JP4214230B2 - 環状dnaへのランダム変異導入方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ローリングサークル型増幅(Rolling Circle Amplification:RCA)法を利用する環状DNAの増幅方法、及び環状DNAへのランダム変異導入方法に関する。
外来性の遺伝子を挿入でき、宿主内で自立的に増殖できるDNAをベクターと呼ぶ。プラスミドなどのベクターは、分子生物学における基本的ツールとして、DNAの発現やクローニングなど、さまざまな用途で用いられている。これらのベクターは、対象とするDNAをインサートとして組み込んで環状化した後に、宿主細胞を形質転換するのに用いられる。ここで、インサートを組み込んだベクターの濃度が不十分だと、形質転換の際に十分な数の形質転換体が得られないことがある。その場合、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてインサートを増幅してから形質転換する手法が一般的である。すなわち、インサート部分をPCRで増幅し、増幅産物を制限酵素で切り出し、リガーゼを用いて新たなベクターに連結し、それから宿主細胞を形質転換することによって増幅した環状DNAを得る。ところが上記のような手法では、PCRを行うにあたり特異的なプライマーを設計し、なおかつ増幅時の温度条件を細かく設定しなければならず、またPCR産物を適当な制限酵素で切断してリガーゼでベクターに組み込む操作も必要なことから手間がかかる。特に、cDNAのように多様な遺伝子がベクターに挿入されている場合、すなわち遺伝子ライブラリーを形成している場合は、増幅から形質転換までの操作の条件検討に厳密さが求められ、高い効率で行わないと、形質転換の際にライブラリーの多様性を減少させてしまう可能性がある。もし、制限酵素やリガーゼを用いずに増幅から形質転換までの操作を簡略化することができれば、作業の効率化につながると考えられる。
一方、遺伝子工学の進歩のおかげで、タンパク質を遺伝子レベルで操作し、機能を改変することができるようになった。たとえば、酵素にランダム変異を導入し、機能の変化した変異体を選抜することで、酵素の機能を改変することも可能である。特に、ランダム変異と選抜の操作を繰り返して酵素の機能を徐々に向上させる技術は進化分子工学と呼ばれ、理論上は酵素の性質を思い通りに改変することができることから、汎用性が高く、研究や産業の分野で幅広く利用されている。遺伝子にランダム変異を導入する手法は数多く知られている。ランダム変異導入方法の多くは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるDNA増幅反応を利用している。よく利用されるランダム変異導入方法としては、反応溶液にマンガンイオンを加えるなどして、ポリメラーゼ複製の忠実度(相補鎖に対して正しい塩基対を形成するように塩基を導入する率)を低下させることで、ランダム変異を導入しつつDNAを増幅する手法(エラープローン PCR)がある(非特許文献1)。エラープローン PCRは特殊な技術や試薬を使用していないため、現時点では最も簡便で変異のバリエーションの多いランダム変異導入方法であるといえる。ほかにも、核酸類縁体をPCR増幅時に取り込ませることでDNA複製の忠実度を低下させる方法や、dNTPを織り交ぜた核酸配列を合成することで変異を導入する方法もある。このように、ランダム変異導入方法の多くが、PCRによるDNA増幅に依存している。しかしながら、PCRを利用した変異導入方法では、通常、増幅産物をベクターに挿入する操作が必要である。具体的には、(i)PCR増幅産物の末端を適当な制限酵素で切断する、(ii)アガロースゲル電気泳動法などにより増幅産物を分画して精製する、(iii)リガーゼを使って、増幅産物を適当なベクターの制限酵素サイトに連結する、という操作である。ところが、各操作での収率や純度が高くないと、変異体ライブラリーのバリエーションが低下する恐れがあるため、各操作の条件検討は慎重に行う必要があり、相応の手間と時間を要する。
このように、PCRによる遺伝子増幅法は、遺伝子工学分野において汎用されているが、近年、PCR以外の新規遺伝子増幅法がいくつか開発され、高い注目を集めている。たとえば、自然界におけるλファージなどの複製機構であるローリングサークル型複製機構(Kornberg, A. and Baker, T.A. 1992. DNA replication. W.H. Freeman and Company, San Francisco)を利用して環状DNAを指数関数的に増幅する手法が知られており、ローリングサークル型増幅(RCA)法と呼ばれている(特許文献1、非特許文献2等参照)。RCA法により得られる増幅産物は、環状DNAの一周分のDNA配列が反復した直鎖状DNAであり、例えば微量な環状DNAからサイクルシークエンス反応のための鋳型DNAを調製することなどにもっぱら利用されていた(非特許文献3等参照)。また、酵母のコロニー由来のプラスミドDNAをRCA法により増幅させたDNA産物を酵母に導入して環化された例は知られているが(非特許文献4)、大腸菌などの原核宿主細胞への形質転換については検討されておらず、また、RCA法を変異導入に利用した例はない。
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従って、本発明は、ローリングサークル型増幅(RCA)法を利用して環状DNAを簡便かつ迅速に増幅する方法、及び環状DNAにランダム変異を導入する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、環状DNAを鋳型としてRCA法により増幅して得られた直鎖状の増幅産物を用いて原核細胞宿主を形質転換すると、高い確率で環状DNAが再構築され、制限酵素やリガーゼを使用することなく環状DNAを増幅できること見出した。また、本発明者らは、環状DNAを鋳型とし、複製の忠実度を低下させる条件下でRCA法により増幅して得られた直鎖状の増幅産物を用いて宿主細胞を形質転換すると、環状DNAが該細胞内で再構築され、制限酵素やリガーゼを使用することなく変異が導入された環状DNAを得ることができることをも見出した。本発明はかかる知見により完成されたものである。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) 以下の工程を含むことを特徴とする、環状DNAの増幅方法。
(a)環状DNAを鋳型としてローリングサークル型増幅法によりDNAを増幅し、直鎖状DNAからなる増幅産物を得る工程
(b)得られた増幅産物を用いて原核宿主細胞を形質転換し、該細胞内で環状DNAを再構築させる工程
(2) 原核宿主細胞が大腸菌である、(1)に記載の方法。
(3) 環状DNAが原核宿主細胞内で独自に複製可能なDNAである、(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 原核宿主細胞内で独自に複製可能なDNAがプラスミドである、(3)に記載の方法。
(5) 環状DNAが、遺伝子ライブラリーを形成しているものである、(1)又は(2)に記載の方法。
(6) 遺伝子ライブラリーが、cDNA又はゲノムDNAのプラスミドライブラリーである、(5)に記載の方法。
(7) 形質転換がエレクトロポレーション法又はコンピテント細胞法により行なわれる、(1)から(6)のいずれかに記載の方法。
(8) 以下の工程を含むことを特徴とする、環状DNAへのランダム変異導入方法。
(c)環状DNAを鋳型とし、複製の忠実度を低下させる条件下でローリングサークル型増幅法によりDNAを増幅し、直鎖状DNAからなる増幅産物を得る工程
(d)得られた増幅産物を用いて宿主細胞を形質転換し、該細胞内で環状DNAを再構築させる工程
(9) 複製の忠実度の低下をマンガンイオンの添加により行うことを特徴とする、(8)に記載の方法。
(10) 宿主細胞が原核細胞又は真核細胞である、(8)又は(9)に記載の方法。
(11) 環状DNAが宿主細胞内で独自に複製可能なDNAである、(8)から(10)のいずれかに記載の方法。
(12) 宿主細胞内で独自に複製可能なDNAがプラスミドである、(11)に記載の方法。
本発明によれば、ローリングサークル型増幅(RCA)法を利用して簡便かつ迅速に環状DNAを増幅する方法、及び環状DNAに変異を導入する方法が提供される。本発明の方法は、PCR法を利用する従来法のように、DNA増幅のためのプライマー設計や合成、温度条件の設定、増幅産物の制限酵素処理、ライゲーション操作を行う必要がないため、作業ステップや労力が大幅に軽減される。また、作業時間も従来法では3時間以上であるのに対し、本発明方法では10分程度で完了し、飛躍的に短縮される。
従って、本発明は、例えばプラスミドライブラリーなどの環状DNAからなる遺伝子ライブラリーの増幅や変異体ライブラリーの構築を簡便な操作で短時間に行うのに非常に有用である。
1.環状DNAの増幅方法
本発明の環状DNAの増幅方法は、(a)環状DNAを鋳型としてローリングサークル型増幅法によりDNAを増幅し、直鎖状のDNAからなる増幅産物を得る工程、(b)得られた増幅産物を用いて原核宿主細胞を形質転換し、該細胞内で環状DNAを再構築させる工程を含む(図1参照)。以下、各工程について説明する。
工程(a)では、環状DNAを鋳型としてローリングサークル型増幅法(以下、RCA法という)によりDNAを増幅する。
鋳型として用いる環状DNAは、プラスミドのように原核宿主細胞内で独自に複製できるものが好ましい。また、環状DNAは精製されたものである必要はなく、環状DNAを含む菌体の懸濁液であってもよい。
また、上記環状DNAの長さは、例えば0.5kb以上500kb以下、好ましくは1kb以上300kb以下、最も好ましくは1kb以上50kb以下である。
環状DNAは、遺伝子のライブラリーを形成しているものであってもよい。遺伝子のライブラリーとしては任意のcDNA又はゲノムDNAのプラスミドライブラリーが挙げられる。
RCA法は、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを用いて、鋳型となる環状DNAから相補鎖を連続合成して増幅する手法であり、以下の手順に従って行うことができる。まず、第一のプライマーを環状DNAに結合させ、その結合させた点を開始点として鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって伸長反応を行うと、合成される一本鎖DNAは伸長と同時に環状DNAが外されていく(鎖置換)。このような伸長反応と鎖置換が繰り返される複製反応が環上で連続して行われた結果、環状DNA一周分と相補的な配列が直鎖状に反復してつながった一本鎖DNAが形成される。続いて、この一本鎖DNA(環状DNAとは相補的な配列を有する)に第二のプライマーを結合させ、その結合させた点を開始点として鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって同様にして伸長反応と鎖置換を行う。第二のプライマーから複製した配列には第一のプライマーが結合し、新たな複製反応が起こる。このように、第一及び第二のプライマーが交互に作用することによってDNAは指数関数的に(最大10コピー)増幅され、鋳型とした環状DNAが直列に繰り返し連結した高分子量の直鎖状DNA(もとの環状DNAの1倍、2倍、3倍、・・・n倍の長さ)からなる増幅産物として得られる。
上記反応において、「第一のプライマー」とは、対象とする環状DNAに結合するプライマーをいい、「第二のプライマー」とは、第一のプライマーが結合する環状DNAとは相補的な配列に結合するプライマーをいう。第一、第二のプライマーは、ランダムな塩基が連続したプライマー(Nn; N = A, T, G, C)の集団を用いると、増幅効率が向上する。ここで、Nnのnは、6前後が望ましい。
「鎖置換活性」とは、複製中の一本鎖DNAに相補鎖が結合している場合、その相補鎖(すなわち鋳型となる環状DNA)を外しながら複製を行う活性をいう。RCAを行うにあたっては高い鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼが好ましく、例えば、バクテリオファージ由来のphi29 DNA ポリメラーゼやBst DNA ポリメラーゼ ラージフラグメント(New England Biolabs製)等が挙げられる。また、DNA ポリメラーゼが3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を持つ場合は、プライマーの3’末端から数塩基(たとえば、1,2塩基の間と1,3塩基の間)をチオール化しておくことで、増幅効率を向上することができる。
上記のRCA反応は一定温度で進行するため、PCR法のようにサーマルサイクラーを使って温度条件を設定する必要がない。また、第一、第二のプライマーは、特定の配列を持つプライマーである必要はなく、ランダムな塩基が連続したプライマー(Nn; N = A, T, G, C)の集団を用いてもよいので、PCRのように特定のプライマーを設計する必要もない。
以下に具体的な反応条件を示す。まず、対象とする環状DNAをTE バッファーに溶解する。環状DNA濃度は、反応溶液の調製が完了した時点の最終濃度で 100 fg/μL〜10 ng/μL程度になるようにする。この溶液を95℃で3分間加熱し、室温まで冷却したのち、0.1〜100μMの第一及び第二プライマー;0.025〜25 U/μLの鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼ;各0.1〜10 mMのdNTP;0〜0.15 U/μLのピロホスファターゼ;pH 7〜9のTris-HCl;0〜1 mMのdithiothreitolを加える(濃度は最終濃度をいう)。この反応溶液を、DNAポリメラーゼの至適温度(20〜80℃、phi29 DNA ポリメラーゼなら30℃程度)で1〜24時間インキュベートすることにより、環状DNAの増幅産物を得ることができる。
また、プライマー、DNAポリメラーゼ、dNTP、ピロホスファターゼ、Tris-HCl、dithiothreitol、の代わりに、templiphi DNA amplification kit(アマシャムバイオサイエンス製)を使用することができる。すなわち、対象とする環状DNA(1 pg〜100 ng)をTE バッファーに溶解して、キット添付のsample buffer 5μLと混合し、95℃で3分間過熱して室温まで冷却した後、reaction buffer 5μL 及びphi29 DNA polymerase 0.2 μLと混合し、1〜24時間インキュベートすることにより、環状DNAの増幅産物を同様に得ることができる。
続いて、工程(b)では、工程(a)で得られた増幅産物を用いて原核宿主細胞を形質転換し、再構築させる。形質転換方法には、電気パルスにより細胞膜に小孔をつくりDNAを取り込ませるエレクトロポレーション法、細胞の外来DNAの受容能を人工的に上げてコンピテント細胞にするコンピテント細胞法などを用いることができる。原核宿主細胞としては、大腸菌(Escherichia coli)等のエシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌などが挙げられるが、大腸菌(Escherichia coli)が好ましい。
2.環状DNAへのランダム変異導入方法
本発明の環状DNAへのランダム変異導入方法は、(c)環状DNAを鋳型とし、複製の忠実度を低下させる条件下でローリングサークル型増幅法によりDNAを増幅し、直鎖状DNAからなる増幅産物を得る工程、(d)得られた増幅産物を用いて宿主細胞を形質転換し、該細胞内で環状DNAを再構築させる工程を含む(図2参照)。
工程(c)では、環状DNAを鋳型とし、複製の忠実度を低下させる条件下でRCA法を行う以外は、鋳型とする環状DNAの種類及び長さ、RCA反応の条件(使用するプライマー、DNAポリメラーゼ等の種類や量、温度条件など)は上記1.の工程(a)と同じである。
ここで、「複製の忠実度を低下させる条件下」とは、相補鎖に対して正しくない塩基対を形成するような塩基を導入する条件であれば特に限定はされないが、かかる条件は、例えば、Mnイオンを添加する、dNTPの各塩基の濃度比を変化させる、核酸類縁体を加える、などの操作が挙げられる。
上記条件下でRCAを行うことにより環状DNAに導入することのできるランダム変異は、1塩基から5塩基/kb 、好ましくは1塩基から3塩基/kb 程度である。
以下に具体的な反応条件を示す。まず、対象とする環状DNAをTE バッファーに溶解する。環状DNA濃度は、反応溶液の調製が完了した時点の最終濃度で 100 fg/μL〜10 ngμL程度になるようにする。この溶液を95℃で3分間加熱し、室温まで冷却したのち、0.1〜100μMの第一及び第二プライマー;0.025〜25 U/μLの鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼ;各0.1〜10 mMのdNTP;0.1〜10 mMのMnCl2;0〜0.15 U/μLのピロホスファターゼ;pH 7〜9のTris-HCl;0〜1 mMのdithiothreitolを加える(濃度は最終濃度をいう)。この反応溶液を、ポリメラーゼの至適温度(20〜80℃、phi29 DNA ポリメラーゼなら30℃程度)で1〜24時間インキュベートすることにより、ランダム変異が導入された環状DNAの増幅産物を得ることができる。
また、プライマー、DNAポリメラーゼ、dNTP、ピロホスファターゼ、Tris-HCl、dithiothreitol、の代わりに、templiphi DNA amplification kit(アマシャムバイオサイエンス製)を使用することができる。すなわち、対象とする環状DNA(1 pg〜100 ng)をTE バッファーに溶解して、キット添付のsample buffer 5μLと混合し、95℃で3分間過熱して室温まで冷却した後、reaction buffer 5μL 及びphi29 DNA polymerase 0.2 μL、1μL のMnCl2と混合し、1〜24時間インキュベートすることにより、ランダム変異が導入された環状DNAの増幅産物を同様に得ることができる。
続いて、工程(d)では、工程(c)で得られた増幅産物を用いて宿主細胞を形質転換し、再構築させる。
本変異方法においては、宿主細胞として真核細胞及び原核細胞のいずれをも用いることができる。真核細胞としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母;サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ヒトGH3、ヒトFL細胞等の動物細胞;Sf9、Sf21等の昆虫細胞が挙げられる。また、原核細胞としては、大腸菌(Escherichia coli)等のエシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌などが挙げられる。
形質転換方法は、微生物に効率よくDNAを挿入できるエレクトロポレーション法やコンピテント細胞法が好ましい。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
(実施例1) 環状DNAの増幅反応(1)
Templiphi DNA amplification kitを用いて、プラスミドpUC19をRCA法により増幅した。すなわち、0.5μLのpUC19 (50 pg/μL) と キット添付の5μLの sample buffer を混合し、95℃で3分間インキュベートした後、キット添付の5μLのreaction buffer及び0.2 μLのphi29 DNA polymerase と混合して30℃で24時間インキュベートした。
0、8、24時間反応後の増幅産物1μLを用いて50μLの大腸菌TOP10(インビトロジェン製)をエレクトロポレーション法で形質転換し、LB プレート(50μg/mLアンピシリンを含む)に塗布した。その結果、0時間反応物からはまったくコロニーが形成されなかったのに対し、8時間反応物からは約800個、24時間反応物からは約2000個のコロニーを得ることができた。すなわち24時間反応で、元のpUC19を103倍以上に増幅できた。
また、24時間反応後の増幅産物をQIA quick PCR purification kit(キアゲン製)で精製して、260 nm の吸光度から濃度を測定したところ、増幅産物1μLあたり90 ngのDNAが含まれていた。24時間反応後のコロニー数をDNA量で割ることで、形質転換効率を求めた。その結果、pUC19の形質転換効率が8×109cfu/μgであるに対し、RCA増幅産物は7×106 cfu/μgであった。
さらに、40μLの X-gal(40 mg/mL DMSO溶液)を塗布したLBプレート(50μg/mLアンピシリンを含む)に形質転換体を塗布したところ、ほとんどのコロニーが青色に染まった。よって、pUC19のLacZα遺伝子が正常に機能しているといえる。コロニーを1 mLのLB培地(50μg/mLアンピシリンを含む)で培養し、QIA prep miniprep kit(キアゲン製)でプラスミドを回収し、制限酵素処理(BamHI)をしてアガロース電気泳動を行ったところ、pUC19が再構築されていることが確認できた(図3)。
(実施例2) 環状DNAの増幅反応(2)
pUC19とは ori 部位の由来が異なる、pACYC184及び pMW219(日本ジーンより購入)を用いて、実施例1と同様の実験を行った。すなわち、0.5μLのpACYC184及び pMW219 (50 pg/μL) と Templiphi DNA amplification kit添付の5μLの sample buffer を混合し、95℃で3分間インキュベートした後、キット添付の5μLのreaction buffer及び0.2 μLのphi29 DNA polymerase と混合して30℃で24時間インキュベートした。増幅産物1μLを用いて50μLの大腸菌BL21 gold (DE3)(ストラタジェン製)をエレクトロポレーション法で形質転換し、LB プレート(20μg/mLカナマイシンを含む)に塗布した。その結果、24時間増幅産物から約2000個のコロニーを得ることができた。コロニーを1 mLのLB培地(20μg/mLカナマイシンを含む)で培養し、QIA prep miniprep kit(キアゲン製)でプラスミドを回収し、同様にしてアガロース電気泳動を行ったところ、pACYC184及び pMW219が再構築されていることを確認した。
(実施例3) 環状DNAへのランダム変異導入
変異導入率が高い条件で、プラスミドpUC19に、ランダム変異を導入した。RCAを行う際には、templiphi DNA amplification kitを利用した。まず、0.5μLのpUC19 (50 pg/μL) と キット添付の 5μL sample bufferを混合し、95℃で3分間インキュベートした後、キット添付の 5μL reaction buffer及び0.2 μL phi29 DNA polymeraseと1μLのMnCl2 (1 及び 1.5 mM、最終濃度)を混合して、30℃で24時間インキュベートした。24時間反応後の増幅産物1μLを用いて50μLの大腸菌TOP10(インビトロジェン製)をエレクトロポレーション法で形質転換し、LB プレート(50μg/mLアンピシリンを含む)に塗布した。その結果、1 mM MnCl2 を添加した条件では約300個、1.5 mM MnCl2 を添加した条件では約150個のコロニーを得ることができた。
また、24時間後の増幅産物をQIA quick PCR purification kit(キアゲン製)で精製して濃度を測定し、TOP10の形質転換効率を求めたところ、pUC19の形質転換効率が8×109 cfu/μgに対し、RCA増幅産物はいずれも1×104cfu/μgであった。得られたコロニーをピックアップしてプラスミドを回収し、DNA sequencing を行ったところ、1 mM MnCl2を添加した条件においては 1×10-3/kb、1.5 mM MnCl2を添加した条件においては 3×10-3/kb の割合で変異が導入されていた。また、pUC19プラスミドの代わりに Bacillus halodurans C-125由来キシラナーゼ遺伝子をマルチクローニングサイトに挿入した pET28a を用いて同様の実験を行ったところ、同様の変異導入効率(1 mM MnCl2条件において2×10-3/kb)が得られた。
本発明の環状DNAの増幅方法の概略を示す。 本発明の環状DNAへのランダム変異導入方法の概略を示す。 回収したプラスミド(pUC19)のアガロース電気泳動写真を示す。

Claims (5)

  1. 以下の工程を含むことを特徴とする、環状DNAへのランダム変異導入方法。
    (c)環状DNAを鋳型とし、複製の忠実度を低下させる条件下でローリングサークル型増幅法によりDNAを増幅し、直鎖状DNAからなる増幅産物を得る工程
    (d)得られた増幅産物を用いて宿主細胞を形質転換し、該細胞内で環状DNAを再構築させる工程
  2. 複製の忠実度の低下をマンガンイオンの添加により行うことを特徴とする、請求項に記載の方法。
  3. 宿主細胞が原核細胞又は真核細胞である、請求項又はに記載の方法。
  4. 環状DNAが宿主細胞内で独自に複製可能なDNAである、請求項からのいずれかに記載の方法。
  5. 宿主細胞内で独自に複製可能なDNAがプラスミドである、請求項に記載の方法。
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