JP4217070B2 - パントテネートの産生増強法 - Google Patents

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Description

関連出願
本発明は、2001年1月19日に出願された先の仮特許出願第60/262,995号(係属中)の利益を主張する。本発明はまた、2000年9月21日に出願された米国特許出願第09/667,569号(係属中)にも関し、これは、1999年9月21日に出願された米国特許出願第09/400,494号(放棄された)の一部継続出願である。米国特許出願第09/667,569号はまた、2000年6月7日に出願された先の仮特許出願第60/210,072号、2000年7月28日に出願された仮特許出願第60/221,836号、および2000年8月24日に出願された仮特許出願第60/227,860号の利益を主張する。上記で参照した出願のそれぞれの全内容は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
発明の背景
パントテン酸またはビタミンB5としても知られているパントテネートは、ビタミンのB複合体のメンバーであり、家畜やヒトを含む哺乳動物にとって必須の栄養素である(例えば、食品源から、水溶性ビタミン補助食品または食品添加物として)。細胞では、パントテネートは主に、補酵素A(CoA)とアシルキャリアータンパク質(ACP)の生合成に使用される。これらの補酵素は、これらの分子の4'-ホスホパントテイン部分のスルフヒドリル基とチオエステルを形成する、アシル残基の代謝で機能する。これらの補酵素は、すべての細胞で必須であり、細胞代謝の100を超える異なる媒介反応に参加している。
パントテネート(特に、生物活性D異性体)合成の従来法は、多量の化学物質からの化学合成のために、過剰の基質コストとラセミ体中間体を光学的に分離する必要性が障害になっている。従って、研究者達は最近、パントテネート生合成プロセスで有用な酵素を産生する細菌または微生物系に注目している(細菌はそれ自身がパントテネートを合成することができる)。特に、生物変換プロセスは、パントテン酸の好適な異性体の産生を促進する手段として評価されている。さらに最近、直接微生物合成法が、D-パントテネート産生を促進する手段として評価されている
しかし、改良されたパントテネート産生法、特により多量の所望の生成物を産生するために最適化した微生物法に対する大きなニーズがある。
発明の要約
本発明は、パントテネートの改良された産生方法(例えば、微生物合成)に関する。特に、本発明者らは、微生物におけるパントテネート生合成経路の制御解除および/またはイソロイシン−バリン(ilv)経路の制御解除により、有意に上昇したパントエートおよび/またはパントテネートの力価が生成される以外に、別の生成物、すなわち[R]-3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸または3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸(「HMBPA」)(本明細書において、「β-アラニン2-(R)-ヒドロキシイソルバレレート」、「β-アラニン2-ヒドロキシイソルバレレート」、「β-アラニル-α-ヒドロキシイソルバレレート」および/または「ファントテネート」と同義である)が産生されることを発見した。HMBPAに至る経路(本明細書において「HMBPA生合成経路」と呼ぶ)には、従来からパントテネートおよび/またはイソロイシン−バリン(ilv)生合成に関連するいくつかの酵素が関与し、これらは過剰発現されると、HMPBA生合成経路に追加的に参加することができる。特にこの経路は、α-ケトイソバレレートから[R]-2-ヒドロキシイソバレレート(α-HIV)への変換を含み、これは還元酵素活性(例えば、PanE1、PanE2および/またはIlvC活性)により触媒され、次にβ-アラニンでα-HIVが縮合し、これはPanC活性により触媒される。別のHMBPA生合成経路は、パントテネート生合成の主要な前駆体(すなわち、α-ケトイソバレレート(α-KIV)とβ-アラニン)について競合し、また従来からパントテネート生合成に関連ある酵素について競合するため、パントテネート生合成を有効に上昇させるために、HMBPA生合成を低下または排除させることが好ましい。
従って、ある態様において本発明は、制御解除されたパントテネート生合成経路を有する微生物を、HMBPAを含まないパントテネート組成物が産生されるような条件下で培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法を特徴とする。別の態様において本発明は、制御解除されたパントテネート生合成経路と制御解除されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路とを有する微生物を培養することを含み、該微生物は、HMBPAを含まないパントテネート組成物が産生されるように制御されたPanB活性を有する。本発明のさらに別の態様は、制御解除されたパントテネート生合成経路と制御解除されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路を有する微生物を培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法を特徴とし、該微生物は、HMBPAを含まないパントテネート組成物が産生されるように制御されたPanE活性を有する。さらに別の態様において本発明は、制御解除されたパントテネート生合成経路と制御解除されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路とを有する微生物を培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法を特徴とし、該微生物は、HMBPAを含まないパントテネート組成物が産生されるように制御されたIlvC活性を有する。さらに別の態様において本発明は、制御解除されたパントテネート生合成経路と制御解除されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路とを有する微生物を培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法を特徴とし、該微生物は、HMBPAを含まないパントテネート組成物が産生されるように制御されたPanBとPanE活性を有する。さらに別の態様において本発明は、制御解除されたパントテネート生合成経路と制御解除されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路とを有する微生物を培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法を特徴とし、該微生物は、HMBPAを含まないパントテネート組成物が産生されるように制御されたPanBとIlvC活性を有する。上記方法により産生される組成物はまた、該方法で使用される微生物のように特徴とされる。また選択的に混合されたパントテネート:HMBPA組成物の産生法を特徴とする。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明と請求の範囲から明らかであろう。発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも一部は、いくつかのパントテネートおよび/またはイソロイシン−バリン(ilv)生合成酵素と前駆体を利用して、[R]-3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸(「HMBPA」)と呼ぶ副産物を作成する組換え微生物の、代替生合成経路の発見に基づく。特に、パントテネート生合成経路および/またはイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路を制御解除するように作成された細菌は、イソロイシン−バリン(ilv)生合成経路の主要な生成物であり、パントテネート生合成経路の前駆体であるα-ケトイソバレレート(α-KIV)から、HMBPAを作成することができることが発見された。細菌中でのHMBPAの産生は、少なくともパントテネート生合成酵素であるケトパントイン酸エステル還元酵素(PanE遺伝子産物)、PanE2遺伝子産物、および/またはアセトヒドロキシイソメロ還元酵素(ilvC遺伝子産物)を利用し、α-KIVの還元により生じる[R]-2-ヒドロキシイソバレレート(α-HIV)とβ-アラニンの縮合の結果生じ、後者の反応は、パントテネート生合成酵素であるパントテネートシンセターゼ(panC遺伝子産物)により触媒される。基質α-KIVとβ-アラニンは、パントテネート産生とHMBPA産生のために利用することができ、β-アラニンは、例えばアスパルテート-α-脱炭酸酵素活性(panD遺伝子産物)を供給するかおよび/または上昇させることにより、提供される。
パントテネート生合成前駆体および/または生合成酵素についての競合を低下させるかまたは排除するために、産生が、HMBPAから離れてパントエート/パントテネートにシフトするように、いくつかの酵素を選択的に制御することが好ましい。好ましくは、制御解除されたパントテネート生合成経路および/または制御解除されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路を有する微生物を、PanBおよび/またはPanEが選択的に制御されるように、さらに操作される。PanBおよび/またはPanEの選択的制御は、産生がパントエート/パントテネートの方向に流れるように、これらの酵素レベルを最適化することを含む。
特に、本発明は、HMBPAに対するパントテネートの比率が上昇した組成物、好ましくはHMBPAを含まないパントテネート組成物を産生する方法を特徴とする。本明細書において、「HMBPAを含まないパントテネート組成物」という用語は、該組成物が無視できる量のHMBPAを含むように、HMBPAを含まないおよび/または実質的にHMBPAを含まないパントテネートを含む組成物を示す(すなわち、HMBPAが存在しても、それは、パントテネートのレベルまたは濃度に対して低レベルまたは低濃度であり、技術的、科学的および/または工業的目的には、HMBPAを含まないと見なすことができる)。好ましくは、HMBPAを含まないパントテネート組成物は、パントテネートを含み、HMBPAが存在するなら、10:100(すなわち、例えば生成物のサンプルをHPLCにより分析し、ピーク面積を比較して測定する時、10%HMBPA対90%パントテネート)またはそれ以下の比率で存在する。さらに好ましくは、HMBPAを含まないパントテネート組成物は、パントテネートを含み、HMBPAが存在するなら、9:100(すなわち、9%HMBPA対91%パントテネート)またはそれ以下の比率で存在する。さらに好ましくは、HMBPAを含まないパントテネート組成物は、パントテネートを含み、HMBPAが存在するなら、8:100(すなわち、8%HMBPA対92%パントテネート)またはそれ以下の比率で存在する。さらに好ましくは、HMBPAを含まないパントテネート組成物は、パントテネートを含み、HMBPAが存在するなら、7:100(すなわち、7%HMBPA対93%パントテネート)またはそれ以下の比率、6:100(すなわち、6%HMBPA対94%パントテネート)またはそれ以下の比率、または5:100(すなわち、5%HMBPA対95%パントテネート)またはそれ以下の比率で存在する。さらに好ましくは、HMBPAを含まないパントテネート組成物は、パントテネートを含み、HMBPAが存在するなら、0.5:100(すなわち、0.5%HMBPA対99.5%パントテネート)またはそれ以下の比率、0.2:100(すなわち、0.2%HMBPA対99.8%パントテネート)またはそれ以下の比率、または0.1:100(すなわち、0.1%HMBPA対99.9%パントテネート)
またはそれ以下の比率で存在する。本明細書に記載の値や範囲および/または値の中間は、本発明の範囲内にある。
ある実施形態における本発明は、制御解除されたパントテネート生合成経路を有する微生物を、HMBPAを含まないパントテネート組成物が産生されるような条件下で培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法を特徴とする。「パントテネート生合成経路」という用語は、パントテネートの生成または生合成で利用される、パントテネート生合成酵素(例えば、生合成酵素をコードする遺伝子によりコードされるポリペプチド)、化合物(例えば、基質、中間体または生成物)、補助因子などを含む生合成経路を含む。「パントテネート生合成経路」という用語は、微生物中のパントテネートの合成に至る生合成経路、ならびにインビトロのパントテネートの合成に至る生合成経路を含む。
本明細書において、「制御解除されたパントテネート生合成経路を有する」微生物は、パントテネート産生が増強される(例えば、該生合成酵素の制御解除前の該微生物中のパントテネート産生と比較して、または野生型微生物と比較して)ように、制御解除された(例えば、過剰発現された)(両方の用語が本明細書において規定される)少なくとも1つのパントテネート生合成酵素を有する微生物を含む。「パントテネート」という用語は、パントテネートの遊離の塩の形(「パントテン酸」ならびにその任意の塩とも呼ぶ)(例えば、パントテネートまたはパントテン酸の酸性水素を、陽イオン、例えばカルシウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムで置換することにより得られる)(「パントテン酸塩」とも呼ぶ)を含む。「パントテネート」という用語はまた、パントテネートのアルコール誘導体を含む。好適なパントテネート塩は、パントテネートカルシウムまたはパントテネートナトリウムである。好適なアルコール誘導体は、パントテノールである。本発明のパントテネート塩および/または塩は、従来法を使用して本明細書に記載の遊離の酸から調製される塩および/またはアルコールを含む。ある実施形態において、パントテネート塩は、本発明の微生物により直接合成される。本発明のパントテネート塩は、同様に、従来法によりパントテネートまたはパントテン酸の遊離の酸の形に変換することができる。好ましくは、「制御解除されたパントテネート生合成経路を有する」微生物は、パントテネート産生が1g/L以上であるように、少なくとも1つの制御解除された(例えば、過剰発現された)パントテネート生合成酵素を有する微生物を含む。さらに好ましくは、「制御解除されたパントテネート生合成経路を有する」微生物は、パントテネート産生が2g/L以上であるように、少なくとも1つの制御解除された(例えば、過剰発現された)パントテネート生合成酵素を有する微生物を含む。
「パントテネート生合成酵素」は、パントテネート生合成経路の化合物(例えば、中間体または生成物)の生成に使用される任意の酵素を含む。例えば、α-ケトイソバレレート(α-KIV)からのパントエートの合成は、中間体であるケトパントエートを経由して進む。ケトパントエートの生成は、パントテネート生合成酵素PanBまたはケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(panB遺伝子産物)により触媒される。パントエートの生成は、パントテネート生合成酵素PanE1またはケトパントエート還元酵素(panE1遺伝子産物)により触媒される。アスパラギン酸からのβ-アラニンの合成は、パントテネート生合成酵素PanDまたはアスパルテート-α-脱炭酸酵素(panD遺伝子産物)により触媒される。パントエートとβ-アラニンからのパントテネートの生成(例えば、縮合)は、パントテネート生合成酵素PanCまたはパントテン酸シンセターゼ(panC遺伝子産物)により触媒される。パントテネート生合成酵素はまた、本明細書に記載のHMBPA生合成経路中の酵素としての代替機能を果たす。
従って、ある態様において本発明は、制御解除された(例えば、パントテネート産生が増強されるように、制御解除された)少なくとも1つのパントテネート生合成酵素を有する微生物を培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法であって、該酵素は、例えばPanB(ケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)、PanC(またはパントテネートシンセターゼ)、PanD(またはアスパルテート-α-脱炭酸酵素)、PanE1(またはケトパントエート還元酵素)よりなる群から選択される方法を特徴とする。別の実施形態において本発明は、制御解除された少なくとも2つのパントテネート生合成酵素を有する微生物を培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法であって、該酵素は、例えばPanB(ケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)、PanC(またはパントテネートシンセターゼ)、PanD(またはアスパルテート-α-脱炭酸酵素)、およびPanE1(またはケトパントエート還元酵素)よりなる群から選択される方法を特徴とする。別の実施形態において本発明は、制御解除された少なくとも3つのパントテネート生合成酵素を有する微生物を培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法であって、該酵素は、例えばPanB(ケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)、PanC(またはパントテネートシンセターゼ)、PanD(またはアスパルテート-α-脱炭酸酵素)、およびPanE1(またはケトパントエート還元酵素)よりなる群から選択される方法を特徴とする。別の実施形態において本発明は、制御解除された少なくとも4つのパントテネート生合成酵素を有する微生物を培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法であって、微生物は、例えば制御解除されたPanB(ケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)、PanC(またはパントテネートシンセターゼ)、PanD(またはアスパルテート-α-脱炭酸酵素)、およびPanE1(またはケトパントエート還元酵素)を有する方法を特徴とする。
別の態様において本発明は、制御解除されたパントテネート生合成経路を有する微生物を、HMBPAを含まないパントテネート組成物が産生されるような条件下で培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法であって、微生物は、制御解除されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路をさらに有する方法を特徴とする。「イソロイシン−バリン(ilv)生合成経路」という用語は、ピルビン酸からバリンまたはイソロイシンへの変換の生成または合成で利用される、イソロイシン−バリン生合成酵素(例えば、生合成酵素をコードする遺伝子によりコードされるポリペプチド)、化合物(例えば、基質、中間体または生成物)、補助因子などが関与する生合成経路を含む。「イソロイシン−バリン生合成経路」という用語は、微生物(例えば、in vivo)中のバリンまたはイソロイシンの合成に至る生合成経路、ならびにin vitroでバリンまたはイソロイシンの合成に至る生合成経路を含む。
本明細書において、「制御解除されたイソロイシン−バリン(ilv)経路を有する」微生物は、イソロイシンおよび/またはバリンおよび/またはバリン前駆体であるα-ケトイソバレレート(α-KIV)の産生が増強される(例えば、該生合成酵素の制御解除前の該微生物中のイソロイシンおよび/またはバリンおよび/またはα-KIVと比較して、または野生型微生物と比較して)ように、制御解除された(例えば、過剰発現された)(両方の用語が本明細書において規定される)少なくとも1つのイソロイシン−バリン(ilv)生合成酵素を有する微生物を含む。図1は、イソロイシン−バリン生合成経路の略図を含む。イソロイシン−バリン生合成酵素は、太字の斜体で示し、その対応する遺伝子は斜体で示す。「イソロイシン−バリン生合成酵素」という用語は、イソロイシン−バリン生合成経路の化合物(例えば、中間体または生成物)の生成に使用される任意の酵素を含む。図1において、ピルベートからのバリンの合成は、中間体であるアセトラクテート、α,β-ジヒドロキシイソバレレート(α,β-DHIV)およびα-ケトイソバレレート(α-KIV)を経由して進む。ピルビン酸からのアセトラクテートの生成は、イソロイシン−バリン生合成酵素であるアセトヒドロキシ酸シンセターゼ(ilvBN遺伝子産物、またはalsS遺伝子産物)により触媒される。アセトラクテートからのα,β-DHIVの生成は、イソロイシン−バリン生合成酵素であるアセトヒドロキシ酸イソメロ還元酵素(ilvC遺伝子産物)により触媒される。α,β-DHIVからのα-KIVの合成は、イソロイシン−バリン生合成酵素であるジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(ilvD遺伝子産物)により触媒される。さらに、バリンとイソロイシンは、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ により、それぞれα-ケト化合物を用いて相互に変換することができる。イソロイシン−バリン生合成酵素はまた、本明細書に記載のHMBPA生合成経路における酵素としての代替機能を果たす。
従って、ある実施形態において本発明は、制御解除された(例えば、バリンおよび/またはイソロイシンおよび/またはα-KIV産生が増強されるように、制御解除された)少なくとも1つのイソロイシン−バリン(ilv)生合成酵素を有する微生物を培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法であって、該酵素は、例えばIlvBN、AlsS(またはアセトヒドロキシ酸シンセターゼ)、IlvC(またはアセトヒドロキシ酸イソメロ還元酵素)およびIlvD(またはジヒドロキシ酸デヒドラターゼ)よりなる群から選択される方法を特徴とする。別の実施形態において本発明は、制御解除された少なくとも2つのイソロイシン−バリン生合成酵素を有する微生物を培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法であって、該酵素は、例えばIlvBN、AlsS(またはアセトヒドロキシ酸シンセターゼ)、IlvC(またはアセトヒドロキシ酸イソメロ還元酵素)およびIlvD(またはジヒドロキシ酸デヒドラターゼ)よりなる群から選択される方法を特徴とする。別の実施形態において本発明は、制御解除された少なくとも3つのイソロイシン−バリン生合成酵素を有する微生物を培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生法であって、該微生物は、例えば制御解除されたIlvBN、AlsS(またはアセトヒドロキシ酸シンセターゼ)、IlvC(またはアセトヒドロキシ酸イソメロ還元酵素)およびIlvD(またはジヒドロキシ酸デヒドラターゼ)を有する方法を特徴とする。
本明細書に記載のように、パントテネート生合成経路および/またはイソロイシン−バリン(ilv)経路の酵素は、[R]-3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸(「HMBPA」)の合成において、または[R]-3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸(「HMBPA」)生合成経路において、代替活性を有することが発見されている。「[R]-3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸(「HMBPA」)生合成経路」という用語は、HMBPAの生成または合成に利用されるパントテネート生合成経路および/またはイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路に、伝統的に関連する生合成酵素と化合物(例えば、基質など)が関与する代替生合成経路を含む。「HMBPA生合成経路」という用語は、微生物(例えば、in vivo)のHMBPAの合成に至る生合成経路、ならびにin vitroのHMBPAの合成に至る生合成経路を含む。
「HMBPA生合成酵素」という用語は、HMBPA生合成経路の化合物(例えば、中間体または生成物)の生成に利用される任意の酵素を含む。例えば、α-ケトイソバレレート(α-KIV)からの2-ヒドロキシイソ吉草酸(α-HIV)の合成は、panE1またはpanE2遺伝子産物(PanE1は、本明細書においてケトパントイン酸還元酵素とも呼ぶ)により触媒され、および/またはilvC遺伝子産物(本明細書において、アセトヒドロキシ酸イソメロ還元酵素とも呼ぶ)により触媒される。β-アラニンとα-HIVからのHMBPAの生成は、panC遺伝子産物(本明細書において、パントテン酸シンセターゼとも呼ぶ)により触媒される。
「[R]-3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸(「HMBPA」)」という用語は、HMBPAの遊離の酸([R]-3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸エステルとも呼ぶ)ならびにその任意の塩(例えば、3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオネートまたは3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオネートエステルの酸性水素を、陽イオン、例えばカルシウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムで置換することにより得られる)(「3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸塩」または「HMBPA塩」とも呼ぶ)を含む。好適なHMBPA塩は、HMBPAカルシウムまたはHMBPAナトリウムである。本発明のHMBPA塩は、本明細書に記載の遊離の酸から従来法により調製される塩を含む。本発明のHMBPA塩は同様に、従来法により、3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸または3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオンネートから、遊離の酸に変換することができる。
少なくとも一部は、パントテネート生合成経路および/またはイソロイシン−バリン(ilv)経路の過剰発現または制御解除は、HMBPAの代替産生を引き起こす(所望のパントテネート産生と比較して)という発見に基づき、本発明は、制御解除されたパントテネート生合成経路および/またはイソロイシン−バリン(ilv)経路を有するのみでなく、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生が促進されるように選択的に制御されたいくつかの酵素をさらに有する微生物を培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネートの産生法を特徴とする。本明細書において「選択的に制御される」という用語は、HMBPA産生よりパントテネート産生を促進するような方法で、パントテネートとHMBPA合成の両方に関与することが公知である、パントテネート生合成経路またはイソロイシン−バリン(ilv)経路から、特定の酵素を制御するためにまたはターゲティングするために、選択することを含む。制御のために選択されるかまたはターゲティングされる好適な酵素は、PanE1、PanE2、PanBおよび/またはIlvCを含む。
ある実施形態において、PanE1は選択的に制御される。例えば本発明者らは、PanE1の過剰発現は、HMBPA前駆体生成を触媒することができ、従って、例えば量または活性を選択的に制御する(例えば、PanE1レベルまたは活性をわずかに低下させる)ことは、HMBPA産生からパントテネート産生にシフト(すなわち、HMBPA産生よりパントテネート産生を促進)することができることを、発見した。さらに、PanE2はHMBPA産生を促進することが発見されている。従って、別の実施形態は、panE2を欠失または制御することを特徴とする。
同様に、本発明者らは、PanB活性を上昇させることは、代替HMBPA生合成経路をパントテネート生合成経路にシフトすることができ、従って、PanBの量または活性を選択的に制御することは、HMBPA産生よりもパントテネート産生を促進することができることを発見した。ある実施形態において、PanB活性は、panB遺伝子を過剰発現または制御解除することにより上昇させられる。別の実施形態において、panB遺伝子の複数のコピーを発現することにより、PanB活性が上昇させられる。PanB活性は、PanBのフィードバック阻害を低下させることにより、上昇させられる。特に、PanB活性は、パントテネートからの補酵素A(CoA)の生成の主要な酵素(米国特許出願第09/09/667,569号を参照)であるパントテネートキナーゼを制御(例えば、選択的に制御)することにより、上昇させることができることが発見されている。パントテネートキナーゼの制御(例えば、パントテネートキナーゼの活性またはレベルを低下させる)は、CoAの産生を低下させ、これは次に、PanBのフィードバック阻害を低下させ、ならびにパントテネート蓄積を促進した。ある実施形態において、パントテネートキナーゼ活性は、CoaAを欠失しCoaX活性をダウンレギュレート(CoaAとCoaXは、いくつかの微生物でCoA生合成の第1段階を触媒することができる)することにより低下する(そして、PanB活性は上昇する)。別の実施形態において、パントテネートキナーゼ活性は、CoaXを欠失しCoaAをダウンレギュレートすることにより上昇する(そして、PanB活性は上昇する)。さらに別の実施形態において、パントテネートキナーゼ活性は、CoaAとCoaX活性をダウンレギュレートすることにより低下する(そして、PanB活性は上昇する)。
本発明のさらに別の態様は、HMBPA産生よりもパントテネート産生を促進するように選択された培養条件下で微生物を培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネートの産生法を特徴とする。特に、特に限定されないが、定常状態グルコースの低下、定常状態溶存酸素の増加、および/または過剰のセリンは、HMBPA産生よりもパントテネート産生を促進することが発見されている。「定常状態のグルコースの低下」という用語は、問題の微生物を培養するのにルーチンに使用されるものより少ないかまたは低い、定常状態のグルコースを含む。例えば、本明細書の実施例に記載のバチルス(Bacillus)微生物を培養することは、約0.2〜1.0g/Lの定常状態グルコースの存在下でルーチンに行われる。従って、定常状態グルコースレベルの低下は、好ましくは0.2g/L未満レベルの定常状態グルコースを含む。「定常状態溶存酸素の増加」という用語は、問題の微生物を培養するのにルーチンに使用されるものより上昇しているかまたは高い、定常状態溶存酸素レベルを含み、例えば、定常状態グルコースレベルと逆比例する。例えば、本明細書の実施例に記載のバチルス(Bacillus)微生物を培養することは、約10〜30%の溶存酸素の存在下でルーチンに行われる。従って、定常状態溶存酸素の増加は、30%より大きいレベルの溶存酸素、好ましくは95%もの溶存酸素を含むことができる。「過剰のセリン」という用語は、問題の微生物を培養するのにルーチンに使用されるものより上昇しているかまたは高いセリンレベルを含む。例えば、本明細書の実施例に記載のバチルス(Bacillus)微生物は、約0〜2.5g/Lセリンの存在下でルーチンに行われる。従って、過剰のセリンレベルは、2.5g/Lセリンより高いレベル、好ましくは約2.5〜20g/Lセリンを含むことができる。
さらに別の実施形態において、パントテネートおよび/またはイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路前駆体および/または本明細書に記載の中間体を上昇させる(例えば、過剰のβ-アラニン、バリンおよびα-KIVの存在下で微生物を培養する)ことにより、またはβ-アラニン供給の非存在下で有意なレベルのβ-アラニンを産生することができる微生物(すなわち、β-アラニン非依存性の微生物、米国特許出願第09/09/667,569号に記載されている)を培養することにより、HMBPA産生を促進することができる。
本発明の種々の態様を、以下のサブセクションでさらに詳細に説明する。
I. 種々のパントテネートおよび/またはイソロイシン−バリン(ilv)および/またはHMBPA生合成酵素をコードする遺伝子のターゲティング
一実施形態において本発明は、パントテネートおよび/またはイソロイシン−バリン(ilv)および/またはHMBPA生合成経路の種々の生合成酵素のターゲティングまたは修飾を特徴とする。特に本発明は、該生合成酵素をコードする遺伝子を修飾または改変することにより、該経路に関連する種々の酵素活性を修飾することを特徴とする。
本明細書において使用する「遺伝子」という用語は、生物中で、別の遺伝子または他の遺伝子から、遺伝子間(intergenic)DNA(すなわち、生物の染色体DNA中の遺伝子に天然にフランキングするかおよび/または遺伝子を分離する介在またはスペーサーDNA)により分離することができる核酸分子(例えば、DNA分子またはそのセグメント)を含む。あるいは、遺伝子は、他の遺伝子とわずかに重複(例えば、第2の遺伝子の5'末端と重複する第1の遺伝子の3'末端)してよく、重複遺伝子は、遺伝子間DNAにより他の遺伝子から分離される。遺伝子は、酵素または他のタンパク質分子の合成を指令する(例えば、コード配列、例えばタンパク質をコードする連続的オープンリーディングフレーム(ORF)を含みうる)か、またはそれ自体が生物中で機能性でもよい。生物中の遺伝子は、本明細書で定義されるように、オペロン中で集まっており、オペロンは、遺伝子間DNAにより、他の遺伝子および/またはオペロンから分離している。本明細書において使用する「単離された遺伝子」は、そこから遺伝子が誘導される生物の染色体DNA中の遺伝子に天然にフランキングする配列を本質的に含まない遺伝子(すなわち、第2のまたは異なるタンパク質、隣接構造配列などをコードする隣接コード配列を含まない)を含み、および5'および3'調節配列(例えば、プロモーター配列および/またはターミネーター配列)を随時含む。一実施形態において、単離された遺伝子は、主にタンパク質のコード配列を含む(例えば、バチルス(Bacillus)タンパク質をコードする配列)。別の実施形態において、単離された遺伝子は、タンパク質(例えば、バチルス(Bacillus)タンパク質)のコード配列、および遺伝子が誘導される生物の染色体DNAからの隣接5'および3'調節配列(例えば、隣接5'および/または3'バチルス(Bacillus)調節配列)を含む。好ましくは、単離された遺伝子は、遺伝子が誘導される生物の染色体DNA中の、遺伝子に天然にフランキングする約10kb、5kb、2kb、1kb、0.5kb、0.2kb、0.1kb、50bp、25bpまたは10bp未満のヌクレオチド配列を含有する。
「オペロン」という用語は、少なくとも1つの遺伝子またはORFの5'末端または3'末端のいずれかの配列が随時重複している、少なくとも2つの隣接遺伝子またはORFを含む。「オペロン」という用語は、1つ以上の隣接遺伝子またはORF(例えば、酵素、例えば生合成酵素をコードする構造遺伝子)と関連した、プロモーターおよびおそらくは調節エレメントを含有する遺伝子発現の統合されたユニットを含む。遺伝子(例えば、構造遺伝子)の発現は、例えば調節エレメントに結合する調節タンパク質により、または転写の抗停止により、統合的に調節することができる。オペロンの遺伝子(例えば、構造遺伝子)は転写されて、タンパク質のすべてをコードする単一のmRNAを与えることができる。
本明細書において使用する「突然変異を有する遺伝子」または「突然変異遺伝子」は、該突然変異体によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質が、野生型の核酸分子または遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質とは異なる活性を示すように、少なくとも1つの改変(例えば、置換、挿入、欠失)を含むヌクレオチド配列を有する遺伝子を含む。一実施形態において、突然変異を有する遺伝子または突然変異遺伝子は、野生型遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質と比較して、例えば同様の条件(例えば、同じ温度で培養した微生物でアッセイした)下でアッセイした場合に、上昇した活性を有するポリペプチドまたはタンパク質をコードする。本明細書において使用する「上昇した活性」または「上昇した酵素活性」は、野生型核酸分子または遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質より少なくとも5%大きく、好ましくは野生型核酸分子または遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質より少なくとも5〜10%大きく、さらに好ましくは少なくとも10〜25%大きく、そしてよりさらに好ましくは少なくとも25〜50%、50〜75%、または75〜100%大きい活性である。上記の値の中間の範囲、例えば75〜85%、85〜90%、90〜95%もまた、本発明に包含されることが意図される。本明細書において使用する「上昇した活性」または「上昇した酵素活性」はまた、野生型遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質の活性より、少なくとも1.25倍大きく、好ましくは、野生型遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質の活性より、少なくとも1.5倍大きく、さらに好ましくは少なくとも2倍大きく、そしてよりさらに好ましくは少なくとも3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍大きい活性を含むことができる。
別の実施形態において、突然変異を有する遺伝子または突然変異遺伝子は、野生型遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質と比較して、例えば同様の条件(例えば、同じ温度で培養した微生物でアッセイした)下でアッセイした場合に、低下した活性を有するポリペプチドまたはタンパク質をコードする。突然変異遺伝子はまた、ポリペプチドをコードしないか、または野生型ポリペプチドの低下した産生レベルを有しうる。本明細書において使用する「低下した活性」または「低下した酵素活性」は、野生型核酸分子または遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質より、少なくとも5%小さく、好ましくは野生型核酸分子または遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質より少なくとも5〜10%小さく、さらに好ましくは少なくとも10〜25%小さく、そしてよりさらに好ましくは少なくとも25〜50%、50〜75%、または75〜100%小さい活性である。上記の値の中間の範囲、例えば75〜85%、85〜90%、90〜95%もまた、本発明に包含されることが意図される。本明細書において使用する「低下した活性」または「低下した酵素活性」はまた、欠失されたかまたは「ノックアウトされた」活性を含むことができる(例えば、野生型核酸分子または遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質の活性より、約100%小さい活性)。
活性は、目的の特定のタンパク質の活性を測定するための、充分に受け入れられている任意のアッセイに従って測定することができる。活性は直接測定またはアッセイすることができ、例えば細胞または微生物から単離または精製されたタンパク質の活性を測定する。あるいは活性は、細胞または微生物内または細胞外媒質中で測定またはアッセイすることができる。例えば、突然変異遺伝子(すなわち、低下した酵素活性をコードする該突然変異体)についてのアッセイは、微生物(例えば、酵素が温度感受性である突然変異微生物)中で突然変異遺伝子を発現させ、酵素活性についての温度感受性(Ts)突然変異体を補足する能力について突然変異遺伝子をアッセイすることにより達成することができる。「上昇した酵素活性」をコードする突然変異遺伝子は、例えば対応する野生型より有効に、Ts突然変異体を補足するものでもよい。「低下した酵素活性」をコードする突然変異遺伝子は、例えば対応する野生型より低い有効性で、Ts突然変異体を補足するものである。
核酸または遺伝子配列中の単一の置換(例えば、対応するアミノ酸配列中のアミノ酸変化をコードする塩基置換)であっても、対応する野生型ポリペプチドまたはタンパク質と比較して、コードされるポリペプチドまたはタンパク質の活性に劇的な影響を与えうることは、当業者により理解されるであろう。本明細書に定義する突然変異遺伝子(例えば、突然変異ポリペプチドまたはタンパク質をコードする)は、突然変異遺伝子は、野生型遺伝子を発現する対応する微生物と比較して、該突然変異遺伝子を発現するかまたは該突然変異タンパク質またはポリペプチドを産生する微生物(すなわち、突然変異微生物)中で、異なるまたは別の表現型として随時観察されうる、改変した活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする点で、タンパク質相同体をコードする核酸または遺伝子から容易に区別できる。これに対して、タンパク質相同体は、野生型遺伝子を発現する対応する微生物と比較して、微生物中で産生される場合に、随時表現型が区別できない、同一または実質的に同様の活性を有しうる。従って、相同体と突然変異体との区別に役立つのは、核酸分子、遺伝子、タンパク質またはポリペプチドの間の配列同一性の程度ではなく、相同体と突然変異体とを区別するのは、コードされるタンパク質またはポリペプチドの活性である(例えば、低い(例えば、30〜50%の配列同一性)配列同一性を有する相同体が、依然として実質的に同等の機能活性を有し、例えば99%の配列同一性を共有する突然変異体が、依然として劇的に異なるまたは改変した機能活性を有する)。
本発明で使用される核酸分子、遺伝子、タンパク質またはポリペプチドは、HMBPA生合成経路、ilv生合成経路、またはパントテネート生合成経路を有する任意の微生物から誘導することができることも、当業者により理解されるであろう。このような核酸分子、遺伝子、タンパク質またはポリペプチドは、相同性スクリーニング、配列比較などの公知の技術を使用して、当業者によって同定することができ、これらの核酸分子、遺伝子、タンパク質またはポリペプチドの発現または産生が、組換え微生物中で起きるように、(例えば、適切なプロモーター、リボゾーム結合部位、発現ベクターまたは組み込みベクターを使用して、転写が上昇するように遺伝子の配列を修飾(好ましいコドン使用を考慮して)することなどにより、本明細書に記載のかつ当技術分野で公知の技術に従って)当業者によって修飾することができる。
一実施形態において本発明の遺伝子は、グラム陽性微生物(例えば、微生物の周りのグラム陽性壁の存在により、塩基性色素(例えば、クリスタルバイオレット)を維持する微生物)から誘導される。「から誘導される」という用語(例えば、グラム陽性微生物「から誘導される」)は、微生物中に天然に見出される遺伝子を意味する(例えば、グラム陽性微生物中に天然に見出される)。好適な実施形態において、本発明の遺伝子は、バチルス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)(例えば、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococci)およびストレプトミセス(Streptomyces)よりなる群から選択される属に属する微生物から誘導される。より好適な実施形態において、微生物から誘導される本発明の遺伝子は、バチルス(Bacillus)属のものである。他の好適な実施形態において、本発明の遺伝子は、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・レンチモルブス(Bacillus lentimorbus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・パントテンチクス(Bacillus pantothenticus)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・ハロズランス(Bacillus halodurans)、および他の第1群バチルス(Bacillus)種(例えば、16S rRNA型により特徴付けられる)よりなる群から選択される微生物から誘導される。別の好適な実施形態において、遺伝子は、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)またはバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)から誘導される。別の好適な実施形態において、本発明の遺伝子は、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、枯草菌(Bacillus subtilis)、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)よりなる群から選択される微生物から誘導される。特に好適な実施形態において、遺伝子は、枯草菌(Bacillus subtilis)から誘導される(例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)由来である)。「枯草菌(Bacillus subtilis)から誘導される」または「枯草菌(Bacillus subtilis)由来」という用語は、微生物枯草菌(Bacillus subtilis)中に天然に見出される遺伝子を含む。本発明の範囲には、バチルス(Bacillus)由来遺伝子(例えば、枯草菌(B. subtilis)由来遺伝子)、例えばバチルス(Bacillus)または枯草菌(B. subtilis)coaX遺伝子、serA遺伝子、glyA遺伝子、coaA遺伝子、pan遺伝子、および/またはilv遺伝子が含まれる。
別の実施形態において本発明の遺伝子は、グラム陰性(塩基性色素を排除する)微生物から誘導される。好適な実施形態において本発明の遺伝子は、サルモネラ(Salmonella)(例えば、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium))、エシェリキア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、セラチア(Serratia)およびプロテウス(Proteus)よりなる群から選択される属に属する微生物から誘導される。より好適な実施形態において本発明の遺伝子は、エシェリキア(Escherichia)属の微生物から誘導される。さらにより好適な実施形態において本発明の遺伝子は、大腸菌(Escherichia coli)から誘導される。別の実施形態において本発明の遺伝子は、サッカロミセス(Saccharomyces)(例えば、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae))から誘導される。
II. 組換え核酸分子とベクター
本発明は、さらに本明細書に記載の遺伝子(例えば、単離された遺伝子)、好ましくはバチルス(Bacillus)遺伝子、さらに好ましくは枯草菌(Bacillus subtilis)遺伝子、さらにより好ましくは枯草菌(Bacillus subtilis)パントテネート生合成遺伝子、および/またはイソロイシン−バリン(ilv)生合成遺伝子、および/またはHMBPA生合成遺伝子を含む組換え核酸分子(例えば、組換えDNA分子)を特徴とする。「組換え核酸分子」という用語は、組換え核酸分子が誘導された(例えば、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失または置換により)未変性のまたは天然の核酸分子からのヌクレオチド配列が異なるように改変、修飾または操作された、核酸分子(例えば、DNA分子)を含む。好ましくは、組換え核酸分子(例えば、組換えDNA分子)は、調節配列に機能的に連結された本発明の単離された遺伝子を含む。「調節配列に機能的に連結された」という語句は、目的の遺伝子のヌクレオチド配列が、遺伝子の発現(例えば、増強、上昇、構成性、基礎的、減弱、低下、または抑制された発現)、好ましくは遺伝子によりコードされる遺伝子産物の発現(例えば、組換え核酸分子が、本明細書で定義された組換えベクター中に含まれ、微生物に導入される場合)を可能にするように、調節配列に連結することを意味する。
「調節配列」という用語は、他の核酸配列(すなわち、遺伝子)の発現に影響を与える(例えば、モジュレートまたは調節する)核酸配列を含む。一実施形態において、調節配列は、天然に出現するように(例えば、未変性の位置および/または配向で)目的の調節配列と遺伝子について観察されるように、特定の目的の遺伝子に対して、同様または同一の位置および/または配向で、組換え核酸分子に含まれる。例えば、目的の遺伝子は、天然の生物中で目的の遺伝子に伴うまたは隣接する調節配列に機能的に連結した(例えば、「未変性の」調節配列(例えば、「未変性の」プロモーター)に機能的に連結した)組換え核酸分子中に含まれることができる。あるいは、目的の遺伝子は、天然の生物中で別の(例えば、異なる)遺伝子に伴うまたは隣接する調節配列に機能的に連結した組換え核酸分子中に含まれることができる。あるいは、目的の遺伝子は、別の生物からの調節配列に機能的に連結した組換え核酸分子中に含まれることができる。例えば、他の微生物からの調節配列(例えば、他の細菌調節配列、バクテリオファージ調節配列など)は、目的の特定の遺伝子に機能的に連結することができる。
一実施形態において、調節配列は、未変性ではないまたは天然には存在しない配列である(例えば、化学合成された配列を含む、修飾、突然変異、置換、誘導体化、欠失した配列)。好適な調節配列は、プロモーター、エンハンサー、停止シグナル、抗停止シグナル、および他の発現制御エレメント(例えば、リプレッサーまたはインデューサーが結合する配列、および/または、例えば転写されたmRNA中の、転写および/または翻訳調節タンパク質のための結合部位)を含む。このような調節配列は、例えば、Sambrook, J., Fritsh, E.F., およびManiatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989に記載されている。調節配列には、微生物中のヌクレオチド配列の構成性発現を指令するもの(例えば、構成性プロモーターおよび強力な構成性プロモーター)、微生物中のヌクレオチド配列の誘導性発現を指令するもの(例えば、誘導性プロモーター、例えばキシロース誘導性プロモーター)、および微生物中のヌクレオチド配列の発現を弱めるまたは抑制するもの(例えば、減衰シグナル、またはリプレッサー配列)を含む。調節配列を除去または欠失して、目的の遺伝子の発現を調節することもまた、本発明の範囲内である。例えば、転写の陰性調節に関与する配列は、目的の遺伝子の発現が増強されるように、除去することができる。
一実施形態において、本発明の組換え核酸分子は、プロモーターまたはプロモーター配列に機能的に連結した少なくとも1つの細菌の遺伝子産物をコードする核酸配列または遺伝子(例えば、パントテネート生合成酵素、イソロイシン−バリン生合成酵素および/またはHMBPA生合成酵素)を含む。本発明の好適なプロモーターは、バチルス(Bacillus)プロモーターおよび/またはバクテリオファージプロモーター(例えば、バチルス(Bacillus)に感染するバクテリオファージ)を含む。一実施形態において、プロモーターはバチルス(Bacillus)プロモーター、好ましくは強力なバチルス(Bacillus)プロモーターである(例えば、バチルス(Bacillus)中の生化学的ハウスキーピング遺伝子に関連するプロモーター、またはバチルス(Bacillus)中の解糖系遺伝子に関連するプロモーター)。別の実施形態において、プロモーターはバクテリオファージプロモーターである。好適な実施形態において、プロモーターはバクテリオファージSP01由来である。特に好適な実施形態において、プロモーターは、例えば以下の各配列を有するP15、P26またはPvegよりなる群から選択される:
Figure 0004217070
追加の好適なプロモーターには、tef(翻訳伸長因子(TEF)プロモーター)とpyc(ピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)プロモーター)が含まれ、これらは、バチルス(Bacillus)(例えば、枯草菌(Bacillus subtilis))中での高レベル発現を促進する。例えば、グラム陽性微生物で使用される追加の好適なプロモーターには、特に限定されないが、amyとSPO2プロモーターが挙げられる。例えばグラム陰性微生物で使用される追加の好適なプロモーターには、特に限定されないが、cos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIQ、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ-PRまたはλ-PLが含まれる。
別の実施形態において本発明の組換え核酸分子は、ターミネーター配列(例えば、転写ターミネーター配列)を含む。「ターミネーター配列」という用語は、mRNAの転写を終止させるように機能する調節配列を含む。ターミネーター配列(またはタンデム転写ターミネーター)はさらに、例えばヌクレアーゼに対するmRNA(例えば、mRNAに構造を付加することによって)を安定化させるのに機能することができる。
さらに別の実施形態において本発明の組換え核酸分子は、配列(すなわち、検出可能なおよび/または選択マーカー)を含有するベクターの検出を可能にする配列、例えば抗生物質耐性配列をコードするまたは栄養要求性突然変異を克服する遺伝子、例えば、trpC、薬剤マーカー、蛍光マーカー、および/または比色マーカー(例えば、lacZ/β-ガラクトシダーゼ)、を含む。さらに別の実施形態において、本発明の組換え核酸分子は、人工的リボソーム結合部位(RBS)または人工的RBS中に転写される配列を含む。「人工的リボソーム結合部位(RBS)」という用語は、未変性のRBS(例えば、天然に存在する遺伝子中に見出されるRBS)とは少なくとも1つのヌクレオチドが異なる、リボソームが結合する(例えば、翻訳を開始するために)mRNA分子内の部位(例えば、DNA内にコードされる)を含む。好適な人工的RBSは、約5〜6、7〜8、9〜10、11〜12、13〜14、15〜16、17〜18、19〜20、21〜22、23〜24、25〜26、27〜28、29〜30、またはそれ以上のヌクレオチドを含み、そのうち約1〜2、3〜4、5〜6、7〜8、9〜10、11〜12、13〜15、またはそれ以上が、未変性のRBS(例えば、目的の遺伝子の未変性のRBS、例えば、未変性のpanB RBS TAAACATGAGGAGGAGAAAACATG(配列番号4)、または未変性のpanD RBS ATTCGAGAAATGGAGAGAATATAATATG(配列番号5))と異なる。好ましくは、異なるヌクレオチドは、比較のために最適にアライメントした時、理想的なRBSの1つ以上のヌクレオチドと同一であるように、置換される。理想的なRBSは、特に限定されないが、
AGAAAGGAGGTGA(配列番号6)、
TTAAGAAAGGAGGTGANNNNATG(配列番号7)、
TTAGAAAGGAGGTGANNNNNATG(配列番号8)、
AGAAAGGAGGTGANNNNNNNATG(配列番号9)、および
AGAAAGGAGGTGANNNNNNATG(配列番号10)を含む。人工的RBSは、特定の遺伝子に関連する天然に存在するまたは未変性のRBSを置換するのに使用することができる。人工的RBSは、好ましくは特定の遺伝子の翻訳を上昇させる。好適な人工的RBS(例えば、panB、例えば枯草菌(B. subtilis)panBの翻訳を上昇させるRBS)は、CCCTCTAGAAGGAGGAGAAAACATG(配列番号11)およびCCCTCTAGAGGAGGAGAAAACATG(配列番号12)を含む。好適な人工的RBS(例えば、panD、例えば枯草菌(B. subtilis)panDの翻訳を上昇させるRBS)は、
TTAGAAAGGAGGATTTAAATATG(配列番号13)、
TTAGAAAGGAGGTTTAATTAATG(配列番号14)、
TTAGAAAGGAGGTGATTTAAATG(配列番号15)、
TTAGAAAGGAGGTGTTTAAAATG(配列番号16)、
ATTCGAGAAAGGAGGTGAATATAATATG(配列番号17)、
ATTCGAGAAAGGAGGTGAATAATAATG(配列番号18)、および
ATTCGTAGAAAGGAGGTGAATTAATATG(配列番号19)を含む。
本発明はさらに、本明細書に記載の核酸分子(例えば、遺伝子、または該遺伝子を含む組換え核酸分子)を含むベクター(例えば、組換えベクター)を特徴とする。「組換えベクター」という用語は、該組換えベクターが誘導される未変性のまたは天然の核酸分子中に含まれるものより、多い、少ないまたは異なる核酸配列を含有するように、改変、修飾、または操作されているベクター(例えば、プラスミド、ファージ、ファスミド、ウイルス、コスミド、または他の精製核酸ベクター)を含む。好ましくは、組換えベクターは、本明細書に定義したように、調節配列、例えばプロモーター配列、ターミネーター配列および/または人工的リボソーム結合部位(RBS)に機能的に連結した、生合成酵素コード遺伝子または該遺伝子を含む組換え核酸分子を含む。別の実施形態において本発明の組換えベクターは、細菌中の複製を増強する配列(例えば、複製増強配列)を含む。一実施形態において、複製増強配列は大腸菌(E. coli)中で機能する。別の実施形態において、複製増強配列は、pBR322から誘導される。
さらに別の実施形態において本発明の組換えベクターは、抗生物質耐性配列を含む。「抗生物質耐性配列」という用語は、宿主生物(例えば、バチルス(Bacillus))上の抗生物質に対して耐性を促進または付与する配列を含む。一実施形態において、抗生物質耐性配列は、cat(クロラムフェニコール耐性)配列、tet(テトラサイクリン耐性)配列、erm(エリスロマイシン耐性)配列、neo(ネオマイシン耐性)配列、kan(カナマイシン耐性)配列、およびspec(スペクチノマイシン耐性)配列よりなる群から選択される。本発明の組換えベクターはさらに、相同的組換え配列を含む(例えば、宿主生物の染色体中への目的の遺伝子の組換えを可能にするように設計された配列)。例えば、bpr、vpr、またはamyE配列は、宿主染色体への組換えのための相同性標的として使用することができる。さらに当業者であれば、ベクターの設計は、遺伝子操作する微生物の選択、所望の遺伝子産物の発現レベルなどの要因に依存して、合わせることができることを理解するであろう。
IV. 組換え微生物
本発明はさらに、本明細書に記載のようにベクターまたは遺伝子(例えば、野生型および/または突然変異遺伝子)を含む微生物、すなわち組換え微生物を特徴とする。本明細書において使用する「組換え微生物」という用語は、それが誘導された天然に存在する微生物と比較して、改変、修飾または異なる遺伝子型および/または表現型(例えば、遺伝子修飾が、微生物のコード核酸配列に影響を与える場合)を示すように、遺伝的に改変、修飾または操作(例えば、遺伝子操作)された微生物(例えば、細菌、酵母細胞、真菌細胞など)を含む。
一実施形態において本発明の組換え微生物は、グラム陽性生物(例えば、微生物の周りのグラム陽性壁の存在により、塩基性色素(例えば、クリスタルバイオレット)を保持する微生物)である。好適な実施形態において、各微生物は、バチルス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococci)およびストレプトミセス(Streptomyces)よりなる群から選択される属に属する微生物である。より好適な実施形態において、組換え微生物は、バチルス(Bacillus)属のものである。他の好適な実施形態において、組換え微生物は、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・レンチモルブス(Bacillus lentimorbus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・パントテンチクス(Bacillus pantothenticus)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・ハロズランス(Bacillus halodurans)、および他の第1群バチルス(Bacillus)種(例えば、16S rRNA型により特徴付けられる)よりなる群から選択される。別の好適な実施形態において、組換え微生物は、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)またはバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)である。別の好適な実施形態において、組換え微生物は、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、枯草菌(Bacillus subtilis)、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)よりなる群から選択される。
別の実施形態において組換え微生物は、グラム陰性(塩基性色素を排除する)生物である。好適な実施形態において組換え微生物は、サルモネラ(Salmonella)、エシェリキア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、セラチア(Serratia)およびプロテウス(Proteus)よりなる群から選択される属に属する微生物である。より好適な実施形態において組換え微生物は、エシェリキア(Escherichia)属の微生物である。さらにより好適な実施形態において組換え微生物は、大腸菌(Escherichia coli)である。別の実施形態において組換え微生物は、サッカロミセス(Saccharomyces)(例えば、サッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae))である。
本発明の好適な「組換え」微生物は、調節解除された(deregulated)パントテネート生合成経路もしくは酵素、調節解除されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路もしくは酵素、および/または修飾HMBPA生合成経路もしくは酵素を有する微生物である。「調節解除された」または「調節解除」という用語は、微生物の生合成酵素のレベルまたは活性が改変または修飾されるように、生合成経路中の酵素をコードする微生物中の少なくとも1つの遺伝子の改変または修飾を含む。好ましくは、生合成経路中の酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子は、遺伝子産物が増強または上昇されるように、改変または修飾される。「調節解除された経路」という語句はまた、2つ以上の生合成酵素のレベルまたは活性が改変または修飾されるように、生合成経路中の酵素をコードする2つ以上の遺伝子が、改変または修飾された生合成経路を含む。ある場合に微生物中の経路を「調節解除する」(例えば、所与の生合成経路中の2つ以上の遺伝子を同時に調節解除する)能力は、2つ以上の酵素(例えば、2つまたは3つの生合成酵素)が、「オペロン」(本明細書で定義される)と呼ぶ遺伝物質の連続的断片上で、互いに隣接する遺伝子によりコードされる微生物の特定の現象により生じる。オペロン中に含まれる遺伝子の協調的調節により、単一のプロモーターおよび/または調節エレメントの改変または修飾により、オペロンによりコードされる各遺伝子産物の発現が改変または修飾され得る。調節エレメントの改変または修飾には、特に限定されないが、遺伝子産物の発現が修飾されるように、内因性プロモーターおよび/または調節エレメントの除去、強力なプロモーター、誘導性プロモーターもしくは複数のプロモーターの付加、または調節配列の除去、オペロンの染色体位置の修飾、リボソーム結合部位のようにオペロンに隣接するまたはオペロン内の核酸配列の改変、、オペロンのコピー数の増加、オペロンの転写および/またはオペロンの遺伝子産物の翻訳に関与するタンパク質(例えば、調節タンパク質、サプレッサー、エンハンサー、転写アクチベーターなど)の修飾、または当技術分野で慣例的な遺伝子発現の調節解除のための任意の他の従来手段(特に限定されないが、例えばリプレッサータンパク質の発現を阻止するためのアンチセンス核酸分子の使用が挙げられる)が含まれうる。調節解除はまた、例えばフィードバック耐性であるかまたは比活性がより高いかまたはより低い酵素を与える、1つ以上の遺伝子のコード領域の改変を含んでよい。
他の好適な実施形態において組換え微生物は、少なくとも1つのパントテネート生合成酵素、少なくとも1つのイソロイシン−バリン生合成酵素、および/または少なくとも1つのHMBPA生合成酵素が、過剰発現されるように設計または操作される。「過剰発現された」または「過剰発現」という用語は、微生物の操作前に、または操作されていない匹敵する微生物で発現されるレベルより、高いレベルでの遺伝子産物(例えば、生合成酵素)の発現を含む。一実施形態において微生物は、操作されていない匹敵する微生物で発現されるレベルより高いレベルの遺伝子産物を過剰発現するように、遺伝学的に設計または操作されうる。
遺伝子操作には、特に限定されないが、特定の遺伝子の発現に関連する調節配列または部位の改変または修飾(例えば、強力なプロモーター、誘導性プロモーターもしくは複数のプロモーターの付加により、または発現が構成性になるように調節配列を除去することにより)、特定の遺伝子の染色体位置の修飾、リボソーム結合部位のような特定の遺伝子に隣接する核酸配列の改変、特定の遺伝子のコピー数の増加、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子の遺伝子産物の翻訳に関与するタンパク質(例えば、調節タンパク質、サプレッサー、エンハンサー、転写アクチベーターなど)の修飾、または当技術分野で慣例的な特定の遺伝子の発現の調節解除のための任意の他の従来手段(特に限定されないが、例えばリプレッサータンパク質の発現を阻止するためのアンチセンス核酸分子の使用が挙げられる)が含まれうる。遺伝子操作はまた、例えば経路を阻止するかまたはリプレッサーを除去するための、遺伝子の欠失を含むことができる。
別の実施形態において、微生物は、微生物の操作前に、または操作されていない匹敵する微生物で発現されるレベルより、高いレベルの遺伝子産物を過剰発現するように、物理的または環境的に操作することができる。例えば、微生物は、転写および/または翻訳が増強または上昇されるように、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子産物の翻訳を上昇させることが知られているかまたは疑われる物質で処理されるか、またはこの物質の存在下で培養することができる。あるいは、転写および/または翻訳が増強または上昇されるように、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子産物の翻訳を上昇させるように、選択された温度で培養することができる。
V. 組換え微生物の培養と発酵
「培養」という用語は、本発明の生きた微生物を維持および/または増殖させることを含む(例えば、培養物または株を維持および/または増殖させること)。一実施形態において本発明の微生物は、液体培地で培養される。別の実施形態において本発明の微生物は、固体培地または半固体培地で培養される。好適な実施形態において、本発明の微生物は、微生物の維持および/または増殖に必須であるかまたは有利である栄養物(例えば、炭素源または炭素基質、例えば炭水化物、炭化水素、油、脂肪、脂肪酸、有機酸、およびアルコール;窒素源、例えば、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムおよびリン酸アンモニウム;リン源、例えば、リン酸、そのナトリウムおよびカリウム塩;微量元素、例えばマグネシウム、鉄、マンガン、カルシウム、銅、亜鉛、ホウ素、モリブデン、および/またはコバルト塩;ならびに増殖因子、例えばアミノ酸、ビタミン、増殖促進因子など)を含む培地(例えば、無菌、液体培地)中で培養される。
好ましくは本発明の微生物は、制御されたpH下で培養される。「制御されたpH」という用語は、所望の生成物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)の産生を引き起こす任意のpHを含む。一実施形態において微生物は、約7のpHで培養される。別の実施形態において微生物は、6.0〜8.5のpHで培養される。所望のpHは、当業者に公知の多数の方法で維持することができる。
また好ましくは、本発明の微生物は、制御された通気下で培養される。「制御された通気」という用語は、所望の生成物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)の産生を引き起こすのに十分な通気(例えば、酸素)を含む。一実施形態において、通気は、例えば培地中に溶解した酸素の量を調節することにより、培養物中の酸素レベルを調節して制御される。好ましくは、培養物の通気は、培養物を攪拌することにより制御される。攪拌は、プロペラまたは同様の機械的攪拌装置により、培養容器(例えば、試験管またはフラスコ)を回転または振盪することにより、または種々のポンプ装置により、提供されうる。通気は、無菌空気または酸素を媒質(例えば、発酵混合物)中を通過させることによりさらに制御されうる。また好ましくは、本発明の微生物は、過剰の発泡無しで(消泡剤を添加することにより)培養される。
さらに本発明の微生物は、制御された温度下で培養することができる。「制御された温度」という用語は、所望の生成物(例えば、パントエートエステルおよび/またはパントテネート)の産生を引き起こす任意の温度を含む。一実施形態において、制御された温度は、15℃〜95℃の温度を含む。別の実施形態において制御された温度は、15℃〜70℃の温度を含む。好適な温度は、20℃〜55℃、さらに好ましくは30℃〜50℃である。
微生物は液体培地中で培養(例えば、維持および/または増殖)することができ、好ましくは、連続的にまたは間欠的に、従来の培養法、例えば静置培養、試験管培養、振盪培養(例えば、ロータリー振盪培養、振盪フラスコ培養など)、通気スピナー培養、または発酵により培養される。好適な実施形態において微生物は、振盪フラスコで培養される。さらに好適な実施形態において、微生物は、発酵槽中で培養される(例えば、発酵プロセス)。本発明の発酵法には、特に限定されないが、バッチ式、フェドバッチ式(fed-batch)、連続的発酵プロセスまたは方法が含まれる。「バッチプロセス」または「バッチ発酵」という語句は、培地、栄養物、補助添加物などの組成物が、発酵の最初にセットされ、発酵中に変更されないシステムを意味するが、培地の過剰の酸性化および/または微生物の死滅を防ぐために、pHや酸素濃度のような要因を制御する試みは行われうる。「フェドバッチプロセス」または「フェドバッチ式」発酵という語句は、発酵が進むにつれて、1つ以上の基質または補助剤が加えられる(量を増やしながら、または連続的に加えられる)ことを除くバッチ発酵を意味する。「連続的プロセス」または「連続的発酵」という語句は、規定の発酵培地が、発酵槽に連続的に加えられるシステムを意味し、好ましくは所望の生成物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)の回収のために、等量の使用済みまたは「馴らし」培地が同時に採取される。種々のこのようなプロセスが開発されており、当技術分野で周知である。
「所望の化合物が産生されるような条件下で培養する」という語句は、所望の化合物の産生を得るのに、または産生される特定の化合物の所望の収率を得るのに、適切なまたは十分な条件(例えば、温度、圧力、pH、持続時間など)下での、微生物の維持および/または増殖を含む。例えば、培養は、所望の量の化合物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)を産生するのに十分な時間続けられる。好ましくは、化合物の好適な産生を実質的に達成するのに十分な時間(例えば、パントエートおよび/またはパントテネートの好適な濃度、またはパントエートおよび/またはパントテネート:HMBPAの好適な比を達するのに十分な時間)培養が続けられる。一実施形態において、培養は、約12〜24時間続けられる。別の実施形態において、培養は、約24〜36時間、36〜48時間、48〜72時間、72〜96時間、96〜120時間、120〜144時間、または144時間以上続けられる。さらに別の実施形態において微生物は、約36時間で少なくとも約5〜10g/Lの化合物が産生されるような、約48時間で少なくとも約10〜20g/Lの化合物が産生されるような、または約72時間で少なくとも約20〜30g/Lの化合物が産生されるような、条件下で培養される。さらに別の実施形態において微生物は、約36時間で少なくとも約5〜20g/Lの化合物が産生されるような、約48時間で少なくとも約20〜30g/Lの化合物が産生されるような、または約72時間で少なくとも約30〜50または60g/Lの化合物が産生されるような、条件下で培養される。別の実施形態において微生物は、HMBPA:HMBPA+パントテネートの比が0.1:100またはそれ以下(すなわち、例えば生成物のサンプルをHPLCで分析する時のピーク面積を比較して測定すると、0.1% HMBPA対99.9%パントテネート)、好ましくは比が0.2:100またはそれ以下(0.2% HMBPA対99.8%パントテネート)、さらに好ましくは比が0.5:100またはそれ以下(0.5% HMBPA対99.5%パントテネート)が達成されるような条件下で培養される。さらに別の実施形態において微生物は、HMBPA:HMBPA+パントテネートの比が1:100またはそれ以下(すなわち、例えば生成物のサンプルをHPLCで分析する時のピーク面積を比較して測定すると、1% HMBPA対99%パントテネート)、好ましくは比が2:100またはそれ以下(2% HMBPA対98%パントテネート)、さらに好ましくは比が3:100またはそれ以下(3% HMBPA対97%パントテネート)、さらに好ましくは比が少なくとも4:100またはそれ以下(4% HMBPA対96%パントテネート)、5:100またはそれ以下(5% HMBPA対95%パントテネート)、6:100またはそれ以下(6% HMBPA対94%パントテネート)、7:100またはそれ以下(7% HMBPA対93%パントテネート)、8:100またはそれ以下(8% HMBPA対92%パントテネート)、9:100またはそれ以下(9% HMBPA対91%パントテネート)、10:100またはそれ以下(10% HMBPA対90%パントテネート)が達成されるような条件下で培養される。
本発明の方法論はさらに、所望の化合物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)を回収する工程を含む。所望の化合物を「回収する」という用語は、培地から所望の化合物を、抽出、採取、単離または精製することを含む。化合物を回収することは、当技術分野で公知の従来の単離または精製方法論に従って行うことができ、特に限定されないが、通常の樹脂(例えば、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂、非イオン性吸着樹脂など)による処理、通常の吸着剤(例えば、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、セルロース、アルミナなど)による処理、pHの変更、溶媒抽出(例えば、アルコール、酢酸エチル、ヘキサンなどの通常の溶媒を用いて)、透析、ろ過、濃縮、結晶化、再結晶化、pH調整、凍結乾燥などを含む。例えば、化合物は、培地からまず微生物を除去することにより培地から回収することができる。次に培地を、陽イオン交換樹脂中または上を通して陽イオンを除去し、次に陰イオン交換樹脂中または上を通して、目的の化合物より強い酸性度を有する無機陰イオンと有機酸を除去する。次に、本明細書に記載のように、生じる化合物を塩(例えば、カルシウム塩)に変換することができる。
好ましくは、本発明の所望の化合物は、生じる調製物が、他の培地成分を実質的に含まない(例えば、培地成分および/または発酵副産物を含まない)ように、「抽出」、「単離」または「精製」される。「他の培地成分を実質的に含まない」という言葉は、化合物が、培地成分から、またはそこから産生される培養物の発酵副産物から分離されている、所望の化合物の調製物を含む。一実施形態において調製物は、約80%(乾燥重量で)を上回る所望の化合物(例えば、他の培地成分または発酵副産物が約20%未満)、さらに好ましくは約90%を上回る所望の化合物(例えば、他の培地成分または発酵副産物が約10%未満)、さらにより好ましくは約95%を上回る所望の化合物(例えば、他の培地成分または発酵副産物が約5%未満)、および最も好ましくは約98〜99%を上回る所望の化合物(例えば、他の培地成分または発酵副産物が約1〜2%未満)を有する。所望の化合物が誘導体化されて塩にされると、化合物は好ましくはさらに、塩の生成に関連する化学的混入物質を含まない。所望の化合物が誘導体化されてアルコールにされると、化合物は好ましくはさらに、アルコールの生成に関連する化学的混入物質を含まない。
別の実施形態において所望の化合物は、例えば微生物が生物学的に有害ではない(例えば、安全である)場合、微生物から精製されない。例えば、全培養物(または培養上清)は、生成物の供給源(例えば、粗生成物)として使用することができる。一実施形態において培養物(または培養上清)は、修飾することなく使用される。別の実施形態において培養物(または培養上清)は、濃縮される。さらに別の実施形態において培養物(または培養上清)は、乾燥または凍結乾燥される。
好ましくは、本発明の産生法は、有意に高い収率で所望の化合物の産生を与える。「有意に高い収率」という語句は、匹敵する産生法では普通である収率より十分に高いまたは上である産生または収率レベル、例えば所望の産物の商業的産生に十分なレベルまで上昇しているレベル(例えば、商業的に妥当なコストでの生成物の産生)を含む。一実施形態において本発明は、所望の生成物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)が2g/Lより高いレベルで産生されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む産生法を特徴とする。別の実施形態において、本発明は、所望の生成物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)が10g/Lより高いレベルで産生されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む産生法を特徴とする。別の実施形態において、本発明は、所望の生成物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)が20g/Lより高いレベルで産生されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む産生法を特徴とする。さらに別の実施形態において、本発明は、所望の生成物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)が30g/Lより高いレベルで産生されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む産生法を特徴とする。さらに別の実施形態において、本発明は、所望の生成物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)が40g/Lより高いレベルで産生されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む産生法を特徴とする。さらに別の実施形態において、本発明は、所望の生成物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)が50g/Lより高いレベルで産生されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む産生法を特徴とする。さらに別の実施形態において、本発明は、所望の生成物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)が60g/Lより高いレベルで産生されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む産生法を特徴とする。本発明はさらに、商業的に望ましい期間内で十分に高レベルの化合物が産生されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む、所望の化合物を産生するための産生法を特徴とする。
操作される生合成酵素または生合成酵素の組合せに依存して、所望の化合物が産生されるように、本発明の微生物に少なくとも1つの生合成前駆体を提供(例えば供給)することが望ましいかまたは必要な場合がある。「生合成前駆体」または「前駆体」という用語は、微生物の培地に提供された場合、接触させられた場合、または含まれた場合、所望の生成物の生合成を増強または上昇させるように機能する物質または化合物を含む。一実施形態において、生合成前駆体または前駆体はアスパルテートである。別の実施形態において、生合成前駆体または前駆体はβ-アラニンである。加えられるアスパルテートまたはβ-アラニンの量は、好ましくは微生物の生産性を増強するのに十分な培地中の濃度(例えばパントエートおよび/またはパントテネートの産生を増強するのに十分な濃度)を与える量である。本発明の生合成前駆体は、濃縮溶液または懸濁液の形態(例えば、水または緩衝液のような好適な溶媒中)で、または固体形態(例えば、粉末の形態で)で加えることができる。さらに、本発明の生合成前駆体は、単一のアリコートとして、所与の期間をかけて連続的または間欠的に加えることができる。「過剰のβ-アラニン」という用語は、当該微生物を培養するために慣例的に使用されるものより、上昇したまたは高いβ-アラニンレベルを含む。例えば本実施例に記載のバチルス(Bacillus)微生物の培養は、約0〜0.01g/Lのβ-アラニンの存在下で慣例的に行われる。従って、過剰のβ-アラニンレベルは、約0.01〜1、好ましくは約1〜20g/Lのレベルを含むことができる。
さらに別の実施形態において、生合成前駆体はバリンである。さらに別の実施形態において、生合成前駆体はα-ケトイソバレレートである。好ましくはバリンまたはα-ケトイソバレレートは、所望の生成物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)の産生に十分な培地中の濃度を与える量で加えられる。「過剰のα-KIV」という用語は、当該微生物を培養するために慣例的に使用されるものより、上昇したまたは高いα-KIVレベルを含む。例えば本実施例に記載のバチルス(Bacillus)微生物の培養は、約0〜0.01g/Lのα-KIVの存在下で慣例的に行われる。従って、過剰のα-KIVレベルは、約0.01〜1、好ましくは約1〜20g/Lのα-KIVレベルを含むことができる。「過剰のバリン」という用語は、当該微生物を培養するために慣例的に使用されるものより、上昇したまたは高いバリンレベルを含む。例えば本実施例に記載のバチルス(Bacillus)微生物の培養は、約0〜0.5g/Lのバリンの存在下で慣例的に行われる。従って、過剰のバリンレベルは、約0.5〜5g/L、好ましくは約5〜20g/Lのバリンレベルを含むことができる。生合成前駆体はまた、本明細書において「補助生合成基質」と呼ぶ。
本発明の別の態様は、本明細書に記載の組換え微生物を特徴とする生体内変換プロセスを含む。「生体内変換プロセス」という用語(本明細書において「生物変換プロセス」とも呼ぶ)は、適切な基質および/または中間体化合物の所望の生成物(例えば、パントエートおよび/またはパントテネート)への産生(例えば、トランスフォーメーションまたは変換)を引き起こす生物学的プロセスを含む。
生体内変換反応で使用される微生物および/または酵素は、これらがその目的の機能(例えば、所望の化合物の産生)を果たすことを可能にする形態である。微生物は細胞全体であるか、または所望の最終結果を得るのに必要な細胞の部分のみでもよい。微生物は、懸濁し(例えば、緩衝溶液または培地のような適切な溶液中)、すすぎ(例えば、微生物を培養する培地をすすいで除去)、アセトン乾燥し、固定化し(例えば、ポリアクリルアミドゲル、またはk-カラゲナンまたは合成支持体、例えば、ビーズ、マトリックスなど)、固定し、架橋または透過性化(例えば、化合物、例えば基質、中間体または生成物が、より容易に該膜または壁を通過できるように、膜および/または壁を透過性化する)することができる。
VI. パントテネートとHMBPAの選択的に混合した組成物の産生法
本発明はさらに、パントテネートとHMBPAの選択的に混合した組成物の産生のための方法と微生物を特徴とする。本明細書において定義する「選択的に混合した組成物」という語句は、パントテネート対HMBPAの比が制御された特徴があるように(すなわち、パントテネート対HMBPAの比が選択される)産生される組成物を含む。選択は、一方の成分が他方よりも産生が好ましいように、組成物を産生する微生物(すなわち、産生株)を操作することにより生じうる。
一態様において本発明は、調節解除されたパントテネート生合成経路を有する微生物を、選択的に混合されたパントテネート:HMBPA組成物が産生されるような条件下で培養することを含む、選択的に混合されたパントテネート:HMBPA組成物の産生法を特徴とする。一実施形態において微生物は、パントテネート産生に好ましい条件下で培養される。別の実施形態において微生物は、HMBPA産生に好ましい条件下で培養される。別の実施形態において微生物は、パントテネート産生に好ましい制御された定常状態グルコースの条件下で培養される。別の実施形態において微生物は、HMBPA産生に好ましい制御された定常状態グルコースの条件下で培養される。さらに別の実施形態において微生物は、パントテネート産生に好ましい制御された定常状態溶存酸素の条件下で培養される。さらに別の実施形態において微生物は、HMBPA産生に好ましい制御された定常状態溶存酸素の条件下で培養される。さらに別の実施形態において微生物は、パントテネート産生に好ましい制御されたセリンレベルの条件下で培養される。一実施形態において組成物は、パントテネートとHMBPAを、75molパントテネート対25mol HMBPAまたはそれ以上の比率で含む。別の実施形態において組成物は、パントテネートとHMBPAを、90molパントテネート対10mol HMBPAまたはそれ以上の比率で含む。別の実施形態において組成物は、パントテネートとHMBPAを、75mol HMBPA対25molパントテネートまたはそれ以上の比率で含む。さらに別の実施形態において組成物は、パントテネートとHMBPAを、90mol HMBPA対10molパントテネートまたはそれ以上の比率で含む。本明細書に記載の含まれる値と範囲および/または値の中間値はまた、本発明の範囲内にあることが意図される。
本発明を以下の実施例でさらに例示するが、これらは限定するものとして解釈すべきではない。本出願を通して引用されたすべての文献、特許および公開された特許出願の内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
実施例I:[R]-3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸(HMBPA)生合成経路の発見と特性解析
パントテネートの産生のためのバチルス(Bacillus)株の開発において、米国特許出願第09/400,494号、および米国特許出願第09/667,569号に記載のように、パントテネート生合成経路とイソロイシン−バリン(ilv)経路(図1)に関与する遺伝子と酵素に、種々の遺伝子操作を行った。例えば、制御解除されたpanBCDオペロンを有するかおよび/または制御解除されたpanE1を有する株は、パントテネート産生の増強を示す(β-アラニンとα-ケトイソバレレート(α-KIV)の存在下で培養した時)。ilvBNCとilvDについてさらに制御解除された株は、β-アラニンのみの存在下でパントテネート産生の増強を示した。さらに、panDをさらに制御解除することにより、β-アラニン非依存性を達成することができる。
株の例はPA824であり、これは、トリプトファン原栄養体で、SpecとTet耐性で、panBCD遺伝子座でpanBCDについて制御解除され、panE1遺伝子座でpanE1について制御解除され(枯草菌(B. subtilis)ゲノム中の2つの遺伝子は、大腸菌(E. coli)のpanEであるpanE1とpanE2と相同的であり、前者は、パントテネート産生に関与する主要なケトパントエート還元酵素をコードするが、panE2は、パントテネート合成に寄与しない(米国特許出願第09/400,494号))、ilvD遺伝子座でilvDについて制御解除され、amyE遺伝子座でilvBNCカセットを過剰発現し、bpr遺伝子座でpanDを過剰発現する。
以下の発酵条件下で、PA824はルーチンに約20〜30g/Lのパントテネートを産生する。本実施例におけるPA824によるパントテネートの産生は、14リットルの発酵槽で行われる。バッチの組成物と栄養培地は以下の通りである。
Figure 0004217070
バッチ培地の最終容量は6リットルである。微量元素溶液SM-1000Xは以下の組成を有する:0.15 g Na2MoO4・2H2O、2.5 g H3BO3、0.7 g CoCl2・6H2O、0.25 g CuSO4・5H2O、1.6 g MnCl2・4H2O、0.3 g ZnSO4・7H2Oを水に溶解する(最終容量1リットル)。
バッチ培地に、60mlの振盪フラスコ中のPA824培養物を接種する(OD=10、SVY培地中:740mlの水中、Difco Vealインフュージョンブロス25g、Difco酵母エキス5g、グルタミン酸ナトリウム5g、(NH4)2SO4 2.7gをオートクレーブし、200mlの無菌の1M K2HPO4 (pH7)と60mlの無菌の50%グルコース溶液を加える(最終容量1リットル))。発酵を、43℃で通気速度12リットル/分で、グルコース制限栄養バッチとして行った。最初のバッチのグルコース(2.5g/L)は、指数増殖期中に消費された。次に、以下のように栄養(FEED)溶液の連続的供給により、グルコース濃度を0.2〜1g/Lに維持した。
Figure 0004217070
可変供給速度ポンプはコンピューター制御し、アルゴリズムによりタンク中のグルコース濃度と関連付けた。この例では、総供給量は6リットルであった。
発酵の間、pHは7.2とした。コンピューター制御と関連付けたpH測定により制御を行った。pH値は、25%NH3溶液、または20%H3PO4溶液を供給することにより維持した。NHは、同時に発酵の窒素源としてもはたらく。溶存酸素濃度[pO2]は、攪拌速度と通気速度を制御して30%に設定した。シリコーン油を加えて発泡を抑えた。栄養溶液の添加を停止した後(本実施例では48時間後)、[pO2]値が95%になるまで発酵を続けた。次に、30分滅菌して微生物を死滅させて、発酵を停止させた。発酵ブロスのサンプルを寒天プレートに広げて、滅菌がうまくいったことを証明した。発酵ブロス中のパントテネート力価は、滅菌してから遠心分離により細胞を除去した後に、21.7g/Lであった(HPLC分析により測定した)。
HPLC分析のために発酵ブロスサンプルを、無菌水で希釈した(1:40)。この希釈液の5μlを、HPLCカラム(AquaC18、5μm、150×2.0mm、Phenomenex(登録商標))に注入した。カラム温度は40℃とした。移動相Aは14.8mM H3PO4、移動相Bは100%アセトニトリルである。流速は、0.5ml/分で一定であった。以下の勾配を適用した:
開始時:2%移動相B
0〜3分:3%移動相Bまで線形的に増加
3〜3.5分:20%移動相Bまで線形的に増加
検出は、UV検出器により行った(210nm)。実施時間は7分であり、その後追加的に3分行った。パントテン酸の保持時間は、3.9分であった。上記サンプルのHPLCクロマトグラムを、図4に示す。
保持時間4.7分を有するピークに関連する化合物の同定
多量のパントテネートの産生以外に、この系で保持時間約4.7分で溶出する第2の化合物が発見された。発酵において生成された第2の主要な生成物は、3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸(HMBPA)であることが証明された(本明細書において、「β-アラニン2-(R)-ヒドロキシイソバレレート」、「β-アラニン2-ヒドロキシイソバレレート」、「β-アラニル-α-2-ヒドロキシイソバレレート」および/または「ファントテネート」とも呼ぶ)。これは、その質量スペクトル(図5:相対的モノアイソトピック質量189)によって、そして逆相フラッシュクロマトグラフィー(移動相は10mM KH2PO4と、含量を増加させていくアセトニトリル(1〜50%))によるクロマトグラフィー精製後に行った1H-および13C-NMRにより、同定された(データは示していない)。化合物は、[R]-パントテネートとの類似性により、不斉炭素がR配置をとると推定された。
化合物の正体を確認するために、わざとラセミ体のβ-アラニン2-ヒドロキシイソバレレートの合成を行った。β-アラニン(2.73g/30mmol)とナトリウムメトキシド(メタノール中30%溶液を5.67g/31.5mmol)を、メタノール(40ml)に溶解した。メチル2-ヒドロキシイソバレレート(2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチルエステル)(3.96g/30mmol)を加え、18時間還流した。次に、メタノールをRotavapで除去し、tert-ブタノール(50ml)で置き換えた。カリウムtert-ブトキシドを加え(50mg)、26時間還流した。溶媒を減圧除去し、残渣を水(50ml)に溶解し、強酸性イオン交換樹脂(H+型LewatiteTMS 100G1;100ml)に通した。さらに水を使用してイオン交換機を洗浄した。水性溶出液を1つにまとめて、水を減圧除去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;溶出液として2%酢酸を含む酢酸エチル)に付して、生成物画分を蒸発させて、固体残渣を得た。残渣を酢酸エチル/トルエン(それぞれ、10ml/20ml)から再結晶化し、分析的に純粋なHMBPA(β-アラニン2-ヒドロキシイソバレレート)を得た。これは、質量分析計で190(189+H+)の相対的モノイソトピック質量を示し、発酵から得られた生成物と同じ1H-NMR共鳴を示した。
HMBPA産生に至る生合成経路を図2に示す。[R]-3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸(HMBPA)の化学構造を図3に示す。図2に示すように、HMBPAは、[R]-α-ヒドロキシイソ吉草酸(α-HIV)とβ-アラニンの、PanC酵素により触媒される縮合産物である。α-HIVは、α-KIVの還元により生成され、これは、α-ケト還元酵素であるPanE(例えば、PanE1および/またはPanE2)および/またはIlvCにより触媒される反応である。
化学構造とHMBPA産生に至る生合成経路に基づき、本発明者らは、従来公知のパントテネートとイソロイシン−バリン(ilv)経路と新たに特性解析されたHMBPA生合成経路の間の相互作用を説明するための以下のモデルを作成した。少なくとも1つの態様において、このモデルは、微生物に、生合成酵素PanBの基質であるα-KIVに対して競合する少なくとも2つの経路(すなわち、パントテネート生合成経路とHMBPA生合成経路)が存在することを示す。(α-KIVについて競合する第3の経路と第4の経路は、α-KIVからバリンまたはロイシンの産生に至るものである、例えば図1を参照)。少なくともパントテネート生合成経路とHMBPA生合成経路は、酵素PanCの競合的基質(すなわち、α-HIVとパントテン酸)を産生する。HMBPAの産生はパントテネートの産生に顕著に影響を及ぼす。最も重要なことは、HMBPA経路は、前駆体(α-KIVとβ-アラニン)およびいくつかの酵素(PanC、PanD、PanE1、および/またはIlvC)についてパントテネート経路と競合することである。さらに、HMBPAの構造は、パントテネートの構造と似ているため、パントテネート経路の1つ以上のステップを抑制的に調節するという好ましくない性質を有するかも知れない。このモデルは、パントテネートの産生が、HMBPA生合成経路と比較して、パントテネート生合成経路中の基質(α-KIVとβ-アラニン)および/または酵素(PanC、PanD、PanE1、および/またはIlvC)を優先的に利用させる何らかの手段により、向上または最適化されることを予測するものである。
HMBPA産生を最小にしながらパントエートおよび/またはパントテネート産生を最大にする好適なアプローチは、細胞中のPanBの活性を上昇させることである。なぜなら、これにより、α-HIV合成のためのα-KIVの利用性が低下し、一方ケトパントエートとパントエートの合成が促進されるからである。活性を上昇させる方法には、panB遺伝子を過剰発現させること、遺伝子のコピー数を増大させること、酵素の比活性を上昇させること、および/または、突然変異によりもしくは補酵素Aレベルを低下させることにより酵素の阻害を緩和させることが挙げられる。より高いパントエートレベルは、パントテネート合成を増加させ、PanCについてα-HIVと競合することにより、HMBPA合成を低下させる。
パントテネート合成を最大にする別のアプローチは、PanE1発現のレベルを最適化することである。本明細書において、PanE1の産生を増加させると、パントテネートを犠牲にしてHMBPAの合成が増加することが証明されている。従って、PA824またはPA668中のPanE1発現のレベルを少し低下させる(すなわち、panE1発現のレベルを正確に調節する)と、HMBPA合成が低下し、パントテネート合成が増加する。さらに実施例IIに示すように、panE2の欠失は、HMBPA合成を大幅に低下させる。
HMBPA合成と比較して、パントエートおよび/またはパントテネートの合成を増加させる他のアプローチは、細胞中のα-KIV産生レベルを最適化させること、および/または基質としてのパントイン酸に対する選択性が増加した改変PanCタンパク質を単離することを含む。
以下の実施例は、本明細書に記載のモデルに対して実験的サポートを提供し、このモデルに基づきパントエートおよび/またはパントテネートの産生を(HMBPAレベルに対して)増加させる方法を、さらに例示するものである。
実施例II〜VIII:
実施例II〜VIについて、パントテネートおよび/またはHMBPAの定量は、以下のように行った。発酵培地のアリコートを1:100に希釈し、試験管培養物のアリコートを水または5%アセトニトリルで1:10に希釈した後、Phenomenex AquaTM 5μ C18 HPLCカラム(250×4.60mm、125A)に注入した。移動相は、A=5%アセトニトリル、リン酸でpH2.5に調整した20mMリン酸一ナトリウム緩衝液;およびB=95%アセトニトリル、5%H2O。
線形勾配は以下の通りであった。
Figure 0004217070
追加のパラメータと装置は以下の通りである:流速=1.0ml/分;注入容量=20μl;検出器=Hewlett Packard 1090シリーズDAD UV検出器-3014、シグナルA=197nm、標準=450nm、Firmware revision E:カラムヒーター=オーブン温度40℃;ハードウェア=Hewlett Packard KayakTM XA;およびソフトウェア=Hewlett Packard Chemstation PlusTM family revision A.06.03[509]。
HMBPAは、この系で約13分に溶出する。
実施例II:パントテネート産生株からPanE2を欠失させることによりHMBPA合成を低減させる
実施例1に記載のように、HMBPA産生は最初に、panE1を過剰発現する微生物で観察された。このことは、ケトパントイン酸還元酵素が、ケトパントエートからパントエートへの還元のみでなく、α-ケトイソバレレートから2-ヒドロキシイソバレレートへの還元も触媒することを示している。前記したように、枯草菌(B. subtilis)ゲノム中の2つの遺伝子が、ケトパントイン酸還元酵素をコードする大腸菌(E. coli)panE遺伝子に相同的であり、それらはpanE1とpanE2と命名されている。バチルス(Bacillus)では、panE1遺伝子は、パントテネート産生に関与する主要なケトパントイン酸還元酵素をコードするが、panE2は、パントテネート合成に寄与しないことが証明されている。さらにpAN238(配列番号25)中のP26panE2カセットからのpanE2の過剰発現により、パントテネート力価が低下する(例えば、米国特許出願第09/400,494号を参照)。panE2遺伝子産物とpanE1遺伝子産物の間の相同性、およびpanE2の過剰発現がパントエート/パントテネートから産生をシフトさせるという事実に基づき、panE2はHMBPAの産生に有効な様式で寄与するかどうかを試験した。panE2遺伝子産物は、α-KIVをα-HIVに還元できる酵素であるが、ケトパントエートをパントエートに有効に還元することはできないと仮定した。
この仮説を検定するために、PA248株(ΔpanE2::cat)の染色体DNA由来のΔpanE2::catカセット(配列番号24として記載、構築については米国特許出願第09/400,494号を参照)で形質転換して、パントテネート産生株PA824(実施例1に記載)からpanE2を欠失させて、株PA919を得た。PA919の3つの単離株を、SVY+β-アラニン中で増殖させた試験管培養物中のパントテネートとHMBPA産生について、PA824と比較した。
表1.SVYグルコース+β-アラニン 5 の43℃で48時間にわたる試験管培養物中で増殖させたPA824とPA880の誘導体によるパントテネートとHMBPAの産生
Figure 0004217070
表1のデータで示すように、PA919の3つの単離株すべてが、PA824の約1/4量のHMBPAを産生し、これは、panE2遺伝子産物がHMBPA産生に寄与したこと、およびHMBPA産生が、単にpanE2を欠失させるだけで、パントテネート産生を犠牲にすることなく、少なくとも部分的に除去されうることを証明している。
実施例III. HMBPA産生とパントテネート産生は逆相関する
P26 panBCDカセットについて欠失しており、vpr遺伝子座で増幅されたP26 panC*Dカセット(PA666)、およびbpr遺伝子座で増幅された野生型P26 panBカセット(PA666)もしくはP26 ΔpanBカセット(PA664)を含有するPA365から誘導される株(PA377のRL-1系統同等物、米国特許出願第09/667,569号に記載)を以下のように構築した。既知のまたは疑いのあるPanBタンパク質のC末端アミノ酸のアライメントを、図6に示す。保存アミノ酸残基または半保存アミノ酸残基を有する1、2および3と呼ぶ3つの領域を同定した。それらの領域は図の上の矢印で示している。枯草菌(B. subtilis)PanBタンパク質(RBS02239)に下線を引いてある。PanBタンパク質のうちの2つ(RCY14036とCAB56202.1)は領域3を欠失しており、後者のPanBタンパク質はさらに領域2を欠失し、かつ領域1を占める非保存アミノ酸残基を有する。
領域1、2および3を欠失した枯草菌(B. subtilis)PanB変異体を作製した。領域3、領域2と3、または3つの領域すべてを最終産物から欠失するように、枯草菌(B. subtilis)panB遺伝子を増幅するための3' PCRプライマーを設計することにより、所望の変異体を作成した。PCR産物を生成し、それを大腸菌(E. coli)発現ベクターpASK-1BA3中にクローン化して、それぞれプラスミドpAN446、pAN447、およびpAN448を作製した、次にプラスミドを、panB6変異を含有する大腸菌(E. coli)株SJ2中に形質転換して、相補性試験を行った。領域3を欠失したpAN446のみが相補することができた。これは、領域3が、枯草菌(B. subtilis)のPanB活性に必須のものではなく、領域2が活性または安定性に必要であることを示している。
この分析の次の工程は、pAN446由来のPanB遺伝子を枯草菌(B. subtilis)発現ベクターに導入し、次にそれにコードされたPanBタンパク質の活性を枯草菌(B. subtilis)中で試験するのに適した株中にそのベクターを導入することであった。このためにまず、P26 panBCDオペロンが欠失した株を作製した。これはまず、panB RBSのすぐ上流に位置するBseRI部位とpanD中に位置するBglII部位の間にcat遺伝子を挿入して、配列番号20のプラスミドpAN624(図7)を作製することにより行った。
得られた欠失-置換突然変異(ΔpanBCD::cat624)はpanBとpanCのすべてが除去されたものであり、それを形質転換によりPA354中へと掛け合わせ、1mMパントテネートを補足したプレート上でクロラムフェニコールへの耐性について選択した。形質転換体の1つを保存し、PA644と名付けた。PA644から単離した染色体DNAをPCRにより分析し、欠失-置換突然変異を有することを証明した。予測されたように、PA644は、増殖のためにパントテネートを必要としているが、作製したilv遺伝子(P26ilvBNC P26ilvD)ならびに元々PA354中に存在するP26panE1遺伝子を保持する。すなわち、これは、PanB以外の過剰産生されるパントエート合成に関与するすべての酵素を有する。最も短いpanB欠失を含有する遺伝子を枯草菌(B. subtilis)発現ベクターpOTP61(米国特許出願第09/667,569号に記載されている)に挿入し、プラスミドpAN627を作製した。同時に野生型panB対照遺伝子をpOTP61中に挿入してプラスミドpAN630を作製した。大腸菌(E. coli)ベクター配列を欠如させた各プラスミドのNotI断片を連結し、PA644中に形質転換し、テトラサイクリンに対する耐性について選択した。
各形質転換から形質転換体を1つずつ保存し、それをPan+について選択性を有するPA628由来の染色体DNAを用いてさらに形質転換した。PA628は、vpr遺伝子座に組み込まれた複数コピーのP26panC*D発現プラスミド(pAN620)を含有する。パントテネート産生へのpanB遺伝子突然変異の効果を直接測定するために、プラスミドpAN620(配列番号21)(図8に示す)は、パントテネート合成のために必要な残りの2つの酵素(PanCとPanD)を提供する。各形質転換から4つの形質転換体を単離し、10g/Lアスパルテート(aspartate)を含有するSVY培地中で48時間増殖させ、次にパントテネート産生についてアッセイした。3'側欠失型panB遺伝子を有する形質転換体をPA664と名付け、野生型遺伝子を含有するものをPA666と名付けた。データは、PA664中の3'側欠失型panB遺伝子が、大幅に活性が低下したPanBタンパク質をコードすることを示した。HMBPA産生について試験するために、PA365、PA666、およびPA664の試験管培養物を、α-KIVまたはパントエートを含有するSVY+アスパルテート培地およびこれらを含有しないSVY+アスパルテート培地中で48時間増殖させ、次に前記したようにHMBPAとパントテネートについてアッセイした。
表2.HMBPAとパントテネート産生に対するPanB活性と前駆体の添加の効果。48時間にわたる試験管培養物データ、SVY+アスパルテート(10g/L)培地
Figure 0004217070
表2に示すデータは、補充物質の不在下で、PA666がHMBPAを最も少なく産生し、PA664がHMBPAを最も多く産生したことを示す。このことは、PanB活性とHMBPA産生の間に逆相関があることを示す。これは、PanBの基質であるα-KIVについて2つの経路が競合しており、それらがPanCに対する競合性基質を産生すること;およびPanB活性を低下させると、α-HIV合成のためのα-KIV利用性が増大し、これに対応して、合成されるパントエートの量が低下することが期待されることを予測する前記モデルと一致する。培地にα-KIVを加えると、3つの株すべてが非常に多量のHMBPAを産生した。この結果は、図2に示すようにα-KIVがHMBPAの前駆体であり、過剰のα-KIVがHMBPA産生を促進することを意味する。この結果はまた、HMBPAの合成が、少なくとも部分的には、過剰のα-KIV産生のオーバーフロー効果によることを示唆する。培地にパントエートを加えると、3つの株すべてでHMBPAはほぼ50パーセント低減した。逆に、それらの株のぞれぞれは、非常に多量のパントテネートを産生した。この結果はまた、2つの経路が、PanCに対する競合性基質(α-HIVとパントエート)を産生するというモデルに一致する。これらをまとめると、上記結果は、パントエート合成を増加させることは、パントテネート産生の促進ならびにHMBPAレベルの低下に有用であることを、さらに示している。さらに、パントエート合成を低下させる要因は、パントテネート合成に対して抑制的に作用する。
実施例IV. パントテネートの産生に対するPanBの増加および/またはPanE1の制御の効果
PA668は、vprまたはpanB遺伝子座で増幅されたP26panBの追加のコピーを含有するPA824の誘導体である。PA668は、クロラムフェニコールを使用して複数のコピーの選択を可能にするpanB発現ベクター(pAN636、配列番号22)(図9)を使用して作製した。大腸菌(E. coli)ベクター配列を欠失しているpAN636 NotI制限断片を連結し、次にこれを使用してPA824を形質転換し、5μg/mlクロラムフェニコールを含有するプレート上で選択した。30μg/mlのクロラムフェニコールに対して耐性の形質転換体を単離し、48時間にわたる試験管培養物中のパントテネート産生についてスクリーニングした。示した単離株は、PA824より少ないHMBPAを産生する(逆に、PA824より約10パーセント多いパントテネートを産生する)。vprまたはpanE1遺伝子座で増幅されたP26panE1の追加のコピーを含有するPA824である第2の株(PA669と呼ぶ)を、構築した。PA669株は、PA824をプラスミドpAN637(配列番号23)(図10)の自己連結NotI断片で形質転換し、クロラムフェニコールに対する耐性について選択することにより、構築した。PA669の2つの単離株をさらなる試験のために選択した。その2つの株から作製される総細胞抽出物をSDS-PAGE分析により判定すると、PA669-5は、PA669-7より少ないPanE1を産生する。
PA824、PA668-2、PA668-24株、およびPA669の2つの単離株(PA669-5とPA669-7)の試験管培養物を、3つの異なる培地(SVY、SVY+アスパルテート、およびSVY+アスパルテート+パントエート)中で48時間増殖させ、次にパントテネート、HMBPA、およびβ-アラニンについてアッセイした(表3)。
表3.PA824によるパントテネート産生およびHMBPA産生に対するpanBとpanE1の追加のコピーの効果。48時間にわたる試験管培養物データ、SVY培地
Figure 0004217070
そのいずれの株も、SVY培地で検出可能な量のHMBPAを産生しなかった。すべての株は、ほぼ等量のパントテネートと少量のβ-アラニンを産生した。このことは、これらの培養物ではパントテネート合成とHMBPA合成の両方についてβ-アラニンが制限要因であり、β-アラニンが両方の化合物の前駆体であることを示している。SVY+アスパルテート培地で増殖させると、2つのPA669単離株は、PA824より多量のHMBPAを産生し、一方両方のPA668単離株が、PA824より少ないHMBPAを産生した。最も多くのPanE1を産生する株(PA669-7)が、最も多くのHMBPA(および最も少ないパントテネート)を産生することが注目される。これは、高レベルのPanE1が、低レベルのパントテネート合成のおかげで、HMBPAの産生を促進することを示唆する。また、2つの株からの抽出物のSDS-PAGE分析は、これらがほぼ同等レベルのPanBを産生することを示したにも関わらず、PA668-24がPA668-2よりも多くのHMBPAを産生したことは興味深い。SDS-PAGE分析はまた、PA668-24が、PA668-2より、はるかに多くのIlvCを生成することも示した。これらのデータに基づき、IlvCが、定常状態レベルのα-KIVを増加させ、および/またはα-KIVからのα-HIV生成を触媒することにより、HMBPA合成に影響を与えることが推定され、その結果としてHMBPAの産生へのシフトが観察されると説明される。
表3の最後のデータセットは、増殖培地にパントエートを加えると、例えばパントテネートに合成をシフトさせることにより、それまで検出可能なレベルを産生していたすべての株によるHMBPA産生を低下させたことを示す。これは、α-HIVとパントエートがPanCに対する競合性基質であるという前記モデルをさらに支持する。
実施例V:産生株におけるパントテネートキナーゼの低減による、パントテネート合成の増加
パントテネート産生を増加させる1つの方策は、産生株におけるパントテネートキナーゼ活性の量を低下させることである。パントテネートキナーゼは、パントテネートから補酵素Aへの経路の最初の酵素である。低いパントテネートキナーゼ活性が、補酵素Aの定常状態レベルを低下させ、これが次に、高いPanB酵素活性とより高力価のパントテネートをもたらすと仮定した。米国特許出願第09/667,569号に記載のように、いずれもパントテネートキナーゼをコードする2つの無関係の遺伝子が枯草菌(B. subtilis)中で同定された。すなわち、1)coaA、これは必須の大腸菌(E. coli)パントテネートキナーゼ遺伝子と相同なものであり、2)coaX、これは、新規クラスの細菌性パントテネートキナーゼ遺伝子である。
coaAとcoaXのいずれかを、野生型枯草菌(B. subtilis)株から欠失させても、豊富培地または最小培地上での増殖に顕著な影響は無い。しかし、両方の遺伝子に欠失を有する株を作製することはできないことから、そのいずれか1つが生存能力に必要であることが示唆される。そこで、coaXを欠失した株を構築し、次にcoaAを突然変異させてCoaA酵素の比活性を低下させた。ΔcoaX(突然変異coaA株)の表現型は微妙なものであるが、そのデータは、パントテネートキナーゼ活性を制限することによりPanB活性を増加させることができるという前記仮説と一致する。これが順次、HMBPA産生を低下させ、パントテネート産生を増加させる。
ΔcoaXと突然変異型coaA対立遺伝子のPA824への導入
PA824からのcoaXの欠失は、米国特許出願第09/667,569号に記載のPA876(PY79 ΔcoaX::kan)由来の染色体DNAを用いて、PA824をカナマイシン耐性に形質転換しPA880を作製することにより、単一工程で行った。PA880とPA876中のcaaXの欠失は、最終的に、プラスミドpAN336(配列番号26、米国特許出願第09/667,569号を参照)から誘導された。次に、野生型coaA遺伝子の対照バージョンとcoaAの2つの突然変異型対立遺伝子を、以下のように導入した。対照と2つの突然変異型対立遺伝子をまず、プラスミドによるクロラムフェニコール耐性への形質転換を使用して、野生型株PY79の染色体中に導入し、次にこれらの中間体株からの染色体DNAを使用して、PA880をクロラムフェニコール耐性に形質転換した。対照と変異対立遺伝子を組み込むのに使用したプラスミドは、pAN294(配列番号27、米国特許出願第09/667,569号を参照)、pAN343、およびpAN344である。pAN343は、ほとんどpAN294と同一であるが、pAN294の塩基番号3228にてTからCへの塩基変化を有する点が異なる。同様にpAN344は、pAN294の塩基番号3217と3218にてCCからTAへの変化を有する。3つのプラスミドすべては、機能が未知の可欠遺伝子yqjTを置換するクロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)を有し、これはcoaAのすぐ下流にある。pAN294(野生型coaA、yqjT::cat)、pAN343(coaA2 Y155H、yqjT::cat)、およびpAN344(coaA2 S151L、yqjT::cat)の2重乗換えにより、PY79から誘導される中間体株を、それぞれPA886、PA887、およびPA888と名付けた。次にPA880を、PA886、PA887、またはPA888由来の染色体DNAを用いてクロラムフェニコール耐性に形質転換し、それぞれPA892(野生型coaA、cat)、PA893(coaA Y155H、cat)、およびPA894(coaA S151L、cat)を得た。PA893の8つの候補を、coaA遺伝子とNlaIII消化のPCRによるY155H突然変異の獲得についてチェックすると、8つすべてが正確であった。
PA880を含む新しい株のそれぞれについてのいくつかの候補を、SVY培地+5g/L β-アラニンで増殖させた標準的な試験管培養物中、43℃でのパントテネート産生についてアッセイした。
表4.SVYグルコース+β-アラニンの48時間にわたる試験管培養物として43℃で増殖させた、coaXを欠失しcoaAについて突然変異したPA824の誘導体によるパントテネートとファントテネートの産生
Figure 0004217070
β-アラニンを含有する培地中で、PA894(S151L)は、平均して、PA892(野生型coaAと同系遺伝子株)よりわずかに高いパントテネートレベルを与えたが、PA893(Y155H)はそうではなかった。PA880は、その同系遺伝子親株であるPA824(4.4および4.1g/L)より有意に高いパントテネート(5.5および5.1g/L)を与え、またPA894(平均4.7g/L)よりわずかに高いパントテネートレベルを与えた。PA892、PA893、およびPA894中に存在するΔyqjT::cat挿入(PA880は異なる)は、突然変異型coaA対立遺伝子から生じうる何らかの利益を無効にするという効果を有する可能性がある。
新しい株からのパントテネート力価の範囲が狭いにもかかわらず、HMBPAの産生について非常に顕著なパターンが観察された。coaXを欠失させたすべての株で、HMBPA力価は、PA824より2〜3倍低かった。これは、HMBPA産生が、部分的にはPanB活性の制限により生じるという理論に一致する。従って、ΔcoaXは、PanB活性の増加を引き起こす。
実施例VI:産生株におけるPanBの増加とパントテネートキナーゼの低減の組合せによるパントテネート合成の増加
クロラムフェニコールにより増幅されるように設計された追加のPanB発現カセットを含有するPA668(実施例IVを参照)は、その前身であるPA824より、より多くのパントテネートとより少ないHMBPAを産生する。PA824からのcoaXの欠失はまた、HMBPA産生を低下させ、パントテネート産生をわずかに改善するため(PA880)、2つの改変を組合せた株を構築し、パントテネート産生について試験した。プラスミドpAN636(図9)をNotIで消化し、連結して環状にし、これを使用してクロラムフェニコール耐性になるようPA880を形質転換してPA911を得た。PA911のいくつかの単離株をPCRにより試験して、このプラスミドがvprにて意図した通りに組み込んだか、またはpanB(これにも組み込むことができる)にて組み込んだかを確認した。両方の型が見つかった。PA911、PA911-5およびPA911-8の各型について1つの単離株を、テトラサイクリン(panDカセット)とクロラムフェニコール(panBカセット)上で増幅させ、SVY+β-アラニン(表1を参照)で増殖させた試験管培養物中のパントテネート産生について試験した。両方の単離株は、親株のPA880よりも多いパントテネートとわずかに少ないHMBPAを産生した。さらに、PA668単離株と一致して、panBにpanBカセットを組み込んだPA911-8は、最も高いレベルのパントテネートを産生した。
実施例VII:セリン利用性を増加させることによりパントテネート産生を増加させる
また、パントテネート産生 対 HMBPA産生の比は、微生物培養物中のセリンの利用性を制御することにより調節できると仮定された。特に、セリンの利用性を上昇させると、HMBPA産生に対してパントテネート産生を増加させることができ、一方セリンの利用性を低下させると、HMBPA産生に対してパントテネート産生を低下させられると考えられた。この方法は、PanB基質であるメチレンテトラヒドロ葉酸がセリンから誘導されるという理解に基づく。このことから、セリンレベルを制御すれば、PanB基質レベルを有効に制御できるはずである。この仮説を検定するために、PA824を、SVYグルコース+5g/Lβ-アラニンおよび±5g/Lセリンの試験管培養で43℃で48時間増殖させた。
表5:セリン添加有りおよび無しでのPA824によるパントテネートとHMBPAの産生
Figure 0004217070
表5に示すデータにより証明されるように、セリンの添加は、パントテネートの産生を増加させ、一方HMBPA産生を低下させる。セリンを供給する代わりに、パントテネート産生レベルを制御する目的でセリンとメチレンテトラヒドロ葉酸レベルを増加させる別の方法は、3-ホスホグリセレート脱水素酵素もしくはセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(それぞれ、serAとglyA遺伝子産物)の合成または活性を増加させるものであり、その結果、適切に遺伝子操作した微生物中でセリンとメチレンテトラヒドロ葉酸の生合成が増大する。
実施例VIII:大豆粉ベースの培地を用いる10リットル発酵槽中の株PA668-2AとPA668-24によるパントテネート産生
株PA668-2AとPA668-24をそれぞれ、10リットルの発酵槽中で2回増殖させた。培地は、PFM-155であり、その組成は以下の通りである。
Figure 0004217070
Figure 0004217070
PA668-2Aによるパントテネート産生は、36時間目に45g/Lと51g/Lであり、同じ培地におけるルーチンのPA824発酵と同程度であった。PA824でパントテネート産生がルーチンに遅くなり始める36時間後は、PA668-2A発酵は両方とも、48時間目の63g/Lパントテネートまで産生を続けた。最も重要なことは、48時間目のHMBPAの産生が、3〜5g/Lに低下し、それより前の発酵の大部分においてパントテネートの5%未満であったことである。PA668株におけるPanBの増加レベルから、パントテネート合成に対する明確な利点が明らかである。PA668-24株は、2つの発酵でさらに早い速度でパントテネートを産生し、36時間後に平均58g/Lであった。
同等性 当業者は、ルーチン以上の実験をすることなく、本明細書に記載した本発明の具体的な実施形態に対する多くの同等物を認識し、あるいは確認することができる。このような同等物は、以下の請求の範囲に包含されることが意図される。
図1は、パントテネートとイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路の略図である。パントテネート生合成酵素は、太字で示し、その対応する遺伝子は、斜体で示す。イソロイシン−バリン(ilv)生合成酵素は、太字の斜体で示し、その対応する遺伝子は、斜体で示す。 図2は、[R]-3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸(「HMBPA」)の生成に至る生合成経路の略図である。 図3は、[R]-3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸(「HMBPA」)の構造の略図である。 図4は、PA824の14リットル発酵からの培地のサンプルのHPLCクロマトグラムの構造の略図である。 図5は、3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸の相対的モノアイソトープ質量を示す質量スペクトルである。 図6は、公知のPanBまたはPanBが疑われるタンパク質からのC末端アミノ酸の整列を示す。 図7は、プラスミドpAN624の構築の略図である。 図8は、プラスミドpAN620の構築の略図である。 図9は、プラスミドpAN636の構築の略図である。 図10は、クロラムフェニコールを使用して、単一のまたは複数のコピーの選択を可能にするプラスミドpAN637の構築の略図である。
配列表
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Claims (12)

  1. 制御解除されたパントテネート生合成経路と、panE2遺伝子の欠失によって低下したPanE2活性を有する微生物を、[R]-3-(2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸(HMBPA)を含まないパントテネート組成物が産生されるような条件下で培養することを含む、HMBPAを含まないパントテネート組成物の産生方法であって、該パントテネート組成物が、 HMBPA: パントテネート比が 10:100 又はそれよりも少ない比率で HMBPA が存在するパントテネート組成物である、上記産生方法。
  2. 該微生物は、制御解除された少なくとも2つのパントテネート生合成酵素を有する、請求項1記載の方法。
  3. 該微生物は、制御解除された少なくとも3つのパントテネート生合成酵素を有する、請求項1記載の方法。
  4. 該微生物は、制御解除された少なくとも4つのパントテネート生合成酵素を有する、請求項1記載の方法。
  5. 該微生物は、制御解除されたケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、制御解除されたケトパントエート還元酵素、制御解除されたパントテネートシンセターゼ、および制御解除されたアスパルテート-α-脱炭酸酵素を有する、請求項4記載の方法。
  6. 該微生物は、0.2g/L未満のグルコース存在下で培養される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 該微生物は、30%より大きい溶存酸素の存在下で培養される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 該微生物は、2.5〜20g/Lのセリンの存在下で培養される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. パントテネート産生が、供給されるβ-アラニンに非依存性であるように、該微生物はパントテネート生合成経路が制御解除されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. パントテネート産生が、供給されるβ-アラニンに非依存性であるように、該微生物はpanD遺伝子を過剰発現する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 微生物はバチルス(Bacillus)属に属する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 微生物は枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
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