JP4214374B2 - 酸素脱リグニン前処理法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は製紙用の未漂白化学パルプの処理法に関するものであり、更に詳しくは、蒸解後の化学パルプを酸素脱リグニン処理する工程において、パルプの脱リグニンを促進し、後続の漂白段の薬品使用量を低減させるための酸素脱リグニン前処理法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
化学パルプ、すなわち木材を化学的に処理してパルプを製造する方法としては、クラフト蒸解法、ソーダ蒸解法、サルファイト蒸解法、オルガノソルブ蒸解法など多種にわたる。現在では、クラフト蒸解法に種々の蒸解促進剤および/またはパルプ収率向上剤を添加した、クラフト−アンスラキノン蒸解法、クラフト−ポリサルファイド蒸解法、クラフト−ポリサルファイド−アンスラキノン蒸解法が主流となっている。
【0003】
化学パルプの漂白は多段にわたる漂白処理により実施されている。この多段漂白には漂白剤として塩素系漂白薬品が従来、使用されてきた。しかし、これらの塩素系漂白薬品を使用した場合、漂白排水中に含まれる有機塩素化合物が環境に対する汚染源と成る得る。従って、漂白排水の回収燃焼が望まれるが、塩素イオンによる装置の腐食の問題から極めて困難である。現在、これら漂白排水は活性汚泥処理などにより処理されているが、有機塩素化合物を完全に無毒化することは難しく、環境に与える影響が懸念される。
【0004】
そこで、塩素系薬品の使用量を低減させるために、蒸解処理後の初段にアルカリ性、高温加圧下で酸素を作用させる酸素脱リグニン法が開発され、現在広く普及するに至っている。蒸解後のパルプ中に残存するリグニンの40〜50%が、酸素脱リグニンを実施することにより除去されるので、後段の塩素系漂白薬品の使用量を下げることが可能になるのみならず、酸素脱リグニン工程で発生した排水を蒸解工程に循環することができるので、薬品とエネルギーを回収することも可能であり、また、排水の負荷を軽減できる。
【0005】
環境に対する負荷をさらに軽減するためには、酸素脱リグニン工程における脱リグニン率を向上する必要がある。酸素脱リグニンを改善する従来の技術としては、酸素脱リグニン選択性を高めるための各種前処理法が報告されている。例えばSamuelsonらは二酸化窒素を用いた2段の前処理法を提案している(特許文献1参照。)。しかし、酸化剤として毒性の強い気体である二酸化窒素を使用しているため、取り扱いが難しいだけでなく、反応が不均一になる欠点を有する。また、大井らは、亜硝酸塩を含む硝酸酸性における一段の前処理法を提案している(特許文献2参照。)。この技術では、最大限の効果を発揮するには硝酸を対パルプ2〜3 %添加する必要があるため、排水を回収燃焼した際、硝酸由来の窒素酸化物が多量に発生する欠点がある。さらに、前処理を酸性条件下で行うため、処理の前後で洗浄・脱水工程を必要とし、設備投資が増大するという問題もある。
【0006】
最近、銅・ピリジン等の窒素含有化合物・過酸化物システムにより、リグニンを解重合する方法が提案されている(特許文献3参照。)。この方法を酸素脱リグニン前処理法として適用可能であるが、処理温度が60〜80℃の場合、処理時間が4時間と長い時間を要するうえ、比較的に高価な過酸化物の添加量が対パルプ2〜4%とかなり多いのが欠点である。酸素脱リグニン工程を考えた場合、前処理段で使用される酸化剤として、過酸化水素に代表される過酸化物と酸素を比較すると、やはり安価な酸素を使用するほうがはるかに優れている。
【0007】
また、一般に、針葉樹由来のクラフトパルプに比べて広葉樹由来のパルプは酸素脱リグニン時のカッパー価が低下し難いことが知られており(非特許文献1参照。)。その原因としてパラ-ヒドロキシフェニル型構造ユニットの蓄積が示唆されている(非特許文献2参照。)。
【0008】
以上のように、人間や動物に無害であり、低薬品添加量で高い脱リグニン率を達成でき、更に処理コストが低い酸素脱リグニン前処理法技術の確立が強く望まれている。
【0009】
【特許文献1】
特開昭59-106592号公報
【特許文献2】
特開平4−316690号公報
【特許文献3】
特開平12−509895号公報
【非特許文献1】
McDonough,T.J.著 「In Pulp bleaching. Principles and practice.」Tappi, 1996年.p.213-239
【非特許文献2】
Akim,L.G等著.Can.J.Chem.2001年第79巻 p.201
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、蒸解後の化学パルプを酸素脱リグニン処理する工程において、パルプの脱リグニンを促進し、後続の漂白段の薬品使用量を低減させるための酸素脱リグニン前処理法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
蒸解処理後の未晒化学パルプのpHを7.5〜13.5に調整し、銅イオンまたは銅錯体としてテトラメチルエチレンジアミン銅をパルプ絶乾重量あたり0.01〜1.0固形分重量%添加した後、あるいは銅イオンと銅イオンと錯体を形成できる配位子化合物としてアセトキシム、ピラゾール、イミダゾール及びその誘導体から選ばれる不飽和二重結合を有する窒素含有化合物をそれぞれパルプ絶乾重量あたり0.01〜1.0固形分重量%添加した後、酸素圧3〜9kg/m2で前処理し、次いで通常の酸素脱リグニン処理を実施する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは一般に実施されている酸素脱リグニン設備の大幅な変更を必要としないで、酸素脱リグニン工程における脱リグニン率の向上を達成できる前処理法について鋭意検討した結果、蒸解後の未漂白化学パルプを、アルカリ性媒体中で、銅イオンまたは銅錯体と、加圧酸素とを添加し、加熱処理した後、通常の酸素脱リグニン処理を行うことにより、効果的に脱リグニンされたパルプが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明の酸素脱リグニン前処理法は、クラフト蒸解法、ソーダ蒸解法、サルファイト蒸解法、オルガノソルブ蒸解法などの製紙用化学パルプ蒸解法の未漂白パルプの処理に適用できるが、好適には未漂白クラフトパルプである。また、クラフト−アンスラキノン蒸解法、クラフト−ポリサルファイド蒸解法、クラフト−ポリサルファイド−アンスラキノン蒸解法の未漂白クラフトパルプの処理にも適用できる。さらにクラフト法については修正法として、MCC、EMCC、ITC、Lo-solid法等が知られているが、それらの方法に限定されず適用できる。また、広葉樹にも針葉樹にも適用できるが、好適には広葉樹の処理に適する。広葉樹の未漂白クラフトパルプのカッパー価は12〜26の範囲であり、14〜22が好ましく、15〜18が更に好ましい。針葉樹の未漂白クラフトパルプのカッパー価は18〜36の範囲であり、22〜32が好ましく、24〜28が更に好ましい。
【0014】
本発明においては、蒸解処理後の未漂白化学パルプ、好適には未漂白クラフトパルプに必要であればアルカリ溶液を添加してアルカリ性とした後、▲1▼銅イオンを単独で添加する。または▲2▼銅錯体触媒を添加する。この場合、市販の銅錯体を添加しても良いし、銅イオンと後記の特定の配位子化合物を予め混合し生成した錯体を添加しても良い。または▲3▼銅イオンと後記の特定の配位子化合物を別々に添加しても良い。その後、酸素圧下で酸化前処理を行う。前処理の反応条件は次の通りである。パルプ濃度は1〜30固形分重量%、より好ましくは8〜15固形分重量%、温度は50〜120℃、より好ましくは85〜105℃、酸素圧は3〜9kg/cm2、より好ましくは5〜7kg/cm2、処理時間は5〜180分、より好ましくは15〜90分で実施される。また、本発明は1段酸素脱リグニン処理のみならず、2段酸素脱リグニン処理の前処理にも適応可能である。
【0015】
本発明の前処理工程におけるアルカリ溶液のpHは13.5以下、より好ましくは8〜13である。使用されるアルカリ薬剤は水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられるが、好適には水酸化ナトリウムである。ただし、蒸解後に洗浄・脱水された未漂白クラフトパルプのpHは通常8〜10であるため、前処理をpH=8〜10で行う場合には、アルカリ源として水酸化ナトリウムを補充する必要はない。
【0016】
本発明における銅イオンまたは銅錯体触媒の添加量は、対パルプ0.01〜1.0固形分重量%、より好ましくは0.25〜0.50固形分重量%である。銅イオンは、水に溶解可能なあらゆる銅の2価イオンの塩を使用することができる。該塩は、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物からなる群より選択することができる。また、銅錯体は単核銅錯体、または酸素原子との反応により形成される二核銅錯体である。また、該銅錯体の配位子は、アセトキシム、ピラゾール、イミダゾール及びその誘導体等から選ばれる不飽和二重結合を有する窒素含有化合物である。
【0017】
ここで使用する酸素源は、液体酸素でも良いし、PSA酸素でも構わない。また、後段にオゾン漂白設備がある場合、オゾン漂白段から排出される廃酸素を利用することも可能である。
【0018】
本発明の酸素脱リグニン後、後段の漂白性を向上するにはpH2〜4、温度80〜100℃、時間60〜180分、パルプ濃度5〜10%で酸処理し、パルプ中に含まれる銅イオンまたは銅錯体を除去することが好ましい。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸が挙げられるが、好適には硫酸である。一般に、広葉樹材由来の未漂白クラフトパルプのカッパー価を低下させにくい原因の一つにヘキセンウロン酸の存在が挙げられる。また、ヘキセンウロン酸は完成漂白パルプの光或いは熱による退色に関与している可能性があることから、できるだけ除去することが望ましい。上述した酸処理により銅イオンまたは銅錯体のみならず、ヘキセンウロン酸も同時に除去できるため、さらにカッパー価を下げることができ、後段の漂白薬品使用量を大幅に削減することができる。
【0019】
本発明における前処理の作用は、今のところ明らかにはなっていない。しかし、次の報告がある。
(1)アルコール中で銅化合物およびアミン類或いはオキシム類からなる触媒と酸素により2,4,6−トリメチルフェノールが効率良く酸化されること(特開平04-077447公開)
(2)1−ヘキサノール中で銅・ピリジン錯体と酸素により2,4,6−トリメチルフェノールの4位メチル基がアルデヒドおよびカルボキシル基へと酸化されること(K.Takai,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,75(2),311-317 (2002))
(3)2価銅のアミン錯体はフェノールを一電子酸化し、1価銅のアミン錯体となった後、酸素により酸化され、2価銅・アミン錯体へ再生し、酸化触媒として作用すること(武田邦彦ら,コンバーテック,pp.4(2001))
(4)(μ−η2:η2−ペルオキソ)二核2価銅錯体或いはビス(μ−ヒドロキソ)二核2価銅錯体が酸素共存下においてフェノール酸化触媒作用を有すること(Higashimura,H.,et al.,J.Am.Chem.Soc.,120,8529(1998))
これらの報告から推定して、二酸化窒素前処理同様、酸素脱リグニン工程で生成する難分解性のフェノール性リグニン、例えば前述のパラ-ヒドロキシフェニル型構造ユニット或いは5-5'-ビフェニル型構造ユニットが酸化分解されることにより、その効果を発揮している可能性が考えられる。
【0020】
さらに、(μ−η2:η2−ペルオキソ)二核2価銅錯体が銅モノオキシゲナーゼ活性を有し、フェノールリチウム塩をカテコールに効率良く酸化するという報告(Itoh,S.,et al.,J.Am.Chem.Soc.,123,6708(2001))から、比較的高い酸化電位を有し、酸素により酸化されにくいパラ-ヒドロキシフェニル型構造ユニットに水酸基が導入されることで酸化電位が低下し、酸素により酸化分解され易くなることでその効果を発揮している可能性も考えられる。また、銅イオンはマイルドなアルカリ溶液中(pH9.6)、100℃、2時間程度の処理でセルロースの還元末端を酸化することで、1%苛性ソーダ溶液、100℃におけるセルロースの分解反応を抑制することが報告されており(Meller,A.,Tappi,45(6),481(1962))、パルプ収率向上の観点からもメリットがあると思われる。
【0021】
この前処理の効果により、後続の酸素脱リグニン反応が選択的かつ効率的に進行し、高い脱リグニン率が達成できる。さらに、パルプ中のリグニン含有量が低下することにより、後段の漂白薬品の添加量大幅に低減することができる。
【0022】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。各薬品の使用量は絶乾パルプ当たりの固形分重量%で示した。使用したパルプはクラフト蒸解後の広葉樹由来の未漂白クラフトパルプ(ハンター白色度30.2%、カッパー価14.9)である。カッパー価測定はJIS P-8211に準じて行った。さらに、本発明により得られたパルプから下記の抄紙方法で手抄き紙を調製し、その紙質を調べた。
・密度:JIS P8118に準じて測定した。
・裂断長:JIS P8113に準じて測定した。
・ハンター白色度:JIS P8123に準じて測定した。
・濾水度:酸素脱リグニン後のパルプを、25℃で叩解機にて離解、叩解して濃度0.5重量%のスラリーとしたものを用いた。カナダ標準濾水度(JIS P8121)を測定した。
・抄紙方法:酸素脱リグニン後のパルプスラリーをそれぞれ抄紙後のシートの坪量が60g/m2になるように量り取り、丸型タッピ抄紙機にて150メッシュワイヤー(面積200cm2)で抄紙しシートを得た。得られたシートは、3.5kg/cm2で5分間プレス機にてプレス脱水した後、2分間プレス脱水した。50℃下で1時間乾燥した。得られたシートを23℃、湿度55%の条件で調湿してから紙の密度、裂断長、白色度を前述の方法で測定した。
【0023】
【実施例1】
広葉樹未漂白クラフトパルプの絶乾重量30.0gを採取し、絶乾パルプ重量当たり塩化第二銅二水和物を0.5%添加し、次いで希釈水をパルプ濃度が10%となるように加えた。Quantum Technology社のHigh Intensity Mini Mixerを用いて酸素脱リグニン前処理(以下、前処理と略す)を行った。その際、pHは9.5、酸素圧6kg/cm2、温度95℃、反応時間60分である。反応後、得られたパルプを洗浄、脱水し、絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを2.0%添加し、次いで希釈水をパルプ濃度が10%となるように加えた。前述のHigh Intensity Mini Mixerを用いて酸素脱リグニンを行った。その際、pHは12.7、酸素圧6kg/cm2、温度95℃、反応時間60分である。反応後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0024】
【実施例2】
塩化第二銅二水和物の添加量を0.50%から0.25%へ変更した以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0025】
【実施例3】
塩化第二銅二水和物に代え、硫酸第二銅五水和物を0.88mmol(銅イオン濃度として塩化第二銅二水和物を0.5%添加に相当)添加した以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0026】
【実施例4】
塩化第二銅二水和物に代え、酢酸第二銅一水和物を0.88mmol(銅イオン濃度として塩化第二銅二水和物を0.5%添加に相当)添加した以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0027】
【実施例5】
塩化第二銅二水和物を0.25%に変更し、アセトキシムを0.25%添加した以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0028】
【実施例6】
前処理時の酸素圧を6kg/cm2から3kg/cm2へ変更した以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0029】
【実施例7】
前処理時に苛性ソーダを4.0%添加し、酸素圧を5kg/cm3、処理時間を15分間とした以外は、実施例2と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0030】
【実施例8】
前処理時に銅・アミン錯体としてジ-μ-ハイドロキソ-ビス-[(N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン)2価銅]クロライド(Acros Organics社)を0.25%添加した以外は、実施例7と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0031】
【比較例1】
塩化第二銅二水和物を無添加とし、代わりにアセトキシムを0.5%添加した以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0032】
【比較例2】
塩化第二銅二水和物に代え、硫酸第一鉄七水和物を0.88mmol(金属イオン濃度として塩化第二銅二水和物を0.5%添加に相当)添加した以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0033】
【比較例3】
塩化第二銅二水和物に代え、塩化第二鉄六水和物を0.88mmol(金属イオン濃度として塩化第二銅二水和物を0.5%添加に相当)添加した以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0034】
【比較例4】
塩化第二銅二水和物に代え、硫酸マンガン五水和物を0.88mmol(金属イオン濃度として塩化第二銅二水和物を0.5%添加に相当)添加した以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0035】
【比較例5】
塩化第二銅二水和物に代え、酢酸コバルト四水和物を0.88mmol(金属イオン濃度として塩化第二銅二水和物を0.5%添加に相当)添加した以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0036】
【比較例6】
前処理時に、塩化第二銅二水和物を無添加とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0037】
【比較例7】
前処理時に、塩化第二銅二水和物を無添加とし、苛性ソーダを3.0%添加(pH=9.9)した以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0038】
【比較例8】
前処理時に苛性ソーダを4.0%添加(pH=13.2)し、酸素圧を5kg/cm3、処理時間を15分間とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0039】
【比較例9】
前処理は行わず、広葉樹未漂白クラフトパルプの絶乾重量30.0gを採取し、絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを2.0%添加(pH=12.6)し、次いで希釈水をパルプ濃度が10%となるように加えた。前述のHigh Intensity Mini Mixerを用いて酸素脱リグニンを行った。その際、酸素圧6kg/cm2、温度95℃、反応時間60分である。反応後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0040】
【比較例10】
絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを3.0%添加(pH=12.9)する以外は、比較例9と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0041】
【比較例11】
絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを4.0%添加(pH=13.1)する以外は、比較例9と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0042】
【比較例12】
絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを6.0%添加(pH=13.2)する以外は、比較例9と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0043】
【比較例13】
前処理時に酸素圧をかけない以外は、実施例1と同様の処理を行った。酸素脱リグニン後、得られたパルプを洗浄、脱水し、カッパー価と白色度を測定した。
【0044】
実施例1〜8及び比較例1〜13の結果を表1に示す。
【0045】
表1から、広葉樹由来の未漂白クラフトパルプは通常の酸素脱リグニンでは苛性ソーダを2%から6%へ増添してもほとんどカッパー価が低下せず(比較例10〜12)、酸素脱リグニンし難いことが分かる。この酸素脱リグニンを銅イオン無添加で実施後、アルカリを2.0%、3.0%添加して酸素脱リグニンしてもカッパー価を8.9、8.7までしか下げられない(比較例6、7)。また、銅イオンを添加して前処理を行った後、酸素脱リグニンにより得られるパルプの脱リグニン率は著しく向上する(実施例1、2、3、4、7)。さらに、銅イオンのカウンターイオンとしては塩化物イオンと硫酸イオン(実施例1、2、3)がほぼ同等、次いで酢酸イオン(実施例4)であることが分かる。さらに、銅・アミン錯体を添加した場合も脱リグニン率は著しく向上する(実施例5、8)。この優れた効果はアミン単独(比較例1)では得られない。銅イオン以外の遷移金属イオンでは脱リグニン効果、白色度共に低い(比較例2〜5)。また、酸素圧をかけない場合は脱リグニン効果、白色度共に低く(比較例13)、酸素圧3kg/cm2以上かけないと十分な効果が得られない(実施例6)。
【0046】
実施例7と比較例8、9の酸素脱リグニン後のパルプを用いて、手抄き紙を作成し、紙質を測定した。結果を表2に示す。一般に、遷移金属イオンを酸素脱リグニン時に添加すると、パルプ粘度が低下するため、紙力低下をまねく恐れがあることが指摘されているが、表2の結果から、塩化第二銅を添加した実施例7は、裂断長は比較例とほぼ同等、脱リグニン率および白色度において非常に優れていることが分かる。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、現行の酸素脱リグニン法よりも優れた脱リグニンを達成することができる。本発明により得られたパルプは脱リグニン率が高いため、後続の漂白段における漂白薬品の使用量を大幅に削減できる。
Claims (3)
- 蒸解処理後の未漂白化学パルプのpHを7.5〜13.5に調整し、銅イオンをパルプ絶乾重量あたり0.01〜1.0固形分重量%添加した後、酸素圧3〜9kg/cm2で処理することを特徴とする酸素脱リグニン前処理法。
- 蒸解処理後の未漂白化学パルプのpHを7.5〜13.5に調整し、銅錯体としてテトラメチルエチレンジアミン銅をパルプ絶乾重量あたり0.01〜1固形分重量%添加した後、酸素圧3〜9kg/cm2で処理することを特徴とする酸素脱リグニン前処理法。
- 蒸解処理後の未漂白化学パルプのpHを7.5〜13.5に調整し、銅イオンおよび銅イオンと錯体を形成できる配位子化合物としてアセトキシム、ピラゾール、イミダゾール及びその誘導体から選ばれる不飽和二重結合を有する窒素含有化合物を、それぞれパルプ絶乾重量あたり0.01〜1.0固形分重量%添加した後、酸素圧3〜9kg/cm2で処理することを特徴とする酸素脱リグニン前処理法。
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