JP4216507B2 - ロッカーアーム用鋼 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来公知のPb快削鋼と同等レベルの被削性を有し、且つ窒化に際しての軟化抵抗性を確保することができ、窒化後の表層硬さと窒化深さについての優れた窒化特性を得ることができ、しかも非調質でも従来公知の調質(焼入れ焼戻し)鋼と同等レベルの強度を得ることができるロッカーアーム用鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車産業などで使用される鋼製の機械構造部品の一つとして、内燃機関に備えられるロッカーアームは、鍛造などの塑性加工で粗加工した後、切削加工によって所望の最終形状に仕上げるのが一般的である。中でも旋削加工工程は、ほとんどの部品に適用される加工工程である。機械構造部品のコストに対する旋削工程のコストの占める割合がかなり高いので、このコストを低下するため、被削性の優れた快削鋼に対する要求がますます大きくなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、快削鋼として▲1▼S、Pb、Bi、Se、Teなどの被削性を改善する元素を添加したもの、▲2▼Caを添加したもの、▲3▼CaとSなどを複合添加したものが知られている。この中のCaとSなどを複合添加したものとしては、特開昭49−5815号公報が知られている。この公報に記載されている快削鋼は、非金属介在物組成がCaO−Al2O3−SiO23元系状態図で示してムライト領域にあって、Ca:5〜15ppm、S:0.04〜0.1%を含有するものである。しかし、この従来のCaとSなどを複合添加した快削鋼は、被削性に大きなばらつきがあり、また被削性が十分であるとはいえなかった。
【0004】
また、この上記CaとSなどを複合添加した快削鋼の被削性を改善したCa快削鋼として、特開2000−34538号公報が知られている。この公報に記載されているCa快削鋼は、C:0.1〜0.8%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.1〜3.5%、P:0.001〜0.2%、S:0.005〜0.4%、Al:0.001〜0.1%、Ca:0.0005〜0.02%、O:0.0005〜0.01%、N:0.001〜0.04%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、且つCa含有量が40%を超える硫化物の調査観察視野全体の面積に対する面積率をX、Ca含有量が0.3〜40%の硫化物の調査観察視野全体の面積に対する面積率をY、Ca含有量が0.3%より少ない硫化物の調査観察視野全体の面積に対する面積率をZとする時、X/(X+Y+Z)≦0.3、かつY/(X+Y+Z)≧0.1である旋削加工性に優れた快削鋼である。しかし、このCa快削鋼は従来の酸化物介在物を含むCa快削鋼より被削性のばらつきは抑えられているが、十分な被削性ではなかった。
【0005】
また、動的負荷が生じるロッカーアームには、この負荷に耐えられる強度を付与するため窒化等の熱処理を行うのが一般的であるが、上記従来公知の快削鋼は例えば窒化処理まで十分考慮されていないため、窒化後の表層硬さと窒化深さ、および窒化に際しての軟化抵抗性の確保が困難であり、良好な窒化特性を得ることができなかった。尚、軟化抵抗性とは、窒化時の処理温度による内部硬さの低下が抑制されることをいう。
【0006】
さらに、窒化処理に際しては、一般的に窒化前に調質を行って所望する強度を鋼材に付与するが、近年要求される低コスト化に伴い、調質の工程はコスト高を招く要因の一つでもあり、熱間鍛造の塑性加工後に非調質で、且つ従来公知の調質鋼と同等レベルの強度が要求されるようになってきた。しかし、この非調質においても上記従来公知の快削鋼は十分検討されていないため、非調質で生産性良く良好な強度特性を快削鋼に付与するまでには至っていなかった。
尚、上記従来公知のPb快削鋼は被削性に優れている反面、Pbを含有する快削鋼は毒性があり近年の環境問題に対処するため、その使用を抑制せざるを得ない。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決して、Pbを含有させなくても従来公知のPb快削鋼と同等レベルの被削性を有し、且つ窒化深さ等の窒化特性に優れ、しかも非調質でも従来公知の調質鋼と同等レベルの強度を有するロッカーアーム用鋼を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題を解決して従来公知のPb快削鋼と同等レベルの被削性を有し、且つ窒化後の窒化深さ等に優れた窒化特性を得ることができ、しかも非調質でも従来公知の調質鋼と同等レベルの強度を得ることができるロッカーアーム用鋼の創製に成功し、このロッカーアーム用鋼を用いることで、種々のロッカーアーム製品が低コストでしかも優れた生産性で製造できることを知見した。
【0009】
さらに詳しくは、本発明はMnSおよびCaSからなる硫化物と接している硬質酸化物がマトリクス中に分散していて、該硬質酸化物がAl2O3とCaOを含有していて、しかも硬質酸化物全体に対するCaOの含有率が8.0〜62%(wt/wt)で、硫化物全体に対するCaの含有率が1.0〜45%(wt/wt)で、鋼材中に対する硫化物の占有面積が3.5mm2当たり2.0×10−4〜1.0×10−1mm2とする鋼材であるが、本発明者らは、本発明の鋼材中にMnSおよびCaSからなる硫化物と接しているAl2O3とCaOを含有している硬質酸化物が硫化物形態制御型の快削成分として機能し、これが異方性を低下させることなくマトリクス自体の破砕性を著しく向上させるのみならず、切削中に上記硫化物膜が切削用工具の表面に硫化物系の工具保護膜を生成し、工具寿命の大幅な向上を図ることができ、好適に被削性の向上が図れることを知見した。
なお、上記の硫化物と接している硬質酸化物とは、硬質酸化物が硫化物とそれぞれの少なくとも一部で接している限りどのようなものでもよく、例えば硬質酸化物が硫化物とそれぞれの表面で接触している場合や硬質酸化物がその表面の一部又は全部において硫化物もしくは硫化物膜で被覆されている場合を含む。
【0010】
また本発明者らは、基本成分として、C:0.1〜0.5%(wt/wt)、Si:0.01〜2.5%(wt/wt)、Mn:0.1〜3.5%(wt/wt)、P:0.001〜0.2%(wt/wt)、S:0.01〜0.2%(wt/wt)、Cr:1.0〜3.5%(wt/wt)、V:0.1〜0.5%(wt/wt)、Al:0.001〜0.02%(wt/wt)、Ca:0.0005〜0.02%(wt/wt)、O:0.0005〜0.01%(wt/wt)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、かつCrおよびVの含有率が式([Cr]+1.97×[V])≧2.15%(wt/wt)を満足するロッカーアーム用鋼は、低Al化によりCaとOとの結合をし易くし、硫化物形態制御型の快削成分の生成を促進することができ、上記被削性の向上を容易にするだけでなく、CrとVの添加量を上記式を満足させることにより窒化に際しての軟化抵抗性を向上させ、且つ窒化後の表層硬さや窒化深さを好適に改善し、優れた窒化特性を与えることをも知見した。
【0011】
さらに本発明者らは、上記基本成分を有するロッカーアーム用鋼中のC、Mn、S、CrおよびVの添加量について、式([C]+0.27×([Mn]−55×[S]/32)+0.31×[Cr]+0.3×[V])で表される炭素当量Ceqを0.8〜1.1%(wt/wt)に調整することによって、熱間鍛造後に放冷した場合に、フェライト+ベイナイト組織を容易に形成することができ、内部硬さが20〜35HRC内に容易に制御されるため、優れた被削性と窒化後の良好な疲労強度を併有させることができ、生産性良く良質なロッカーアーム製品が製造できることも知見した。
【0012】
尚、前記ロッカーアーム用鋼中に、所望によりMo:≦2.0%(wt/wt)、Cu:≦2.0%(wt/wt)、Ni:≦4.0%(wt/wt)、B:0.0005〜0.01%(wt/wt)、Nb:≦0.2%(wt/wt)、Ti:≦0.2%(wt/wt)、Ta:≦0.5%(wt/wt)、Zr:≦0.5%(wt/wt)、およびMg:≦0.02%(wt/wt)のうち1種または2種以上含有させて、例えば焼入れ性の改善や結晶粒微細化や硫化物微細化などを達成することができる。
【0013】
そのうえ本発明者らは、上記成分においてMoが含まれない場合は、Mn、S、およびCrの含有量について、式(([Mn]−55×[S]/32)+[Cr])>2.0%(wt/wt)とし、Moが含まれる場合は、Mn、S、Cr、およびMoの含有量について、式(([Mn]−55×[S]/32)+[Cr]+[Mo])>2.0%(wt/wt)とすることによっても、熱間鍛造後に放冷する非調質でも調質鋼と同等レベルの強度が得られるフェライト+ベイナイト組織を容易に形成することができ、つまり調質工程を省略することができることを知見した。
そしてさらに本発明者らは、上記ロッカーアーム用鋼の製造方法が、上記のように規定した合金成分を含有し、ただし、Mn、S、およびCrの含有%(wt/wt)が式
(([Mn]−55×[S]/32)+[Cr])>2.0%(wt/wt)を満たし、残部が不可避の不純物およびFeからなる化学組成を有する合金を溶製し、その際、溶融状態の合金が下記の条件1)〜3)
1)[HS]/[HO]:8〜80
ここで、[HS]および[HO]は、それぞれ下式で定義されるSおよびOの活量を表し、
HS=[S]×10logFs HO=[O]×10logFo
logFsおよびlogFoは、それぞれ下式で定義される。
logFs=0.113[C]+0.065[Si]-0.025[Mn]+0.043[P]-0.028[S]-0.013[Cu]-0.011[Cr] +0.0027[Mo]-0.27[O]+0.024[N]+0.054[Al]
logFo=-0.44[C]-0.131[Si]-0.02[Mn]-0.147[P]+0.133[S]-0.0095[Cu]+0.006[Ni] -0.041[Cr]+0.0035[Mo]-1.00[O]-0.1834[N]-0.20[Al]+0.11[V]
2)[sol-Al]:0.02〜0.20% かつ
3)[Ca]×[S]:1×10−5〜1×10−3
(但し式中、[ ]書きは各構成元素の含有%(wt/wt)を表す。)
を満たすよう操業を行うことで具体化されることも知見した。
【0014】
そのほか種々の検討を重ねて本発明を完成するに至った。
したがって本発明は、
(1) MnSおよびCaSからなる硫化物と接している硬質酸化物がマトリクス中に分散していて、該硬質酸化物がAl2O3とCaOを含有しており、硬質酸化物全体に対するCaOの含有率が8.0〜62%(wt/wt)で、硫化物全体に対するCaの含有率が1.0〜45%(wt/wt)で、鋼材中の硫化物の占有面積が3.5mm2当たり2.0×10−4〜1.0×10−1mm2であることを特徴とするロッカーアーム用鋼、
(2) C:0.1〜0.5%(wt/wt)、Si:0.01〜2.5%(wt/wt)、Mn:0.1〜3.5%(wt/wt)、P:0.001〜0.2%(wt/wt)、S:0.01〜0.2%(wt/wt)、Cr:1.0〜3.5%(wt/wt)、V:0.1〜0.5%(wt/wt)、Al:0.001〜0.02%(wt/wt)、Ca:0.0005〜0.02%(wt/wt)、O:0.0005〜0.01%(wt/wt)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、かつCrおよびVの含有%(wt/wt)が式
([Cr]+1.97×[V])≧2.15
(但し式中、[ ]書きは各構成元素の含有%(wt/wt)を表す。)
を満たしていることを特徴とする(1)記載のロッカーアーム用鋼、
(3) 式
([C]+0.27×([Mn]−55×[S]/32)+0.31×[Cr]+0.3×[V])
(但し式中、[ ]書きは各構成元素の含有%(wt/wt)を表す。)
で表される炭素当量Ceqが0.8〜1.1%(wt/wt)を満たし、内部硬さが20〜35HRCであり、組織がフェライト+ベイナイトであることを特徴とする(2)記載のロッカーアーム用鋼、
(4) さらに、Mo:≦2.0%(wt/wt)、Cu:≦2.0%(wt/wt)、Ni:≦4.0%(wt/wt)、およびB:0.0005〜0.01%(wt/wt)のうち1種または2種以上含有することを特徴とする(2)または(3)記載のロッカーアーム用鋼、
に関する。
【0015】
さらに本発明は、
(5) Mn、S、およびCrの含有%(wt/wt)が式
(([Mn]−55×[S]/32)+[Cr])>2.0%(wt/wt)
(但し式中、[ ]書きは各構成元素の含有%(wt/wt)を表す。)
を満たすか、またはMn、S、Cr、およびMoの含有%(wt/wt)が式
(([Mn]−55×[S]/32)+[Cr]+[Mo])>2.0%(wt/wt)
(但し式中、[ ]書きは各構成元素の含有%(wt/wt)を表す。)
を満たすことを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載のロッカーアーム用鋼、
(6) さらに、Nb:≦0.2%(wt/wt)、およびTi:≦0.2%(wt/wt)のうち1種または2種を含有することを特徴とする(2)〜(5)のいずれかに記載のロッカーアーム用鋼、
(7) さらに、Ta:≦0.5%(wt/wt)、Zr:≦0.5%(wt/wt)、およびMg:≦0.02%(wt/wt)のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする(2)〜(6)のいずれかに記載のロッカーアーム用鋼。
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載のロッカーアーム用鋼が、(1)〜(7)のいずれかに規定した合金成分を含有し、ただし、Mn、S、およびCrの含有%(wt/wt)が式
(([Mn]−55×[S]/32)+[Cr])>2.0%(wt/wt)を満たし、残部が不可避の不純物およびFeからなる化学組成を有する合金を溶製し、その際、溶融状態の合金が下記の条件1)〜3)
1)[HS]/[HO]:8〜80
ここで、HS=[S]×10logFs HO=[O]×10logFo であって、
logFs=0.113[C]+0.065[Si]-0.025[Mn]+0.043[P]-0.028[S]-0.013[Cu]-0.011[Cr] +0.0027[Mo]-0.27[O]+0.024[N]+0.054[Al]
logFo=-0.44[C]-0.131[Si]-0.02[Mn]-0.147[P]+0.133[S]-0.0095[Cu]+0.006[Ni] -0.041[Cr]+0.0035[Mo]-1.00[O]-0.1834[N]-0.20[Al]+0.11[V]
2)[sol-Al]:0.02〜0.20% かつ
3)[Ca]×[S]:1×10−5〜1×10−3
(但し式中、[ ]書きは各構成元素の含有%(wt/wt)を表す。)
を満たす操業を行うことを特徴とするロッカーアーム用鋼の製造方法。
(9) (1)〜(8)のいずれかに記載のロッカーアーム用鋼にて製造されたロッカーアーム製品、
に関する。
【0016】
【発明の好ましい実施の形態】
本発明のロッカーアーム用鋼は、後述するように従来公知のPb快削鋼と同等レベルの被削性を有し、且つ窒化後の窒化深さ等に優れた窒化特性を有し、非調質でも従来公知の調質鋼と同等レベルの強度を有する。このような特性を有するロッカーアーム用鋼を製造するためには、後述するように規定した合金成分を含有し、Mn、S、およびCrの含有%(wt/wt)が式
(([Mn]−55×[S]/32)+[Cr])>2.0%(wt/wt)を満たし、残部が不可避の不純物およびFeからなる化学組成を有する合金を溶製し、その際、溶融状態の合金が下記の条件1)〜3)
1)[HS]/[HO]:8〜80
ここで、[HS]および[HO]は、それぞれ下式で定義されるSおよびOの活量を表し、
HS=[S]×10logFs HO=[O]×10logFo
logFsおよびlogFoは、それぞれ下式で定義される。
logFs=0.113[C]+0.065[Si]-0.025[Mn]+0.043[P]-0.028[S]-0.013[Cu]-0.011[Cr] +0.0027[Mo]-0.27[O]+0.024[N]+0.054[Al]
logFo=-0.44[C]-0.131[Si]-0.02[Mn]-0.147[P]+0.133[S]-0.0095[Cu]+0.006[Ni] -0.041[Cr]+0.0035[Mo]-1.00[O]-0.1834[N]-0.20[Al]+0.11[V]
2)[sol-Al]:0.02〜0.20% かつ
3)[Ca]×[S]:1×10−5〜1×10−3
(但し式中、[ ]書きは各構成元素の含有%(wt/wt)を表す。)
を満たすよう操業することで製造することができる。その他の条件は、従来公知の合金鋼と同様の条件に従って良い。例えば、インゴット造塊法または連続鋳造法のいずれでも製造することができる。
以下、本発明におけるロッカーアーム用鋼の介在物である硫化物と接している硬質酸化物の形態および化学組成を制御する理由について説明する。
以下において構成元素の含有割合%はいずれも%(wt/wt)で表される。
硫化物と接している硬質酸化物については、硬質酸化物(例えばCaO・Al2O3系酸化物)全体に対するCaOの含有率が8.0〜62%で、硫化物全体に対するCaの含有率が1.0〜45%で、鋼材中に対する硫化物の占有面積が3.5mm2当たり2.0×10−4〜1.0×10−1mm2であり、例えばEPMA(日本電子社製、JXA8800)による面分析により確認することができる。
【0017】
上記Caの含有率が1.0%以上のときは、切削加工時に工具表面に(Ca・Mn)Sの工具保護皮膜の生成が充分となり、所望する被削性が得られる。一方、上記化学組成からなる鋼において、一般に硫化物はその主成分がMnSであり、CaSはMnの一部がCaに置換されることによって生成される。しかし、Caへの置換の程度により硫化物の性質が異なったり、工具保護皮膜の生成が難しくなったりするのを避ける必要がある。所望する被削性を得るためには、上記Caの含有率を45%以下とするのが好ましい。
【0018】
本発明ではMnとCaの添加量を上述した組成内で含有させることで、工具寿命が改善され、優れた被削性と鋳造性を両立させることができる。前記被削性の向上を図るため、鋼材中に対する硫化物の占有面積は3.5mm2当たり2.0×10−4mm2以上とすることが好ましく、優れた鋳造性をも両立させるためには1.0×10−1mm2以下とすることが好ましい。
【0019】
また、CaとAlとOを上述した組成内で含有させることで、CaO酸化物の生成量を特定範囲に制御し、鋳造性を劣化させる高融点のCaSの多量生成を抑制して、異方性が低下しない被削性に優れる硫化物形態制御型快削成分を形成することができる。より優れた被削性を得るためには、上記硬質酸化物全体に対するCaOの含有率を8.0%以上とするのが好ましく、一方、鋳造性の劣化を避けるためには62%以下とするのが好ましい。
【0020】
本発明のロッカーアーム鋼中の各構成元素の化学組成について説明する。
C:0.1〜0.5%
Cは強度を確保するために必要な元素であり、より優れた強度を確保するためには0.1%以上であり、一方、靭性や被削性の低下を避けるためには0.5%以下とするのが好ましい。
Si:0.01〜2.5%
Siは溶製時の脱酸剤として含有され、また焼入れ性を向上させる元素である。好ましい焼入れ性を確保するためには0.01%以上であり、優れた延性を確保し、塑性加工時に割れを抑制するためには2.5%以下が好ましい。
Mn:0.1〜3.5%
Mnは硫化物形態制御型快削成分の形成元素であり、より良い快削成分形成のために0.1%以上が好ましく、優れた被削性のために3.5%以下が好ましい。
P:0.001〜0.2%
Pは被削性、特に仕上面性状の改善のために添加する。より好ましい被削性、仕上面性状の改善のために0.001%以上が好ましく、優れた靭性を得るために0.2%以下が好ましい。
【0021】
S:0.01〜0.2%
Sは硫化物形態制御型快削成分の形成元素であり、より良い快削成分形成のために0.01%以上が好ましく、優れた被削性のために0.2%以下が好ましい。
Cr:1.0〜3.5%
Crは焼入れ性向上、またVとの添加量の適正化により窒化時の表層硬さ、窒化深さおよび軟化抵抗性の確保に有効な元素であり、より好ましい上記の特性を得るために1.0%以上が好ましく、低コストと熱間加工時の鋼の割れを両立するために3.5%以下がより好ましい。
V:0.1〜0.5%
VはCrとの添加量の適正化により窒化時の表層硬さ、窒化深さおよび軟化抵抗性の確保に有効な元素であり、またCやNと結合して炭窒化物を生成し、結晶粒を微細化する効果を有する。特に窒化時の軟化抵抗性を確保するため、0.1%以上含有させるのが好ましく、製造コストを抑制するために0.5%以内が好ましい。
Al:0.001〜0.02%
Alは脱酸に必要な元素であり、十分な脱酸効果を得るためには0.001%以上が好ましく、硬質のアルミナクラスターが生成し、鋼の被削性を劣化させ、硫化物形態制御型快削成分の形成を困難なものとし、異方性を低下させるのを抑制するためには0.02%以下が好ましい。
【0022】
Ca:0.0005〜0.02%
Caは本発明において極めて重要な意味を持つ元素である。Caは硫化物形態制御型快削成分の形成元素であり、優れた効果を得るためには0.0005%以上含有することが好ましく、過剰なCaによる高融点のCaSを不必要に多量生成するのを避けるためには0.02%以下が好ましい。
O:0.0005〜0.01%
Oは硫化物形態制御型快削成分中の酸化物を生成させるために必要な元素である。より好ましい酸化物を生成させるためには0.0005%以上が好ましく、さらに好ましい酸化物を生成させるためには0.0015%以上であることが好ましい。一方、より好ましい硫化物形態制御型快削成分中のCa硫化物の生成と被削性を両立させるためには0.01%以下が好ましい。
【0023】
本発明のロッカーアーム用鋼には、上記成分に加えて更にMo、Cu、Ni、Bのうち1種または2種以上含有させてもよい。更にはこれらに加えて、Nb、Tiのうち1種または2種含有させてもよいし、Ta、Zr、Mgのうち1種または2種以上含有させてもよい。尚、これら合金元素を使用目的に応じ様々な組合せで本発明の鋼材中に含有させてもよい。これら合金元素の効果と含有量を制御する理由について説明する。
Mo:≦2.0%
MoはCrと同様に焼入れ性向上に有効な元素であり、低コスト化、優れた被削性および熱間加工性の向上を図るために2.0%以下が好ましい。
Cu:≦2.0%
Cuは組織を緻密にし強度を向上させるのに有効な元素であり、優れた被削性および熱間加工性の向上を図るために2.0%以下が好ましい。
Ni:≦4.0%
NiはCrと同様に焼入れ性向上に有効な元素であり、低コスト化および優れた被削性を両立するために4.0%以下が好ましい。
【0024】
B:0.0005〜0.01%
Bは微量の添加により焼入れ性を向上させる元素であり、より好ましい焼入れ性を得るために0.0005%以上が好ましく、熱間加工性の向上と結晶粒の粗大化抑制を図るために0.01%以下が好ましい。
Nb:≦0.2%
Nbは高温における結晶粒の粗大化を防ぐのに有効な元素であり、低コスト化とより優れた効果を両立させるために0.2%以下が好ましい。
Ti:≦0.2%
Tiは窒化時にNと結合してTiNを形成し、Bの焼入れ性向上効果を発揮させる元素であり、より好ましいTiNの形成および熱間加工性の向上を図るために0.2%以下が好ましい。
【0025】
Ta:≦0.5%
Taは結晶粒を微細化し靭性を向上させるのに有効な元素であり、低コスト化とより優れた効果を両立させるために0.5%以下が好ましい。
Zr:≦0.5%
ZrはTaと類似した性質を有し、結晶粒を微細化し靭性を向上させるのに有効な元素である。低コスト化とより優れた効果を両立させるために0.5%以下が好ましい。
Mg:≦0.02%
MgはTaやZrと類似した性質を有し、結晶粒を微細化し靭性を向上させるのに有効な元素である。低コスト化とより優れた効果を両立させるために0.02%以下が好ましい。
化学成分の制御(1)として、CrおよびVの含有率を式([Cr]+1.97×[V])≧2.15%に満足させる。
【0026】
本発明のロッカーアーム用鋼を窒化処理する場合、上記式を満足させるようにCrおよびVの含有量を制御することで、ガス軟窒化条件(例えば580℃×3hr)で表層硬さが750HV以上となり、かつ窒化深さや窒化時の軟化抵抗性が好適に改善され、良好な窒化特性が得られる。
化学成分の制御(2)として、Mn、S、およびCrの含有率を式(([Mn]−55×[S]/32)+[Cr])>2.0%に満足させるか、またはMn、S、Cr、およびMoの含有率を式(([Mn]−55×[S]/32)+[Cr]+[Mo])>2.0%に満足させる。
【0027】
本発明のロッカーアーム用鋼を用いてロッカーアーム製品を製造する場合、より好ましい生産性の向上を図るために、熱間鍛造後に放冷する非調質でも調質鋼と同等レベルの強度が得られるフェライト+ベイナイト組織を形成することが好ましい。Mn、S、CrまたはMn、S、Cr、Moの含有量を上記式に満足させることで、上記好ましい熱間鍛造後の組織が得られる。
式([C]+0.27×([Mn]−55×[S]/32)+0.31×[Cr]+0.3×[V])で表される炭素当量Ceqの制御として、Ceqを0.8〜1.1%の範囲内にする。
【0028】
さらに本発明者らは、本発明のロッカーアーム用鋼を用いて熱間鍛造にてロッカーアーム製品を製造する場合、優れた被削性と良好な窒化後の疲労強度を併有させるため、鋼材の内部硬さはJIS;Z2245に従って試験した場合、20〜35HRC内であることが好ましい。上記基本成分を有するロッカーアーム用鋼中のC、Mn、S、CrおよびVの含有量を上記Ceq内にて調整することで、容易に上記内部硬さが得られる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明におけるロッカーアーム用鋼を実施例に基づいて説明する。下記の表1および表2に示す化学組成を有する鋼を5tonアーク炉あるいは150kg高周波真空誘導炉にて溶製した。硫化物と接している硬質酸化物を形成させるため、S源としてはFeS粒、Ca源としてはCaSi粒、Al源としてはAl粒をそれぞれ使用した。鋼中のS,Al,CaおよびOの含有量が、表1および表2に示す組成値となるように成分調整をした。得られた鋼塊は、直径25mmの丸棒に圧延あるいは鍛造し、表2の鋼種については窒化処理後に調査に供した。比較鋼種としては、被削性調査として表1に示すSCr435HL鋼材(比較鋼;a1)、窒化特性調査として表2に示すSAC430AL鋼材(比較鋼;b1)を採用した。
先ず、本発明鋼の被削性を評価するために、従来公知の快削成分であるPbを0.2%含有している前記SCr435HL鋼材が有する切削抵抗および切削トルクに対して、本発明鋼を同切削条件にて比較検討し、被削性を判断することにした。更に、切削加工時の工具摩耗度合についても、切削後の工具すくい面の摩耗状態の観察により同様に比較検討にて判断することにした。前記SCr435HL鋼材に対し前記切削抵抗および切削トルクの値が低いほど被削性に優れ、また、前記工具摩耗度合が抑えられているほど被削性に優れる。よって、表1に示す本発明鋼が有する被削性の総合評価は、上記判断手法に基づいて優劣をつけている。
【0030】
表1に示す切削抵抗および切削トルクのデータは、使用機器として一般に使用されるNCフライス盤(遠州製作社製、VF−Center)のスピンドル部に市販の回転切削動力計(キスラー社製、9123C)を設け、また前記回転切削動力計のチャッキング部に対して、φ16.5穴明時はφ16.5ドリルを設け、φ18穴仕上時はφ18リーマを設けて切削加工を行い、各々切削加工時に前記回転切削動力計から得られる電圧出力値を計測した。尚、切削条件として、φ16.5ドリル穴明時はスピンドル回転数2500rpm、送り量150m/min、切込量0.080mm/回転、φ18リーマ穴仕上時はスピンドル回転数2000rpm、送り量400m/min、切込量0.200mm/回転とし、いずれも湿式(不水溶性切削油;ゼネラル石油社製、カッティングルブX−5)にて実施している。
【0031】
図1および図2に示すグラフは、一例として表1中の発明鋼(A3)と比較鋼(a1)の被削性を示したものであり、図1はφ16.5ドリル穴明時の加工数に対する切削抵抗と切削トルクの推移を示すものである。また、図2はφ18リーマ穴仕上時の加工数に対する切削抵抗と切削トルクの推移を示すものである。さらに、図3に示す実体顕微鏡による写真は、φ16.5ドリル穴明にて700ヶ加工した際の工具すくい面の摩耗状態を示すものである。
【0032】
【表1】
【0033】
表1および図1〜3より、本発明鋼の被削性は従来公知のPb快削鋼と同等レベル以上であり、本発明鋼は良好な被削性を有していることが分かる。
次に、本発明鋼の窒化特性を評価するために、ガス軟窒化条件下(例えば580℃×3hr[Rx:NH3=200:700(CFH)])で、従来公知の窒化鋼である前記SAC430AL鋼材と本発明鋼との窒化深さの推移を比較検討し、表層付近の断面硬さや窒化深さ等より窒化特性を判断することにした。同窒化条件下で前記SAC430AL鋼材に対し、前記表層付近の断面硬さが同等レベル以上であり、且つ前記窒化深さがより深い場合を窒化特性に良好とした。表2に示す本発明鋼が有する窒化特性の総合評価は、上記判断手法に基づいて行われている。
【0034】
図4に示すグラフは、表2記載の発明鋼(B1〜B4)と比較鋼(b1)の前記ガス軟窒化条件にて窒化処理した後の窒化深さ(断面硬さの推移)を示すものである。
【0035】
【表2】
【0036】
表2および図4より、本発明鋼の窒化特性は、従来公知の窒化鋼と比較して、表層付近の断面硬さは同等レベルであり、且つ窒化深さがいずれもより深く、しかも内部に向かって断面硬さの低下が抑制されていることより軟化抵抗性も確保されていることから、本発明鋼は良好な窒化特性を有していることが分かる。
次に、本発明鋼に含有されている硫化物形態制御型快削成分の形態を図5に示す。また、図5に示す前記快削成分の成分分析調査結果を図6に示す。尚、図5に示す写真はEPMA(日本電子社製、JXA8800)による電子顕微鏡の観察結果であり、図6に示す分析結果は前記EPMAによる面分析(マッピング)結果である。
【0037】
EPMAによる観察,分析結果より、先ず前記硫化物形態制御型快削成分は、いずれも図5の電子顕微鏡によるSEM写真に見られる球状に形態制御されている。このことから、本発明鋼は異方性が低減され強度特性に優れていることが伺える。また、図6に示すように前記硫化物形態制御型快削成分の面分析調査を行った結果、前記硫化物形態制御型の快削成分は、Al2O3とCaOを有する硬質酸化物の表面上にMnSとCaSを有する硫化物と接していることが分かった。よって本発明鋼の快削成分は、マトリクス自体の破砕性を向上させる硬質酸化物の生成と、切削用工具の表面に硫化物系の工具保護膜を生成して工具寿命の向上が図れる硫化物の生成とが、球状に形態制御され、且つ前記硫化物形態制御型の快削成分がマトリクス中に均一分散しているため、本発明鋼は優れた被削性を得ることができる。
【0038】
次に、本発明鋼を用いて1200℃の熱間鍛造後に放冷した非調質の組織を図7に示す。
図7の金属顕微鏡による組織写真に見られるように、本発明鋼では前記非調質の条件でもフェライト+ベイナイトの組織が形成される。よって、本発明鋼は生産性に優れる非調質でも調質鋼と同等レベルの強度を有することができる。
【0039】
次に、下記の表3に示す化学組成を有する鋼を5tonアーク炉あるいは150kg高周波真空誘導炉にて溶製し、得られた鋼塊を1200℃で熱間鍛造して直径20mm丸棒形状とし、その後放冷した。前記直径20mm丸棒材の内部硬さを調査して表3および図8で表される結果を得た。尚、前記直径20mm丸棒材中のC、Mn、S、CrおよびVの含有量は、式([C]+0.27×([Mn]−55×[S]/32)+0.31×[Cr]+0.3×[V])で表される炭素当量Ceqを0.8〜1.1%に調整したものである。
【0040】
【表3】
【0041】
表3および図8より、本発明鋼において熱間鍛造後放冷する内部硬さが20〜35HRC内に制御されていることが分かる。
また、本発明鋼は上述したように窒化後の軟化抵抗性を確保しているため、窒化による内部硬さの低下が抑制され、良好な窒化後の疲労強度を付与させることができ、強度特性に優れるロッカーアーム製品の製造が可能である。
【0042】
次に、下記の表4に示す化学組成を有する鋼を5tonアーク炉あるいは150kg高周波真空誘導炉にて溶製し、得られた鋼塊を1200℃で熱間鍛造して所望形状とし、次いで放冷した後、前記所望形状にした鋼材をJIS−14A号試験片形状に加工し、その後ガス軟窒化処理(580℃×1.5hr[Rx:NH3=200:450(CFH)])を施して、各引張強さ特性を調査して表4および図9で表される結果を得た。尚、炭素当量Ceqは、式([C]+0.27×([Mn]−55×[S]/32)+0.31×[Cr]+0.3×[V])より算出している。
【0043】
【表4】
【0044】
表4および図9より、本発明鋼は熱間鍛造後放冷する条件下でもフェライト+ベイナイト組織に制御できるため、引張強さ特性を向上させることができ、よって、強度特性に優れるロッカーアーム用鋼の製造が可能である。
【0045】
【発明の効果】
本発明のロッカーアーム用鋼を用いることで、従来公知のPb快削鋼と同等レベルの被削性を有し、且つ窒化後の窒化深さ等に優れた窒化特性を得ることができる。また、非調質でも従来公知の調質鋼と同等レベルの強度を得ることができる。したがって種々の鋼製のロッカーアーム製品が、低コストで且つ優れた生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】φ16.5ドリル穴明時の加工数に対する切削抵抗と切削トルクの推移
【図2】φ18リーマ穴仕上時の加工数に対する切削抵抗と切削トルクの推移
【図3】φ16.5ドリル穴明にて700ヶ加工した際の工具すくい面の摩耗状態
【図4】窒化処理後の窒化深さ(断面硬さの推移)
【図5】硫化物形態制御型の快削成分の形態(形態を明瞭にするために黒色を背景に使用している)
【図6】図5の面分析(マッピング)結果
【図7】熱間鍛造後に放冷した非調質鋼の組織
【図8】熱間鍛造後に放冷したφ20丸棒材の炭素当量と内部硬さの推移
【図9】熱間鍛造後に放冷したJIS−14A号試験片による組織と耐力σ0.2の関係
Claims (7)
- MnSおよびCaSからなる硫化物と接している硬質酸化物がマトリクス中に分散していて、該硬質酸化物がAl2O3とCaOを含有しており、硬質酸化物全体に対するCaOの含有率が8.0〜62%(wt/wt)で、硫化物全体に対するCaの含有率が1.0〜45%(wt/wt)で、鋼材中の硫化物の占有面積が3.5mm2当たり2.0×10−4〜1.0×10−1mm2であり、C:0.1〜0.5%(wt/wt)、Si:0.01〜2.5%(wt/wt)、Mn:0.1〜3.5%(wt/wt)、P:0.001〜0.2%(wt/wt)、S:0.01〜0.2%(wt/wt)、Cr:1.0〜3.5%(wt/wt)、V:0.1〜0.5%(wt/wt)、Al:0.001〜0.02%(wt/wt)、Ca:0.0005〜0.02%(wt/wt)、O:0.0005〜0.01%(wt/wt)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、かつCrおよびVの含有%(wt/wt)が式
([Cr]+1.97×[V])≧2.15
(但し式中、[ ]書きは各構成元素の含有%(wt/wt)を表す。)
を満たしていることを特徴とするロッカーアーム用鋼。 - 式
([C]+0.27×([Mn]−55×[S]/32)+0.31×[Cr]+0.3×[V])
(但し式中、[ ]書きは各構成元素の含有%(wt/wt)を表す。)
で表される炭素当量Ceqが0.8〜1.1%(wt/wt)を満たし、内部硬さが20〜35HRCであり、組織がフェライト+ベイナイトであることを特徴とする請求項1記載のロッカーアーム用鋼。 - さらに、Mo:≦2.0%(wt/wt)、Cu:≦2.0%(wt/wt)、Ni:≦4.0%(wt/wt)、およびB:0.0005〜0.01%(wt/wt)のうち1種または2種以上含有することを特徴とする請求項1または2記載のロッカーアーム用鋼。
- Mn、S、およびCrの含有%(wt/wt)が式
(([Mn]−55×[S]/32)+[Cr])>2.0%(wt/wt)
(但し式中、[ ]書きは各構成元素の含有%(wt/wt)を表す。)
を満たすか、またはMn、S、Cr、およびMoの含有%(wt/wt)が式
(([Mn]−55×[S]/32)+[Cr]+[Mo])>2.0%(wt/wt)
(但し式中、[ ]書きは各構成元素の含有%(wt/wt)を表す。)
を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のロッカーアーム用鋼。 - さらに、Ti:≦2.0%(wt/wt)を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のロッカーアーム用鋼。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のロッカーアーム用鋼が、請求項1〜5のいずれかに規定した合金成分を含有し、ただし、Mn、S、およびCrの含有%(wt/wt)が式
(([Mn]−55×[S]/32)+[Cr])>2.0%(wt/wt)
を満たし、残部が不可避の不純物およびFeからなる化学組成を有する合金を溶製し、その際、溶融状態の合金が下記の条件1)〜3)
1)[HS]/[HO]:8〜80
ここで、HS=[S]×10logFs HO=[O]×10logFo であって、
logFs=0.113[C]+0.065[Si]-0.025[Mn]+0.043[P]-0.028[S]-0.013[Cu]-0.011[Cr]+0.0027[Mo]-0.27[O]+0.024[N]+0.054[Al]
logFo=-0.44[C]-0.131[Si]-0.02[Mn]-0.147[P]+0.133[S]-0.0095[Cu]+0.006[Ni]-0.041[Cr]+0.0035[Mo]-1.00[O]-0.1834[N]-0.20[Al]+0.11[V]
2)[sol-Al]:0.02〜0.20% かつ
3)[Ca]×[S]:1×10−5〜1×10−3
(但し式中、[ ]書きは各構成元素の含有%(wt/wt)を表す。)
を満たすよう操業を行うことを特徴とするロッカーアーム用鋼の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれかに記載のロッカーアーム用鋼にて製造されたロッカーアーム製品。
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