支持端となる点が挙げられるものとする。以下、各構成部材について説明する。
外筒2は、所謂筐体であって、曲げやねじれに強固な構造を有している。外筒2は、フローチューブ3を収納することができる大きさに形成されている。外筒2は、フローチューブ3等の流量計要部、すなわちセンサユニット部分を保護することができるように形成されている。このような外筒2の内部には、アルゴンガス等の不活性ガスが充填されている。不活性ガスの充填により、フローチューブ3等への結露が防止されるようになっている。外筒2には、蓋2aが形成されている。蓋2aは、後述する調整錘26の位置、質量、或いはこれら両方を調整する部分として形成されている。蓋2aは、調整錘26の位置、質量、或いはこれら両方の調整後に外筒本体2bへ溶接によって固定されるようになっている。
フローチューブ3は、真っ直ぐな直管部10と、この直管部10の両端に連続するラッパ状の拡大開口部9(ここでは1つのみ図示)とを有している。直管部10には、上記駆動装置を構成するマグネット(図示省略)と、検出器8を構成する同じくマグネット8aとが固定されている。駆動装置を構成するマグネットは、直管部10の中央位置に固定されている。一方、検出器8を構成するマグネット8aは、駆動装置を構成するマグネットの両側で、このマグネットから等間隔となる位置にそれぞれ固定されている。駆動装置のマグネット及び検出器8のマグネット8aは、フローチューブ3の振動方向に沿って突出するように固定されている。
フローチューブ3は、駆動装置の駆動によって三次モード振動で振動するようになっている(言い換えれば、駆動装置はフローチューブ3を三次モード振動で駆動するようになっている)。マグネット8aは、本形態において、フローチューブ3の三次モード振動における二つの節で挟まれた中央の振動部分(但し中央の腹は除く)に固定されるようになっている。拡大開口部9には、外筒2の端部と接続フランジ11とが溶接により固定されている。
台座22は、断面視円形の筒状体且つ剛体であって、従来のカウンタバランス4(図8参照)と同じ位置に配置されている。すなわち、台座22は、フローチューブ3の外側において、フローチューブ3に対し非接触状態となるように配置されている。台座22には、駆動装置を構成するコイル7b(図2及び図3参照)と、検出器8を構成する同じくコイル8bとが固定されている。駆動装置を構成するコイル7bは、台座22の中央位置に固定されている。一方、検出器8を構成するコイル8bは、マグネット8aの位置に合わせてそれぞれ固定されている。駆動装置を構成するコイル7b、及び検出器8を構成するコイル8bは、駆動装置を構成するマグネット、及び検出器8を構成するマグネット8aが恰も貫通するような状態の位置に固定されている。
台座22は、フローチューブ3が三次モード振動で振動している最中に振動せず、一定位置を保つことが可能な部材として設けられている(台座22は、従来のカウンタバランス4のような共振する部材でないものとする)。このような台座22の端部には、ウェイト付加用ブラケット24が設けられている。台座22は、ウェイト付加用ブラケット24及び弾性連結部材23を介してフローチューブ3に連結されている。
弾性連結部材23は、台座22の両端のウェイト付加用ブラケット24と、フローチューブ3とに跨って固定されている。弾性連結部材23は、台座22及びフローチューブ3を連結する機能と、弾性体としての機能とを有している。弾性連結部材23は、フローチューブ3の本来持っている三次モードの節位置25(図2ないし図5参照)となる二箇所に取り付けられている。
ここで、フローチューブ3の軸方向をZ軸、また、図示しない駆動装置の駆動方向(フローチューブ3の振動方向でありZ軸に直交する)をX軸、さらに、Z軸及びX軸に直交する方向をY軸と定義すると、弾性連結部材23は、X軸方向及びY軸方向の各剛性よりもZ軸方向の剛性の方が低く、且つ、Z軸を中心とする回転方向(Rz)及びX軸を中心とする回転方向(Rx)の各剛性よりもY軸を中心とする回転方向(Ry)の剛性の方が低くなるような構造に形成されている。以下、弾性連結部材23と、この弾性連結部材23が連結するウェイト付加用ブラケット24のもう少し具体的な構造について説明する。
弾性連結部材23は、フローチューブ3に連続する紡錘状の平板構造を有している。すなわち、弾性連結部材23は、図示のような形状に形成されている。具体的に説明すると、弾性連結部材23は、本体23aと、この本体23aに対してY軸方向に伸びる一対のY軸方向伸び部分23bとを有して紡錘状に形成されている。Y軸方向伸び部分23bの端部23dは、このX軸方向の幅が本体23aのX軸方向の幅よりも狭くなるように形成されている。本体23aの中央には、フローチューブ3の直径に合わせて貫通する固定用の貫通孔23cが形成されている。弾性連結部材23は、本体23a及びY軸方向伸び部分23bの連続部分から端部23dにかけて縁部が滑らかな曲線で繋がるように形成されている。
貫通孔23cは、フローチューブ3に対してロー付けにより固定されている。また、端部23dもウェイト付加用ブラケット24に対してロー付けにより固定されている(ロー付けに限定されないものとする)。
ウェイト付加用ブラケット24は、連結及びウェイト付加(位相差(感度)に支障を来さない程度のウェイト付加)のための部材として台座22の端部に設けられている。ウェイト付加用ブラケット24は、本体24aと、一対のY軸方向アーム部24bと、一対のX軸方向ウェイト付加部24cとを有している。本形態においては、下側のX軸方向ウェイト付加部24cに調整錘26が位置、質量、或いはこれら両方を可変可能にして設けられている。ウェイト付加用ブラケット24は、この存在によって、三次モードの節位置25(図2ないし図5参照)に対して集中的にウェイトを付加するような機能を有している。
本体24aは、所望の厚みを有するリング形状に形成されている。このような本体24aのY軸上には、一対のY軸方向アーム部24bが連成されている。一対のY軸方向アーム部24bは、弾性連結部材23のY軸方向伸び部分23bを介して弾性連結部材23との連結を図ることができるように形成されている。また、一対のY軸方向アーム部24bは、Y軸方向の更なるウェイト付加を図ることができるように形成されている。Y軸方向アーム部24bの端部には、弾性連結部材23のY軸に向けて伸びる連結凸部24dが形成されている。連結凸部24dは、弾性連結部材23のY軸方向伸び部分23bの端部23dを連結するために形成されている。
弾性連結部材23は、Y軸方向伸び部分23bの端部23dと、Y軸方向アーム部24bの連結凸部24dとの連結位置が離れるほど、Y軸における回転方向Ryの剛性が低下するとともに、Z軸方向の剛性が低下するようになっている。X軸方向ウェイト付加部24cは、X軸方向の更なるウェイト付加を図ることができるように形成されている。X軸方向ウェイト付加部24cは、本体24aのX軸上に凸形状で形成されている。
以上の説明におけるフローチューブ3、台座22、弾性連結部材23、及びウェイト付加用ブラケット24の材質としては、例えばステンレスが一例として挙げられるものとする。これら四つの部材の材質としては、温度変化に起因する伸び縮みに配慮すると、同じ線膨張係数となる、又はなるべく近い線膨張係数となる材質を選択することが好ましいものとする。本形態において、台座22は熱容量が比較的小さくなるように形成されている。
上記構成において、フローチューブ3に被測定流体(図示省略)を流すとともに、図示しない駆動装置を駆動させてフローチューブ3に三次モード振動を生じさせると、検出器8の位置でのコリオリの力によって生じる位相の差分により、質量流量が図示しない信号演算処理部で算出されるようになっている。また、本形態においては、振動周波数から密度も算出されるようになっている。本発明の直管式コリオリ流量計21は、従来と全く変わらない流量計としての機能を有している。
本発明の直管式コリオリ流量計21において、以上の説明からも分かるように、台座22は高い剛性を有するとともに上記軸方向の剛性を有する弾性連結部材23を介してフローチューブ3に連結するものであることから、フローチューブ3が図示しない駆動装置の駆動により三次モード振動で振動している最中に振動せず、一定位置を保つようになっている。以下、図2及び図3を参照しながら図示しない被測定流体の温度変化に応じたフローチューブ3、台座22、及び弾性連結部材23の作用について説明する。また、図4及び図5を参照しながらウェイト付加用ブラケット24の作用について説明する。
図2(a)は被測定流体の温度が低く直管式コリオリ流量計21全体の温度が均等な状態を模式的に示している。また、フローチューブ3が図示しない駆動装置の駆動によって三次モード振動で振動している状態を示している。このような状態においては、フローチューブ3の全体にわたり軸応力がまだ発生していないことになる(但しフローチューブ3には、振動による応力が別に作用するものとする)。
図2(b)は被測定流体の温度を上昇させた直後の状態を模式的に示している。この時、台座22には、被測定流体の温度変化による熱が伝わりきれてないため全長に変化がなく、また、一対の接続フランジ11間(固定端間)の距離にも変化がなく、結果、フローチューブ3には、被測定流体の温度変化による、圧縮となる軸応力が発生する。この圧縮となる軸応力は、フローチューブ3の全体にわたり均等に働く。理由としては、一対の弾性連結部材23が弾性体であることから、この弾性変形により従来例のような局所的な軸応力の発生が阻止されているためである。従って、フローチューブ3に発生する軸応力は、上記状態において本発明の構造によりフローチューブ3の軸方向に分散されることになる。
図2(c)は被測定流体の温度を上昇させてしばらく経過した後の状態を模式的に示している。この時、台座22は、上述の如く熱容量が比較的小さいことから温度変化による熱に比較的早く馴染み、結果、全長方向に伸びが発生する。一対の弾性連結部材23は、上述の如くフローチューブ3の軸方向(上記Z軸方向)の剛性が他よりも低くなる構造であることから、上記伸びは弾性変形により吸収される。一対の弾性連結部材23の間、弾性連結部材23と接続フランジ11(固定端)との間は、従来例と異なり軸応力がフローチューブ3の軸方向に分散されることになる。従って、図2(c)の状態も図2(b)の状態と同様、局所的な軸応力の発生がないことになる(軸応力は殆ど図2(b)の状態から変化しない)。
図2(d)は直管式コリオリ流量計21全体の温度が均等になった状態を模式的に示している。この状態においては、台座22や固定端間距離がフローチューブ3と同様に伸びきることから、それまでフローチューブ3に作用していた軸応力がなくなり、結果、直管式コリオリ流量計21の状態が安定することになる。
図3(a)は被測定流体の温度が高く直管式コリオリ流量計21全体の温度が均等な状態を模式的に示している。また、フローチューブ3が図示しない駆動装置の駆動によって三次モード振動で振動している状態を模式的に示している。このような状態においては、図2(a)の状態と同じであり、フローチューブ3の全体にわたり軸応力が発生していないことになる(但しフローチューブ3には、振動による応力が別に作用するものとする)。
図3(b)は被測定流体の温度を降下させた直後の状態を模式的に示している。この時、台座22には、被測定流体の温度降下による冷えが伝わりきれてないため全長に変化がなく、また、一対の接続フランジ11間(固定端間)の距離にも変化がなく、結果、フローチューブ3には、被測定流体の温度変化による、引っ張りとなる軸応力が発生する。この引っ張りとなる軸応力は、フローチューブ3の全体にわたり均等に働く。理由としては上述と同様であり、一対の弾性連結部材23が弾性体であることから、この弾性変形により従来例のような局所的な軸応力の発生が阻止されているためである。従って、フローチューブ3に発生する軸応力は、上記状態において本発明の構造によりフローチューブ3の軸方向に分散されることになる。
図3(c)は被測定流体の温度を降下させてしばらく経過した後の状態を模式的に示している。この時、台座22は、上述の如く熱容量が比較的小さいことから温度変化による冷えに比較的早く馴染み、結果、全長方向に縮みが発生する。一対の弾性連結部材23は、上述の如くフローチューブ3の軸方向(上記Z軸方向)の剛性が他よりも低くなる構造であることから、上記縮みは弾性変形により吸収される。一対の弾性連結部材23の間、弾性連結部材23と接続フランジ11(固定端)との間は、従来例と異なり軸応力がフローチューブ3の軸方向に分散されることになる。従って、図3(c)の状態も図3(b)の状態と同様、局所的な軸応力の発生がないことになる(軸応力は殆ど図3(b)の状態から変化しない)。
図3(d)は直管式コリオリ流量計21全体の温度が均等になった状態を示している。この状態においては、台座22や固定端間距離がフローチューブ3と同様に縮みきることから、それまでフローチューブ3に作用していた軸応力がなくなり、結果、直管式コリオリ流量計21の状態が安定することになる。
図4及び図5は三次モードでの節位置25とウェイトの関係を示す模式図である。図4及び図5において、フローチューブ3が三次モードで駆動され、二箇所の節位置25で弾性連結部材23を介して台座22が保持される場合を考えると、二箇所の節位置25に集中的にウェイトを掛ければ密度による節位置25の移動が減り、三次モードでの振動が安定することになる。ウェイト付加用ブラケット24は、このような理由から設けられている。
弾性連結部材23は、二箇所の節位置25を中心にY軸周りの回転モーメントが交番で働くようになる。この時、回転軸上(Y軸上)に錘27を設けることが有効であり、節位置25の安定に寄与する。また、位相差(感度)低下を最小限度に抑えることにも寄与する。尚、錘27は、ウェイト付加用ブラケット24のY軸方向アーム部24bの重みに相当するものとする。
その他、図4及び図5において、位相のズレ(ゼロ点のズレ)の調整には、位相に最も有効に影響を与えることができる節位置25に対して、X軸方向に伸ばした腕の先端に錘28を設け(錘28は移動可能に、質量可変可能に、或いはこれら両方が可能に設けることが好ましい)、これにより慣性モーメントを変化させることが有効である。尚、錘28は、ウェイト付加用ブラケット24のX軸方向ウェイト付加部24cに設ける調整錘26の重みに相当するものとする。
以上、図1ないし図5を参照しながら説明してきたように、本発明の直管式コリオリ流量計21によれば、被測定流体に温度変化が生じてフローチューブ3に伸びや縮みが発生しても、フローチューブ3に働く軸応力がフローチューブ3の軸方向(Z軸方向)に分散される構造であることから、温度変化に対して強い構造になり、流量計として温度特性を従来よりも向上させることができるという利点を有している。
また、本発明の直管式コリオリ流量計21によれば、フローチューブ3を三次モード振動で振動させる構造であることから、振動漏洩を最小に抑えることができるという利点を有している。尚、振動漏洩に関して本発明の直管式コリオリ流量計21は、従来用いていた板バネ6(図8参照)を不要にする構造であることから、従来板バネ6を介して生じていた振動漏洩を解消することができるという利点も有している。
さらに、本発明の直管式コリオリ流量計21によれば、従来用いていたカウンタバランス4(図8参照)を不要にする構造であることから、被測定流体の密度変化とカウンタバランス4の慣性モーメント(質量)とにより生じるアンバランス、すなわち被測定流体の密度が変わってもカウンタバランス4の慣性モーメントが不変であることに起因するアンバランスを解消することができるという利点を有している。従って、器差シフトやバラツキ、さらには密度計測(周波数)に対するシフトもなくすことができるという利点を有している。
さらにまた、本発明の直管式コリオリ流量計21によれば、ウェイト付加用ブラケット24を有する構造であることから(節位置安定化構造を有するものであることから)、フローチューブ3の三次モードでの節位置25を安定させることができるという利点を有している。具体的には、密度による節位置25の移動を減らして三次モード振動を安定させることができるという利点を有している。従って、より良い形態のものを提供することができるという利点を有している。
その他、本発明の直管式コリオリ流量計21によれば、台座22がフローチューブ3の振動中に振動しない構造であることから、この台座22に固定されるコイル7b、8bに対して配線(図示省略)を外筒2から配線する際に、弛み(振動を考慮した弛み)を持たせる必要がなく、結果、配線設計の自由度が増えるという利点を有している。
次に、図6を参照しながら検出器8(検出手段)の他の配置例を説明する。図6は他の配置例を示す直管式コリオリ流量計21の断面図である。
例えば、ウェイト付加用ブラケット24における上側のX軸方向ウェイト付加部24cには、ブラケット29が設けられている。このブラケット29の先端には、検出器8を構成するコイル8bが設けられている。一方、フローチューブ3には、検出器8を構成するマグネット8aが設けられている。検出器8は、図示のような配置にしてもよいものとする。
続いて、図7を参照しながら弾性連結部材23とウェイト付加用ブラケット24の他の例(23′、24′)を説明する。図7は他の例を示す斜視図である。
図7において、弾性連結部材23′は、Y軸方向伸び部分23b′が捻り棒(トーションビーム)となる形状に形成されている。この点が上述のものと異なっている。一方、ウェイト付加用ブラケット24′は、Y軸方向伸び部分23b′の端部23d′を差し込んでロー付け(一例であるものとする)により固定することができるように連結凸部24d′の形状を変更した点が異なっている。弾性連結部材23′及びウェイト付加用ブラケット24′に変更しても、上述のような利点が得られるものとする。
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。