JP4216548B2 - 硫黄化合物除去用吸着剤及び燃料電池用水素の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫黄化合物除去用吸着剤及び燃料電池用水素の製造方法に関し、さらに詳しくは、炭化水素含有ガス中の硫黄分を、室温においても低濃度まで効率よく除去し得る硫黄化合物除去用吸着剤、及び上記吸着剤を用いて脱硫処理した炭化水素含有ガスから、燃料電池用水素を効果的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
LPGや都市ガスなどを改質して燃料電池用水素を製造する場合、改質触媒の被毒を抑制するためには、ガス中の硫黄分を0.01ppm以下に低減させることが要求される。また、プロピレンやブテンなどは、石油化学製品の原料として使用する場合、やはり触媒の被毒を防ぐためには、硫黄分を0.01ppm以下に低減させることが要求される。
前記LPG中には、硫黄化合物として、一般にメチルメルカプタンや硫化カルボニル(COS)などに加えて、着臭剤として添加されたジメチルサルファイド(DMS)、t−ブチルメルカプタン(TBM)、メチルエチルサルファイドなどが含まれている。このようなLPGなどの燃料ガス中の硫黄分を吸着除去するための各種吸着剤が知られている。しかしながら、これらの吸着剤は、150〜300℃程度では高い脱硫性能を示すものがあるが、常温での脱硫性能については、必ずしも充分に満足し得るものではないのが実状であった。
【0003】
例えば、疎水性ゼオライトにAg,Cu、Zn、Fe、Co、Niなどをイオン交換により担持させた脱硫剤(例えば特許文献1参照)や、Y型ゼオライト、β型ゼオライト又はX型ゼオライトにAg又はCuを担持した脱硫剤(例えば、特許文献2参照)が開示されている。しかしながら、これらの脱硫剤は、メルカプタン類やサルファイド類を室温において効率的に吸着除去し得るものの、硫化カルボニルをほとんど吸着しないことがわかった。
また、銅−亜鉛系脱硫剤が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この脱硫剤においては、150℃以上の温度ではCOSを含む各種硫黄化合物を吸着除去できるが、100℃以下の低い温度では、硫黄化合物に対する吸着性能が低い。さらに、アルミナなどの多孔質担体に銅を担持した脱硫剤が開示されている(例えば、特許文献4参照)。この脱硫剤は100℃以下の温度でも使用できるとしているが、その吸着性能については十分に満足し得るものではない。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−286753号公報
【特許文献2】
特開2001−305123号公報
【特許文献3】
特開平2−302496号公報(第2頁)
【特許文献4】
特開2001−123188号公報(第3頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、炭化水素含有ガス中の硫黄分を、室温においても低濃度まで効率よく除去し得る硫黄化合物除去用吸着剤、及び上記吸着剤を用いて脱硫処理した炭化水素含有ガスから、燃料電池用水素を効果的に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の金属酸化物を含む担体に、ある種の金属やその酸化物を担持したものが、硫黄化合物除去用吸着剤としてその目的に適合し得ること、そしてこの吸着剤を用いて脱硫処理した炭化水素含有ガスを改質処理することにより、燃料電池用水素が効果的に得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)周期表第3族に属する金属元素の酸化物を含む担体に、銀及びその酸化物の中から選ばれる少なくとも一種を担持させてなる、炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤、
(2)周期表第3族に属する金属元素の酸化物が、La、Ce、Sc、Y、Nd、Pr、Sm、Gd及びYbの中から選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物である上記(1)の炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤、
(3)周期表第3族に属する金属元素の酸化物が、La、Yb、Y及びCeの中から選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物である上記(2)の炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤、
(4)炭化水素含有ガスが、LPG、都市ガス、天然ガス、又はエタン、エチレン、プロパン、プロピレン及びブタンの中から選ばれる少なくとも一種を含むガスである上記(1)〜(3)の炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤、
(5)銀及びその酸化物の中から選ばれる少なくとも一種の担持量が、金属として、吸着剤全量に基づき1〜50質量%である上記(1)〜(4)の炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤、
(6)銀及びその酸化物の中から選ばれる少なくとも一種の担持量が、金属として、吸着剤全量に基づき3〜30質量%である請求項5記載の炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤、
(7)周期表第3族に属する金属元素の酸化物の含有量が5〜99質量%である上記(1)〜(6)の炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤、
(8)上記(1)〜(7)の吸着剤を用いて、炭化水素含有ガス中の硫黄化合物を脱硫処理したのち、脱硫処理炭化水素含有ガスを部分酸化触媒、オートサーマル改質触媒又は水蒸気改質触媒と接触させることを特徴とする燃料電池用水素の製造方法、及び
(9)部分酸化触媒、オートサーマル改質触媒又は水蒸気改質触媒がルテニウム系又はニッケル系触媒である上記(8)の燃料電池用水素の製造方法、
を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の硫黄化合物吸着剤は、周期表第3族に属する金属元素の酸化物を含む担体に、活性金属種を担持させたものであり、そして該活性金属種として、銀及びその酸化物並びに銅及びその酸化物の中から選ばれる少なくとも一種が用いられる。
当該吸着剤においては、前記活性金属種の含有量は、金属(銀及び/又は銅)として、1〜50質量%の範囲が好ましい。この活性金属種の含有量が1質量%未満では十分な脱硫性能が発揮されないおそれがあり、一方50質量%を超えると担体の割合が少なくなって、吸着剤の機械的強度や脱硫性能が低下する原因となる。該活性金属種のより好ましい含有量は、金属として3〜30質量%の範囲である。
一方、当該吸着剤における担体としては、周期表第3族に属する金属元素の酸化物単独からなるものであってもよく、耐火性多孔質担体に、周期表第3族に属する金属元素の酸化物を含有させたものであってもよいが、当該吸着剤中の上記周期表第3族に属する金属元素の酸化物の含有量は、5〜99質量%の範囲が好ましい。この含有量が上記範囲を逸脱すると十分な脱硫性能が発揮されない場合がある。周期表第3族に属する金属元素の酸化物のより好ましい含有量は10〜97質量%の範囲である。
【0008】
前記周期表第3族に属する金属元素の酸化物としては、例えばLa、Ce、Sc、Y、Nd、Pr、Sm、Gd及びYbの中から選ばれる金属の酸化物を好ましく挙げることができる。これらの金属の酸化物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、La、Ce、Y、Ybの酸化物がより好ましく、特にLa、Ceの酸化物が好適である。
当該吸着剤において、担体として、耐火性多孔質担体に前記周期表第3族に属する金属元素の酸化物を含有させたものを用いる場合には、該耐火性多孔質担体としては、例えばシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、マグネシア、珪藻土、白土及び粘土などの中から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
本発明において、周期表第3族に属する金属元素の酸化物単独からなる担体を調製するには、例えば周期表第3族に属する金属元素源、具体的には該金属元素の硝酸塩などを含む水溶液とアルカリ水溶液とを接触させて沈殿を生成させ、次いで該沈殿をろ取、水洗し、50〜200℃程度の温度で乾燥したのち、250〜500℃程度の温度で焼成処理すればよい。
【0009】
また、耐火性多孔質担体に、周期表第3族に属する金属元素の酸化物を含有させるには、従来公知の方法、例えばポアフィリング法、浸漬法、蒸発乾固法などを用いることができる。この際、乾燥温度は、通常50〜200℃程度であり、焼成温度は、通常250〜500℃程度である。
このようにして調製された担体に、銀や銅の活性金属種を担持させる方法としては、上記と同様に従来公知の方法、例えばポアフィリング法、浸漬法、蒸発乾固法などを採用することができる。この際、乾燥温度は、通常50〜200℃程度であり、また焼成温度は、通常250〜500℃程度である。
このようにして得られた本発明の吸着剤は、LPG、都市ガス、天然ガス、又はエタン、エチレン、プロパン、プロピレン及びブタンの中から選ばれる少なくとも一種を含むガスなどの炭化水素含有ガス中の硫黄化合物に対し、優れた脱硫性能を示す。例えばメルカプタン類、サルファイド類、COSなど、ガス中に含まれるあらゆる硫黄化合物に対し、常温でも優れた吸着性能を示す。
【0010】
本発明の吸着剤が適用される炭化水素含有ガス中の硫黄化合物の濃度としては、0.001〜10,000容量ppmが好ましく、特に0.1〜100容量ppmが好ましい。また、脱硫条件としては、通常温度は−50〜350℃の範囲で選ばれ、GHSV(ガス時空間速度)は100〜1,000,000h−1の範囲で選ばれる。
次に、本発明の燃料電池用水素の製造方法においては、前述の本発明の吸着剤を用いて、炭化水素含有ガス中の硫黄化合物を脱硫処理したのち、脱硫処理炭化水素含有ガスを部分酸化触媒、オートサーマル改質触媒又は水蒸気改質触媒と接触させることにより、水素を製造する。
この方法においては、脱硫処理炭化水素含有ガス中の硫黄化合物の濃度は、各改質触媒の寿命の点から、0.2容量ppm以下が好ましく、特に0.05容量ppm以下が好ましい。
また、部分酸化触媒、オートサーマル改質触媒および水蒸気改質触媒としては、ニッケル系又はルテニウム系触媒が好適である。また、部分酸化法、オートサーマル改質法及び水蒸気改質法としては、特に制限はなく従来公知の方法を適用することができる。
【0011】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
硝酸セリウム30質量%水溶液を、約50℃に保持した1モル/リットル濃度の水酸化ナトリウム水溶液に攪拌しながら滴下し、沈殿を生成させた。次いで、生成した沈殿をろ取し、十分に水洗したのち、120℃で乾燥後、400℃で焼成処理し、酸化セリウムを得た。
次に、この酸化セリウムに42質量%濃度の硝酸銀水溶液を含浸させ、乾燥したのち、400℃で焼成処理することにより、吸着剤を得た。この吸着剤中のAgの含有量は10質量%であった。
【0012】
比較例1
実施例1において、硝酸銀水溶液の代わりに硝酸銅水溶液を用いた以外は、実施例1と同様に吸着剤を調製した。この吸着剤中のCuの含有量は10質量%であった。
実施例
実施例1において、Agの含有量を20質量%とした以外は、実施例1と同様にして吸着剤を調製した。
実施例
実施例1において、Agの含有量を5質量%とした以外は、実施例1と同様にして吸着剤を調製した。
【0013】
実施例
実施例1において、硝酸セリウム水溶液の代わりに硝酸ランタン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして吸着剤を調製した。この吸着剤中のAgの含有量は10質量%であった。
実施例
実施例1において、硝酸セリウム水溶液の代わりに硝酸イッテルビウム水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして吸着剤を調製した。この吸着剤中のAgの含有量は10質量%であった。
実施例
実施例1において、硝酸セリウム水溶液の代わりに硝酸イットリウム水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして吸着剤を調製した。この吸着剤中のAgの含有量は10質量%であった。
【0014】
実施例
アルミナに硝酸セリウム51質量%水溶液を含浸させ、乾燥後、400℃で焼成処理し、CeO2として20質量%を含有する担体を得た。次いで、この担体に19質量%濃度の硝酸銀水溶液を含浸させ、乾燥したのち、400℃で焼成処理することにより、吸着剤を得た。この吸着剤中の酸化セリウムの含有量はCeO2として18質量%、Agの含有量は10質量%であった。
比較例
β型ゼオライト(東ソー社製、商品名「HSZ−930NHA」)をAgイオンと交換したのち、500℃で焼成することにより、Ag交換β型ゼオライトからなる吸着剤を得た。この吸着剤中のAgの含有量は6.5質量%であった。
比較例
市販のCuZnAl触媒(ズードケミー社製、触媒「G−132B」)を吸着剤とした。
比較例
市販のAg/Al23触媒(ズードケミー社製、触媒「T−2552」)を吸着剤とした。
比較例
実施例1で調製した酸化セリウム(Ag未担持)を吸着剤とした。
【0015】
試験例1
実施例1〜8及び比較例1〜4の各吸着剤を0.5〜1mmに成型し、吸着剤1cmを内径9mmの脱硫管に充填した。常圧で吸着剤温度を20℃とし、COS、ジメチルサルファイド(DMS)、t−ブチルメルカプタン(TBM)及びジメチルジサルファイド(DMDS)を各10volppm(合計40volppm)含むプロパンガスを、常圧、GHSV(ガス時空間速度)30,000h−1の条件で流通させた。
脱硫管出口ガスの各硫黄化合物濃度をSCD(化学発光硫黄検出器)ガスクロマトグラフィーにより、1時間毎に測定した。第1表に、各硫黄化合物濃度が0.1volppmを超える時間を示した。
【0016】
【表1】
Figure 0004216548
【0017】
第1表から明らかなように、本発明の吸着剤(実施例1〜8)は、炭化水素含有ガス中の硫黄化合物を、常温において効率よく吸着除去し得ることが分かる。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、炭化水素含有ガス中の硫黄分を、室温においても低濃度まで効率よく除去し得る硫黄化合物除去用吸着剤、及び上記吸着剤を用いて脱硫処理した炭化水素含有ガスから、燃料電池用水素を効果的に製造する方法を提供することができる。

Claims (9)

  1. 周期表第3族に属する金属元素の酸化物を含む担体に、銀及びその酸化物の中から選ばれる少なくとも一種を担持させてなる、炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤。
  2. 周期表第3族に属する金属元素の酸化物が、La、Ce、Sc、Y、Nd、Pr、Sm、Gd及びYbの中から選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物である請求項1記載の炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤。
  3. 周期表第3族に属する金属元素の酸化物が、La、Yb、Y及びCeの中から選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物である請求項2記載の炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤。
  4. 炭化水素含有ガスが、LPG、都市ガス、天然ガス、又はエタン、エチレン、プロパン、プロピレン及びブタンの中から選ばれる少なくとも一種を含むガスである請求項1〜3のいずれかに記載の炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤。
  5. 銀及びその酸化物の中から選ばれる少なくとも一種の担持量が、金属として、吸着剤全量に基づき1〜50質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤。
  6. 銀及びその酸化物の中から選ばれる少なくとも一種の担持量が、金属として、吸着剤全量に基づき3〜30質量%である請求項5記載の炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤。
  7. 周期表第3族に属する金属元素の酸化物の含有量が5〜99質量%である請求項1〜6のいずれかに記載の炭化水素含有ガス中の硫黄化合物除去用吸着剤。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の吸着剤を用いて、炭化水素含有ガス中の硫黄化合物を脱硫処理したのち、脱硫処理炭化水素含有ガスを部分酸化触媒、オートサーマル改質触媒又は水蒸気改質触媒と接触させることを特徴とする燃料電池用水素の製造方法。
  9. 部分酸化触媒、オートサーマル改質触媒又は水蒸気改質触媒がルテニウム系又はニッケル系触媒である請求項8記載の燃料電池用水素の製造方法。
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